説明

二酸化炭素有効利用装置

【課題】排出源から排出される二酸化炭素の削減がより低コストで行えるようにする、二酸化炭素有効利用装置の提供。
【解決手段】二酸化炭素を吸収して光合成により炭化水素化合物から構成された燃料を生成する藻類が配置されて供給された排ガス中の二酸化炭素から藻類により燃料を生成する燃料生成部101と、炭素を含んで構成された燃料の化学反応を利用する燃料使用装置102より排出される排ガスを燃料生成部101に供給する排ガス供給部103と、燃料生成部101の藻類より燃料を分離する燃料分離部104と、燃料分離部104で分離された燃料を燃料使用装置102に供給する燃料供給部105とを備える、二酸化炭素有効利用装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池などの燃料使用装置より排出される排ガス中の二酸化炭素を有効に利用できるようにする二酸化炭素有効利用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの一つとして排出量削減が課題とされている。二酸化炭素の大気中への排出量を削減する方法としては、まず、省エネルギー機器の使用により電力使用量を減らし、発電所から発生する二酸化炭素を削減する省エネルギー化がある。また、電気自動車のように二酸化炭素を発生しない機器に交換するクリーン化がある。
【0003】
これらに加え、排出源から排出された二酸化炭素を固定化し、大気中に放出させない固定化という方法がある。二酸化炭素の固定化の例としては、火力発電所から排出される二酸化炭素を回収し、地中などに貯留する技術開発の事例がある。また、炭化水素ガスを改質するなどして利用する燃料電池から排出される二酸化炭素を回収する技術も提案されている(特許文献1,2,3参照)。また、回収した二酸化炭素を尿素やメタノール製造の原料とし、化学工場で使用するなどの実用例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−265757号公報
【特許文献2】特開2008−108619号公報
【特許文献3】特開2008−108621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術では、主に二酸化炭素を回収するものであり、再度資源として利用するなど有効に利用することがなされていない。また、再資源化して有効に用いようとする技術では、二酸化炭素からの生成物質を、二酸化炭素排出源ではない化学工場などで利用するようにしているが、このような化学工場が、必ずしも上述した排出源に隣接して立地されているとは限らない。このため、利用を行う場所に搬送する必要がある。しかしながら、このような利用形態では、回収(固定化)した二酸化炭素あるいは二酸化炭素からの生成物質を輸送するためのコストが発生する。このように、従来では、二酸化炭素が削減できるが、コストがかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、排出源から排出される二酸化炭素の削減がより低コストで行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る二酸化炭素有効利用装置は、二酸化炭素を吸収して光合成により炭化水素化合物から構成された燃料を生成する藻類が配置されて供給された排ガス中の二酸化炭素から藻類により燃料を生成する燃料生成手段と、炭素を含んで構成された燃料の化学反応を利用する燃料使用装置より排出される排ガスを燃料生成手段に供給する排ガス供給手段と、燃料生成手段の藻類より燃料を分離する燃料分離手段と、燃料分離手段で分離された燃料を燃料使用装置に供給する燃料供給手段とを少なくとも備える。
【0008】
上記二酸化炭素有効利用装置において、燃料生成手段に藻類を供給する藻類供給手段を備えるようにしてもよい。
【0009】
上記二酸化炭素有効利用装置において、排ガス供給手段は、排ガスを貯留する排ガス貯留手段を備えるようにしてもよい。
【0010】
上記二酸化炭素有効利用装置において、燃料使用装置は、発電機であればよい。また、発電機は、燃料電池から構成されたものであればよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したことにより、本発明によれば、排出源から排出される二酸化炭素の削減がより低コストで行えるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における二酸化炭素有効利用装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態2における二酸化炭素有効利用装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0014】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における二酸化炭素有効利用装置の構成を示す構成図である。この二酸化炭素有効利用装置はまず、二酸化炭素を吸収して光合成により炭化水素化合物から構成された燃料を生成する藻類が配置されて供給された排ガス中の二酸化炭素から藻類により燃料を生成する燃料生成部101を備える。
【0015】
また、この二酸化炭素有効利用装置は、炭素を含んで構成された燃料の化学反応を利用する燃料使用装置102より排出される排ガスを燃料生成部101に供給する排ガス供給部103と、燃料生成部101の藻類より燃料を分離する燃料分離部104と、燃料分離部104で分離された燃料を燃料使用装置102に供給する燃料供給部105とを備える。
【0016】
燃料生成部101が備える藻類は、例えば、海産緑藻であるクラロコカム・リタレール(Chlorococcum littorale)、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)、ユーグレナ・ムタビリス(Euglena mutabilis)などの、微細藻類を用いればよい。これらの微細藻類は、自身が存在(生息)している水中に溶解した二酸化炭素を取り込み、光合成により細胞内に炭化水素化合物を生成(合成)して蓄積する。
【0017】
燃料生成部101では、光(例えば太陽光)が照射されている藻類が、供給されてきた二酸化炭素を吸収し、上述したように自身の細胞内に炭化水素化合物から構成された燃料を生成して蓄積する。また、藻類は、排出された排ガス中の二酸化炭素を選択的に取り込んで上述した光合成を行う。このため、燃料生成部101においては、排ガスより二酸化炭素を分離して供給される必要がない。なお、燃料生成部101においては、藻類が生存できるように、水が必要となる。
【0018】
燃料分離部104は、燃料生成部101で細胞内に燃料を生成した藻類より、燃料を取り出す。例えば、燃料分離部104は、乾燥部と搾油部とを備える。まず、細胞内に燃料を生成(蓄積)した藻類を燃料生成部101より取り出し、乾燥部で乾燥する。次に、搾油部で、乾燥した藻類より燃料を油分として分離する(絞り出す)。
【0019】
上述したように、燃料分離部104で分離した燃料を、燃料供給部105で燃料使用装置102に供給(輸送)すれば、燃料使用装置102の燃料として利用できるようになる。このように、本実施の形態によれば、燃料使用装置102より排出される排ガス中の二酸化炭素を取り出して、燃料使用装置102で利用可能な燃料にできるので、まず、排出される二酸化炭素が削減できるようになる。また、削減される二酸化炭素は、燃料として再利用されるので、コストが低減できるようになる。
【0020】
また、二酸化炭素の燃料への再資源化は、藻類の光合成により行っているため、例えば、太陽光を利用すればよく、電力を使用する必要がなく、この点でもコストの低減が図れる。ここで、例えば、小規模な燃料使用装置の場合、排出される二酸化炭素の量が少ないため、規模の拡大による二酸化炭素の削減処理コストの低減効果が得られにくい。例えば、従来では、回収した二酸化炭素を尿素やメタノール製造の原料とし、化学工場で利用できるようにしているが、この場合、再資源化した原料を輸送するなどのコストがかかる。規模が小さい場合、このようなコストを回収することが容易ではない。これに対し、上述した本実施の形態によれば、二酸化炭素より生成した燃料を異なる工場に輸送する必要がないなど、小規模な排出源に特に効果的である。
【0021】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態2における二酸化炭素有効利用装置200の構成を示す構成図である。二酸化炭素有効利用装置200は、反応部(燃料生成手段)202,排ガス貯留部205,燃料回収部(燃料分離手段)206,藻類供給部207を備える。
【0022】
発電設備215で排出された排ガスが、排ガス流路(排ガス供給手段)208−1を通じて排出され、二酸化炭素有効利用装置200内の排ガス貯留部205に一時貯留され、排ガス流路(排ガス供給手段)208−2を通じて反応部202に供給される。排ガス貯留部205は、反応部202における光221が照射されている藻類203の光合成による燃料生成処理が、光221の不足などにより滞る場合などに、反応部202に供給される排ガス量を制限するために設けられる。反応部202における光221を用いた藻類203の燃料生成が十分に維持できる場合は、排ガス貯留部205はなくてもよい。この場合、発電設備(燃料使用装置)215からの排ガス流路208−1が、反応部202に直接接続される。
【0023】
反応部202には、二酸化炭素を吸収して光合成により炭化水素化合物から構成された燃料を生成する藻類203が配置されている。藻類203は、例えば、クラロコカム・リタレール、ボツリオコッカス・ブラウニー、ユーグレナ・ムタビリスなどの、微細藻類であり、発電設備215で利用可能な燃料を生成する種を用いればよい。例えば、発電設備215が固体酸化物形燃料電池である場合、熱源生成などのために液体の炭化水素が燃料として用いられる。この場合、藻類203として、クラロコカム・リタレールを組み合わせることが考えられる。
【0024】
なお、藻類203は、水中に生息した状態で配置されている。また、反応部202には、太陽光などの光221が照射されている。この反応部202に、上述したように発電設備215からの排ガスが供給されると、光221が照射されている水中の藻類203が、水に溶解した二酸化炭素を取り込み、光合成により燃料を生成する。
【0025】
反応部202において、二酸化炭素を吸収し、光合成により燃料を生成し、生成した燃料を細胞内に蓄積した藻類203は、藻類輸送路210により燃料回収部206に輸送される。このように細胞内に燃料を蓄積した藻類が輸送された燃料回収部206では、藻類の細胞内に蓄積されている燃料を分離する。例えば、燃料回収部206は、乾燥部と搾油部とを備え、輸送された藻類を乾燥部で乾燥し、搾油部で、乾燥した藻類より燃料を絞り出す。このようにして燃料を分離された藻類は、反応済み藻類流路211を通じて外部に排出される。
【0026】
また、上述したように、藻類203の燃料生成状態に対応して燃料分離のために藻類203が消費される量に対応し、藻類供給部207より新たな藻類203が供給される。藻類203は、藻類流路209−1を通じて藻類供給部207に備蓄(貯留)され、必要に応じて藻類流路209−2を通じて反応部202に供給される。藻類203を貯留することなく反応部202に直接供給するようにしてもよい。この場合、藻類供給部207はなくてもよく、藻類流路209−1を反応部202に接続すればよい。また、藻類は、藻類流路209−1を通じての供給ではなく、人為的に藻類貯留部207に供給、あるいは、藻類貯留部207をカートリッジ形式として交換してもよく、供給手段は限定されない。なお、当然ながら、供給される藻類は、生存しているものである。
【0027】
上述したように反応部202で生成され燃料回収部206で回収された燃料は、燃料流路212−1を通じて燃料貯留部213に供給される。燃料貯留部213は、燃料流路212−2を通じて発電設備215に燃料を供給する。また、燃料流路212−3を通じて外部から燃料が供給される。反応部202で二酸化炭素から光合成で生成された燃料は、燃料貯留部213に供給されることで、発電設備215の燃料として再利用される。
【0028】
燃料貯留部213は、発電設備215内に設置されていてもよい。また、燃料貯留部213を設置せずに、反応部202で生成された燃料を、直接、発電設備215に供給してもよい。この場合、外部から燃料を供給する燃料流路212−3は、直接、発電設備215に接続するか、燃料流路212−1と接続することができる。ただし、燃料回収部206への燃料の逆流を防ぐために、外部からの燃料供給量の調整機構、あるいは、燃料流路212−1に逆流防止の機構を設置する必要がある。
【0029】
また、燃料流路212−1に限らず、上述した全ての流路には、逆流防止の機構を設置しておくことが望ましい。
【0030】
上述した本実施の形態2によれば、排出源である発電設備215より排出される二酸化炭素を、発電設備215で利用できる燃料に再資源化するので、まず、排出される二酸化炭素が削減できるようになる。また、削減される二酸化炭素は、燃料に再資源化し、発電設備215で燃料として利用できるので、コストが低減できるようになる。また、燃料への再資源化は、光を照射した藻類における光合成により行っているため、例えば、太陽光を利用することができ、電力などを使用する必要がなく、この点でもコストの低減が図れる。
【0031】
また、二酸化炭素から生成した燃料は、二酸化炭素の排出源で有効利用するので、小規模で分散した排出源において、オンサイトで二酸化炭素からの生成物が消費可能となり、カーボンオフセットとして扱うことが可能である。また、二酸化炭素排出源を発電機器とすることで、発電された電力は常に消費しなくても電池などへ蓄積ができ、発電機器は常に安定した稼動状態を保つことができる。これにより、排出される二酸化炭素量および二酸化炭素から生成される燃料量も一定の範囲内に保つことができるため、オンサイトで排出される二酸化炭素の全量を有効利用する設計も可能となる。
【0032】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、上述では、燃料使用装置として、主に固体酸化物形燃料電池を例に説明したが、これに限るものではない。燃料使用装置は、炭素を含んで構成された燃料の化学反応を利用して、二酸化炭素を含む排ガスを排出する装置であればよく、例えば、火力発電、焼却炉などの設備であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
101…燃料生成部、102…燃料使用装置、103…排ガス供給部、104…燃料分離部、105…燃料供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を吸収して光合成により炭化水素化合物から構成された燃料を生成する藻類が配置されて供給された排ガス中の二酸化炭素から前記藻類により前記燃料を生成する燃料生成手段と、
炭素を含んで構成された燃料の化学反応を利用する燃料使用装置より排出される排ガスを前記燃料生成手段に供給する排ガス供給手段と、
前記燃料生成手段の前記藻類より前記燃料を分離する燃料分離手段と、
前記燃料分離手段で分離された前記燃料を前記燃料使用装置に供給する燃料供給手段と
を少なくとも備えることを特徴とする二酸化炭素有効利用装置。
【請求項2】
請求項1記載の二酸化炭素有効利用装置において、
前記燃料生成手段に前記藻類を供給する藻類供給手段を備えることを特徴とする二酸化炭素有効利用装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の二酸化炭素有効利用装置において、
前記排ガス供給手段は、前記排ガスを貯留する排ガス貯留手段を備えることを特徴とする二酸化炭素有効利用装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化炭素有効利用装置において、
前記燃料使用装置は、発電機であることを特徴とする二酸化炭素有効利用装置。
【請求項5】
請求項4記載の二酸化炭素有効利用装置において、
前記発電機は、燃料電池から構成されたものであることを特徴とする二酸化炭素有効利用装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−244982(P2012−244982A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121845(P2011−121845)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】