説明

二酸化窒素光分解コンバータおよび二酸化窒素光分解コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置

【課題】二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する変換効率が高く安定しており、かつ他の窒素化合物の分解による干渉が少ない二酸化窒素光分解コンバータおよび二酸化窒素光分解コンバータを備えた化学発光法窒素酸化物濃度測定装置を提供する。
【解決手段】測定する試料ガスを導入する二酸化窒素コンバータ本体と、前記二酸化窒素コンバータ本体に設けられた紫外光源からなり、前記紫外光源から紫外光を照射し、前記試料ガス中に含まれる二酸化窒素を光分解して一酸化窒素に変換して、前記試料ガス中の二酸化窒素濃度を測定する二酸化窒素測定装置で用いられる二酸化窒素光分解コンバータであって、前記紫外光源は、複数の間欠点灯する紫外発光ダイオードから構成され、前記複数の紫外発光ダイオードのそれぞれのピーク波長は355nmから410nmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化窒素光分解コンバータおよび二酸化窒素光分解コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置に関し、特に大気汚染監視、大気環境測定のため大気中の窒素酸化物(NO)の濃度および自動車の排気ガス中等のNO濃度、特にNOの主成分である二酸化窒素(NO)を化学発光強度で検出する化学発光法によって測定するに適した二酸化窒素光分解コンバータおよび二酸化窒素光分解コンバータを備えた二酸化窒素(NO)濃度等の窒素酸化物濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中の窒素酸化物(NO)は直接人体に有害であるばかりでなく、大気中の光化学反応により対流圏でオゾン(O)を生成する。対流圏のオゾンは、光化学スモッグの主成分として人体や植物に悪影響を及ぼすだけでなく、強力な温室効果気体として気候変動に影響をもたらすと考えられている。また、NOは酸性雨原因物質である硝酸(HNO)の原料となっている。近年この対流圏オゾンの増加傾向が示されており、降水中の硝酸増加も懸念されている。NO(一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO))がこのオゾンや硝酸の生成に決定的な役割を果たしているため、大気環境保全上その測定は重要である。
【0003】
窒素酸化物(NO)は、主に自動車や工場などの排気中の一酸化窒素(NO)の形で大気中に放出されるが、大気中での化学反応で二酸化窒素(NO)に変換され、通常NOがNOの主成分である。しかし、NOとNOは日中の光化学反応において、数分程度の時定数ですばやく相互に変換しており、NOの測定ではその両方を同時に測定することが重要である。
【0004】
大気汚染監視、大気環境測定のため大気中の窒素酸化物(NO)の濃度および自動車の排気ガス中等の窒素酸化物(NO)濃度を測定する方法として化学発光法が広く用いられている。この化学発光法は、大気または排気ガス等から採取した試料ガスとオゾン(O)を窒素酸化物濃度測定装置の測定部である反応槽の内部で接触させ、試料ガス中の一酸化窒素(NO)とOとが化学反応を起こす際に発生する化学発光の強度を光電検出器(光センサ)で検出することにより、試料ガス中のNOの濃度を測定する方法である。
【0005】
環境大気中および自動車の排気ガス中等に含まれる窒素酸化物(NO)は、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO)で構成されるが、NOとオゾン(O)の間では化学発光反応がないので、NOは直接化学発光法では測定できない。そこで化学発光法による窒素酸化物濃度測定装置では、NOの濃度を測定できるように、大気または排気ガス等から採取した試料ガスを測定部の反応槽の内に導入する試料ガス導入流路を分岐させ、その一方は二酸化窒素コンバータを通過するようにしている。そして、試料ガスが二酸化窒素コンバータを通過する間に、試料ガス中のNOをNOに還元変換することで、NOも化学発光法で測定している。
【0006】
上記の窒素酸化物濃度測定装置では、二酸化窒素コンバータを通過する流路と通過しない流路を交互に切り替えて測定を行なう。二酸化窒素コンバータを通過したときに得られた測定値は、二酸化窒素(NO)と一酸化窒素(NO)を合わせた窒素酸化物(NO)の濃度であり、二酸化窒素コンバータを通過しないときにはNOの濃度が得られる。NOの濃度からNOの濃度を差し引くことで、NOの濃度を求める。このように、化学発光法による窒素酸化物濃度測定装置では、NOの濃度を測定するためにNOをNOに変換する二酸化窒素コンバータを用いている。(特許文献1)
【0007】
従来の化学発光法による窒素酸化物濃度測定装置のほとんどでは、二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する二酸化窒素コンバータとして、モリブデン(Mo)触媒あるいはカーボンを使用している。この二酸化窒素コンバータでは、加熱させたMo触媒あるいはカーボン表面の化学反応によってNOをNOに変換している。
【0008】
上述のモリブデン(Mo)触媒等を内蔵した二酸化窒素コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置では、二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する変換効率は95%以上と高い。しかしこの窒素酸化物濃度測定装置では、Mo触媒等によって、大気中の他の窒素化合物、例えば三酸化窒素(NO)および五酸化二窒素(N)、亜硝酸(HONO)、硝酸(HNO)、有機硝酸等もNOに変換するため、窒素酸化物(NO)および二酸化窒素(NO)濃度の測定値が過大となる誤差(干渉)が生じるため、正確なNOおよびNO濃度の測定が困難であった。
【0009】
一方、化学発光法による窒素酸化物濃度測定装置に使用する二酸化窒素コンバータとして、紫外線(UV)で二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する二酸化窒素光分解コンバータが近年開発されている。この二酸化窒素光分解コンバータでは、大気または排気ガス等から採取した試料ガスが導入されるガラス製であるセルの一方の側面にUV光源を取り付け、試料ガスにUVを照射することでその中のNOをNOに光分解している。
NO2+hν→NO+O (式1)
【0010】
この二酸化窒素光分解コンバータで多くの場合光源として使用される紫外線(UV)ランプは波長選択性を有しておらず、光出力の大部分が、二酸化窒素(NO)の光分解に適した波長以外のUVや可視光である。そのため効率が悪く、光出力の大きいUVランプを使用する必要があるが、それでもNOの光分解に適した波長のUV強度は不十分で、NOを一酸化窒素(NO)に変換する変換効率を高くすることは困難であった。
【0011】
この紫外線(UV)ランプを光源として使用する二酸化窒素光分解コンバータでは、UVランプの発熱により二酸化窒素光分解コンバータ内部の温度が上昇する。二酸化窒素光分解コンバータ内部の温度が40℃以上に上昇すると、試料ガス中に含まれる有機硝酸等の他の窒素化合物も二酸化窒素(NO)に熱分解されるため、窒素酸化物(NO)および二酸化窒素(NO)濃度の測定値が過大となる誤差(干渉)が生じてしまう。温度上昇を低く抑えるためには強力な冷却が必要であるので、このようなUVランプを使用した二酸化窒素光分解コンバータは実用的でなく、研究以外では使用されていなかった。
【0012】
また、この紫外線(UV)ランプを使用する二酸化窒素光分解コンバータでは、UVランプが波長選択性を有していないため、UVランプからの光を直接試料ガスに照射すると、試料ガス中の三酸化窒素(NO)、五酸化二窒素(N)、亜硝酸(HONO)および硝酸(HNO)といった他の窒素化合物が光分解し一酸化窒素(NO)に変換され干渉が生じる。それを防ぐため、UVランプと試料ガスが導入されるガラスセルの間に、必要な波長の光以外を通さない光学フィルターを設ける必要がある。しかしながら、光学フィルターによるUV減衰のため二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する変換効率が低下してしまう。また光学フィルターに強いUV光が直接照射されるため、その劣化が早く長期間性能を保つことができない。これらのことからも、UVランプを使用した二酸化窒素光分解コンバータは実用的でなかった。
【0013】
近年では、紫外(UV)発光ダイオードを光源とした二酸化窒素光分解コンバータが開発されているが、以下の理由から、UV発光ダイオードを光源として使用した二酸化窒素光分解コンバータは実用的ではない。
(1)通常のUV発光ダイオードは光出力が小さいため、多数のUV発光ダイオードを集積して光源として使用したとしても、十分なUV強度を得ることが困難である。
(2)UV発光ダイオードの発光波長域には他の窒素化合物をも光分解する波長域が含まれているため光学フィルターを設ける必要があり、その光学フィルターによるUV減衰のために、二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する変換効率は低い。
(3)多数のUV発光ダイオードを集積し点灯することで、UV発光ダイオード素子の温度が上昇しその劣化が早く、また光学フィルターに強いUV光が直接照射されるためその劣化も早い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−148193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、化学発光法による窒素酸化物濃度測定において、他の窒素化合物の一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO)への変換による干渉が僅少とすることができる、温度上昇が小さく波長選択性が高い光源を用いた二酸化窒素光分解コンバータを開発して提供し、この二酸化窒素光分解コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置を提供することにある。
【0016】
本発明の課題は、化学発光法による窒素酸化物濃度測定において、二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する変換効率の高い、二酸化窒素光分解コンバータを開発して提供し、この二酸化窒素光分解コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置を提供することにある。
【0017】
本発明の課題は、化学発光法による窒素酸化物濃度測定において、二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する高い変換効率などの性能を長期的に安定に保つ、長寿命の二酸化窒素光分解コンバータを開発して提供し、二酸化窒素光分解コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明は、測定する試料ガスを導入する二酸化窒素コンバータ本体と、前記二酸化窒素コンバータ本体に設けられた紫外光源からなり、前記紫外光源から紫外光を照射し、前記試料ガス中に含まれる二酸化窒素を光分解して一酸化窒素に変換して、前記試料ガス中の二酸化窒素濃度を測定する二酸化窒素測定装置で用いられる二酸化窒素光分解コンバータであって、前記紫外光源は、複数の紫外発光ダイオードから構成され、前記複数の紫外発光ダイオードのそれぞれのピーク波長は360nmから410nmであることを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記複数の紫外発光ダイオードのそれぞれは、発光する光のエネルギーの80%以上が波長355nmから420nmの範囲内にあることを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記複数の紫外発光ダイオードのそれぞれは、紫外線発光強度が50mW以上であることを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータを提供する。
【0021】
また、本発明は、前記複数の紫外発光ダイオードが複数の群に分けられ、それぞれの群ごとに間欠的に点灯することを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータを提供する。
【0022】
また、本発明は、前記複数の紫外発光ダイオードの群は、前記二酸化窒素コンバータ本体の両側面に対向して設けられ、前記対向する紫外発光ダイオードの群のいずれかの群が常に点灯していることを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータを提供する。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明は、前記二酸化窒素光分解コンバータを備えたことを特徴とする窒素酸化物濃度測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、化学発光法による窒素酸化物濃度測定において、二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する高い変換効率などの性能を長期的に安定に保つ、長寿命の二酸化窒素光分解コンバータを開発して提供し、二酸化窒素光分解コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータの構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータの構成を示す斜視概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータにおける、コンバータ本体(ガラスセル)に取り付けられた第一の光源部の平面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータにおける、第一の光源部に配置された高出力紫外発光ダイオードの点灯および消灯を示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータにおける、第二の光源部に配置された高出力紫外発光ダイオードの点灯および消灯を示す構成図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータにおける、二酸化窒素(NO)変換効率(%)の積算動作時間(日)による変動を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータを用いた二酸化窒素(NO)測定と、従来技術であるモリブデン(Mo)触媒を内蔵した二酸化窒素コンバータを用いたNO測定の、日本標準時の時刻(hour)と他の窒素化合物の干渉による誤差(ppbv、NO濃度に換算した)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明による二酸化窒素光分解コンバータを備えた窒素酸化物濃度測定装置の一実施の形態の概略構成図である。図1の窒素酸化物濃度測定装置Aにおいて、本実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータCは、三方電磁弁SV1と三方電磁弁SV2との間に配置されている。
【0028】
試料ガス流路1からの試料ガス(本実施の形態では、大気中の空気)は三方電磁弁SV1に導入される。演算・制御部8の制御のもとに、三方電磁弁SV1より分岐された試料ガスは、一酸化窒素(NO)測定時は試料ガス上部流路(バイパス流路)2を通り、三方電磁弁SV2を経由して試料ガス流路6を通って反応槽5に導入される。
【0029】
一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO)を同時に測定する時には、三方電磁弁SV1およびSV2が切り替えられ、試料ガス(空気)は試料ガス下部流路3を通って二酸化窒素光分解コンバータCに導入される。二酸化窒素光分解コンバータCに導入された試料ガスは三方電磁弁SV2に入り、試料ガス流路6を通って反応槽5に導入される。
【0030】
オゾン発生器4は、外部の空気を導入し、該空気を除湿し、該空気に含まれる酸素から無声放電あるいは紫外線照射によりオゾン(O)を発生させる。このOが測定部の反応槽5に導入され、試料ガスと混合される。
【0031】
反応槽5は、真空ポンプ9により排気され、低圧に保たれている。反応槽5では、試料ガス中の一酸化窒素(NO)とOとが反応して化学発光を生じ、その強度が光電検出器(光センサ)7で測定される。光電検出器(光センサ)7からの化学発光強度に比例した信号は演算・制御部8で演算処理されて、試料ガス中の一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、窒素酸化物(NO)の濃度が定量される。
【0032】
ここで、本実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータCについて説明する。図2は二酸化窒素光分解コンバータCの平面図であり、図3は二酸化窒素光分解コンバータCの構成を示す斜視概略図である。
【0033】
図2に示すように、二酸化窒素光分解コンバータCは、中央に二酸化窒素コンバータ本体である円筒状セル21を有し、円筒状セル21の左右両側面にセル保持リング22a、22b、ブラケット23a、23b、放熱フィン24a、24b、LED基板(セル保持プレートと兼用)25a、25b及びファン26a、26bが備えられる。円筒状セル21の左側上部に試料ガス導入口となる異径ユニオンエルボ31と右側上部に試料ガス導出口となる異径ユニオンエルボ32が取り付けられている。
【0034】
円筒状セル21の左右両側面は、セル保持リング22a、22bとセル保持プレートを兼ねたLED基板25a、25bで保持されている。LED基板25a、25bは、ブラケット23a、23bで固定される。またLED基板25a、25bには、放熱のため、放熱フィン24a、24bとファン26a、26bが取り付けられている。
【0035】
このように構成される二酸化窒素光分解コンバータCは、図3に示すように、円筒状セル21の左右両側面に、LED基板25aとLED基板25bが対向して設けられる構成となる。
【0036】
本実施の形態において、円筒状セル21はガラス製であり、長さは180mm、外径は57mmである。円筒状セル21の円筒外周に、厚さ0.2mmの片面鏡面光沢のアルミニウム反射板が巻いてあり、高出力紫外発光ダイオードからの紫外線を反射させる。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータCの円筒状セル21の左側に設置される、第一の光源部としてのLED基板25aを示す。本実施の形態において、LED基板25aには、12個の高出力紫外発光ダイオードLED1が上下四段に、最上段に2個、二段目、三段目にそれぞれ4個、最下段に2個配置されている。
【0038】
第一の光源部としてのLED基板25aに対向して、コンバータ本体21の右側に第二の光源部として設置されるLED基板25bは、25aと同一構成で、かつ12個の高出力紫外発光ダイオードLED2がLED基板25aと点対称に配置されている。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態に係る二酸化窒素光分解コンバータCの第一の光源部の動作説明図である。第一の光源部を構成するLED基板25aに配置されている12個の高出力紫外発光ダイオードLED1のうち、黒丸で示した6個のLED1aと白丸で示した6個のLED1bが一定時間(例えば、本実施の形態では1秒)おきに交互に点灯する。つまり、図5に示すように点灯群LED1aが点灯しているときには、消灯群LED1bは消灯している。このように、12個の高出力紫外発光ダイオードLED1のうち半数である点灯群LED1aが点灯し、半数である消灯群LED1bが消灯している。
【0040】
図6は、第二の光源部の動作説明図である。図5と同様に、黒丸で示した6個のLED2aと白丸で示した6個のLED2bが一定時間おきに交互に点灯する。つまり、図6に示すように点灯群LED2aが点灯しているときには、消灯群LED2bは消灯している。このように、12個の高出力紫外発光ダイオードLED2のうち半数である点灯群LED2aが点灯し、半数である消灯群LED2bは消灯している。
【0041】
すなわち、本実施の形態において、図5および図6において黒丸で示すLED1aとLED2aが一の紫外発光ダイオードの群を構成し、白丸で示したLED1bとLED2bが他の紫外発光ダイオードの群を構成する。つまり、二酸化窒素光分解コンバータCに備えられる複数の紫外発光ダイオード(LED1a、LED2a、LED1b、LED2b)が複数の群に分けられる。
【0042】
本実施の形態において、一の紫外発光ダイオードの群を構成するLED1aとLED2bおよび他の紫外発光ダイオードの群を構成するLED1bとLED2aがそれぞれ対向して配置され、円筒状セル21の各部は、第一の光源部および第二の光源部からの異なる二方向(対向方向)から互い違いに、ほぼ一様に紫外線が照射される。しかし、本発明の実施の形態はこれに限られるものではなく、例えば、一の紫外発光ダイオードの群を構成するLED1aとLED2bが第一の光源部であるLED25aに配置され、他の紫外発光ダイオードの群を構成するLED1bとLED2aが第二の光源部であるLED25bに配置され、各々の群ごとに点灯・消灯する、すなわち、円筒セル21の左右側で交互に点灯・消灯するように構成しても良い。
【0043】
また、本実施の形態において、図5および図6において黒丸で示した一の紫外発光ダイオードの群を構成するLED1aとLED2a、白丸で示した他の紫外発光ダイオードの群を構成するLED1bとLED2bをそれぞれ同時に点灯・消灯する、すなわち点滅パターンを同期させる必要はなく、それぞれの群の点滅パターンがずれていたとしても、それぞれの群の点滅パターンに点灯が重複する部分があり、必ずいずれかの群が点灯されるようにしてあればよい。
【0044】
以上要するに、本実施の形態においては、二酸化窒素光分解コンバータCに備えられた各高出力紫外線発光ダイオード(LED1およびLED2)が複数の群に分けられ、それぞれの群ごとに点灯と消灯が繰り返される、すなわち間欠点灯されることにより、高出力紫外線発光ダイオード素子の温度上昇を防いで紫外発光ダイオード素子の劣化を防ぐとともに、コンバータ内部の温度が40℃以上に上昇することを防ぎ、有機硝酸等が熱分解されるのを防止している。
【0045】
更に、複数の群の少なくともいずれか一の群が常に点灯していることにより、二酸化窒素光分解コンバータCにおける二酸化窒素から一酸化窒素への変換効率が高く保たれるものである。
【0046】
上記のように、二酸化窒素光分解コンバータCの内部に導入された試料ガスは、コンバータ本体の円筒状セル21の両側に対面して配置された光源部の高出力紫外発光ダイオードLED1およびLED2から紫外線(UV)を照射され、試料ガス中の二酸化窒素が一酸化窒素に還元変換される。
【0047】
図7は、本発明の実施の形態である二酸化窒素光分解コンバータCの連続運転試験によって得られた、光分解コンバータの二酸化窒素(NO)を一酸化窒素(NO)に変換する効率(%)の積算動作時間(日)による変化を示すグラフである。
【0048】
図7に示すように、運転開始直後に変換効率は数%低下するが、その後140日以上の間、変換効率は93%±1%にほぼ収まり、高い変換効率を安定に維持していることが示される。図7でデータがない部分が2箇所あるが、変換効率測定が中断されただけで運転は連続して行なっている。
【0049】
本実施の形態に採用されている高出力紫外発光ダイオードLED1およびLED2の仕様について述べる。LED1とLED2は、日亜化学工業株式会社製造の品名「紫外線チップタイプLED」、型名「NCSU34A(T)」である。初期電気・光学特性は、標準で、ピーク波長385nm、スペクトル半値幅10nm、光出力最小310mWである。また信頼性については、連続動作時の寿命が500時間とされている。
【0050】
本実施の形態で使用される紫外発光ダイオードの発光波長域は、ピーク波長が355nm〜410nmの範囲に、発光した光エネルギーの80%以上が355nm〜415nmの範囲にあることが好ましい。ピーク波長が410nmを超えると二酸化窒素(NO)を分解しなくなってしまい、また355nmを下回ると亜硝酸(HONO)の一酸化窒素(NO)への光分解が生じNO測定値が過大となる誤差を生じるとともに、二酸化窒素から一酸化窒素への還元変換効率が低下してしまうためである。
【0051】
また、充分なUV強度を得るために、本実施の形態で使用される紫外発光ダイオードの発光強度は50mW以上であることが好ましい。
【0052】
本実施の形態では、二酸化窒素光分解コンバータCの各高出力紫外線発光ダイオード(LED1およびLED2)は複数の群に分けられ、それぞれの群ごとに点灯と消灯を繰り返す、すなわち間欠点灯される。この間欠点灯により高出力紫外線発光ダイオード素子の温度上昇が妨げられ、性能維持できる期間を延長する効果がある。
【0053】
上記のように、使用している高出力紫外線発光ダイオードの紫外線発光強度が維持される期間は、連続点灯の場合標準で500時間である。図7に示すように、連続運転試験では、500時間をはるかに超えた140日間、3300時間以上変換効率が安定している結果が得られている。別の試験では、変換効率が維持される期間は6000時間以上となり、連続運転時の10倍以上の長時間にわたり光分解コンバータCの性能が維持できることが実証された。
【0054】
図8は、本発明の実施の形態である二酸化窒素光分解コンバータCと従来技術であるモリブデン(Mo)触媒を内蔵した二酸化窒素コンバータをそれぞれ用いて化学発光法により二酸化窒素(NO)濃度を測定した実験において、日本標準時の時刻(hour)と二酸化窒素(NO)干渉量(ppbv)、すなわち他の窒素化合物が二酸化窒素コンバータにより変換されることによって生じる干渉による誤差をNO濃度に換算した量との関係を示すグラフである。図8の曲線7Aは、本発明の一実施の形態である二酸化窒素光分解コンバータCを用いた測定の結果、曲線7Bは、MO触媒を内蔵した二酸化窒素コンバータを用いた測定の結果を示す。
【0055】
二酸化窒素光分解コンバータCでは、干渉による誤差はおおむね0.5ppb以下でありデータのばらつきを考慮すると無視できる。一方、Mo触媒を内蔵した二酸化窒素コンバータでは昼に干渉による誤差は4ppbに達する。Mo触媒を内蔵したコンバータで、昼に干渉による誤差が増大するのは、大気中の光化学反応で、昼に硝酸(HNO)や有機硝酸といった干渉を引き起こす窒素化合物の濃度が増加するためである。
【符号の説明】
【0056】
1…試料ガス流路、2…試料ガス上部流路、3…試料ガス下部流路、4…オゾン発生器、5…反応槽、6…試料ガス流路、7…光電検出器(光センサ)、8…演算・制御部、9…真空ポンプ、21…円筒状セル、22a…セル保持リング、22b…セル保持リング、23a…ブラケット、23b…ブラケット、24a…放熱フィン、24b…放熱フィン、25a…LED基板(セル保持プレート)、25b…LED基板(セル保持プレート)、26a…ファン、26b…ファン、31…異径ユニオンエルボ、32…異径ユニオンエルボ、C…二酸化窒素光分解コンバータ、LED1…第一の光源部の高出力紫外線発光ダイオード、LED1a…第一の光源部の高出力紫外線発光ダイオード(点灯群)、LED1b…第一の光源部の高出力紫外線発光ダイオード(消灯群)、LED2…第二の光源部の高出力紫外線発光ダイオード、LED2a…第二の光源部の高出力紫外線発光ダイオード(点灯群)、LED2b…第二の光源部の高出力紫外線発光ダイオード(消灯群)、SV1…三方電磁弁、SV2…三方電磁弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定する試料ガスを導入する二酸化窒素コンバータ本体と、前記二酸化窒素コンバータ本体に設けられた紫外光源からなり、前記紫外光源から紫外光を照射し、前記試料ガス中に含まれる二酸化窒素を光分解して一酸化窒素に変換して、前記試料ガス中の二酸化窒素濃度を測定する二酸化窒素測定装置で用いられる二酸化窒素光分解コンバータであって、
前記紫外光源は、複数の紫外発光ダイオードから構成され、前記複数の紫外発光ダイオードのそれぞれのピーク波長は355nmから410nmであること
を特徴とする二酸化窒素光分解コンバータ。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化窒素光分解コンバータにおいて、前記複数の紫外発光ダイオードのそれぞれは、発光する光のエネルギーの80%以上が波長355nmから420nmの範囲内となる波長選択性を有することを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二酸化窒素光分解コンバータにおいて、前記複数の紫外発光ダイオードのそれぞれは、紫外線発光強度が50mW以上であることを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の二酸化窒素光分解コンバータにおいて、前記複数の紫外発光ダイオードが複数の群に分けられ、それぞれの群ごとに間欠的に点灯することを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータ。
【請求項5】
請求項4に記載の二酸化窒素光分解コンバータにおいて、前記複数の紫外発光ダイオードの群は、前記二酸化窒素コンバータ本体の両側面に対向して設けられ、前記対向する紫外発光ダイオードの群のいずれかの群が常に点灯していることを特徴とする二酸化窒素光分解コンバータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の二酸化窒素光分解コンバータを備えたことを特徴とする窒素酸化物濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−237192(P2010−237192A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295289(P2009−295289)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【特許番号】特許第4543186号(P4543186)
【特許公報発行日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【Fターム(参考)】