説明

二酸化バナジウムナノワイヤとその製造方法、及び二酸化バナジウムナノワイヤを用いたナノワイヤデバイス

【課題】VO2ナノワイヤ及びこれを用いたナノワイヤデバイス
【解決手段】
遷移金属原子によるナノ粒子又はナノドットを成長触媒3として基板1に形成し、減圧下で加熱された基板面に、気相−液相−固相(VLS)成長法によって、VO2ナノワイヤを[110]方向に沿って細長く成長させる。基板として正方晶系のTiO2を使用し結晶面を(110)面とすると、基板の面に対して90°の方向にVO2ナノワイヤ2aを、結晶面を(100)面とすると、45°の方向にVO2ナノワイヤ2bを成長させることができる。ナノワイヤの形成領域が制御でき、径、成長方向、長さが制御されたVO2ナノワイヤを基板に高密度に形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−絶縁体転移現象を示す二酸化バナジウムナノワイヤとその製造方法、及び二酸化バナジウムナノワイヤを用いたナノワイヤデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化バナジウムは、室温において単斜晶型結晶であるが、68℃付近において金属―絶縁体相転移を示し、ルチル型結晶へと相転移する(非特許文献1)。このとき、電気抵抗値が3桁以上変化することが広く知られている。二酸化バナジウムは、電気抵抗の温度変化率が大きいことから、ボロメータ型赤外線温度センサに用いられている(例えば、後記する特許文献1を参照。)。
【0003】
また、VO2薄膜は、電場によって金属―絶縁体相転移することが報告されており、電界効果トランジスタ、スイッチング素子、メモリ素子、調光素子等としての可能性が知られている(例えば、後記する特許文献2〜特許文献5、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献6を参照。)。
【0004】
これまで、スパッタリング法、パルスレーザデポジション(PLD(Pulsed Laser Deposition))法等によるVO2薄膜の形成が報告されている(例えば、後記する非特許文献2、非特許文献3、特許文献2、特許文献5を参照。)。しかしながら、このVO2薄膜は多結晶構造であるために、単位面積当りの結晶粒数や結晶配向面、結晶粒寸法が異なり、均一な相転移が困難である。一方、単結晶体で構成された薄膜においても、二次元に広がった大きな結晶体であるため結晶体内で熱や光、電流が拡散しやすいので、相転移を結晶全体で生じさせるには必要なエネルギーが増大し、十分大きな外場エネルギー(熱、光、電場、圧力)が必要となると考えられる。
【0005】
これを解決するためには、ナノサイズで均一化された単結晶体が必要となる。特に、ナノワイヤは、1次元構造体であるので、電極間に架橋することが可能であり、また、結晶内の外場エネルギーの伝播方向はワイヤの伸長方向であり、効率的な相転移が可能となる。
【0006】
単結晶VO2ナノワイヤ構造体を作製する手法が報告されている(例えば、後記する非特許文献4〜非特許文献6を参照。)。これらの作製方法は、VO2粉末を加熱する気相−固相(VS(Vapor-Solid growth))成長法である。
【0007】
図17は、従来技術における、VO2ナノワイヤのSEM像を示す図であり、非特許文献4に記載されている図3(a)である。
【0008】
図17に示すVO2ナノワイヤは、VO2粉末を用いてSi34基板上に気相−固相(VS)成長法(所謂、加熱蒸着法)(成長温度900℃、成長時間5h)によって、形成されたものであり、VO2ナノワイヤの成長軸は[100]方向にある。
【0009】
図18は、従来技術における、VO2ナノワイヤのSEM像((a)及び(b))、TEM像(c)、電子回折パターン(d)を示す図であり、非特許文献5に記載されている図1である。
【0010】
図18に示すVO2ナノワイヤは、VO2粉末を用いてc−面サファイア上に気相−固相(VS)成長法(成長温度600−700℃、成長時間2−5h)によって、形成されたものであり、VO2ナノワイヤは[100]成長方向を有している。VO2ナノワイヤは相互に、60°(又は/及び120°)の角度をなし、或いは、平行をなして形成されている。
【0011】
これまで、CNT(カーボンナノチューブ)、ZnOナノワイヤを、金属ナノ粒子やナノドットを成長触媒として用いて形成した手法が報告されている(例えば、後記する非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9を参照。)。
【0012】
なお、金属ナノドットを成長触媒として利用した気相−液相−固相(VLS(vapor-liquid-solid growth))成長法は広く知られており(例えば、後記する特許文献6を参照。)、また、ナノワイヤを用いたゲート包囲型トランジスタは知られている(例えば、後記する特許文献7を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
非特許文献4〜非特許文献6に、VO2粉末を用いて気相−固相(VS)成長法によって基板上に形成されたVO2ナノワイヤの形成に関する記載があり、VO2ナノワイヤの成長軸は[100]方向であるとされている(ここで、[h、k、l]は、(h、k、l)のミラー指数(又は、面指数)によって表される結晶面に垂直な方向を示す。以下の説明においても同様である。)。
【0014】
図17に示すように、非特許文献4に記載の方法によって、基板上に形成されたVO2ナノワイヤの向きはランダムであり、形成された全てのVO2ナノワイヤの向きは同一ではなく、また、VO2ナノワイヤの長さ、幅は不揃いである。同様のVO2ナノワイヤは非特許文献6にも記載されている。
【0015】
また、図18に示すように、非特許文献5に記載の方法によって、基板上に形成されたVO2ナノワイヤは相互に60°(又は/及び120°)、或いは、180°をなして形成されている。ここでも、基板上に形成された全てのVO2ナノワイヤの向きは同一ではなく、また、VO2ナノワイヤの長さ、幅は不揃いである。
【0016】
VO2は、68℃付近において金属―絶縁体相転移を示し、電気抵抗、光透過率(又は反射率)の温度変化が大きく、また、一般の金属酸化物と同様に触媒作用を有しているので、広い分野での応用が期待されている。
【0017】
VO2ナノワイヤを用いた二次元センサでは、基板上に同方向に揃った状態でVO2ナノワイヤが形成されていることが望ましいが、従来技術では、VO2ナノワイヤは、基板全体にランダムに散らばるように形成されている。従って、このままの状態ではデバイス応用は困難であり、VO2ナノワイヤを一旦基板から分離回収して、必要とする所望の場所に配置させることが必要となり、デバイス製造の点から現実的でない。
【0018】
また、ナノワイヤの径が10nm〜1μm程度の大きな分布をもった状態でVO2ナノワイヤが形成されている場合、ナノワイヤの不均一な径は、相転移の不均一を引き起こすと予測され、このようなランダムな径では、デバイス開発への大きな障害となる。
【0019】
デバイス開発の点から、ナノワイヤの径、長さが揃い、長手方向(ナノワイヤの成長方向である。)が同じ方向を向くように制御され、基板上にVO2ナノワイヤが形成されることが望ましいが、このような制御については、従来技術では配慮されていなかった。
【0020】
従来技術による方法では、基板上にランダムに分散した状態でVO2ナノワイヤが形成されその成長方向の制御は、原理的に、困難である。これは、最安定な構造にて自己成長しやすいVO2結晶の結晶成長機構に起因している。
【0021】
VO2ナノワイヤ結晶においては、ナノワイヤ側面が{110}面であり、結晶成長方向が[100]方向である構造が最安定構造である。この最安定構造の場合、ナノワイヤは初期結晶核が形成した地点から自立的に結晶成長を始めるため、成長位置、成長方向を制御することができない。このため、ナノワイヤは[100]方向への結晶成長のみでなく、[110]方向、即ち、ナノワイヤの径が太くなる方向にも結晶成長するので、ナノワイヤの径や長さを制御することができない。
【0022】
このように、従来技術では、基板上に、形成する領域を制御して、しかも、ナノワイヤの向き、長さ、径(長さ方向に直交する方向での幅寸法)が略同一であるように制御してVO2ナノワイヤを形成することは、実現されていなかった。
【0023】
VO2ナノワイヤを形成する領域を制御して、しかも、向き、長さ、径を略同一であるようにVO2ナノワイヤを高密度に基板上に形成することが可能となれば、このようなVO2ナノワイヤを使用することによって、異方性がより少ない電気特性、光特性を有するデバイス、活性面積の大きな触媒装置等を実現することが可能となる。
【0024】
非特許文献7〜非特許文献9に記載されているように、CNT(カーボンナノチューブ)、ZnOナノワイヤを、金属ナノ粒子やナノドットを成長触媒として用いて形成する手法によれば、触媒を設置した箇所のみにナノワイヤを形成でき、触媒径とナノワイヤ径が同じとなり、また、垂直方向や水平方向に成長をコントロールできる。
【0025】
しかしながら、ナノワイヤを構成する材料によって、ナノワイヤの成長に機能する触媒、ナノワイヤの成長条件、ナノワイヤを形成する基板材料等の様々なパラメータが異なり、非特許文献7〜非特許文献9に記載されている技術を、一般の材料に直接適用することはできない。実際、これまで成長触媒を用いた手法によるVO2ナノワイヤの形成は実現されていない。また、金属ナノドットを成長触媒として利用した気相−液相−固相成長法によるVO2ナノワイヤの形成に関する報告はなされていない。
【0026】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、形成領域、向き、長さを制御して基板上に高密度に形成された二酸化バナジウムナノワイヤとその製造方法、及び二酸化バナジウムナノワイヤを用いたナノワイヤデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
即ち、本発明は、[110]方向に沿って細長く成長された二酸化バナジウムナノワイヤに係るものである。
【0028】
また、本発明は、遷移金属原子によって形成された成長触媒を基板に形成する第1工程と、減圧下で、酸素ガス、不活性ガス、これらの混合ガスの何れかの雰囲気中において、加熱された前記基板の面に二酸化バナジウムのナノワイヤを成長させる第2工程とを有する、二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法に係るものである。
【0029】
また、本発明は、上記の二酸化バナジウムナノワイヤを具備し、熱、電場、赤外線、可視光、電磁波、圧力又は振動による電気抵抗変化、或いは、赤外線又は可視光の透過率若しくは反射率変化を検出する電子デバイス、二酸化バナジウムナノワイヤによって構成される電極を具備する電子デバイス、及び、二酸化バナジウムナノワイヤが光触媒又はアルコール分解触媒として利用される触媒装置の何れかとして構成された、ナノワイヤデバイスに係るものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、[110]方向に沿って細長く成長された二酸化バナジウムナノワイヤは、基板材料とその結晶面を適切に選択し、金属ナノ粒子又は金属ナノドットを成長触媒として前記基板の面に形成し、気相−液相−固相成長法によって結晶成長させることによって得ることができ、その径、成長方向、及び、長さが制御されたものとなっている。
【0031】
また、本発明によれば、遷移金属原子によって形成された成長触媒を基板に形成する第1工程と、減圧下で、酸素ガス、不活性ガス、これらの混合ガスの何れかの雰囲気中において、加熱された前記基板の面に二酸化バナジウムのナノワイヤを成長させる第2工程とを有するので、径、成長方向、及び、形成位置が制御された二酸化バナジウムナノワイヤを製造することができる。
【0032】
また、本発明によれば、径、成長方向、長さ、及び、形成領域が制御され二酸化バナジウムナノワイヤが形成され、形状が揃ったナノワイヤを高密度に形成することができるので、電気抵抗変化、或いは、赤外線又は可視光の透過率若しくは反射率変化を高感度で検出可能な電子デバイス、高いエネルギー出力を有する電子デバイス、電池、キャパシタ等の電子デバイス、触媒活性面積が大きく高性能な触媒装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における、VO2ナノワイヤの成長を説明する断面図である。
【図2】同上、触媒の有無によるVO2ナノワイヤの成長方向の相違を説明する斜視図である。
【図3】同上、VO2の結晶構造と結晶成長を説明する斜視図、原子配列図である。
【図4】同上、VO2ナノワイヤの製造装置の概略構成を説明する図である。
【図5】同上、基板面に垂直方向に成長したVO2ナノワイヤを用いた三次元ナノワイヤデバイスの基本となる構成を説明する斜視図である。
【図6】同上、垂直配向VO2ナノワイヤを用いた電界効果型トランジスタ(FET)の製造工程の概要を説明する断面図である。
【図7】同上、垂直方向に成長したVO2ナノワイヤを用いたレドックスキャパシタを説明する斜視図である。
【図8】同上、VO2ナノワイヤを用いたセンサデバイスを説明する斜視図である。
【図9】同上、VO2ナノワイヤを用いた触媒装置を説明する斜視図である。
【図10】本発明の実施例における、VO2ナノワイヤの形成と温度、圧力の関係を説明する図である。
【図11】同上、TiO2(100)面に形成したVO2ナノワイヤのSEM像を示す図である。
【図12】同上、TiO2(100)面に形成したVO2ナノワイヤに関する、(a)SEM像、(b)TEM像、(c)電子回折像を示す図である。
【図13】同上、TiO2(110)面に形成したVO2ナノワイヤのSEM像を示す図である。
【図14】本発明の比較例における、VO2ナノワイヤのSEM像を示す図である。
【図15】同上、VO2ナノワイヤのラマン分光スペクトルを示す図である。
【図16】同上、VO2ナノワイヤのX線回折パターンを示す図である。
【図17】従来技術における、VO2ナノワイヤのSEM像を示す図である。
【図18】同上、VO2ナノワイヤのSEM像、TEM像、電子回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の二酸化バナジウムナノワイヤでは、径が2nm以上、1μm以下である構成とするのがよい。この二酸化バナジウムナノワイヤは、結晶成長によって得られるバルク単結晶から機械加工等によって実用的に得ることができない、[110]方向に沿って細長く成長された二酸化バナジウムナノワイヤである。
【0035】
本発明の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法では、前記ナノワイヤが[110]方向に沿って細長く成長される構成とするのがよい。このような構成によれば、異方性がより少ない電気特性、光特性を有する電子デバイス、活性面積の大きな触媒装置等を実現することが可能となる。
【0036】
また、前記基板の面は、二酸化バナジウムに対して10%以下の結晶格子不整合率を有する結晶面である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記基板と前記ナノワイヤのミスフィットが小さいので、前記ナノワイヤと前記基板との結合強度を十分なものとなり、前記ナノワイヤを安定して前記基板上に形成することができる。
【0037】
また、前記ナノワイヤが前記基板の面に対して90°又は45°の方向に成長する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記基板上に前記ナノワイヤを高密度に形成することができる。
【0038】
また、前記基板が正方晶系のTiO2であり、前記結晶面が(110)であるとき、前記ナノワイヤが前記基板の面に対して90°の方向に成長し、前記結晶面が(100)であるときに、前記ナノワイヤが前記基板の面に対して45°の方向に成長する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記基板と前記ナノワイヤのミスフィットが小さく、前記ナノワイヤと前記基板との結合強度を十分なものとなり、前記ナノワイヤを安定して前記基板上に高密度に形成することができる。
【0039】
また、前記第2工程において、10Pa以上、1000Pa以下の減圧下で、前記ナノワイヤを成長させる構成とするのがよい。このような構成によれば、前記基板上に、連続した二酸化バナジウム幕を形成することなく、二酸化バナジウムナノワイヤを形成することができる。
【0040】
また、前記第2工程において、前記基板が400℃以上、1200℃以下に加熱されている構成とするのがよい。このような構成によれば、二酸化バナジウムナノワイヤ以外の組成を有するバナジウム酸化物の形成を抑制することができる。
【0041】
また、前記第2工程において、前記基板が730℃以上、1200℃以下に加熱され、10Pa以上、1000Pa以下の減圧下で、前記ナノワイヤを成長させる構成とするのがよい。このような構成によれば、より安定して二酸化バナジウムナノワイヤを前記基板上に形成することができる。
【0042】
また、前記成長触媒がナノ粒子又はナノドットであり、前記遷移金属原子が、Au、Pt、Ag、Pd、Ru、Fe、Ni、Crの何れかである構成とするのがよい。このような構成によれば、母体として二酸化バナジウムの基本的な特性を有しながら、二酸化バナジウムナノワイヤの金属−絶縁体相転移温度を変化させることができる。
【0043】
また、バナジウムを母体元素とする合金、酸化物、有機錯体化合物、金属バナジウムの少なくとも1つを使用し、前記ナノワイヤをレーザ蒸着法又は加熱蒸着法によって成長させる構成とするのがよい。このような構成によれば、広く知られている汎用的な蒸着法によって、低コストで二酸化バナジウムナノワイヤを形成することができる。
【0044】
また、前記成長触媒の径を制御することにより、前記ナノワイヤの径を制御する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記成長触媒による作用によって、ボトムアップに二酸化バナジウムナノワイヤが成長していくので、容易に前記ナノワイヤの径を制御することができ、略同一の径を有する前記成長触媒を使用することによって、二酸化バナジウムナノワイヤの径を略同一なものとすることができる。
【0045】
また、前記成長触媒の径が、10nm以上、1μm以下の範囲である構成とするのがよい。このような構成によれば、この二酸化バナジウムナノワイヤは、結晶成長によって得られるバルク単結晶から機械加工等によって実用的に得ることができないものであり、[110]方向に沿って細長く成長された二酸化バナジウムナノワイヤを得ることができる。
【0046】
また、前記第1工程において、前記成長触媒が、エッチング法、シャドーマスク蒸着、リフトオフ法の何れかによって、前記基板の所望の領域に形成される構成とするのがよい。このような構成によれば、結晶成長によって得られるバルク単結晶から機械加工等によって実用的に得ることができない、[110]方向に沿って細長く成長された二酸化バナジウムナノワイヤを得ることができる。
【0047】
また、前記ナノワイヤの先端部の前記成長触媒を除去する第3工程を有する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記成長触媒の電気的、光学的な影響を受けない二酸化バナジウムのみによるナノワイヤ構造体とすることができる。
【0048】
また、前記ナノワイヤが、3d遷移金属元素、希土類元素、Ta、Wの少なくとも1つを添加元素として含有する構成とするのがよい。このような構成によれば、母体として二酸化バナジウムの基本的な特性を有しながら、二酸化バナジウムナノワイヤの金属−絶縁体相転移温度を変化させることができる。
【0049】
また、前記添加元素を5%(at%、原子分率)以下で含有する構成とするのがよい。このような構成によれば、母体として二酸化バナジウムの基本的な特性を有しながら、二酸化バナジウムナノワイヤの金属−絶縁体相転移温度を変化させることができる。なお、前記添加元素は、二酸化バナジウムナノワイヤの成長後にドーピングによって添加されている。
【0050】
本発明のナノワイヤデバイスでは、前記電子デバイスが、温度検知センサ素子、加速度検知センサ素子、ガス検知センサ素子、電磁波検知センサ素子、光検知センサ素子、圧力検知センサ素子、電界効果トランジスタ素子、不揮発メモリ素子、光電変換素子、光スイッチング素子、熱線変調素子、光変調素子、スイッチング回路素子、光トランジスタ素子又は光メモリ素子であり、前記電極が、電気二重層キャパシタ用電極、電気化学キャパシタ用電極、アルカリイオン2次電池用正極の何れかである構成とするのがよい。このような構成によれば、異方性がより少ない電気特性、光特性を有し、電気抵抗変化、或いは、赤外線又は可視光の透過率若しくは反射率変化を高感度で検出可能な電子デバイス、高いエネルギー出力を有する電子デバイス、電池、キャパシタ等の電子デバイス、触媒活性面積が大きく高性能な触媒装置を提供することができる。
【0051】
本発明では、遷移金属原子(例えば、Au、Pt、Ag、Pd、Ru、Fe、Ni、Cr)によって形成されたナノ粒子又はナノドットを基板に形成し、10Pa以上、1000Pa以下の減圧下で、酸素ガス、不活性ガス、これらの混合ガスの何れかの雰囲気中で、400℃以上、1200℃以下に加熱され基板の面に、ナノ粒子又はナノドットを成長触媒として、気相−液相−固相(VLS)成長法によって、二酸化バナジウムナノワイヤを成長させる。気相−液相−固相成長は、例えば、バナジウム(V)を母体元素とする合属、酸化物、有機錯体化合物、金属バナジウムの少なくとも1つを使用し、レーザ蒸着法又は加熱蒸着法によって行う。
【0052】
ナノ粒子又はナノドット(成長触媒)が形成される基板の領域(位置)を制御して、所望のパターンを有する領域に、二酸化バナジウムナノワイヤを[110]方向に沿って細長く成長させ、成長方向を制御することができる。また、二酸化バナジウムナノワイヤの径は、ナノ粒子又はナノドットの径によって制御することができ、二酸化バナジウムナノワイヤの長さは、気相−液相−固相成長による結晶成長時間によって制御することができる。
【0053】
使用する基板の面は、二酸化バナジウムに対して10%以下の結晶格子不整合率を有する結晶面が好ましく、特に、基板として正方晶系のTiO2を使用し、二酸化バナジウムナノワイヤを成長させる結晶面を(110)面とすると、二酸化バナジウムナノワイヤを基板の面に対して90°の方向に成長させることができる。また、二酸化バナジウムナノワイヤを成長させる結晶面を(100)面とすると、二酸化バナジウムナノワイヤを基板の面に対して45°の方向に成長させることができる。
【0054】
このようにして、本発明では、基板面に二酸化バナジウムナノワイヤがその長手方向が基板面と平行となるように形成される従来技術とは全く異なり、基板面に二酸化バナジウムナノワイヤがその長手方向が基板面に対して、例えば、45°や90°のように交差するように形成される。このため、二酸化バナジウムナノワイヤを基板上に高密度に形成することができる。
【0055】
本発明では、このようにして、形成領域(形成位置)が制御され、及び、径、成長方向、長さが制御された二酸化バナジウムナノワイヤを基板に高密度に形成することができる。
【0056】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0057】
これまで、金属触媒を用いてVO2ナノワイヤを合成した報告はなく、基板上に合成されたVO2ナノワイヤは図17、図18に示すように基板板全体に散らばるように形成され、ナノワイヤの径、長さ、成長位置は制御されておらずランダムなものであり、ナノワイヤをこのままデバイスに応用することは困難であり、デバイス開発の大きな障害であった。
【0058】
本発明者は、金触媒を用いたVO2ナノワイヤを試み、これまでに報告例のない[110]方向に沿って成長したVO2ナノワイヤを初めて合成することに成功した。金触媒を用いてVLS結晶成長法によってVO2ナノワイヤを成長させることによって、これまで不可能であったVO2ナノワイヤの径、長さ、成長位置の制御が可能となった。
【0059】
VLS結晶成長法によって形成されるVO2ナノワイヤの径は、使用する金属触媒の大きさによって制御することができるので、ナノ粒子のように触媒ドット径を均一化すれば、径の揃ったVO2ナノワイヤを形成することが可能となり、様々なデバイス開発に好適なVO2ナノワイヤを提供することができる。
【0060】
[実施の形態]
<VO2ナノワイヤの成長>
本発明による二酸化バナジウム(VO2)ナノワイヤは、[110]方向に細長く成長されたなのワイヤであり、金属−絶縁体相転移を示す。相転移温度より高い高温相は金属相であり、正方晶系(Tetragonal)の結晶構造をとり、相転移温度より低い低温相は絶縁体相であり、単斜晶系(Monoclinic)の結晶構造をとる。高温相にあるVO2ナノワイヤは可視光透過率が低下し着色し、低温相では透明に近い光学的特性を有する。Fe、Co、Ni、Mo、Nb、WがドープされたVO2ナノワイヤはドープされていないものに比較すると相転移温度が低下する。
【0061】
このVO2ナノワイヤは、好ましくは、例えば、TiO2基板、表面にTiO2が形成されたSi基板(TiO2/Si基板)、表面にTiO2が形成されたTi基板(TiO2/Ti基板)のTiO2表面に、加熱蒸着法、レーザ蒸着法(パルスレーザデポジション法)によって形成することができる。以下では、VO2ナノワイヤの成長面としてTiO2基板を例にとって説明する。
【0062】
パルスレーザデポジション(PLD(Pulsed Laser Deposition))法は、真空容器内でターゲットにパルスレーザを照射し、ターゲットのプラズマ化によって放出されるフラグメント(原子、分子、イオン、クラスター等)を基板上に堆積させる方法である。プラズマ化したターゲット物質はプルームと呼ばれる。
【0063】
TiO2基板に金属ナノ粒子又はナノドットを形成しこれを成長触媒として用い、ナノ触媒の形成位置を制御することによって、VO2の初期結晶核の位置を制御でき、また、ナノ触媒の径とナノワイヤ径を同じにすることができる。更に、ワイヤの成長方向を最安定面({110}面)にすることによってワイヤを伸長させ、ワイヤを自律的に太くさせないことが可能となる。
【0064】
本発明では、触媒を用いるVO2単結晶ナノワイヤ成長に適した成長触媒、成長条件、基板条件を見出した。VO2単結晶ナノワイヤの成長には、Au、Pt、Ag、Pd、Ru等貴金属ナノ粒子又はナノドット体が成長触媒として機能する。特に、Auナノ粒子が好ましい。ナノ粒子は、ナノドットよりもサイズ制御性が高く、ナノワイヤの径制御に適している。Au等の貴金属ナノ触媒を用いたVO2単結晶ナノワイヤの成長は、圧力10Pa〜1000Paの減圧下で、酸素もしくは不活性ガス、或いは、その混合ガス雰囲気中において、400℃以上1200℃以下の温度条件にて進行する。VO2単結晶ナノワイヤは[110]方向に成長し、[100]方向に成長する自律成長(最安定成長)の場合と異なり、ワイヤ径をナノ触媒のサイズによって制御することができる。
【0065】
VO2ナノワイヤを成長させようとする基板は、正方晶系VO2と10%以下の格子不整合率(格子ミスマッチ)(基板の格子定数をA、正方晶系VO2の格子定数をBとするとき、100×(A−B)/A(%)として定義される。)を有していれば使用することができる。
【0066】
基板として、特に、ルチル型TiO2基板は、正方晶系VO2との格子不整合率0.87%と低く好ましい。図1に示すように、ルチル型TiO2基板の(100)面上には、[110]方向に沿って成長するVO2単結晶ナノワイヤが基板面に対して45°傾いた角度で形成される。また、ルチル型TiO2基板の(110)面上には、[110]方向に沿って成長するVO2単結晶ナノワイヤが基板面に対して垂直に形成される。
【0067】
図1は、本発明の実施の形態における、VO2ナノワイヤの成長を説明する断面図(模式図)である。図1(A)は基板面に対して垂直方向に成長したVO2ナノワイヤを示し、図1(B)はは基板面に対して45°方向に成長したVO2ナノワイヤを示す図である。
【0068】
図1(A)に示すように、基板1としてルチル型TiO2基板の(110)面を選びこの面に触媒(金属触媒)3を形成して、上述したようにVO2ナノワイヤを形成すると、基板1面に対して垂直方向に成長し、[110]方向に沿って成長するVO2ナノワイヤ2aが形成される。
【0069】
図1(B)に示すように、基板1としてルチル型TiO2基板の(100)面を選びこの面に触媒(金属触媒)3を形成して、上述したようにVO2ナノワイヤを形成すると、基板1面に対して垂直方向に成長し、[110]方向に沿って成長する基板1面に対して45°方向に成長したVO2ナノワイヤ2bが形成される。
【0070】
本発明では、成長触媒(金属触媒)3を使用しVLS成長法によってVO2ナノワイヤをボトムアップに成長させるので、VO2ナノワイヤの成長方向の先端部に触媒3を有している。
【0071】
図2は、本発明の実施の形態における、触媒の有無によるVO2ナノワイヤの成長方向の相違を説明する斜視図である。図2(A)は触媒が無しの場合に[100]方向に沿って細長く成長するVO2ナノワイヤを示し、図2(B)は触媒が有りの場合に[110]方向に沿って細長く成長するVO2ナノワイヤを示す。
【0072】
図2(A)に示すように、触媒3を使用しないVO2ナノワイヤ2の形成方法では、通常、[100]方向に成長することが報告されており、その他の成長機構は報告されていない。触媒3として、例えば、金ナノドットを使用したVO2ナノワイヤ2の形成方法では、図2(B)に示すように、[110]方向に沿って成長したVO2ナノワイヤが形成される。これまで、VO2ナノワイヤの合成に対して、金属触媒、例えば、金ナノドット触媒を用いた例は報告されていない。VO2ナノワイヤの形成は、次に説明するように、金属触媒の使用の有無によって、成長モードが異なっていると考えられる。
【0073】
(VO2の結晶構造と結晶成長)
図3は、本発明の実施の形態における、VO2の結晶構造と結晶成長を説明する斜視図、原子配列図である。図3(A)は単位格子とそのc軸方向における配列を示す結晶構造図である。図3(B)は、金属触媒が無しの場合におけるVO2ナノワイヤの成長(無触媒成長)における最安定面成長(成長方向が[100]方向である。)を説明するための、(100)面に垂直な方向から見た原子配列図を示す図である。図3(C)は、金属触媒が有りの場合におけるVO2ナノワイヤの成長(触媒成長)におけるレイヤー成長(成長方向が[110]方向である。)を説明するための、(110)面に垂直な方向から見た原子配列図を示す図である。
【0074】
金属触媒を使用しない従来のVO2ナノワイヤの形成方法では、図3(B)に示すように、従来、V元素とO元素が常に存在する面に垂直な[100]方向の結晶成長が最安定面成長と考えられているが、金属触媒を使用する本発明によるVO2ナノワイヤの形成方法では、金属触媒の結晶成長に対する触媒作用によって、図3(C)に示すように、V原子層とO原子層が交互に形成されていくLayer-by-Layer成長が安定な結晶成長モードとなり、[110]方向にVO2ナノワイヤが形成されているものと考えられる。
【0075】
次に、VO2ナノワイヤを基板に形成するための装置の概要について説明する。
【0076】
<VO2ナノワイヤの製造装置>
図4は、本発明の実施の形態における、VO2ナノワイヤの製造装置の概略構成を説明する図である。
【0077】
図4に示すように、真空容器(チャンバー)21の内部に、基板支持台27に保持された基板10に対向して、ターゲット支持台23にターゲット(例えば、二酸化バナジウム)24が保持され、雰囲気ガスを導入するためのガス導入管28が設けられている。
【0078】
真空容器21は、油回転ポンプ31、ターボ分子ポンプ32によって高真空に排気されると共に、ガス導入管28から導入される雰囲気ガスの圧力を一定に保持するように制御される。雰囲気ガスは、例えば、Ar、He、Ne、Kr、Xe等の希ガス、或いは、酸素等の酸化性ガスである。雰囲気ガスは、これらガスの混合ガスであってもよい。VO2ナノワイヤの形成時、真空容器21の内部は、10Pa以上、1000Pa以下の圧力に保持される。
【0079】
VO2ナノワイヤ形成時、基板10は、400℃以上、1200℃以下に加熱され、好ましくは、730℃以上、1200℃以下に加熱されている。
【0080】
ターゲット24として、二酸化バナジウムの他の酸化物、金属バナジウム、バナジウムを母体元素とする合金や有機錯体化合物を使用することができる。
【0081】
基板10としては、二酸化バナジウムに対して10%以下の結晶格子不整合率を有する結晶面を有するものが好適に使用される。例えば、TiO2基板、表面にTiO2が形成されたSi基板(TiO2/Si基板)、表面にTiO2が形成されたTi基板(TiO2/Ti基板)を使用することができ、これら正方晶系のTiO2表面にVO2ナノワイヤが形成される。このTiO2表面として、(100)面又は(110)面が使用される。
【0082】
VO2ナノワイヤが形成される面には、Au、Pt、Ag、Pd、Ru、Fe、Ni、Crの何れかの遷移金属原子によって形成されたナノ粒子又はナノドットが、VLS結晶成長における成長触媒として形成されている。ナノ粒子又はナノドットは、CVD法、レーザ法、スパッタ法等の気相法、噴霧法、アルコキシド法、逆ミセル法等の液相法、湿式又は乾式分粉砕法によって形成することができる。
【0083】
成長触媒が形成された位置にのみVO2ナノワイヤがボトムアップに形成されるので、成長触媒の径によってVO2ナノワイヤの径が制御され、成長触媒の径を2nm以上、1μm以下とすれば、略これに対応した大きさの径を有するVO2ナノワイヤが形成される。また、VO2ナノワイヤを形成しようとする位置、領域を制御することができ、基板10のVO2ナノワイヤを形成しようとする位置、領域にのみに、エッチング法、シャドーマスク蒸着、リフトオフ法を用いて、成長触媒を形成しておけばよい。
【0084】
パルスレーザ光源、例えば、ArFエキシマレーザからのレーザがレンズ26によって集光され、透明窓22から真空容器21の内部に導かれ、レーザ光25がターゲット24に照射され、パルスレーザデポジション法によって、基板10の面にVO2ナノワイヤが形成される。
【0085】
なお、真空容器21に、電子銃とスクリーンが設けられ、電子銃からの電子線を基板10の面に入射させ、基板10の面で成長するVO2ナノワイヤによって生じる反射電子線回折像を、スクリーンで観察できるようにしてもよい。
【0086】
パルスレーザデポジション(PLD)法によって、VO2ナノワイヤが形成されるようにするためには、圧力が10Pa以上、1000Pa以下となるように雰囲気ガスを真空容器21に導入する。このような圧力の範囲では、高密度プルーム29a(実線で示す。)から発散する低密度プルーム29b(点線で示す。)が、ターゲット24のプラズマ化によって放出されるクラスター(フラグメント)34(原子、分子、イオン等)が、基板10の面に届かないようにすることができるので、クラスター34が基板10の面に形成された成長触媒の面に堆積して、VO2ナノワイヤがボトムアップに形成される。
【0087】
このようにしてPLD法によって形成されるVO2ナノワイヤの成長速度は、基板10の温度、基板10とターゲット24との間の距離、雰囲気ガスの種類とガス圧、使用するレーザの波長、照射エネルギー(密度)、パルス発振周波数、パルス幅、照射時間等によって決定される。
【0088】
以上説明したVO2ナノワイヤは[110]方向に沿って細長く成長され、基板10としてTiO2の結晶面(110)をとるとき、VO2ナノワイヤは基板10の面に対して90°の方向に成長し、TiO2の結晶面(100)をとるとき、VO2ナノワイヤは基板10の面に対して45°の方向に成長する。
【0089】
VO2ナノワイヤは成長触媒に対してボトムアップに形成されるので、形成されたVO2ナノワイヤの頭頂部(先端部)に成長触媒を有しているが、この成長触媒はエッチングによって除去してもよいことは言うまでもない。また、形成されたVO2ナノワイヤに対して、Fe、Co、Ni、Mo、Nb、Wをドープして、ドープされていないものと相転移温度が異なるようにすることもできる。
【0090】
図4に示す装置を使用して形成されたVO2ナノワイヤは、熱、電場、赤外線、可視光、電磁波、圧力又は振動による電気抵抗変化、或いは、赤外線又は可視光の透過率若しくは反射率変化を検出する電子デバイス、二酸化バナジウムナノワイヤによって構成される電極を具備する電子デバイス、及び、二酸化バナジウムナノワイヤが光触媒又はアルコール分解触媒として利用される触媒装置等の何れかとして構成されたナノワイヤデバイスに、好適に適用することができる。
【0091】
例えば、この電子デバイスは、温度検知センサ素子、加速度検知センサ素子、ガス検知センサ素子、電磁波検知センサ素子、光検知センサ素子、圧力検知センサ素子、電界効果トランジスタ素子、不揮発メモリ素子、光電変換素子、光スイッチング素子、熱線変調素子、光変調素子、スイッチング回路素子、光トランジスタ素子又は光メモリ素子等の何れかであり、上記電極は、電気二重層キャパシタ用電極、電気化学キャパシタ用電極、アルカリイオン2次電池用正極等の何れかである。
【0092】
<VO2ナノワイヤを用いたナノワイヤデバイスの基本構成>
図5は、本発明の実施の形態における、基板面に垂直方向に成長したVO2ナノワイヤを用いた三次元ナノワイヤデバイスの基本となる構成を説明する斜視図である。
【0093】
図5に示すように、三次元ナノワイヤデバイスの基本構成は、基板47に形成された電極46の面に構成され、基板面に対して垂直方向に成長したVO2ナノワイヤ2aを有している。基板47はSi基板、Ti基板等であり、この基板の表面に電極46として正方晶TiO2が形成されており、TiO2はこれに0.05%〜1%がNbをドープされ金属的性質を有したTiO2:Nbとされている。ナノワイヤデバイスが触媒装置のように電極を必要としない場合には、TiO2にNbをドープする必要はないので、基板47として正方晶TiO2を使用しこれにVO2ナノワイヤ2aを形成して、基板47を使用しない構成とすることもできる。
【0094】
次に、ナノワイヤデバイスの例として電界効果型トランジスタ(FET)について説明する。
【0095】
(電界効果型トランジスタ(FET))
図6は、本発明の実施の形態における、垂直配向VO2ナノワイヤを用いた電界効果型トランジスタ(FET)の製造工程の概要を説明する断面図である。図6では、図示を簡単とするために、電界効果型トランジスタ(FET)の一部のみを示している。
【0096】
図6に示すFETは、垂直方向に伸びるVO2ナノワイヤの一部がゲート電極で包囲された構造を有するゲート包囲型トランジスタである。
【0097】
図6(A)に示すように、TiO2基板70(Nbがドープされた基板でありドレイン電極として使用され、図5に示す電極46に相当する。)にVLS成長法によって垂直配向VO2ナノワイヤ74(チャネルとして使用される。)が形成され、VO2ナノワイヤ74の先端部には金属触媒72が存在している。
【0098】
次に、図6(B)に示すように、基板70に第1絶縁層76が基板70の前面を覆い、ナノワイヤ74の一部に接するように形成される。この第1絶縁層76は、基板70(ドレイン電極)を第1導電層80(ゲート電極)から電気的に分離するために形成される。次に、ナノワイヤ74全体を覆うように第2絶縁層78(ゲート絶縁膜)が形成され、更に、第1導電層80(ゲート電極)、保護絶縁層82がこの順に形成される。
【0099】
次に、図6(C)に示すように、保護絶縁層82よりも上方に突出する第2絶縁層78、第1導電層80がエッチングされ除去され、図6(D)に示すように、上方に露出する触媒72、ナノワイヤ74を覆うように第3絶縁層84が形成される。
【0100】
次に、図6(E)に示すように、図6(D)に示す構成に対して、触媒72が除去されナノワイヤ74の断面が露出するまで第3絶縁層84を研磨した後に、第2導電層86(ソース電極)を形成する。或いは、図6(F)に示すように、図6(D)に示す構成に対して、触媒72が露出するまで第3絶縁層84をエッチングして除去した後に、第2導電層86(ソース電極)を形成する。
【0101】
なお、複数のナノワイヤ74が並列チャネルとして使用されて1つのFETを構成してもよいし、上記ドレイン電極を複数列に形成し各列上にナノワイヤ74を形成し、上記ソース電極を複数行に形成し、所定の数のナノワイヤ74を単位として、行列をなすソース電極及びドレイン電極によって動作が制御される多チャンネルのFET構成とすることもできる。
【0102】
次に、ナノワイヤデバイスの他の例として電気化学(レドックス)キャパシタについて説明する。レドックスキャパシタは、擬似容量を利用して、電気二重層キャパシタの容量拡大をしたキャパシタであり、電気エネルギーの貯蔵と放出に、電極材料の酸化還元、電気二重層における充放電、電極表面でのイオンの脱吸着を利用するものである。
【0103】
(電気化学(レドックス)キャパシタ)
二酸化バナジウムは電気化学的な反応を伴うレドックスキャパシタの電極材に使用できる。一般的に二酸化バナジウム中のバナジウムイオンは、に電気化学的な電子授受によって、4価のV4+から3価のV3+や5価のV5+へと変化し、この電気化学反応をレドックスキャパシタに用いることで高容量化が達成できる。レドックスキャパシタには、表面積が大きい構造体が望ましいが、従来は、薄膜や接着材で固定化した粉末もしくはナノ粒子を用いた試みが一般的であった。ナノワイヤアレイの場合、高密度化による高表面積化が可能なだけでなく、集電体から直接的に単結晶形成しているため、集電体への集電性が高いという利点がある。
【0104】
図7は、本発明の実施の形態における、垂直方向に成長したVO2ナノワイヤを用いたレドックスキャパシタを説明する斜視図である。図7(A)は高密度垂直配向VO2ナノワイヤを用いたキャパシタ電極を示す斜視図であり、図7(B)はこのキャパシタ電極を用いたレドックスキャパシタを示す斜視図である。
【0105】
金属酸化物電極を使用する電気化学(レドックス)キャパシタは、電気二重層容量に加えて、金属種の酸化還元を伴うファラディック過程により電荷を蓄積できるので、活性炭を用いた電気二重層キャパシタよりも高出力を得ることができる。
【0106】
図6に示すように、金属酸化物として、集電体52上に形成された垂直配向VO2ナノワイヤ50aを、キャパシタ電極54a、54bとして使用する。集電体52は図5に示す電極46であり、キャパシタ電極54a、54bの間に電解質溶液が置かれ、電気化学(レドックス)キャパシタが構成される。
【0107】
以上説明したナノデバイスは、電極60又は基板に形成された垂直配向VO2ナノワイヤ50aを用いた図8(A)に示す垂直配向VO2ナノワイヤアレイを基本とするものであるが、図8(B)に示すような、電極60又は基板に形成された45°配向VO2ナノワイヤ50bを用いた45°配向VO2ナノワイヤアレイを基本とするナノデバイスとすることができることは言うまでもない。以下に説明するナノワイヤデバイスについても同様である。
【0108】
図8は、本発明の実施の形態における、VO2ナノワイヤを用いたセンサデバイスを説明する斜視図である。図8(A)は垂直配向VO2ナノワイヤアレイを示す斜視図であり、図8(B)は45°配向VO2ナノワイヤアレイを示す斜視図である。
【0109】
次に、ナノワイヤデバイスの他の例として触媒装置について説明する。
【0110】
(触媒装置)
VO2ナノワイヤは、光、電場、圧力によるエネルギー的不安定性によって相転移を起こす。二酸化バナジウムは、光によって容易に金属-絶縁体転移を起こすため、光に対する応答性は非常に大きい。この光誘起相転移の際、不安定化したエネルギーを、構造を変化させる相転移エネルギーに使うのではなく、化学反応に使うことによって光触媒反応を起こすことが可能である。更に、TiO2のような半導体光触媒性ナノ粒子をVO2ナノワイヤ上に付着することによってより高い触媒性を付与することができる。
【0111】
図9は、本発明の実施の形態における、VO2ナノワイヤを用いた触媒装置を説明する斜視図である。図9(A)はアルコール分解触媒装置を示す斜視図であり、図9(B)は光触媒装置を示す斜視図である。
【0112】
図9(A)に示すように、アルコール分解触媒装置は、アルコール分解の触媒作用を有する二酸化バナジウムを垂直配向VO2ナノワイヤ50aとして多数本、基板56に形成して、アルコール分解反応のための表面積が大きくされている。
【0113】
図9(B)に示すように、光触媒装置は、光触媒作用を有する二酸化バナジウムを垂直配向VO2ナノワイヤ50aとして多数本、基板56に形成して、更に、ナノワイヤ50aの表面に、光触媒作用を有する半導体光触媒性ナノ粒子TiO2が光触媒粒子58として付着され、より高い触媒性が付与されると共に、光触媒反応のための表面積が大きくされている。
【0114】
その他、図示しないが、VO2ナノワイヤを各種のナノワイヤデバイスに適用することが可能である。
【0115】
二酸化バナジウムは光(電磁波)や圧力によって金属-絶縁体相転移し、金属的な電気伝導体、絶縁体又は半導体的な電気伝導体の状態をとる。この電気伝導性変化を読み取ることによって光(電磁波)を検出(受信)することができる。従って、可視光に対して光センサとして、高周波電波に対してRFセンサとして、また、圧力による感圧センサ、縦横への揺れによるしなりを利用して角速度(ジャイロ)センサとして応用することができる。VO2ナノワイヤを光センサに適用するには、例えば、図6において説明した構成において、ゲート電極を設けない構成として、光がVO2ナノワイヤに達する経路に置かれる、絶縁層、導電層を透明材料で形成すればよい。
【0116】
次に、VO2ナノワイヤの形成に関する実施例について説明する。
【実施例】
【0117】
<金触媒(成長触媒)の形成>
VO2ナノワイヤを形成する基板として、正方晶系VO2と格子整合性の高いルチル型TiO2基板を用い、この基板面にドット触媒を形成するために約2nm厚の極薄金薄膜を真空蒸着法にて形成した。基板を約700℃に加熱することによって、極薄金薄膜が凝集し、約50nm〜100nmの金ドット触媒が形成された。
【0118】
<PLDによるVO2ナノワイヤの形成>
PLDによってVO2ナノワイヤを形成するための条件は、例えば、次の通りである。ターゲットとしてV25、V23、V24等のバナジウム酸化物、もしくはバナジウム金属単体を用いた圧粉焼成体ペレット(本実施例では、V25ペレットを使用。)を使用し、波長248nmのエキシマレーザを用い、繰り返し周波数を1Hz〜7Hzとし、基板温度を650℃、0.5Torr〜10Torrのアルゴン雰囲気下において、金触媒を使用してVO2ナノワイヤを成長させることできた。レーザをターゲットに照射して生じるフラグメントが金触媒に付着、溶融して金触媒への取り込み性が高まり、金触媒中でのマイグレーション性が高まるように、また、触媒が無い場所での自己成長が抑制されるように、VO2ナノワイヤの成長温度を650℃とした。このようにして形成された直後のVO2ナノワイヤは高温相の正方晶系の構造を有するが、基板温度を室温まで低下させた状態では低温相の単斜晶系の構造を有する。
【0119】
<VO2ナノワイヤの形成と温度、圧力の関係>
図10は、本発明の実施例における、VO2ナノワイヤの形成と温度、圧力の関係を説明する図である。図10において、横軸はVO2ナノワイヤの成長温度(℃)(基板の温度)を示し、縦軸はVO2ナノワイヤが形成した圧力(Pa)を示す。
【0120】
図10に示す斜線の領域は、VO2ナノワイヤが形成された領域を示しており、圧力が10Pa以上、1000Pa以下の領域であり、約730℃以上では圧力が1000Paを超えてもVO2ナノワイヤが形成されるがその成長速度は、レーザがターゲットに照射されて生じるフラグメントの平均自由工程が小さくなるため、圧力が1000Paである場合に比較して低下する。
【0121】
不純物を含まず、できるだけ純粋なVO2ナノワイヤを効率よく形成するためには、VO2ナノワイヤの成長を、約730℃以上の温度で、圧力が10Pa以上、1000Pa以下の領域で行うのが望ましい。
【0122】
次に、VO2ナノワイヤが成長する方向と基板面との関係について説明する。
【0123】
(TiO2(100)面へのVO2ナノワイヤの形成)
ルチル型TiO2(100)上に、先述と同じような金触媒を形成し、ターゲットとしてV25、V23、V24等のバナジウム酸化物、もしくはバナジウム金属単体を用いた圧粉焼成体ペレット(本実施例では、V25ペレットを使用。)を使用し、波長248nmのエキシマレーザを用い、繰り返し周波数を1Hz〜7Hzとし、基板温度を650℃、0.5Torr〜10Torrのアルゴン雰囲気下において、金触媒を使用してVO2ナノワイヤを成長させた。
【0124】
図11は、本発明の実施例における、TiO2(100)面に形成したVO2ナノワイヤのSEM像(基板を20°傾斜させて撮影した像。)を示す図である。
【0125】
図12は、本発明の実施例における、TiO2(100)面に形成したVO2ナノワイヤに関する、(a)SEM像(基板を20°傾斜させて撮影した像。)、(b)TEM像、(c)電子回折像を示す図である。
【0126】
図11、図12に示すように、ルチル型TiO2(100)面に対して45°方向に成長し、径、長さが略同じであり、先端部に金触媒3aを有するVO2ナノワイヤ2bが成長している。図11に示すVO2ナノワイヤ2bの代表的な寸法は、径150nm、長さ2.5μmである。また、形成されたナノワイヤは、TEM解析、ラマン分光の結果よりVO2構造であることが確認された。図12(b)に示すように、TEMによる解析の結果、金触媒を用いてVLS成長法によって形成されたVO2ナノワイヤは、[110]方向に沿って形成さていることがわかった。
【0127】
VO2ナノワイヤの[110]方向に沿う成長は、図11に示すSEM像において、TiO2(100)面上にVO2ナノワイヤが45°傾いてエピタキシャル成長している結果と合致する。これらの結果はこれまでに報告例のない[110]方向への配向成長を示している。従来の金属触媒を使用しない従来の方法では、VO2ナノワイヤは必ず[100]方向に成長していた。これは、前述のようにVO2の最安定構造に由来したものである。実際、後述する比較例で示すように、金触媒を使用しないVO2ナノワイヤの形成方法では、[100]方向に沿う成長であることは、従来の報告と同一であるので、[110]方向に沿うVO2ナノワイヤの成長は金触媒の影響と考えられる。
【0128】
次にTiO2(100)基板面と45°傾いた面が表面となるTiO2(110)基板を用いた実験を行った。
【0129】
(TiO2(110)面へのVO2ナノワイヤの形成)
ルチル型TiO2(100)上に、先述と同じような金触媒を形成し、ターゲットとしてV25、V23、V24等のバナジウム酸化物、もしくはバナジウム金属単体を用いた圧粉焼成体ペレット(本実施例では、V25ペレットを使用。)を使用し、波長248nmのエキシマレーザを用い、繰り返し周波数を1Hz〜7Hzとし、基板温度を650℃、0.5Torr〜10Torrのアルゴン雰囲気下において、金触媒を使用してVO2ナノワイヤを成長させた。
【0130】
図13は、本発明の実施例における、TiO2(110)面に形成したVO2ナノワイヤのSEM像(20°傾斜させて撮影した像。)を示す図である。図13(A)は金触媒により形成されたパターンの内部の領域におけるSEM像を示す図である。図13(B)は金触媒により形成されたパターンの境界領域におけるSEM像を示す図である。
【0131】
図13(A)に示すように、ルチル型TiO2(100)面に対して垂直方向に成長し、径、長さが略同じであり、先端部に金触媒3aを有するVO2ナノワイヤ2aが成長している。図13に示すVO2ナノワイヤ2aの代表的な寸法は、径50nm、長さ500nmである。
【0132】
また、図13(B)に示すように、金触媒によるパターンが形成された領域49aのみに、VO2ナノワイヤ2aが形成され、金触媒によるパターンが形成されていない領域49bには、VO2ナノワイヤ2aは全く形成されなかった。
【0133】
比較例として、金触媒を使用しないVO2ナノワイヤの形成を試みた。
【0134】
[比較例]
Si基板上に、ターゲットとしてV25ペレットを使用し、波長248nmのエキシマレーザを用い、繰り返し周波数を1Hz〜7Hzとし、基板温度を650℃、0.5Torr〜10Torrのアルゴン雰囲気下において、VO2ナノワイヤを成長させた(金触媒は使用しない。)。形成されたVO2ナノワイヤに関する結果は、次の通りである。
【0135】
図14は、本発明の比較例における、VO2ナノワイヤのSEM像を示す図である。
【0136】
図14に示すように、基板に平行にVO2ナノワイヤが形成されそれらの径、長さ、形成位置は規則性が全くなく、不揃いである。
【0137】
図15は、本発明の比較例における、VO2ナノワイヤのラマン分光スペクトルを示す図である。図15において、横軸はラマンシフト(cm-1)を示し、縦軸はラマン強度(任意単位)を示す。
【0138】
図15に示すように、ラマン分光スペクトルは、ナノワイヤが異相の存在しないVO2であることを示している。
【0139】
図16は、本発明の比較例における、VO2ナノワイヤのX線回折(XRD)パターンを示す図である。図16において、横軸は回折角2θ(度)を示し、縦軸は回折強度(cps)を示す。
【0140】
図16に示すXRDパターンは、正方晶系VO2の(011)、(012)、(022)の4つの回折ピークが確認され、これらの面は(100)面と直交する関係にあることから、形成されたナノワイヤが[100]方向に配向していることがわかる(図中の参考図を参照。)。
【0141】
このように、金触媒なしで形成されたVO2ナノワイヤは[100]方向に成長していることは、VO2の最安定面が{011}面であり、ナノワイヤの場合、ワイヤ側面が最安定面となりやすいためである。つまり、ナノワイヤ側面が{011}面で、ワイヤ成長方向が[100]方向であるものが最安定構造となる。従って、金触媒を使用せず自然成長したVO2ナノワイヤは[100]方向に成長することになる。
【0142】
実施例と比較例の比較から、明らかに、実施例では、形成された大多数のVO2ナノワイヤの軸方向は、基板面に対して90°又は45°の角度をなし、金触媒に対してボトムアップに形成され、ナノワイヤの径、長さ、形成位置は略同じであることが明らかである。
【0143】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明による二酸化バナジウムナノワイヤは、各種のナノワイヤデバイスに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0145】
1、4、10、47、56…基板、2…VO2ナノワイヤ、
2a…基板面に対して垂直方向に成長したVO2ナノワイヤ、
2b…基板面に対して45°方向に成長したVO2ナノワイヤ、3、72…触媒、
3a…金触媒、21…真空容器、22…透明窓、23…ターゲット支持台、
24…ターゲット、25…レーザ光、26…レンズ、27…基板支持台、
28…ガス導入管、29a…高密度プルーム、29b…低密度プルーム、
31…油回転ポンプ、32…ターボ分子ポンプ、33…ヒータ、34…クラスター、
49a…金触媒によるパターンが形成された領域、
49b…金触媒によるパターンが形成されていない領域、
50a、74…垂直配向VO2ナノワイヤ、50b…垂直配向VO2ナノワイヤ、
54a、54b…キャパシタ電極、58…光触媒粒子、60…電極、62…集電体、
70…TiO2基板、76…第1絶縁層、78…第2絶縁層、80…第1導電層、
82…保護絶縁層、84…第3絶縁層、86…第2導電層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0146】
【特許文献1】特開2007−225532号公報(段落0036〜0041、図1)
【特許文献2】特開2007−224390号公報(段落0026〜0039、段落0061〜0080、図1、図11〜図13)
【特許文献3】特表2006−526273号公報(段落0025〜0028、図3〜図5)
【特許文献4】特開2007−515055号公報(段落0007〜0022、図1、図2)
【特許文献5】特開2008−205140号公報(段落0023〜0035、段落0049〜0065、図1、図4、図6〜図9)
【特許文献6】特開2007−319988号公報(段落0003〜0004、段落0010〜0016、図4)
【特許文献7】特開2008−500719号公報(段落0037〜0067、図1a〜図3d)
【非特許文献】
【0147】
【非特許文献1】M. Luo et al.,“The effect stoichimetry of VO2 nano-grain ceramics on their thermal and electrical properties”, Materials Chemistry and Physics, 104, 258-260 (2007)(3. Results and discussion、図4)
【非特許文献2】H-T. Kim, et al.,“ Raman study of electric-field-induced first order metal-insulator transition in VO2-based ”, Applied Physics Letters, 86, 242101 (2005)(242101-1 右欄、242101-2 左欄、図1)
【非特許文献3】P. JIN and S. Tanemura,“ Formation and thermochromism of VO2 Films Deposited by RF Magnetron Sputtering at Low Substrate Temperature ”, Jpn. J. Appl. Phys. 33 (1994) pp.1478-1483(2. Experimental)
【非特許文献4】B. Guiton et al.,“ Single-Crystaline Vanadium Dioxide Nanowires with Rectangular Cross Sections ”, J.AM.CHEM.SOC., 2005, 127, 498-499(第498頁左欄第22行〜第499頁右欄第15行、図1、図2)
【非特許文献5】J. Sohn et al.,“ Direct Observation of the Structural Component of the Metal-Insulator Phase Transition and Groeth Habits of Epitaxially Grown VO2 Nanowires ”, Nano Lett., 7, No.6 (2007)1570-1574(第1571頁左欄第15行〜第1573頁左欄第45行、図1、図2、図3)
【非特許文献6】J. Maeng et al.,“ Fabrication, structural and electrical characterization of VO2 nanowires ”, Materials Research Bulletin, 43 (2008)1649-1656(2. Experimental, 3.1 Synthesis and structural characterization of VO2 nanowires, 3.2 Electrical characterization of VO2 nanowires)
【非特許文献7】J. H. Hafner et al., “ Catalytic growth of single-wall carbon nanotubes from metal particles ”, Chemical Physics Letters, 296 (1998)195-202(2. Experimental, 3.Results)
【非特許文献8】SW Kim and S. Fujita, “ ZnO nanowires with high aspect ratios grown by metalorganic chemical vapor deposition using gold nanoparticles ”, Applied Physics Letters, 86, 153119 (2005)(FIG.1, FIG.2)
【非特許文献9】D. Ito et al., “ Selective Growth of Vertical ZnO Nanowire Arrays Using Chemically Anchored Goled Nanoparticles ”, ACS Nano 2, 2001 (2008)(Fig.1, Fig.4, Fig.5)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[110]方向に沿って細長く成長された二酸化バナジウムナノワイヤ。
【請求項2】
径が2nm以上、1μm以下である、請求項1に記載の二酸化バナジウムナノワイヤ。
【請求項3】
遷移金属原子によって形成された成長触媒を基板に形成する第1工程と、
減圧下で、酸素ガス、不活性ガス、これらの混合ガスの何れかの雰囲気中において、
加熱された前記基板の面に二酸化バナジウムのナノワイヤを成長させる第2工程と
を有する、二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記ナノワイヤが[110]方向に沿って細長く成長される、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記基板の面は、二酸化バナジウムに対して10%以下の結晶格子不整合率を有する結晶面である、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項6】
前記ナノワイヤが前記基板の面に対して90°又は45°の方向に成長する、請求項5に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項7】
前記基板が正方晶系のTiO2であり、前記結晶面が(110)であるとき、前記ナノワイヤが前記基板の面に対して90°の方向に成長し、前記結晶面が(100)であるときに、前記ナノワイヤが前記基板の面に対して45°の方向に成長する、請求項6に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項8】
前記第2工程において、10Pa以上、1000Pa以下の減圧下で、前記ナノワイヤを成長させる、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項9】
前記第2工程において、前記基板が400℃以上、1200℃以下に加熱されている、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項10】
前記第2工程において、前記基板が730℃以上、1200℃以下に加熱され、10Pa以上、1000Pa以下の減圧下で、前記ナノワイヤを成長させる、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項11】
前記成長触媒がナノ粒子又はナノドットであり、前記遷移金属原子が、Au、Pt、Ag、Pd、Ru、Fe、Ni、Crの何れかである、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項12】
バナジウムを母体元素とする合金、酸化物、有機錯体化合物、金属バナジウムの少なくとも1つを使用し、前記ナノワイヤをレーザ蒸着法又は加熱蒸着法によって成長させる、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項13】
前記成長触媒の径を制御することにより、前記ナノワイヤの径を制御する、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項14】
前記成長触媒の径が、10nm以上、1μm以下の範囲である、請求項13に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項15】
前記第1工程において、前記成長触媒が、エッチング法、シャドーマスク蒸着、リフトオフ法の何れかによって、前記基板の所望の領域に形成される、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項16】
前記ナノワイヤの先端部の前記成長触媒を除去する第3工程を有する、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項17】
前記ナノワイヤが、3d遷移金属元素、希土類元素、Ta、Wの少なくとも1つを添加元素として含有する、請求項3に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項18】
前記添加元素を5%(原子分率)以下で含有する、請求項17に記載の二酸化バナジウムナノワイヤの製造方法。
【請求項19】
請求項1又は請求項2に記載の二酸化バナジウムナノワイヤを具備し、熱、電場、赤外線、可視光、電磁波、圧力又は振動による電気抵抗変化、或いは、赤外線又は可視光の透過率若しくは反射率変化を検出する電子デバイス、二酸化バナジウムナノワイヤによって構成される電極を具備する電子デバイス、及び、二酸化バナジウムナノワイヤが光触媒又はアルコール分解触媒として利用される触媒装置の何れかとして構成された、ナノワイヤデバイス。
【請求項20】
前記電子デバイスが、温度検知センサ素子、加速度検知センサ素子、ガス検知センサ素子、電磁波検知センサ素子、光検知センサ素子、圧力検知センサ素子、電界効果トランジスタ素子、不揮発メモリ素子、光電変換素子、光スイッチング素子、熱線変調素子、光変調素子、スイッチング回路素子、光トランジスタ素子又は光メモリ素子であり、前記電極が、電気二重層キャパシタ用電極、電気化学キャパシタ用電極、アルカリイオン2次電池用正極の何れかである、請求項19に記載のナノワイヤデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−1202(P2011−1202A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143007(P2009−143007)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】