説明

二重カップ式減速機

【課題】
減速機構から発生する振動を防止し、付加変動による回転ムラをなくし、減速比を大きくしてもサイズの大きくならない減速装置とすること。
【解決手段】
入力軸(1)の軸端に固定支持されたキャリア(2)に回転自由に支持された複数の遊星ローラ(4)と、ハウジング(5)内部に回転自由に支持された出力カップ(7)と、ハウジング(5)の内部に固定支持され出力カップの外径より大きい内径を有する固定カップ(8)とからなり、出力カップ(7)の円筒内部に入力軸の軸端に支持された複数の遊星ローラ(4)の組立て状態における最外径が、出力カップ(7)の円筒部の内径より大きな状態で圧入することにより出力カップ(7)の軸端の外周部を楕円状に膨らませ、さらにこの膨らみ部分の最外径が固定カップ(8)自由状態における円筒部内径より大きな状態で固定カップ(8)の円筒部内に押し付け力をもって接するように組立てられた減速装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主としてパソコンのプリンター、複写機、各種のOA機器などの、モータの駆動力を回転速度変化の少ない変速機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パソコンのプリンターや複写機などの動力伝達部に利用されている減速機は歯車を使用しているものが主流であり、他には歯付ベルトあるいは平ベルトを使用しているものがある。
【0003】
歯車を使用したものは、歯の特性に基づく音や振動の発生がありプリンターなどの回転精度を要求されるものではその振動の影響が画質に悪い影響を及ぼす。また、アミューズメントロボットなどにガタの有る歯車減速機を使用すると、予期しない振動などの発生原因となっている。
【0004】
ゴム製の歯付ベルトを使用したものは、ベルトの剛性が低いため装置の負荷変動によりベルトの長さ変化を生じ速度変動が発生する。
【0005】
平ベルトを使用しているものは、回転精度は良く伝達することができるが、ベルトとプーリ間の摩擦力を利用したものであるため、伝達負荷能力が低く構造が大型化する。
特にその減速比が大きくなると入力軸側のプーリに対して出力側のプーリ径は減速比の逆数倍となるので大型となる。しかし、ベルトの応力はプーリ径に逆比例するため、あまり小さなプーリ径にすることはできない。 このため、2段減速とすることが必要となり、構造が複雑となる。
【0006】
また、動力を摩擦伝達する構造の減速機を使用したものは特公昭46−24330がある。この特公昭の図1及び図2に示されているように、この発明はローラに付与する力のかけ方が、切り欠き部101、102に遊星輪61,62の軸91,92を係止させて遊星輪61,62を弾性摩環体5の内面と弾性摩擦輪7とによって挟持するような複雑な構造となっている。
【0007】
さらに、動力を摩擦伝達する構造の減速機を使用したものでは、実開昭60−150354がある。この発明はこの実開昭の第3図、第4図に示されているように、駆動ローラ3とアイドラ9との接触面がローラの外径とアイドラの外径、即ち凸面と凸面との接触であるためその応力が高くなり、減速機全体を小型化することは困難である。
【0008】
同様に、実開昭59−158752についても、構造が複雑で減速機全体を小型化することは困難である。
【特許文献1】特公昭46−24330
【特許文献2】実開昭60−150354
【特許文献3】実開昭59−158752
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したそれぞれは、動力伝達系における振動あるいは動力伝達系における低い剛性及び減速機サイズに対する低い伝達負荷能力などの課題を有するものである。
さらに、複雑で部品点数が多く、大型で重く、組立にくいなど量産に不向きの課題を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための手段は、
『入力軸の軸端に固定支持されたキャリアとキャリアに固定支持された複数のローラ軸とローラ軸のそれぞれに回転自由に支持された複数の遊星ローラと、ハウジング内部に回転自由に支持された出力軸に固定支持された出力カップと、ハウジングの内部に固定支持され出力カップの円筒部の外周長より長い円筒部内周長を有する固定カップとからなり、出力カップの軸端円筒内部に入力軸の軸端にキャリアとローラ軸と複数の遊星ローラとの組立て状態における最外径が、自由状態における出力カップの円筒部の内径より大きな状態で圧入することにより出力カップの軸端円筒部の外周部を楕円状に膨らませ、これをさらにこの膨らみ部分の最外径が固定カップの自由状態における円筒内径より大きな状態で固定カップの円筒部内に変形による押し付け力をもって接するように組立てられた減速装置』とすることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は動力伝達部に薄肉のカップを使いローラとの摩擦力で潤滑油を使用しない方法を利用することにより、動力伝達系における振動を防止し、動力伝達系における高い剛性を確保し、減速機サイズに対する伝達負荷能力を高めたものである。さらに、単純で部品点数が少なく、小型軽量で、組立性など量産向きの構造としたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明が提供する遊星ローラ減速機の実施の形態を本発明の実施例1の断面図、図1及び図2にもとづいてその構造を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1において(1)は入力軸で、普通は駆動用のモータ(0)などの出力軸をそのまま利用する。(2)はキャリアで入力軸(1)の端部にスリ割(2−a)の両側からボルト(2−b)で締付け固定されている。
【0014】
ローラ軸(3)はキャリア(2)の孔(2―c)に嵌合支持されており、一端をその内部ねじ(3―a)にワッシャア(3―b)と(3−c)を挟んでボルト(3−d)により締結され、他端に外周が回転自在な遊星ローラ(4)を支持している。なお(3―e)はローラ軸(3)を取り付けるときの回転止め用のスリットである。
【0015】
ハウジング(5)は開口側が、普通はモータなどに直接ボルトで取り付けられている。ハウジング(5)の底部中央にはベアリング(5−a)が嵌合されている。
【0016】
出力軸(6)は軸部(6−a)とフランジ部(6−b)とからなり、軸部(6−a)にはベアリング(5−a)とスペーサ(6−c)スペーサ(6−d)を軸方向にガタを生じないようにスナップリング(6−e)で止められており、自由に回転できるように設定されている。
フランジ部(6−b)には円周状に複数の孔(6−f)が孔設されており、同じように円周に雌ねじを設けた出力軸止めリング(6−g)ボルト(6−h)により、出力カップ(7)をねじ締結している。
【0017】
固定カップ(8)はハウジング(5)の底部のベアリング(5−a)の外径部外側に円周状に複数孔設されたねじ(5−b)に、同じように円周状に複数孔設された固定カップ止めリング(5−c)とに挟まれてボルト(5−d)により固定されている。
【0018】
入力軸(1)に一体となったキャリア(2)とローラ軸(3)に回転自由に取り付けられた2個の遊星ローラ(4)の最大の外接径は自由状態における出力カップ円筒部(7−a)の内径よりも大きな関係寸法となっている。したがって、出力カップ円筒部(7−a)の内径に入力軸(1)に一体となったキャリア(2)とローラ軸(3)に回転自由に取り付けられた2個の遊星ローラ(4)を挿入すると、出力カップ円筒部(7−a)は図2に示すように楕円形状に変形する。
【0019】
この楕円になった出力カップ円筒部(7−a)の最大部外径は、固定カップ(8)の自由状態における円筒部(8−a)の内径寸法より大きい。
したがって、このように組立てられた出力カップ(7)を固定カップ円筒部(8ーa)内径に挿入すると、固定カップ(8)の円筒部は図2に示すように楕円形状に変形する。
【0020】
本発明の遊星ローラ減速機に関する作用について説明する。
ここで、固定カップ(8)はハウジング(5)に固定されているので回転することはできない。いま仮に図2において入力軸(1)が時計方向に1回転をすると、これにキャリア(2)とローラ軸(3)と締結されている遊星ローラ(4)は出力カップ円筒部(7−a)内径を外径方向に押し付けながら滑らないで回転する。
【0021】
さらに固定カップ円筒部(8ーa)内径と出力カップ円筒部(7−a)外径も押し付けられた状況にあるため相対的に滑らないで、固定カップ(8)は固定されているため回転しないが出力カップ(7)はわずかに回転する。その量は固定カップ円筒部(8ーa)内径周長に対し、出力カップ円筒部(7−a)外径周長は出力カップ(7)のほうが短いためその分、反時計方向に回転する。
【0022】
いま、仮に固定カップ円筒部(8ーa)の内周長と出力カップ円筒部(7−a)の外周長との周長の比を10:9にすると、長さの差の分10%だけ出力カップ(7)を逆回転することになるため、入力軸(1)に対する出カップ(7)の減速比は逆転方向で1/10となる。
【0023】
さらに、固定カップ円筒部(8ーa)の内周長と出力カップ円筒部(7−a)外周長との周長の比を20:19にすると出力カップ(7)は長さの差の分5%だけ逆回転することになるため、その減速比は1/20となる。さらに、出力カップ円筒部(7−a)外周長を固定カップ円筒部(8ーa)内周長に近くすれば容易に大きな減速比を得る事が出来る。
【0024】
課題を解決するための手段としては、前述の条件を満たすことにより成立させることは可能であるが、さらに詳細にその手段・特徴について記述する。
【0025】
本発明のように動力を伝達するローラがカップ状のものの内側から半径方向に荷重を与える手法としては、特開2003−207004があるが、荷重を発生させる部品としてその特開の図3、図4における複数のピン24の直径を所望する押圧力とするため選択して組み込む事にしたり、一対の楔部材235とディスタンスピース234とで還状部材20に、所期の荷重を発生させるための圧力調整手段を有する複雑な構造としている。
【0026】
しかしながら、本発明は出力カップ(7)及び固定カップ(8)の設計に電子計算機による構造解析をすることにより従来の複雑な構造を単純な構造となるように進化させている。
その計算は、出力カップ(7)及び固定カップ(8)の内包される部品の寸法精度のばらつきと出力カップ(7)及び固定カップ(8)のばねとしての特性と所期の必要荷重と出力カップ(7)及び固定カップ(8)に生ずる応力との関係を求めることにより成立させたものでる。
【0027】
本発明の構造的に優位な点について、動力の伝達形態が同じような構造のものである実開昭60−150354と比較する形で説明をする。
この発明はこの実開昭の図3、図4示されているように、駆動力を伝達するための押圧力を受けるところは出力軸8につながる薄肉円筒体5と駆動ローラ3、非回転円筒体6と薄肉円筒体5、及び駆動ローラ3とアイドラ9の3箇所である。この圧接させる手段としてのアイドラ9は減速機全体の特性を向上させる手段としては弊害となるものである。
以下にどのような弊害となるものか文献『疲労設計便覧』日本材料学会編・養賢堂(第1
版)の式を使って説明する。
【0028】
一般に円柱と円柱、凹面と円柱の面応力の計算式は負荷される荷重p、縦弾性係数Eとすると次式であらわされる。
【数1】



D1、D2、D3は(図3)参照
(図3)は実開昭60−150354を想定したもので、(図4)は本発明を想定したものである。 実開昭60−150354の場合はD1とD2の面圧の方がD2とD3の面圧より高いのでこの部分に円柱と円柱の式を適用し、荷重p、縦弾性係数Eは等しいとし、さらに、 3×D1=3×D2=D3と仮定、実開昭60−150354と本発明の応力を式(1)(2)(3)を用いて比較すると実開昭60−150354の方が √3=1.7倍高い。
また、実開昭60−150354はD1>D2とする傾向があり、D2が小さくなることによりさらに応力が上がるが、本発明の D2はD3の1/3より大きく設計できるので、この強度の比はさらに大きなものになる。これにより実開昭60−150354にあるD2に相当する、圧接する手段のない本発明の方が同サイズでも強度の強い減速機とすることができるものである。
【0029】
遊星ローラ(4)単体外径と出力カップ円筒部(7−a)の内径比は30〜46%が望ま
しいとする(請求項2)以降に付いての詳細を説明する。
遊星ローラ(4)は出力カップ(7)の内径に接触圧を持って回転するが、その比を仮に出力カップ(7)の内径の33%とするとモータ軸が1回転すると遊星ローラ(4)は3回転することになる。ここで、モータの回転数が2000rpmとすると遊星ローラ(4)は6000rpmと高くなりベアリングの耐久寿命上はローラ径があまり小さくなる事は望ましくない方向である。
【0030】
しかしながら、遊星ローラ(4)単体外径と出力カップ円筒部(7−a)内径比は、複数の遊星ローラ(4)の組立て状態における最外径が、自由状態における出力カップ円筒部(7−a)の内径より大きな状態としているので50%以上の値も取り得ることもできるが、あまり大きな値になると出力カップ(7)に複数の遊星ローラ(4)の組立てがしにくくなり、複数の遊星ローラ(4)の組立て状態における最外径の寸法変化量に対して出力カップ(7)との間に発生する荷重の変化量が大幅になり、目標荷重に対する生産管理がきびしくなるので46%程度にとどめることが現実的である。
【0031】
出力カップ(7)及び固定カップ(8)は鋼材、或いはステンレス材及びそれらの表面に強度向上のための表面処理をほどこしたものである。 出力カップ(7)の円筒部(7−a)の板厚は伝達トルクを伝え得るだけの板厚があればよいが、あまり薄いと伝達トルクによる座屈の生じることになり、また生産途中のハンドリングにより傷や変形が発生しやすい。
しかし、板厚が厚いと楕円に変形した時の応力が高くなり回転による繰り返し負荷をかけると疲労破壊が発生する。
出力カップ円筒部(7−a)外径と固定カップ円筒部(8−a)内径の比が1に近い時、即ち減速機の減速比が大きな場合、出力カップ(7)円筒部外径は変形が少ないため、板圧は厚くても良いが、減速比が例えば1/20程度の小さい場合は変形による楕円の程度が大きく取れる薄いものの方が疲労耐久的に有利となる。そのため、出力カップ(7)の内径とそのカップ円筒部(7−a)の板厚の比は0.6〜3%である事が望ましい。
【0032】
固定カップ(8)は出力カップ(7)と機能が若干異なる。出力カップ(7)は複数の遊星ローラ(4)の組立て状態における最外径部と固定カップ(8)の間に挟まれており、伝達トルクを伝える機能だけであるが、固定カップ(8)は伝達トルクの反力トルクを保持する機能と複数の遊星ローラ(4)の組立て状態における最外径部と出力カップ(7)と固定カップ(8)との間にトルクを伝達できるだけの荷重を発生させる機能も必要である。このため、固定カップ円筒部(8ーa)はそれに見合った板厚が必要となる。
【0033】
組立てられた状態における固定カップ(8)に発生する応力は、組立て状態における複数の遊星ローラ(4)と出力カップ(7)を含む最大外径部と固定カップ円筒部(8ーa)の自由状態における内径との寸法差、言い換えると「締め代」が大きくなると大きくなる。
また、固定カップ(8)に発生する応力は、板厚が厚くなると大きくなり、固定カップ(8)の荷重点距離、即ちハウジング(5)の取り付け位置から組立て状態における複数の遊星ローラ(4)と出力カップ円筒部(7−a)外径を含む最大外径部までの距離が大きくなると小さくなる。
【0034】
そこで、固定カップ(8)に発生する応力は、その値を低くすることだけから考察すると「締め代」を小さく、板厚を厚く、荷重点距離を長くすることにより成立するが、次に述べる2つの点より制約が生じる。
【0035】
第1は固定カップ(8)の「締め代」を小さく設定すると、動力を伝達するため出力カップ(7)の内部に組立てられた複数の遊星ローラ(4)への押し付け荷重が小さくなるため板厚を厚くする必要がある。板厚を厚くすると円筒部板の応力が上昇するため出力カップ(7)固定カップ(8)とも荷重点距離を長く設定することになる。
しかしながら、荷重点距離を長く設定する事は減速機全体が大きくなることになり、他製品と比較、商品性が下がるため、固定カップ(8)の直径に対する底までの深さの比を0.5〜1.5にする制約が生じる。
【0036】
第2はこの減速ユニットの簡素化と生産性の面から、出力カップ(7)の組立て状態における「締め代」を規定したことである。
本発明の減速ユニットは前述したように組立てるだけで「締め代のばらつき」による押し付け荷重の調整などをなくしたものになっている。
【0037】
「締め代のばらつき」は主としてキャリア(2)のローラ軸間の距離の製造誤差によるばらつき、遊星ローラ(4)の径のばらつき、出力カップ(7)の板厚のばらつき、固定カップ(8)円筒部の内径及び板厚のばらつきによっており、製造方法、製品サイズ、製品数量、精度管理基準、などの各種の要因によりばらつくが0.03〜1.2mm程度に押さえることは可能である。
【0038】
ここで、固定カップ(8)の円筒部が発生する「押し付け力」のばらつきは固定カップ(8)の変形量、即ち「締め代」にほぼ比例する。
したがって、「押し付け力」の管理は「締め代」で管理できる。「押し付け力」の管理値を目標値の0〜10%に管理しようとすると目標「押し付け力」の時の「締め代」を「締め代のばらつき」の10倍に設定しておけば「押し付け力」は組立てただけで管理値に入れることができる。
【0039】
このような、固定カップ(8)は、その剛性が硬すぎても、やわらかすぎても条件を満たす事はできずに、各部の寸法はバランスが必要になる。固定カップ(8)はそのサイズ、形状などにより多少の差はあるが、カップの円筒部に対する板厚の比は、その計算応力の結果から得られる実用的な応力の存在範囲は1.2〜6%である。
【0040】
また、一般的な機械加工やプレス等の精度を、この減速機に適用を考えるとその「締め代のばらつき」は0.03〜0.12mmとなり、キャリア(2)に固定支持されたローラ軸(3)に回転自由に支持された複数の遊星ローラ(4)を内包する出力カップ円筒部(7−a)外径の組立て状態における最外径と固定カップ円筒部(8ーa)との径差即ち「締め代」が、設計時点において、固定カップ(8)の内径より0.3〜1.2ミリ大きな組立て寸法に設定することにより、組立て時の荷重管理を省略することができる。
【0041】
遊星ローラ(4)や出力カップ円筒部(7−a)や固定カップ円筒部(8ーa)は回転方向の剛性が極めて高いため、ベルトなどのように負荷トルクにより伸びたりすることがないため負荷変動による減速機内での回転変動は生じない。
【0042】
本発明の孔設した出力カップ図7を使って、請求項7に関する説明を以下に行う。本発明は減速比が例えば1/20のように小さくなると出力カップ円筒部(7−a)と固定カップ円筒部(8ーa)との径の差が大きくなるため、円筒状の遊星ローラ(4)が内径側から出力カップ円筒部(7−a)を固定カップ円筒部(8ーa)に押し付けると、遊星ローラ(4)円筒部のあたりは出力カップ円筒部(7−a)端部側に対してフランジ部(6−b)側の方が強くなる。
これを緩和するため、出力カップの、端部取りつけ孔部と遊星ローラのあたる転走面を除く表面に複数の孔(9)を明け出力カップ円筒部(7−a)端部側とフランジ部(6−b)側の半径方向への拡大しようとする力に対する変位、即ち半径方向の拡大剛性をフランジ部(6−b)側に孔が開くことで弱めることによりバランスさせようとするものである。
【特許文献4】特開2003−207004
【非特許文献1】『疲労設計便覧』日本材料学会編・養賢堂(第1版)・109頁
【実施例2】
【0043】
図6、図7により他の実施例2を以下に説明する。この例は遊星ローラ(4)の数を3個にしたものである。減速比が大きくなるにつれて出力カップ円筒部(7−a)外周長を固定カップ円筒部(8ーa)内周長に近くすれば容易に大きな減速比を得る事が出来るが、その際出力カップ円筒部(7−a)と固定カップ円筒部(8ーa)との間に生じる入力トルクによる反力トルクが大きくなるため、遊星ローラの個数をさらに増すことにより、それらの間に発生する面圧力を緩和できる。 また、大トルクに対応する場合、遊星ローラとカップ間の荷重が大きくなるので、ベアリング(10)に対する負荷も大きくなるため、この個数をふやし、キャリア(11)はローラの支持方法も片持ちではなく、両持ちの構造とすることが構想できる。また、これを取り付ける方法は入力軸(1)に設けたDカット(1−a)に止めねじ(12)の手段で止める方法もある。
【実施例3】
【0044】
図示はしないが、遊星ローラの個数は上記した数によらず、1個でもよく、3個以上のさらに大きな数の設定も容易に考えることが出来る。
なお、遊星ローラは図1、図6では、シールのないボールベアリングが描かれているが、ドライのベアリングは高価で荷重負荷能力が低いので、ボールの両側にシールのついた普通の潤滑ベアリングでも良いし、ボールベアリングではなく単にローラの内側にドライブッシュを圧入した軸受方式でも良い。
【0045】
歯付ベルトやステンレススチールベルトなどは、動力伝達する所が1箇所しかないのに比べ、本発明は2個のローラのときは2箇所、3個のローラのときは3箇所とローラの個数を増すことにより動力の伝達箇所を多くすることが出来るため外形の小さい割には大きな伝達能力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1を示す[図2]のA-A断面図
【図2】本発明の実施例1を示す[図1]のB矢視図
【図3】本発明と既存の発明との差を説明するための図
【図4】本発明と既存の発明との差を説明するための図
【図5】本発明の孔設した出力カップ図
【図6】本発明の実施例2を示す[図7]のC-D-E-F-G断面図
【図7】本発明の実施例2を示す[図6]のH矢視図
【符号の説明】
【0047】
1・・・・入力軸 6・・・・出力軸
2・・・・キャリア 7・・・・出力カップ
3・・・・ローラ軸 8・・・・固定カップ
4・・・・遊星ローラ
5・・・・ハウジング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸の軸端に固定支持されたキャリアとキャリアに固定支持された複数のローラ軸とローラ軸のそれぞれに回転自由に支持された複数の遊星ローラと、ハウジング内部に回転自由に支持された出力軸に固定支持された出力カップと、ハウジングの内部に固定支持され出力カップの円筒部の外周長より長い円筒部内周長を有する固定カップとからなり、出力カップの軸端円筒内部に入力軸の軸端にキャリアとローラ軸と複数の遊星ローラとの組立て状態における最外径が、自由状態における出力カップの円筒部の内径より大きな状態で圧入することにより出力カップの軸端円筒部の外周部を楕円状に膨らませ、これをさらにこの膨らみ部分の最外径が固定カップの自由状態における円筒内径より大きな状態で固定カップの円筒部内に変形による押し付け力をもって接するように組立てられたことを特徴とする減速装置。
【請求項2】
遊星ローラ単体外径と出力カップ円筒部内径の比が30〜46%であることを特徴とする請求項1に記載の減速装置。
【請求項3】
出力カップ円筒部内径とその円筒部の板厚の比が0.6〜3%であることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の減速装置。
【請求項4】
固定カップの内径とそのカップの円筒部板厚の比が1.2〜6%であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の減速装置。
【請求項5】
出力カップの軸端円筒部内に、入力軸の軸端に固定支持されたキャリアとキャリアに固定支持されたローラ軸に回転自由に支持された複数の遊星ローラの組立て状態における最外径が、固定カップの内径より0.3〜1.2ミリメートル大きな組立て寸法からなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の減速装置。
【請求項6】
固定カップの直径に対する底までの深さの比が0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の減速装置。
【請求項7】
出力カップの端部取りつけ孔部と遊星ローラのあたる転走面を除く表面及び固定カップの端部取りつけ孔部と出力カップの最外径のあたる転走面を除く表面にそれぞれ複数の孔を開けたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の減速装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−108964(P2009−108964A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283600(P2007−283600)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(599124426)株式会社ディムコ (11)
【Fターム(参考)】