説明

二酸化炭素吸着剤

【課題】新規の二酸化炭素吸着剤、及びそれに用いることのできる新規化合物を提供する。
【解決手段】前記二酸化炭素吸着剤は、環状アミジン部分又は鎖状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物(例えば、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−[3−(シラトラニル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の吸着/脱着能に優れるとともに、安定な固体形状を有するか、あるいは粒子状の担体に容易に担持可能であり、フィルタとして加工が容易な二酸化炭素吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の二酸化炭素濃度の上昇による地球温暖化の問題は、ますます深刻化しており、その対策が至急に求められている中で、二酸化炭素の化学的なトラップ法の開発にも大きな期待が寄せられている。このような、トラップ法に利用可能な化合物として、アミジン骨格を有する複素環化合物である、N−メチルテトラヒドロピリミジン(以下、MTHPと略することがある)が、二酸化炭素を吸着/脱着できる有機化合物であることが知られている。しかし、MTHPは液体であるため、エアフィルタなどと併用して大気中の二酸化炭素を吸収させることが困難であり、実用上安定な固体形状を有するか、あるいは粒子状や繊維状の担体に容易に担持可能な二酸化炭素吸着剤が求められていた。
【0003】
そこで、本発明者らの一部は、このMTHPをスチレンに導入した化合物である、4−(1,4,5,6−テトラヒドロピリミド−1−イル)メチルスチレン(以下、THPStと略することがある)や、THPStをモノマーとする下記一般式(91):
【化1】

で表される重合体、並びに、THPStとN−アクリルアミドとを共重合した下記一般式(92):
【化2】

で表される固体形状の共重合体を合成した結果、これらの化合物が25℃で二酸化炭素を接触させると吸着すること、そして、昇温すると、その吸着した二酸化炭素が脱着することを、非特許文献1に報告している。
【0004】
しかし、THPStモノマーやその共重合体の合成方法は、工程が煩雑であるため、製造コストが高くなるという問題があった。また、大気中の二酸化炭素の吸着剤として利用する場合、加工方法や用途が限られるという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. Endo et al., Macromolecules 2004, 37, 2007-2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決して、上記化合物以外にも、二酸化炭素の吸着/脱着能に優れるとともに、安定な固体形状を有するか、あるいは粒子状や繊維状の担体に容易に担持可能であり、フィルタとして加工が容易な二酸化炭素吸着剤、及びそれに用いることのできる新規化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
[1]アミジン部分を含む有機ケイ素化合物を含む、二酸化炭素吸着剤、
[2]前記有機ケイ素化合物が、一般式(1):
【化3】

[式中、R11は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基であり、nは1〜3の整数である]
で表される環状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物、又は一般式(2):
【化4】

[式中、R21は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、R24、R25、及びR26は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]
若しくは一般式(3):
【化5】

[式中、R31は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R32及びR33は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]
で表される鎖状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物、又はその誘導体である、[1]の二酸化炭素吸着剤、
[3]前記有機ケイ素化合物が、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンである、[2]の二酸化炭素吸着剤、
[4]前記誘導体が、一般式(4):
【化6】

[式中、R41は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、nは1〜3の整数である]
で表される化合物、一般式(5):
【化7】

[式中、R51は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R52及びR53は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]
で表される化合物、又は一般式(6):
【化8】

[式中、R61は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R62及びR63は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]
で表される化合物である、[2]の二酸化炭素吸着剤、
[5]前記誘導体が、1−[3−(シラトラニル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンである、[4]の二酸化炭素吸着剤、
[6]前記二酸化炭素吸着剤が、[1]〜[3]の有機ケイ素化合物又はその誘導体を、金属酸化物を主成分とする粒子又は繊維に結合してなる二酸化炭素吸着粒子又は繊維である、二酸化炭素吸着剤、
[7]前記金属酸化物が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、又はアルミノケイ酸塩である、[6]の二酸化炭素吸着剤、
[8]前記二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、又はアルミノケイ酸塩を主成分とする粒子又は繊維が、多孔質体である、[7]の二酸化炭素吸着剤、
[9][6]〜[8]の二酸化炭素吸着剤、あるいは、[4]又は[5]の二酸化炭素吸着剤を用いて、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させることを特徴とする、二酸化炭素の処理方法、
[10][6]〜[8]の二酸化炭素吸着剤、あるいは、[4]又は[5]の二酸化炭素吸着剤をフィルタに担持させて、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させることを特徴とする、二酸化炭素の処理方法、
[11]一般式(1a):
【化9】

[式中、R11aは、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R14a、R15a、及びR16aは、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基であり、n1aは1〜3の整数である(但し、R11aが水素原子の場合、n1aは2〜3の整数であるものとする)]、
一般式(2):
【化10】

[式中、R21は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、R24、R25、及びR26は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]、
一般式(3):
【化11】

[式中、R31は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R32及びR33は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]、
一般式(4a):
【化12】

[式中、R41aは、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、n4aは1〜3の整数である(但し、R41aが水素原子の場合、n4aは2〜3の整数であるものとする)]、
一般式(5):
【化13】

[式中、R51は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R52及びR53は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]、又は
一般式(6):
【化14】

[式中、R61は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R62及びR63は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]
で表される化合物、
[12]一般式(10):
【化15】

[式中、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基であり、nは1〜3の整数である]
と、一般式(CHNCR11(OCH[式中、R11は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基である]とを反応させることを特徴とする、一般式(1):
【化16】

[式中、R11、R14、R15、R16、nは、前記と同じ意味である]
で表される有機ケイ素化合物の製造方法、
[13][12]の製造方法であって、[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン又は[3−(3−アミノプロピルアミノ)プロピル]トリメトキシシランと、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールとを反応させる、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンの製造方法、
[14]一般式(20):
【化17】

[式中、R24、R25、及びR26は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]
と、一般式(21):
【化18】

[式中、R21は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]
とを反応させることを特徴とする、一般式(2):
【化19】

[式中、R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、前記と同じ意味である]
で表される有機ケイ素化合物の製造方法、
[15][14]の製造方法であって、(3−アミノプロピル)トリメトキシシランとN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールとを反応させる、N,N−ジメチル−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ホルムアミジンの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
二酸化炭素の吸着/脱着能に優れるとともに、安定な固体形状を有するか、あるいは粒子状や繊維状の担体に容易に担持可能であり、フィルタとして加工が容易な新規な二酸化炭素吸着剤、及びその中間体を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例4で合成した1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−3]を用いて、実施例7で実施した二酸化炭素吸脱着反応における二酸化炭素吸着率(%)を示すグラフである。
【図2】実施例1で合成した1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−2]をシリカ担体に担持させた実施例A(鱗片状シリカ;担持量=16wt%)又は実施例C(シリカゲル;担持量=33wt%)、あるいは、実施例3で合成した1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−2]をシリカ担体に担持させた実施例B(鱗片状シリカ;担持量=16wt%)を用いて、実施例8(2)で作成した温度25℃における二酸化炭素吸着等温線を示すグラフである。
【図3】実施例8(3)で使用した通風循環試験機の概略を示す説明図である。
【図4】図3に示すテドラーバッグとして、二酸化炭素を充填したテドラーバッグ(二酸化炭素濃度=1000ppm)を通風循環試験機に装着し、図2に示す実施例A〜実施例Cを用いて、実施例8(3)で実施した二酸化炭素吸着試験の結果を示すグラフである。
【図5】図4に示す二酸化炭素吸着試験の後、窒素充填したテドラーバッグに交換し、再度、二酸化炭素吸着試験を実施した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の二酸化炭素吸着剤は、アミジン部分を含む有機ケイ素化合物を含むことを特徴とする。
前記有機ケイ素化合物としては、例えば、
一般式(1):
【化20】

[式中、R11は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基(好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基)であり、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基)であり、nは1〜3の整数(好ましくは1又は2)である]
で表される環状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物、
一般式(2):
【化21】

[式中、R21は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基(好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基)であり、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)であり、R24、R25、及びR26は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基)である]
で表される鎖状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物、
一般式(3):
【化22】

[式中、R31は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基(好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基)であり、R32及びR33は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)であり、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基)である]
で表される鎖状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物
を挙げることができ、更には、前記一般式(1)〜(3)で表される有機ケイ素化合物の誘導体、例えば、
一般式(4):
【化23】

[式中、R41は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基(好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基)であり、nは1〜3の整数(好ましくは1又は2)である]
で表される化合物、
一般式(5):
【化24】

[式中、R51は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基(好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基)であり、R52及びR53は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)である]
で表される化合物、
一般式(6):
【化25】

[式中、R61は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基(好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、より好ましくは水素原子又はメチル基)であり、R62及びR63は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)である]
で表される化合物
を挙げることができる。
【0011】
本発明の二酸化炭素吸着剤の有効成分として使用することのできる前記一般式(1)〜(6)で表される有機ケイ素化合物の内、例えば、前記一般式(1)において、nが1であり、R11が水素原子であり、R14、R15、及びR16がエチル基である化合物(後述する実施例1にて合成する1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−2])、あるいは、前記一般式(4)において、nが1であり、R41が水素原子である化合物(後述する実施例2にて合成する1−[3−(シラトラニル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−3])は、それ自体、公知化合物である。例えば、前記化合物1−2の公知用途としては、シリカ担持後、触媒又は金属分離に利用されており、二酸化炭素吸着に利用可能であることは知られていない。
【0012】
例えば、文献1では、Pd−N触媒合成の出発材料として使用されている。文献2では、イオン性液体合成の出発材料として使用されており、合成したイオン性液体はメソポーラスシリカに担持してアシル化触媒として用いられる。文献3では、均一系ヒドロホルミル化触媒として、文献4では、不均一系エポキシ化触媒として、それぞれ、使用されている。文献5では、シリカゲルに担持させて、金属キレート錯体のHPLC分離用カラムとして使用されている。文献6では、Pd化合物触媒の前駆体として用いられている。
【0013】
前記一般式(1)で表される環状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物は、例えば、下記反応工程式(I):
【化26】

に基づいて合成することができる。
上記反応工程式(I)はアミン化合物とアセタール化合物の縮合環化反応であり、バルク(無溶媒)又は溶媒中で行うことができる。この溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、又はヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの非プロトン性非極性溶媒、又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのプロトン性極性溶媒が挙げられる。
上記の工程(I)の反応は、上記溶媒の中でも、例えばトルエン中、0℃〜120℃、好ましくは50℃〜80℃の範囲の温度で攪拌下に行うことができる。
【0014】
また、その誘導体である前記一般式(4)で表される化合物は、例えば、下記反応工程式(II):
【化27】

に基づいて合成することができる。
上記反応工程式(II)はアルコキシシリル基の縮合保護反応であり、溶媒中で行うことができる。この溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、又はヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの非プロトン性非極性溶媒、又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのプロトン性極性溶媒が挙げられる。
上記の工程(II)の反応は、上記溶媒の中でも、例えばベンゼン中、30℃〜120℃、好ましくは60℃〜90℃の範囲の温度で攪拌下に行うことができる。
【0015】
例えば、前記一般式(1)の具体的化合物である1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−2]及び1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−2]は、後述の実施例1及び3に示すように、下記反応工程式(III)及び(IV)に基づいて、それぞれ、合成することができる。
【0016】
また、前記一般式(4)の具体的化合物である1−[3−(シラトラニル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−3]及び1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−3]は、それぞれ、後述の実施例2及び4に示すように、下記反応工程式(III)及び(IV)に基づいて合成することができる。
【0017】
反応工程式(III):
【化28】

【0018】
反応工程式(IV):
【化29】

【0019】
前記一般式(2)又は(3)で表される鎖状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物は、前記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を例にとると、例えば、下記反応工程式(V):
【化30】

に基づいて合成することができる。
【0020】
上記反応工程式(V)はアミン化合物とアセタール化合物の縮合反応であり、バルク(無溶媒)又は溶媒中で行うことができる。この溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、又はヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの非プロトン性非極性溶媒、又はメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのプロトン性極性溶媒が挙げられる。
上記の工程(V)の反応は、例えばバルク中、0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃の範囲の温度で攪拌下に行うことができる。
【0021】
また、その誘導体である前記一般式(5)又は(6)で表される化合物は、前記一般式(5)で表される有機ケイ素化合物を例にとると、例えば、上述の反応工程式(II)に準じて合成することができる。
【0022】
例えば、前記一般式(2)の具体的化合物であるN,N−ジメチル−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ホルムアミジン[化合物3−2]、及び前記一般式(5)の具体的化合物であるN,N−ジメチル−N’−[3−(シラトラニル)プロピル]ホルムアミジン[化合物3−3]は、後述の実施例5及び6に示すように、下記反応工程式(VI)に基づいて、それぞれ、合成することができる。
【0023】
反応工程式(VI):
【化31】

【0024】
本発明における二酸化炭素吸脱着反応は、バルク(無溶媒)又は溶媒中で行うことができる。この溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、又はヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ブチルベンゼンなどの非プロトン性非極性溶媒、又は水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのプロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0025】
上記の二酸化炭素吸脱着反応は、上記溶媒の中でも例えば乾燥ジメチルスルホキシド中で行うと吸脱着率(重量増減)の測定を再現よく行うことができる。よって、必ずしも乾燥溶媒を使用する必要はなく、むしろ水分を含んだ溶媒の方が二酸化炭素吸着率は増加する。吸着反応の温度は−20℃〜90℃、好ましくは0℃〜40℃の範囲の温度でバブリング下又はガス雰囲気下に行うことができ、脱着反応の温度は20℃〜120℃、好ましくは30℃〜90℃の範囲の温度でバブリング下又はガス雰囲気下にて行うことができる。
【0026】
本発明の二酸化炭素吸着剤は、以下の機構に限定されるものではないが、本発明者は、二酸化炭素の吸脱着反応は、以下の機構に基づくものと推測している。
背景技術欄で先に言及した非特許文献1には、N−メチルテトラヒドロピリミジン(MTHP)における二酸化炭素の吸着/脱着に関して、以下の反応式:
【化32】

が記載されている。本発明の二酸化炭素吸着剤においても、同様の機構に基づくものと推測している。後述の実施例4で合成する1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−3]の場合を例にとり、その反応式を以下に示す:
【化33】

【0027】
本発明で用いる有機ケイ素化合物としては、金属酸化物(例えば、シリカ)への担持が容易である(すなわち、簡単な反応で、金属酸化物と化学的に結合することができる)点で、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物が好ましく、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンが特に好ましい。
また、それ自体で安定な固体形状を有し、担体への担持が不要である点で、前記一般式(4)〜(6)で表される化合物が好ましく、1−[3−(シラトラニル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンが特に好ましい。
【0028】
前記有機ケイ素化合物を担持させる金属酸化物を主成分とする粒子又は繊維は、金属酸化物表面に存在するOH基によって、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物と化学的に結合することができる。金属酸化物としては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミノケイ酸塩などが入手しやすく好ましい。具体的には、シリカゲルやクロマト用シリカ多孔体、鱗片状シリカ、ナノポーラスシリカ、天然ゼオライトや合成ゼオライト、酸化アルミニウム、酸化チタンの粒子や、ガラス繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、及びこれらの繊維からなる織物、編物、不織布などを挙げることができる。また、これらの粒子や繊維が多孔質であると、前記有機ケイ素化合物の担持量を増加させることが可能になるため、より好ましい。
【0029】
前記鱗片状シリカ粒子は、具体的な形状として、例えば薄片1次粒子の粒子径が厚さ0.05μm以下の鱗片形状粒子であり、葉状シリカ2次粒子の厚さが0.05〜0.5μm(平均粒子径が0.1〜1.5μm)である鱗片状シリカ粒子を挙げることができ、市販されているものを適用することができる。例えば、市販のSiO一次粒子が三次凝集した白色粉体である、サンラブリーC(AGCエスアイテック株式会社製)(平均粒径:4−6μm、比表面積67m/g、シラノール基:55μmol/m)を適用することができる。
【0030】
前記一般式(1)〜(3)で表される化合物のシリカ担体への担持(結合)は、例えば、後述の実施例8(1)に記載の方法により実施することができる。すなわち、担持対象化合物を適当な溶媒(例えば、メタノール)で希釈し、シリカ担体と混合し、加熱下にて攪拌することにより、所望の二酸化炭素吸着剤を得ることができる。
【0031】
本発明では、二酸化炭素吸着剤をこのようなシリカ担体へ担持させて構成した二酸化炭素吸着粒子を更に通気性のシート状物に担持させること、あるいは、二酸化炭素吸着繊維を用いてシート状物を形成することなどにより、二酸化炭素吸着シートを構成することができる。二酸化炭素吸着シートが通気性を持つ場合はシートの厚さ方向に通風することで、通気性を持たない場合はハニカムやコルゲートなどの形状に加工しシート面と平行に通風することで、フィルタとして用いることができる。これらのフィルタを空調設備に配置して、大気中の二酸化炭素を吸着させ、必要に応じて脱着させることで、室内空気中の二酸化炭素濃度を調整することができる。
シート状物としては、製法・形状とも特に限定されず、例えば、不織布、織編み物、多孔膜、紙、フィルムなどが適用可能である。
【0032】
前記不織布としては、例えばバインダ接着不織布、水流絡合不織布、ニードルパンチ不織布、繊維融着不織布、スパンボンド不織布、あるいは紙などを単独で、又は適宜組み合わせた不織布を適用することができる。
また、不織布の材質は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維、ポリビニルアルコール繊維及び合成パルプなどの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、綿及びパルプ繊維などの天然繊維、あるいはガラス繊維、セラミックス繊維、金属繊維などを単独で、又は適宜組み合わせて適用することができる。
【0033】
次に、前述の二酸化炭素吸着シートをフィルタとして、空気中の二酸化炭素の吸脱着に用いる一例について説明する。
従来から、オフィスや住居などの室内では、室内で発生する高濃度の二酸化炭素を低い濃度に抑える必要があり、このため外気を取り入れ二酸化炭素の濃度を薄めて、所定レベル以下(例えばビル管理法規定の1000ppm以下)に抑えることが行われている。ところが、この室内で発生する二酸化炭素の発生源は人間の呼気によるものが最大の原因となっており、このため、急激に人の出入りが生じた場合など、一時的に二酸化炭素の濃度が増加した場合でも必要以上に換気が行われることがあった。あるいは、換気量を増加することがあった。その結果、暖房や冷房が行われた室内空気を外部に排出することとなり、熱エネルギーの損失につながり、ひいては地球温暖化を加速する原因にもなっていた。
そこで、前記フィルタに二酸化炭素を含む空気を通風させた場合に、空気の温度が少なくとも−10〜50℃の範囲の何れかの温度において、通風された空気中の二酸化炭素の濃度が増加する場合は二酸化炭素を吸着し、減少する場合は二酸化炭素を脱着するように設計することにより、熱エネルギーの損失を防ぐことができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0035】
《実施例1:1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−2]の合成》
室温にて[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン[化合物1−1](22.2g、100mmol)のトルエン溶液(100mL)に、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(13.1g、110mmol)を加え、次いで、油浴80℃にて24時間加熱攪拌した。ガスクロマトグラフィー分析により反応を停止し、エバポレートにてトルエン及び過剰のアセタールを留去した。残渣を真空乾燥することで少量残っていたトルエンを留去し、標記化合物[化合物1−2]を99%を超える粗収率(>99%)で得た。更に減圧蒸留することで、標記化合物22.8g(収率98%)を無色透明油状物として得た。
【0036】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.63(t,J=8.7Hz,2H,CSi),1.60−1.68(m,2H,CHCH),3.09(t,J=7.3Hz,2H,CN),3.19(t,J=9.6Hz,2H,CH=NCHN),3.58(s,9H,OC×3),3.81(t,J=10.1Hz,2H,CH=NCCHN),6.80(s,1H,N=CN).
13C NMR(100MHz,CDCl)δ(ppm):5.9(Si),21.6(CHCH),47.9(CH=NCHN),49.7(N),50.3(O),54.8(CH=NCHN),157.6(N=HN).
【0037】
《実施例2:1−[3−(シラトラニル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−3]の合成》
油浴60℃にてトリエタノールアミン(2.98g、20mmol)と水酸化カリウム(13mg、0.2mmol)のベンゼン溶液(20mL)を攪拌し、そこへ、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−2](4.65g、20mmol)のベンゼン溶液(10mL)を5分間かけて滴下した。更に油浴90℃にて24時間攪拌環流し、エバポレートにて溶媒留去した。析出した無色固体の残渣をトルエンで再結晶して標記化合物[化合物1−3]5.61g(収率98%)を無色結晶として得た。
【0038】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.37(t,J=8.7Hz,2H,CSi),1.57−1.65(m,2H,CHCH),2.82(t,J=6.0Hz,6H,OCHN×3),3.05(t,J=7.3Hz,2H,CN),3.21(t,J=9.6Hz,2H,CH=NCHCHN),3.73−3.78(m,2H,CH=NCHN),3.73−3.78(m,6H,OCCHN×3),6.80(s,1H,N=CN).
13C NMR(100MHz,CDCl)δ(ppm):13.2(Si),24.3(CHCH),48.1(CH=NCHN),50.7(N),51.0(OCHN),54.7(CH=NCHN),57.6(OCHN),158.0(N=HN).
【0039】
《実施例3:1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−2]の合成》
(1)[3−(3−アミノプロピルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン[化合物2−1]の合成
窒素気流下、室温にて乾燥1,3−プロパンジアミン(74.1g、1mol)中に(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン[化合物2−0](39.8g、200mmol)を加え、次いで、油浴90℃にて1時間加熱攪拌した。H NMR分析より反応を停止し、エバポレートにて過剰の1,3−プロパンジアミンを留去した。残渣にトルエンを加えた後に副生成物であるプロパンジアミン塩酸塩をろ別し、ろ液をエバポレートすることで標記化合物[化合物2−1]を99%を超える粗収率(>99%)で得た。更に減圧蒸留することで、標記化合物40.7g(収率86%)を無色透明油状物として得た。
【0040】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.66(t,J=9.2Hz,2H,CSi),1.12(brs,2H,CH),1.12(brs,1H,CHCH),1.56−1.67(m,2H,CCHSi),1.56−1.67(m,2H,CCHNH),2.61(t,J=7.3Hz,2H,CCHCHSi),2.67(t,J=7.3Hz,2H,CCHCHNH),2.76(t,J=6.9Hz,2H,CNH),3.57(s,9H,OC×3).
13C NMR(100MHz,CDCl)δ(ppm):6.5(Si),23.0(CHSi),33.9(CHNH),40.4(NH),47.6(CHCHNH),50.4(O),52.7(CHCHSi).
【0041】
(2)1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−2]の合成
室温にて[3−(3−アミノプロピルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン[化合物2−1](23.6g、100mmol)のトルエン溶液(100mL)にN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(13.1g、110mmol)を加え、次いで、油浴80℃にて24時間加熱攪拌した。ガスクロマトグラフィー分析により反応を停止し、エバポレートにてトルエン及び過剰のアセタールを留去した。残渣を真空乾燥することで少量残っていたトルエンを留去し、標記化合物[化合物1−2]を99%を超える粗収率(>99%)で得た。更に減圧蒸留することで、標記化合物23.9g(収率97%)を無色透明油状物として得た。
【0042】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.58(t,J=8.2Hz,2H,CSi),1.56−1.66(m,2H,CCHSi),1.83(quin,J=6.0Hz,2H,CH=NCHCHN),3.03(t,J=6.9Hz,2H,CCHCHSi),3.12(t,J=6.0Hz,2H,CH=NCHCHN),3.29(t,J=6.0Hz,2H,CH=NCCHCHN),3.58(s,9H,OC×3),6.97(s,1H,N=CN).
13C NMR(100MHz,CDCl)δ(ppm):5.7(Si),21.1(CH=NCHCHN),21.4(CHSi),43.0(CH=NCHCHN),43.2(CH=NCHCHN),50.5(O),55.2(CHCHSi),150.1(N=HN).
【0043】
《実施例4:1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−3]の合成》
油浴60℃にてトリエタノールアミン(4.48g、30mmol)と水酸化カリウム(20mg、0.3mmol)のベンゼン溶液(30mL)を攪拌し、そこへ、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−2](7.39g、30mmol)のベンゼン溶液(15mL)を5分間かけて滴下した。更に油浴90℃にて24時間攪拌環流し、エバポレートにて溶媒留去した。析出した無色固体の残渣をトルエンで再結晶して標記化合物[化合物2−3]8.97g(収率>99%)を無色結晶として得た。
【0044】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.33(t,J=8.2Hz,2H,CSi),1.55−1.63(m,2H,CCHSi),1.80(quin,J=6.0Hz,2H,CH=NCHCHN),2.82(t,J=6.0Hz,6H,OCHN×3),2.97(t,J=7.3Hz,2H,CN),3.13(t,J=6.0Hz,2H,CH=NCHCHN),3.25(t,J=6.0Hz,2H,CH=NCCHCHN),3.77(t,J=6.0Hz,OCCHN×3),6.97(s,1H,N=CN).
13C NMR(100MHz,CDCl)δ(ppm):12.9(Si),21.2(CH=NCHCHN),24.1(CHSi),43.0(CH=NCHCHN),43.3(CH=NCHCHN),50.9(OCHN),56.3(CHCHSi),57.6(OCHN),150.4(N=HN).
【0045】
《実施例5:N,N−ジメチル−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ホルムアミジン[化合物3−2]の合成》
室温にて3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン[化合物3−1](7.17g,40mmol)にN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(5.01g,42mmol)を加え、次いで油浴50℃にて1時間加熱攪拌した。ガスクロマトグラフィー分析により反応を停止し、エバポレートにて生成メタノール及び過剰のアセタールを留去した。残渣を真空乾燥することで、標記化合物[化合物3−2]を99%を超える粗収率(>99%)で得た。更に減圧蒸留することで、標記化合物8.91g(収率95%)を無色透明油状物として得た。
【0046】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.63(t,J=8.7Hz,2H,CSi),1.58−1.66(m,2H,CHCH),2.82(s,6H,NC×2),3.22(t,J=6.9Hz,2H,CN),3.57(s,9H,OC×3),7.27(s,1H,N=CN).
13C NMR(100MHz,CDCl)δ(ppm):6.3(Si),25.4(CHCH),36.8(N),50.2(O),58.7(NCHCH),154.8(N=HN).
【0047】
《実施例6:N,N−ジメチル−N’−[3−(シラトラニル)プロピル]ホルムアミジン[化合物3−3]の合成》
油浴60℃にてトリエタノールアミン(1.49g,10mmol)と水酸化カリウム(6.6mg,0.1mmol)のベンゼン溶液(10mL)を攪拌し、そこへN,N−ジメチル−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ホルムアミジン[化合物3−2](2.34g,10mmol)のベンゼン溶液(5mL)を5分かけて滴下した。更に油浴90℃にて24時間攪拌還流し、エバポレートにて溶媒留去した。残渣の油状物を真空乾燥して結晶を析出させ、更にヘキサン/酢酸エチル(5:1)で再結晶して標記化合物[化合物3−3]2.82g(収率98%)を無色結晶として得た。
【0048】
H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):0.34−0.39(m,2H,CSi),1.56−1.63(m,2H,CHCH),2.79(t,J=6.0Hz,6H,OCHN×3),2.82(s,6H,NC×2),3.19(t,J=7.3Hz,2H,CN),3.75(t,J=6.0Hz,6H,OCCHN×3),7.24(s,1H,N=CN).
13C NMR(100MHz,CDCl)δ(ppm):13.4(Si),28.1(CHCH),37.0(N),51.0(OCHN),57.7(OCHN),59.6(NCHCH),154.7(N=HN).
【0049】
《実施例7:1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−3]の二酸化炭素吸脱着反応の評価》
1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−3](599mg、2mmol)を乾燥ジメチルスルホキシド(4mL)に溶解し、前処理としてアルゴンガス(流量0.2L/分)を油浴60℃にて30分間吹き込んだ。その後、25℃で二酸化炭素(流量0.2L/分)、60℃でアルゴンガス(流量0.2L/分)を交互に1時間ずつ吹き込んで二酸化炭素の吸脱着反応を行った。反応の経時変化は重量変化(ブランクとの比較)より換算した。その結果を図1に示す。
図1に示すとおり、1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンは、穏和な条件下で二酸化炭素を定量的に吸脱着できることが明らかとなった。
【0050】
《実施例8:1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン[化合物1−2]及び1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン[化合物2−2]の二酸化炭素吸脱着反応の評価》
(1)シリカ担体への担持
シリカ担体としては、鱗片状シリカ(製品名:サンラブリーC、AGCエスアイテック株式会社製、比表面積67m/g、シラノール基量:54.6μmol/m)を用いた。化合物1−2又は化合物2−2(1.0g)をメタノールで5倍に希釈し、鱗片状シリカ(5.2g)を混合した。攪拌しながら80℃で1時間加熱した後、余剰の液をろ別し、更にメタノールで3回洗浄し、乾燥した。以下、化合物1−2又は化合物2−2を担持した鱗片状シリカを、それぞれ、実施例A、実施例Bと称する。いずれも化合物の担持量は16wt%であった。
【0051】
同様の操作で、化合物1−2(4.6g)のメタノール希釈液をシリカゲル(製品名:フジシリカゲルID形、富士シリシア化学社製、細孔径15.5nm、比表面積310m/g)に担持させたものを、以下、実施例Cと称する。実施例Cにおける化合物1−2の担持量は33wt%であった。
【0052】
(2)二酸化炭素吸着等温線の作成
上記(1)で調製した実施例A〜Cと、未担持の鱗片状シリカ及びシリカゲルについて、温度25℃における二酸化炭素吸着等温線を図2に示す。図2において、下側の曲線は吸着を示し、上側の曲線は脱着を示す。
【0053】
(3)二酸化炭素の吸着及び脱着試験(循環法)
本評価試験では、図3に示すような、二酸化炭素濃度1000ppmに調整した容積5リットルのテドラーバッグ1、試験カラム2、ポンプ3、二酸化炭素濃度測定用プローブ4を、チューブで漏れのないように接続した通風循環試験機を使用した。評価サンプルとしては、上記(1)で調製した実施例A〜Cと、比較例Aとして、ポリ[4−(1,4,5,6−テトラヒドロピリミド−1−イル)メチルスチレン−ジメチルアクリルアミド](以下、ポリ(THPSt−DMA)と称する)を使用した。
【0054】
サンプル(1.0g)を試験カラム内に入れ、試験風量2リットル/分でテドラーバッグ内の空気をカラムに通過させることにより、通風循環試験機内を循環させ、その後の二酸化炭素濃度の変化を測定した。二酸化炭素吸着試験の結果を図4に示す。
【0055】
前記操作の開始から30時間経過後に、二酸化炭素を充填した前記テドラーバッグを窒素充填したものに交換し、再度接続した後、その後の二酸化炭素濃度の変化を測定した。二酸化炭素脱着試験の結果を図5に示す。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の二酸化炭素吸着剤は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させる用途に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミジン部分を含む有機ケイ素化合物を含む、二酸化炭素吸着剤。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物が、一般式(1):
【化1】

[式中、R11は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基であり、nは1〜3の整数である]
で表される環状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物、又は一般式(2):
【化2】

[式中、R21は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、R24、R25、及びR26は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]
若しくは一般式(3):
【化3】

[式中、R31は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R32及びR33は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]
で表される鎖状アミジン部分を含む有機ケイ素化合物、又はその誘導体である、請求項1に記載の二酸化炭素吸着剤。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物が、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンである、請求項2に記載の二酸化炭素吸着剤。
【請求項4】
前記誘導体が、一般式(4):
【化4】

[式中、R41は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、nは1〜3の整数である]
で表される化合物、一般式(5):
【化5】

[式中、R51は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R52及びR53は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]
で表される化合物、又は一般式(6):
【化6】

[式中、R61は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R62及びR63は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]
で表される化合物である、請求項2に記載の二酸化炭素吸着剤。
【請求項5】
前記誘導体が、1−[3−(シラトラニル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(シラトラニル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンである、請求項4に記載の二酸化炭素吸着剤。
【請求項6】
前記二酸化炭素吸着剤が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機ケイ素化合物又はその誘導体を、金属酸化物を主成分とする粒子又は繊維に結合してなる二酸化炭素吸着粒子又は繊維である、二酸化炭素吸着剤。
【請求項7】
前記金属酸化物が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、又はアルミノケイ酸塩である、請求項6に記載の二酸化炭素吸着剤。
【請求項8】
前記二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、又はアルミノケイ酸塩を主成分とする粒子又は繊維が、多孔質体である、請求項7に記載の二酸化炭素吸着剤。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着剤、あるいは、請求項4又は5に記載の二酸化炭素吸着剤を用いて、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させることを特徴とする、二酸化炭素の処理方法。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の二酸化炭素吸着剤、あるいは、請求項4又は5に記載の二酸化炭素吸着剤をフィルタに担持させて、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸着させることを特徴とする、二酸化炭素の処理方法。
【請求項11】
一般式(1a):
【化7】

[式中、R11aは、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R14a、R15a、及びR16aは、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基であり、n1aは1〜3の整数である(但し、R11aが水素原子の場合、n1aは2〜3の整数であるものとする)]、
一般式(2):
【化8】

[式中、R21は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、R24、R25、及びR26は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]、
一般式(3):
【化9】

[式中、R31は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R32及びR33は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基であり、R34、R35、及びR36は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]、
一般式(4a):
【化10】

[式中、R41aは、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、n4aは1〜3の整数である(但し、R41aが水素原子の場合、n4aは2〜3の整数であるものとする)]、
一般式(5):
【化11】

[式中、R51は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R52及びR53は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]、又は
一般式(6):
【化12】

[式中、R61は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R62及びR63は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]
で表される化合物。
【請求項12】
一般式(10):
【化13】

[式中、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基であり、nは1〜3の整数である]
と、一般式(CHNCR11(OCH[式中、R11は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基である]とを反応させることを特徴とする、一般式(1):
【化14】

[式中、R11、R14、R15、R16、nは、前記と同じ意味である]
で表される有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法であって、[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン又は[3−(3−アミノプロピルアミノ)プロピル]トリメトキシシランと、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールとを反応させる、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−2−イミダゾリン、又は1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンの製造方法。
【請求項14】
一般式(20):
【化15】

[式中、R24、R25、及びR26は、それぞれ独立して、炭素数1〜30のアルキル基である]
と、一般式(21):
【化16】

[式中、R21は、水素原子または炭素数1〜27のアルキル基であり、R22及びR23は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である]
とを反応させることを特徴とする、一般式(2):
【化17】

[式中、R21、R22、R23、R24、R25、及びR26は、前記と同じ意味である]
で表される有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法であって、(3−アミノプロピル)トリメトキシシランとN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールとを反応させる、N,N−ジメチル−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ホルムアミジンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−214345(P2010−214345A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67382(P2009−67382)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(504265754)財団法人山形県産業技術振興機構 (60)
【出願人】(592055392)富士アミドケミカル株式会社 (5)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】