説明

二重エネルギー源を備えた乾燥損失器具

【課題】試料の温度を監視又は制御しながら揮発分含有量を判定する器具。
【解決手段】揮発分含有量を求めようとする試料を入れるキャビティと、マイクロ波をキャビティに導入するための第1供給源と、第1供給源により導入された周波数とは異なる周波数の放射熱をキャビティに導入するための第2供給源と、キャビティ内で試料の重量を測定するための分析用の秤と、試料の温度を測定するための温度センサとプロセッサからなり、各周波数のマイクロ波と放射エネルギーのキャビティ内への導入を、温度センサが測定した温度に応じて制御し、第1供給源からのマイクロ波と第2供給源からの放射熱に対し、プロセッサが秤上の試料の重量変化に基づいて試料の揮発分含有量を判定することができるほど十分に乾燥させるまで、試料の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、マイクロ波支援化学技法に関し、より具体的には、多種多様な物質の乾燥損失分析及び計算を実施するための器具と技法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料の揮発分含有量(多くの場合、含水量)を測定することは、分析を行う多くの研究室では、頻度が高く繰り返しの多い雑仕事である。例えば、製造環境では、試料の揮発分含有量の測定は、品質管理手法の中の重要な手順である。分析を実施するための時間が長いと、粗悪な試料が何時間又は何日も検出されないことになる。このような状況では、製造施設は、試験実施に必要な期間中、粗悪品を製造し続けることになる。その結果、品質問題が発見される以前に、大量の粗悪品質の材料が製造されることになる。この様な遅延は、粗悪品質の製品を廃棄し、製造工程を再開せねばならないことから、しばしば費用超過と製造遅延の原因となる。
【0003】
その最も単純な形態では、揮発分又は水分の含有量の判定は、材料の代表的な試料の重量を測定する、材料を乾燥させる、材料の重量を再度測定して乾燥損失を確定する、そして、その結果、試料の初期揮発分含有量が求められる、という段階で構成される。この業務にしばしば使用される対流熱風炉は、比較的緩慢で、試料を「オーブン乾燥」平衡の状態に至らせることがある。また、この様な装置は、エネルギー消費効率が悪いので、作動させるには費用が掛かる。上記問題は、揮発分分析に対する熱風装置の実用性を下げる。
【0004】
マクロ波エネルギーを使用して、或る種の物質を乾燥させ、揮発分又は水分の含有量を求めることは、一般に便利且つ正確である。「マイクロ波」という用語は、電磁スペクトルの約300から約300,000メガヘルツ(MHz)の間の部分を指し、波長は約1ミリメートル(1mm)から1メートル(1m)の間にある。上記は、無論、任意の境界線であるが、マイクロ波を、赤外線(IR)放射の周波数以下で無線周波数と呼ばれる周波数以上のものとして定量化するのに役立つ。同様に、周波数と波長の間には逆の関係が成り立っているので、マイクロ波は、赤外線放射よりも長く且つ無線周波数よりも短い波長を有している。加えて、マイクロプロセッサを組み込んだマイクロ波器具は、試料の乾燥曲線(重量損失対時間)を監視することができると共に、乾燥曲線の初期の部分に基づいて最終的な乾燥重量(従って、元々の含水量)を予測することができる。その様な分析は、自由水を含んでいる試料毎に約2分から3分で行える。
【0005】
更に重要なことに、含水量を測定するためのマイクロ波乾燥は、同等な熱風法よりも大抵は速い。しかしながら、熱風技法におけるように、或る特定の物質は、マイクロ波パワーを当てられると、単に乾燥するのではなく燃える傾向がある。言い換えると、マイクロ波は或る特定の材料に関しては相互反応が速いという傾向は、或る状況では明らかに好都合であるが、他の材料の二次的加熱を引き起こす恐れがある点では(少なくとも、揮発分又水分を測定するという目的には)不都合である。チーズの様な或る特定の食品は、マイクロ波に曝されると乾燥ではなく燃焼する傾向を持つ物質の一例である(無論、傾向であって限定するものではない)。
【0006】
また、マイクロ波は、「結合」、即ち、マイクロ波放射に対する材料の反応(「負荷」)として知られる様式で材料と相互反応する。マイクロ波エネルギーとうまく結合しない材料もあり、その場合、乾燥又は他の揮発分除去の技法は困難又は不正確なものとなる。別の材料は、水分又はマイクロ波に反応する他の物質(例えば、アルコールや他の極性溶媒)の含有量が高いときは、良好に結合する。しかしながら、それらの材料は、マイクロ波の影響下で乾燥するにつれ、結合の効率が段々と悪くなる、即ち負荷が変化する。その結果、試料に対するマイクロ波の効果が不十分になり制御がより困難になる。そうすると、試料は乾燥ではなく燃焼することになりかねず、或いは何か他の望ましくない様式で分解する。何れの場合も、不満足な結果となるのは明らかである。
【0007】
別の要因として、「遊離」水(即ち、どんな化合物又は結晶にも結合していない)の様な揮発分は、マイクロ波放射には迅速に反応するが、「結合した」水(即ち、炭酸ナトリウム水和物NaCO・HOの様な化合物の水和作用の水)及び無極性揮発分(例えば、低分子量炭化水素及び関係化合物)は、マイクロ波放射には一般に無反応である。代わりに、その様な結合水又は他の揮発分は、熱的に、即ち周囲から伝わる熱で追い出さなければならない。
【0008】
この様に、マイクロ波は、試料がマイクロ波に反応する他の材料を含んでいるときは、結合水を試料から除去するのを手助けする。この様な場合、マイクロ波に反応する材料に(又はマイクロ波に反応する材料によって)発生する二次的な熱は、結合水が放出されるのを助ける。しかしながら、マイクロ波放射の性質は、その様な全ての材料又は周辺が、マイクロ波に曝されたときに熱せられるというものではない。而して、マイクロ波を使用する乾燥損失の測定は、従来からの加熱法に比較すると、一般的に、結合水の判定には十分に満足の行くものではない。
【0009】
マイクロ波を吸収し難いか又はマイクロ波と結合し難い試料で、マイクロ波結合の速度を利用するため、マイクロ波を吸収し、それらマイクロ波に反応して熱せられる材料(しばしばサセプタと呼ばれる)の上に試料を載置する各技法が取り入れられている。米国特許第4,681,996号は、その様な技法の一例である。同特許に記載されているように、目的は、熱反応性材料が試料に熱を伝えて結合水を解放することである。理論的には、熱的に加熱された材料は試料を熱して結合水を除去し、一方で自由水はマイクロ波の直接的な影響に反応して除去されるので、真の相乗効果が得られるはずである。
【0010】
この様なサセプタ技法では、揮発分の分析対象の材料中に非極性溶媒が結合水又は自由水と共に存在している場合には、それらは、同じ様にサセプタにより発生した熱によって揮発し、一方で、(結合状態から熱的に解放された)自由水は、マイクロ波放射により気化する。こうして、揮発分は、それらが結合水であっても、自由水であっても、他の極性材料であっても、又は非極性化合物であっても、試料から迅速に取り除かれる。
【0011】
しかしながら、サセプタ技法は、実用面ではあまり成功しているとはいえない。不都合な点を一つ挙げると、必要なサセプタは、マイクロ波に反応して温度を自己規制するものが多く、従って、異なる所望温度を得るには異なる組成物が必要となる。
【0012】
第3の不都合な点として、サセプタの温度反応の予測性には一貫性がない。成分分析に精通している者には知られているように、或る特定の標準化された乾燥試験は、試料を特定の温度まで熱して、特定の時間試料をその温度に保つことに基づいている。試験が特定の条件下で実施されるのであれば、この様な条件下の重量損失は、有用で望ましい情報を提供する。従って、その様な温度制御が無ければ、マイクロ波技法は、その様な標準化されたプロトコルにとっては魅力の乏しいものとなる。
【0013】
別の不都合な点として、サセプタは、試料を不均一に加熱する傾向がある。例えば、多くの状況で、サセプタに直接接している試料の部分は、遠くの試料部分より暖かくなる。この様に温度が不均一であると、結合水分の除去が不完全になることに加えて、乾燥損失分析が不正確になる原因となる。
【0014】
結合水は、或る状況では、赤外線放射を試料に照射することにより取り除くことができる。赤外線放射は、試料の温度を、水分子結合の活性化エネルギーに打ち勝つ程度まで上昇させることにより、結合水(並びに自由水)を追い出すことに成功している。更に、赤外線乾燥は、多くの試料で、オーブン乾燥よりも速い。それにもかかわらず、赤外線放射は、水分含有試料については、マイクロ波に比較して相対的にゆっくりと加熱する傾向がある。更には、赤外線放射は、材料と結合しない。そうではなく、赤外線は、一般に、材料の表面(又は表面付近)を加熱し、これに引き続き、熱は内向きに伝導するが、これには通常時間を要する。しかしながら、赤外線放射は、ほぼ全ての材料を或る程度まで加熱するので、マイクロ波と結合しない材料にとっては好都合である。
【0015】
2種類の揮発分を除去するために2つの装置(例えば、マイクロ波1台と赤外線1台)を使用するだけでは、問題に対し満足できる解を与えたことにはならず、というのも、通常、試料を両装置の間で移動させることは、少なくともある程度の冷却、或る程度の時間(効率)損失、(物理的及び化学的平衡の原理の下で)水分を再度含んでしまう可能性、得られた測定値の実験的不確実性の増大(正確さと精度)、を招くからである。更に、試料が、マイクロ波キャビティ内の第1秤から、赤外線放射に曝される(別の)第2秤に移されるのであれば、第1秤のタラは、第2秤の使用に関して無意味になる。
【0016】
従って、多種多様な試料材料について、従来の方法又は装置の不都合な点を最小限にした又は無くした、乾燥損失器具及び技法が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第4,681,996号
【特許文献2】米国特許第6,302,577号
【特許文献3】米国特許第6,084,226号
【特許文献4】米国特許第6,566,637号
【非特許文献1】Dorfの電気工学ハンドブック、第2版、CRCプレス社(1997年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、試料の温度を監視又は制御しながら、試料の揮発分含有量を求める器具及び関係する方法である。器具は、揮発分含有量を求める対象の試料を入れることのできるキャビティと、実質的に赤外線周波数以外の周波数を有するマイクロ波をキャビティに導入するための第1供給源と、第1供給源により導入される周波数とは異なる周波数で放射熱をキャビティに導入するための第2供給源と、試料をキャビティ内で秤に載せた状態で、試料の重量を測定するための分析用の秤と、測定作業が可能であり、キャビティ内で秤に載せられた試料の温度を測定するために配置されている温度センサと、温度センサ並びに第1及び第2供給源のそれぞれと通信しているプロセッサであって、各周波数のマイクロ波と放射エネルギーのキャビティ内への導入を、温度センサが測定した温度に応じて制御し、第1供給源からのマイクロ波と第2供給源からの放射熱が、試料を、プロセッサが秤上の試料の重量変化に基づいて試料の揮発分含有量を判定できるほど十分に乾燥させるまで、試料温度を制御するためのプロセッサと、を含んでいる。
【0018】
本発明の上記及び他の態様並びに各実施形態は、添付図面に関連付けて以下の詳細な説明を参照すればより明確になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、多種多様な試料、典型的には「自由」水と「結合」水(水分)又は他の無極性の揮発性材料を含有している試料の温度を監視又は制御して、試料の水分の損失以外の燃焼又は分解を防止しながら、試料の揮発分含有量を求めるための器具及びそれに関係する方法である。本発明は、自由水に対するマイクロ波乾燥の速度性能と、結合水の除去に対する放射エネルギー(温度上昇)の好適な特性とを、何れの処理にも工程(技法)の速度を下げる制限を課すことなく利用している。
【0020】
図1は、本発明による器具の概略的配線図である。この器具は、矩形10で示すキャビティ10を含んでいる。揮発分含有量を求めようとする試料11は、通常、このキャビティ10に入れられる。ダイオード12として概略的に図示している供給源は、符号13で表象的に図示しているマイクロ波をキャビティ10内に導入する。供給源12は、通常、マグネトロン、クライストロン、及びIMPATTダイオード装置から成る群より選択され、それぞれマイクロ波周波数の電磁放射を作り出すことができる。上記それぞれは、様々な状況で、ユーザーにとって重要である大きさ又は費用及び器具の他の要素との整合性の様な考慮すべき事項に基づいて選択される。上記それぞれは、当技術ではよく知られており、ここで詳しく論じる必要は無い。
【0021】
ランプ14として図示している第2供給源は、符号15で表象的に図示している放射熱をキャビティ10内に導入し、第1供給源12により導入されたマイクロ波周波数とは異なる周波数で、試料11に向けて放射する。分析用秤16は、試料11がキャビティ10内にある間に、通常、パン17(秤16に機能的に接続されている)又は他のホルダに載せられている試料11の重量を測定する。多くの実施形態において、モーター18とシャフト19が、加熱と乾燥が更に均一的に行われるように助長するため比較的遅い速度で試料を回転させる。共有譲渡されているの米国特許第6,302,577号には、代表的な秤装置が記載されており、同特許の全内容を参考文献としてここに援用する。
【0022】
試料11が秤16に載せられている間にキャビティ10内の試料11の温度を測定するため、少なくとも1つの温度センサ20が配置されている。プロセッサ21は、信号配線22を介してこの温度センサ20と通信している。因みに、図1では様々な構成要素が、代表的に電気配線を表象化した線で接続されているように図示しているが、構成要素の1つ又はそれ以上が、802.11(「WiFi」)の様な標準を使用して互いに無線通信するようにしてもよい。
【0023】
プロセッサ21は、更に、信号配線23を介してマイクロ波供給源12と、そして信号配線24を介してランプ14と、通信している。これにより、プロセッサ21は、マイクロ波周波数13と放射熱15両方のキャビティ10内への導入を、センサ20が測定した温度に応じて制御できるようになる。これは、今度は、マイクロ波供給源12からのマイクロ波13とランプ14からの放射熱15が、重量変化に基づいてプロセッサ21が試料の揮発分含有量を判定できるほど十分に、試料を乾燥させるまで、試料11の温度を制御する手助けとなる。
【0024】
制御回路の基本的原理は、電気工学技術では十分に理解されており、ここでは詳しくは説明しない。適切且つ代表的な説明は、Dorfの電気工学ハンドブック、第2版、CRCプレス社(1997年)の様な、広く入手可能な文献に記載されている。同様に、マイクロ波器具の基本的特性も当技術では十分に理解されており、商業的に利用でき特許を与えられている代表的な例は、本発明の譲渡人である、米国ノースカロライナ、マシュースのCEM Corporation並びに他の機関から入手可能である。赤外線加熱技法は、単独で、同じく当技術では十分に理解されており、商業的に利用できる代表的な赤外線器具は、同じく市場に広く出回っている。
【0025】
プロセッサ21の速度と容量は、必要に応じて選択されるが、通常、デスクトップパーソナルコンピュータと同様の性能を有している。「プロセッサ」という用語は、ここでは比較的広義に使用しており、プロセッサチップ自体の他にも、パーソナルコンピュータの該当するメモリ及びバス構成要素が含まれる。
【0026】
或る実施形態では、温度センサ20は、キャビティ又は周辺雰囲気の温度ではなく試料11の温度を測定する光学的な高温計又は等価な光センサである。赤外線光検出器は、非侵入性であるため、即ち試料に触れず、その代わり、試料が放射するIR周波数を測定することにより試料の温度を判定することから、上記目的にとっては少なくとも部分的には有用である。他の一般的な温度測定装置としては、温度計(性質及び動作が電気的でないもの)、サーモカプル、サーミスタ、及び抵抗温度計が挙げられる。上記それぞれは、十分に理解されている様式で働く。
【0027】
しかしながら、ランプ14により供給される放射エネルギー15は、しばしば赤外線周波数を含んでおり、その赤外線周波数がランプ作動中にIR検出器に大量に流れ込み、その結果、試料が発したIR周波数とランプが発した周波数を、IR検出器が区別できなくなってしまう恐れがある。従って、他の実施形態には、器具が、赤外線放射以外の特性を測定してランプからの赤外線放射の存在下で温度を測定する第2の温度センサ25を含んでいるものもある。第2温度センサ25は、秤16の計量機能を妨げないやり方で配置される限りにおいて、サーモカプル又は同様の装置でもよい。第2の温度検出器25は、配線(又は等価物)27を介してプロセッサ21と通信している。
【0028】
図1は、秤16から重量情報を得ると共に、測定された重量に応じて試料へのマイクロ波エネルギー13又は放射エネルギー15の導入を随意的に制御するために、プロセッサ21が、配線30を介して分析用の秤16と通信していることも示している。
【0029】
同様に、必要に応じて、器具は、試料11が加熱されているときにキャビティ10から揮発分を取り除くための、又は温度を抑えるのを支援するためにキャビティ10から熱風を全般的に移動させるための、ファン31を含んでいてもよい。ファン31は、プロセッサ21に応答して、そしてセンサ20、25何れかにより測定された温度又は秤16により測定された重量の様な追加的入力により、速度と気流を制御するために、可変速度機構を含んでいてもよく、且つ配線32を介してプロセッサ21と通信することができる。
【0030】
ランプ14は、赤外線ランプ、石英ヒーター、白熱灯、金属製加熱要素、及びハロゲン灯を含め、所望の放射エネルギーを提供する様々な供給源から選択することができる。とはいえ、これらは、本発明を限定するものではなく一例に過ぎない。マイクロ波供給源12とランプ14は、1つ又は複数の電源から電力を供給され、その内の1つを符号33で概略的に示している。1つの電源33しか図示していないが、必要に応じて、各供給源12、14毎に別々の電源を含んでいてもよい。マイクロ波放射に関しては、電源33は、共有譲渡され援用している米国特許第6,084,226号に記載されている切替式電源である。電源33とマイクロ波供給源12は、適切な回路34の一部を形成しているが、この回路はその他の点では従来のものなので、ここで詳しく説明する必要は無い。同様に、電源33とランプ14は回路35のそれぞれの部分を形成しており、これも同じく、器具の他の作動特性と矛盾しない限り、従来のものであってもよい。代表的なランプは、Ushio America, Inc.(カリフォルニア州90630、シプレス、セリトスアベニュー5440)から市販されている82ボルト360ワットのランプ(又は類似のランプ)、又はカリフォルニア州90660、リコリベラ、グレッグロード4901のSECから市販されている120ボルト250ワットのランプ、様なハロゲンプロジェクタ灯である。
【0031】
図1は、キャビティ10の開口部36として図示されている導波管を概略的に示している。なお、導波管及びキャビティ10の他の開口部は、殆どの状況で、マイクロ波がキャビティ10から漏れないようにする寸法形状でなくてはならない、と理解されたい。この様な導波管及び減衰器の直径及び長さと、伝播するマイクロ波周波数との関係は、当技術では十分に理解されており、当業者であれば、必要以上の実験をすることなく選択することができる。
【0032】
同様に、放射熱供給源14は、適切なウインドウ又は開口部37に隣接しているか、光学的又は熱的に連通しているかの何れかである。開口部という用語は、放射エネルギーに関して機能的な意味で使用しており、所望の周波数を通す光学的ウインドを含んでいてもよく、必ずしもキャビティ10の物理的な孔を表しているわけではない。開口部37の寸法、形状、及び材料は、先に導波管36に関連して述べたように、殆どの状況で、マイクロ波がキャビティ10から漏れないようにするという目的と一致している。
【0033】
図1は、キャビティからファン31までの通気孔40として示している第3の開口部を示している。この様な排気口又は通気孔は、同様に、マイクロ波エネルギーの伝播を不可能にする特性を(殆どの状況で)共有している。
【0034】
図2は、本発明による器具40の斜視図である。この実施形態では、器具40は、上側ハウジング部分41と、基部42を含んでいる。ハウジング41と基部42は、一体で、キャビティ(図2には不図示)を取り囲んでおり、そのやり方は、共有譲渡されている米国特許第6,566,637号に記載のキャビティの場合と同じであり、前記特許の全内容を参考文献としてここに援用する。また、本譲渡人であるCEM Corporationから市販されているSMARTTM器具は、前記特許第6,566,637号に記載の特徴の多くを組み込んでいる。
【0035】
この実施形態では、ランプ(図1に一致する符合14で示す)は、上側ハウジング41の上面43に配置されている。この位置で、ランプ14は、赤外線放射(及び、典型的には、一部可視周波数も)を、図1に概略的に図示したやり方でキャビティの中へと向かわせることができる。固定具44は、ランプ14を所定の位置に保持して、適切な電気的及び物理的接続を供給している。これらは、その他の点では従来と同じであるので、当技術では広く知られており、ここでは詳しく説明しない。
【0036】
ランプ14は、赤外線放射を含め熱放射をキャビティの中へと送り込む役目を果たすので、図2に示す位置は一例に過ぎず、何ら限定を課すものではない。而して、ランプ14は、ハウジング41の側壁45又は46の一方に配置してもよいし、何か他の配置で基部42から突き出していてもよい。
【0037】
図2は、ハウジング41が、ハウジングを物理的に開けるために使用されるラッチ47を含んでいることも示しているが、ハウジングは、通常、後方に向けてヒンジで動くようになっている。
【0038】
図2は、更に、プロセッサに入力するのに使用されるキーボード又は英数字パッド50、並びに、入力と出力、例えば、プロセッサが計算した試料の重量パーセンテージ、の両方を見えるように表示する表示装置51も示している。この様な入力と出力要素は、関連技術では十分に理解されているので、ここでは詳しく説明しない。キーパッド50は、他にも選択肢はあるが、機械式又はタッチ式でもよい。同様に、表示装置51は、ブラウン管(CRT)、発光ダイオード(LED)、又は液晶表示装置(LCD)を含め、寸法、機能、費用的に適切な技術に基づいているものでよい。この様な表示は、十分に理解されており、例えば、典型的な携帯電話のカラーディスプレイなど、小型のものが一般的になってきている。
【0039】
別の態様では、本発明は、自由水と結合水の両方と、恐らくは極性の揮発分及び非極性の揮発分とを含んでいる試料の水分(又は揮発分)の含有量を求めるための方法である。この態様では、本発明は、分析対象の試料をマイクロ波キャビティ内の秤に載せる段階と、実質的に赤外線周波数以外の周波数を有するマイクロ波エネルギーを試料に照射して、試料を加熱し、自由水分(及び極性揮発分)を試料から除去する段階と、実質的にマイクロ波周波数以外の周波数を有する放射エネルギーを試料に照射して、試料を加熱し、結合した水分(及び恐らくは非極性揮発分)を試料から除去する段階と、マイクロ波と放射エネルギーを照射している間に試料の重量を監視(測定)する段階と、マイクロ波と放射エネルギーの両方を照射している間に試料の温度を監視する段階と、試料が乾燥する際に分析用の秤で試料の重量を継続的に測定しながら、試料に照射されるマイクロ波及び放射エネルギーを、測定温度に応じて、試料の温度が試料の燃焼する温度よりも低い温度に保たれるように抑制する段階と、を含んでいる。なお、この方法では、無論のこと自由水と極性揮発分の両方が試料中に存在している必要は無く、一方でも両方でも存在していれば、本方法はそれらを除去することができるということを理解されたい。結合水と非極性揮発分についても同じことが言え、一方又は両方が存在していれば、本方法はそれらを除去することができる。
【0040】
具体的には、本方法は、マイクロ波エネルギーを試料に照射する前に試料の重量を測定する段階と、結合水を取り除いた後に試料の重量を測定する段階と、試料の水分(又は他の揮発分)の含有量を、測定された重量に基づいて計算する段階を含んでいる。
【0041】
マイクロ波エネルギー及び放射エネルギーを照射する段階は、少なくとも或る期間は同時に行うことができる。代わりに、マイクロ波エネルギーと放射エネルギーは、順次連続して照射してもよい。最も一般的なやり方で且つマイクロ波結合の速度を利用するためには、マイクロ波エネルギーは、放射エネルギーを照射する段階の前に、又はこれと同時に照射される。最も一般的には、マイクロ波エネルギーは、重量変化が、自由水分が実質的に除去されたことを示すまで照射される。この点で、マイクロ波の結合の利点はもはや適用されず(又は非常に小さく)、結合水又は他の非極性揮発性物質は、放射エネルギーを照射することにより最も効率的に除去される。
【0042】
同様に、本方法は、マイクロ波エネルギー又は放射エネルギーの何れかを試料に照射する前に、初期温度を測定する段階を含んでいる。
代表的な実施形態では、試料の重量は、マイクロ波エネルギー及び放射エネルギーが照射されているとき、継続的に測定される。通常は、温度も継続的に測定される。
【0043】
場合によっては、試料材料にもよるが、全水分損失は、マイクロ波及び放射エネルギー段階時の水分損失の速度に基づいて、即ち試料が完全に乾燥する前に得られる情報に基づいて、予測される。
【0044】
この方法では、マイクロ波エネルギーを抑制する段階は、供給源によって作り出されるマイクロ波のパワーを抑制する段階、又はマイクロ波が供給源とキャビティの間を通過するのを抑制することによる段階を含んでいる。同様に、放射エネルギーは、供給源によって作り出されるエネルギーを抑制することにより、又は供給源14と試料11の間の放射エネルギーの伝播を抑制することにより、抑制される。
【0045】
効率化のために、本方法は、重量変化(又は変化の欠損)が試料の乾燥したことを示したときに、プロセッサを使用してマイクロ波エネルギーと放射エネルギーを切る段階を含んでいてもよい。
【0046】
代わりに、プロセッサは、マイクロ波が照射されているときの重量損失の速度差を計算して、自由水が追い出されたこと、及び乾燥工程の残り期間中はマイクロ波供給源を放射熱供給源に置き換えるべきであることが判るようにしてもよい。
【0047】
本発明は、従って、自由水に関するマイクロ波乾燥の速度性能と、結合水の除去に関する放射エネルギーの好適な特性(温度上昇)を、何れの状況でも何れの工程(技法)の処理速度も落とすことなく利用している。
【0048】
図面と明細書では、本発明の好適な実施形態を説明しており、特定の用語を用いているが、それらは総称的及び記述的意味においてのみ使用されており、特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲を制限する目的で使用されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による器具の概略配線図である。
【図2】本発明による器具の斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 キャビティ
11 試料
12 ダイオード
13 マイクロ波供給源
14 ランプ
15 放射熱
16 分析用秤
18 モーター
19 シャフト
20 温度センサ
21 プロセッサ
22、23、24、27、30、32 配線
25 第2温度センサ
31 ファン
33 電源装置
34、35 回路
36、37 開口部
40 器具
41 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の温度を監視又は制御しながら前記試料の揮発分含有量を判定するための器具において、
前記揮発分含有量を求めようとする試料が入れられるキャビティと、
実質的に赤外線周波数以外の周波数を有するマイクロ波を前記キャビティに導入するための第1供給源と、
前記第1供給源により導入された周波数とは異なる周波数の放射熱を前記キャビティに導入するための第2供給源と、
試料を前記キャビティ内で秤に載せた状態で、前記試料の重量を測定するための分析用の秤と、
前記秤並びに前記第1及び第2供給源のそれぞれと通信しているプロセッサであって、前記各周波数のマイクロ波エネルギーと放射熱の前記キャビティ内への導入を、前記秤に応じて、前記第1供給源からのマイクロ波と前記第2供給源からの放射熱が、前記試料を、前記プロセッサが前記秤上の前記試料の重量変化に基づいて前記試料の揮発分含有量を判定できるほど十分に乾燥させるまで、制御するプロセッサと、を備えている揮発分含有量判定器具。
【請求項2】
測定を行うことができる、前記キャビティ内で前記秤に載せられた試料の温度を測定するために配置されている温度センサを更に備えており、
前記温度センサは、前記各周波数のマイクロ波エネルギーと放射熱の前記キャビティ内への導入を、前記温度センサにより測定された温度に応じて制御し、それにより前記試料の温度を制御するために、前記プロセッサと通信している、請求項1に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項3】
前記温度センサは、前記キャビティの温度でも周囲雰囲気の温度でもなく、前記試料の温度を測定する赤外線光センサを備えている、請求項2に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項4】
前記赤外線放射以外の特性を測定して、前記試料の温度を表すのではない赤外線放射が存在する下での温度を測定する第2温度センサを更に備えている、請求項3に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項5】
前記試料が加熱されているときに、前記キャビティから揮発分を除去するための排気ファンを更に備えている、請求項1に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項6】
前記排気ファンは、可変速度排気ファンであり、
前記プロセッサは、前記温度センサと前記分析用秤に応答して前記ファンの速度を制御するために前記ファンと通信している、請求項5に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項7】
マイクロ波を導入するための第1供給源は、マグネトロン、クライストロン、及びマイクロ波を生成するための半導体装置から成る群より選択される、請求項1に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項8】
マイクロ波を前記第1供給源から前記キャビティに送り込むための導波管を更に備えている、請求項1に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項9】
前記温度センサは、サーモカプル温度センサである、請求項2に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項10】
前記第2供給源は、前記試料を加熱するのに十分なパワーを有する赤外線放射の供給源を備えている、請求項1に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項11】
前記第2供給源は、赤外線ランプ、石英ヒーター、白熱灯、金属製加熱要素、及びハロゲン灯から成る群より選択される、請求項1に記載の揮発分含有量判定器具。
【請求項12】
試料の揮発分含有量を判定するための方法において、
分析対象の試料をマイクロ波キャビティ内の分析用秤に載せる段階と、
実質的に赤外線周波数以外の周波数を有するマイクロ波エネルギーを前記試料に照射して、前記試料を加熱し、自由水分及び極性揮発分を試料から除去する段階と、
実質的にマイクロ波周波数以外の周波数を有する放射エネルギーを前記試料に照射して、前記試料を加熱し、結合水分及び非極性揮発分を前記試料から除去する段階と、
マイクロ波エネルギーと放射エネルギーを照射している間、前記試料の重量を監視する段階と、
前記試料が乾燥する際に前記分析用の秤で前記試料の重量を継続的に測定しながら、前記試料に照射されるマイクロ波エネルギー及び放射エネルギーを、前記監視されている重量に応じて抑制する段階と、から成る揮発分含有量判定法。
【請求項13】
マイクロ波エネルギーと放射エネルギーを照射している間、前記試料の温度を測定する段階と、
前記試料が乾燥する際に前記分析用の秤で前記試料の重量を継続的に測定しながら、前記試料に照射されるマイクロ波エネルギー及び放射エネルギーを、測定された温度に応じて、前記試料の温度が前記試料の燃焼する温度よりも低い温度に保たれるように抑制する段階と、を更に含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項14】
マイクロ波エネルギーを前記試料に照射する前に、前記試料の前記重量を測定する段階と、
結合水を除去した後で、前記試料の前記重量を測定する段階と、
前記測定した重量に基づいて、前記試料の含水量を計算する段階と、を更に含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項15】
少なくとも或る一定の期間はマイクロ波エネルギーと放射エネルギーを同時に照射する段階を含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項16】
前記マイクロ波エネルギーを照射する段階と前記放射エネルギーを照射する段階は、順次連続して行われる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項17】
前記放射エネルギーを照射する段階の前に、前記マイクロ波エネルギーを照射する段階を含んでいる、請求項16に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項18】
前記温度を監視する段階は、前記試料により発せられた赤外線放射を、赤外線光センサを使用して測定する段階を含んでいる、請求項13に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項19】
前記マイクロ波エネルギー及び前記放射エネルギーを前記試料に照射する段階の前に、初期温度を測定する段階を更に含んでいる、請求項13に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項20】
前記試料の前記重量を監視する段階は、前記マイクロ波エネルギー及び前記放射エネルギーが照射されているときに、前記試料の前記重量を継続的に測定する段階を含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項21】
前記試料の前記温度を測定する段階は、前記マイクロ波エネルギー及び前記放射エネルギーが照射されているときに、前記試料の前記温度を継続的に測定する段階を含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項22】
前記マイクロ波エネルギーを抑制する段階は、前記マイクロ波供給源により作り出されるマイクロ波パワーを抑制する段階を含んでいる、請求項13に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項23】
前記マイクロ波エネルギーを抑制する段階は、前記マイクロ波供給源と前記試料が置かれている前記キャビティとの間のマイクロ波の通過を抑制する段階を含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項24】
前記放射エネルギーを抑制する段階は、前記放射源により作り出される放射エネルギーを抑制する段階を含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項25】
測定された重量が、前記試料が実質的に乾燥したことを示したら、前記マイクロ波エネルギーの前記試料への照射を終了する段階を更に含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項26】
測定された重量が、前記試料が実質的に乾燥したことを示したら、前記放射エネルギーの前記試料への照射を終了する段階を更に含んでいる、請求項12に記載の揮発分含有量判定法。
【請求項27】
揮発分含有量を求めるための乾燥損失法における改良において、
実質的に赤外線周波数以外の周波数を有するマイクロ波エネルギーを、試料に対して、前記試料を加熱して前記試料から自由水分と極性揮発分を除去する所定のパワーレベルで照射することと、
実質的にマイクロ波周波数以外の周波数を有する放射エネルギーを、試料に対して、前記試料を加熱して前記試料から結合水分と非極性揮発分を除去する所定のパワーレベルで照射することと、
前記試料が乾燥する際に前記分析用の秤で前記試料の重量を継続的に測定しながら、前記試料に照射されるマイクロ波エネルギー及び放射エネルギーを、測定された温度に応じて、前記試料の温度が前記試料の燃焼する温度よりも低い温度に保たれるように抑制すること、から成る改良。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−58301(P2008−58301A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−183915(P2007−183915)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(500119569)シーイーエム・コーポレーション (16)
【Fターム(参考)】