説明

二酸化塩素ガスの徐放具

【課題】
二酸化塩素を含む液体の漏洩がなく、簡便に二酸化塩素ガスの発生を持続させることができる二酸化塩素ガスの徐放具を提供することである。
【解決手段】
二酸化塩素ガス放出用の開口部(1)を設けた硬直部材(2)と柔軟部材(3)とから構成される密閉容器(4)内に、
二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液を充填密封した袋であって、柔軟部材(3)を介して加えられる外圧により破袋できる水溶液袋(5)と、ゲル化剤(6)とを収納してなることを特徴とする二酸化塩素ガスの徐放具を用いる。二酸化塩素ガス放出用の開口部(1)をガス透過性フィルム(7)で塞ぎ、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液が漏洩しないように構成することが好ましい。水溶液袋(5)の破袋を助けるための破袋突起(8)を密閉容器(4)内に設けることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素ガスの徐放具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子化合物高吸水性樹脂と水と二酸化塩素含有水溶液と接着剤よりなる凝固状二酸化塩素発生組成物を少なくとも一部開口部を設けた容器に充填した凝固状二酸化塩素発生組成物包装体が知られている(特許文献1)。
また、使用直前に、純水二酸化塩素液剤(特許文献2)に添付顆粒(高吸水性樹脂)を投入しゲル化させてから使用するように構成された商品クレベリンゲル(販売元:大幸薬品株式会社、「クレベリン」は同社の登録商標である)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−040803号公報
【特許文献2】特許第3110724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された凝固状二酸化塩素発生組成物包装体では、二酸化塩素のもつ酸化作用により高吸水性樹脂が徐々に分解されるため、製品を製造してから使用するまでの間に凝固状から液状に変化し(液状化の程度は製品の保存状態等によって左右される)、容器から二酸化塩素を含む液体が漏洩するという問題がある。
一方、特許文献2の技術を利用した「クレベリンゲル」には、上記のような問題はないが、純水二酸化塩素液剤(二酸化塩素、亜塩素酸塩及びpH調整剤を含む液体)の入った容器の内蓋を外し、添付顆粒を投入する際、純水二酸化塩素液剤が飛び跳ねたり、こぼれたりする恐れがある他に、外蓋及び内蓋を外し、添付顆粒を投入し、外蓋を取り付けるついう煩わしさがあるという問題がある。
本発明の目的は、二酸化塩素を含む液体の漏洩がなく、簡便に二酸化塩素ガスの発生を持続させることができる二酸化塩素ガスの徐放具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の特徴は、二酸化塩素ガス放出用開口部(1)を設けた硬直部材(2)と柔軟部材(3)とから構成される密閉容器(4)内に、
二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液を充填密封した袋であって、柔軟部材(3)を介して加えられる外圧(押圧)により破袋できる水溶液袋(5)と、ゲル化剤(6)とを収納してなる点を要旨とする。
【0006】
本発明の二酸化塩素ガスの徐放具は、密閉容器(4)内に、水溶液袋(5)とゲル化剤(6)とを収納してなるものである。
【0007】
密閉容器(4)は、液体が密閉容器(4)の外に出たり、同容器の中に入ったりしないように密閉されていることが好ましい。
【0008】
密閉容器(4)には、二酸化塩素ガス放出用の開口部(1)を設けた硬直部材(2)と柔軟部材(2)とから構成される。
【0009】
硬直部材(2)は、硬直性のある部材であって、水溶液袋(5)とゲル化剤(6)とを収納し保持する容器としての働きの他に、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の保存中に、水溶液袋(5)が外圧(押圧)により破袋しないように保護する働きも有する。
【0010】
柔軟部材(3)は、柔軟性のある部材であって、外圧(押圧)を加えて水溶液袋(5)を破袋する際に、加えられた外圧(押圧)を水溶液袋(5)に伝達する部材である。
【0011】
硬直部材(2)及び柔軟部材(3)の素材は、二酸化塩素ガスに犯されにくい素材であって、成型の容易なものが好ましく、さらに好ましくは有機ポリマー(汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチックスを含む)、特に好ましくはポリアルキレン、ポリ(メタ)クリレート、ポリ塩化ビニル及びポリエチレンテレフタレート、最も好ましくはポリアルキレン(ポリプロピレン、ポリエチレン及びこれらの共重合体等)及びポリ塩化ビニルである。これらの素材の他に、有機ポリマーと金属(アルミニウム、ステンレス等)泊等とをラミネートした複合素材も好適に使用できる。硬直部材(2)及び柔軟部材(3)は、接合のしやすさ等の観点から、同じ素材又は類似の素材からなることが好ましい。
【0012】
硬直部材(2)と柔軟部材(3)とは、公知の方法で接合すればよく、接着剤で接合してもよいし、溶着(レーザービーム、熱板、振動又は超音波等を用いる溶着方法)により接合させてもよい。
【0013】
密閉容器(4)には、水溶液袋(5)の破袋を助けるための破袋突起(8)を設けることが好ましい。破袋突起(8)は、水溶液袋(5)に外圧(押圧)が加わった際、水溶液袋(5)に破袋突起(8)が突き刺さるように作用し、破袋を助けるものである。破袋突起(8)の形状は水溶液袋(5)の破袋を助けられれば制限はなく、ニードルやナイフをベースの保持した形状のもの(たとえば、二重画鋲)や、鋸刃形状のもの(たとえば、食品包装フィルムの切断刃を丸めたもの)等が使用できる。
【0014】
破袋突起(8)は、硬直部材(2)又は柔軟部材(3)のいずれに設けてもよく、また、水溶液袋(5)の内部に設けてもよい。また、破袋突起(8)は1個だけ設けてもよいし、複数個設けてもよい。
【0015】
密閉容器(4)には、柔軟部材(3)を覆うための保護材(10)を配設してもよい。保護材(10)は、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の保存中に、水溶液袋(5)が外圧(押圧)により破袋しないように保護する働きを有する。保護材(10)は、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具を収納するための収納容器(パッケージ)を兼ねてもよい。
【0016】
密閉容器(4)の形状には制限はなく、たとえば、立方体、直方体、紡錘体、球体又はこれらを組合わせた形状等のいずれでもよいが、安定に置くことができるようにするため、少なくとも水平部を有することが好ましい。これらの形状のうち、保管・運搬等の観点から、立方体、直方体が好ましい。
【0017】
密閉容器(4)には、部屋の壁や自動車の天井、動物(ヒトを含む)の首等に吊り下げられるようにするため、吊り下げ用フックや、吊り下げ紐の装着用穴等を設けることができる。また、密閉容器(4)には、部屋の壁や自動車の天井、ヒトの衣服等に貼り付けられるようにするため、粘着剤を塗布したり、両面粘着テープを貼り付けておくことができる。
【0018】
硬直部材(2)に設けられた開口部(1)は、二酸化塩素ガスを放出するためのものであって、二酸化塩素の放出量を決定する要因の一つとなる。また、所望する二酸化塩素の放出量によって、開口部の大きさや数等が決定される。開口部(1)は1つでもよいが、二酸化塩素を均等に放出するため、複数個の開口部を設けることが好ましい。
【0019】
開口部(1)は、硬直部材(1)に設けられるが、柔軟部材(3)にも設けてもよいし、硬直部材(2)に代えて柔軟部材(3)に設けてもよい。
【0020】
開口部(1)は、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液が漏洩しないように、ガス透過性フィルム(7)で塞ぐことが好ましい。ガス透過性フィルム(7)としては、不織布{たとえば、シンテックス(ポリプロピレン100%スパンボンド不織布、三井化学株式会社、「シンテックス」は同社の登録商標である。)、エルベス(二成分複合型スパンボンド不織布、PE−PET芯鞘構造、ユニチカ株式会社、「エルベス」は同社の登録商標である)、ダビルス(ダビルス株式会社、「ダビルス」は同社の登録商標である)}や気体透過性フィルム{モノトラン(株式会社ナック、「モノトラン」は有限会社中島工業の登録商標である)、選択気体透過性フィルム(日生化学株式会社)}が含まれる。
【0021】
ガス透過性フィルム(7)は、密閉容器(4)の内側から塞いでもよいし、密閉容器(4)の外側から塞いでもよい。また、ガス透過性フィルム(7)は、密閉容器(4)に接合(接着、溶着)することが好ましい。
【0022】
開口部(1)には、二酸化塩素ガスの放出量を調整(削減)するための調整弁(9)を設けることが好ましい。調整弁(9)で開口部(1)の面積を調整することにより放出量を調節(調整)できる。また、調整弁(9)で開口部(1)を塞ぐことにより、未使用時の二酸化塩素ガスの放出を抑えることができる。
【0023】
調整弁(9)は、開口部(1)からの二酸化塩素ガスの放出量を調整(削減)できれば、密閉容器(4)に設けてもよいし、保護材(10)を兼ねる収納容器(パッケージ)に設けてもよく、また、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具を収納・保持するための収納ホルダー等に設けてもよい。なお、収納ホルダーは、ズボンのベルトや自動車の車内フック等に吊り下げたり、室内の壁に貼り付けたりして、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具を収納・保持して、二酸化塩素ガスを徐放させるためのものであり、二酸化塩素ガスの放出がなくなっても、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具を取り替えることにより、繰り返し使用できるものである。
【0024】
調整弁(9)の大きさ等は、開口部(1)の配置や大きさに合わせて適宜決定できる。また、調整弁(9)は、スライド式、回転式、はめ込み式、貼り付け式等のいずれの方式でもよい。
【0025】
水溶液袋(5)は、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液を充填し密封し、破袋するまで内容物を保持するものである。そして、密閉容器(4)を構成する柔軟部材(3)に加えられた外圧(押圧)が、柔軟部材(3)を介して伝達され、この加えられる外圧(押圧)により水溶液袋(5)が破袋し、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液が密閉容器(4)内に充満する。
【0026】
水溶液袋(5)は、外圧(押圧)により容易に破袋できようにするため、気相(空気等)がないようにしておくことが好ましい。また、外圧(押圧)により、密封部分が剥がれやすいように接合してもよい。さらに、2枚のフィルムの端のすべてを外圧(押圧)で剥がれやすいように接合してもよい。接合は、公知の方法が適用でき、接着剤で接合してもよいし、溶着(レーザービーム、熱板、振動又は超音波等を用いる溶着方法)により接合させてもよい。
【0027】
水溶液袋(5)の素材は、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液を充填し密封し、破袋するまで内容物を保持できればよく、二酸化塩素ガスに犯されにくい素材が好ましく、さらに好ましくは有機ポリマー(汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチックスを含む)、特に好ましくはポリアルキレン、ポリ(メタ)クリレート、ポリ塩化ビニル及びポリエチレンテレフタレート、最も好ましくはポリアルキレン(ポリプロピレン、ポリエチレン及びこれらの共重合体等)である。これらの素材の他に、有機ポリマーとアルミニウム金属泊等とをラミネートした複合素材も使用できる。
【0028】
二酸化塩素水溶液としては、市場から入手できる水溶液でもよく、特許文献2に記載された純水二酸化塩素液剤等でもよく、二酸化塩素を含む水溶液が使用できる。二酸化塩素の沸点が11℃であるため、使用・保存の温度が10℃未満であれば二酸化塩素水溶液に代えて二酸化塩素そのものを使用してもよい。
【0029】
亜塩素酸塩水溶液としては、亜塩素酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の水溶液が含まれ、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム又は亜塩素酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。亜塩素酸塩は、有機酸又は無機酸と反応して二酸化塩素を発生する。
【0030】
水溶液袋(5)は、密閉容器(4)1個あたり、1個でもよいが、複数個(たとえば、2〜10個)収納してもよい。
水溶液袋(5)を複数個収納する場合、密閉容器(4)内を仕切って複数個の小部屋を設け、この小部屋に各水溶液袋(5)を収納し、ゲル化剤(6)も各小部屋に均等に分納することが好ましい。
【0031】
ゲル化剤(6)は、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液に触れることにより、これらの水溶液を吸収してゲルを形成するものである。ゲル化剤は、粉末状又は顆粒状であることが好ましい。ゲル化剤の重量平均粒子径(μm)は、40〜800程度が好ましく、さらに好ましくは100〜500である。粒子径が小さすぎると、ママコになりやすくゲルを形成することが困難となりやすく、一方、粒子径が大きすぎると、吸液速度(吸水速度)が低下しゲル化が著しく遅延する恐れがある。
【0032】
二酸化塩素水溶液と共に形成したゲルでは、二酸化塩素水溶液がゲルの三次元網目構造中に取り込まれるため、二酸化塩素は、ゲルの表面まで徐々に到達する。そして、ゲル表面に到達した二酸化塩素は開口部(1)を通過して徐放される。
【0033】
一方、亜塩素酸塩水溶液と共に形成したゲルでは、亜塩素酸塩水溶液がゲルの三次元網目構造中に取り込まれるため、亜塩素酸塩と有機酸又は無機酸とが反応自体がゆっくり進行し(拡散律速)、また、反応により発生した二酸化塩素は、ゲルの表面まで徐々に到達する。そして、ゲル表面に到達した二酸化塩素は開口部(1)を通過して徐放される。
【0034】
ゲル化剤(6)としては、水を吸収してゲルを形成するものであれば制限なく使用でき、たとえば、カルボキシメチルセルロース架橋体(米国特許第4650716号明細書、特開2004−010634号公報)、アルギン酸架橋体、澱粉架橋体(特開昭55−15634号公報)、ポリアミノ酸架橋体(特開平7−224163号公報、特開平7−309943号公報、特開平8−59820号公報、特開平8−504219号公報、特開平9−169840号公報)、ガラクトマンナン−金属イオン架橋体(特開平8−59891号公報、特公平3−66321号公報、特開昭56−97450号公報)、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト架橋共重合体(特公昭53−46199号公報、特公昭53−46200号公報)、水溶液重合による架橋ポリアクリル酸塩(特開昭55−133413号公報)、逆相懸濁重合により得られる架橋ポリアクリル酸塩(特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報、特開平11−5808号公報)、ビニルエステルと不飽和カルボン酸又はその誘導体との共重合体のケン化物(特開昭52−14689号公報、特開昭52−27455号公報)、アクリル酸塩とスルホネート基含有モノマーとの共重合体(特開昭58−2312号公報、特開昭61−36309号公報)、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体のケン化物(米国特許第4389513号)、デンプン−アクリロニトリル共重合体の加水分解物(特開昭46−43995号公報)、ポリアルキレングリコール架橋体(高分子ゲルの最新動向、シーエムシー出版、2004年発行)、ポリビニルアルコール架橋体(高分子ゲルの最新動向、シーエムシー出版、2004年発行)、デンプン放射線架橋体(特開2003−48997号公報)、カルボキシル基含有架橋セルロース(特開平9−85080号公報)、ポリアミノ酸放射線架橋体(特開平10−251402号公報)、架橋ポリアスパラギン酸(特開2002−179770号公報)、多糖類の多価金属イオン架橋体(特開2001−120992号公報)、架橋ポリアクリル酸塩(特開2003−052742号公報、特開2004−091673号公報、特開2005−075982号公報、特開2006−110545号公報、特開2007−069161)が含まれる。
【0035】
水溶液袋(5)に亜塩素酸塩水溶液を充填密封する場合、有機酸又は無機酸を密閉容器(4)内に収納するが、ゲル化剤(6)と混合して収納することが好ましい。また、この場合、ゲル化剤と無機粉末とを混合しておくことが好ましい。無機粉末を混合しておくと、亜塩素酸塩と有機酸又は無機酸との急激な反応を抑えることができる。
【0036】
有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、コハク酸、乳酸、フマル酸、ヒドロキシ酢酸、ベンゼンスルホン酸及びメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0037】
無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸等が挙げられる。
有機酸及び無機酸のうち、有機酸が好ましく、さらに好ましくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸及びヒドロキシ酢酸である。
【0038】
無機粉末としては、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、二酸化珪素、珪藻土、タルク及びゼオライトが含まれる。
【0039】
ゲル化剤の量は、使用するゲル化剤の種類等によって影響を受け、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液をゲル化できる量であればよく、たとえば、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液の重量に基づいて、1〜20重量%程度が好ましく、さらに好ましくは5〜10重量%である。
【0040】
水溶液袋(5)に亜塩素酸塩水溶液を充填密封する場合、有機酸又は無機酸の量は、使用する亜塩素酸塩や有機酸又は無機酸の種類等によって影響を受け、反応により二酸化塩素を発生できる量であればよく、たとえば、亜塩素酸塩水溶液中の亜塩素酸塩の重量に基づいて、1〜25重量%程度が好ましく、さらに好ましくは2〜15である。
【0041】
無機粉末を収納する場合、無機粉末の量は、二酸化塩素ガスの発生量により、適宜決定できるが、たとえば、亜塩素酸塩水溶液中の亜塩素酸塩の重量に基づいて、1〜10重量%程度である。
【発明の効果】
【0042】
本発明の二酸化塩素ガスの徐放具は、二酸化塩素を含む液体の漏洩がなく、簡便に二酸化塩素ガスの発生を持続させることができる。すなわち、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具では、製品を製造してから使用するまでの間、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液を漏洩することなく保存でき、使用を開始しても二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液がゲル化するので二酸化塩素を含む液体が漏洩するという問題がない。また、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具では、容器の内蓋及び外蓋を外し、二酸化塩素水溶液等に顆粒を投入してから、外蓋を閉めるという煩わしさがなく、簡便に二酸化塩素ガスの発生を持続させることができる。
【0043】
したがって、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具では、二酸化塩素を含む液体が漏洩したり、飛び跳ねたり、こぼれたりしないため、二酸化塩素の酸化作用や漂白作用による衣服や家具等の脱色や変色等が生じない。さらに、簡便に二酸化塩素ガスの発生を持続させることができるので、机や作業台等の上で操作することなく、歩きながらでも二酸化塩素ガスを徐放させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様について、各構成部材を組み立てる直前の状態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様について、模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様{スライド式の調整弁(9)を設けたもの}について、模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様{回転式の調整弁(9)を設けたもの}について、模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様{はめ込み式の調整弁(9)を設けたもの}について、模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様{スライド式調整弁(9)と保護材(10)の機能をもつパッケージを配設したもの}について、模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を用いて、本発明の書籍について、さらに詳細に説明する。なお特記しない限り、最初に説明した事項は、後ろの図面の説明においても共通して適用できる。
【0046】
<図1>
図1は、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様について、各構成部材を組み立てる直前の状態を模式的に示す斜視図である。
【0047】
図1に示した二酸化塩素ガスの徐放具は、二酸化塩素ガス放出用の開口部(1)を設けた硬直部材(2)、柔軟部材(3)、水溶液袋(5)、ゲル化剤(6)、ガス透過性フィルム(7)、破袋突起(8)及び両面粘着テープ(11)から構成される。
【0048】
密閉容器(4)内には、水溶液袋(5)、ゲル化剤(6)、ガス透過性フィルム(7)及び破袋突起(8)が収納される。ガス透過性フィルム(7)は、密閉容器(4)の内部に収納せずに、密閉容器(4)の外部に貼設してもよく、内部及び外部の両方に貼設してもよい。
【0049】
密閉容器(4)は、硬直部材(2)から構成されるトレイ体{鍔(ツバ)を有し、かつ一面が開放された直方体形状を有する皿}と、柔軟部材(3)から構成されるシート体とからなる。
【0050】
硬直部材(2)から構成されるトレイ体には、5個の二酸化塩素ガス放出用の開口部(1)が設けられている。そして、このトレイ体に、ガス透過性フィルム(7)を貼設し、ゲル化剤(6)を収納し、破袋突起(8)を設置してから、水溶液袋(5)を収納した後、柔軟部材(3)から構成されるシート体を重ね合わせ、接合する。最後に、シート体に両面粘着テープ(11)を貼り、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具が得られる。
【0051】
水溶液袋(5)には、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液が充填され密封されている。この水溶液袋の密封した端部は内側に折り曲げてトレイ体に収納してもよい。水溶液袋(5)に亜塩素酸塩水溶液を充填する場合は、ゲル化剤(6)に有機酸又は無機酸を混合しておくことが好ましい。
【0052】
柔軟部材(3)から構成されるシート体に外圧(押圧)を加えると、水溶液袋(5)が破袋し、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液が密閉容器(4)内に充満し、ゲル化剤(6)と接触することによりゲルが得られる。そして、開口部(1)から、二酸化塩素ガスが徐放される。
【0053】
<図2>
図2は、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様について、模式的に示す斜視図である。
【0054】
図2に示した二酸化塩素ガスの徐放具は、図1に示した各構成部材を組み立てて得た二酸化塩素ガスの徐放具を示すものである(上下反転して示してある。)。
【0055】
図2に示した二酸化塩素ガスの徐放具は、机の上や下駄箱内等に置いて使用してもよいし、両面粘着テープ(10)を用いて、任意の箇所に貼って使用してもよい。また、鍔(ツバ)の一端に吊り下げ用フックや吊り下げ紐の装着用穴等を設けることができる。吊り下げ用フックや吊り下げ紐の装着用穴等を用いて、部屋の壁や自動車の天井、動物(ヒトを含む)の首等に吊り下げて使用することができる。
【0056】
<図3>
図3は、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様{スライド式の調整弁(9)を設けたもの}について、模式的に示す斜視図である。
図3に示した二酸化塩素ガスの徐放具は、図2に示した二酸化塩素ガスの徐放具に、スライド式の調整弁(9)を設けたものである。
【0057】
硬直部材(2)から構成されるトレイ体に、スライド式の調整弁(9)を保持するための部材(スライダー)を設け、この部材(スライダー)にスライド式の調整弁(9)を挿入し、スライド式の調整弁(9)を直線移動(スライド)させて、二酸化塩素ガスの量を調節(調整)する。
【0058】
スライド式の調整弁(9)の孔と開口部(1)とは、大きさ、配置位置及び数が一致しているため、スライド式の調整弁(9)をスライドさせて、この孔と開口部(1)とを重ね合わせると、開口部(1)の大きさまで全開することとなり、一方、スライド式の調整弁(9)の孔と開口部(1)との重ね合わる部分をなくすと、開口部(1)は密閉される。したがって、この孔と開口部(1)との重なり具合をスライド調節(調整)して、二酸化塩素ガスの量を調節(調整)する。
【0059】
<図4>
図4は、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様{回転式の調整弁(9)を設けたもの}について、模式的に示す斜視図である。
図4に示した二酸化塩素ガスの徐放具は、図2に示した二酸化塩素ガスの徐放具に、回転式の調整弁(9)を設けたものである。
【0060】
硬直部材(2)から構成されるトレイ体に、回転式の調整弁(9)の中心の孔に挿入できる突起を設け、この突起を回転式の調整弁(9)の中心の孔に挿入して(挿入方向を点線で示している)、回転式の調整弁(9)を回転させて、二酸化塩素ガスの量を調節(調整)する。
【0061】
回転式の調整弁(9)の孔と開口部(1)とは、大きさ、配置位置及び数が一致しているため、回転式の調整弁(9)の孔と開口部(1)とを重ね合わせると、開口部(1)の大きさまで全開することとなり、一方、回転式の調整弁(9)の孔と開口部(1)との重ね合わる部分をなくすと、開口部(1)は密閉される。したがって、この孔と開口部(1)との重なり具合を調節(調整)して、二酸化塩素ガスの量を調節(調整)する。
【0062】
<図5>
図5は、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様{はめ込み式の調整弁(9)を設けたもの}について、模式的に示す斜視図である。
図5に示した二酸化塩素ガスの徐放具は、図2に示した二酸化塩素ガスの徐放具に、はめ込み式の調整弁(9)を設けたものである{調整弁(9)の一部だけはめ込んだ状態を示している。}。
【0063】
硬直部材(2)から構成されるトレイ体に設けた開口部(1)に、はめ込み式の調整弁(9)の一部又は全部を嵌め込んで、二酸化塩素ガスの量を調節(調整)する。
【0064】
はめ込み式の調整弁(9)の突起と開口部(1)とは、大きさ、配置位置及び数が対応しているため、はめ込み式の調整弁(9)の突起をすべての開口部(1)に嵌め込むと、開口部(1)はすべて密閉される。一方、はめ込み式の調整弁(9)を開口部(1)に嵌め込まないと、開口部(1)は全開される。したがって、開口部(1)に嵌め込む調整弁の突起の数を調節(調整)して、二酸化塩素ガスの量を調節(調整)する。
【0065】
<図6>
図6は、本発明の二酸化塩素ガスの徐放具の一態様{スライド式調整弁(9)と保護材(10)の機能をもつパッケージを配設したもの}について、模式的に示す斜視図である。
図6に示した二酸化塩素ガスの徐放具は、図2に示した二酸化塩素ガスの徐放具に、スライド式調整弁(9)と保護材(10)の機能をもつパッケージを配設したものである。
【0066】
図6に示した二酸化塩素ガスの徐放具は、スライド式の調整弁(9)の孔と開口部(1)との重ね合わないようにして、保護材(10)(パッケージ)を配設して、運搬・保管する。
【0067】
使用時に、保護材(10)(パッケージ)を外してから{図6のうち上の図;保護材(10)を矢印方向へスライドさせてから}、柔軟部材(3)から構成されるシート体に外圧(押圧)を加え、水溶液袋(5)を破袋させ、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液を密閉容器(4)内に充満させ、ゲル化剤(6)との接触によりゲル化させる。ついで、保護材(10)(パッケージ)の上下を反転させて、再度、密閉容器(4)に配設する{図6のうち下の図;保護材(10)を矢印方向へスライドさせて配設する。}。
【0068】
パッケージに設けたスライド式の調整弁(9)の孔と開口部(1)とは、大きさ、配置位置及び数が一致しているため、スライド式の調整弁(9)(パッケージ)をスライドさせて、この孔と開口部(1)とを重ね合わせると、開口部(1)の大きさまで全開することとなり、一方、スライド式の調整弁(9)の孔と開口部(1)との重ね合わる部分をなくすと、開口部(1)は密閉される。したがって、この孔と開口部(1)との重なり具合をスライド調節(調整)して、二酸化塩素ガスの量を調節(調整)する。
【0069】
図1〜6で示した二酸化塩素ガスの徐放具は、直方体状であるが、適宜、円柱体や円錐体、紡錘体等の任意の形状とすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 開口部
2 硬直部材
3 柔軟部材
4 密閉容器
5 水溶液袋
6 ゲル化剤
7 ガス透過性フィルム
8 破袋突起
9 調整弁
10 保護材
11 両面粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素ガス放出用の開口部(1)を設けた硬直部材(2)と柔軟部材(3)とから構成される密閉容器(4)内に、
二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液を充填密封した袋であって、柔軟部材(3)を介して加えられる外圧により破袋できる水溶液袋(5)と、ゲル化剤(6)とを収納してなることを特徴とする二酸化塩素ガスの徐放具。
【請求項2】
水溶液袋(5)に亜塩素酸塩水溶液が充填され、ゲル化剤(6)が有機酸又は無機酸を含有してなる請求項1に記載の二酸化塩素ガスの徐放具。
【請求項3】
さらにゲル化剤(6)が無機粉末を含有してなる請求項2に記載の二酸化塩素ガスの徐放具。
【請求項4】
二酸化塩素ガス放出用の開口部(1)をガス透過性フィルム(7)で塞ぎ、二酸化塩素水溶液又は亜塩素酸塩水溶液が漏洩しないように構成した請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化塩素ガスの徐放具。
【請求項5】
水溶液袋(5)の破袋を助けるための破袋突起(8)を密閉容器(4)内に設けた請求項1〜4のいずれかに記載の二酸化塩素ガスの徐放具。
【請求項6】
二酸化塩素ガスの放出量を調整するための調整弁(9)を開口部(1)に設けた請求項1〜5のいずれかに記載の二酸化塩素ガスの徐放具。
【請求項7】
柔軟部材(2)を覆うための保護材(10)を配設してなる請求項1〜6のいずれかに記載の二酸化塩素ガスの徐放具。
【請求項8】
収納する水溶液袋(5)の数が密閉容器(4)1個あたり2〜10個である請求項1〜7のいずれかに記載の二酸化塩素ガスの徐放具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−11028(P2012−11028A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150928(P2010−150928)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(510183246)
【Fターム(参考)】