説明

二酸化炭素富有煙道ガスを浄化する方法及び装置

ボイラー(2)において発生した二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化するためのガス浄化システム(8)は、ボイラー(2)において発生した煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも80%を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生するように作動する第1のガス浄化装置(10)、及び第1のガス浄化装置(10)から分離されており、第1のガス浄化装置(10)を通過した部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの少なくとも一部を受け取るように作動する第2のガス浄化装置(12)を含んでなる。第2のガス浄化装置(12)は、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該ガスから水を凝縮させることによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる水の少なくとも一部を除去するように作動するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ガスを含有するガスの存在下で燃料を燃焼するボイラーにおいて発生した二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガス(二酸化炭素を富有する煙道ガス)を浄化する方法に係る。
【0002】
本発明は、二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化するガス浄化システム、及びボイラーシステムにも係る。
【背景技術】
【0003】
発電プラントのような燃焼プラントにおける石炭、石油、泥炭、廃棄物等の燃料の燃焼では、熱いプロセスガスが発生し、このようなプロセスガスは、汚染物、中でも二酸化イオウSO2のようなイオウ酸化物、及び二酸化炭素CO2を含有する。環境に対する要求が増大するにつれて、プロセスガスから二酸化炭素を除去するための各種の方法が開発されてきた。このような方法の1つは、いわゆるoxy-fuelプロセスである。oxy-fuelプロセスでは、上述の燃料のような燃料を窒素希薄ガスの存在下で燃焼する。酸素源によって提供される酸素ガスをボイラーに供給する(ボイラーにおいて、酸素ガスは燃料を酸化する)。oxy-fuel燃焼プロセスでは、二酸化炭素富有煙道ガスが生成されるが、その二酸化炭素含量は、二酸化炭素の大気中への放出を低減するために、別のユニットにおいて圧縮及び除去される。
【0004】
oxy-fuelボイラーの例は米国特許出願公開第2007/0243119号に記載されている。米国特許出願公開第2007/0243119号に記載されているoxy-fuelボイラーは、プロセスガス(煙道ガスと称される)を発生する。煙道ガスからダスト粒子を除去するために、煙道ガスを特殊なコレクターに導く。ついで、煙道ガスを噴霧塔ユニットに送り、ここで、石灰石スラリーと接触させる手段によって二酸化イオウを除去する。噴霧塔ユニットは、煙道ガスを冷却して、煙道ガスに含まれる水を凝縮する機能を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、酸素ガスを含有するガスの存在下で燃料を燃焼するボイラーにおいて発生された二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化する方法を提供することにあり、該方法は従来の方法と比べて、除去効率及び/又は操作コストについてより効果的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、酸素ガスを含有するガスの存在下で燃料を燃焼するボイラーにおいて発生された二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化する方法であって、該方法は、
第1のガス浄化装置において、ボイラーにおいて発生された煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも80%を除去して、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生させ、
部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの少なくとも一部を、第1のガス浄化装置から分離された第2のガス浄化装置に送り、
第2のガス浄化装置において、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該ガスから水を凝縮させ、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスよりも低い水蒸気濃度を有する浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生させる
ことを含んでなるガス浄化法によって達成される。
【0007】
この方法の利点は、二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる二酸化イオウの大部分の除去が、第1のガス浄化装置において、ガスの冷却によることなく、二酸化イオウの除去効率について最適化される様式で行われることである。二酸化イオウの除去について効率的である多くのガス浄化装置は、カルシウム系吸収剤を含んでなるスラリー及び/又は水分を含むダスト物質を含み、このような吸収剤は、特に、冷却が凝縮を生ずるようなより低い温度では、スケーリングを生ずる傾向にある。さらに、第1のガス浄化装置における凝縮は、第1のガス浄化装置の水バランスを制御することについて問題を生ずることもある。従って、第1のガス浄化装置において二酸化イオウの大部分の除去を行うこと(第1のガス浄化装置は、その課された仕事について最適化される)及び第2のガス浄化装置において冷却を行うこと(第2のガス浄化装置は第1のガス浄化装置からは分離されている)は効果的かつ持続的な作動を提供する。
【0008】
1具体例によれば、前記第2ガス浄化装置における、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該ガスから水を凝縮する工程は、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却液体と直接接触させることを含んでなる。この具体例の利点は、冷却液体が、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを効果的に冷却し、及び部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスから二酸化イオウの残部の多くを除去することである。従って、第2のガス浄化装置は、冷却器としての機能に加えて、最終生成物として非常に清浄な二酸化炭素を精製するガスポリシング装置として機能する。
【0009】
1具体例によれば、冷却液体のpH値を、20℃の水への溶解度少なくとも50g/Lを有するアルカリ性物質を前記冷却液体に供給する手段によって、pH4−6.5の範囲に制御する。この具体例の利点は、pH4−6.5、好ましくはpH4.5−6とすることによって二酸化イオウの除去を効果的に行うことができ、従って、第2のガス浄化装置において、良好なガスポリシング効果が達成されることである。20℃の水への溶解度少なくとも50g/Lを有するアルカリ性物質は、冷却液体に固形分を何ら添加しないとの利点を有する。従って、第2のガス浄化装置は、実質的に透明な液体にて作動される。第2のガス浄化装置におけるスケーリングに伴う問題が少ないことに加えて、高溶解度をもつアルカリ性物質を使用する方法は、吸収剤がこのような吸収に容易に利用されるため、二酸化イオウの効果的な除去を提供するとの利点も有する。好ましくは、アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び炭酸ナトリウムを含んでなるアルカリ性物質の群から選ばれる。それ自体溶解性であることに加えて、これらの物質は、水への高い溶解性を有し、これによって、第2のガス浄化装置におけるスケーリングに伴う問題をさらに低減する硫酸ナトリウムNaSO4のような吸収された二酸化イオウの化合物を生成するとの更なる利点も有する。
【0010】
1具体例によれば、前記冷却液体における固形分は10g/L未満である。この具体例の利点は、第2のガス浄化装置が、冷却液体における固形分濃度が非常に低い状態で作動されるため、スケーリングに伴う問題が少なく、摩耗の問題も少ないことである。従って、第2のガス浄化装置の投資コスト及び操作コストが低減される。
【0011】
1具体例によれば、第1のガス浄化装置から排出された部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの50−90容量%を、このような部分を先に第2のガス洗浄装置を通過させることなく、ボイラーに再循環する。この具体例の利点は、再循環する部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、第2のガス浄化装置において処理することなくボイラーに戻すことである。これは、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの全部を処理することが要求されない場合には、第2のガス浄化装置をより小さいものとすることができるため投資コストを節約でき、及び部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの冷却及びポリシングが、最終廃棄のために二酸化炭素煙道ガスを圧縮又は他の態様で処理するユニットに送られるガスの部分についてのみ行われるため、操作コストを節約する。さらに、ボイラーがoxy-fuelボイラーである場合には、煙道ガスの一部を再循環する目的の1つは、ボイラーにおいて、燃焼ガスを希釈するものである。従って、再循環されるべき煙道ガスの一部から含有される水蒸気の一部を除去することは、希釈効果を低減させ、その結果、再循環流量をさらに増大する必要があるため、有利ではない。
【0012】
1具体例によれば、第2のガス浄化装置において、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該煙道ガスから水を凝縮させる工程は、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、浄化した煙道ガスが水蒸気0.5−8容量%を含んだものとなるような温度に冷却することを含んでなる。この具体例の利点は、非常に少ない量の水蒸気を、浄化した二酸化炭素富有ガスと共に、次の処理工程に送ることであり、このような次の処理工程は、例えば、二酸化炭素を最終的に廃棄することを目的として、浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを圧縮することを含む。
【0013】
1具体例によれば、第2のガス浄化装置において形成された凝縮水の少なくとも一部を、補給水として、第1のガス浄化装置に送る。この具体例の利点は、凝縮水をプロセスの他の部材において、第1のガス浄化装置の作動が、第1のガス浄化装置に供給される凝縮水の量があまりにも多すぎることによって乱されることがないように制御した態様で利用されることである。必要であれば、凝縮水の残りの部分を、初めに大規模な水処理プロセスにおいて処理する必要なく、農地の灌漑のために利用されるように及び/又は廃棄され得るように高純度とする。
【0014】
1具体例によれば、第1のガス浄化装置において、ボイラーで発生された煙道ガス中の二酸化イオウの少なくとも80%を除去する工程は、ボイラーにおいて発生された煙道ガスをカルシウム系吸収剤と直接接触させることを含んでなる。この具体例の利点は、カルシウム系吸収剤が比較的安価であり、二酸化イオウの除去に利用される場合、興味深い最終生成物を生成することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、酸素ガスを含有するガスの存在下において燃料を燃焼するボイラーにおいて発生される二酸化イオウガスを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化するガス浄化システムを提供することにあり、該ガス浄化システムは、従来のシステムと比べて、除去効率及び/又は作動コストについてより効果的である。
【0016】
この目的は、酸素ガスを含有するガスの存在下において燃料を燃焼するボイラーにおいて発生される二酸化イオウガスを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化するガス浄化システムであって、
ボイラーにおいて発生した二酸化炭素富有煙道ガスを受け取り、ボイラーにおいて発生される煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも一部を除去するように作動する第1のガス浄化装置、
前記第1のガス浄化装置とは分離されており、第1のガス浄化装置を通過した部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを受け取るように作動する第2のガス浄化装置であって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該煙道ガスから水を凝縮させることによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる水の少なくとも一部を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスより低い水蒸気含量を有する浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生するように作動する第2のガス浄化装置
を含んでなるガス浄化システムによって達成される。
【0017】
このガス浄化システムの利点は、作動コスト、維持コスト及び設備コストについて効果的なガス浄化を提供できることにある。
【0018】
1具体例によれば、第2のガス浄化装置は、20℃における水溶解度少なくとも50g/Lを有するアルカリ性物質を冷却液体に供給することによって、冷却液体のpH値を制御するように作動するpH制御装置を備えている。この具体例の利点は、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスからの二酸化イオウの除去がより効果的になることである。他の利点は、pHが非常に低いレベルには低下しないため、第2のガス浄化装置を高価ではない鋼材で製造できることである。
【0019】
1具体例によれば、第2のガス浄化装置は、冷却液体を、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスと接触させるための充填物質を具備する冷却器を含んでなる。この具体例の利点は、冷却液体と、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスとの間の効果的な接触が、下流の装置を害するような多量の非常に小さい液滴を発生しないように行われることである。
【0020】
本発明の他の目的は、従来のボイラーシステムよりも効果的なボイラーシステムを提供することにある。
【0021】
この目的は、燃料、酸素ガス、及び再循環二酸化炭素富有煙道ガスをボイラー(燃料を燃焼して、二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを発生するように作動する)に供給することによって電力を発生するためのボイラーシステムによって達成され、前記ボイラーシステムは、
ボイラーにおいて発生した二酸化炭素富有煙道ガスを受け取り、ボイラーにおいて発生した二酸化炭素富有煙道ガスに含有される二酸化イオウの少なくとも一部を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生する第1のガス浄化装置、及び
前記第1のガス浄化装置とは分離されており、第1のガス浄化装置を通過した部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを受け取るように作動する第2のガス浄化装置であって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該煙道ガスから水を凝縮させることによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる水の少なくとも一部を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスより低い水蒸気含量を有する浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生するように作動する第2のガス浄化装置
を含んでなる。
【0022】
本発明の他の目的及び特徴は、下記の記載及び特許請求の範囲から明白になるであろう。
【0023】
次に、添付図面を参照して、本発明をさらに詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】1具体例によるボイラーシステムの概略図である。
【図2】他の1具体例によるボイラーシステムの概略図である。
【図3】第1の具体例による第2のガス浄化装置の概略図である。
【図4】第2の具体例による第2のガス浄化装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、ボイラーシステム1の概略図である。ボイラーシステム1(この具体例では、oxy-fuelボイラーである)は、主要部材として、スチームタービン(概略して4として表示する)、静電気集塵器6、及びガス浄化システム8を含んでなる。ガス浄化システム8は、その主要部材として、湿式スクラバーの形の第1のガス浄化装置10、及び冷却器の形の第2のガス浄化装置12を含んでなる。
【0026】
石炭又は石油のような燃料は燃料貯蔵所14に収容されており、供給パイプ16を介してボイラー2に供給される。酸素ガス源18は、公知の様式で酸素ガスを提供するように作動する。酸素ガス源18は、空気から酸素ガスを分離するように作動する空気分離プラント、酸素分離膜、貯蔵タンク、又はシステム1に酸素を提供する各種の他の源でもよい。供給ダクト20は、代表的には酸素O2 90−99.9容量%からなる酸素ガスをボイラー2に送るように作動する。ダクト22は、二酸化炭素を含有する再循環煙道ガスをボイラー2に送るように作動する。図1に示すように、供給ダクト20はボイラー2の上流でダクト22と結合して、ボイラー2の上流で、酸素ガス及び再循環煙道ガス(二酸化炭素を含有する)を相互に混合して、代表的には酸素ガス約20−50容量%を含有し、残余が主として二酸化炭素及び水蒸気でなるガス混合物を形成する。ボイラー2には空気がほとんど入らないため、ボイラー2に窒素ガスが供給されることはない。実際の操作では、ボイラー2に供給されるガス容量の3容量%未満が空気(主として、空気の漏れとしてボイラー2に入る)である。ボイラー2は、ダクト22を介して供給される酸素ガス(二酸化炭素を含有する再循環煙道ガスと混合されている)の存在下で、供給パイプ16を介して供給される燃料を燃焼するように作動する。蒸気パイプ24は、燃焼の結果としてボイラー2において生成された水蒸気を蒸気タービン4(電力の形で力を発生する)に送るように作動する。ダクト26は、ボイラー2において発生した二酸化炭素富有煙道ガスを静電気集塵器6に送るように作動する。「二酸化炭素富有煙道ガス」は、ダクト26を介してボイラー2から排出されるガスが、少なくとも二酸化炭素CO2 40容量%を含有することを意味する。ボイラー2から排出される煙道ガスの50容量%以上が、しばしば、二酸化炭素である。「二酸化炭素富有煙道ガス」の残余は、水蒸気(H2O)約20−50容量%、酸素(O2)2−7容量%(ボイラー2においては、わずかに酸素過剰が好ましいため)、及び主として窒素(N2)及びアルゴン(Ar)を含む他のガス合計約0−10容量%(空気の漏れを完全には回避できないため)である。
【0027】
静電気集塵器6(例えば、米国特許第4,502,872号から公知のタイプのものでもよい)は、二酸化炭素富有煙道ガスからダスト粒子の大部分を除去する。静電気集塵器の代わりとしては、ダスト粒子を除去するために、織布フィルター(例えば、米国特許第4,336,035号から公知である)を利用することができる。ダクト28は、二酸化炭素富有煙道ガスを静電気集塵器6からガス浄化システム8の湿式スクラバー10に送るように作動する。
【0028】
湿式スクラバー10は塔スクラバータイプであり、スクラバーのタイプは、それ自体、例えば、EP 0 162 536から知られている。湿式スクラバー10(ボイラー2から静電気集塵器6を経由して来る二酸化炭素含有煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも一部、好ましくは少なくとも80%を除去するように作動する)は、スラリー循環パイプ32において、石灰石スラリーを湿式スクラバー10の底部から湿式スクラバー10の上方部分に配置されたスラリーノズルセットに再循環するように作動する循環ポンプ30を含んでなる。スラリーノズル34は、湿式スクラバー10において石灰石スラリーを微細に分布させ、石灰石スラリーと、ダクト28を介して湿式スクラバー10に送られ、湿式スクラバー10内を実質的に垂直に上方に流動する煙道ガスとの間の良好な接触を達成するように作動する。新鮮な石灰石CaCO3を、石灰石保存タンク36及び供給パイプ38を含んでなる吸収剤供給装置から循環パイプ32に供給する。湿式スクラバー10では、二酸化イオウSO2は石灰石CaCO3と反応して亜硫酸カルシウムCaSO3を形成し、続いて、酸化されて、石膏CaSO4を形成する。亜硫酸カルシウムの酸化は、好ましくは、酸化空気又は酸素ガスと二酸化炭素富有煙道ガスとが混合することを防止するために外部の容器(図1では示されていない)において、石灰石スラリーを通して空気又は酸素ガスを発泡させることによって行われる。形成された石膏を、廃棄パイプ40を介して湿式スクラバー10から除去し、石膏脱水ユニット(概略して42で示す)に送る。脱水した石膏は、例えば、壁板の製造において商業的に利用される。
【0029】
部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、ダクト44(煙道ガスをガス分配ポイントに送る)を介して湿式スクラバー10から排出する。ガス分配ポイント46(部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの流れの方向について見られるように、湿式スクラバー10と冷却器12との間に位置する)において、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを2つの部分、すなわち、第1の流れ(ダクト22を介してボイラー2に再循環される)及び第2の流れ(ダクト48を介して冷却器12に送られる)に分ける。冷却器12は循環ポンプ50(後に詳細に記載する様式で、循環パイプ52を介して、冷却器内において冷却液体を循環させるように作動する)を含んでなる。
【0030】
冷却器12内を循環する冷却液体は、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却し、水蒸気に関して飽和温度以下であり、これにより、湿式スクラバー10から送られる部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含有される水蒸気の少なくとも一部を凝縮させるような温度とする。凝縮した水を、廃棄パイプ54を介して、冷却器12から排出する。パイプ54を介して冷却器12から排出された凝縮した水の一部を、パイプ56を介して、補給水として湿式スクラバー10に送る。凝縮した水の他の部分を、パイプ58を介して、水処理ユニット60に送り、ここで、凝縮した水を、例えばボイラー水としてプロセスで使用する前に又は廃棄する前に処理する。浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、ダクト62を介して、冷却器12から排出し、ガス処理ユニット64に送り、ここで、廃棄のために、浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを圧縮する。
【0031】
図2は、第2の具体例によるボイラーシステム101を示す。ボイラーシステム101の部材の多くは、図1を参照して上述したボイラーシステム1と同様であり、これらの部材について、図2を参照しては詳述していないが、図1におけるものと同じ参照符号を付している。ボイラーシステム1とボイラーシステム101との主な差異は、ボイラーシステム101のガス浄化システム108が、噴霧乾燥吸収器の形の第1のガス浄化装置110を含んでなることである。第2のガス浄化装置は、図1において説明した具体例におけるものと全く同じ冷却器12である。図2を参照すると、噴霧乾燥吸収器110(例えば、米国特許第4,755,366号から知られているタイプのものでもよい)は、噴霧乾燥チャンバー111及びダスト粒子除去装置113を含んでなる。噴霧乾燥チャンバー111は、石灰石スラリーをアトマイズし、石灰石スラリーを、ダクト28を介して静電気集塵器6から来る二酸化炭素富有煙道ガスと混合させるように作動する少なくとも1つのディスペンサー134を含んでなる。噴霧乾燥チャンバー111内では、アトマイズされた石灰石スラリーがボイラー2において発生した煙道ガス中の二酸化イオウと反応し、乾燥した生成物を形成する。乾燥した生成物を噴霧乾燥チャンバー111の底部において及び粒子除去装置113(織布フィルターでもよく、それ自体、例えば、米国特許第4,336,035号から知られている)で収集するついで、乾燥した生成物を、廃棄装置(概略して142として示す)に送る。石灰石スラリーは、混合タンク139(新鮮な石灰石CaCO3が供給パイプ138を介して石灰石貯蔵所136から供給される)において調製される。パイプ56は、凝縮された水を冷却器12から混合タンク139に送るように作動する。従って、冷却器12において発生した凝縮水が、噴霧乾燥吸収器110のための石灰石スラリーの調製における補給水として利用される。任意には、廃棄装置142において収集した乾燥生成物の一部を混合タンク139に再循環して、新鮮な石灰石及び補給水と混合することもできる。ポンプ130は、石灰石スラリーを、供給パイプ132を介して、混合タンク139からディスペンサー134に移動させるように作動する。特に詳述していないボイラーシステム101の部材については、ボイラーシステム1の対応する部材と同様のデザイン及び機能を有する。
【0032】
図3は、冷却器12の形の第2のガス浄化装置をさらに詳細に示す。冷却器12は塔66(第1のガス浄化装置から、すなわち、湿式スクラバー10又は噴霧乾燥吸収器110から来る部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスと、パイプ52におけるポンプ50によって冷却器12内で循環される冷却液体との間の良好な接触を提供するために充填物質68が充填されている)を含んでなる。充填物質68は、いわゆる構造化充填材タイプのもの(1例として、Mellapak Plus(米国タルサのSulzer Chemtech USA Inc. から入手可能である)がある)、又はいわゆるランダム充填材タイプのもの(1例として、Jaeger Tri-Pack(米国ヒューストンのJaeger Products Inc. から入手可能である)がある)である。液体分配器70は充填物質の上に冷却液体を分配する。この場合、冷却液体は主として水を含んでなり、煙道ガスと直接接触される。液体分配器70(例えば、JaegerモデルLD3又はモデルLD4(米国ヒューストンのJaeger Products Inc. から入手可能である)である)は、小さい液滴の過度の形成を生ずることなく、充填物質68の上に均等に冷却液体を分配する。小さい液滴の過度の形成を生ずることなく、充填物質68の上に均等に液体を分配する。
【0033】
部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスは、ダクト48を介して、塔66の下方端に供給され、塔66を通って垂直に上方に移動し、充填物質68を通って下方に流動する冷却液体と向流様式で接触する。塔66の上方端には、ミスト除去器72が設けられている。ミスト除去器72は、煙道ガスから液滴を除去するように作動する。ついで、浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、ダクト62を介して冷却器12から排出する。ファン74は、浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、図1を参照して上述したガス処理ユニット64に送るように作動する。
【0034】
図3に示すように、パイプ52には、熱交換器76が設けられている。熱交換器76は、パイプ52において移動する冷却液体を冷却するように作動する。熱交換器76には、パイプ78を介して、水、グリコールを含有する水のような冷却媒体が供給され、冷却媒体はパイプ80を介して熱交換器76から排出される。冷却媒体は、例えば、冷却塔から来るものでもよい。
【0035】
pHセンサー82は、パイプ52において送られる冷却液体のpHを測定するように作動する。制御ユニット84は、pHセンサー82から信号を受け取るように作動する。制御ユニット84は、また、アルカリ性物質貯蔵所86からのアルカリ性物質の供給を制御するように作動する。アルカリ性物質は、例えば、水溶液中の水酸化ナトリウムNaOHである。制御ユニット84は、pHセンサー82によって測定されたpH値をpHの設定値と比較するように作動する。pHセンサー82によって測定されたpH値がpHの設定値よりも低い場合、制御ユニット84は、ポンプ88の形のアルカリ供給装置に信号を送って、冷却液体のpHを増大させるために、アルカリ性物質を、パイプ90を介して、貯蔵所86からパイプ52にポンプ送給する。
【0036】
任意には、ガス−ガス熱交換器92を設けることができる。ダクト94(図3において点線で示す)は、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの流れの少なくとも一部を、ダクト48から熱交換器92に送り、再度、ダクトに戻すように作動する。ダクト96(図3において点線で示す)は、ダクト62の浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの流れの少なくとも一部を、熱交換器92に送り、再度、ダクト62に戻すように作動する。
【0037】
次に、ガス浄化システム8及び108の操作様式を、実施例により、図1−3を参照して記述する。ボイラー2において発生した二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスは、代表的には、ダクト28において温度120−200℃を有し、ダクト28を介してガス浄化システム8に入る。ボイラー2から排出された二酸化炭素富有煙道ガスは、代表的には、二酸化イオウSO2 2000−15000 mg/Nm3(乾燥ガス基準)及び上述した量の水蒸気、二酸化炭素、酸素及び窒素を含有する。煙道ガスを、湿式スクラバー10の形の第1のガス浄化装置に導入し、循環する石灰石スラリーと接触させて、結果として、ボイラー2から来る二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを生成する。代表的には、湿式スクラバー10は、二酸化イオウの95−99.5%を除去するが、これは、ダクト44を介して湿式スクラバー10から排出される部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスが、代表的に二酸化イオウ含量50−300 mg/Nm3(乾燥ガス基準)及び温度60−80℃を有することを意味する。湿式スクラバー10から排出された部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスは、実質的に水蒸気で飽和されているであろう。
【0038】
二酸化イオウを含有し、湿式スクラバー10への導入時に温度120−200℃を有する二酸化炭素富有煙道ガスと、湿式スクラバー10に供給される石灰石スラリーとの間の接触によって、湿式スクラバー10において、水の蒸発が生ずる。パイプ56を介して冷却器12から湿式スクラバー10に送られる凝縮水は、湿式スクラバー10において蒸発した水を補う。煙道ガスの水分含量は、蒸発の効果として多少増大する。したがって、湿式スクラバー10から排出される部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスは、代表的には、水蒸気含量24−56%を有する。
【0039】
噴霧乾燥吸収器110を使用する場合、図2の具体例によれば、噴霧乾燥吸収器110から排出される部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスは、代表的には温度90−120℃を有することができ、このような部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスは、水蒸気については不飽和であり、噴霧乾燥チャンバー110における石灰石スラリーの水分の蒸発の結果として、ボイラー2から排出される二酸化炭素富有煙道ガスよりも高い水蒸気濃度、代表的には22−53容量%を有する。
【0040】
ダクト44を介して湿式スクラバー10から排出される部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの一部、代表的には50−90容量%を、ダクト22を介してボイラー2に戻す。ボイラー2に再循環される部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの部分は冷却器12を通過して送られないため、冷却器12を、より小さいガス流量用としてデザインすることが可能になる。湿式スクラバー10から排出される部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの残りの部分、代表的には10−50容量%を、ダクト48を介して冷却器12に送る。図3に示すように、冷却器12の熱交換器76に供給される冷却媒体は、代表的には、温度0−30℃を有し、パイプ52内を循環する冷却媒体を、代表的には2−35℃に冷却する。冷却器12の充填物質68において、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、冷却液体との直接接触により、代表的には温度3−40℃に冷却する。この冷却(部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの水蒸気についての飽和温度以下の温度への冷却)の結果として、冷却器12内において水が凝縮する。従って、ダクト62を介して冷却器12から排出される部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスは、水分含量わずかに0.5−8容量%を有する。
【0041】
冷却器12の充填物質68における冷却液体と煙道ガスとの間の直接接触によって、更なる二酸化イオウの除去も達成される。代表的には、冷却器12における二酸化イオウに関する除去効率は少なくとも70%、しばしば95%又はそれ以上である。従って、ダクト62を介して冷却器12から排出される浄化された二酸化炭素富有煙道ガスは、代表的には、二酸化イオウ濃度5−60mg/Nm3(乾燥ガス基準)又はそれ以下を有することができる。
【0042】
冷却器12の冷却液体に溶解した二酸化イオウは、パイプ52において循環する冷却液体のpH値を低下させることになる。pHセンサーは、このようなpH値の低下を検知し、ポンプ88に貯蔵所86からパイプ52にアルカリ性物質を供給することを命令する。pHの設定値は代表的にはpH4−6.5、より好ましくはpH4.5−6である。このような設定値は、煙道ガスからの多量かつ不要な二酸化炭素の除去を生ずることなく、二酸化イオウの効果的な除去を提供できることが知見されている。冷却器12において循環する冷却液体のpH値を制御することは、二酸化イオウの除去効率を制御するものでもある。従って、pHの設定値は、代表的には、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含有される二酸化イオウの少なくとも70%を冷却器12において除去するような値に設定される。冷却器12における二酸化イオウの除去を制御する他の基準としては、ポンプ50によってポンプ送給される冷却液体の量の変化、及び冷却器12の充填物のタイプが含まれ、後者の基準は、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの冷却にも影響を及ぼす。
【0043】
冷却器12においてポンプ50によって循環される冷却液体は好ましくは透明な液体であり、これは、循環する液体には極少量の固形分しか含有されていないことを意味する。好ましくは、冷却器12内を循環する冷却液体中の固形分の量は10g/L以下、好ましくは5g/L以下である。これに対して、図1を参照して上述した湿式スクラバー10において循環するスラリーは、代表的には、固形分150−300g/Lを含有する。冷却器12において循環する液体中の固形分の濃度が低いことによる利点は、パイプ54を介して冷却器12から排出される凝縮物である水の再使用及び浄化が、高濃度の固状粒子を含む凝縮物である水を混合する場合と比べて容易となることである。冷却器12において循環する冷却液体中の固形分を少量にすることに関して、アルカリ性物質は、好ましくは、より低い温度において、高い水溶性を有している。好ましくは、貯蔵所86に保存され、冷却器12において循環する冷却液体のpHを制御するために使用されるアルカリ性物質は、温度20℃において少なくとも50g/L、さらに好ましくは20℃において少なくとも100g/Lの水溶解度を有する。好適なアルカリ性物質の例としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)がある。最も好適なアルカリ性物質は、しばしば、水酸化ナトリウム(NaOH)である。
【0044】
さらに、充填物質68では顕著な凝縮が生ずるため、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガス中に主としてエーロゾルの形で存在する三酸化イオウSO3の効果的な除去を提供する。何らの理論によって拘束されることなく、充填物質68において大幅に凝縮する水は、エーロゾル粒子上で凝縮し、このようなエーロゾル粒子を、充填物質68において循環する循環冷却液体によって捕捉されるようなサイズの液滴に成長させるものと考えられる。
【0045】
ついで、煙道ガスを、ミスト除去装置72を通過させて、煙道ガス流に同伴される液滴の大部分を除去する。ついで、煙道ガス(このステージでは、浄化された二酸化炭素富有煙道ガスと称される)を、ダクト62を介して冷却器12から排出する。任意に、ダクト62の浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、熱交換器92において、図3を参照して記載したように、ダクト48の部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスによって再加熱できる。このような再加熱により、ダクト62の浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの温度を5−20℃高めることができる。浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを再加熱する利点は、ミスト除去装置72を通過した非常に小さい液滴及び水のいくらかを蒸発させることにあり、これは、図1において説明した下流のガス処理ユニット64にとっての利点となる。熱交換器92における浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの再加熱は、熱交換器76の上流の循環パイプ52における凝縮水、低圧スチーム、又はプロセスの他の部材からの熱水のような他の加熱媒体によって達成される。
【0046】
図4は、チューブクーラータイプの他の冷却器212を示す。図3の対応する部材と同じ機能を有する図4に示す部材には、同じ参照符号を付している。冷却器212は塔266を有する。塔212には、複数個の管268が設けられている。部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスは、ダクト48を介して、塔266の上方端に供給され、塔266を通って垂直に下方に管268の内側で移動する。煙道ガスは、ダクト62を介して、塔266の下方端から排出される。
【0047】
ポンプ250は、パイプ252における冷却液体を塔266に循環するように作動する。冷却液体は、塔266の内部において、管268の外側上を移動する。従って、冷却器212における冷却は間接的冷却プロセスであり、管268の内部を通る煙道ガスは、管268の外側と接触する冷却液体によって冷却される。煙道ガス流と冷却液体との間の物理的な接触がないため、冷却液体が汚染されることはない。塔266を通過した冷却液体を、液体を再び塔266に導入する前に冷却するため、冷却塔276の形の冷却装置がパイプ252に設けてある。冷却塔276は、図4において矢印Aによって示す環境空気によって又は他の媒体によって冷却される。塔266には、冷却液体と管268の外表面との間の接触を改善するためにバッフル270が設けてある。
【0048】
部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの冷却の結果として、塔266において、煙道ガスに含まれる水分の一部の凝縮が生ずる。このような凝縮を介して形成された液体の水凝縮物は管268を通って下方に流動し、塔266の下方部分に達する。パイプ54を介して、凝縮物を塔266から排出して、図1及び2を参照して上述したように、凝縮物を、湿式スクラバー10に、又は噴霧乾燥吸収器110に、及び廃棄のために移動させる。管268内での水の凝縮により、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも一部を捕捉する水ミストが形成される。さらに、このような凝縮の効果として、エーロゾル粒子が成長する。従って、パイプ54を介して塔266から排出される液体凝縮物は、いくらかの捕捉された二酸化イオウ及びいくらかの捕捉された三酸化イオウエーロゾルを含有する。
【0049】
任意に、液体水凝縮物のいくらかを再循環して、管268を再度通過させることができる。このような再循環は、図4において点線で示すパイプ253及び図示していないポンプによって行われる。再循環する凝縮物のpH値をpH4−6.5に制御するために、図3に示すタイプのpH制御装置を利用することもできる。このような再循環の目的は、管268を通って流動する煙道ガス流を、多量の液体と直接接触させることによって、二酸化イオウのような汚染物の除去を増大することにある。
【0050】
ダクト62を介して、浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを塔266から排出する前に、浄化した二酸化炭素富有煙道ガスから凝縮物の液滴を除去することを目的として、塔266の下方部分に、ミスト除去器272が設けてある。図4に示すミスト除去器272に代わるものとして又はこれと組み合わせて、ダクト62の垂直部分及び/又は塔266とダクト62との間のトランジションに、ミスト除去器を設けることができる。
【0051】
特許請求の範囲の範囲内において、上述の具体例の幾多の変形が可能であることは理解されるであろう。
【0052】
以上において、第2のガス浄化装置が、充填物質を有する冷却器12(ここで、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却液体と直接接触させる)であるか、又は管268を有する冷却器212(ここで、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、冷却液体によって間接的に冷却する)であることを記載した。開放噴霧塔(ここで、冷却液体をアトマイジングノズルによってアトマイズし、続いて、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスと直接触させる)を含む他のタイプの冷却器が利用できることも理解されるであろう。
【0053】
以上において、石灰石CaCO3を、湿式スクラバー10、又は噴霧乾燥吸収器110に供給することを記載した。消石灰Ca(OH)2を含んでなる吸着剤を含む他の吸収剤を使用できることも理解されるであろう。石灰石CaCO3、及び消石灰Ca(OH)2のようなカルシウムを含んでなる吸収剤を使用することは、石膏CaSO4、又は亜硫酸カルシウムCaSO3からなる生成物(いずれも比較的無毒であり、廃棄が容易であり、特に石膏の場合、再使用が容易である)を生成するとの利点を有する。更なる利点は、カルシウムを含んでなる吸収剤が比較的安価なことである。
【0054】
以上において、図1の湿式スクラバー10が、EP 162 536に記載されたような、いわゆる塔スクラバータイプのものであることを記載した。同様の他のタイプの湿式スクラバーが利用できることも理解されるであろう。図1を参照して開示した湿式スクラバー10に代わるものとして使用される湿式スクラバーの一例として、いわゆる発泡床スクラバーがある。発泡床スクラバー(その一例は、国際特許公開WO 2005/007274に開示されている)では、開口板(この上に、石灰石を含有するスラリーの流動層が送られる)を通して煙道ガスを送る。スラリーの流動層と煙道ガスとが接触する際に、スラリーの流動層に二酸化イオウが捕捉され、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスが生成される。
【0055】
以上において、図2を参照して、煙道ガスから二酸化イオウを除去するために噴霧乾燥吸収器110が利用できることを記載した。乾燥最終生成物を生成する他のタイプのスクラバーを使用することができることも理解されるであろう。このようなスクラバーの1つは、国際特許公開WO 2004/026443に開示されている。国際特許公開WO 2004/026443に開示されたスクラバーは、ミキサー(再循環されたダスト物質を、消石灰Ca(OH)2、及び水のような新鮮な吸収剤と混合して、湿潤したダストを形成し、ついで、煙道ガスと混合する)を含んでなる。湿潤したダストは煙道ガス中の二酸化イオウと反応して、固状でかつ乾燥した反応生成物を形成し、ついで、この生成物は、織布フィルターのようなフィルターにおいて除去される。
【0056】
要約すると、ボイラー2で発生した二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化すためのガス浄化システム8は、ボイラー2において発生した煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも80%を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生するように作動する第1のガス浄化装置10、及び第1のガス浄化装置10とは分離されており、第1のガス浄化装置10を通過した部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの少なくとも一部を受け取るように作動する第2のガス浄化装置12を含んでなる。第2のガス浄化装置12は、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して水を凝縮させることによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる水の少なくとも一部を除去するように作動する。
【0057】
いくつかの好適な具体例を参照して本発明を記述したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、各種の変更をなすこと又はその部材を他の均等物によって置換できることは理解されるであろう。さらに、本発明の教示に特殊な状況又は物を適合させるために、その本質的な範囲から逸脱することなく、幾多の変形をなすこともできる。従って、本発明は、本発明の実施の最良の形態として開示した特別な具体例に限定されず、本発明は特許請求の範囲の範囲に属する全ての具体例を含むものである。さらに、用語「第1の」、「第2の」等の使用は、順序又は重要性を意味するものではなく、むしろ、用語「第1の」、「第2の」等は、1つの部材を他の部材から区別するために使用したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスを含有するガスの存在下で燃料を燃焼するボイラーにおいて発生された二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化する方法であって、前記方法は、
第1のガス浄化装置において、ボイラーにおいて発生された煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも80%を除去して、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生させ、
部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの少なくとも一部を、第1のガス浄化装置から分離された第2のガス浄化装置に送り、
第2のガス浄化装置において、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該ガスから水を凝縮させ、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスよりも低い水蒸気濃度を有する浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生させる
ことを含んでなる、煙道ガス浄化法。
【請求項2】
第2のガス浄化装置における部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、煙道ガスから水を凝縮させる工程が、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却液体と直接接触させることを含んでなるものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
冷却液体のpH値を、20℃における水への溶解度少なくとも50g/Lを有するアルカリ性物質を前記冷却液体に供給することによって、pH4−6.5の範囲になるように制御する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アルカリ性物質が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び炭酸ナトリウムを含んでなるアルカリ性物質の群から選ばれるものである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
冷却液体が固形分10g/L以下を含んでなるものである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
第1のガス浄化装置から排出された部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの50−90容量%を、先に第2のガス浄化装置を通過させることなく、ボイラーに再循環する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第2のガス浄化装置において、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、煙道ガスから水を凝縮させる工程が、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを、浄化した二酸化炭素富有煙道ガスが水分含量0.5−8容量%を有するものとなるような温度に冷却することを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第2のガス浄化装置において形成された凝縮水の少なくとも一部を、補給水として、第1のガス浄化装置に送る、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第1のガス浄化装置におけるボイラーにおいて発生した煙道ガスの二酸化イオウ含量の少なくとも80%を除去する工程が、ボイラーにおいて発生した煙道ガスをカルシウム系吸収剤と直接接触させることを含んでなるものである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第2のガス浄化装置を、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの二酸化イオウ含量の少なくとも70%を除去するように制御する、請求項1−9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
酸素ガスを含有するガスの存在下において燃料を燃焼するボイラーにおいて発生された二酸化イオウガスを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを浄化するガス浄化システムであって、前記ガス浄化システムは、
ボイラーにおいて発生した二酸化炭素富有煙道ガスを受け取り、ボイラーにおいて発生された煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも一部を除去するように作動する第1のガス浄化装置、
前記第1のガス浄化装置とは分離されており、第1のガス浄化装置を通過した部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを受け取るように作動する第2のガス浄化装置であって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該煙道ガスから水を凝縮させることによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる水の少なくとも一部を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスよりも低い水蒸気濃度を有する浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生するように作動する第2のガス浄化装置
を含んでなる、煙道ガス浄化システム。
【請求項12】
第2のガス浄化装置が、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却液体と直接接触させるように作動する冷却器を含んでなるものである、請求項11記載のガス浄化システム。
【請求項13】
第2のガス浄化装置が、冷却液体のpH値を、20℃における水への溶解度少なくとも50g/Lを有するアルカリ性物質を前記冷却液体に供給することによって制御するように作動するpH制御装置を具備している、請求項12記載のガス浄化システム。
【請求項14】
冷却器が、冷却液体を、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスと接触させるために充填物質を具備している、請求項12記載のガス浄化システム。
【請求項15】
第2のガス浄化装置が、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを間接的に冷却するように作動するチューブクーラーである、請求項11記載のガス浄化システム。
【請求項16】
部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの流れ方向について、第1のガス浄化装置から排出された部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスの一部を、当該部分を、先に第2のガス浄化装置を通過させることなく、ボイラーに戻すように再循環するために、第1のガス浄化装置と第2のガス浄化装置との間にダクトを設けてなる、請求項11記載のガス浄化システム。
【請求項17】
第1のガス浄化装置が、当該第1のガス浄化装置にカルシウム含有吸収剤を供給するように作動する吸収剤供給装置を具備する、請求項11記載のガス浄化システム。
【請求項18】
第2のガス浄化装置において凝縮した水の少なくとも一部を、補給水として、第1のガス浄化装置に送るためにパイプを設けてなる、請求項11記載のガス浄化システム。
【請求項19】
燃料、酸素ガス、及び再循環二酸化炭素富有煙道ガスをボイラーに供給することによって電力を発生するボイラーシステム(前記ボイラーは、燃料を燃焼して、二酸化イオウを含有する二酸化炭素富有煙道ガスを発生するように作動する)であって、前記ボイラーシステムは、
前記ボイラーにおいて発生した二酸化炭素富有煙道ガスを受け取り、ボイラーにおいて発生した二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる二酸化イオウの少なくとも一部を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生する第1のガス浄化装置、及び
前記第1のガス浄化装置とは分離されており、第1のガス浄化装置を通過した部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを受け取るように作動する第2のガス浄化装置であって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを冷却して、該煙道ガスから水を凝縮させることによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスに含まれる水の少なくとも一部を除去し、これによって、部分的に浄化した二酸化炭素富有煙道ガスよりも低い水蒸気濃度を有する浄化した二酸化炭素富有煙道ガスを発生するように作動する第2のガス浄化装置
を含んでなる、ボイラーシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−512768(P2013−512768A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541589(P2012−541589)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002727
【国際公開番号】WO2011/067638
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】