説明

二酸化炭素分離膜形成用組成物、二酸化炭素分離膜及びその製造方法、並びに二酸化炭素分離装置

【課題】ガス分離特性に優れた二酸化炭素分離膜を高い生産性で製造することができる二酸化炭素分離膜形成用組成物、優れたガス分離特性を有する二酸化炭素分離膜及びその製造方法、並びに二酸化炭素分離装置を提供する。
【解決手段】吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜形成用組成物。好ましくは、前記組成物の入った容器の周囲を0℃氷水で冷却しながらJIS Z8803に準じてB型粘度計を用いて測定したときの前記組成物の粘度が、冷却開始後、700秒以内に1000cp以上になる二酸化炭素分離膜形成用組成物。好ましくは、ロールトゥロールで帯状の支持体12を搬送しながら上記組成物を塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を冷却してゲル膜とした後、ゲル膜を乾燥させて乾燥膜とし、乾燥膜を架橋して二酸化炭素分離膜52を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離膜形成用組成物、二酸化炭素分離膜及びその製造方法、並びに二酸化炭素分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、混合ガス中の二酸化炭素を選択的に分離する技術の開発が進んでいる。例えば、地球温暖化対策として排ガス中の二酸化炭素を回収して濃縮する技術や、水蒸気改質により炭化水素を水素と一酸化炭素(CO)に改質し、さらに一酸化炭素と水蒸気を反応させて二酸化炭素と水素を生成させ、二酸化炭素を選択的に透過する膜によって二酸化炭素を排除することで水素を主成分とする燃料電池用等のガスを得る技術が開発されている。
一方、二酸化炭素の分離はアミン類による吸着および放散を繰り返すアミン吸収法が一般的で広く用いられてきている。しかしながらこの方法は広大な設備設置面積を必要とする上に吸着/放散時に昇圧/降圧、および降温/昇温を繰り返す必要があり、多大なエネルギーを必要とする欠点を有している。またシステムの能力は設計時に決定してしまい、一旦作られたシステムの能力の拡縮は容易でない。これに対して、膜分離法は分離膜で区画された2つの領域の二酸化炭素分圧により自然に分離を行うものでエネルギー消費が少なく、かつ設置面積がコンパクトな利点を有する。またシステムの能力の拡縮もフィルターユニットの増減で対応出来るためにスケーラビリティーに優れたシステムが可能であり、近年注目を浴びている。
二酸化炭素分離膜は大別すると、膜中に二酸化炭素キャリアを含有し、このキャリアによって二酸化炭素が膜の反対側に輸送される、いわゆる促進輸送膜と、膜に対する二酸化炭素と分離対象物質の溶解性、および膜中の拡散性の差を利用して分離を行ういわゆる溶解拡散膜に大別される。溶解拡散膜は、膜への二酸化炭素および分離対象物質の溶解度と拡散速度に基づいて分離を行う為、膜の材質および物性が決まればその分離度合いは一義的に決定され、また膜厚が薄いほど透過速度が大きくなるため、一般的に層分離法、界面重合法などを用いて1μm以下の薄膜として製造される。
これに対して促進輸送膜は二酸化炭素キャリアを膜中に添加することで二酸化炭素の溶解度を飛躍的に増大し高濃度環境で輸送を行うため、一般的に溶解拡散膜に比べ分離対象物質との分離度が高く、また二酸化炭素の透過速度が速い特徴を有する。また膜中の二酸化炭素濃度が高濃度であることから、膜中の二酸化炭素の拡散が律速になることは希であり、むしろ分離対象物質との分離度合いを上げる意味からは10μm以上の厚膜とする方が好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1では、未架橋のビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体水溶液を、二酸化炭素透過性支持体上へ膜状に塗布した後、加熱し、架橋させて水不溶化し、この水不溶化物に、二酸化炭素キャリア(二酸化炭素と親和性を有する物質)を含む水溶液を吸収させてゲル化することにより二酸化炭素分離ゲル膜を製造することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体ゲル膜に炭酸セシウム若しくは重炭酸セシウム若しくは水酸化セシウムからなる添加剤を添加したゲル層を親水性の多孔膜に担持させてCO促進輸送膜を形成し、所定の主成分ガスに少なくとも二酸化炭素と水蒸気が含まれる原料ガスをCO促進輸送膜の原料側面に100℃以上の供給温度で供給して、CO促進輸送膜を透過した二酸化炭素を透過側面から取り出す二酸化炭素分離装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−102310号公報
【特許文献2】特開2009−195900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先述の特許文献1、2に示されるような膜は、塗布乾燥後の膜厚を10μm以上とする必要があることから溶剤を含んだ溶液状態の塗膜厚みは20〜3000μmになってしまう。この様な厚膜の塗膜は乾燥に時間が掛かるだけでなく、乾燥中の塗膜の偏り(膜厚の不均一化)、液だれ、ハジキ、膜飛散、柚子肌、相分離など様々な問題を発生させる事が解った。特に連続塗布を行う場合、乾燥時間が長くなることから支持体を水平に保ちながら乾燥する為に直線状に乾燥ゾーンを配置して乾燥することは不可能で、支持体を蛇行させながら、あるいは弦巻方式で乾燥させる必要があり、この様な乾燥形態では先述の問題は特に大きくなり、連続塗布は殆ど不可能になってしまう。
本発明者はこの問題の解決に鋭意努力した結果、塗布液を塗布後に増粘させ流動性を低減させることで、先述の様々な問題を解決出来ることを見いだし、様々なゲル化法を検討した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、ガス分離特性に優れた二酸化炭素分離膜を高い生産性、および低コストで製造することができる二酸化炭素分離膜形成用組成物、優れたガス分離特性を有する二酸化炭素分離膜及びその製造方法、並びに二酸化炭素分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
<1> 吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<2> 吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜形成用組成物であって、前記組成物が入った容器の周囲を0℃氷水で冷却しながらJIS Z8803に準じてB型粘度計を用いて測定したときの前記組成物の粘度が、冷却開始後、700秒以内に1000cp以上になる二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<3> 前記多糖類が寒天である<1>または<2>に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<4> 前記多糖類の含有量が前記組成物に対して10質量%以下である<1>〜<3>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<5> 前記多糖類の含有量が前記組成物に対して0.3〜5質量%である<1>〜<4>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<6> 前記吸水性ポリマーがポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体である<1>〜<5>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<7> 前記二酸化炭素キャリアがアルカリ金属炭酸塩である<1>〜<6>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<8> 前記二酸化炭素キャリアがセシウム、ルビジウム、及びカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む化合物である<1>〜<7>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<9> さらにアミノ酸を含む<1>〜<8>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<10> 前記アミノ酸が、LogP値が−2.5以下である<9>に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<11> 前記アミノ酸が、グリシン及びセリンからなる群から選ばれる少なくとも1つである<9>又は<10>に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
<12> 吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜形成用組成物を準備する組成物準備工程と、
前記組成物を支持体上に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で得られた塗布膜を冷却してゲル膜を得る冷却工程と、
前記ゲル膜を乾燥させて乾燥膜とする乾燥工程と、
前記乾燥膜を架橋させて二酸化炭素分離膜を得る架橋工程と、
を有する二酸化炭素分離膜の製造方法。
<13> 前記二酸化炭素分離膜形成用組成物として、<1>〜<11>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物を用いる<12>に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
<14> 前記支持体の面積が30cm以上である<12>又は<13>に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
<15> 帯状の前記支持体を送り出しロールから送り出し、該支持体を搬送しながら前記塗布工程と、前記冷却工程と、前記乾燥工程とを順次行い、前記架橋工程の前又は後に前記乾燥膜又は前記二酸化炭素分離膜を巻取りロールに巻き取る<12>〜<14>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
<16> 前記塗布工程から前記乾燥工程まで、前記支持体を1m/min以上の搬送速度で搬送する<15>に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
<17> 前記ゲル膜を10μm以上の厚さに形成する<12>〜<16>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
<18> 前記冷却工程を湿球温度35℃以下で行う<12>〜<17>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
<19> 吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜。
<20> 前記二酸化炭素キャリアが、セシウム、ルビジウム、及びカリウムからからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む化合物を含有する<19>に記載の二酸化炭素分離膜。
<21> さらにアミノ酸を含む<19>又は<20>に記載の二酸化炭素分離膜。
<22> 前記アミノ酸が、グリシン及びセリンからなる群から選ばれる少なくとも1つである<21>に記載の二酸化炭素分離膜。
<23> 前記二酸化炭素キャリアとして、セシウムを含む化合物を二酸化炭素分離膜に対して50質量%以上含有する<20>〜<22>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜。
<24> 前記二酸化炭素キャリアとして、カリウムを含む化合物を二酸化炭素分離膜に対して15質量%以上含有する<20>〜<22>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜。
<25> <19>〜<24>のいずれかに記載の二酸化炭素分離膜を備えた二酸化炭素分離装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガス分離特性に優れた二酸化炭素分離膜を高い生産性で製造することができる二酸化炭素分離膜形成用組成物、優れたガス分離特性を有する二酸化炭素分離膜及びその製造方法、並びに二酸化炭素分離装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る二酸化炭素分離膜の製造方法で用いる装置の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る二酸化炭素分離膜を有する二酸化炭素分離膜形成用複合体の構成例を示す概略図である。
【図3】二酸化炭素分離膜形成用組成物の粘度を測定する方法を示す概略図である。
【図4】UP−37を用いたときの寒天濃度と粘度変化の関係を示すグラフである。
【図5】UM−11Sを用いたときの寒天濃度と粘度変化の関係を示すグラフである。
【図6】ZY−6を用いたときの寒天濃度と粘度変化の関係を示すグラフである。
【図7】Agarose Hを用いたときの寒天濃度と粘度変化の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について添付の図面を参照しがら具体的に説明する。
二酸化炭素分離膜形成用の組成物は、実験室レベルでの塗布はなされていたが、比較的面積が大きい支持体に塗布することは行われておらず、特にロールトゥロール(Roll−to−Roll、「RtoR」と略記する場合がある。)での検討は行われていなかった。本発明者は、二酸化炭素分離膜を高効率(高速および低コスト)で生産するためには、帯状の支持体(基材フィルムなどのウエブ)を用いたRoll−to−Roll方式が適していると考えた。二酸化炭素分離膜をRoll−to−Roll塗布で製造する場合、膜の分離特性確保の為に、膜厚は最低でも10μmは必要で、この固形分を溶媒に溶解した状態で塗布した場合、その塗布直後(未乾燥)の塗布膜厚みは20〜3000μmになる。この様な厚膜を一般的な塗布液組成で塗布、乾燥させると、乾燥工程で塗布膜のハジキ、飛び、膜厚のバラツキ、液だれなどを発生し、膜厚のバラツキから分離、透過性能のバラツキを発生し、工業製品としての性能を保証することができないことがわかった。本発明者は鋭意研究の結果、塗布の直後に溶液の粘度を上昇させ、流動性を低下させることで、膜のハジキ、飛散、液だれ、膜厚不均一化を抑制し、欠陥の少ない、均一性の高い分離膜が得られることを見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち、塗布直後に塗布膜を冷却することによりゲル化(本発明では「ゲル化」は高粘度化を意味しており、必ずしも流動性を全く失う状態を表現するものではない)させ、その後に通常の乾燥を行うことで、良好な分離膜を製造することが出来る。
【0011】
そこで本発明者は、組成物中で塩析せず、組成物を支持体に塗布した後、即座にゲル化し、かつ、乾燥風速に耐えうるゲル化性を付与できる方法について研究を重ねた結果、吸水性ポリマーと二酸化炭素キャリアのほか、ゲル化剤として多糖類を添加した組成物を支持体に塗布して塗布膜を形成すれば、その後、即座にゲル化することができ、これに乾燥用の風を当てても乾燥前のゲル膜が飛ばされず、膜厚均一性に優れ、ガス分離特性に優れた二酸化炭素分離膜を得ることができることを見出した。従って、このような組成物を用いれば、ガス分離特性に優れた二酸化炭素分離膜をRoll−to−Rollによって高い生産性で製造することができる。
【0012】
<二酸化炭素分離膜の製造方法>
本発明に係る二酸化炭素分離膜の製造方法は、吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含有する二酸化炭素分離膜形成用組成物(以下、単に「組成物」又は「塗布液」と記す場合がある。)を準備する組成物準備工程と、前記組成物を支持体上に塗布する塗布工程と、前記塗布工程で得られた塗布膜を冷却してゲル膜を得る冷却工程と、前記ゲル膜を乾燥させて乾燥膜とする乾燥工程と、前記乾燥膜を架橋させて二酸化炭素分離膜を得る架橋工程と、を有する。
【0013】
図1は、本発明に係る二酸化炭素分離膜の製造工程で用いる装置構成の一例を概略的に示している。この装置100は、帯状の支持体12を送り出す送り出しロール10と、支持体12上に組成物を塗布するコーター20と、塗布した組成物をゲル化させる冷却部30と、ゲル膜を乾燥させる乾燥部40、得られた二酸化炭素分離膜52を巻き取る巻取りロール50と、を備えている。また、各部20,30,40,50に支持体12を搬送するための搬送ロール62,64,66,68が配置されている。
【0014】
このような構成を有する装置100を用いることで、Roll−to−Roll、すなわち、送り出しロール10から支持体12を送り出し、該支持体12を搬送しながら塗布工程、冷却工程、乾燥工程、を順次行い、得られた二酸化炭素分離膜52を巻取りロール50に巻き取ることができ、さらに架橋工程を行うことで優れたガス分離特性を有する二酸化炭素分離膜52を連続的に効率良く製造することができる。なお、架橋工程は、乾燥工程後に得られた膜を巻取りロール50に巻き取る前に行ってもよいし、巻き取った後に行ってもよい。
【0015】
図2は、本発明の二酸化炭素分離膜形成用組成物を用いて製造される二酸化炭素分離膜14と支持体12とを備えた二酸化炭素分離用複合体の構成の一例を概略的に示している。この二酸化炭素分離用複合体52では、二酸化炭素を透過する筒状の支持体12の外周面に二酸化炭素分離膜14が形成されている。このような二酸化炭素分離膜14を備えた装置において、二酸化炭素を含む混合ガスを複合体52の内側又は外側に供給するとともに、混合ガスを供給する側の圧力が透過側の圧力よりも小さくなるように内側と外側で圧力差を設けることで、混合ガス中の二酸化炭素が、支持体12と二酸化炭素分離膜14を通過してガス分離することができる。
以下、本発明に係る二酸化炭素分離膜形成用組成物及びに二酸化炭素分離膜の製造工程ついて具体的に説明する。
【0016】
−組成物準備工程−
まず、吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含有する二酸化炭素分離膜形成用組成物を準備する。本発明に係る二酸化炭素分離膜形成用組成物の準備工程では、吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、良好なセット性(ゲル化性)を付与する多糖類とが、それぞれ適量水に添加される。
【0017】
(吸水性ポリマー)
本発明の組成物に含まれる吸水性ポリマーはバインダーとして機能するものであり、二酸化炭素分離膜として使用するときに水分を保持して二酸化炭素キャリアによる二酸化炭素の分離機能を発揮させる。吸水性ポリマーは、水に溶けて塗布液を形成することができるとともに、二酸化炭素分離膜が高い吸水性(保湿性)を有する観点から、吸水性が高いものが好ましく、生理食塩液の吸水量が0.5g/g以上の吸水性を有することが好ましく、さらには1g/g以上の吸水性を有することがより好ましく、さらには5g/g以上の吸水性を有することが好ましく、さらには10g/g以上の吸水性を有することが特に好ましく、さらには20g/g以上の吸水性を有することが最も好ましい。
【0018】
本発明の組成物に含まれる吸水性ポリマーとしては、従来公知の親水性高分子を用いることができるが、吸水性、製膜性、強度などの観点から、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸類、ポリエチレンオキサイド類、水溶性セルロース類、デンプン類、アルギン酸類、キチン類、ポリスルホン酸類、ポリヒドロキシメタクリレート類、ポリビニルピロリドン類、ポリNビニルアセトアミド類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレンイミン類、ポリアリルアミン類、ポリビニルアミン類などが好ましく、またこれらの共重合体も好ましく用いることができる。
特にポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体が好ましい。ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体は、吸水能が高い上に、高吸水時においてもハイドロゲルの強度が大きい。ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体におけるポリアクリル酸塩の含有率は、例えば1〜95モル%、好ましくは2〜70モル%、より好ましくは3〜60モル%、特に好ましくは5〜50モル%である。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩や有機アンモニウム塩等が挙げられる。
市販されているポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩)として、例えば、スミカゲルL−5H(住友化学工業社製)、クラストマーAP20(クラレ社製)が挙げられる。
また吸水性ポリマーは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0019】
組成物(塗布液)中の吸水性ポリマーの含有量としては、その種類にもよるが、バインダーとして膜を形成し、二酸化炭素分離膜が水分を十分保持できるようにする観点から、0.5〜50質量%であることが好ましく、さらには1〜30質量%であることがより好ましく、さらには2〜15質量%であることが特に好ましい。
【0020】
(二酸化炭素キャリア)
本発明の組成物に含まれる二酸化炭素キャリアは、二酸化炭素と親和性を有し、かつ水溶性を示すものであればよく、公知のものを用いることができる。この場合の二酸化炭素キャリアは、二酸化炭素と親和性を有する物質であり、塩基性を示す各種の水溶性の無機及び有機物質が用いられる。例えば、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属重炭酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属重炭酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物を含む水溶液にアルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子を添加した水溶液、アンモニア、アンモニウム塩、各種直鎖状、および環状のアミン、アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。またこれら水溶性誘導体も好ましく用いることが出来る。
分離膜中に長期間保持できるキャリアが有用であるから、アミノ酸やベタインなどの蒸発しづらいアミン含有化合物が特に好ましい。
【0021】
アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムを挙げられる。
アルカリ金属重炭酸塩としては、例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムを挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウムなどが挙げられる。
これらの中でもアルカリ金属炭酸塩が好ましく、溶解度の高いセシウム、ルビジウム、カリウムを含む化合物が好ましい。
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等の水溶性を有する各種のものを挙げることができる。二酸化炭素キャリアは、前記したものに限られるものではなく、二酸化炭素と親和性を有し、かつ水溶性を示すものであればよく、有機酸のアルカリ金属塩等各種のものを用いることができる。
アルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子としては、従来公知のもの、例えば:12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−12−クラウン−4、ジベンゾ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−12−クラウン−4、ジシクロヘキシル−15−クラウン−5、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、n−オクチル−12−クラウン−4、n−オクチル−15−クラウン−5、n−オクチル−18−クラウン−6等の環状ポリエーテル;クリプタンド〔2.1〕、クリプタンド〔2.2〕等の環状ポリエーテルアミン;クリプタンド〔2.2.1〕、クリプタンド〔2.2.2〕、等の双環式ポリエーテルアミンの他、ポルフィリン、フタロシアニン、ポリエチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸等を用いることができる。
【0022】
アミノ酸としてはグリシン、アラニン、セリン、プロリン、ヒスチジン、システイン、タウリン、ジアミノプロピオン酸、ホスホセリン、サルコシン、ジメチルグリシン、βアラニン、2−アミノイソ酪酸など天然、非天然に限らず用いることができ、またいくつかのアミノ酸が連なったペプチドでもよい。なお、疎水性のアミノ酸の場合、親水性のゲル膜と相分離を起こして二酸化炭素以外のガスの透過度も上昇するが、親水性のアミノ酸は溶解度が高く、吸水性ポリマー及び多糖類との親和性も高いので特に好ましい。具体的には、アミノ酸の親疎水性を示す指標であるLogP値(P:オクタノール−水系への分配係数)が、−1.5以下であることが好ましく、−2.0以下がより好ましく、−2.5以下が特に好ましい。LogP値が−2.5以下のアミノ酸としては、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、セリン、トレオニン、グリシン、アラニン、ジアミノプロピオン酸、タウリン等が挙げられる。
なお、アミノ酸のLogP値は、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もられる。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.− Chim.Theor.,19,71(1984).)などがあるが、ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合には、本発明では、Crippen’s fragmentation法により判断する。
具体的に好ましいアミノ酸は、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、セリン、トレオニン、グリシン、アラニン、ジアミノプロピオン酸、タウリンであり、より好ましくはグリシン、セリン、アラニン、ジアミノプロピオン酸、タウリンであり、特に好ましくはグリシン、セリンである。
アミノ酸の添加量は、多いほうが二酸化炭素の透過速度が上昇するため好ましいが、添加しすぎるとゲル膜が脆くなり二酸化炭素以外のガスの透過度も上昇する観点から、ゲル膜に対して3質量%以上90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上60質量%以下、特に好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
【0023】
また、二酸化炭素キャリアは2種以上を混合して使用してもかまわない。
特にアルカリ金属炭酸塩とアミノ酸を併用することは二酸化炭素透過速度、分離係数の向上の点から好ましい。特に炭酸セシウム、炭酸ルビジウム、及び炭酸カリウムの1種以上に親水性のアミノ酸を添加することが好ましく、特にグリシン及び/又はセリンを用いることが好ましい。二酸化炭素キャリアとして、アルカリ金属炭酸塩のほかにアミノ酸が添加されることで、アミノ酸による二酸化炭素の吸収、放散の経路も形成され、二酸化炭素の透過が促進されると考えられる。
【0024】
二酸化炭素キャリアとして好ましいベタインとしては、カルニチン、トリメチルグリシンが挙げられ、特にトリメチルグリシンが好ましい。
【0025】
組成物(塗布液)中の二酸化炭素キャリアの含有量としては、その種類にもよるが、塗布前の塩析を防ぐとともに、二酸化炭素の分離機能を確実に発揮させるため、0.3〜30質量%であることが好ましく、さらに0.5〜25質量%であることがより好ましく、さらに1〜20質量%であることが特に好ましい。
【0026】
(多糖類)
本発明の組成物に含まれる多糖類としては、吸水性ポリマーと二酸化炭素キャリアを含む水溶液に多糖類を加えた組成物を支持体上に塗布して形成した塗布膜を冷却することにより、膜厚均一性が高いゲル膜(セット膜)を形成することができるものを使用する。
具体的には、吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類と、水とを含む組成物(塗布液)を調製し、図3に示すようにステンレス製の容器70(内径4cm、高さ12cm)内に静かに注いで粘度計円筒(ローター)が十分塗布液に浸るようにする。そして、塗布液76(100g、出発温度:60℃)を入れた容器の周囲を0℃氷水72(内径10cm、高さ12cmの500mlディスポーザブルカップを使用、氷水の水位はステンレス円筒に対して約11cm)で冷却しながらB型粘度計74(テックジャム社製、BL2 1〜100,000mPa・s / KN3312481)を動作させ、30秒ごとに値を読み取り、JIS Z8803に準じて組成物(塗布液)の粘度を測定する。このとき、冷却開始後、2000秒以内に組成物(塗布液)の粘度が1000cp以上になる多糖類を含むことが好ましく、さらには冷却開始後1000秒以内に組成物(塗布液)の粘度が1000cp以上になることがより好ましく、さらには冷却開始後700秒以内に組成物(塗布液)の粘度が1000cp以上になることが最も好ましい。なお、図3において78は氷を表す。
ただし、調製した塗布液が必要以上に高粘度になってしまうと塗布し難くなり、膜厚均一性が低下するおそれがある。そのため、上記方法によって塗布液の粘度を測定したときに、冷却開始直後は300cp以下であることが好ましく、さらに好ましくは200cp以下であることがより好ましく、さらには150cp以下であることが最も好ましい。
【0027】
このような多糖類としては、デンプン類、セルロース類、アガロース、キサンタンガム、グアーガム、グルコマンナン、カードラン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、デキストラン、ローカストビーンガム、アルギン酸類、ヒアルロン酸類などを用いることができるが、製膜性、入手容易性、コスト、膜強度などの点から寒天が好ましく、市販品として、伊那寒天UP−37、UM−11S、SY−8、ZY−4、ZY−6(以上、伊那食品工業社製)、Agarose H、Agarose S(以上、ニッポンジーン社製)などが挙げられる。多糖類は単独で用いても複数を混合して用いても良い。これらの多糖類の中には混合することでゲル化能の上がるものが知られており、ゲル化速度やゲル化能力、ゲル化温度の調整のために混合して用いることが出来る。
また本発明で用いるゲル化剤は吸水性ポリマーを兼ねることも出来る。この場合の使用量は吸水性ポリマーの使用量、含率に準ずる。
【0028】
組成物(塗布液)中の多糖類の含有量としては、その種類にもよるが、多糖類の含有量が多過ぎると塗布液が短時間で高粘度となって塗布し難くなる場合があり、塗布欠陥が発生する可能性がある。また、膜厚均一性の低下を抑制する観点から、10質量%以下が好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、さらには0.3〜5質量%であることが最も好ましい。
【0029】
(架橋剤)
吸水性ポリマーの架橋は熱架橋、紫外線架橋、電子線架橋、放射線架橋など従来公知の手法が実施することができる。本発明の組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。特に、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体と反応し熱架橋し得る官能基を2以上有する架橋剤を含むことが好ましく、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン等が挙げられる。
ここで、上記多価グリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピル、オキシエチエンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソビトール等が挙げられる。
また、上記多価イソシアネートとしては、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記多価アジリジンとしては、例えば、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス〔3−(1−アシリジニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等が挙げられる。
また、上記ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリン、α−メチルクロルヒドリン等が挙げられる。
また、上記多価アルデヒドとしては、例えば、グルタルアルデヒド、グリオキサール等が挙げられる。
また、上記多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
上記架橋剤のうち、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体の熱架橋剤とし
てはグルタルアルデヒドが特に好ましい。
【0030】
(その他の成分)
本発明の組成物は、製膜性(塗布性、セット性)やガス分離特性に悪影響しない範囲で、吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア、及び多糖類以外の、1以上の他の成分(添加剤)を含むことができる。
他の成分の例としては、前記架橋剤のほか、例えば、界面活性剤、触媒、保湿(吸水)剤、補助溶剤、膜強度調整剤、欠陥検出剤が挙げられる。
【0031】
組成物の調製は、前記した吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア、及び多糖類、さらに必要に応じて他の添加剤を、それぞれ適量で水(常温水又は加温水)に添加して十分攪拌して行い、必要に応じて攪拌しながら加熱することで溶解を促進させる。なお、吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア、及び多糖類を別々に水に添加してもよいし、予め混ぜ合わせたものを添加してもよい。例えば、多糖類を水に加えて溶解させた後、これに吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリアを徐々に加えて攪拌することで吸水性ポリマーや多糖類の析出(塩析)を効果的に防ぐことができる。
【0032】
−塗布工程−
二酸化炭素分離膜形成用組成物を準備した後、送り出しロール10から帯状の支持体12を送り出して、塗布部20に搬送し、上記組成物(塗布液)を支持体12上に塗布して塗布膜を設ける。
【0033】
塗布工程における塗布液の温度が低下すると、多糖類による凝固作用によって粘度が上昇したり、吸水性ポリマーが析出(塩析)して支持体への塗布が困難となったり、膜厚のバラツキが大きくなるおそれがある。そのため、本発明の組成物を調製した後、塗布するまでの間はゲル化や塩析が生じないように保温することが好ましい。塗布工程における組成物の温度は、組成や濃度に応じてゲル化や塩析が生じないように決めればよいが、温度が高すぎると組成物から水が多量に蒸発して組成濃度が変化したり、局所的にゲル化が進行する恐れがあるので、40〜95℃程度が好ましく、さらには45〜90℃がより好ましく、さらには50〜85℃が最も好ましい。
【0034】
支持体12は、二酸化炭素分離膜14を支持するものであり、二酸化炭素透過性を有し、本発明に係る二酸化炭素分離膜形成用組成物(塗布液)を塗布して二酸化炭素分離膜14を形成することができ、さらにこの膜を支持することができるものであれば特に限定されない。
支持体12の材質としては、紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙、合成紙、さらに、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォンアラミド、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミックスなどが好適に使用できる。より具体的にはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニルサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの樹脂材料が好適に使用できる。これら中でもポリオレフィンおよびそのフッ化物が、経時安定性の観点から特に好ましく使用できる。
支持体12の形態としては織布、不織布、多孔質膜等を採用することができる。一般的には自己支持性が高く、空隙率が高い支持体が好適に使用できる。ポリスルフォン、セルロースのメンブレンフィルター膜、ポリアミド、ポリイミドの界面重合薄膜、ポリテトラフルオロエチレン、高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜は空隙率が高く、二酸化炭素の拡散阻害が小さく、強度、製造適性などの観点から好ましい。この中でも特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の延伸膜が好ましい。
これらの支持体を単独に用いる事も出来るが、補強用の支持体と一体化した複合膜も好適に使用できる。
【0035】
支持体12は厚すぎるとガス透過性が低下し、薄すぎると強度に難がある。そこで支持体の厚さは30〜500μmが好ましく、さらには50〜300μmがより好ましく、さらには50〜200μmが特に好ましい。また、Roll−to−Roll製造において支持体の歪みや断裂が発生することのないよう、例えば支持体のヤング率は0.4GPa以上であることが好ましい。
【0036】
支持体12の搬送速度は、支持体12の種類や組成物(塗布液)の粘度などにもよるが、支持体の搬送速度が高すぎると塗布工程における塗布膜の膜厚均一性が低下するおそれがあり、遅過ぎると生産性が低下するほか、冷却工程の前に組成物の粘度が上昇して塗布膜の均一性が低下するおそれもある。支持体12の搬送速度は、上記の点も考慮して支持体12の種類や組成物の粘度などに応じて決めればよいが、1m/分以上が好ましく、さらには10〜200m/分がより好ましく、さらには20〜200m/分が特に好ましい。
【0037】
組成物の塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等が挙げられる。特に、膜厚均一性、塗布量などの観点から、エクストルージョンダイコーターが好ましい。
【0038】
塗布量は、組成物の組成および濃度などにもよるが、単位面積あたりの塗布量が少な過ぎると冷却工程又は乾燥工程で膜に孔が形成されたり、二酸化炭素分離膜としての強度が不十分となるおそれがある。一方、上記塗布量が多過ぎると、膜厚のバラツキが大きくなったり、得られる二酸化炭素分離膜の膜厚が大きくなり過ぎて二酸化炭素の透過性が低下するおそれがある。
これらの観点から、冷却工程で得られるゲル膜の厚さが10μm以上、より好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上であり、架橋工程で得られる二酸化炭素分離膜の厚さが1μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上になるように塗布量を調整することが好ましい。なお、二酸化炭素の透過性が低下することを避ける観点から、二酸化炭素分離膜の膜厚は1000μm以下とすることが好ましい。
【0039】
(冷却工程)
塗布工程において支持体12上に得られた塗布膜を冷却してゲル膜を得る。塗布膜が形成された支持体が冷却部30に搬送されて直ちに冷却されることで、多糖類の凝固作用によって塗布膜がゲル化(固定化)し、安定したゲル膜(セット膜)が得られる。
【0040】
冷却工程における冷却温度は、高過ぎると固定化に時間がかかって膜厚均一性が低下するおそれがあり、低すぎるとゲル膜が凍結し膜質が変化してしまうおそれがある。塗布膜の厚みをほぼ保ったゲル膜が得られるように、塗布膜の成分、濃度(特に多糖類の種類及び濃度)に応じて決めればよいが、冷却工程における冷却温度は、支持体12上の塗布膜を迅速にゲル化してゲル膜を形成する観点から湿球温度で35℃以下、特に1〜35℃が好ましく、さらには2〜20℃がより好ましく、さらには5〜15℃が特に好ましい。
また冷却工程における通過時間は生産性の向上などの観点から、1〜200秒が好ましく、さらには20〜150秒がより好ましく、さらには30〜100秒が特に好ましい。
【0041】
このように、本発明の組成物を支持体に塗布して塗布膜を設けた後、迅速にゲル化してゲル膜とすることができるため、膜厚を精度良く制御することができる。従って、膜厚が大きく、厚さが均一な二酸化炭素分離膜を形成することができ、高いガス分離特性を有する二酸化炭素分離膜を高い生産性で製造することができる。
【0042】
(乾燥工程)
冷却工程後、ゲル膜を乾燥させて乾燥膜とする。
加熱部40に搬送された支持体12上のゲル膜に温風を当てて乾燥させる。冷却工程後の膜はゲル状に固定化されているため、乾燥用の風が当たっても崩れずに乾燥する。
風速は、ゲル膜を迅速に乾燥させることができるともにゲル膜が崩れない速度、例えば1〜80m/分が好ましく、さらには2〜70m/分がより好ましく、さらには3〜40m/分が特に好ましい。
風の温度は、支持体の変形などが生じず、かつ、ゲル膜を迅速に乾燥させることができるように膜面温度1〜80℃が好ましく、さらには2〜70℃がより好ましく、さらには3〜60℃が特に好ましい。
【0043】
(架橋工程)
架橋工程は乾燥工程と同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。また、架橋手法は公知の架橋手法を用いることができる。例えば、ゲル膜に温風を当てて乾燥させた後、赤外線ヒータなどの加熱手段によって架橋させてもよいし、温風によって乾燥とともに架橋させてもよい。熱架橋は例えば100〜150℃程度に加熱することによって行うことができる。塗布後ゲル膜にUVあるいは電子線架橋を施し、その後乾燥させてもかまわない。なお、乾燥工程により得られた乾燥膜を巻取りロール50に巻き取った後、架橋させて二酸化炭素分離膜を得てもよい。
【0044】
上記工程を経て本発明に係る二酸化炭素分離膜が得られる。
得られた二酸化炭素分離膜は、吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む。二酸化炭素分離膜での各成分の組成比は、塗布液の配合比が反映される。
乾燥状態での二酸化炭素分離膜中の各成分の含有量は以下の範囲であることが好ましい。吸水性ポリマーは、5〜90質量%が好ましく、10〜85質量%がより好ましく、15〜80質量%がさらに好ましい。二酸化炭素キャリアは、5〜90質量%が好ましく、10〜85質量%がより好ましく、20〜80質量%がさらに好ましい。多糖類は、1〜30質量%が好ましく、2〜25質量%がより好ましく、3〜20質量%がさらに好ましい。
例えば二酸化炭素キャリアとしてセシウムを含む化合物を用いる場合は、二酸化炭素の分離特性を向上させる観点から、乾燥状態での二酸化炭素分離膜中の含有量は50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。また、二酸化炭素キャリアとして、例えばカリウムを含む化合物を用いる場合は、乾燥状態での二酸化炭素分離膜中の含有量は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上で用いることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。
また、二酸化炭素キャリアとして、例えばセシウム又はカリウムを含む化合物とアミノ酸を用いる場合は、アミノ酸は、乾燥状態での膜に対して10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上で用いることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。
なお、二酸化炭素分離膜14を形成した後、必要に応じて、二酸化炭素キャリアの溶出を防ぐために二酸化炭素分離膜14上にキャリア溶出防止層を設けてもよい。キャリア溶出防止層は二酸化炭素、水蒸気などの気体は透過するが水などは透過しない性質を持つことが好ましく、疎水性の多孔質膜であることが好ましい。
この様な性質の膜を膜面上に塗布しても良いし、別に作成した膜をラミネートしても良い。
【0045】
(二酸化炭素分離装置)
二酸化炭素分離装置は、上記二酸化炭素分離膜を平膜として設置してもよいし、逆浸透膜モジュールとして知られるスパイラル型やプリーツ型などに加工して利用することもできる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実験例1)
多糖類として伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)を水に攪拌しながら加えた後、加熱して十分溶解させた。この寒天溶液にポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP20)と、炭酸セシウム水溶液、グルタルアルデヒドを加え、保温したままよく攪拌した。これにより、寒天濃度0.5質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩濃度2.5質量%、炭酸セシウム濃度6.0質量%、グルタルアルデヒド濃度0.2質量%の水溶液を調製した。
【0048】
調製した熱水溶液をステンレス製の円筒容器に入れ、液温度60℃から容器を氷水中で冷却しながらB型粘度計(単一円筒形回転粘度計)を用いて30秒ごとに粘度を測定した。使用した測定装置及び測定条件を以下に示す。
測定装置:B型粘度計(BL2 1〜100,000mPa・s / KN3312481)
測定条件:0℃氷水中で冷却しながらJIS Z8803に準じて測定。
【0049】
寒天の濃度を1.0〜0.2質量%の範囲で変化させて比較した。図4に示されるように、UP−37添加濃度が0.5質量%以上のとき、測定時間600秒以内に粘度1000cpを超え、良好なゲル化性を示した。
【0050】
(実験例2)
実験例1において、伊那寒天UP−37を、伊那寒天UM−11S、SY−8、ZY−4、ZY−6(伊那食品工業社製)、Agarose H、Agarose S(ニッポンジーン社製)にそれぞれ変更したこと以外は実験例1と同様にして水溶液を調製し、粘度測定を行った。図5〜図7に伊那寒天UM−11S、ZY−6、Agarose Hをそれぞれ用いたときの粘度の変化を示す。いずれも寒天濃度が高いほど短時間で粘度が上昇する傾向が見られ、ZY−4では寒天添加濃度が0.3質量%以上、他は寒天添加濃度が0.5質量%以上であれば測定時間600秒以内に粘度1000cpを超え、良好なゲル化性を示した。
【0051】
(実施例1)
伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP20)2.5質量%、炭酸セシウム6.0質量%、グルタルアルデヒド0.2質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)を調製した。
その熱水溶液を、PETフィルム(東レ社製T60、100μm厚)にRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、17μm厚の均一な膜が形成された。この乾燥膜上にもう一度塗布・乾燥工程を行い、膜厚35μmの乾燥膜を製膜した。これを巻き取った後、120℃で熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
得られた二酸化炭素分離膜の乾燥させた状態での各成分の質量比は以下のようになった。
・ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩:27.2%
・寒天UP−37:5.4%
・炭酸セシウム:65.2%
・グルタルアルデヒド:2.2%
【0052】
(実施例2)
ポリエステル製紙支持体(阿波製紙社製、70μm厚)に、伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP20)2.5質量%、炭酸セシウム6.0質量%、グルタルアルデヒド0.2質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)をRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、17μm厚の均一な膜が形成された。実施例1と同様に、もう一度塗布・乾燥工程を行い巻き取った後、120℃熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0053】
(実施例3)
PETフィルム(東レ社製T60、100μm厚)に、伊那寒天UM−11S(伊那食品工業社製)1.0質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP20)2.5質量%、炭酸セシウム6.0質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)をRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥(加熱)して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、加熱部で乾燥風速40m/s下で膜の一部に厚みムラが発生した。実施例1と同様に、もう一度塗布・乾燥工程を行い巻き取った後、120℃熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0054】
−ガス分離評価−
実施例1〜3で製造した二酸化炭素分離膜を用いて二酸化炭素ガスの分離性能について、以下のように評価した。
実施例1及び実施例3では、上記PETフィルム上に製膜した二酸化炭素分離膜(直径47mm)をPETフィルムから丁寧にはがし、PTFEメンブレンフィルター(孔径0.10μm、ADVANTEC社製)を2枚用いて膜両面から挟んで透過試験サンプルを作製した。
実施例2では、支持体ごと直径47mmに切り取り、同様にPTFEメンブレンフィルターで挟んで透過試験サンプルを作製した。
テストガスとしてCO/H:10/90(容積比)の混合ガスを相対湿度70%、流量100ml/分、温度130℃、全圧3atmで、前記の各サンプル(有効面積2.40cm)に供給し、透過側にArガス(流量90ml/分)をフローさせた。透過してきたガスをガスクロマトグラフで分析し、CO透過速度と分離係数を算出した。その結果を表2に示す。
【0055】
以下の実施例4〜9及び比較例1で製造した二酸化炭素分離膜についても実施例1と同様にして二酸化炭素ガスの分離性能を評価した。
【0056】
(実施例4)
伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP20)2.5質量%、炭酸セシウム6.0質量%、グリシン0.6質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)を調製した。
その熱水溶液を、PETフィルム(東レ社製T60、100μm厚)にRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、均一な膜が形成された。この乾燥膜上にもう一度塗布・乾燥工程を行い、乾燥膜を製膜した。これを巻き取った後、120℃で熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0057】
(実施例5)
伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP20)2.5質量%、炭酸カリウム1.27質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)を調製した。
その熱水溶液を、PETフィルム(東レ社製T60、100μm厚)にRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、均一な膜が形成された。この乾燥膜上にもう一度塗布・乾燥工程を行い乾燥膜を製膜した。これを巻き取った後、120℃で熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0058】
(実施例6)
伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP20)2.5質量%、炭酸カリウム1.27質量%、グリシン1.2質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)を調製した。
その熱水溶液を、PETフィルム(東レ社製T60、100μm厚)にRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、均一な膜が形成された。この乾燥膜上にもう一度塗布・乾燥工程を行い、乾燥膜を製膜した。これを巻き取った後、120℃で熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0059】
(実施例7)
伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP20)2.5質量%、炭酸カリウム1.27質量%、セリン0.85質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)を調製した。
その熱水溶液を、PETフィルム(東レ社製T60、100μm厚)にRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、均一な膜が形成された。この乾燥膜上にもう一度塗布・乾燥工程を行い、乾燥膜を製膜した。これを巻き取った後、120℃で熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0060】
(実施例8)
サポーテッドPTFE(中尾フィルター社製、テトラトックス7008、200μm厚)に、伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩、クラレ社製、商品名:クラストマーAP−20)2.5質量%、炭酸セシウム6.0質量%、グルタルアルデヒド0.2質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)をRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、17μm厚の均一な膜が形成された。実施例1と同様に、もう一度塗布・乾燥工程を行い巻き取った後、120℃熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0061】
(比較例1)
実施例1において、寒天UP−37を添加しない場合、乾燥部で塗布膜が吹き飛び、ガス透過率測定試験可能な二酸化炭素分離膜を得ることはできなかった。
【0062】
(実施例9)
伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレPVA−117)2.5質量%、炭酸セシウム6.0質量%、グルタルアルデヒド0.2質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)を調製した。
その熱水溶液を、PETフィルム(東レ社製T60、100μm厚)にRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、均一な膜が形成された。この乾燥膜上にもう一度塗布・乾燥工程を行い、乾燥膜を製膜した。これを巻き取った後、120℃で熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0063】
(実施例10)
伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)0.5質量%、ポリビニルアルコール(クラレ社製、クラレPVA−117)2.5質量%、炭酸カリウム1.27質量%、グリシン1.2質量%の熱水溶液(温度:85℃以上)を調製した。
その熱水溶液を、PETフィルム(東レ社製T60、100μm厚)にRoll−to−Roll方式で塗布し、冷却、乾燥して製膜した。冷却温度を8℃に設定した冷却部でゲル膜とした後、乾燥部で乾燥風速40m/s下としてもゲル膜は吹き飛ぶことなく乾燥し、均一な膜が形成された。この乾燥膜上にもう一度塗布・乾燥工程を行い、乾燥膜を製膜した。これを巻き取った後、120℃で熱架橋を施し二酸化炭素分離膜を得た。
【0064】
実施例1〜10、および比較例1において用いた二酸化炭素分離膜形成用水溶液の組成及び支持体を表1に、作製した二酸化炭素分離膜の透過特性を表2に示す。
【0065】
【表1】



【0066】
【表2】



【0067】
表1、2に示すように、実施例1〜10では多糖類を含むことで、Roll−to−Rollでも二酸化炭素の透過特性を有する二酸化炭素分離膜を製造することができた。
また、実施例6および7ではアミノ酸を添加した以外は実施例5と同様に二酸化炭素分離膜を作製したが、実施例6および7では実施例5に比べて二酸化炭素の透過速度、分離係数とも向上し、特にグリシンを添加した実施例6では顕著に向上した。
【符号の説明】
【0068】
10 送り出しロール
12 支持体
14 二酸化炭素分離膜
20 塗布部
30 冷却部
40 加熱部
50 巻取りロール
52 二酸化炭素分離用複合体
62,64,66,68 搬送ロール
72 氷水
74 B型粘度計
76 二酸化炭素分離膜形成用組成物(塗布液)
78 氷
100 二酸化炭素分離膜製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項2】
吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜形成用組成物であって、前記組成物の入った容器の周囲を0℃氷水で冷却しながらJIS Z8803に準じてB型粘度計を用いて測定したときの前記組成物の粘度が、冷却開始後、700秒以内に1000cp以上になる二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項3】
前記多糖類が寒天である請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項4】
前記多糖類の含有量が前記組成物に対して10質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項5】
前記多糖類の含有量が前記組成物に対して0.3〜5質量%である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項6】
前記吸水性ポリマーがポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項7】
前記二酸化炭素キャリアがアルカリ金属炭酸塩である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項8】
前記二酸化炭素キャリアがセシウム、ルビジウム、及びカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む化合物である請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項9】
さらにアミノ酸を含む請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項10】
前記アミノ酸が、LogP値−2.5以下である請求項9に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項11】
前記アミノ酸が、グリシン及びセリンからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項9又は請求項10に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物。
【請求項12】
吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜形成用組成物を準備する組成物準備工程と、
前記組成物を支持体上に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で得られた塗布膜を冷却してゲル膜を得る冷却工程と、
前記ゲル膜を乾燥させて乾燥膜とする乾燥工程と、
前記乾燥膜を架橋させて二酸化炭素分離膜を得る架橋工程と、
を有する二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項13】
前記二酸化炭素分離膜形成用組成物として、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜形成用組成物を用いる請求項12に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項14】
前記支持体の面積が30cm以上である請求項12又は請求項13に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項15】
帯状の前記支持体を送り出しロールから送り出し、該支持体を搬送しながら前記塗布工程と、前記冷却工程と、前記乾燥工程とを順次行い、前記架橋工程の前又は後に前記乾燥膜又は前記二酸化炭素分離膜を巻取りロールに巻き取る請求項12〜請求項14のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項16】
前記塗布工程から前記乾燥工程まで、前記支持体を1m/min以上の搬送速度で搬送する請求項15に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項17】
前記ゲル膜を10μm以上の厚さに形成する請求項12〜請求項16のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項18】
前記冷却工程を湿球温度35℃以下で行う請求項12〜請求項17のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項19】
吸水性ポリマーと、二酸化炭素キャリアと、多糖類とを含む二酸化炭素分離膜。
【請求項20】
前記二酸化炭素キャリアが、セシウム、ルビジウム、及びカリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む化合物を含有する請求項19に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項21】
さらにアミノ酸を含む請求項19又は請求項20に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項22】
前記アミノ酸が、グリシン及びセリンからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項21に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項23】
前記二酸化炭素キャリアとして、セシウムを含む化合物を前記二酸化炭素分離膜に対して50質量%以上含有する請求項20〜請求項22のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項24】
前記二酸化炭素キャリアとして、カリウムを含む化合物を前記二酸化炭素分離膜に対して15質量%以上含有する請求項20〜請求項22のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項25】
請求項19〜請求項24のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜を備えた二酸化炭素分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−49042(P2013−49042A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250968(P2011−250968)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】