説明

二酸化炭素還元用光触媒

【課題】可視光及び/又は紫外光により励起し、高効率で二酸化炭素をメタノール又はギ酸にまで還元することができる、新規な二酸化炭素還元用光触媒を提供する。
【解決手段】2価金属陽イオンと3価金属陽イオンを含有し、正電荷を持つ複水酸化物からなる、二酸化炭素還元用光触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の還元(固定・除去)に有用な光触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素を還元により固定・除去する技術の開発が行われている。
【0003】
特許文献1及び非特許文献1には、犠牲酸化剤を用いた二酸化炭素の光還元方法が記載されている。特許文献1には、レニウム、オスミウム、ニッケル、コバルト、ルテニウム、亜鉛、ロジウム、クロム、モリブデン、タングステン等の錯体とトリエチルアミン(犠牲酸化剤)とを用いて、紫外光照射のもと100気圧までの高圧二酸化炭素を反応させて一酸化炭素を得ることが記載されている。そして、22mmolのレニウム錯体の存在下、35気圧の二酸化炭素に紫外光照射することにより最高7.3mmol/hの一酸化炭素生成速度が得られることが報告されている。
【0004】
非特許文献1には、[Re(bipyridyl)(CO)3L] (L=SCN, Cl, CN)とアンモニウム塩(犠牲酸化剤)とを含む有機溶液に高圧水銀灯からの紫外光照射することにより二酸化炭素を還元して一酸化炭素を得ることが記載されている。そして、2μmolの[Re(bipyridyl)(CO)3(SCN)]を用いた場合に最高3.9μmol/hの一酸化炭素生成速度が得られることが報告されている。
【0005】
しかしながら、これらの技術は犠牲酸化剤を用いる必要がある上、生成物が有毒な一酸化炭素であるため、一酸化炭素ではなくメタノールやギ酸にまで還元できる技術の開発が進められている。これを踏まえ、非特許文献2には、主としてアナターゼ型の酸化チタンに銅を加えた触媒を用いて、水銀ランプから発せられる紫外光を照射することにより、101〜136kPaの二酸化炭素を0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液中で還元してメタノールを得ることが記載されている。この非特許文献2には、犠牲酸化剤を加えない二酸化炭素光還元反応としては最高の20μmol/h/gのメタノール生成速度が報告されている。
【0006】
また、非特許文献3には、酸化チタンに亜鉛フタロシアニンを加えた触媒を用いて、水銀ランプから発せられる紫外光を照射することにより、二酸化炭素を0.1規定の水酸化ナトリウム水溶液中で還元してギ酸を得ることが記載されている。この非特許文献3には、犠牲酸化剤を加えない二酸化炭素光還元反応としては最高の97μmol/h/gのギ酸生成速度が報告されている。
【0007】
しかしながら、犠牲酸化剤を用いずにメタノールやギ酸を生成する非特許文献2、3の技術にも改善の余地がある。それは、触媒活性を得るためには紫外光の照射が必要であり、自然エネルギー(可視光、太陽光)を直接利用できないこと、及び二酸化炭素の還元効率が未だ不十分であり、事前に二酸化炭素を濃縮しておかないと十分な還元効率が得られないことである。とりわけ、一般用空気清浄機、ルームエアコン、パッケージエアコン等に応用する際には可視光により励起する光触媒であることが実用上望ましい。また、酸化チタンを用いる上記技術では、二酸化炭素が吸着しづらいため、必然的に二酸化炭素の濃縮システムを組み込む必要が生じるが、かかるシステムの付加は機器の小型化やコスト削減の観点からは避けることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3590837号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Development of an Efficient Photocatalytic System for CO2Reduction Using Rhenium(I) Complexes Based on Mechanistic Studies", Journal of the American Chemical Society 130, 2023〜2031 (2009)
【非特許文献2】Photoreduction of CO2 using sol-gel derived titania-supported copper catalysts, Applied Catalysis B 37, 37〜48 (2002)
【非特許文献3】Photo-catalytic CO2 reduction using sol-gel derived titania-supported zinc-phthalocyanine", Journal of Cleaner Production 15, 1894〜1897 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、背景技術の問題点を改善するものであり、可視光及び/又は紫外光により励起し、高効率で二酸化炭素をメタノール又はギ酸にまで還元することができる、新規な二酸化炭素還元用光触媒を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、正電荷を持つ特定の複水酸化物からなる光触媒が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の二酸化炭素還元用光触媒に関する。
1. 2価金属陽イオンと3価金属陽イオンを含有し、正電荷を持つ複水酸化物からなる、二酸化炭素還元用光触媒。
2. 半導体性を有する、上記項1に記載の光触媒。
3. Pt粒子、Cu粒子及びFe粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記項1又は2に記載の光触媒。
4. 前記複水酸化物は層状である、上記項1〜3のいずれかに記載の光触媒。
5. 可視光及び/又は紫外光により触媒活性が得られる、上記項1〜4のいずれかに記載の光触媒。
6. 前記2価金属陽イオンは、Mg2+及びZn2+の少なくとも1種である、上記項1〜5のいずれかに記載の光触媒。
7. 前記3価金属陽イオンは、Al3+、Sc3+、Cr3+、Fe3+、Ga3+、Y3+、In3+及びCe3+からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1〜6のいずれかに記載の光触媒。
8. 前記2価金属陽イオンがZn2+であり、前記3価金属陽イオンがFe3+、Ga3+及びIn3+からなる群から選択される少なくとも1種である、上記項1〜5のいずれかに記載の光触媒。
9. 前記2価金属陽イオンと前記3価金属陽イオンのモル比が2:1〜4:1である、上記項1〜8のいずれかに記載の光触媒。
10. 溶液中でCO2−を還元する、上記項1〜9のいずれかに記載の光触媒。
11. 前記正電荷を均衡させるアニオンを含有する、上記項1〜10のいずれかに記載の光触媒。
12. 前記アニオンは、CO2−、SO2−、NO、Cl及びOHからなる群から選択される少なくとも1種である、上記項11に記載の光触媒。

以下、本発明の二酸化炭素還元用光触媒について詳細に説明する。
【0013】
本発明の二酸化炭素還元用光触媒は、2価金属陽イオンと3価金属陽イオンを含有し、正電荷を持つ複水酸化物からなることを特徴とする。
【0014】
上記特徴を有する本発明の二酸化炭素還元用光触媒は、事前に二酸化炭素の濃縮工程を行うことなく、高効率で二酸化炭素をメタノール又はギ酸にまで還元することができる。つまり、生成物に一酸化炭素が含まれない点で安全性が高い。また、可視光及び/又は紫外光により励起させることができるため、必ずしも紫外光の光源を用意することなく、太陽光や蛍光灯の照射により触媒活性が得られる点で一般用空気清浄機、ルームエアコン、パッケージエアコン等への応用が容易である。
【0015】
本発明の光触媒に用いる2価金属陽イオンとしては限定的ではないが、2族又は12族元素の陽イオンが好ましく、例えば、Mg2+及びZn2+の少なくとも1種が挙げられる。この中でも、Zn2+が好ましい。
【0016】
本発明の光触媒に用いる3価金属陽イオンとしては限定的ではないが、例えば、Al3+、Sc3+、Cr3+、Fe3+、Ga3+、Y3+、In3+及びCe3+からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。この中でも、Fe3+、Ga3+、In3+が好ましい。
【0017】
つまり、本発明の光触媒に用いる金属陽イオンとしては、2価金属陽イオンがZn2+であり、3価金属陽イオンがFe3+、Ga3+及びIn3+の少なくとも1種である組み合わせが好ましい。
【0018】
本発明の光触媒は、これらの2価金属陽イオン(M2+)と3価金属陽イオン(M3+)を含有し、正電荷を持つ複水酸化物からなる。このような複水酸化物を一般式により示すと、
[M2+1−x3+(OH)x+
(但し、xは、0.17<x<0.33)で表される。なお、2価金属陽イオン(M2+)と3価金属陽イオン(M3+)のモル比は2:1〜4:1の範囲であることが好ましい。
【0019】
本発明では、上記複水酸化物は、層状であることが好ましい。そして、上記複水酸化物及び本発明の光触媒は、半導体性を有する。
【0020】
本発明では、上記複水酸化物は、Pt粒子、Cu粒子及びFe粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。この中でも、Pt粒子が好ましい。これらの粒子の粒子径は限定されず、1〜20nmが好ましく、1〜3nmがより好ましい。また、これらの粒子の含有量も限定されないが、1〜15重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。これらの金属粒子を含有することにより、二酸化炭素還元効率が向上する。これらの金属粒子は、例えば、PtCl2−、PtCl2−、CuCl2−、FeCl2−をアニオンとして一旦取り込んだ後、水素ガスを用いた還元、又はキセノンアーク灯照射による液相光還元により、Pt粒子、Cu粒子及びFe粒子とすることができる。
【0021】
本発明の光触媒は、上記正電荷を有する複水酸化物であるが、光触媒の合成時及び保存時には当該正電荷を均衡させるアニオンを含有する形で存在する。つまり、正電荷を均衡するアニオンを含有することにより電荷的に中性となって存在する。このようなアニオンとしては限定的ではないが、例えば、CO2−、SO2−、NO、Cl及びOHからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。そして、これらのアニオンは、層状の複水酸化物の層間にインターカレートされた状態で存在することが好ましい。本発明ではこのような電荷的に中性な態様も本発明の光触媒に包含される。
【0022】
例えば、アニオンがSO2−の態様であれば、2価金属の硫酸塩と3価金属の硫酸塩と水酸化ナトリウム水溶液をpH7に保ちながら加えていくことにより合成できる。また、アニオンがCO2−の態様であれば、2価金属の硝酸塩と3価金属の硝酸塩と水酸化ナトリウム水溶液と炭酸ナトリウム水溶液をpH12に保ちながら加えていくことにより合成できる。このような製造方法の違いにより初期に取り込まれるアニオン種が異なる。
【0023】
電荷的に中性な本発明の光触媒を一般式により示すと、
[M2+1−x3+(OH)x+[An−x/nx−
(但し、An−はn価のアニオン)で表される。
【0024】
本発明の光触媒の具体的な構造としては、例えば、[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-、[Mg0.75Al0.25(OH)2]0.25+[(CO3)0.125]0.25-、[Zn0.75Ga0.25(OH)2]0.25+[(CO3)0.125]0.25-等が挙げられる。本発明では光触媒自体に二酸化炭素濃縮能があり、例えば0.2規定水酸化ナトリウム1リットルと[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(An-)0.25/n]0.25-77グラムは同等の二酸化炭素濃縮能を有する。ちなみに、弱酸性のTiO及びルテニウムやレニウム等の従来の錯体触媒は二酸化炭素濃縮能を有していない。
【0025】
本発明の光触媒は、溶液中でCO2−を還元してメタノール又はギ酸に転化することで二酸化炭素を固定・除去する。例えば、二酸化炭素を溶存させてCO2−が存在する溶液中に光触媒を添加して懸濁させ、キセノンアーク灯で紫外可視光を照射すると、アニオン部分が還元除去(メタノール、ギ酸のほか、SO、NO、HCl等も考えられる)されて正電荷過剰の状態となる。すると、溶存CO2−が電荷の均衡のために取り込まれるとともに還元されてメタノール又はギ酸に転化・除去される。このサイクルを繰り返すことにより、溶存CO2−は連続的に還元除去される。
【0026】
反応場となる溶液は、二酸化炭素が溶存する限り限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を好適に使用できる。水酸化ナトリウムを用いる場合の規定度は限定的ではないが、0.1〜0.3規定が好ましい。実際には、二酸化炭素を0.5〜2時間流通させて十分量を溶存させた後、3〜15時間程度光照射により還元させればよい。光還元により気相がメタノール又はギ酸に転化されたことは、例えば、TCD式ガスクロマトグラフ、FIDガスクロマトグラフにより確認することができる。
【0027】
本発明では、可視光及び/又は紫外光(概ね波長が200〜1100nmの光であり、特に200〜400nmの紫外光、400〜1100nmの可視光)により光触媒の触媒活性が得られる。よって、紫外光を用いずに可視光のみで触媒活性が得られる態様では、太陽光を直接利用して建造物の屋根に本発明の光触媒を設置して家屋内の二酸化炭素を還元除去することが可能となる。また、生成物として一酸化炭素が発生しない点でも安全性が高い。
【0028】
さらに、本発明の光触媒は家屋内の二酸化炭素の還元除去の目的に好適であるばかりではない。地球温暖化の大きな要因と目される二酸化炭素を化学変換・有効利用する技術にもなりうる。生成するメタノールやギ酸は系外に分離したのち、それぞれを出発物質として数多くの化学物質を合成することができる。また、メタノールは直接燃焼や燃料電池の燃料としても利用できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の二酸化炭素還元用光触媒は、事前に二酸化炭素の濃縮工程を行うことなく、高効率で二酸化炭素をメタノール又はギ酸にまで還元することができる。つまり、生成物に一酸化炭素が含まれない点で安全性が高い。また、可視光及び/又は紫外光により励起させることができるため、必ずしも紫外光の光源を用意することなく、太陽光や蛍光灯の照射により触媒活性が得られる点で一般用空気清浄機、ルームエアコン、パッケージエアコン等への応用が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で作製した[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-の拡散反射型紫外可視吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。但し本発明は実施例に限定されない。
【0032】
実施例1
4:1のモル比の硫酸亜鉛及び硫酸鉄を脱イオン水に溶かし、1モル/Lとした。これと1.25モル/Lの水酸化ナトリウムとをpH 7を保ちつつ脱イオン水中に加えていった。313 Kで一日反応させ、ろ過・洗浄後、313 Kで一日乾燥させ[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-を得た。
【0033】
[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-0.1グラムを0.2規定水酸化ナトリウム水溶液30 mLに懸濁させ、1気圧のCO2ガスを1時間流通させ飽和吸着させた。石英製窓のついたガラス反応容器にキセノンアーク灯を480 Wで照射し、900 rpmで磁気攪拌を行なった。3時間後および13時間後に反応溶液をFID式及びTCD式ガスクロマトグラフで、気相部分をTCDガスクロマトグラフで分析した。分析結果を表1に示す。白金を含まないZn-Fe複水酸化物層状化合物のみでも光還元によりメタノールを生成した。
【0034】
このZn-Fe複水酸化物層状化合物について紫外可視吸収スペクトルを測定すると400〜600 nmの可視領域になだらかな吸収をもち、半導体性を有することが分かった(図1)。
なお、図1の縦軸は、Kubelka-Munkの関係式によって拡散反射度を吸収度に換算した値である。他の実施例の複水酸化物についても紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、400〜600 nmの可視領域になだらかな吸収をもち、半導体性を有していた。
【0035】
実施例2
実施例1で得た[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-1グラムを30% 2-プロパノール水溶液50 mLに加え、27ミリグラムの塩化白金酸を加えた。石英製窓のついたガラス容器にキセノンアーク灯を480 Wで照射し、900 rpmで5時間磁気攪拌を行なった。その後、ロータリーエバポレーターにて333 Kで溶媒を留去した。
【0036】
得られたPt(1重量%)-[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-について、実施例1と同様にCO2のアーク灯照射還元反応を行なった。分析結果を表1に示す。白金を含む場合、Zn-Fe複水酸化物層状化合物のみによる光還元反応速度の7倍のメタノール合成が認められた。
【0037】
実施例3
実施例1で得た[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-1グラムを30% 2-プロパノール水溶液50 mLに加え、295ミリグラムの塩化白金酸を加えた。石英製窓のついたガラス容器にキセノンアーク灯を480 Wで照射し、900 rpmで5時間磁気攪拌を行なった。その後、ロータリーエバポレーターにて333 Kで溶媒を留去した。
【0038】
得られたPt(10重量%)-[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-について、実施例1,2と同様にCO2のアーク灯照射還元反応を行なった。分析結果を表1に示す。白金を多量に含む場合、実施例1, 2とは異なりギ酸が生成し、メタノールは生成しなかった。これは生成したメタノールがPt上での逆反応によりギ酸、更にはCO2にまで戻ったことが強く示唆される。
【0039】
実施例4
実施例1で得た[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-1グラムを真空ポンプに接続したガラス管中で導入し、さらに水素ガス中で573 Kで熱した。
【0040】
得られた[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25--H2について、実施例1と同様にCO2のアーク灯照射還元反応を行なった。分析結果を表1に示す。H2処理した場合、H2処理しないZn-Fe複水酸化物層状化合物による光還元反応速度の5倍のメタノール合成が認められた。
【0041】
実施例5
実施例1で得た[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-1グラムを30% 2-プロパノール水溶液50 mLに加え、27ミリグラムの塩化白金酸を加えた。溶媒を留去後に得られた粉末を真空ポンプに接続したガラス管中で導入し、さらに水素ガス中で573 Kで熱した。
【0042】
得られたPt(1重量%)-[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25--H2について、実施例1と同様にCO2のアーク灯照射還元反応を行なった。分析結果を表1に示す。H2処理した白金を含む場合、H2処理しないZn-Fe複水酸化物層状化合物のみによる光還元反応速度の43倍のメタノール合成が認められた。
【0043】
実施例6
実施例1で得た[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25-1グラムを30% 2-プロパノール水溶液50 mLに加え、295ミリグラムの塩化白金酸を加えた。溶媒を留去後に得られた粉末を真空ポンプに接続したガラス管中で処理し、さらに水素ガス中で573 Kで熱した。
【0044】
得られたPt(10重量%)-[Zn0.75Fe0.25(OH)2]0.25+[(SO4)0.125]0.25--H2について、実施例1,2と同様にCO2のアーク灯照射還元反応を行なった。分析結果を表1に示す。H2処理した白金を含む場合、H2処理しないZn-Fe複水酸化物層状化合物のみによる光還元反応速度の67倍のメタノール合成が認められた。
【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価金属陽イオンと3価金属陽イオンを含有し、正電荷を持つ複水酸化物からなる、二酸化炭素還元用光触媒。
【請求項2】
半導体性を有する、請求項1に記載の光触媒。
【請求項3】
Pt粒子、Cu粒子及びFe粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1又は2に記載の光触媒。
【請求項4】
前記複水酸化物は層状である、請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒。
【請求項5】
可視光及び/又は紫外光により触媒活性が得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒。
【請求項6】
前記2価金属陽イオンは、Mg2+及びZn2+の少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒。
【請求項7】
前記3価金属陽イオンは、Al3+、Sc3+、Cr3+、Fe3+、Ga3+、Y3+、In3+及びCe3+からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の光触媒。
【請求項8】
前記2価金属陽イオンがZn2+であり、前記3価金属陽イオンがFe3+、Ga3+及びIn3+からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒。
【請求項9】
前記2価金属陽イオンと前記3価金属陽イオンのモル比が2:1〜4:1である、請求項1〜8のいずれかに記載の光触媒。
【請求項10】
溶液中でCO2−を還元する、請求項1〜9のいずれかに記載の光触媒。
【請求項11】
前記正電荷を均衡させるアニオンを含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の光触媒。
【請求項12】
前記アニオンは、CO2−、SO2−、NO、Cl及びOHからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項11に記載の光触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2011−31155(P2011−31155A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179046(P2009−179046)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】