説明

二重作用オキサゾール降圧剤

一態様では、本発明は、式(I)(式中、Ar、Z、R、RおよびRは、明細書に定義されている通りである)


を有する化合物、または薬学的に許容されるその塩に関する。これらの化合物は、AT受容体アンタゴニスト活性およびネプリライシン阻害活性を有する。別の態様では、本発明は、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物の使用方法、ならびにこのような化合物を調製するためのプロセスおよび中間体に関する。本発明のまた別の態様は、医薬の製造、特に高血圧または心不全の治療に有用な医薬の製造のための、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンジオテンシンII 1型(AT)受容体アンタゴニスト活性およびネプリライシン阻害活性を有する新規な化合物に関する。本発明はまた、このような化合物を含む医薬組成物、このような化合物を調製するためのプロセスおよび中間体、ならびに高血圧などの疾患を治療するためのこのような化合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
降圧療法の目的は、血圧を低下させ、心筋梗塞、脳卒中、および腎疾患などの高血圧が関連する合併症を予防することである。合併症のない高血圧を有する患者(すなわち、危険因子、標的臓器の損傷、または心血管疾患がない)について、血圧を下げることによって、同じ患者において一次的状態と同時に存在する状態である心血管および腎臓の併存疾患の発症を予防することが期待される。現存する危険因子または併存疾患を有する患者について、治療の標的は、合併している疾患の進行の遅延および死亡率の減少である。
【0003】
食事および/またはライフスタイルの改善によって血圧を適切に管理することができない患者のために、医師は一般に薬理学的療法を処方する。一般に使用される治療クラスは、利尿、アドレナリン作動性阻害、または血管拡張を促進するように作用する。どのような併存疾患が存在するかによって薬物の組合せが処方されることが多い。
【0004】
高血圧を治療するために使用される5種の一般の薬物クラスがある。利尿剤(チアジドおよびチアジド様利尿剤(ヒドロクロロチアジドなど)、ループ利尿剤(フロセミドなど)、ならびにカリウム保持性利尿剤(トリアムテレンなど)が含まれる);βアドレナリン作動性受容体遮断剤(コハク酸メトプロロールおよびカルベジロールなど);カルシウムチャネル遮断剤(アムロジピンなど);アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤(カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、エナラプリラト、リシノプリル、キナプリル、およびラミプリルなど);ならびにアンジオテンシンII 1型受容体遮断剤(ARB)としても公知のAT受容体アンタゴニスト(カンデサルタンシレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタンメドキソミル、テルミサルタン、およびバルサルタンなど)。これらの薬物の組合せ、例えば、カルシウムチャネル遮断剤(アムロジピン)およびACE阻害剤(ベナゼプリル)、または利尿剤(ヒドロクロロチアジド)およびACE阻害剤(エナラプリル)がまた投与される。これらの薬物の全ては、適切に使用されるとき、高血圧の治療において有効である。それにもかかわらず、高血圧を標的とする新規な薬物において、効力および忍容性の両方がさらに改善されるべきである。多くの治療法の選択肢が利用できることに拘らず、最近の全国健康栄養診断調査(NHANES)によって、治療を受けた全ての高血圧患者のうちの約50%のみが適切な血圧管理を達成したことが示された。さらに、利用可能な治療における忍容性の問題による患者の不十分な薬剤服用順守は、治療の成功をさらに減少させる。
【0005】
さらに、降圧剤の主要なクラスの各々は、いくつかの欠点を有する。利尿剤は、脂質代謝およびグルコース代謝に悪影響を与えることがあり、起立性低血圧、低カリウム血、および高尿酸血を含めた他の副作用と関連する。β遮断剤は、疲労、不眠、およびインポテンスをもたらすことがあり、いくつかのβ遮断剤はまた、ある患者群に望ましくないことがある心拍出量の減少および徐脈をもたらすことがある。カルシウムチャネル遮断剤は広範に使用されているが、他の薬物クラスと比較してこれらの薬物が致死性および非致死性の心イベントをどれくらい有効に減少させるかについて議論の余地がある。ACE阻害剤は咳込みをもたらすことがあり、よりまれな副作用には、発疹、血管性浮腫、高カリウム血、および機能性腎不全が含まれる。AT受容体アンタゴニストは、ACE阻害剤と同等に有効であるが、咳の高罹患率を伴わない。
【0006】
ネプリライシン(中性エンドペプチダーゼ、EC3.4.24.11)(NEP)は、脳、腎臓、肺、消化管、心臓、および末梢血管系を含めた多くの組織中に見出される内皮膜結合Zn2+メタロペプチダーゼである。NEPは、いくつかの血管作動性ペプチド(循環するブラジキニンおよびアンジオテンシンペプチド、ならびにナトリウム利尿ペプチド(後者は、血管拡張および利尿を含めたいくつかの作用を有する)など)の分解および不活性化に関与している。したがって、NEPは、血圧の恒常性において重要な役割を果たしている。NEP阻害剤は、有望な治療剤として研究されてきており、チオルファン、カンドキサトリル、およびカンドキサトリラトが含まれる。さらに、NEPとACEとの両方を阻害する化合物がまた設計されており、オマパトリラット、ゲンパトリラト、およびサムパトリラトが含まれる。バソペプチダーゼ阻害剤と称されるこのクラスの化合物は、非特許文献1に記載されている。
【0007】
Darrowらへの特許文献1(Schering Corporation);Ksanderらへの特許文献2;Puら、カナダ心血管会議で示された抄録(2004年10月);非特許文献2;およびGlasspoolらへの特許文献3(Novartis AG)に記載されているAT受容体アンタゴニスト/NEP阻害剤の組合せからも明らかなように、AT受容体拮抗およびNEP阻害を合わせたときに降圧の効力を増加させる可能性があり得る。
【0008】
最近、Fengらへの特許文献4(Novartis AG)は、AT受容体アンタゴニスト化合物がNEP阻害剤化合物に非共有結合をしている、またはこのアンタゴニスト化合物が非共有結合によってこの阻害剤化合物に連結している、AT受容体アンタゴニストおよびNEP阻害剤の複合体について記載している。
【0009】
当技術分野における進歩にも拘らず、現在併用療法によってのみ達成することができる血圧管理のレベルをもたらす、複数の作用機構を有する非常に効果的な単独療法に対する必要性が存在する。したがって、様々な昇圧剤は公知であり、様々な組合せで投与されるが、同じ分子内にAT受容体アンタゴニスト活性およびNEP阻害活性の両方を有する化合物を提供することが非常に望ましいであろう。これらの活性の両方を有する化合物は、単一分子の薬物動態を有する一方で、2つの独立した作用機序を通して降圧活性を示すので、治療剤として特に有用であることが期待される。
【0010】
さらに、このような二重活性化合物はまた、AT受容体を拮抗し、かつ/またはNEP酵素を阻害することによって治療することができる種々の他の疾患を治療する有用性を有することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第9213564号
【特許文献2】米国特許出願公開第20030144215号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/045663号
【特許文献4】国際公開第2007/056546号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Roblら、(1999年)Exp. Opin. Ther. Patents 9巻(12号):1665〜1677頁
【非特許文献2】Gardinerら(2006年)JPET 319巻:340〜348頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、AT受容体アンタゴニスト活性およびネプリライシン(NEP)酵素阻害活性を有することが見出された新規な化合物を提供する。したがって、本発明の化合物は、高血圧および心不全などの状態を治療するための治療剤として有用および有利であることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩に関し、
【0015】
【化1】

式中、Zは、
【0016】
【化2】

から選択されるオキサゾールであり、
Arは、
【0017】
【化3】

から選択され、
は、−COOR、−SONHC(O)R1a、テトラゾリル、
【0018】
【化4】

から選択され、
1aは、−C1〜6アルキル、−C0〜6アルキレン−OR、−C3〜7シクロアルキル、−C0〜5アルキレン−NRR、ピリジル、イソオキサゾリル、メチルイソオキサゾリル、ピロリジニル、モルホリニル、およびハロによって任意選択で置換されているフェニルであり、各Rは、Hおよび−C1〜6アルキルから独立に選択され、
aは、0、1または2であり、RはFであり、
は、−C2〜5アルキルおよび−O−C1〜5アルキルから選択され、
は、−CH−SR4a、−CH−N(OH)C(O)H、−CH(R4b)C(O)NH(OH)、および−CH(R4b)COOR4cから選択され、R4aは、Hまたは−C(O)−C1〜6アルキルであり、R4bは、Hまたは−OHであり、R4cは、Hまたは−C1〜6アルキルであり、
は、−C1〜6アルキル、−CH−フラニル、−CH−チオフェニル、ベンジル、および1個または複数のハロ、−CH、または−CF基で置換されているベンジルから選択され、
Ar中の各環は、−OH、−C1〜6アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−CN、ハロ、−O−C1〜6アルキル、−S−C1〜6アルキル、−S(O)−C1〜6アルキル、−S(O)−C1〜4アルキル、−フェニル、−NO、−NH、−NH−C1〜6アルキル、および−N(C1〜6アルキル)から独立に選択される1〜3個の置換基によって任意選択で置換されており、各アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、1〜5個のフルオロ原子によって任意選択で置換されている。
【0019】
本発明の別の態様は、薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。このような組成物は、利尿剤、βアドレナリン作動性受容体遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、AT受容体アンタゴニスト、ネプリライシン阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、プロスタグランジン、抗脂質剤、抗糖尿病薬、抗血栓剤、レニン阻害剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト、エンドセリン変換酵素阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシン阻害剤、バソプレシン受容体アンタゴニスト、およびこれらの組合せなどの他の治療剤を任意選択で含有し得る。したがって、本発明のさらに別の態様では、医薬組成物は、本発明の化合物、第2の治療剤、および薬学的に許容される担体を含む。本発明の別の態様は、本発明の化合物および第2の治療剤を含む活性剤の組合せに関する。本発明の化合物は、さらなる薬剤(複数可)と一緒に製剤、またはさらなる薬剤(複数可)と別々に製剤することができる。別々に製剤されるときは、薬学的に許容される担体は、さらなる薬剤(複数可)と共に含まれてもよい。したがって、本発明のまた別の態様は、医薬組成物の組合せに関し、この組合せは、本発明の化合物および第1の薬学的に許容される担体を含む第1の医薬組成物、ならびに第2の治療剤および第2の薬学的に許容される担体を含む第2の医薬組成物を含む。別の態様では、本発明は、このような医薬組成物を含有するキットに関し、例えば第1および第2の医薬組成物は、別々の医薬組成物である。
【0020】
本発明の化合物は、AT受容体アンタゴニスト活性とNEP酵素阻害活性との両方を有し、したがってAT受容体を拮抗し、かつ/またはNEP酵素を阻害することによって治療される疾患または障害を患っている患者を治療するための治療剤として有用であることが期待される。したがって、本発明の一態様は、AT受容体を拮抗し、かつ/またはNEP酵素を阻害することによって治療される疾患または障害を患っている患者を治療する方法に関し、この方法は、患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。本発明の別の態様は、高血圧または心不全を治療する方法に関し、この方法は、患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。本発明のさらに別の態様は、哺乳動物においてAT受容体を拮抗する方法に関し、この方法は、哺乳動物にAT受容体を拮抗する量の本発明の化合物を投与することを含む。本発明のまた別の態様は、哺乳動物においてNEP酵素を阻害する方法に関し、この方法は、哺乳動物にNEP酵素を阻害する量の本発明の化合物を投与することを含む。
【0021】
特に対象とする本発明の化合物には、AT受容体への結合について約5.0以上の阻害定数(pK)を示すもの、特に、約6.0以上のpKを有するもの、一実施形態では、約7.0以上のpKを有するもの、より特定すると、約8.0以上のpKを有するもの、さらに別の実施形態では、約8.0〜10.0の範囲のpKを有するものが含まれる。特に対象とする化合物にはまた、約5.0以上のNEP酵素阻害濃度(pIC50)を有するもの、一実施形態では、約6.0以上のpIC50を有するもの、特に、約7.0以上のpIC50を有するもの、最も特に、約7.0〜10.0の範囲のpIC50を有するものが含まれる。さらに対象とする化合物には、AT受容体への結合について約7.5以上のpKを有し、かつ約7.0以上のNEP酵素pIC50を有するものが含まれる。
【0022】
本発明の化合物は、AT受容体アンタゴニスト活性およびNEP阻害活性を有するため、このような化合物はまた、研究ツールとして有用である。したがって、本発明の一態様は、本発明の化合物を研究ツールとして使用する方法に関し、この方法は、本発明の化合物を使用して生物学的アッセイを行うことを含む。本発明の化合物はまた、新規な化合物を評価するために使用することができる。したがって、本発明の別の態様は、生物学的アッセイにおいて試験化合物を評価する方法に関し、この方法は、(a)試験化合物で生物学的アッセイを行い、第1のアッセイ値を提供することと、(b)本発明の化合物で生物学的アッセイを行い、第2のアッセイ値を提供すること(ステップ(a)は、ステップ(b)の前、後または同時に行われる)と、(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値をステップ(b)からの第2のアッセイ値と比較することとを含む。例示的な生物学的アッセイには、AT受容体結合アッセイおよびNEP酵素阻害アッセイが含まれる。本発明のさらに別の態様は、AT受容体、NEP酵素、または両方を含む生物学的系または生物学的試料を研究する方法に関し、この方法は、(a)生物学的系または生物学的試料を本発明の化合物と接触させることと、(b)生物学的系または生物学的試料に対して化合物によってもたらされる作用を決定することとを含む。
【0023】
本発明のさらに別の態様は、本発明の化合物を調製するのに有用なプロセスおよび中間体に関する。したがって、本発明の別の態様は、式1の化合物を式2の化合物とカップリングさせ
【0024】
【化5】

[ここで、Arは、Ar−R1*を表し、R1*は、Rまたは保護された形態のRであり、R4*は、Rまたは保護された形態のRである]、R1*が、保護された形態のRであり、かつ/またはR4*が、保護された形態のRであるとき、生成物を任意選択で脱保護するステップを含む、本発明の化合物の調製プロセスに関する。本発明の別の態様は、遊離酸または塩基の形態の式Iの化合物を、薬学的に許容される塩基または酸と接触させることを含む、式Iの化合物の薬学的に許容される塩の調製プロセスに関する。他の態様では、本発明は、本明細書に記載のプロセスのいずれかによって調製した生成物、ならびにそのようなプロセスにおいて使用する新規な中間体に関する。本発明の一態様では、新規な中間体は、本明細書に定義されている通りのV、VIまたはVIIを有する。
【0025】
本発明のまた別の態様は、医薬の製造、特に高血圧または心不全の治療に有用な医薬の製造のための、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩の使用に関する。本発明の別の態様は、哺乳動物においてAT受容体を拮抗し、またはNEP酵素を阻害するための本発明の化合物の使用に関する。本発明のさらに別の態様は、研究ツールとしての本発明の化合物の使用に関する。本発明の他の態様および実施形態は、本明細書において開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一態様では、本発明は、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0027】
【化6】

本明細書において使用する場合、「本発明の化合物」という用語には、式II、III、IVおよびVにおいて具体化されている種などの式Iによって包含される全ての化合物が含まれる。さらに、本発明の化合物はまた、いくつかの塩基性基または酸性基(例えば、アミノ基またはカルボキシル基)を含有することがあり、したがって、このような化合物は、遊離塩基、遊離酸として、または様々な塩の形態で存在することができる。全てのこのような塩の形態は、本発明の範囲内に含められる。さらに、本発明の化合物はまた、プロドラッグとして存在し得る。したがって、本明細書において化合物についての言及、例えば、「本発明の化合物」または「式Iの化合物」についての言及には、他に示さない限り、式Iの化合物、ならびにその化合物の薬学的に許容される塩およびプロドラッグが含まれることを当業者なら理解するであろう。さらに、「またはその薬学的に許容される塩および/もしくはプロドラッグ」という用語は、プロドラッグの薬学的に許容される塩などの、塩およびプロドラッグの全順列が含まれることを意図する。さらに、式Iの化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0028】
式Iの化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含有してもよく、したがって、これらの化合物は、様々な立体異性体の形態で調製および使用してもよい。したがって、本発明は、他に示さない限り、ラセミ混合物、純粋な立体異性体(エナンチオマーまたはジアステレオマー)、立体異性体が富化された混合物などに関する。本明細書において化学構造が立体配置なしに示されているとき、全ての可能性のある立体異性体がこのような構造に包含されていることが理解される。したがって、例えば、「式Iの化合物」という用語は、この化合物の全ての可能な立体異性体を含むことを意図する。同様に、本明細書において特定の立体異性体が示されまたは挙げられているとき、他に示さない限り少量の他の立体異性体が本発明の組成物中に存在することがあるが、ただし、このような他の異性体が存在することによって全体としての組成物の有用性が排除されないことを当業者であれば理解するであろう。個々のエナンチオマーは、適切なキラル固定相もしくは支持体を使用したキラルクロマトグラフィー、またはそれらをジアステレオマーに化学的に変換し、ジアステレオマーをクロマトグラフィーもしくは再結晶などの従来の手段によって分離し、次いで最初のエナンチオマーを再び生じさせることを含めた、当技術分野で周知の多数の方法によって得てもよい。さらに、適用できる場合、本発明の化合物の全てのシス−トランスまたはE/Z異性体(幾何異性体)、互変異性型および位置異性形態は、他に特定しない限り本発明の範囲内に含まれる。
【0029】
1つの可能性のあるキラル中心は、Rが−C1〜6アルキルなどの基、例えば−CHCH(CHであるとき、−CHR基の炭素原子に存在することがある。このキラル中心は、記号で示される炭素原子に存在する。
【0030】
【化7】

本発明の一実施形態では、記号によって識別される炭素原子は、(R)配置を有する。この実施形態では、式Iの化合物は、記号によって識別される炭素原子において(R)配置を有し、またはこの炭素原子において(R)配置を有する立体異性体の形態で富化されている。別の実施形態では、記号によって識別される炭素原子は、(S)配置を有する。この実施形態では、式Iの化合物は、記号で同定されている炭素原子において(S)配置を有し、またはこの炭素原子において(S)配置を有する立体異性体の形態で富化されている。
【0031】
本発明の化合物は、例えば、Rが−CH(OH)COOHであり、Rがベンジルであるとき、−CHR基上に2つのキラル中心を有する場合もある。これらのキラル中心は、記号*によって示される炭素原子および記号**によって示される炭素原子に存在する。
【0032】
【化8】

このような場合では、考えられるジアステレオマーは、4種存在し得る。例えば、両方の炭素原子が(R)配置を有する場合があり、そのような実施形態では、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子および記号**によって識別される炭素原子において(R)配置を有し、またはこれらの原子において(R,R)配置を有する立体異性体形態が富化されている。別の実施形態では、両方の炭素原子が(S)配置を有する場合があり、そのような実施形態では、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子および記号**によって識別される炭素原子において(S,S)配置を有し、またはこれらの原子において(S)配置を有する立体異性体形態が富化されている。さらに別の実施形態では、記号*によって識別される炭素原子が(S)配置を有し、記号**によって識別される炭素原子が(R)配置を有する場合があり、そのような実施形態では、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子および記号**によって識別される炭素原子において(S,R)配置を有し、またはこれらの原子において(S,R)配置を有する立体異性体形態が富化されている。さらに別の実施形態では、記号*によって識別される炭素原子が(R)配置を有し、記号**によって識別される炭素原子が(S)配置を有する場合があり、そのような実施形態では、式Iの化合物は、記号*によって識別される炭素原子および記号**によって識別される炭素原子において(R,S)配置を有し、またはこれらの原子において(R,S)配置を有する立体異性体形態が富化されている。
【0033】
場合によっては、本発明の化合物の治療活性を、例えば、昇圧剤として最適化するために、記号によって識別される炭素原子および/または記号**によって識別される炭素原子は、特定の(R)、(S)、(R,R)、(S,S)、(S,R)、または(R,S)配置を有することが望ましいことがある。
【0034】
本発明の化合物、およびそれらの合成において使用される化合物にはまた、同位体標識化合物(すなわち、1個または複数の原子が自然において主に見出される原子質量と異なる原子質量を有する原子で富化されている)が含まれてもよい。式Iの化合物に組み込み得る同位体の例には、例えば、それだけに限らないが、H、H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、36Cl、および18Fが含まれる。
【0035】
式Iの化合物は、AT受容体拮抗活性およびNEP酵素阻害活性を有することが見出された。他の特性の中で、このような化合物は、高血圧などの疾患を治療するための治療剤として有用であることが期待される。二重の活性を単一の化合物中に合わせることによって、二重療法を達成することができる。すなわち、AT受容体アンタゴニスト活性およびNEP酵素阻害活性を、単一の活性成分を使用して得ることができる。1種の活性成分を含有する医薬組成物は、2種の活性成分を含有する組成物を製剤するより典型的には容易であるため、このような単一成分組成物は、2種の活性成分を含有する組成物より有意な利点を提供する。さらに、特定の本発明の化合物はまた、アンジオテンシンII 2型(AT)受容体よりもAT受容体の阻害に対して選択的である(治療上の利点を有し得る特性である)ことが見出された。
【0036】
本発明の化合物を命名するために本明細書において使用される命名法は、本明細書において実施例に例示されている。この命名法は、市販のAutoNomソフトウェア(MDL、San Leandro、California)を使用して得た。
【0037】
代表的な実施形態
下記の置換基および値は、本発明の様々な態様および実施形態の代表例を提供することを意図する。これらの代表値は、このような態様および実施形態をさらに定義および例示することを意図し、他の実施形態を除外することも本発明の範囲を限定することも意図しない。これに関しては、特定の値または置換基が好ましいという表現は、特に明記しない限り本発明から他の値または置換基を除外することを決して意図しない。
【0038】
一態様では、本発明は、式Iの化合物に関する。
【0039】
【化9】

Zは、
【0040】
【化10】

から選択されるオキサゾールを表す。
【0041】
したがって、本発明の化合物は、式IIおよびIIIとして示すことができる。
【0042】
【化11】

Arは、
【0043】
【化12】

から選択されるアリール基を表す。
【0044】
整数「a」は、0、1または2であり、R基はフルオロである。例となるフルオロ置換Ar部分として、
【0045】
【化13】

が挙げられる。Ar中の各環はまた、−OH、−C1〜6アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−CN、ハロ、−O−C1〜6アルキル、−S−C1〜6アルキル、−S(O)−C1〜6アルキル、−S(O)−C1〜4アルキル、−フェニル、−NO、−NH、−NH−C1〜6アルキルおよび−N(C1〜6アルキル)から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよく、ここで、アルキル、アルケニルおよびアルキニルはそれぞれ、1〜5個のフルオロ原子で任意選択で置換されている。
【0046】
は、−COOR、−SONHC(O)R1a、テトラゾリル、
【0047】
【化14】

から選択される。R1a部分は、−C1〜6アルキル、−C0〜6アルキレン−OR、−C3〜7シクロアルキル、−C0〜5アルキレン−NRR、ピリジル、イソオキサゾリル、メチルイソオキサゾリル、ピロリジニル、モルホリニル、およびハロによって任意選択で置換されているフェニルである。各Rは、Hおよび−C1〜6アルキルから独立に選択される。
【0048】
一実施形態では、Rは−COORであり、例えば、Rは、−COOHまたは−COOCHである。
【0049】
特定の一実施形態では、Rは、R1aが−C1〜6アルキルである−SONHC(O)R1aである。この実施形態の例として、−SONHC(O)CHおよびSONHC(O)CHCHが挙げられる。特定の一実施形態では、Rは、1H−テトラゾール−5−イルまたは5H−テトラゾール−5−イルなどのテトラゾリルである。
【0050】
特定の一実施形態では、Rは、R1aが−C0〜6アルキレン−ORである−SONHC(O)R1aである。この実施形態の例として、−SONHC(O)OCH、−SONHC(O)OCHCH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)CHOH、−SONHC(O)CH(CH)OH、−SONHC(O)C(CHOH、−SONHC(O)CHOCH、および−SONHC(O)(CHOCHが挙げられる。
【0051】
別の特定の実施形態では、Rは、R1aが−C3〜7シクロアルキルである−SONHC(O)R1aである。この実施形態の例として、−SONHC(O)−シクロプロピルが挙げられる。別の特定の実施形態では、Rは、R1aが−C0〜5アルキレン−NRRである−SONHC(O)R1aである。この実施形態の例として、SONHC(O)NH(CH)、−SONHC(O)N(CH、−SONHC(O)NH(CHCH)、および−SONHC(O)C(CHNHが挙げられる。
【0052】
別の特定の実施形態では、Rは、R1aがピリジルである−SONHC(O)R1aであり、例えば、−SONHC(O)−2−ピリジル、−SONHC(O)−3−ピリジル、または−SONHC(O)−4−ピリジルである。「ピリジル」という用語は、任意の利用可能な結合点に結合されている、式
【0053】
【化15】

の複素環式化合物を意味し、
【0054】
【化16】

を包含する。
【0055】
別の特定の実施形態では、Rは、R1aがイソオキサゾリルである−SONHC(O)R1aであり、例えば、−SONHC(O)−3−イソオキサゾリル、−SONHC(O)−4−イソオキサゾリル、および−SONHC(O)−5−イソオキサゾリルである。「イソオキサゾリル」という用語は、任意の利用可能な結合点に結合されている、式
【0056】
【化17】

の複素環式化合物を意味し、
【0057】
【化18】

を包含する。
【0058】
特定の一実施形態では、Rは、R1aがメチルイソオキサゾリルである−SONHC(O)R1aであり、例えば、−SONHC(O)−3−イソオキサゾリル−5−メチル、または−SONHC(O)−5−イソオキサゾリル−3−メチルである。「メチルイソオキサゾリル」という用語は、任意の利用可能な結合点に結合されている、式
【0059】
【化19】

の複素環式化合物を意味し、
【0060】
【化20】

を包含する。
【0061】
別の特定の実施形態では、Rは、R1aがピロリジニルである−SONHC(O)R1aであり、例えば、−SONHC(O)−1−ピロリジル(pyrrolidyl)、−SONHC(O)−2−ピロリジル、および−SONHC(O)−3−ピロリジルである。「ピロリジニル」という用語は、任意の利用可能な結合点に結合されている、式
【0062】
【化21】

の複素環式化合物を意味し、
【0063】
【化22】

を包含する。
【0064】
特定の一実施形態では、Rは、R1aがモルホリニルである−SONHC(O)R1aであり、例えば、−SONHC(O)−4−モルホリニルである。「モルホリニル」という用語は、任意の利用可能な結合点に結合されている、式
【0065】
【化23】

の複素環式化合物を意味し、
【0066】
【化24】

を包含する。
【0067】
さらに別の特定の実施形態では、Rは、−SONHC(O)R1aであり、R1aは、ハロによって任意選択で置換されているフェニルである。一実施形態では、フェニル基は置換されておらず、Rは−SONHC(O)フェニルである。別の実施形態では、フェニル基は、1または2個のハロ原子で置換されている。さらに別の実施形態では、ハロ原子はフルオロ原子である。この実施形態の例として、−SONHC(O)−2−フルオロフェニルが挙げられる。
【0068】
さらに別の特定の実施形態では、Rは、テトラゾール−5−イルである。さらに別の実施形態では、R
【0069】
【化25】

である。さらに別の実施形態では、R
【0070】
【化26】

である。
【0071】
は、−C2〜5アルキルおよび−O−C1〜5アルキルから選択される。−C2〜5アルキルの例として、−CHCH、−(CHCH、−CH(CH、−(CHCH、−CHCH(CH、−C(CH、CH(CH)−CHCH、および−(CHCHが挙げられる。一実施形態では、Rは、プロピル、エチル、またはブチルである。−O−C1〜5アルキルの例として、−OCH、−OCHCH、−O(CHCH、および−OCH(CHが挙げられる。一実施形態では、Rはエトキシである。
【0072】
は、−CH−SR4a、−CH−N(OH)C(O)H、−CH(R4b)C(O)NH(OH)、および−CH(R4b)COOR4cから選択される。R4a部分は、Hまたは−C(O)−C1〜6アルキルである。R4b部分は、Hまたは−OHであり、R4c部分は、Hまたは−C1〜6アルキルである。
【0073】
特定の一実施形態では、Rは−CH−SR4aである。この実施形態の例として、−CHSHおよび−CH−S−C(O)CHが挙げられる。
【0074】
別の実施形態では、Rは−CHN(OH)C(O)Hである。特定の一実施形態では、Rは、−CH(R4b)C(O)NH(OH)であり、例えば−CHC(O)NH(OH)または−CH(OH)C(O)NH(OH)である。
【0075】
一実施形態では、Rは、R4bがHである−CH(R4b)COOR4cであり、その例としては、−CHCOOHおよび−CHCOOCHが挙げられる。別の実施形態では、Rは、R4bが−OHである−CH(R4b)COOR4cであり、その例としては、−CH(OH)COOHおよび−CH(OH)COOCHが挙げられる。
【0076】
一実施形態では、Rは、R4bがHである−CH(R4b)COOR4cであり、Rは、1個または複数のハロ基、−CH基、または−CF基で置換されているベンジルである。
【0077】
一態様では、本発明は、式IVの化合物
【0078】
【化27】

[式中、Ar、R、R4b、R4cおよびRは、式Iについて定義した通りである]または薬学的に許容されるその塩に関する。
【0079】
一実施形態では、Rは、−CH−SR4a、−CH−N(OH)C(O)H、−CH(R4b)C(O)NH(OH)、および−CH(R4b)COOR4cから選択され、R4aおよびR4cはHであり、R4bは、式Iについて定義した通りである。別の態様では、これらの実施形態は、式IIまたはIIIを有する。
【0080】
さらに別の実施形態では、Rは、−CH−SRおよび−CH(R4b)COOR4cから選択され、R4aは−C(O)−C1〜6アルキルであり、R4cは−C1〜6アルキルであり、R4bは、式Iについて定義した通りである。本発明の一態様では、これらの化合物は、プロドラッグとして、または本明細書に記載の合成手順における中間体として特に有用な場合がある。別の態様では、これらの実施形態は、式IIまたはIIIを有する。
【0081】
は、−C1〜6アルキル、−CH−フラニル、−CH−チオフェニル、ベンジル、および1個または複数のハロ基、−CH基、または−CF基で置換されているベンジルから選択される。特定の一実施形態では、Rは−C1〜6アルキルである。この実施形態の例として、i−ブチルが挙げられる。別の実施形態では、Rは、−CH−フラン−2−イルまたは−CH−フラン−3−イルなどの−CH−フラニルである。特定の一実施形態では、Rは、−CH−チオフェン−2−イルまたは−CH−チオフェン−3−イルなどの−CH−チオフェニルである。さらに別の特定の実施形態では、Rはベンジルである。さらに別の実施形態では、Rは、1個または複数のハロ基、−CH基、または−CF基で置換されているベンジルである。この実施形態の例として、2−ブロモベンジル、2−クロロベンジル、2−フルオロベンジル、3−フルオロベンジル、4−フルオロベンジル、2−メチルベンジル、および2−トリフルオロメチルベンジルが挙げられる。
【0082】
特定の一実施形態では、Arは、
【0083】
【化28】

であり、
は、−SONHC(O)CH、−SONHC(O)CHCH、−SONHC(O)OCH、−SONHC(O)OCHCH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)CHOH、−SONHC(O)CH(CH)OH、−SONHC(O)C(CHOH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)(CHOCH、−SONHC(O)−シクロプロピル、−SONHC(O)NH(CH)、−SONHC(O)N(CH、−SONHC(O)NH(CHCH)、−SONHC(O)C(CHNH、−SONHC(O)−2−ピリジル、−SONHC(O)−4−ピリジル、−SONHC(O)−5−イソオキサゾリル、−SONHC(O)−3−イソオキサゾリル−5−メチル、−SONHC(O)−1−ピロリジル、−SONHC(O)−4−モルホリニル、−SONHC(O)フェニル、−SONHC(O)−2−フルオロフェニル、1H−テトラゾール−5−イル、
【0084】
【化29】

であり、
は、プロピル、エチル、ブチル、またはエトキシであり、Rは、−CHSH、−CH−S−C(O)CH、−CHN(OH)C(O)H、−CHC(O)NH(OH)、−CH(OH)C(O)NH(OH)、−CH(OH)COOH、CH(OH)COOCH、−CHCOOH、または−CHCOOCHであり、Rは、i−ブチル、−CH−フラン−2−イル、−CH−チオフェン−3−イル、ベンジル、2−ブロモベンジル、2−クロロベンジル、2−フルオロベンジル、3−フルオロベンジル、4−フルオロベンジル、2−メチルベンジル、もしくは2−トリフルオロメチルベンジルであり、またはこれらの薬学的に許容される塩である。別の態様では、この実施形態は、式IIまたはIIIを有する。別の態様では、Rが−CH(OH)COOH、CH(OH)COOCH、−CHCOOH、または−CHCOOCHであるとき、この実施形態は、式IVを有する。
【0085】
さらに、対象とする式Iの特定化合物には、下記の実施例において記載されているもの、および薬学的に許容されるその塩が含まれる。
【0086】
定義
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを記述するときに、下記の用語は、他に示さない限り下記の意味を有する。さらに、本明細書において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」には、使用する状況がそれ以外のことを明らかに示さない限り相当する複数形が含まれる。「含む」、「含まれる」および「有する」という用語は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外のさらなる要素があり得ることを意味する。本明細書において使用されている成分の量、特性(分子量、反応条件など)などを表す全ての数字は、他に示さない限り「約」という用語によって全ての場合に修飾されていることが理解されるべきである。したがって、本明細書において記載されている数字は、本発明によって得ようとしている所望特性によって変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、各数字は、報告された有効数字を踏まえて、通常の丸めの技術を適用することによって少なくとも解釈すべきである。
【0087】
「アルキル」という用語は、直鎖状であっても分岐状であってもよい一価の飽和炭化水素基を意味する。別段の定義がない限り、このようなアルキル基は典型的には、1〜10個の炭素原子を含有し、例えば、−C1〜4アルキル、−C1〜5アルキル、−C2〜5アルキル、−C1〜6アルキル、および−C1〜10アルキルが含まれる。代表的なアルキル基には、例示として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが含まれる。
【0088】
本明細書において使用される特定の用語について炭素原子の特定の数が意図されているとき、炭素原子の数は、下付き数字として用語に先行して示される。例えば、各々「−C1〜6アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、「−C3〜7シクロアルキル」という用語は、3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味し、炭素原子は任意の許容される配置にある。
【0089】
「アルキレン」という用語は、直鎖状であっても分岐状であってもよい二価の飽和炭化水素基を意味する。別段の定義がない限り、このようなアルキレン基は典型的には、0〜10個の炭素原子を含有し、例えば、−C0〜1アルキレン−、−C0〜2アルキレン−、−C0〜3アルキレン−、−C0〜5アルキレン−、−C0〜6アルキレン−、−C1〜2アルキレン−および−C1〜12アルキレン−が含まれる。代表的なアルキレン基には、例示として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが含まれる。−C0〜5アルキレン−または−C0〜6アルキレン−など、アルキレンという用語に0個の炭素が含まれるとき、このような用語には、炭素原子がないことを含まれることを意図し、すなわち、アルキレンという用語によって分離されている基を結合する共有結合を除いてアルキレン基が存在しないことが理解される。
【0090】
「アルコキシ」という用語は、式−O−アルキルの一価の基を意味し、アルキルは本明細書に定義されている通りである。別段の定義がない限り、このようなアルコキシ基は典型的には、1〜10個の炭素原子を含有し、例えば、−O−C1〜4アルキルおよび−O−C1〜5アルキルが含まれる。代表的なアルコキシ基には、例示として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシなどが含まれる。
【0091】
「シクロアルキル」という用語は、一価の飽和炭素環式炭化水素基を意味する。別段の定義がない限り、このようなシクロアルキル基は典型的には、3〜10個の炭素原子を含有し、例えば、−C3〜5シクロアルキル、−C3〜6シクロアルキルおよび−C3〜7シクロアルキルが含まれる。代表的なシクロアルキル基には、例示として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。「シクロアルキレン」という用語は、−C4〜8シクロアルキレンなどの二価のアリール基を意味する。
【0092】
「ハロ」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0093】
本明細書において使用する場合、「式を有する」または「構造を有する」という句は限定的であることは意図されず、「含む」という用語が一般に使用されているのと同様に使用される。
【0094】
「任意選択で置換されている」という用語は、問題の基が非置換であっても、または1回または数回(1〜3回もしくは1〜5回など)置換されていてもよいことを意味する。例えば、ハロ原子で「任意選択で置換されている」フェニル基は、非置換であってもよく、または1個、2個、3個、4個、もしくは5個のハロ原子を含有してもよい。
【0095】
「薬学的に許容される」という用語は、本発明において使用されるとき、生物学的にもその他の点でも許容されないことはない材料を意味する。例えば、「薬学的に許容される担体」という用語は、許容されない生物学的作用をもたらさず、組成物の他の成分と許容されない態様で相互作用もせずに、組成物中に組み込むことができ、患者に投与することができる材料を意味する。このような薬学的に許容される材料は典型的には、毒物学的試験および製造試験の必要とされる基準を満たしており、米国食品医薬品局により適切な非活性成分として同定されている材料が含まれる。
【0096】
「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳動物などの患者への投与のために許容される塩基または酸から調製される塩(例えば、与えられた投与計画について哺乳動物にとって許容される安全性を有する塩)を意味する。しかし、本発明によって包含される塩は、患者に投与することを意図しない中間化合物の塩など、薬学的に許容される塩である必要はないことが理解される。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機塩基または有機塩基に、および薬学的に許容される無機酸または有機酸から誘導することができる。さらに、式Iの化合物が、塩基性部分(アミン、ピリジンまたはイミダゾールなど)、および酸性部分(カルボン酸またはテトラゾールなど)の両方を含有するとき、双性イオンが形成されることがあり、本明細書において使用する場合「塩」という用語内に含められる。薬学的に許容される無機塩基から誘導される塩には、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、および亜鉛塩などが含まれる。薬学的に許容される有機塩基から誘導される塩には、置換アミン、環状アミン、天然に存在するアミンなど(アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなど)を含めた第一級、第二級および第三級アミンの塩が含まれる。薬学的に許容される無機酸から誘導される塩には、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩が含まれる。薬学的に許容される有機酸から誘導される塩には、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸および3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルクロン酸、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸)、キシナホ酸などの塩が含まれる。
【0097】
「その保護された誘導体」という用語は、化合物の1個または複数の官能基が、保護基または封鎖基によって、望ましくない反応が起こることから保護または遮断されている特定の化合物の誘導体を意味する。保護し得る官能基には、例示として、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが含まれる。代表的な保護基には、カルボキシ基については、エステル(p−メトキシベンジルエステルなど)、アミドおよびヒドラジド;アミノ基については、カルバメート(t−ブトキシカルボニルなど)およびアミド;ヒドロキシル基については、エーテルおよびエステル;チオール基については、チオエーテルおよびチオエステル;カルボニル基については、アセタールおよびケタールなどが含まれる。このような保護基は当業者には周知であり、例えば、T. W. GreeneおよびG. M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、New York、1999年、およびそこに引用されている参考文献に記載されている。
【0098】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、身体において生理的条件下で、例えば正常な代謝プロセスによって、その活性形態に変換される、薬物の不活性(または有意に活性のより弱い)前駆体を意味することが意図される。この用語は、最終脱保護段階より前に生成することができる、式Iの化合物の保護された特定の誘導体も包含するものとする。このような化合物は、ATおよび/またはNEPでは薬理活性を保持しないかもしれないが、経口または非経口投与され、その後身体において代謝されて、ATおよび/またはNEPで薬理活性のある本発明の化合物を形成することができる。したがって、式Iの化合物の全ての保護された誘導体およびプロドラッグが、本発明の範囲内に含まれる。遊離のカルボキシル基、スルフヒドリル基、またはヒドロキシ基を有する式Iの化合物のプロドラッグは、当該分野において周知である技術によって容易に合成することができる。次いで、これらのプロドラッグ誘導体は、加溶媒分解によって、または生理的条件下で、遊離のカルボキシル化合物、スルフヒドリル化合物、および/またはヒドロキシ化合物に変換される。例となるプロドラッグには、C1〜6アルキルエステルおよびアリール−C1〜6アルキルエステルを含めたエステル、炭酸エステル、半エステル、リン酸エステル、ニトロエステル、硫酸エステル、スルホキシド、アミド、カルバメート、アゾ化合物、ホスファミド、配糖体、エーテル、アセタール、ケタール、ならびにジスルフィドが挙げられる。一実施形態では、式Iの化合物は、遊離スルフヒドリルまたは遊離カルボキシルを有し、プロドラッグは、そのエステル誘導体であり、すなわち、プロドラッグは、−SC(O)CHなどのチオエステル、または−C(O)OCHなどのエステルである。
【0099】
「溶媒和物」という用語は、1分子以上の溶質、例えば、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩と、1分子以上の溶媒とによって形成される複合体または凝集物を意味する。このような溶媒和物は典型的には、実質的に固定されたモル比の溶質および溶媒を有する結晶性固体である。代表的な溶媒には、例示として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが含まれる。溶媒が水であるとき、形成される溶媒和物は水和物である。
【0100】
「治療有効量」という用語は、それを必要としている患者に投与されたときに治療をもたらすのに十分な量、すなわち、所望の治療効果を得るのに必要とされる薬物の量を意味する。例えば、高血圧を治療するための治療有効量は、例えば、高血圧の症状を減少、抑制、除去もしくは予防し、または高血圧の根本にある原因を治療するのに必要とされる化合物の量である。一実施形態では、治療有効量は、血圧を下げるのに必要なその薬物の量、または正常な血圧を維持するのに必要な薬物の量である。他方、「有効量」という用語は、必ずしも治療結果ではないことがある所望の結果を得るのに十分な量を意味する。例えば、AT受容体を含む系を研究するときに、「有効量」は、その受容体を拮抗するのに必要な量であり得る。
【0101】
「治療する」または「治療」という用語は、本明細書において使用する場合、下記の1つまたは複数を含む、哺乳動物(特に、ヒト)などの患者において疾患または医学的状態(高血圧など)を治療することまたは治療を意味する。(a)疾患または医学的状態が起こることを予防すること(すなわち、患者の予防的治療による)、(b)疾患または医学的状態を寛解すること(患者において疾患または医学的状態の除去または後退をもたらすことによるなど);(c)疾患または医学的状態を抑制すること(患者において疾患または医学的状態の発症を緩徐化または抑止することによるなど);あるいは(d)患者において疾患または医学的状態の症状を緩和すること。例えば、「高血圧を治療する」という用語には、高血圧が起こることを予防すること、高血圧を寛解すること、高血圧を抑制すること、および高血圧の症状を緩和する(例えば、血圧を下げる)ことが含まれる。「患者」という用語には、特定の疾患もしくは医学的状態の治療もしくは疾患の予防を必要としている、または特定の疾患もしくは医学的状態の疾患の予防もしくは治療のために現在治療されている、ヒトなどの哺乳動物、および本発明の化合物がアッセイにおいて評価または使用される試験対象、例えば動物モデルが含まれることが意図される。
【0102】
本明細書において使用される全ての他の用語は、それらが関係する当業者によって理解されるようなそれらの通常の意味を有することが意図される。
【0103】
一般の合成手順
本発明の化合物は、下記の一般法、実施例に記載された手順を使用して、または当業者には公知の他の方法、試薬、および出発物質を使用することによって、容易に利用可能な出発物質から調製することができる。下記の手順は、本発明の特定の実施形態を例示し得るが、本発明の他の実施形態は、同じもしくは同様の方法を使用して、または当業者には公知の他の方法、試薬および出発物質を使用することによって、同様に調製することができることが理解される。典型的または好ましいプロセス条件(例えば、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が所与である場合、特に明記しない限り、他のプロセス条件もまた使用することができることはまた理解されるであろう。最適な反応条件は、様々な反応パラメーター(使用する特定の反応物、溶媒および量など)によって典型的には変化する一方、当業者は、慣用的な最適化手順を使用して適切な反応条件を容易に決定することができる。
【0104】
さらに、当業者であれば明らかであろうように、従来の保護基は、特定の官能基が望ましくない反応を起こすことを妨げるために必要であるか、または望ましいことがある。特定の官能基のために適した保護基の選択、ならびにこのような官能基の保護および脱保護のために適した条件および試薬は、当技術分野において周知である。本明細書に記載されている手順において例示されているもの以外の保護基を、所望であれば使用し得る。例えば、多数の保護基、ならびにそれらの導入および除去は、T. W. GreeneおよびG. M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、New York、1999年、およびそこに引用されている参考文献に記載されている。さらに具体的には、下記の略語および試薬は、下記で示すスキームにおいて使用される。
【0105】
は、アミノ基において望ましくない反応を防止するのに適した保護基を意味するように本明細書において使用される用語である「アミノ保護基」を表す。代表的なアミノ保護基には、それだけに限らないが、t−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)などが含まれる。標準的な脱保護技術を使用して、P基が除去される。例えば、BOC基は、DCM中のTFAまたは1,4−ジオキサン中のHClなどの酸性試薬を使用して除去することができ、一方Cbz基は、アルコール性溶媒中のH(1atm)および10%Pd/C(「H/Pd/C」)などの接触水素化条件を用いることによって除去することができる。
【0106】
は、カルボキシ基において望ましくない反応を防止するのに適した保護基を意味するように本明細書において使用される用語である「カルボキシ保護基」を表す。代表的なカルボキシ保護基には、それだけに限らないが、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などが含まれる。標準的な脱保護技術および試薬を使用してP基が除去され、それはどの基を使用するかによって変わり得る。例えば、Pがメチルであるとき、水酸化ナトリウムまたは水酸化リチウムが一般に使用され、Pがt−ブチルであるときTFAまたはHClなどの酸が一般に使用され、PがベンジルであるときH/Pd/Cを使用し得る。
【0107】
は、チオール基において望ましくない反応を防止するのに適した保護基を意味するように本明細書において使用される用語である「チオール保護基」を表す。代表的なチオール保護基には、それだけに限らないが、エーテル、エステル(−C(O)CHなど)などが含まれる。NaOH、第一級アルキルアミン、およびヒドラジンなどの標準的な脱保護技術および試薬を使用して、P基を除去し得る。
【0108】
は、テトラゾール基において望ましくない反応を防止するのに適した保護基を意味するように本明細書において使用される用語である「テトラゾール保護基」を表す。代表的なテトラゾール保護基には、それだけに限らないが、トリチルおよびジフェニルメチルが含まれる。DCM中のTFAまたは1,4−ジオキサン中のHClなどの標準的な脱保護技術および試薬を使用して、P基を除去し得る。
【0109】
は、ヒドロキシル基において望ましくない反応を防止するのに適した保護基を意味するように本明細書において使用される用語である「ヒドロキシル保護基」を表す。代表的なヒドロキシル保護基には、それだけに限らないが、C1〜6アルキル;トリC1〜6アルキルシリル基(トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、およびtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)など)を含めたシリル基;C1〜6アルカノイル基(ホルミル、アセチル、およびピバロイルなど)、ならびに芳香族アシル基(ベンゾイルなど)を含めたエステル(アシル基);アリールメチル基(ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、およびジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)など)などが含まれる。標準的な脱保護技術および試薬を使用してP基が除去され、それはどの基を使用するかによって変わり得る。例えば、PがベンジルであるときH/Pd/Cが一般に使用され、一方Pがアシル基であるときNaOHが一般に使用される。
【0110】
は、スルホンアミド基において望ましくない反応を防止するのに適した保護基を意味するように本明細書において使用される用語である「スルホンアミド保護基」を表す。代表的なスルホンアミド保護基には、それだけに限らないが、t−ブチル基およびアシル基が含まれる。例示的アシル基には、脂肪族低級アシル基(ホルミル基、アセチル基、フェニルアセチル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基およびピバロイル基など)、ならびに芳香族アシル基(ベンゾイルおよび4−アセトキシベンゾイルなど)が含まれる。標準的な脱保護技術および試薬を使用してP基が除去され、それはどの基を使用するかによって変わり得る。例えば、Pがt−ブチルであるときHClが一般に使用され、一方Pがアシル基であるときNaOHが一般に使用される。
【0111】
さらに、Lは、求核置換反応などの置換反応において、別の官能基または原子で置き換えることができる官能基または原子を意味するために本明細書において使用される用語である「脱離基」を示すために使用される。例示として、代表的な脱離基には、クロロ基、ブロモ基およびヨード基;スルホン酸エステル基(メシレート、トリフレート、トシレート、ブロシラート、ノシラートなど);ならびにアシルオキシ基(アセトキシ、トリフルオロアセトキシなど)などが含まれる。
【0112】
これらのスキームにおいて使用するための適切な塩基には、例示として、限定的ではなく、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウムt−ブトキシド、および金属水素化物が含まれる。
【0113】
これらのスキームにおいて使用するための適切な不活性希釈剤または溶媒には、例示として、限定的ではなく、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、1,4−ジオキサン、メタノール、エタノール、水などが含まれる。
【0114】
適切なカルボン酸/アミンカップリング試薬には、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)などが含まれる。カップリング反応は、DIPEAなどの塩基の存在下で不活性希釈剤中で行われ、従来のアミド結合形成条件下で行われる。
【0115】
全ての反応は典型的には、約−78℃〜100℃の範囲の温度、例えば室温で行われる。反応は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および/またはLCMSの使用によって完了するまでモニターし得る。反応は、数分で完了することがあり、または数時間、典型的には1〜2時間および48時間までかかることがある。完了すると、このように得られた混合物または反応生成物は、所望の生成物を得るためにさらに処理し得る。例えば、このように得られた混合物または反応生成物は、下記の手順の1つまたは複数に供し得る。濃縮または分配(例えば、EtOAcと水との間、またはEtOAc中の5%THFと1Mのリン酸との間);抽出(例えば、EtOAc、CHCl、DCM、クロロホルムによる);洗浄(例えば、飽和NaCl水溶液、飽和NaHCO、NaCO(5%)、CHClまたは1MのNaOHによる);乾燥(例えば、MgSOで、NaSOで、または減圧中で);濾過;結晶化(例えば、EtOAcおよびヘキサンから);濃縮(例えば、減圧中で);ならびに/または精製(例えば、シリカゲルクロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、分取HPLC、逆相HPLC、もしくは結晶化)。
【0116】
例示として、式Iの化合物、ならびにそれらの塩、溶媒和物、およびプロドラッグは、式1の化合物を式2の化合物とカップリングさせることによって調製することができる。
【0117】
【化30】

Arは、Ar−R1*を表し、R1*は、Rまたは保護された形態のR、例えば、−テトラゾリル−BOC、または次いでテトラゾリルに変換される−CNなどのRの前駆体である。R4*は、Rまたは保護された形態のRを表す。したがって、R1*がRを表し、R4*がRを表すとき、反応は、カップリングステップの後に完了する。
【0118】
一方、R1*が保護された形態のRを表し、かつ/またはR4*が保護された形態のRを表すとき、後続の全体的または連続的な脱保護ステップによって、保護されていない化合物が得られることになる。同様に、R1*がRの前駆体を表すとき、後続の変換ステップによって、所望の化合物が得られることになる。脱保護のための試薬および条件は、化合物中の保護基の性質によって様々である。したがって、本発明の化合物の1つの調製方法は、化合物(1)と(2)とをカップリングさせ、R1*が保護された形態のRであり、かつ/またはR4*が保護された形態のRであるとき、任意選択の脱保護ステップを伴い、これによって、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を形成することを含む。
【0119】
式1の化合物の例として、以下のものが挙げられる:
5−プロピル−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸;
5−エトキシ−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸;
4−[2−フルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[2−フルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−5−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[3−フルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[3−フルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−5−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[3,5−ジフルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[3,5−ジフルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−5−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
4−プロピル−5−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸;
4−エトキシ−5−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸;
5−[2−フルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−4−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[2−フルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−4−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[3−フルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−4−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[3−フルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−4−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[3,5−ジフルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−4−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[3,5−ジフルオロ−2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]−4−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
4−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
4−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)−5−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[2−フルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[2−フルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−5−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[3−フルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[3−フルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−5−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[3,5−ジフルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
4−[3,5−ジフルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−5−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
5−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)−4−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
5−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)−4−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[2−フルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−4−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[2−フルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−4−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[3−フルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−4−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[3−フルオロ−2(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−4−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸;
5−[3,5−ジフルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−4−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸;および
5−[3,5−ジフルオロ−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)]−4−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸。
【0120】
式2の化合物の例として、以下のものが挙げられる。
【0121】
(R)−2−((R)−2−アミノ−3−フェニルプロピルジスルファニル)−1−ベンジルエチルアミン;
(R)−1−((R)−2−アミノ−4−メチルペンチルジスルファニルメチル)−3−メチルブチルアミン(二量体);
(R)−3−アミノ−4−(2−クロロフェニル)酪酸;
(R)−3−アミノ−4−(2−ブロモフェニル)酪酸;
(R)−3−アミノ−4−フェニル酪酸;
(R)−3−アミノ−4−(2−フルオロフェニル)酪酸;
(R)−3−アミノ−4−(2−メチルフェニル)酪酸;
(R)−3−アミノ−4−(2−トリフルオロメチルフェニル)酪酸;
(2R,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステル;
3−アミノ−4−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ酪酸エチルエステル;
[(S)−1−ベンジル−2−(ベンジルオキシホルミルアミノ)エチル]カルバミン酸t−ブチルエステル;
[1−ベンジル−2−ヒドロキシカルバモイルエチル]カルバミン酸t−ブチルエステル;
[1−(2−クロロベンジル)−2−ヒドロキシカルバモイルエチル]カルバミン酸t−ブチルエステル;および
3−アミノ−2,N−ジヒドロキシ−4−フェニルブチルアミド。
他の保護された形態、脱保護された形態、異性体、およびラセミ混合物を使用してもよい。
【0122】
本明細書に記載の特定の中間体は、新規であると考えられ、したがって、例えば、式V、VI、およびVIIの化合物またはこれらの塩を含めて、そうした化合物を本発明のさらなる態様として提供する。
【0123】
【化31】

[式中、ArはAr−R1*であり、Ar、Z、R、RおよびRは、式Iについて定義した通りであり、R1*は、−SONH−Pまたはテトラゾリル−Pであり、Pは、テトラゾール保護基であり、Pは、スルホンアミド保護基である。]
【0124】
【化32】

[式中、Ar、Z、RおよびRは、式Iについて定義した通りであり、R4*は、−CH−S−P、−CH−N(O−P)−C(O)H、−CH(R4b)C(O)NH(O−P)、または−CH(R4b)COO−Pであり、R4bは、式Iについて定義した通りであり、Pはカルボキシ保護基であり、Pはチオール保護基であり、Pはヒドロキシル保護基である。]
【0125】
【化33】

[式中、ArはAr−R1*であり、Ar、Z、RおよびRは、式Iについて定義した通りであり、R1*は、−SONH−Pまたはテトラゾリル−Pであり、R4*は、−CH−S−P、−CH−N(O−P)−C(O)H、−CH(R4b)C(O)NH(O−P)、または−CH(R4b)COO−Pであり、R4bは、式Iについて定義した通りであり、Pはカルボキシ保護基であり、Pはチオール保護基であり、Pはテトラゾール保護基であり、Pはヒドロキシル保護基であり、Pはスルホンアミド保護基である。]したがって、本発明の化合物を調製する別の方法は、式V、VI、またはVIIの化合物の脱保護を伴う。
【0126】
本発明の代表的な化合物またはその中間体を調製するための特定の反応条件および他の手順に関するさらなる詳細を、下記に示される実施例に記載する。
【0127】
有用性
本発明の化合物は、アンジオテンシンII 1型(AT)受容体アンタゴニスト活性を有する。一実施形態では、本発明の化合物は、AT受容体よりもAT受容体の阻害に対して選択的である。本発明の化合物はまた、ネプリライシン(NEP)阻害活性を有し、すなわち、これらの化合物は、酵素−基質活性を阻害することができる。別の実施形態では、この化合物は、アンジオテンシン変換酵素の有意な阻害活性を示さない。式Iの化合物は、活性薬物、およびプロドラッグでよい。したがって、本発明の化合物の活性を論じるとき、任意のこのようなプロドラッグは、一度代謝されると、期待される活性を有することが理解される。
【0128】
AT受容体に対する化合物の親和性の1つの尺度は、AT受容体への結合についての阻害定数(K)である。pK値は、Kの底10に対する負の対数である。化合物がNEP活性を阻害する能力の1つの尺度は、NEP酵素による基質変換の最大値の半分の阻害をもたらす化合物の濃度である阻害濃度(IC50)である。pIC50値は、IC50の底10に対する負の対数である。AT受容体において約5.0以上のpKを示し、NEPについて約5.0以上のpIC50を示すものを含めて、AT受容体拮抗活性とNEP酵素阻害活性との両方を有する本発明の化合物を特に対象とする。
【0129】
一実施形態では、対象とする化合物は、AT受容体において≧約6.0のpK、AT受容体において≧約7.0のpK、またはAT受容体において≧約8.0のpKを有する。対象とする化合物にはまた、NEPについて≧約6.0のpIC50、またはNEPについて≧約7.0のpIC50を有するものが含まれる。別の実施形態では、対象とする化合物は、AT受容体において約8.0〜10.0の範囲のpK、およびNEPについて約7.0〜10.0の範囲のpIC50を有する。
【0130】
別の実施形態では、特に対象とする化合物は、AT受容体への結合について約7.5以上のpK、およびNEP酵素について約7.0以上のpIC50を有する。別の実施形態では、対象とする化合物は、約8.0以上のpKおよび約8.0以上のpIC50を有する。
【0131】
場合によっては、本発明の化合物は、二重活性をまだ有する一方で、弱いAT受容体アンタゴニスト活性または弱いNEP阻害活性を有し得ることが注目される。このような場合、これらの化合物は依然として、主に各々NEP阻害剤もしくはAT受容体アンタゴニストのいずれかとして有用性を有する、または研究ツールとして有用性を有することを当業者であれば理解するであろう。
【0132】
AT受容体結合および/またはNEP阻害活性などの本発明の化合物の特性を決定するための例示的アッセイは、実施例に記載されており、例示としておよび限定的ではなく、AT結合およびAT結合(アッセイ1に記載されている)、ならびにNEP阻害(アッセイ2に記載されている)を測定するアッセイが含まれる。有用な第2のアッセイには、ACE阻害(またアッセイ2に記載されている)およびアミノペプチダーゼP(APP)阻害(Sulpizioら、(2005年)JPET 315巻:1306〜1313頁に記載されている)を測定するためのアッセイが含まれる。麻酔下のラットにおけるACE、AT、およびNEPについてのインビボ阻害効力を評価するための薬力学的アッセイは、アッセイ3に記載されており(Seymourら、(1985年)Hypertension 7(補遺I):I−35〜I−42およびWigleら、(1992年)Can. J Physiol Pharmacol. 70巻:1525〜1528頁をまた参照されたい)、そこではAT阻害は、アンジオテンシンIIの昇圧反応の阻害割合として測定され、ACE阻害は、アンジオテンシンIの昇圧反応の阻害割合として測定され、NEP阻害は、増加する尿中の環状グアノシン3’、5’−一リン酸(cGMP)排出量として測定される。有用なインビボアッセイには、AT受容体遮断を測定するために有用であるレニン依存性高血圧モデルである意識のある自然発症高血圧ラット(SHR)モデル(アッセイ4に記載されている;Intenganら、(1999年)Circulation 100巻(22号):2267〜2275頁、およびBadyalら、(2003年)Indian Journal of Pharmacology 35巻:349〜362頁をまた参照されたい)、NEP活性を測定するために有用である容量依存性高血圧モデルであるデスオキシコルチコステロン酢酸塩(DOCA塩)の意識のあるラットモデル(アッセイ5に記載されている;Trapaniら、(1989年)J. Cardiovasc. Pharmacol. 14巻:419〜424頁、Intenganら、(1999年)Hypertension 34巻(4号):907〜913頁、およびBadyalら、(2003年)前出をまた参照されたい)が含まれる。SHRモデルとDOCA塩モデルとの両方は、試験化合物が血圧を低下させる能力を評価するために有用である。DOCA塩モデルはまた、血圧の上昇を予防または遅延させる試験化合物の能力を測定するのに有用である。本発明の化合物は、上に列挙されているアッセイのいずれか、または同様の性質のアッセイにおいて、AT受容体を拮抗し、かつ/またはNEP酵素を阻害することが期待される。したがって、上記のアッセイは、本発明の化合物の治療上の有用性、例えば、降圧剤としてのそれらの有用性を決定することにおいて有用である。本発明の化合物の他の特性および有用性は、当業者には周知の他のインビトロおよびインビボアッセイを使用して示すことができる。
【0133】
本発明の化合物は、AT受容体拮抗および/またはNEP阻害に反応する医学的状態の治療および/または予防に有用であることが期待される。したがって、AT受容体を拮抗し、かつ/またはNEP酵素を阻害することによって治療される疾患または障害を患っている患者は、治療有効量の本発明の化合物を投与されることによって治療できることが期待される。例えば、AT受容体を拮抗し、したがってその受容体に対するアンジオテンシンIIの作用を妨げることによって、これらの化合物は、強力な昇圧剤であるアンジオテンシンIIによって生じる血圧の上昇を予防することにおいて有用性を見出されることが期待される。さらに、NEPを阻害することによって、この化合物はまた、NEPによって代謝される内因性ペプチド(ナトリウム利尿ペプチド、ボンベシン、ブラジキニン、カルシトニン、エンドセリン、エンケファリン、ニューロテンシン、サブスタンスPおよび血管作動性腸ペプチドなど)の生物学的作用を増強することが期待される。本発明の化合物は、例えば、ナトリウム利尿ペプチドの作用を増強することによって、緑内障の治療に有用であることが期待される。これらの化合物はまた、例えば、腎臓系、中枢神経系、生殖系および胃腸系に対して他の生理作用を有することが期待される。
【0134】
本発明の化合物は、心血管疾患および腎疾患などの医学的状態を治療および/または予防することにおいて有用性を見出されることが期待される。特に対象とする心血管疾患には、うっ血性心不全、急性心不全、慢性心不全、ならびに急性および慢性非代償性心不全などの心不全が含まれる。特に対象とする腎疾患には、糖尿病性腎症および慢性腎臓疾患が含まれる。本発明の一実施形態は、高血圧を治療するための方法に関し、この方法は、患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。典型的には、治療有効量は、患者の血圧を下げるのに十分な量である。一実施形態では、化合物は、経口剤形として投与される。
【0135】
本発明の別の実施形態は、心不全を治療するための方法に関し、この方法は、患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む。典型的には、治療有効量は、血圧を下げ、かつ/または腎機能を改善するのに十分な量である。一実施形態では、化合物は、静脈内剤形として投与される。心不全を治療するために使用されるとき、化合物は、利尿剤、ナトリウム利尿ペプチド、およびアデノシン受容体アンタゴニストなどの他の治療剤と組み合わせて投与し得る。
【0136】
本発明の化合物はまた、予防的治療において、例えば、心筋梗塞後の心不全の進行の予防、血管形成術後の動脈の再狭窄の予防、血管手術後の血管壁の肥厚の予防、アテローム性動脈硬化の予防、および糖尿病性脈管障害の予防において有用であることが期待されている。
【0137】
さらに、NEP阻害剤として、本発明の化合物は、内因性エンケファリンの分解を阻害するエンケファリナーゼを阻害することが期待され、したがって、このような化合物はまた、鎮痛剤として有用性を見出し得る。それらのNEP阻害特性によって、本発明の化合物はまた、鎮咳薬および止瀉薬として有用であり(例えば、水様下痢の治療のための)、生理不順、早産、子癇前症、子宮内膜症、生殖障害(例えば、男性および女性の不妊症、多嚢胞性卵巣症候群、着床不全)、ならびに男性および女性の性的機能不全(男性の勃起不全および女性の性的刺激障害を含めた)の治療において有用性を見出されることが期待されている。さらに具体的には、本発明の化合物は、女性患者が性的表現において満足を見出すことが困難またはできないとして定義されることが多い、女性の性的機能不全の治療において有用であることが期待されている。これは、限定的ではなく、例示として、性的欲求低下障害、性的刺激障害、オルガスム障害および性的疼痛障害を含めた種々の多様な女性の性的障害を包含する。このような障害、特に女性の性的機能不全を治療するために使用されるとき、本発明の化合物は、下記の第2の薬剤(PDE5阻害剤、ドーパミンアゴニスト、エストロゲン受容体アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、アンドロゲン、ならびにエストロゲン)の1種または複数と合わせてもよい。
【0138】
用量当たり投与される本発明の化合物の量、または1日当たり投与される総量は、予め定めてもよく、または患者の状態の性質および重篤度、治療される状態、患者の年齢、体重、および身体全体の健康、患者の活性剤への耐性、投与経路、薬理学的考察(投与される化合物および任意の第2の薬剤の活性、効力、薬物動態および毒物学的検査プロファイルなど)などを含めた多数の要因を考慮に入れることによって、個々の患者に基づいて決定されてもよい。疾患または医学的状態(高血圧など)を患っている患者の治療は、所定の投与量または治療を行う医師によって決定される投与量から始めることができ、疾患または医学的状態の症状を予防、寛解、抑制、または緩和するのに必要な期間続ける。このような治療を受けている患者を、典型的には定期的にモニターし、療法の有効性を決定する。例えば、高血圧の治療において、血圧測定を使用して、治療の有効性を決定し得る。本明細書に記載されている他の疾患および状態についての同様の指標は周知であり、治療を行う医師にとって容易に利用可能である。医師による連続モニタリングによって、いつでも最適な量の本発明の化合物が投与されることが確実となり、かつ治療期間の決定を容易にする。第2の薬剤がまた投与されるときに、それらの選択、投与量、および治療の期間についてまた調整が必要となることがあるため、これは特に重要である。このようにして、治療計画および投与スケジュールでは、所望の有効性を示す最も低い量の活性剤が投与され、さらに、疾患または医学的状態を首尾よく治療するのに必要である限りにのみ投与が続けられるように、治療に亘って調節することができる。
【0139】
本発明の化合物はAT受容体アンタゴニスト活性および/またはNEP酵素阻害活性を有するので、このような化合物はまた、例えばAT受容体もしくはNEP酵素が役割を果たしている疾患を研究するために、AT受容体もしくはNEP酵素を有する生物学的系または生物学的試料を調査または研究するための研究ツールとして有用である。AT受容体および/もしくはNEP酵素を有する任意の適切な生物学的系または生物学的試料は、インビトロまたはインビボで行い得るような研究において用いてもよい。このような研究に適した代表的な生物学的系または生物学的試料には、それだけに限らないが、細胞、細胞抽出物、形質膜、組織試料、摘出器官、哺乳動物(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒトなど)などが含まれ、哺乳動物を特に対象とする。本発明の特定の一実施形態では、哺乳動物におけるAT受容体は、ATを拮抗する量の本発明の化合物を投与することによって拮抗される。他の特定の実施形態では、哺乳動物におけるNEP酵素活性は、NEPを阻害する量の本発明の化合物を投与することによって阻害される。本発明の化合物はまた、このような化合物を使用した生物学的アッセイを行うことによって研究ツールとして使用することができる。
【0140】
研究ツールとして使用する場合、AT受容体および/もしくはNEP酵素を含む生物学的系または生物学的試料を、典型的にはAT受容体を拮抗またはNEP酵素を阻害する量の本発明の化合物と接触させる。生物学的系または生物学的試料を化合物に曝露した後、結合アッセイにおいて受容体結合を測定すること、あるいは機能アッセイにおいてリガンドが媒介する変化を測定することによるなど従来の手順および装置を使用して、AT受容体を拮抗し、かつ/またはNEP酵素を阻害する作用を決定する。曝露は、細胞または組織を化合物と接触させること、化合物を哺乳動物に、例えばi.p.、i.v.またはs.c.投与などによって投与することを包含する。この決定ステップは、反応を測定すること(定量分析)を伴うことがあり、または観察を行う(定性分析)ことを伴うことがある。反応を測定することは、放射性リガンド結合アッセイ、および機能アッセイにおけるリガンドが媒介する変化の測定などの従来の手順および装置を使用して、例えば、生物学的系または生物学的試料に対する化合物の作用を決定することを伴う。アッセイ結果を使用して、活性レベル、ならびに所望の結果を達成するのに必要な化合物の量、すなわち、AT受容体を拮抗および/またはNEP酵素を阻害する量を決定することができる。典型的には、決定ステップは、AT受容体リガンドが媒介する作用を決定すること、および/またはNEP酵素を阻害する作用を決定することを伴う。
【0141】
さらに、本発明の化合物は、他の化合物を評価するための研究ツールとして使用することができ、したがってまた例えば、AT受容体拮抗活性および/またはNEP阻害活性を有する新規な化合物を発見するためのスクリーニングアッセイにおいて有用である。このように、本発明の化合物を、アッセイにおいて標準物質として使用して、試験化合物によって得た結果および本発明の化合物によって得た結果の比較を可能にし、もしあれば、ほぼ同じまたはより優れた活性を有するそれらの試験化合物を同定する。例えば、試験化合物または試験化合物の群についてのKデータ(例えば、結合アッセイによって決定されるような)を、本発明の化合物についてのKデータと比較して、もしあれば所望特性を有する試験化合物、例えば、本発明の化合物とほぼ同じまたはより優れたK値を有する試験化合物を同定する。本発明のこの態様には、別々の実施形態として、(適当なアッセイを使用した)比較データの生成および試験データの分析の両方が含まれ、対象とする試験化合物を同定する。したがって、(a)試験化合物で生物学的アッセイを行い、第1のアッセイ値を提供するステップと、(b)本発明の化合物で生物学的アッセイを行い、第2のアッセイ値を提供するステップ(ステップ(a)は、ステップ(b)の前、後または同時に行われる)と、(c)ステップ(a)からの第1のアッセイ値と、ステップ(b)からの第2のアッセイ値を比較するステップとを含む方法によって、試験化合物を生物学的アッセイにおいて評価することができる。例示的生物学的アッセイには、AT受容体結合アッセイおよびNEP酵素阻害アッセイが含まれる。
【0142】
医薬組成物および製剤
本発明の化合物は典型的には、医薬組成物または製剤の形態で患者に投与される。このような医薬組成物は、それだけに限らないが、経口、直腸、腔、経鼻、吸入、(経皮を含めた)局所、眼球、および非経口の投与方法を含めた任意の許容される投与経路によって患者に投与し得る。さらに、本発明の化合物は、1日当たり多回用量(例えば、1日2回、3回、もしくは4回)で、単一の1日用量または単一の週用量で、例えば経口投与し得る。特定の投与方法に適した本発明の化合物の任意の形態(すなわち、遊離塩基、遊離酸、薬学的に許容される塩、溶媒和物など)は、本明細書において論じられている医薬組成物に使用することができることが理解されるであろう。
【0143】
したがって、一実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体および本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。これらの組成物は、所望であれば他の治療剤および/または製剤化剤を含有し得る。組成物について論じるとき、「本発明の化合物」はまた、それを担体などの製剤の他の成分と区別するために、本明細書において「活性剤」と称してもよい。したがって、「活性剤」という用語には、式Iの化合物、ならびにその化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物およびプロドラッグが含まれることが理解される。
【0144】
本発明の医薬組成物は典型的には、治療有効量の本発明の化合物を含有する。しかし、当業者でれば、医薬組成物は、バルク組成物におけるなど治療有効量を超えて含有し得るか、または治療有効量未満、すなわち治療有効量を達成するために多回投与のために設計された個々の単位用量を含有し得ることを理解するであろう。典型的には、組成物は、約0.01〜10重量%などの約0.01〜30重量%を含めた約0.01〜95重量%の活性剤を含有し、実際の量は製剤それ自体、投与経路、投与頻度などによって決まる。一実施形態では、例えば、経口剤形に適した組成物は、約5〜70重量%、または約10〜60重量%の活性剤を含有し得る。
【0145】
任意の従来の担体または添加剤を、本発明の医薬組成物において使用してもよい。特定の担体もしくは添加剤、または担体もしくは添加剤の組合せの選択は、特定の患者を治療するために使用される投与方法または医学的状態もしくは病態のタイプによって決まるであろう。これに関して、特定の投与方法のための適切な組成物の調製は、十分に製薬技術における当業者の範囲内である。さらに、このような組成物において使用される担体または添加剤は市販されている。さらに例示するために、従来の製剤の技術は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(2000年);およびH. C. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)に記載されている。
【0146】
薬学的に許容される担体の役割を果たすことができる材料の代表的な例には、それだけに限らないが、下記が含められる。糖類(ラクトース、グルコースおよびスクロースなど);デンプン(コーンスターチおよびジャガイモデンプンなど);セルロース(微結晶性セルロース、およびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど)など);トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;滑石;賦形剤(カカオバターおよび坐薬蝋など);油(落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油など);グリコール(プロピレングリコールなど);ポリオール(グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど);エステル(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど);寒天;緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど);アルギン酸;発熱物質を含有しない水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;圧縮噴射ガス(クロロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンなど);ならびに医薬組成物中に用いられている他の無毒性の適合性物質。
【0147】
医薬組成物は典型的には、活性剤を、薬学的に許容される担体および1種または複数の任意選択の成分と徹底的および本質的に混合またはブレンドすることによって調製される。次いで、このように得られた均一にブレンドされた混合物を、従来の手順および装置を使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤、キャニスター、カートリッジ、ディスペンサーなどに成形または充填してもよい。
【0148】
本発明の化合物がチオール基を含有する製剤において、ジスルフィドを形成するチオールの酸化を最小化または除去するためにさらなる考慮をしてもよい。固形製剤において、これは乾燥時間を減少させ、製剤の含水率を低下させ、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムなどの材料、ならびにラクトースと微結晶性セルロースとの混合物などの材料を含むことによって達成し得る。液体製剤において、チオールの安定性は、アミノ酸、酸化防止剤、またはエデト酸二ナトリウムとアスコルビン酸との組合せを加えることによって改善し得る。
【0149】
一実施形態では、医薬組成物は経口投与に適している。経口投与に適した組成物は、各々が所定の量の活性剤を含有する、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤、水性もしくは非水性液体中の溶液剤または懸濁剤、水中油型もしくは油中水型液体エマルジョン、エリキシル剤またはシロップ剤などの形態でよい。
【0150】
固体剤形での経口投与(カプセル剤、錠剤、丸剤など)を意図するとき、組成物は典型的には、活性剤と、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの1種または複数の薬学的に許容される担体とを含む。固体剤形はまた、充填剤または増量剤(デンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸など);結合剤(カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなど);湿潤剤(グリセロールなど);崩壊剤(寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および/または炭酸ナトリウムなど);溶解遅延剤(パラフィンなど);吸収促進剤(第四級アンモニウム化合物など);湿潤剤(セチルアルコールおよび/またはモノステアリン酸グリセロールなど);吸収剤(カオリンおよび/またはベントナイト粘土など);滑沢剤(滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および/またはその混合物など);着色剤;ならびに緩衝剤を含み得る。
【0151】
離型剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および香料剤、保存剤および酸化防止剤もまた、医薬組成物中に存在し得る。錠剤、カプセル剤、丸剤などのための例示的コーティング剤には、腸溶性コーティングのために使用されるもの(酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸−メタクリル酸エステルコポリマー、酢酸トリメリット酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)が含まれる。薬学的に許容される酸化防止剤の例には、水溶性酸化防止剤(アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);油溶性酸化防止剤(パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど);および金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)などが含まれる。
【0152】
例示として、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、または他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフィアを使用して、組成物をまた製剤して、活性剤の持続放出または制御放出を実現し得る。さらに、本発明の医薬組成物は乳白剤を含有してもよく、任意選択で遅延した態様で、消化管の特定の部分において活性剤のみ、またはそれを優先的に放出するように製剤してもよい。使用することができる包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが含まれる。活性剤はまた、任意選択で、上記の賦形剤の1種または複数を有するマイクロカプセル化形態でよい。
【0153】
経口投与のための適切な液体剤形には、例示として、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体剤形は典型的には、活性剤および不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒など)、可溶化剤および乳化剤(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物など)を含む。懸濁剤は、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにこれらの混合物などの懸濁化剤を含有し得る。
【0154】
経口投与を対象とするとき、本発明の医薬組成物は、単位剤形にパッケージングしてもよい。「単位剤形」という用語は、患者に投与するのに適した物理的に個別の単位を意味し、すなわち、各ユニットは、単独でまたは1つもしくは複数のさらなる単位と組み合わせて所望の治療効果を生じるように計算した所定の量の活性剤を含有する。例えば、このような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤などでよい。
【0155】
別の実施形態では、本発明の組成物は吸入投与に適しており、典型的にはエアロゾルまたは粉末の形態である。このような組成物は一般に、周知の送達装置(ネブライザー、乾燥粉末、または定量吸入器など)を使用することによって投与される。ネブライザー装置は、組成物を患者の気道中に運ばれる霧として噴霧する高速空気流を生じさせる。例示的なネブライザー製剤は、担体に溶解して溶液を形成した活性剤を含むか、または微粉状にして担体と合わせられて呼吸に適したサイズの微粉化粒子の懸濁液を形成した活性剤を含む。乾燥粉末吸入器は、吸気の間に患者の気流中に分散する易流動性粉末として活性剤を投与する。例示的な乾燥粉末製剤は、賦形剤(ラクトース、デンプン、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸、ポリラクチド−co−グリコリド、およびこれらの組合せなど)とドライブレンドした活性剤を含む。定量吸入器は、圧縮噴射ガスを使用して一定量の活性剤を放出する。例示的な定量製剤は、液化噴射剤(クロロフルオロカーボンもしくはハイドロフルオロアルカンなど)中の活性剤の溶液または懸濁液を含む。このような製剤の任意選択の成分には、共溶媒(エタノールまたはペンタンなど)、ならびに界面活性剤(トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチン、グリセリン、およびラウリル硫酸ナトリウムなど)が含まれる。このような組成物は典型的には、冷却または加圧したヒドロフルオロアルカンを、活性剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含有する適切な容器に加えることによって調製される。懸濁液を調製するために、活性剤を超微粉砕し、次いで噴射剤と合わせる。あるいは、懸濁状製剤は、界面活性剤のコーティングを活性剤の微粉化粒子上に噴霧乾燥することによって調製することができる。次いで、製剤を、エアロゾル缶に充填し、それが吸入器の一部を形成する。
【0156】
本発明の化合物はまた、非経口的に(例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、または腹腔内注射によって)投与することができる。このような投与のために、活性剤は、無菌溶液剤、懸濁剤、または乳剤で提供される。このような製剤を調製するための例示的溶媒には、水、生理食塩水、低分子量アルコール(プロピレングリコールなど)、ポリエチレングリコール、油、ゼラチン、脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)などが含まれる。非経口製剤はまた、1種または複数の酸化防止剤、可溶化剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤を含有し得る。界面活性剤、さらなる安定化剤またはpH調整剤(酸、塩基もしくは緩衝液)および酸化防止剤は、製剤に安定性を与えるために、例えば、化合物中に存在し得るエステル結合およびアミド結合の加水分解、またはチオールの二量体化を最小化または回避するために特に有用である。これらの製剤は、無菌の注射可能な媒質、滅菌剤、濾過、照射、または熱を使用することによって無菌にし得る。特定の一実施形態では、非経口製剤は、薬学的に許容される担体としてシクロデキストリン水溶液を含む。適切なシクロデキストリンには、アミラーゼ、β−シクロデキストリンまたはシクロヘプタアミロース中におけるような、結合によって1,4位において連結している6個以上のα−D−グルコピラノースユニットを含有する環状分子が含まれる。例示的シクロデキストリンには、シクロデキストリン誘導体(ヒドロキシプロピルおよびスルホブチルエーテルシクロデキストリン(ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンなど)など)が含まれる。このような製剤のための例示的緩衝液には、カルボン酸をベースとする緩衝液(クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液およびマレイン酸緩衝液など)が含まれる。
【0157】
本発明の化合物はまた、公知の経皮的送達系および賦形剤を使用して経皮的に投与することができる。例えば、化合物は、浸透促進剤(プロピレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、アザシクロアルカン−2−オンなど)と混合することができ、パッチまたは同様の送達系に組み込むことができる。ゲル化剤、乳化剤および緩衝液を含めたさらなる賦形剤は、所望であればこのような経皮的組成物中で使用してもよい。
【0158】
所望であれば、本発明の化合物は、1種または複数の他の治療剤と組み合わせて投与し得る。したがって、一実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と同時投与される他の薬物を含有する。例えば、組成物は、利尿剤、βアドレナリン作動性受容体遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、AT受容体アンタゴニスト、ネプリライシン阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、プロスタグランジン、抗脂質剤、抗糖尿病薬、抗血栓剤、レニン阻害剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト、エンドセリン変換酵素阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシン阻害剤、およびこれらの組合せの群から選択される1種または複数の薬物(また「第2の薬剤(複数可)」とも称される)をさらに含み得る。このような治療剤は当技術分野で周知であり、具体例は本明細書に記載されている。本発明の化合物を第2の薬剤と合わせることによって、3重療法を達成することができる;2種のみの活性成分を使用して、AT受容体アンタゴニスト活性、NEP阻害活性、および第2の薬剤(例えば、βアドレナリン作動性受容体遮断剤)と関連する活性を達成することができる。2種の活性成分を含有する組成物は、3種の活性成分を含有する組成物より典型的には製剤が容易であるため、このような2種成分の組成物は、3種の活性成分を含有する組成物よりも有意な利点を提供する。したがって、本発明のさらに別の態様では、医薬組成物は、本発明の化合物、第2の活性剤、および薬学的に許容される担体を含む。第3、第4などの活性剤をまた組成物に含んでもよい。併用療法において、投与される本発明の化合物の量、および第2の薬剤の量は、単独療法において典型的に投与される量よりも少ないことがある。
【0159】
本発明の化合物は、第2の活性剤と物理的に混合されて両方の薬剤を含有する組成物を形成し得るか、または各薬剤は、患者に同時にまたは別々の時に投与される、別々で異なる組成物中に存在し得る。例えば、本発明の化合物は、従来の手順および装置を使用して第2の活性剤と合わせ、本発明の化合物および第2の活性剤を含む活性剤の組合せを形成することができる。さらに、これらの活性剤は、薬学的に許容される担体と合わせ、本発明の化合物、第2の活性剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を形成し得る。この実施形態では、組成物の成分は、典型的には混合またはブレンドされ、物理的混合物が生じる。次いで、物理的混合物は、本明細書に記載されている経路のいずれかを使用して治療有効量で投与される。
【0160】
あるいは、活性剤は、患者に投与する前に別々で異なるままでよい。この実施形態では、薬剤は、投与前に物理的に一緒に混合されず、同時または別々の時に別々な組成物として投与される。このような組成物は、別々にパッケージングしてもよく、キット中に一緒にパッケージングしてもよい。別々の時に投与されるとき、第2の薬剤は典型的には、本発明の化合物の投与と同時から投与後約24時間までの範囲で、本発明の化合物の投与後24時間未満で投与される。これはまた順次投与と称される。したがって、本発明の化合物は、2種の錠剤を使用して別の活性剤と同時または順次に経口投与することができ、1つの錠剤が各々の活性剤のためにあり、順次とは、本発明の化合物の投与の直後に、または所定の時間後(例えば、1時間後もしくは3時間後)に投与することを意味し得る。あるいは、組合せは、異なる投与経路によって、すなわち、1つは経口で、他方は吸入によって投与され得る。
【0161】
一実施形態では、キットは、本発明の方法を実施するのに十分な量で、本発明の化合物を含む第1の剤形と、本明細書において記載されている第2の薬剤の1種または複数を含む少なくとも1種のさらなる剤形とを含む。第1の剤形および第2の(または第3などの)剤形は、患者における疾患または医学的状態の治療または予防のための治療有効量の活性剤を一緒に構成する。
【0162】
第2の薬剤(複数可)は、含まれているとき、本発明の化合物と同時投与されたときに治療的に有益な効果を生じる量で典型的に投与されるように、治療有効量で存在する。第2の薬剤は、薬学的に許容される塩、溶媒和物、光学的に純粋な立体異性体などの形態でよい。第2の薬剤はまた、プロドラッグの形態、例えば、エステル化されたカルボン酸基を有する化合物でよい。したがって、本明細書において列挙されている第2の薬剤は、全てのこのような形態を含むことを意図し、市販であるか、または従来の手順および試薬を使用して調製することができる。
【0163】
一実施形態では、本発明の化合物は、利尿剤と組み合わせて投与される。代表的な利尿剤には、それだけに限らないが、炭酸脱水酵素阻害剤(アセタゾラミドおよびジクロルフェナミドなど);ループ利尿剤(スルホンアミド誘導体(アセタゾラミド、アンブシド、アゾセルニド、ブメタニド、ブタゾールアミド、クロラミノフェナミド、クロフェナミド、クロパミド、クロレキソロン、ジスルファミド、エトキソールアミド、フロセミド、メフルシド、メタゾラミド、ピレタニド、トルセミド、トリパミド、およびキシパミドなど)、ならびに非スルホンアミド利尿剤(エタクリン酸など)、ならびに他のフェノキシ酢酸化合物(チエニル酸、インダクリノンおよびキンカルバートなど)が含まれる);浸透圧利尿剤(マンニトールなど);カリウム保持性利尿剤(アルドステロンアンタゴニスト(スピロノラクトンなど)、ならびにNaチャネル阻害剤(アミロリドおよびトリアムテレンなど)が含まれる);チアジドおよびチアジド様利尿剤(アルチアジド、ベンドロフルメチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ベンズチアジド、ブチアジド、クロルタリドン、クロロチアジド、シクロペンチアジド、シクロチアジド、エピチアジド、エチアジド、フェンキゾン、フルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、メチルクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチアジド、キネタゾン、テクロチアジド、およびトリクロロメチアジドなど);ならびにこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、利尿剤は、アミロリド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、ジクロルフェナミド、エタクリン酸、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、メチルクロチアジド、メトラゾン、トルセミド、トリアムテレン、およびこれらの組合せから選択される。利尿剤は、1日当たり約5〜50mg、より典型的には1日当たり6〜25mgを提供するのに十分な量で投与され、一般の投与量は、1日当たり6.25mg、12.5mgまたは25mgである。
【0164】
本発明の化合物はまた、βアドレナリン作動性受容体遮断剤と組み合わせて投与されることができる。代表的なβアドレナリン作動性受容体遮断剤には、それだけに限らないが、アセブトロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブシンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフラロール、ブニトロロール、ブプラノロール、ブブリジン、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、エスモロール、インデノロール、ラベトロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール(コハク酸メトプロロールおよび酒石酸メトプロロールなど)、モプロロール、ナドロール、ナドキソロール、ネビバロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ペルブトロール、ピンドロール、プラクトロール、プロネタロール、プロプラノロール、ソタロール、スフィナロール、タリンドール、テルタトロール、チリソロール、チモロール、トリプロロール、キシベノロール、ならびにこれらの組合せが含まれる。特定の一実施形態では、βアドレナリン作動性受容体遮断剤は、アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、およびこれらの組合せから選択される。
【0165】
一実施形態では、本発明の化合物は、カルシウムチャネル遮断剤と組み合わせて投与される。代表的なカルシウムチャネル遮断剤には、それだけに限らないが、アムロジピン、アニパミル、アラニピン、バルニジピン、ベンシクラン、ベニジピン、ベプリジル、クレンチアゼム、シルニジピン、シンナリジン、ジルチアゼム、エホニジピン、エルゴジピン、エタフェノン、フェロジピン、フェンジリン、フルナリジン、ガロパミル、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、リドフラジン、ロメリジン、マニジピン、ミベフラジル、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニバルジピン、ペルヘキシリン、プレニラミン、リオシジン、セモチアジル、テロジリン、チアパミル、ベラパミル、およびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、カルシウムチャネル遮断剤は、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、リオシジン、ベラパミル、およびこれらの組合せから選択される。
【0166】
本発明の化合物はまた、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤と組み合わせて投与することができる。代表的なACE阻害剤には、それだけに限らないが、アキュプリル、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラト、カプトプリル、セラナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラト、ホシノプリル、ホシノプリラト、イミダプリル、リシノプリル、モエキシプリル、モノプリル、モベルトプリル、ペントプリル、ペリンドプリル、キナプリル、キナプリラト、ラミプリル、ラミプリラト、酢酸サララシン、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、ゾフェノプリル、およびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、ACE阻害剤は、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、およびこれらの組合せから選択される。
【0167】
一実施形態では、本発明の化合物は、アンジオテンシンII 1型受容体遮断剤(ARB)としても公知のAT受容体アンタゴニストと組み合わせて投与される。代表的なARBには、それだけに限らないが、アビテサルタン、ベンジルロサルタン、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、エリサルタン、エンブサルタン、エノールタソサルタン、エプロサルタン、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、イルベサルタン、イソテオリン、ロサルタン、メドキシミル、ミルファサルタン、オルメサルタン、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン、およびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、ARBは、カンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、およびこれらの組合せから選択される。例示的な塩には、エプロサルタンメシル酸塩、ロサルタンカリウム塩、およびオルメサルタンメドキソミルが含まれる。典型的には、ARBは、用量毎に約4〜600mgを提供するのに十分な量で投与され、例示的な1日投与量は1日当たり20〜320mgの範囲である。
【0168】
別の実施形態では、本発明の化合物は、ネプリライシン(NEP)阻害剤と組み合わせて投与される。代表的なNEP阻害剤には、それだけに限らないが、カンドキサトリル;カンドキサトリラト;デキセカドトリル((+)−N−[2(R)−(アセチルチオメチル)−3−フェニルプロピオニル]グリシンベンジルエステル);CGS−24128(3−[3−(ビフェニル−4−イル)−2−(ホスホノメチルアミノ)プロピオンアミド]プロピオン酸);CGS−24592((S)−3−[3−(ビフェニル−4−イル)−2−(ホスホノメチルアミノ)プロピオンアミド]プロピオン酸);CGS−25155(N−[9(R)−(アセチルチオメチル)−10−オキソ−1−アザシクロデカン−2(S)−イルカルボニル]−4(R)−ヒドロキシ−L−プロリンベンジルエステル);HepworthらへのWO2006/027680に記載されている3−(1−カルバモイルシクロヘキシル)プロピオン酸誘導体(Pfizer Inc.);JMV−390−1(2(R)−ベンジル−3−(N−ヒドロキシカルバモイル)プロピオニル−L−イソロイシル−L−ロイシン);エカドトリル;ホスホラミドン;レトロチオルファン;RU−42827(2−(メルカプトメチル)−N−(4−ピリジニル)ベンゼンプロピオンアミド);RU−44004(N−(4−モルホリニル)−3−フェニル−2−(スルファニルメチル)プロピオンアミド);SCH−32615((S)−N−[N−(1−カルボキシ−2−フェニルエチル)−L−フェニルアラニル]−β−アラニン)およびそのプロドラッグであるSCH−34826((S)−N−[N−[1−[[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メトキシ]カルボニル]−2−フェニルエチル]−L−フェニルアラニル]−β−アラニン);シアロルフィン;SCH−42495(N−[2(S)−(アセチルスルファニルメチル)−3−(2−メチルフェニル)プロピオニル]−L−メチオニンエチルエステル);スピノルフィン;SQ−28132(N−[2−(メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]ロイシン);SQ−28603(N−[2−(メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]−β−アラニン);SQ−29072(7−[[2−(メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]アミノ]ヘプタン酸);チオルファンおよびそのプロドラッグであるラセカドトリル;UK−69578(cis−4−[[[1−[2−カルボキシ−3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]シクロペンチル]カルボニル]アミノ]シクロヘキサンカルボン酸);UK−447,841(2−{1−[3−(4−クロロフェニル)プロピルカルバモイル]−シクロペンチルメチル}−4−メトキシ酪酸);UK−505,749((R)−2−メチル−3−{1−[3−(2−メチルベンゾチアゾール−6−イル)プロピルカルバモイル]シクロペンチル}プロピオン酸);5−ビフェニル−4−イル−4−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸および5−ビフェニル−4−イル−4−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル(WO2007/056546);KhderらへのWO2007/106708(Novartis AG)に記載されている、ダグルトリル[(3S,2’R)−3−{1−[2’−(エトキシカルボニル)−4’−フェニルブチル]−シクロペンタン−1−カルボニルアミノ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−2−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢酸];ならびにこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、NEP阻害剤は、カンドキサトリル、カンドキサトリラト、CGS−24128、ホスホラミドン、SCH−32615、SCH−34826、SQ−28603、チオルファン、およびこれらの組合せから選択される。NEP阻害剤は、1日当たり約20〜800mgを提供するのに十分な量で投与され、典型的な1日投与量は、1日当たり50〜700mg、より一般には1日当たり100〜600mg、または100〜300mgの範囲である。
【0169】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)と組み合わせて投与される。代表的なNSAIDには、それだけに限らないが、アセメタシン、アセチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アンフェナク、アミプリロース、アモキシプリン、アニロラク、アパゾン、アザプロパゾン、ベノリラート、ベノキサプロフェン、ベズピペリロン、ブロペラモール、ブクロクス酸、カルプロフェン、クリダナク、ジクロフェナク、ジフルニサル、ジフタロン、エノリカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸、フェノプロフェン、フェンチアザク、フェプラゾン、フルフェナム酸、フルフェニサール、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フロフェナク、イブフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、ケトロラク、ロフェミゾール、ロルノキシカム、メクロフェナメート、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メサラミン、ミロプロフェン、モフェブタゾン、ナブメトン、ナプロキセン、ニフルム酸、オキサプロジン、オキシピナク、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、サルサラート、スドキシカム、スルファサラジン、スリンダク、スプロフェン、テノキシカム、チオピナク、チアプロフェン酸、チオキサプロフェン、トルフェナム酸、トルメチン、トリフルミダート、ジドメタシン、ゾメピラク、およびこれらの組合せが含まれる。特定の実施形態では、NSAIDは、エトドラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メロキシカム、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、およびこれらの組合せから選択される。
【0170】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物は、抗脂質剤と組み合わせて投与される。代表的な抗脂質剤には、それだけに限らないが、スタチン(アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンなど);コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)、ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0171】
さらに別の実施形態では、本発明の化合物は、抗糖尿病薬と組み合わせて投与される。代表的な抗糖尿病薬には、注射可能な薬物、および経口的に有効な薬物、ならびにこれらの組合せが含まれる。注射可能な薬物の例には、それだけに限らないが、インスリンおよびインスリン誘導体が含まれる。経口的に有効な薬物の例には、それだけに限らないが、ビグアニド(メトホルミン;グルカゴンアンタゴニストなど);α−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボースおよびミグリトールなど);メグリチニド(レパグリニド、オキサジアゾリジンジオンなど);スルホニル尿素(クロルプロパミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、およびトラザミドなど);チアゾリジンジオン(ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンなど)、ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0172】
一実施形態では、本発明の化合物は、抗血栓剤と組み合わせて投与される。代表的な抗血栓剤には、それだけに限らないが、アスピリン、抗血小板剤、ヘパリン、およびこれらの組合せが含まれる。本発明の化合物はまた、レニン阻害剤と組み合わせて投与され得、その例には、それだけに限らないが、アリスキレン、エナルキレン、レミキレン、およびこれらの組合せが含まれる。別の実施形態では、本発明の化合物は、エンドセリン受容体アンタゴニストと組み合わせて投与され、その代表的な例には、それだけに限らないが、ボセンタン、ダルセンタン、テゾセンタン、およびこれらの組合せが含まれる。本発明の化合物はまた、エンドセリン変換酵素阻害剤と組み合わせて投与されてもよく、その例には、それだけに限らないが、ホスホラミドン、CGS26303、およびこれらの組合せが含まれる。さらに別の実施形態では、本発明の化合物は、アルドステロンアンタゴニストと組み合わせて投与され、代表的なアルドステロンアンタゴニストには、それだけに限らないが、エプレレノン、スピロノラクトン、およびこれらの組合せが含まれる。
【0173】
合わせた治療剤はまた、本発明の化合物とのさらなる併用療法において有益であり得る。例えば、商標Vaseretic(登録商標)で販売されているACE阻害剤エナラプリル(マレイン酸塩形態)と利尿剤ヒドロクロロチアジドとの組合せ、またはカルシウムチャネル遮断剤アムロジピン(ベシル酸塩の形態)とARBオルメサルタン(メドキソミルプロドラッグ形態)との組合せ、またはカルシウムチャネル遮断剤とスタチンとの組合せはまた、全て、本発明の化合物と共に使用してもよい。二重活性剤はまた、本発明の化合物との併用療法において有益であり得る。例えば、アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシン(ACE/NEP)阻害剤(AVE−0848((4S,7S,12bR)−7−[3−メチル−2(S)−スルファニルブチルアミド]−6−オキソ−1,2,3,4,6,7,8,12b−オクタヒドロピリド,[2,1−a][2]ベンズアゼピン−4−カルボン酸);AVE−7688(イレパトリル)およびその親化合物;BMS−182657(2−[2−オキソ−3(S)−[3−フェニル−2(S)−スルファニルプロピオンアミド]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1−ベンズアゼピン−1−イル]酢酸);CGS−26303([N−[2−(ビフェニル−4−イル)−1(S)−(1H−テトラゾール−5−イル)エチル]アミノ]メチルホスホン酸);CGS−35601(N−[1−[4−メチル−2(S)−スルファニルペンタンアミド]シクロペンチルカルボニル]−L−トリプトファン);ファシドトリル;ファシドトリレート;エナラプリラト;ER−32935((3R,6S,9aR)−6−[3(S)−メチル−2(S)−スルファニルペンタンアミド]−5−オキソペルヒドロチアゾロ[3,2−a]アゼピン−3−カルボン酸);ゲンパトリラト;MDL−101264((4S,7S,12bR)−7−[2(S)−(2−モルホリノアセチルチオ)−3−フェニルプロピオンアミド]−6−オキソ−1,2,3,4,6,7,8,12b−オクタヒドロピリド[2,1−a][2]ベンズアゼピン−4−カルボン酸);MDL−101287([4S−[4α,7α(R),12bβ]]−7−[2−(カルボキシメチル)−3−フェニルプロピオンアミド]−6−オキソ−1,2,3,4,6,7,8,12b−オクタヒドロピリド[2,1−a][2]ベンズアゼピン−4−カルボン酸);オマパトリラット;RB−105(N−[2(S)−(メルカプトメチル)−3(R)−フェニルブチル]−L−アラニン);サムパトリラト;SA−898((2R,4R)−N−[2−(2−ヒドロキシフェニル)−3−(3−メルカプトプロピオニル)チアゾリジン−4−イルカルボニル]−L−フェニルアラニン);Sch−50690(N−[1(S)−カルボキシ−2−[N2−(メタンスルホニル)−L−リジルアミノ]エチル]−L−バリル−L−チロシン);ならびに組合せなど)をまた含めてもよい。特定の一実施形態では、ACE/NEP阻害剤は、AVE−7688、エナラプリラト、ファシドトリル、ファシドトリレート、オマパトリラット、サムパトリラト、およびこれらの組合せから選択される。
【0174】
α−アドレナリン作動性受容体アゴニストおよびバソプレシン受容体アンタゴニストなどの他の治療剤もまた、併用療法において有益であり得る。例示的α−アドレナリン作動性受容体アゴニストには、クロニジン、デキスメデトミジン、およびグアンファシンが含まれる。例示的バソプレシン受容体アンタゴニストには、トルバプタンが含まれる。
【0175】
下記の製剤は、本発明の代表的な医薬組成物を例示する。
【0176】
経口投与のための例示的硬質ゼラチンカプセル
本発明の化合物(50g)、噴霧乾燥ラクトース440gおよびステアリン酸マグネシウム10gを、徹底的にブレンドする。次いで、このように得られた組成物を、硬質ゼラチンカプセルに充填する(カプセル毎に500mgの組成物)。あるいは、本発明の化合物(20mg)を、デンプン(89mg)、微結晶性セルロース(89mg)およびステアリン酸マグネシウム(2mg)と徹底的にブレンドする。次いで、混合物を、No.45メッシュU.S.篩に通し、硬質ゼラチンカプセルに充填する(カプセル毎に200mgの組成物)。
【0177】
経口投与のための例示的ゼラチンカプセル製剤
本発明の化合物(100mg)を、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(50mg)およびデンプン粉末(250mg)と徹底的にブレンドする。次いで、混合物をゼラチンカプセルに充填する(カプセル毎に300mgの組成物)。
【0178】
あるいは、本発明の化合物(40mg)を、微結晶性セルロース(Avicel PH103;260mg)およびステアリン酸マグネシウム(0.8mg)と徹底的にブレンドする。次いで、混合物をゼラチンカプセル(サイズ#1、白、不透明)に充填する(カプセル毎に300mgの組成物)。
【0179】
経口投与のための例示的錠剤製剤
本発明の化合物(10mg)、デンプン(45mg)および微結晶性セルロース(35mg)をNo.20メッシュU.S.篩に通し、徹底的に混合する。このように生成された顆粒を50〜60℃で乾燥させ、No.16メッシュU.S.篩に通す。ポリビニルピロリドンの溶液(滅菌水中の10%溶液として4mg)を、カルボキシメチルデンプンナトリウム(4.5mg)、ステアリン酸マグネシウム(0.5mg)、および滑石(1mg)と混合し、次いでこの混合物をNo.16メッシュU.S.篩に通す。次いで、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよび滑石を顆粒に加える。混合後、混合物を錠剤成形機で圧縮し、100mgの重量の錠剤を得る。
【0180】
あるいは、本発明の化合物(250mg)を、微結晶性セルロース(400mg)、ヒュームド二酸化ケイ素(10mg)、およびステアリン酸(5mg)と徹底的にブレンドする。次いで、混合物を圧縮し、錠剤を形成する(錠剤毎に665mgの組成物)。
【0181】
あるいは、本発明の化合物(400mg)を、コーンスターチ(50mg)、クロスカルメロースナトリウム(25mg)、ラクトース(120mg)、およびステアリン酸マグネシウム(5mg)と徹底的にブレンドする。次いで、混合物を圧縮し、割線を1本有する錠剤を形成する(錠剤毎に600mgの組成物)。
【0182】
あるいは、本発明の化合物(100mg)を、ゼラチンの水溶液(20mg)を含むコーンスターチ(100mg)と徹底的にブレンドする。混合物を乾燥させ、微粉にする。次いで、微結晶性セルロース(50mg)およびステアリン酸マグネシウム(5mg)をゼラチン製剤と混合し、顆粒化し、このように得られた混合物を圧縮し、錠剤を形成する(錠剤毎に100mgの本発明の化合物)。
【0183】
経口投与のための例示的懸濁状製剤
下記の成分を混合し、10mLの懸濁液毎に100mgの本発明の化合物を含有する懸濁液を形成する。
【0184】
【化34】

経口投与のための例示的液体製剤
適切な液体製剤は、クエン酸緩衝液、乳酸緩衝液およびマレイン酸緩衝液などのカルボン酸をベースとする緩衝液を有するものである。例えば、本発明の化合物(DMSOと事前に混合してもよい)を、100mMのクエン酸アンモニウム緩衝液とブレンドし、pHをpH5に調節する、または100mMのクエン酸溶液とブレンドし、pHをpH2に調節する。このような溶液にはまた、シクロデキストリンなどの可溶化賦形剤が含まれ、例えば溶液には、10重量%のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが含まれる。
【0185】
他の適切な製剤としては、シクロデキストリンを含有する、または含有しない、5%NaHCO溶液が挙げられる。
【0186】
注射による投与のための例示的注射用製剤
本発明の化合物(0.2g)を、0.4Mの酢酸ナトリウム緩衝溶液(2.0mL)とブレンドする。このように得られた溶液のpHを、0.5Nの塩酸水溶液または0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を必要に応じて使用してpH4に調節し、次いで十分な注射用水を加え、20mLの総容量とする。次いで、混合物を滅菌フィルター(0.22ミクロン)で濾過し、注射による投与に適した無菌溶液を得る。
【0187】
吸入による投与のための例示的組成物
本発明の化合物(0.2mg)を微粉状にし、次いでラクトース(25mg)とブレンドする。次いで、このブレンドした混合物をゼラチン吸入カートリッジに充填する。カートリッジの中身を、例えば乾燥粉末吸入器を使用して投与する。
【0188】
あるいは、微粉状にした本発明の化合物(10g)を、レシチン(0.2g)を脱塩水(200mL)に溶解することによって調製した溶液に分散させる。このように得られた懸濁液を噴霧乾燥し、次いで微粉状にし、約1.5μm未満の平均直径を有する粒子を含む微粉状にした組成物を形成する。次いで、微粉状にした組成物を、吸入器によって投与するとき、1回分毎に約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で、加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含有する定量吸入器カートリッジ中に充填する。
【0189】
あるいは、本発明の化合物(25mg)を、クエン酸で緩衝化した(pH5)等張生理食塩水(125mL)に溶解する。化合物が溶解するまで、混合物を撹拌し、超音波処理する。溶液のpHをチェックし、必要に応じて1NのNaOH水溶液をゆっくりと加えることによってpH5に調節する。1回分毎に約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するネブライザー装置を使用して溶液を投与する。
【実施例】
【0190】
本発明の特定の実施形態を例示するために下記の調製例および実施例を提供する。しかし、これらの特定の実施形態は、特に明記しない限り本発明の範囲を制限することを決して意図するものではない。
【0191】
下記の略語は、他に示さない限り下記の意味を有し、本明細書において使用される定義されていない任意の他の略語は、それらの標準的な、一般に受け入れられる意味を有する。
ACE アンジオテンシン変換酵素
AcOH 酢酸
APP アミノペプチダーゼP
AT アンジオテンシンII 1型(受容体)
AT アンジオテンシンII 2型(受容体)
BSA ウシ血清アルブミン
DCM ジクロロメタンまたは塩化メチレン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
Dnp 2,4−ジニトロフェニル
DOCA 酢酸デオキシコルチコステロン
EDC N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
HATU N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
LiHMDS ヘキサメチルジシラジドリチウム
Mca (7−メトキシクマリン−4−イル)アシル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
NBS N−ブロモスクシンイミド
NEP ネプリライシン(EC3.4.24.11)
PBS リン酸緩衝化生理食塩水
SHR 自然発症高血圧ラット
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Tris トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン
Tween−20 ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート。
【0192】
他に断らない限り、試薬、出発物質および溶媒などの全ての材料は、商業的供給業者(Sigma−Aldrich、Fluka Riedel−de Haenなど)から購入し、それ以上精製することなく使用した。
【0193】
他に断らない限り反応は窒素雰囲気下にて行った。反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)、および質量分析法によってモニターした。その詳細を具体例で示す。分析用HPLCにおいて使用した溶媒は、下記の通りであった。溶媒Aは、98%HO/2%MeCN/1.0mL/LのTFAであった。溶媒Bは、90%MeCN/10%HO/1.0ml/LのTFAであった。
【0194】
反応は、各調製例または実施例において具体的に記載した通りに後処理した。一般に反応混合物は、抽出ならびに他の精製方法(温度依存性および溶媒依存性結晶化、ならびに沈殿など)によって精製した。さらに、反応混合物は、典型的にはMicrosorb C18およびMicrosorb BDSカラムパッキングおよび従来の溶離液を使用して、分取HPLCにより慣用的に精製した。反応の進行は通常、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)によって測定した。異性体の特徴付けは、核オーバーハウザー効果分光法(NOE)によって行った。反応生成物の特性決定は、質量分析およびH−NMR分光測定によって慣用的に行った。NMR測定のために、試料を重水素化された溶媒(CDOD、CDCl、またはDMSO−d)に溶解し、標準的な観察条件下でVarian Gemini 2000機器(400MHz)でH−NMRスペクトルを得た。化合物の質量分析による同定は典型的には、Applied Biosystems(Foster City、CA)モデルAPI 150 EX機器またはAgilent(Palo Alto、CA)モデル1200LC/MSD機器でエレクトロスプレーイオン化法(ESMS)を使用して行った。
【0195】
調製例1
2−(1−トリチル−1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸
【0196】
【化35】

不活性な窒素雰囲気によってパージし、維持しておいたフラスコに、ベンゾニトリル(60.0g、581.9mmol、1.0当量)のDMF(無水)(600mL)溶液を入れた。塩化アンモニウム(40.5g、757.2mmol、1.3当量)を加えた後、塩化リチウム(2.0g、47.2mmol、0.1当量)を加えた。混合物にアジ化ナトリウム(azidosodium)(49.4g、756.8mmol、1.3当量)を加えた。得られた溶液を、温度を100℃に保ちながら一晩撹拌した。固体を濾別し、EtOAcで洗浄した。濾液を合わせ、減圧中で濃縮した。残渣を10%NaOH水溶液(350ml)に溶解させた。得られた溶液をEtOAc(100mL)で抽出し、水層を合わせた。溶液のpH値を濃HClで2に調整した。固体を濾別し、減圧下で乾燥させて、5−フェニル−1H−テトラゾール(78.0g)を白色の固体として得た。ES m/z: [M+H]の計算値,147.1; 実測値147.1。
【0197】
不活性な窒素雰囲気によってバージし、維持しておいたフラスコに、テトラゾール(50.0g、342.1mmol、1.0当量)のDCM(乾燥)(150mL)溶液を入れた。混合物に0℃のトリエチルアミン(45.0g、444.7mmol、1.30当量)を加えた後クロロトリフェニルメタン(100.0g、358.7mmol、1.1当量)を0℃で数回に分けて加えた。得られた溶液を室温で3時間撹拌した。固体を濾過によって集め、濾液ケーキを冷EtOAc(1×100mL)および水(3×300mL)で洗浄した。固体を減圧下で乾燥させて、5−フェニル−1−トリチル−1H−テトラゾール(125g)を白色の固体として得た。ES m/z: [M+H]+ C2620の計算値,389.1,実測値389.1。
【0198】
不活性な窒素雰囲気によってパージし、維持しておいたフラスコに、保護されたテトラゾール(70.0g、180.2mmol、1.0当量)のTHF(乾燥)(560mL)溶液を入れた。混合物を−25℃に冷却した。混合物の色が少なくとも5分間赤色のままになるまで、ブチルリチウムを加えて、反応混合物中の微量の水をクエンチした。次いでブチルリチウム(80.0mL、2.5mol/L)を、−25℃を下回る温度で約40分かけて混合物に滴下によって加えた。混合物の温度を−5℃に上げ、混合物を−5℃で3時間撹拌した。次いで混合物を−25℃に冷却し、ホウ酸トリイソプロピル(50.8g、270.1mmol、1.5当量)を滴下によって加えた。混合物を25〜35℃の温度に温め、2時間撹拌した。混合物を0〜5℃の範囲に再び冷却し、3%AcOH水溶液(470mL)を30〜40分かけてゆっくりと加えた。混合物を30〜40分間撹拌し、次いで濾過した。粗生成物を水(2×300mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させた。次いで粗生成物をEtOAc(1g/15ml)からの再結晶によって精製して、表題化合物(54g)を白色の固体として得た。ES m/z: [M+H]2621BNの計算値,433.1,実測値433.1。
【0199】
H−NMR (400 MHz,DMSO,400 ppm): δ(ppm) = 7.96 (br,2H),7.84−7.86 (m,1H),7.51−7.53 (m,1H),7.44−7.47 (m,2H),7.39−7.41(m,9H),7.08−7.10 (m,6H)。
【0200】
調製例2
(テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸
【0201】
【化36】

2−(1−トリチル−1H−テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸(11.5g、26.6mmol)を1,4−ジオキサン(41.5mL、532.1mmol)および1,4−ジオキサン中4MのHClの溶液(13.3mL、53.2mmol)と合わせた。混合物を2時間撹拌した。EtOAc(100mL)を加えた。pH約9になるまで、絶えず撹拌しながら10M NaOHを加えた。有機層を抽出し、廃棄した。水層をDCM(10mL)でpH約2に酸性化した。生成物が沈殿し(crashed out)、これを濾過し、乾燥させて、表題化合物(3.5g)を白色の固体として得た。
【0202】
調製例3
4−(4−ブロモベンジル)−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸メチルエステル
【0203】
【化37】

t−ブチル2−アミノアセテート(113.7g、866.8mmol、1.0当量)のトルエン(1000mL)溶液を、ベンゾフェノン(157.9g、866.5mmol、1.0当量)および4−メチルベンゼンスルホン酸(14.9g、86.5mmol、0.1当量)と合わせた。得られた溶液を一晩加熱還流した。次いで混合物を減圧中で濃縮して600mLとした。混合物を水/氷浴で15℃に冷却した。生成物が沈殿し、固体を濾過によって集めた。固体を石油エーテル(5×150mL)で洗浄して、t−ブチル2−(ジフェニルメチレンアミノ)アセテート(125g)を白色の固体として得た。
【0204】
窒素中でパージし、維持しておいたフラスコに、このアセテート(80g、265.4mmol、1.0当量)のTHF(500mL)溶液を入れた。これに続いて、−30℃で撹拌しながらLiHMDS(268.3mL、1.1当量、1.1M)を滴下によって加えた。得られた溶液を、液体窒素浴において−30〜0℃で4時間撹拌した。これに、−30℃で撹拌しながら、1−ブロモ−4−(ブロモメチル)ベンゼン(67.7g、270.9mmol、1.0当量)のTHF(200mL)溶液を滴下によって加えた。得られた溶液を室温でさらに1時間撹拌した。次いで水(500mL)を加えて反応をクエンチした。得られた溶液をEtOAcで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を飽和NaCl水溶液(2×300mL)で洗浄した。混合物を無水NaSOで乾燥させ、減圧中で濃縮して、t−ブチル3−(4−ブロモフェニル)−2−(ジフェニルメチレンアミノ)プロパノエート(115g)を黄色の固体として得た。この固体(115g、148.6mmol、1.0当量)のHCl/HO(6N)(300mL)溶液を一晩加熱還流した。得られた混合物を減圧中で濃縮し、粗生成物をEtOAcで洗浄して、2−アミノ−3−(4−ブロモフェニル)−プロパン酸塩酸塩(52.7g)を白色の固体として得た。
【0205】
このプロパン酸塩酸塩(52.7g、140.9mmol、1.0当量)のTHF(200mL)溶液を、NaOH(15g、375.0mmol、2.0当量)の水(200mL)溶液、および(Boc)O(43g、197.0mmol、1.1当量)と合わせた。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。次いで混合物を減圧中で濃縮し、AcOHでpHを5に調整した。得られた溶液をEtOAcで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を水(1×300mL)および飽和NaCl水溶液(1×300mL)で洗浄し、次いで減圧中で濃縮した。粗生成物を石油エーテルで洗浄して、3−(4−ブロモフェニル)−2−(tert−ブトキシカルボニル)プロパン酸(45g)を得た。
【0206】
H−NMR (300 MHz,CDCl): δ(ppm) = 8.37 (1H,s),7.45(2H,d,J=5Hz),7.08 (2H,d,J=9Hz),4.97 (1H,d),4.62 (1H,m),3.02−3.22 (2H,d),1.40 (9H,s)。
【0207】
このプロパン酸(45g、117.7mmol、1.0当量)のDCM(400mL)溶液を、N−メトキシメタンアミン塩酸塩(15.3g、156.9mmol、1.2当量)、EDC・HCl(30.1g、157.0mmol、1.2当量)、HOBT(21.2g、156.9mmol、1.2当量)、およびトリエチルアミン(30mL)と合わせた。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。次いで水(300mL)を加えて反応をクエンチした。得られた混合物を2Mクエン酸(2×200mL)および飽和NaHCO(1×200mL)で洗浄し、次いで無水MgSOで乾燥させ、減圧中で濃縮して、t−ブチル3−(4−ブロモフェニル)−1−(メトキシ(メチル)アミノ)−1−オキソプロパン−2−イルカルバメート(26g)を白色の固体として得た。
【0208】
このカルバメート(26g、66.5mmol、1.0当量)のTHF(200mL)溶液に、0℃で撹拌しながら、プロピルマグネシウムブロミド(29.7g、201.6mmol、3.0当量)のTHF(200mL)溶液を滴下によって加えた。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。次いでNHCl水溶液(200mL)を加えて反応をクエンチした。得られた溶液をEtOAcで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を飽和NaHCO(200mL)および飽和NaCl水溶液(200mL)で洗浄し、次いで無水MgSOで乾燥させた。残渣を石油エーテル/EtOAc(5:1)を用いてシリカゲルカラムにかけて、t−ブチル1−(4−ブロモフェニル)−3−オキソヘキサン−2−イルカルバメート(14g)を白色の固体として得た。
【0209】
H−NMR (300 MHz,CDCl): δ(ppm) = 7.43(2H,d,J=6Hz),7.04 (2H,d,J=9Hz),5.13 (1H,d),4.53(1H,m),2.87−3.11 (2H,d),2.42 (2H,t),1.59 (2H,m),1.43 (9H,s),0.9 (3H,t)。
【0210】
このカルバメート(8.0g、21.2mmol、1.0当量)のエーテル(100mL)溶液をフラスコに入れ、室温で5時間HCLガスを導入した。得られた混合物を減圧中で濃縮して、粗製の2−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)ヘキサン−3−オン塩酸塩(7.2g)を白色の固体として得た。この固体(7.2g、1.0当量)のTHF(100mL)溶液およびメチル2−クロロ−2−オキソアセテート(2.9g、1.0当量)を、撹拌しながら滴下したトリエチルアミン(4.7g、2.0当量)と合わせた。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。次いで水(200mL)を加えて反応をクエンチした。得られた溶液をEtOAcで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を飽和NaCl水溶液(1×100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。残渣を石油エーテル/EtOAc(5:1)を用いてシリカゲルカラムにかけて、メチル2−(1−(4−ブロモフェニル)−3−オキソヘキサン−2−イルアミノ)−2−オキソアセテート(4.7g)を白色の固体として得た。
【0211】
このオキソアセテート(4.7g、13.0mmol、1.0当量)の三塩化ホスホリル(30.3g)溶液を、油浴において130℃で2時間撹拌した。次いで水/氷(100mL)を加えて反応をクエンチした。炭酸水素ナトリウムでpHを9に調整した。得られた溶液をEtOAcで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を飽和NaCl水溶液(2×200mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、減圧中で濃縮した。残渣をEtOAc/石油エーテル(1:10)を用いてシリカゲルカラムにかけて、表題化合物(3.2g)を淡黄色の固体として得た。ES m/z: [M+H] 339。
【0212】
H−NMR (300 MHz,CDCl): δ(ppm) = 7.42 (2H,dd,J=3,3Hz),7.12(2H,d,J=9Hz),3.96 (3H,s),3.86 (2H,s),2.64 (2H,t),1.67 (2H,m),0.91 (3H,t)。
【0213】
調製例4
5−プロピル−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸
【0214】
【化38】

4−(4−ブロモベンジル)−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸メチルエステル(500.0mg、1474μmol)、(テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸(336mg、1.8mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(85.2mg、73.7μmol)、1M NaOH水溶液(4.7mL、4.7mmol)、およびMeOH(7.2mL、177mmol)からなる溶液を、マイクロ波装置において90℃で2時間加熱した。pH7になるまで6M HCl水溶液を加えた。混合物を減圧中で濃縮した。濃縮物をEtOAc(2×15mL)および1M HCl水溶液(10mL)で抽出した。有機抽出物を合わせてNaSOで乾燥させ、濾過し、減圧中で濃縮して、表題化合物(540mg)を得た。
【0215】
5−エトキシ−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸、ならびに4−プロピル−5−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸および4−エトキシ−5−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸などの化合物は、同様にして、または当該分野において周知である技術によって調製することができる。例えば、Rが−O−C1〜5アルキルである化合物(例えば、5−エトキシ−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸)は、Thalhammerら(2009年)Tetrahedron Letters 50巻:1045〜1047頁およびTussetschlaegerら(2006年)Z. Naturforsch 61b:420〜426頁に記載の方法によって生成することができる。
【0216】
(実施例1)
(2R,3R)−2−ヒドロキシ−4−フェニル−3−({5−プロピル−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルメチル]−オキサゾール−2−カルボニル}アミノ)酪酸
【0217】
【化39】

5−プロピル−4−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]オキサゾール−2−カルボン酸(600mg、1mmol1)、(2R,3R)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸エチルエステル・HCl(560mg、2.2mmol)、HATU(820mg、2.2mmol)、DIPEA(939μL、5.4mmol)、およびDMF(8mL)からなる溶液を調製し、一晩撹拌した。EtOAc(20mL)および1M HCl水溶液(10mL)を加えた。有機層を抽出し、NaSOで乾燥させ、濾過し、減圧中で濃縮して、粗製の中間体を得、次いでこれをMeOH(5mL)および1M NaOH水溶液(5mL)に溶解させた。3時間後、混合物をAcOH(2mL)で酸性化し、減圧中で濃縮した。逆相HPLCによって、表題化合物(30mg、純度92%)ならびに(2S,3R)−2−ヒドロキシ−4−フェニル−3−({5−プロピル−4−[2’−(1h−テトラゾール−5−イル)−ビフェニル−4−イルメチル]−オキサゾール−2−カルボニル}アミノ)酪酸(4mg、純度96%)が得られた。両方の化合物について、MS m/z: [M+H]3130の計算値,567.23; 実測値567.6。
【0218】
(実施例2)
上記の実施例において記載した手順に従って、適当な出発物質および試薬を代わりに用いて、下記の式を有する化合物IIa−1〜IIa−18およびIIIa−1〜IIIa−18をまた調製することができる。
【0219】
【化40−1】

【0220】
【化40−2】

調製例5
4−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸
【0221】
【化41】

表題化合物は、保護されたスルホンアミドを使用し、続いて脱保護ステップを踏んで、調製例4と同様の方法で調製することができる。
【0222】
4−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)−5−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸、5−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)−4−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸、および5−(2’−アセチルスルファモイルビフェニル−4−イルメチル)−4−エトキシオキサゾール−2−カルボン酸などの化合物は、同様の方法で調製することができる。
【0223】
(実施例3)
上記実施例に記載の手順に従い、適切な出発材料および試薬を代わりに用いて、次式を有する化合物IIb−1〜IIb−18およびIIIb−1〜IIIb−18も調製することができる。
【0224】
【化42−1】

【0225】
【化42−2】

(実施例4)
上記実施例に記載の手順に従い、適切な出発材料および試薬を代わりに用いて、次式を有する化合物IIc−1〜IIc−21およびIIIc−1〜IIIc−21も調製することができる。
【0226】
【化43−1】

【0227】
【化43−2】

調製例6
5−プロピル−4−{6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]ピリジン−3−イルメチル}オキサゾール−2−カルボン酸
【0228】
【化44】

表題化合物は、次のように調製することができる。(テトラゾール−5−イル)フェニルボロン酸(1.0mmol)、4−(6−ブロモピリジン−3−イルメチル)−5−プロピルオキサゾール−2−カルボン酸エチルエステル(809μmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(40μmol)、1.0M NaOH水溶液(mmol)、およびMeOH(100mmol)からなる溶液を、手短にスパージし、窒素中でふたをし、マイクロ波装置において90℃で2時間加熱する。次いで混合物を濾過してPdを除去する(MeOHですすぐ)。次いで濾液を濃縮してMeOHを除去し、次いでEtOAcで抽出する。有機層を1N NaOHで抽出する。水層を合わせて1N HClでpH3〜4に酸性化し、EtOAcで抽出する。有機相をMgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して表題化合物を得るが、これをそれ以上精製せずに使用することができる。
【0229】
4−プロピル−5−{6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]ピリジン−3−イルメチル}オキサゾール−2−カルボン酸、5−エトキシ−4−{6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]ピリジン−3−イルメチル}オキサゾール−2−カルボン酸、4−エトキシ−5−{6−[2−(1H−テトラゾール−5−イル)フェニル]ピリジン−3−イルメチル}オキサゾール−2−カルボン酸などの他の化合物は、同様の方法で調製することができる。
【0230】
(実施例5)
上記実施例に記載の手順に従い、適切な出発材料および試薬を代わりに用いて、次式を有する化合物IId−1〜IId−22およびIIId−1〜IIId−22も調製することができる。
【0231】
【化45−1】

【0232】
【化45−2】

(実施例6)
上記実施例に記載の手順に従い、適切な出発材料および試薬を代わりに用いて、次式を有する化合物IIe−1〜IIe−4およびIIIe−1〜IIIe−4も調製することができる。
【0233】
【化46−1】

【0234】
【化46−2】

(実施例7)
上記実施例に記載の手順に従い、適切な出発材料および試薬を代わりに用いて、次式を有する化合物IIf−1〜IIf−7およびIIIf−1〜IIIf−7も調製することができる。
【0235】
【化47−1】

【0236】
【化47−2】

(実施例8)
上記実施例に記載の手順に従い、適切な出発材料および試薬を代わりに用いて、次式を有する化合物IIg−1〜IIg−6およびIIIg−1〜IIIg−6も調製することができる。
【0237】
【化48−1】

【0238】
【化48−2】

(実施例9)
上記実施例に記載の手順に従い、適切な出発材料および試薬を代わりに用いて、次式を有する化合物IIh−1およびIIIh−1も調製することができる。
【0239】
【化49−1】

【0240】
【化49−2】

アッセイ1
ATおよびAT放射性リガンド結合アッセイ
これらのインビトロアッセイを使用して、試験化合物がATおよびAT受容体に結合する能力を評価した。
【0241】
ヒトAT受容体またはヒトAT受容体を発現している細胞からの膜調製
クローン化ヒトAT受容体またはAT受容体を各々安定的には発現しているチャイニーズハムスター卵巣(CHO−K1)由来の細胞系を、5%COの加湿したインキュベーター中で37℃にて、10%ウシ胎児血清、10μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシン、および500μg/mlのジェネテシンを補充したHAMのF12培地中で増殖させた。AT受容体発現細胞を、さらに100nMのPD123,319(ATアンタゴニスト)の存在下で増殖させた。培養物が80〜95%コンフルエントに達したとき、細胞をPBS中で徹底的に洗浄し、5mMのEDTAで脱離させた。細胞を遠心分離によってペレット化し、MeOH−ドライアイス中で急速冷凍し、さらに使用するまで−80℃で保存した。
【0242】
膜調製のために、細胞ペレットを、溶解緩衝液(25mMのTris/HCl、pH7.5、4℃、1mMのEDTA、および完全プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤1錠、50mLの緩衝液毎に2mMのEDTA(Rocheカタログ番号1697498、Roche Molecular Biochemicals、Indianapolis、IN))に再懸濁させ、氷上の密接にフィットしたDounceガラスホモジナイザー(10ストローク)を使用してホモジナイズした。ホモジネートを1000×gで遠心分離し、上清を集め、20,000×gで遠心分離した。最終ペレットを、膜緩衝液(75mMのTris/HCl、pH7.5、12.5mMのMgCl、0.3mMのEDTA、1mMのEGTA、250mMのスクロース、4℃)に再懸濁させ、20Gゲージ針を通す押出しによってホモジナイズした。膜懸濁液のタンパク質濃度を、Bradford(1976年)Anal Biochem. 72巻:248〜54頁に記載されている方法によって決定した。膜をMeOH−ドライアイス中で急速冷凍し、さらに使用するまで−80℃で保存した。
【0243】
ヒトATアンジオテンシン受容体およびヒトATアンジオテンシン受容体に対する化合物の親和性を決定するためのリガンド結合アッセイ
アッセイ緩衝液(50mMのTris/HCl、pH7.5、20℃、5mMのMgCl、25μMのEDTA、0.025%BSA)中、ヒトAT受容体を含有する膜については0.2μgの膜タンパク質、またはヒトAT受容体を含有する膜については2μgの膜タンパク質を有する100μLの総アッセイ容量で、96ウェルAcrowellフィルタプレート(Pall Inc.、カタログ番号5020)において結合アッセイを行った。リガンドのK値を決定するための飽和結合研究は、N末端ユウロピウム標識アンジオテンシン−II([Eu]AngII、H−(Eu−N)−Ahx−Asp−Arg−Val−Tyr−Ile−His−Pro−Phe−OH;PerkinElmer、Boston、MA)を0.1nM〜30nMの範囲の8種の異なる濃度範囲で使用して行った。試験化合物のpK値を決定するための置換アッセイを、2nMの[Eu]AngIIおよび1pM〜10μMの範囲の11種の異なる濃度の薬物で行った。薬物をDMSO中1mMの濃度まで溶解し、そこからアッセイ緩衝液中に段階希釈した。10μMの非標識アンジオテンシン−IIの存在下で非特異的結合を決定した。アッセイ物を、暗所で室温または37℃にて120分間インキュベートし、Acrowellフィルタプレートを通して急速濾過、それに続くWaters濾過マニフォールドを使用した200μLの氷冷の洗浄緩衝液(50mMのTris/HCl、pH7.5、4℃、5mMのMgCl)による3度の洗浄によって結合反応を終わらせた。プレートをタップ乾燥し、50μlのDELFIA増強溶液(PerkinElmerカタログ番号4001−0010)と共に、振盪機上で室温にて5分間インキュベートした。フィルターに結合した[Eu]AngIIを、時間分解蛍光(TRF)を使用してFusionプレートリーダー(PerkinElmer)上で直ちに定量化した。結合データを、一部位競合について3パラメータモデルを使用してGraphPad Prism ソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)で非線形回帰分析によって分析した。BOTTOM(最小曲線)を、10μMのアンジオテンシンIIの存在下で決定するように、非特異的結合についての値に固定した。薬物についてのK値を、Chengら、(1973年)Biochem Pharmacol. 22巻(23号):3099〜108頁に記載されているCheng−Prusoff式に従って、観察したIC50値および[Eu]AngIIのK値から計算した。AT受容体と比較したAT受容体に対する試験化合物の選択性を、AT/ATの比として計算した。試験化合物の結合親和性を、K値の負の十進法対数(pK)として表した。
【0244】
このアッセイにおいて、より高いpK値は、試験化合物が試験した受容体に対してより高い結合親和性を有することを示す。このアッセイにおいて試験した本発明の化合物は、AT受容体において約7.0以上のpKを有することが予想され、例えば、実施例1の化合物は、AT受容体において7.5より高いpKを有する。
【0245】
アッセイ2
ヒトNEPおよびラットNEP、ならびにヒトACEにおける阻害剤の効力(IC50)の定量化のためのインビトロアッセイ
ヒトNEPおよびラットNEPならびにヒトACEにおける化合物の阻害活性を、下記で説明するようにインビトロアッセイを使用して決定した。
【0246】
ラット腎臓からのNEP活性の抽出
ラットNEPを、成体Sprague−Dawleyラットの腎臓から調製した。全腎臓を、冷たいPBS中で洗浄し、氷冷の溶解緩衝液(1%Triton X−114、150mMのNaCl、50mMのTris、pH7.5;Bordier(1981年)J. Biol. Chem. 256巻:1604〜1607頁)中で腎臓1グラムにつき5mLの緩衝液の比で提示した。試料を、ポリトロン手持ち式組織グラインダーを使用して氷上でホモジナイズした。ホモジネートを、スイングバケットローター中で3℃にて5分間1000×gで遠心分離した。ペレットを、20mLの氷冷の溶解緩衝液に再懸濁させ、氷上で30分間インキュベートした。次いで、試料(15〜20mL)を25mLの氷冷のクッション緩衝液(6%w/vスクロース、50mM、pH7.5、Tris、150mMのNaCl、0.06%、Triton X−114)上に層状にし、37℃に3〜5分間加熱し、スイングバケットローター中で室温にて3分間1000×gで遠心分離した。2つの上層を吸引し、富化した膜画分を含有する粘稠性の油性沈殿物を残した。グリセロールを50%の濃度まで加え、試料を−20℃で保存した。タンパク質濃度は、BSAを標準物質としてBCA検出システムを使用して定量化した。
【0247】
酵素阻害アッセイ
組換えヒトNEPおよび組換えヒトACEは、商業的に得た(R&D Systems、Minneapolis、MN、各々、カタログ番号1182−ZNおよび929−ZN)。蛍光発生ペプチド基質Mca−BK2(Mca−Arg−Pro−Pro−Gly−Phe−Ser−Ala−Phe−Lys(Dnp)−OH;Johnsonら、(2000年)Anal. Biochem. 286巻:112〜118頁)は、ヒトNEPおよびACEアッセイのために使用し、Mca−RRL(Mca−DArg−Arg−Leu−(Dnp)−OH;Medeirosら、(1997年)Braz. J. Med. Biol. Res. 30巻:1157〜1162頁)は、ラットNEPアッセイのために使用した(両方ともAnaspec、San Jose、CAから)。
【0248】
アッセイは、アッセイ緩衝液(50mMのTris/HCl、25℃、100mMのNaCl、0.01%Tween−20、1μMのZn、0.025%BSA)中で10μMの濃度で各々の蛍光発生ペプチドを使用して384ウェルの白色不透明プレート中で室温にて行った。ヒトNEPおよびヒトACEを、5μMのMca−BK2の定量的タンパク質分解を室温にて20分以内でもたらす濃度で使用した。ラットNEP酵素調製物を、3μMのMca−RRLの定量的タンパク質分解を室温にて20分以内でももたらす濃度で使用した。
【0249】
試験化合物をアッセイ緩衝液中10μM〜20pMの12の濃度に希釈した。25μLの酵素を、12種の濃度の各々の12.5μLの試験化合物に加えることによってアッセイを開始した。12.5μLの蛍光原基質を加えて反応を開始させる前に、試験化合物を10分間酵素と平衡化させた。20分のインキュベーション後に10μLの3.6%氷酢酸を加えることによって反応を終了させた。
【0250】
スルフヒドリルを含んでいる試験化合物については、試験化合物を、400μMの濃度のトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(Thermo Scientific、イリノイ州ロックフォード)(TCEP)を含有するアッセイ緩衝液に希釈することができる。次いで室温で40分間、試験化合物が還元されるようにした後、酵素を加える。次いで20分間、試験化合物が酵素と平衡になるようにした後、蛍光発生物質を加える。反応を上記のように終了させる。
【0251】
蛍光光度計において、それぞれ320nmおよび405nmに設定した励起波長および発光波長でプレートを読み取った。未加工データ(相対的蛍光ユニット)は、3種の標準的なNEP阻害剤およびACE阻害剤を各々使用して平均の高い測定値(阻害なし、100%酵素活性)および平均の低い測定値(完全な阻害、最も高い阻害剤濃度、0%酵素活性)からの活性%に規準化した。正規化データの非線形回帰は、一部位競合モデル(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を使用して行った。データはpIC50値として報告した。プロドラッグである化合物は例外として、このアッセイで試験した本発明の化合物は、NEP酵素についてのpIC50が約6.0以上であることが予想される。例えば、実施例1の化合物は、NEP酵素についてのpIC50が6.0より大きい。
【0252】
アッセイ3
麻酔下のラットにおけるACE、AT、およびNEP活性についての薬力学的(PD)アッセイ
正常圧の雄性Sprague−Dawleyラットを、120mg/kg(i.p.)のイナクチンで麻酔する。麻酔すると、頸静脈、頸動脈(PE50チューブ)および膀胱(URI−1尿シリコーンカテーテル)をカニューレ処置し、気管切開を行い(Teflon(登録商標)針、サイズ14ゲージ)、自発呼吸を容易にさせる。次いで、動物に60分の安定化期間を与え、その間ずっと5mL/kg/hの生理食塩水(0.9%)の連続注入を続け、水分補給を続け、尿の産生を確実にする。加温パッドを使用することによって実験を通して体温を維持する。60分の安定化期間の終わりに、動物に、2用量のアンジオテンシン(ACE阻害活性についてAngI、1.0μg/kg;AT受容体アンタゴニスト活性についてAngII、0.1μg/kg)を15分の間隔を開けて静脈内(i.v.)投与する。アンジオテンシン(AngIまたはAngII)の第2の用量の15分後に、動物をビヒクルまたは試験化合物で処置する。5分後に、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP;30μg/kg)のボーラスi.v.注射でさらに動物を処置する。(事前に重さを計ったエッペンドルフチューブ中への)蓄尿をANP処置の後直ちに開始し、60分間続ける。蓄尿の30分目および60分目に、動物をアンジオテンシン(AngIまたはAngII)で再曝露する。Notocordシステム(Kalamazoo、MI)を使用して血圧測定を行う。尿試料を、cGMPアッセイのために使用するまで−20℃で冷凍する。尿cGMP濃度を、市販のキット(Assay Designs、Ann Arbor、Michigan、カタログ番号901−013)を使用して酵素免疫アッセイによって決定する。尿容量を重量測定法で決定する。尿のcGMP排出量を、尿量および尿cGMP濃度の積として計算する。ACE阻害またはAT拮抗は、各々AngIまたはAngIIに対する昇圧反応の%阻害を定量化することによって評価する。NEP阻害は、ANPが誘発する尿cGMP排出量の上昇の増強を定量化することによって評価する。
【0253】
アッセイ4
高血圧で意識のあるSHRモデルにおける降圧作用のインビボ評価
自然発症高血圧ラット(SHR、14〜20週齢)は、試験場所へ到着すると最低48時間順応させる。試験の7日前に、動物は、ナトリウム欠乏SHR(SD−SHR)については0.1%のナトリウムを含有する食事で制限された低塩分食で飼育し、またはナトリウム豊富SHR(SR−SHR)については普通の食事で飼育する。試験の2日前に、動物に、各々血圧測定および試験化合物の送達のために選択したシリコーンチューブ(サイズ0.020ID×0.037OD×0.008壁)にPE10ポリエチレンチューブを介して連結した頸動脈および頸静脈(PE50ポリエチレンチューブ)中へと外科的にカテーテルを実装する。適当な手術後の処置によって動物を回復させる。実験の日に、動物をそれらのケージに入れ、スイベルを介して較正圧力トランスデューサーにカテーテルを連結する。1時間の順応後、ベースライン測定を少なくとも5分の期間に亘り行う。次いで、動物に上昇する蓄積量のビヒクルまたは試験化合物を60分毎にi.v.投与し、それに続いて各投与後0.3mLの生理食塩水でカテーテルをきれいにする。研究期間中、Notocordソフトウェア(Kalamazoo、MI)を使用してデータを連続記録し、電子デジタル信号として記録する。いくつかの研究において、単一の静脈内または経口(胃管栄養)投与の作用を、投与後少なくとも6時間モニターする。測定するパラメーターは、血圧(収縮期、拡張期および平均動脈圧)ならびに心拍数である。
【0254】
アッセイ5
高血圧で意識のあるDOCA塩ラットモデルにおける降圧作用のインビボ評価
CDラット(雄性、成体、200〜300グラム、Charles River Laboratory、USA)は、試験場所に到着すると高塩分食で飼育する前に最低48時間順応させる。高塩分食の開始1週間後に、DOCA塩ペレット(100mg、21日の放出時間、Innovative Research of America、Sarasota、FL)を皮下に埋込し、片側腎摘出術を行う。DOCA塩ペレットの埋込後の16日目または17日目に、動物の頸動脈および頸静脈へとカテーテルをPE50ポリエチレンチューブで外科的に埋込する。それを次に、各々血圧測定および試験化合物の送達のために、PE10ポリエチレンチューブを介して選択したシリコーンチューブ(サイズ0.020ID×0.037OD×0.008壁)に連結した。適当な手術後の処置によって動物を回復させる。
【0255】
実験の日に、各動物はそのケージ中に入れておき、スイベルを介して較正圧力トランスデューサーに連結する。1時間の順応後、ベースライン測定を少なくとも5分の期間に亘り行う。次いで、動物に上昇する蓄積量のビヒクルまたは試験化合物を60分毎にi.v.投与し、それに続いて各投与後0.3mLの食塩水でカテーテルを流す。いくつかの研究において、単一の静脈内または経口(胃管栄養)投与の作用を試験し、投与後少なくとも6時間モニターする。研究期間中、Notocordソフトウェア(Kalamazoo、MI)を使用してデータを連続記録し、電子デジタル信号として記憶する。測定するパラメーターは、血圧(収縮期、拡張期および平均動脈圧)ならびに心拍数である。累積的投与および単一の投与について、平均動脈圧(MAP、mmHg)または心拍数(HR、bpm)の変化百分率を、アッセイ4について記載した通りに決定する。
【0256】
本発明を特定の態様またはその実施形態に関して説明してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、または等価物で代用することができることを当業者であれば理解するであろう。さらに、適用される特許の成文法および規程が許す範囲で、本明細書において引用した全ての公開資料、特許および特許出願は、各書類が本明細書において参照により個々に組み込まれたのと同一程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化50】

[式中、Zは、
【化51】

から選択されるオキサゾールであり、
Arは、
【化52】

から選択され、
は、−COOR、−SONHC(O)R1a、テトラゾリル、
【化53】

から選択され、
1aは、−C1〜6アルキル、−C0〜6アルキレン−OR、−C3〜7シクロアルキル、−C0〜5アルキレン−NRR、ピリジル、イソオキサゾリル、メチルイソオキサゾリル、ピロリジニル、モルホリニル、およびハロによって任意選択で置換されているフェニルであり、各Rは、Hおよび−C1〜6アルキルから独立に選択され、
aは、0、1または2であり、RはFであり、
は、−C2〜5アルキルおよび−O−C1〜5アルキルから選択され、
は、−CH−SR4a、−CH−N(OH)C(O)H、−CH(R4b)C(O)NH(OH)、および−CH(R4b)COOR4cから選択され、R4aは、Hまたは−C(O)−C1〜6アルキルであり、R4bは、Hまたは−OHであり、R4cは、Hまたは−C1〜6アルキルであり、
は、−C1〜6アルキル、−CH−フラニル、−CH−チオフェニル、ベンジル、および1個または複数のハロ、−CH、または−CF基で置換されているベンジルから選択され、
Ar中の各環は、−OH、−C1〜6アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−CN、ハロ、−O−C1〜6アルキル、−S−C1〜6アルキル、−S(O)−C1〜6アルキル、−S(O)−C1〜4アルキル、−フェニル、−NO、−NH、−NH−C1〜6アルキル、および−N(C1〜6アルキル)から独立に選択される1〜3個の置換基によって任意選択で置換されており、各アルキル、アルケニル、およびアルキニルは、1〜5個のフルオロ原子によって任意選択で置換されている]
または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
Zが
【化54】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arが
【化55】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、−SONHC(O)CH、−SONHC(O)CHCH、−SONHC(O)OCH、−SONHC(O)OCHCH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)CHOH、−SONHC(O)CH(CH)OH、−SONHC(O)C(CHOH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)(CHOCH、−SONHC(O)−シクロプロピル、−SONHC(O)NH(CH)、−SONHC(O)N(CH、−SONHC(O)NH(CHCH)、−SONHC(O)C(CHNH、−SONHC(O)−2−ピリジル、−SONHC(O)−4−ピリジル、−SONHC(O)−5−イソオキサゾリル、−SONHC(O)−3−イソオキサゾリル−5−メチル、−SONHC(O)−1−ピロリジル、−SONHC(O)−4−モルホリニル、−SONHC(O)フェニル、−SONHC(O)−2−フルオロフェニル、1H−テトラゾール−5−イル、
【化56】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、プロピル、エチル、ブチル、またはエトキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、−CHSH、−CHN(OH)C(O)H、−CHC(O)NH(OH)、−CH(OH)C(O)NH(OH)、−CH(OH)COOH、または−CHCOOHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、−CH−S−C(O)CH、−CH(OH)COOCH、または−CHCOOCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、i−ブチル、−CH−フラン−2−イル、−CH−チオフェン−3−イル、ベンジル、2−ブロモベンジル、2−クロロベンジル、2−フルオロベンジル、3−フルオロベンジル、4−フルオロベンジル、2−メチルベンジル、または2−トリフルオロメチルベンジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式II
【化57】

を有し、Arは、
【化58】

であり、
は、−SONHC(O)CH、−SONHC(O)CHCH、−SONHC(O)OCH、−SONHC(O)OCHCH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)CHOH、−SONHC(O)CH(CH)OH、−SONHC(O)C(CHOH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)(CHOCH、−SONHC(O)−シクロプロピル、−SONHC(O)NH(CH)、−SONHC(O)N(CH、−SONHC(O)NH(CHCH)、−SONHC(O)C(CHNH、−SONHC(O)−2−ピリジル、−SONHC(O)−4−ピリジル、−SONHC(O)−5−イソオキサゾリル、−SONHC(O)−3−イソオキサゾリル−5−メチル、−SONHC(O)−1−ピロリジル、−SONHC(O)−4−モルホリニル、−SONHC(O)フェニル、−SONHC(O)−2−フルオロフェニル、1H−テトラゾール−5−イル、
【化59】

であり、
は、プロピル、エチル、ブチル、またはエトキシであり、
は、−CHSH、−CH−S−C(O)CH、−CHN(OH)C(O)H、−CHC(O)NH(OH)、−CH(OH)C(O)NH(OH)、−CH(OH)COOH、CH(OH)COOCH、−CHCOOH、または−CHCOOCHであり、
は、i−ブチル、−CH−フラン−2−イル、−CH−チオフェン−3−イル、ベンジル、2−ブロモベンジル、2−クロロベンジル、2−フルオロベンジル、3−フルオロベンジル、4−フルオロベンジル、2−メチルベンジル、または2−トリフルオロメチルベンジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
式IV
【化60】

を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Zが
【化61−1】

であり、
Arが、
【化61−2】

であり、
が、−SONHC(O)CH、−SONHC(O)CHCH、−SONHC(O)OCH、−SONHC(O)OCHCH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)CHOH、−SONHC(O)CH(CH)OH、−SONHC(O)C(CHOH、−SONHC(O)CHOCH、−SONHC(O)(CHOCH、−SONHC(O)−シクロプロピル、−SONHC(O)NH(CH)、−SONHC(O)N(CH、−SONHC(O)NH(CHCH)、−SONHC(O)C(CHNH、−SONHC(O)−2−ピリジル、−SONHC(O)−4−ピリジル、−SONHC(O)−5−イソオキサゾリル、−SONHC(O)−3−イソオキサゾリル−5−メチル、−SONHC(O)−1−ピロリジル、−SONHC(O)−4−モルホリニル、−SONHC(O)フェニル、−SONHC(O)−2−フルオロフェニル、1H−テトラゾール−5−イル、
【化62】

であり、
が、プロピル、エチル、ブチル、またはエトキシであり、
4bが、Hまたは−OHであり、R4cが、Hまたは−CHであり、
が、i−ブチル、−CH−フラン−2−イル、−CH−チオフェン−3−イル、ベンジル、2−ブロモベンジル、2−クロロベンジル、2−フルオロベンジル、3−フルオロベンジル、4−フルオロベンジル、2−メチルベンジル、または2−トリフルオロメチルベンジルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項13】
利尿剤、βアドレナリン作動性受容体遮断剤、カルシウムチャネル遮断剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、AT受容体アンタゴニスト、ネプリライシン阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、プロスタグランジン、抗脂質剤、抗糖尿病薬、抗血栓剤、レニン阻害剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト、エンドセリン変換酵素阻害剤、アルドステロンアンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシン阻害剤、バソプレシン受容体アンタゴニスト、およびこれらの組合せからなる群から選択される第2の治療剤をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物の調製のためのプロセスであって、
(a)式1の化合物を式2の化合物とカップリングさせて、
【化63】


【化64】

を有する化合物を生成し
[ここで、Arは、Ar−R1*を表し、R1*は、Rまたは保護された形態のRであり、R4*は、Rまたは保護された形態のRである]、そしてR1*が、保護された形態のRであり、かつ/またはR4*が、保護された形態のRであるとき、前記生成物を任意選択で脱保護するステップと、
(b)R1*が、保護された形態のRであり、かつ/またはR4*が、保護された形態のRであるとき、ステップ(a)の前記生成物を脱保護して、式Iの化合物を生成するステップと
を含むプロセス。
【請求項15】
【化65】

を含む群から選択され、
式中、Arは、Ar−R1*であり、R1*は、−SONH−Pまたはテトラゾリル−Pであり、R4*は、−CH−S−P、−CH−N(O−P)−C(O)H、−CH(R4b)C(O)NH(O−P)、または−CH(R4b)COO−Pであり、Pは、カルボキシ保護基であり、Pは、チオール保護基であり、Pは、テトラゾール保護基であり、Pは、ヒドロキシル保護基であり、Pは、スルホンアミド保護基である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物、またはその塩の合成において有用な中間体。
【請求項16】
治療において使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
高血圧または心不全の治療のための、請求項16に記載の化合物。

【公表番号】特表2012−533626(P2012−533626A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521674(P2012−521674)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/041908
【国際公開番号】WO2011/011232
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】