説明

二酸化チタン微粒子及びその製造方法

【課題】二酸化チタンナノ粒子の一次粒子からなる二次粒子であって、その二酸化チタンナノ粒子相当の光触媒活性を有し、回収、再使用可能な二酸化チタン微粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る二酸化チタン微粒子は、二酸化チタンナノ粒子の焼成体であって複数の球状の空孔を備え、光触媒活性を有する。この発明において、二酸化チタン微粒子は、その粒子外径は0.1〜5μmであり、その球状の空孔の径は50〜1000nmであるのがよい。このような二酸化チタン微粒子は、二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の前駆体を調整する段階と、該前駆体の水溶性の懸濁液を調整する段階と、該懸濁液を噴霧し、その噴霧された霧滴を加熱乾燥させる段階とから製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化チタンナノ粒子の焼成体であって光触媒活性を有する二酸化チタン微粒子及びその製造方法に係り、特に二酸化チタンナノ粒子相当の光触媒活性を有し、回収、再使用可能な二酸化チタン微粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンナノ粒子は高い光触媒活性を示すことが知られている。その光触媒活性を利用して大気中や水中の汚染物質、有害物質、細菌等の除去あるいは無害化するための種々の方法又は装置の研究、開発が進められている。
【0003】
このような有望な二酸化チタンナノ粒子であるが、粒子同士が凝縮しやすく分散性が悪いため取扱が面倒であることや、回収、再利用ができないこと等の問題がある。この問題に対し、二酸化チタンナノ粒子の光触媒活性は、その表面における光との反応に関係していることを考慮し、二酸化チタンナノ粒子が凝集した多孔質の二次粒子が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に、凝集粒子の平均粒径が0.1〜10μm、一次粒子の平均粒子径が10〜1000nm、BET比表面積が0.5〜50m2/g及びルチル化率が10〜100%である光触媒用酸化チタン粉末が提案されている。そして、一次粒子の平均粒子径は100〜800nmが好ましく、その凝集粒子である二次粒子の平均粒子径は0.5〜10μmが好ましく、1〜5μmがより好ましいことが開示されている。
【0005】
特許文献2に、1〜100nmの範囲の細孔分布曲線において2〜50nmの範囲に最大ピークを有し、直径が0.5〜3.0μmの範囲にある細孔を有し、かつ光触媒活性を呈する多孔質酸化チタン粉末が提案されている。そして、細孔は、ほぼ一軸方向に配向しており、セラミック粉末を分散、焼成して得られるランダムで複雑な細孔構造を有するものに比較して目詰まりが少なく高機能なフィルタへの応用が期待されることが開示されている。
【0006】
また、特許文献3に、光触媒体の内部にまで光が透過できるようにした光触媒体であって、平均粒子径1〜50nmの光触媒粒子を0.01〜10wt%と、平均細孔径が2〜15nmで平均粒子径が1〜30μmのシリカゲル粉体との複合体からなる光触媒体が提案されている。そして光触媒粒子は、平均粒子径が1〜50nmのチタニア粉末であり、光触媒体は光学写真からチタニア粒子がシリカゲルの中に分散しているものであることが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平11-349328号公報
【特許文献2】特開2004-122056号公報
【特許文献3】特開2005-199241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような特許文献1〜3に開示された二酸化チタン二次粒子においては、その粒子径と光触媒活性との関係、あるいは、二酸化チタン一次粒子と二酸化チタン二次粒子との光触媒活性の関係等は明らかにされていない。また、二酸化チタン二次粒子の有する細孔の形状、数等を調整して、所定の光触媒活性を有する二酸化チタン二次粒子を得ることは困難である。特許文献3の提案に係るような複合体の場合は、二酸化チタンの再使用ができないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、二酸化チタンナノ粒子が結合した二次粒子であって所要の空孔を備え、その二酸化チタンナノ粒子相当の光触媒活性を有するとともに、回収、再生し、再使用することができる二酸化チタン微粒子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る二酸化チタン微粒子は、二酸化チタンナノ粒子の焼成体であって複数の球状の空孔を備え、光触媒活性を有する。この発明において、二酸化チタン微粒子は、その粒子外径が0.1〜5μmであり、それが備える空孔の径は50〜1000nmであるのがよい。
【0011】
また、本発明に係る二酸化チタン微粒子は、二酸化チタンナノ粒子の焼成体からなる二酸化チタン微粒子であって、その二酸化チタンナノ粒子の光触媒活性の50%以上の光触媒活性を有するものである。
【0012】
上記の発明において、光触媒活性は、単位時間当たりの有機物の分解速度であるとすることができる。
【0013】
このような二酸化チタン微粒子は、二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の前駆体を調整する段階と、該前駆体の水溶性の懸濁液を調整する段階と、該懸濁液を噴霧し、その噴霧された霧滴を加熱乾燥させる段階とから製造することができる。
【0014】
上記二酸化チタン微粒子の製造方法において、ポリマー粒子は、ポリスチレンラテックスであるのがよく、二酸化チタンナノ粒子のポリマー粒子に対する質量比は、1〜1/3であるのがよい。また、前駆体の濃度は、質量百分率濃度で0.1〜10%であるのがよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る二酸化チタン微粒子は、それを構成する二酸化チタンナノ粒子相当の光触媒活性を有し、回収、再生し、再使用することができる。そして、本発明に係る二酸化チタン微粒子の製造方法によればこのような二酸化チタン微粒子を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る二酸化チタン微粒子の発明の実施の形態を図面を基に説明する。図1は、本発明に係る二酸化チタン微粒子の構造を示す説明図である。図1(a)は、走査電子顕微鏡により観察される本二酸化チタン微粒子の外観を示す図面である。図1(b)は、二酸化チタン微粒子の外観観察結果より推測される本二酸化チタン微粒子の内部構造を含めた全体の構造を説明する図面である。図1(c)は、後述する本二酸化チタン微粒子が有する空孔の表面積を求める方法を説明する図面である。各図において、球形部分が空孔である。図1(a)に示す二酸化チタン微粒子の場合、その外径は約0.6μmであり、空孔の径は約200nmである。
【0017】
本発明に係る二酸化チタン微粒子は、図1(a)、(b)に示すように、その表面部に、球状でしかも輪郭が明瞭で均一な複数の空孔を備えており、また、二酸化チタン微粒子の内部にも同様な球状の空孔を備えている。そして、この二酸化チタン微粒子自体は、それを構成する二酸化チタンナノ粒子からなる結合体である。本二酸化チタン微粒子は、以下に説明する二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の前駆体を噴霧熱乾燥することにより容易に作製することができるのであるが、本二酸化チタン微粒子のX線回折(CuKα線を用いた理学電気株式会社製RINT2000の回折装置)によると、もとの二酸化チタンナノ粒子の結晶構造がそのまま維持されてことが分かる。すなわち、本二酸化チタン微粒子は、二酸化チタンナノ粒子が特別の変化を受けない状態で焼成されて一体になり、表面部及び内部に複数の球状の空孔を備えた結合体(二次粒子)である。
【0018】
また、本二酸化チタン微粒子は、自身を構成する二酸化チタンナノ粒子相当の光触媒活性を有するものである。本二酸化チタン微粒子が有する光触媒活性試験の例を図2に示す。図2は、ブルッカイト型結晶構造を有する二酸化チタンナノ粒子(昭和電工株式会社製10〜20nm)からなり、種々の径(100〜410nm)の空孔を備えた粒子外径が0.6μmの二酸化チタン微粒子のローダミンBに対する光触媒活性試験の結果を示すグラフである。図2において、横軸は試験の経過時間(反応時間)、縦軸はローダミンBの初期濃度C0に対する濃度Cの比(基準化濃度)を示す。図中の単位nmで表す数字は、空孔の径を示し、「空孔なし」は、空孔を有しない二酸化チタン微粒子の場合を示す。「ナノ粒子」は、二酸化チタンナノ粒子そのものの光触媒活性を示す。また、kは図2から求めた基準化濃度曲線の勾配(分解速度)を示す。なお、二酸化チタン微粒子及び空孔は、ほぼ均一な形状を有するが、それらの外径(径)に言及するときは平均外径(径)を示す。以下同様である。
【0019】
図2に示すように、径が410nmの空孔を有する二酸化チタン微粒子の光触媒活性は、空孔のない二酸化チタン微粒子の場合に比較して高い光触媒活性を示している。また、空孔を有する二酸化チタン微粒子の光触媒活性の向上度合いは、空孔の径が小さくなるほど大きくなり、径が100又は200nmの空孔を備える二酸化チタン微粒子の光触媒活性は、ほとんど二酸化チタンナノ粒子の光触媒活性と変わらないことが分かる。また、分解速度kから判断すると、径が300nmの空孔を備える二酸化チタン微粒子の光触媒活性は、二酸化チタンナノ粒子の場合の約半分であることが分かる。本二酸化チタン微粒子のこのような光触媒活性特性はローダミンBに限らず、他の有機物、例えばトルエン、メチレンブルー、4―クロロフェノールに対しても同様に発揮される。
【0020】
なお、図2に示す光触媒活性試験は以下のように行った。ローダミンBは、和光純薬工業株式会社製のものを使用した。ローダミンB水溶液と本二酸化チタン微粒子を反応器中で混合し、波長352nmの2つの平行UV線(株式会社東芝製 型式FL20S LB、20kW)を照射した。また、試験中、溶液中の分離酸素濃度を一定に保持するため、反応器中に5L/minの空気を流動させた。各試験中、反応器は、本二酸化チタン微粒子3.4×10-4g/mL、ローダミンB1.34×10-4g/mLを含んでいた。ローダミンBの濃度は、スペクトロメータ(株式会社島津製作所製 型式UV-3150)により測定した。なお、本二酸化チタン微粒子とローダミンBとの懸濁液は、平衡状態にするためUV線を照射する前に30分間放置した。
【0021】
本二酸化チタン微粒子が備える空孔は、上述のように、明瞭で均一な大きさの球状をしているが、さらに、以下のような特徴を有する。すなわち、空孔同士は離隔しているが適度に連結している。そして、二酸化チタン微粒子の表面部に存在し、外部に開口している空孔と、二酸化チタン微粒子の内部に存在する空孔はともに二酸化チタン微粒子が発揮する光触媒活性に寄与している。
【0022】
図3は、空孔が図1(c)に示すように二酸化チタン微粒子の内部に稠密に詰まっていると仮定して、二酸化チタン微粒子の表面部及び内部に存在する全空孔の表面積を求め、そして、その表面積の大きさに二酸化チタン微粒子の光触媒活性が比例するものとして分解速度を求め、二酸化チタン微粒子の光触媒活性についての実測値と比較したグラフである。図3において、横軸は空孔の径を示し、縦軸は分解速度を示す。また、図3に示す直線は計算により求めた分解速度曲線であり、丸印は図2に示す光触媒活性試験より求めた分解速度をプロットしたものである。
【0023】
図3に示すように、光触媒活性試験より求めた実測分解速度は、計算分解速度によく一致していることが分かり、分解速度は空孔の径に反比例していることが分かる。また、分解速度は空孔の径と関係づけられることが分かる。すなわち、二酸化チタン微粒子が備える空孔は、その内部に稠密に存在するとともに、適度に連結しており、二酸化チタン微粒子の表面部に存在する空孔部分のみならず内部に存在する空孔部分も二酸化チタン微粒子の光触媒活性に寄与しているものと考えられる。
【0024】
また、分解速度が空孔の径に反比例するのは、二酸化チタン微粒子は、それが備える空孔の径が小さいほどその有する空孔の表面積が大きくなるからであると考えられる。
【0025】
上述のように、本二酸化チタン微粒子は、二酸化チタンナノ粒子の二次粒子であり、複数の球状の空孔を備えている。そして、二酸化チタン微粒子の光触媒活性の大きさは、二酸化チタン微粒子が備える空孔の全表面積の大きさに比例する。すなわち、本二酸化チタン微粒子は、その外径が異なるものであっても、空孔の径を変えることによって光触媒活性を同等なものにすることができるものである。
【0026】
また、本二酸化チタン微粒子は、以下に説明する噴霧熱乾燥法により容易に製造することができ、この噴霧熱乾燥法により本二酸化チタン微粒子を製造するには、二酸化チタン微粒子の外径は、0.1〜5μmであるのがよい。二酸化チタン微粒子の外径が0.1μm未満になると、噴霧熱乾燥法により製造するのが困難になる。またそのような微細な粒子になると、回収し再使用するのが困難になるからである。
【0027】
一方、空孔の径は50〜1000nmであるのがよい。噴霧熱乾燥法により、径が50nm未満の空孔を有する二酸化チタン微粒子を製造するのは困難であり、径が1000nmを越える空孔を有する二酸化チタン微粒子は、光触媒活性の向上が期待できなくなるので好ましくない。
【0028】
以上本発明に係る二酸化チタン微粒子について説明した。この二酸化チタン微粒子は、二酸化チタンナノ粒子が結合した0.1μm以上の二次粒子であり、その二酸化チタンナノ粒子の有する光触媒活性相当の光触媒活性を有し、回収、再生し、再使用することができる。このため、大気中や水中に設けた循環路に二酸化チタン微粒子を浮遊循環させることによって、大気中や水中に存在する汚染物質、有害物質、細菌等の除去あるいは無害化を効率的に行うことができる装置を構成することができる利点を有する。このような二酸化チタン微粒子は、以下に説明する噴霧熱乾燥法を用いた二酸化チタン微粒子の製造方法により容易に製造することができる。
【0029】
本二酸化チタン微粒子を製造するには、まず、二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の混合した前駆体を調整する。すなわち、二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子を溶媒中で数分間超音波攪拌を行って均一な混合懸濁液を作製することにより、二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の混合した前駆体を調整することができる。
【0030】
二酸化チタンナノ粒子は、市販のものを使用することができ、その粒子径が5〜50nmのものを使用することができる。二酸化チタンナノ粒子の結晶系は、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型又はこれらの混合型のものを使用することができる。
【0031】
ポリマー粒子は、単分散性の高いものを使用する。これにより、二酸化チタン微粒子が備える空孔の形状及び大きさを均一にすることができる。ポリマー粒子の材質は、スチレン系、アクリル系等を使用することができる。しかしながら、単分散性の高いポリマー粒子を製造するには、ポリスチレンラテックスが好ましい。ポリスチレンラテックスの単分散性の高いポリマー粒子(PSL粒子)は、スチレンモノマーから容易に、比較的安価に製造することができる。なお、溶媒は、水又はエタノールを使用することができる。
【0032】
二酸化チタンナノ粒子のポリマー粒子に対する質量比は、1〜1/3であるのがよい。図4は、二酸化チタンナノ粒子のポリマー粒子に対する質量比を種々に変えて二酸化チタン微粒子を噴霧熱乾燥法で作製した場合の、走査電子顕微鏡による二酸化チタン微粒子の外観写真を示す図面である。図4(a)は、PSL粒子を含まない二酸化チタンナノ粒子のみからなる二酸化チタン微粒子の場合である。図4(b)〜(f)中の比例式は、二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の質量比を示し、数字は空孔の径を示す。例えば、図4(c)は、二酸化チタンナノ粒子の質量が1の割合でポリマー粒子の質量が2の割合であり、空孔の径が300nmである。なお、空孔の径は、ほとんどPSL粒子の外径と同じである。
【0033】
図4に示すように、ポリマー粒子の質量割合が大きくなると空孔の数が増加するが、ある程度空孔の数が多くなると空孔の輪郭が崩れてくる(図4(d))。また、空孔(PSL粒子)の外径がある程度大きくなると、空孔の輪郭が崩れてくる(図4(f))。このような空孔の輪郭が崩れた二酸化チタン微粒子は、結果的には空孔部分の表面積が大きくなるがその光触媒活性は低下してくる。すなわち、二酸化チタンナノ粒子のポリマー粒子に対する質量比は、1〜1/3であるのがよい。
【0034】
このように調整された二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の前駆体を水溶性溶媒に加え、溶媒中で数分間超音波攪拌を行って懸濁させる。水溶性溶媒は、水又はエタノールを使用することができる。前駆体の濃度は、質量百分率濃度で0.1〜10%であるのがよい。この濃度範囲の懸濁液を噴霧すると、安定した霧滴(平均径が1〜15μm)を作製することができる。濃度が0.1未満の場合は、生産性が悪くなり好ましくない。
【0035】
つぎに、この懸濁液を噴霧し、噴霧された霧滴を加熱乾燥させる。噴霧は、超音波噴霧器又は二流体ノズル噴霧器を使用するのがよい。加熱乾燥は、不活性気流中で霧滴を二段階に加熱乾燥させることができる二域加熱式のものを使用するのがよい。これにより効率的に二酸化チタン微粒子を製造することができる。すなわち、加熱炉の第一加熱域で溶媒を蒸発させ、二酸化チタンナノ粒子とPSL粒子の複合体を生成することができる。つぎに、第二加熱域でPSL粒子を蒸発させて二酸化チタンナノ粒子からなる複数の球状の空孔を備えた二酸化チタン微粒子を作製することができる。
【0036】
以上説明したように、本二酸化チタン微粒子の製造方法によれば、適切な外径を有するポリマー粒子を選択し、所定の質量比からなる二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の前駆体及び所定濃度の前駆体懸濁液を噴霧し、熱乾燥させることにより、所定形状・外径の均一な複数の空孔を備え、二酸化チタンナノ粒子相当の光触媒活性を有する二酸化チタン微粒子を製造することができる。
【実施例1】
【0037】
二酸化チタン微粒子の作製試験を以下のように行った。二酸化チタンナノ粒子(昭和電工株式会社製10〜20nm)とPSL粒子(JSL株式会社製100、200、300、410nm)との水溶性懸濁液(二酸化チタンナノ粒子とPSL粒子からなる前駆体の質量濃度が0.13〜2.5%)を準備した。二酸化チタンナノ粒子のPSL粒子に対する質量比は、1.0、2/3、1/2、1/3の4種類のものを調整した。水溶性懸濁液は、数分間超音波攪拌を行った。
【0038】
この準備した懸濁液を超音波噴霧器(オムロン株式会社製 型式NE-U12 周波数1.7MHz)により噴霧し、二域円筒型の加熱炉(内径が13mm、長さ1mのセラミック製のもの)により加熱乾燥し、作製された二酸化チタン微粒子をフィルタ捕集又は静電捕集により収集した。二域円筒型の加熱炉は、噴霧された霧滴とともに流量1L/minの空気又はN2のキャリアーガスを炉内に流すことができる。第一加熱域の温度は200℃、第二加熱域の温度は500℃であった。
【0039】
このようにして作製された二酸化チタン微粒子を走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S-5000 20kV)により観察した。本二酸化チタン微粒子の作製試験により作製した一部分の二酸化チタン微粒子の走査電子顕微鏡観察の結果を上述の図4に示した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る二酸化チタン微粒子の構造を説明する模式図である。
【図2】本発明に係る二酸化チタン微粒子の光触媒活性を示すグラフである。
【図3】本発明に係る二酸化チタン微粒子の空孔の径と分解速度との関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係る二酸化チタン微粒子の製造方法により作製された二酸化チタン微粒子の走査電子顕微鏡観察の結果を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンナノ粒子の焼成体であって複数の球状の空孔を備え、光触媒活性を有する二酸化チタン微粒子。
【請求項2】
粒子外径が0.1〜5μmで、球状の空孔の径が50〜1000nmである請求項1に記載の二酸化チタン微粒子。
【請求項3】
二酸化チタンナノ粒子の焼成体からなる二酸化チタン微粒子であって、その二酸化チタンナノ粒子の光触媒活性の50%以上の光触媒活性を有する二酸化チタン微粒子。
【請求項4】
光触媒活性は、単位時間当たりの有機物の分解速度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化チタン微粒子。
【請求項5】
二酸化チタンナノ粒子とポリマー粒子の前駆体を調整する段階と、該前駆体の水溶性の懸濁液を調整する段階と、該懸濁液を噴霧し、その噴霧された霧滴を加熱乾燥させる段階とからなる複数の球状の空孔を有する二酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項6】
ポリマー粒子は、ポリスチレンラテックスであることを特徴とする請求項5に記載の二酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項7】
二酸化チタンナノ粒子のポリマー粒子に対する質量比は、1〜1/3であることを特徴とする請求項5又は6に記載の二酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項8】
前駆体の濃度は、質量百分率濃度で0.1〜10%である請求項5〜7のいずれかに記載の二酸化チタン微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−195551(P2008−195551A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30058(P2007−30058)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】