説明

二酸化炭素ガス分離システム

【課題】分離膜を水蒸気が透過するのを抑えつつ二酸化炭素ガスを効果的に透過させる二酸化炭素ガス分離システムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素ガス分離システム1は、二酸化炭素ガスを含むガス体Gを温度が50℃以上100℃以下であって相対湿度が50%以上100%未満となるように調節する温度湿度調節装置10と、温度湿度調節装置で温度および相対湿度が調節されたガス体を、アミン化合物を有する分離膜20の一方の面23a側の気圧を分離膜の他方の面21a側の気圧より高くした状態で、一方の面に供給するガス供給部30と、ガス体のうち分離膜を透過した透過ガス体Gから水蒸気を分離して分離膜の他方の面側に供給する加湿部40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜を用いて二酸化炭素ガスを分離する二酸化炭素ガス分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分離膜を用いた二酸化炭素ガス分離システム(以下、「分離システム」とも称する。)がめざましく発展してきている。
この分離システムの一つとして、たとえば、特許文献1に記載された炭酸ガスの分離装置が知られている。この分離装置は、化石燃料などを燃焼させて生じた燃焼排ガスから水を分離する除湿部と、水を分離された燃焼排ガスから二酸化炭素ガスを分離するCO分離部とを備えている。
除湿部には、HOの選択分離膜が設けられている。選択分離膜を挟んで燃焼排ガス側の圧力を高くすることで、選択分離膜から透過ガス((HO))が除去される。水を分離された燃焼排ガスはCO分離部に導かれる。CO分離部には、COの選択分離膜が設けられている。選択分離膜を挟んで燃焼排ガス側の圧力を高くすることで、選択分離膜から透過ガス((CO))が除去される。
【0003】
このように、従来の分離膜を用いた分離装置では、COの選択分離膜が水分に対して弱いので、分離膜でCOを分離する前に水分を除去することが行われている。
このような従来の分離膜には、一般的に分子の大きさ程度の孔が多数形成されていて、いわゆる分子篩を構成している。このため、小さい分子ほど分離膜により分離されやすくなり、大きさがほぼ等しい分子が複数種類ある場合には分離ガスの純度が低くなったり、大きさが小さくない分子を選択して分離することができないという問題がある。
【0004】
これに対して、たとえば、特許文献2に記載された高分子膜(分離膜)は、二酸化炭素ガスだけを化学反応で選択的に透過させて分離するため、分離ガスの純度を高くできる特徴がある。その一方で、相対湿度が80%前後とかなり高く、かつ、60℃前後という比較的高い温度で二酸化炭素ガスの分離性能が高まるという特異な性質がある。このため、この高分子膜を用いた分離システムにおいては、原料ガス(ガス体)中の相対湿度と温度とを安定的に維持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−66107号公報
【特許文献2】特開平2010−149026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された高分子膜は二酸化炭素ガスだけでなく水蒸気も透過するため、高分子膜の上流の工程において原料ガス中の相対湿度が高くなるように制御しても、高分子膜と原料ガスが接触すると原料ガス中の相対湿度が低下し、高分子膜が二酸化炭素ガスを透過しにくくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、分離膜を水蒸気が透過するのを抑えつつ二酸化炭素ガスを効果的に透過させる二酸化炭素ガス分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の二酸化炭素ガス分離システムは、二酸化炭素ガスを含むガス体を温度が50℃以上100℃以下であって相対湿度が50%以上100%未満となるように調節する温度湿度調節装置と、前記温度湿度調節装置で温度および相対湿度が調節された前記ガス体を、アミン化合物を有する分離膜の一方の面側の気圧を前記分離膜の他方の面側の気圧より高くした状態で、前記一方の面に供給するガス供給部と、前記ガス体のうち前記分離膜を透過した透過ガス体から水蒸気を分離して前記分離膜の他方の面側に供給する加湿部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、アミン化合物を有する分離膜は、ガス体から二酸化炭素ガスを透過により分離するときは、ガス体の温度が50℃以上100℃以下であって相対湿度が50%以上100%未満となるように調節されているときに、二酸化炭素ガスを効果的に透過できるようになる。
しかし、この分離膜は水蒸気も透過してしまうため、温度湿度調節装置で相対湿度を50%以上100%未満に調節しても、分離膜とガス体が接触し始めると水蒸気が分離膜を素早く透過することで、相対湿度が例えば50%未満に低下して分離膜が二酸化炭素ガスを透過する効率が低下する恐れがある。
本二酸化炭素ガス分離システムは加湿部を備えているため、分離膜の他方の面側の相対湿度が高められる。
【0010】
また、上記の二酸化炭素ガス分離システムにおいて、前記分離膜の他方の面側に供給する前記水蒸気の流量を調節する流量調節部を備えることがより好ましい。
また、上記の二酸化炭素ガス分離システムにおいて、前記分離膜の他方の面側に供給する前記水蒸気の温度を調節する温度調節部を備えることがより好ましい。
【0011】
また、上記の二酸化炭素ガス分離システムにおいて、前記透過ガス体を前記分離膜の前記他方の面に沿って供給する供給配管を備えることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明において、請求項1に記載の二酸化炭素ガス分離システムによれば、水蒸気が一方の面側から他方の面側に移動しにくくなり、水蒸気が分離膜を透過するのを抑えることができる。また、一方の面側では、相対湿度が50%以上100%未満から低下しにくくなるため、分離膜により二酸化炭素ガスを効果的に透過することができる。
請求項2に記載の二酸化炭素ガス分離システムによれば、分離膜の一方の面側におけるガス体の相対湿度が50%以上100%未満となるようにより確実に調節することができ、分離膜をより効果的に機能させることができる。
【0013】
請求項3に記載の二酸化炭素ガス分離システムによれば、分離膜の一方の面側におけるガス体の温度が50℃以上100℃以下となるようにより確実に調節することができ、分離膜をより効果的に機能させることができる。
請求項4に記載の二酸化炭素ガス分離システムによれば、分離膜の他方の面側のガスの流量を増加させ、分離膜により二酸化炭素ガスをさらに効果的に透過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の二酸化炭素ガス分離システムのブロック図である。
【図2】同二酸化炭素ガス分離システムの分離膜にガス体を透過させたときの、ガス体の温度に対する透過速度および選択性の関係を示す図である。
【図3】同二酸化炭素ガス分離システムの分離膜にガス体を透過させたときの、ガス体の相対湿度に対する選択性の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る分離システムの一実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。本分離システムは、分離膜を用いて二酸化炭素ガスを含むガス体から二酸化炭素ガスを分離する装置である。分離システムは、たとえば石炭ガス化プラントや天然ガス採掘プラントなどで二酸化炭素ガスを分離するために用いることができる。このような場合には、ガス体は、二酸化炭素ガス以外に、水蒸気、水素ガス、メタンガスなどを含む。
図1に示すように、本実施形態の分離システム1は、ガス体Gの前処理を行う前処理装置6と、ガス体Gの温度および相対湿度を調節する第一の温度湿度調節装置(温度湿度調節装置)10と、ガス体Gを分離膜20の表面(一方の面)23aに供給するガス供給部30と、ガス体Gのうち分離膜20を透過した透過ガス体Gを処理する加湿部40とを備えている。
【0016】
前処理装置6は、ガス体Gから硫化ガスなどの不要成分を除去するためのものである。
第一の温度湿度調節装置10としては、例えば、温度調節部として熱媒体回路を有し、湿度調節部として噴霧ユニットを有する公知の構成のものを用いることができる。ただし、第一の温度湿度調節装置10の構成はこれに限定されるものではなく、ガス体Gの温度と相対湿度とを調節できるものであれば適宜選択して用いることができる。
なお、この例では、第一の温度湿度調節装置10は、分離膜20を後述するように効果的に機能させるために、ガス体Gの温度が50℃以上100℃以下であって、ガス体Gの相対湿度が50%以上100%未満となるように調節している。
【0017】
分離膜20は、支持膜21上に機能膜22を形成し、機能膜22上に保護膜23を形成した構成となっている。本実施形態では、分離膜20は平らなシート状に形成されているが、中空糸状に形成することも可能である。
支持膜21は、分離膜20の両面で生じる圧力差を支えるためのもので、保護膜23は、機能膜22に及ぼす物理的または化学的な損傷から機能膜22を保護するためのものである。
機能膜22は、アミン化合物を有する高分子膜で、化学反応で二酸化炭素ガスを選択的に透過させる機能がある。
この機能膜22としては、
式(1)
M(OR)n (1)
(式中、Mは三価以上の金属原子を示し、nは3〜6の整数を示し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHRで示される基(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NRで示される基(式中、RおよびRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHRで示される基(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NRで示される基(式中、RおよびRは、独立に、同一または異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)で示される架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に、式(2)
【化1】

(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、pは0又は1の整数を示す。)で示される基、式(3)
【化2】

(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、qは0又は1の整数を示す。)で示される基、式(4)
【化3】

(式中、AおよびAは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、r及びsは0又は1の整数を示す。)
で示される基、または式(5)
【化4】

(式中、A及びAは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、tは0又は1の整数を示す。)で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなる高分子膜、を好適に用いることができる。
しかし、機能膜としてはこれに限ることなく、アミン化合物を有する高分子膜であれば、将来開発されるものも含めて用いることができる。
【0018】
ガス供給部30は、略箱状に形成され分離膜20の保護膜23側を覆う供給部本体31と、第一の温度湿度調節装置10と供給部本体31とを接続する接続配管32とを有している。供給部本体31の内面と保護膜23の表面23aとの間には、ガス体Gを流す第一の空間S1が形成される。
なお、本実施形態では、供給部本体31は、加湿部40の後述する加湿部本体41とともに箱状の収容ケース61を構成する。すなわち、分離膜20は収容ケース61の内面に取り付けられた状態になっている。
接続配管32は、供給部本体31における保護膜23の表面23aに沿った一方側D1に接続されている。第一の温度湿度調節装置10から接続配管32により搬送されたガス体Gは、第一の空間S1内で表面23aに沿って供給される。これにより、分離膜20の表面23a側の気圧が、分離膜20における表面23aとは反対側の面となる表面(他方の面)21a側の気圧より高くなる。
供給部本体31の他方側D2には、搬送配管63の一端が接続され、搬送配管63の他端は脱湿装置64に接続されている。
脱湿装置64では、膜分離法や冷却凝縮法などによりガス体G中の水蒸気が分離、回収される。なお、脱湿装置64は、分離されたガスの用途によっては必要でないこともある。
【0019】
加湿部40は、分離膜20の支持膜21側を覆う前述の加湿部本体41と、加湿部本体41の他方側D2に接続された搬送配管42と、搬送配管42における加湿部本体41とは反対側の端部に接続された脱湿装置43と、一端が脱湿装置43に接続され他端が加湿部本体41の一方側D1に接続された戻り配管44と、戻り配管44上に設けられた第二の温度湿度調節装置(温度調節部)45および流量調節弁(流量調節部)46とを備えている。
【0020】
加湿部本体41の内面と支持膜21の表面21aとの間には、透過ガス体Gを流す第二の空間S2が形成される。透過ガス体Gは、二酸化炭素ガスを主成分として水蒸気を含むガスである。
搬送配管42には、搬送配管42により搬送される透過ガス体Gの露点を測定する露点計49が設けられている。搬送配管42における露点計49が設けられた部分より脱湿装置43側と第二の温度湿度調節装置45とは、供給配管50により直接接続されている。
脱湿装置43は、脱湿装置64と同一の構成となっている。
戻り配管44により搬送された水蒸気などは、第二の空間S2内で表面21aに沿って供給される。
第二の温度湿度調節装置45は、第一の温度湿度調節装置10と同様に構成されている。第二の温度湿度調節装置45内では、戻り配管44に供給配管50が接続されている。すなわち、戻り配管44と供給配管50との接続部分より加湿部本体41の一方側D1では、供給配管50は戻り配管44と一体になっている。
第二の温度湿度調節装置45は、戻り配管44により搬送される水蒸気、および供給配管50により搬送される二酸化炭素ガスおよび水蒸気を、所定の温度および相対湿度に調節することができる。
流量調節弁46は、戻り配管44により搬送される水蒸気や二酸化炭素ガスなどの流量を調節する。
【0021】
ここで、収容ケース61の内面に取り付けられた分離膜20の表面23aに、表面23aに沿って、水素ガスと二酸化炭素ガスから成る所定の圧力のガス体Gを供給し、分離膜20の第一の空間S1側の気圧を第二の空間S2側の気圧より高くして測定した結果について説明する。
図2に、ガス体Gの温度に対する透過速度および選択性の関係を示す。
なお、ここで言う選択性とは、透過ガスにおける水素ガスに対する二酸化炭素ガスの選択性であり、値が大きい方が、分離膜20を透過する水素ガスの物質量に比べて分離膜20を透過する二酸化炭素ガスの物質量が増加していることを意味する。
図2において、実線は二酸化炭素ガスの透過速度、点線は水素ガスの透過速度、一点鎖線は選択性をそれぞれ示している。
ガス体Gの温度が50℃以上のときに選択性の値が大きくなっていることが分かる。なお、機能膜22は高分子膜であるため、温度が80℃を超えると分子構造が壊れやすくなり、さらに100℃を超えると急激に分子構造の分解が進むので好ましくない。
【0022】
図3に、ガス体Gの相対湿度に対する選択性の関係を示す。
相対湿度が80%のときに選択性が最も大きくなることが分かる。なお、相対湿度が100%になると、分離膜20に水滴が付着して分離膜20が使用できなくなるため好ましくない。
アミン化合物において、相対湿度が50%以上100%未満という比較的高いときに選択性が大きくなるのは、水分子が膜中に多く存在する方が、アミン化合物と二酸化炭素ガスが反応してカーボネートやカルバネートなどを生じやすくなるためと考えられる。
このように、ガス体Gの相対湿度は50%以上100%未満が好ましく、さらに、図3から明らかなように、60%以上100%未満がより好ましい。
以上のように、ガス体Gの温度と相対湿度とをそれぞれ調節することで、分離膜20が効果的に機能して二酸化炭素ガスを透過しやすくなる。
【0023】
次に、以上のように構成された分離システム1の動作について説明する。以下では、アミン化合物が二酸化炭素ガスと効果的に化学反応して選択性が大きくなるように、温度湿度調節装置10、45において、温度が60℃、相対湿度が80%にそれぞれ調節される場合で説明する。
【0024】
石炭ガス化プラントなどから供給されたガス体Gは、まず、前処理装置6で硫化ガスなどの不要成分を除去され、第一の温度湿度調節装置10に供給される。
第一の温度湿度調節装置10において温度が60℃、相対湿度が80%に調節されたガス体Gは、接続配管32を介して供給部本体31に搬送され、第一の空間S1の一方側D1から他方側D2に向けて流れる。
ガス体Gの温度が60℃、相対湿度が80%に調節されているため、分離膜20のアミン化合物が効果的に機能するようになり、二酸化炭素ガスが第一の空間S1側から第二の空間S2側に透過する。このとき、一定量の水蒸気も第一の空間S1側から第二の空間S2側に透過し、第一の空間S1側の相対湿度が低下する。
分離膜20を透過せずに第一の空間S1に残ったガス体Gは、搬送配管63を通して脱湿装置64に搬送され、水素ガスおよびメタンガスなどと、水蒸気とに分離される。
【0025】
一方で、分離膜20を透過した二酸化炭素ガスおよび水蒸気を含む透過ガス体Gは、搬送配管42より搬送される間に露点計49により露点が測定される。
搬送配管42で搬送される透過ガス体Gの一部は、搬送配管42を通して脱湿装置43に搬送され、二酸化炭素ガスと水蒸気とに分離される。分離された二酸化炭素ガスは、大気に放散されるか、地球温暖化対策として圧力を高めて地中に戻すなどの処置がされる。脱湿装置43で分離された水蒸気は、戻り配管44により第二の温度湿度調節装置45に搬送される。
搬送配管42で搬送される透過ガス体Gの残りの部分は、供給配管50により第二の温度湿度調節装置45に直接搬送される。
第二の温度湿度調節装置45では、主に二酸化炭素ガスおよび水蒸気からなる混合ガス(スイープガス)を、温度が60℃になるように調節する。
混合ガスは、流量調節弁46により流量を調節された状態で戻り配管44により加湿部本体41に搬送され、第二の空間S2の一方側D1から他方側D2に向けて流れる。
このように、第一の空間S1でのガス体Gの流れと、第二の空間S2での混合ガスの流れは、互いに向きが等しい平行流となっている。
【0026】
第二の空間S2内を温度が60℃でかつ高い相対湿度に調節された混合ガスが流れることで、分離膜20は表面21a側から加熱および加湿され、第一の空間S1を流れるガス体Gの温度が60℃から低下しにくくなるとともに、ガス体Gの相対湿度が80%から低下しにくくなる。
このように、分離膜20がさらに効果的に二酸化炭素ガスを透過するようになる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の分離システム1によれば、加湿部40を備えているため、分離膜40の表面21a側の相対湿度が高められる。これにより、水蒸気が表面23a側から表面21a側に移動しにくくなり、水蒸気が分離膜20を透過するのを抑えることができる。また、表面23a側では、相対湿度が80%から低下しにくくなるため、分離膜20により二酸化炭素ガスを効果的に透過することができる。
また、分離システム1をこのように構成することで、分離システム1の外部から供給する水蒸気や水の量を低減したり、外部から水蒸気や水を供給する必要を無くしたりすることができる。
【0028】
分離システム1は流量調節弁46を備えるため、分離膜20の表面21a側におけるガス体Gの相対湿度が高くなるように正確に調節することができ、分離膜20をより効果的に機能させることができる。
分離システム1は第二の温度湿度調節装置45を備えるため、分離膜20の表面21a側におけるガス体の温度がより確実に60℃となるように調節することができ、分離膜20をより効果的に機能させることができる。
【0029】
また、分離システム1は供給配管50を備えるため、分離膜20の表面21a側のガスの流量を増加させ、分離膜20により二酸化炭素ガスをさらに効果的に透過させることができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。
たとえば、前記実施形態では、第二の温度湿度調節装置45に代えて温度調節装置(温度調節部)を備えてもよい。戻り配管44により第二の空間S2に水蒸気が供給されるため、第二の空間S2内の相対湿度を高めることができるからである。水蒸気の温度は、この温度調節装置で調節すればよい。
前記実施形態では、第二の温度湿度調節装置45において、主に二酸化炭素ガスおよび水蒸気からなる混合ガスを、温度が60℃、相対湿度が80%になるように調節した。しかし、混合ガスは、第二の空間S2の他方側D2における相対湿度より高くなるように調節されていればよい。このようにすることでも、第二の空間S2内の相対湿度が高くなり、分離膜20を効果的に機能させることができる。
【0031】
前記実施形態では、度湿度調節装置10、45において、ガス体Gおよび混合ガスの温度が60℃、相対湿度が80%にそれぞれ調節された。しかし、これら温度および相対湿度は、分離膜が有するアミン化合物の特性に応じて変化するものであり、この限りではない。
前記実施形態では、分離膜20を筒状に形成してもよい。この場合、分離膜20の内周面側からガス体Gを供給して分離膜20の外周面側に二酸化炭素ガスを透過させてもよいし、分離膜20の外周面側からガス体Gを供給して分離膜20の内周面側に二酸化炭素ガスを透過させてもよい。
【0032】
前記実施形態では、第二の温度湿度調節装置45および流量調節弁46は備えられなくてもよい。分離システム1に戻り配管44を備えるだけで、水蒸気を分離膜20の表面21a側に供給することができるからである。
また、前記実施形態では、分離膜20における二酸化炭素ガスの透過速度が充分大きい場合などには、供給配管50は備えられなくてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 分離システム(二酸化炭素ガス分離システム)
10 第一の温度湿度調節装置(温度湿度調節装置)
20 分離膜
21a 表面(他方の面)
23a 表面(一方の面)
30 ガス供給部
40 加湿部
45 第二の温度湿度調節装置(温度調節部)
46 流量調節弁(流量調節部)
50 供給配管
ガス体
透過ガス体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素ガスを含むガス体を温度が50℃以上100℃以下であって相対湿度が50%以上100%未満となるように調節する温度湿度調節装置と、
前記温度湿度調節装置で温度および相対湿度が調節された前記ガス体を、アミン化合物を有する分離膜の一方の面側の気圧を前記分離膜の他方の面側の気圧より高くした状態で、前記一方の面に供給するガス供給部と、
前記ガス体のうち前記分離膜を透過した透過ガス体から水蒸気を分離して前記分離膜の他方の面側に供給する加湿部と、
を備えることを特徴とする二酸化炭素ガス分離システム。
【請求項2】
前記分離膜の他方の面側に供給する前記水蒸気の流量を調節する流量調節部を備えることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素ガス分離システム。
【請求項3】
前記分離膜の他方の面側に供給する前記水蒸気の温度を調節する温度調節部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の二酸化炭素ガス分離システム。
【請求項4】
前記透過ガス体を前記分離膜の前記他方の面に沿って供給する供給配管を備えることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素ガス分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−205971(P2012−205971A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71371(P2011−71371)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】