説明

二重化高信頼通信方法および装置

【課題】
既存の通信制御システムやOS、通信レイヤを無改造、無改修のまま、既存の専用システムまたは、汎用的な通信アプリケ−ションの通信二重化を実現する。
【解決手段】
汎用的な通信アプリケ−ションのメッセージを、仮想ネットワークインターフェースと、二重化通信制御デーモンと、二重化通信ミドルウェアによって複製して、異なるネットワークに同一のメッセージを転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク通信システムの後発的な通信高信頼化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを高信頼にする方法として、ネットワークを二重化する方法がある。この二重化には、一方のネットワーク障害発生時に他方のネットワークを稼動させるスタンバイ方式と、常に両ネットワークにおいて同じ通信メッセージを転送する方式に大別される。
【0003】
また、実装方法としては、通信ホスト以外のネットワーク機器であるハードウェアによって制御されるものと、通信ホスト自身に具備されるソフトウェアによって制御されるものに大別される。
【0004】
通信ホスト以外のネットワーク機器で制御される場合、通信ホストはネットワークの制御を行なう必要はなく二重化通信を意識する必要がない。これは通信ホストの改造が不要となる点ではメリットがあるが、二重化用のネットワークハードウェアの開発が必要となり、一般的にこのようなネットワークは、通常のネットワークより高価であり、また運用コストも高くなるという傾向がある。なお、かかるハードウェアによるネットワーク二重化は、金融や軍事等のミッションクリティカルなシステムで採用される場合が多い。
【0005】
これと比べて、通信ホストにおいては、ソフトウェア的にネットワークを二重化するには、当初から当該機能を具備している専用オペレーティングシステム(以下、OSという)の開発が必要となり、かかる専用OS上では、汎市場に流通している安価な用OS用アプリケーションは使えない。なぜなら、汎用OSの通信アプリケ−ションインターフェース(以下、APIという)を具備していないからである。
【0006】
また、通信ミドルウェアを使ったもう一つの方法としては、通信ミドルウェアによるものがある。当該ミドルウェアにおいて、常に両ネットワークにおいて同じ通信メッセージを転送する方式を実現したものとしては、非特許文献1に記載の通信ミドルウェア「NeXUS/Dlink」がある。当該ミドルウェアは、独自の通信APIを通信アプリケ−ションが利用することによって、送信側においては、1のメッセージを複製して異なる2つのネットワークに転送し、受信側においては、当該2つのネットワークから転送された先着メッセージを取り込み、後着メッセージを廃棄することで、ネットワークを二重化した高信頼な通信環境を提供するものであるが、本方式によっても独自のAPIを使用することから、汎用のOSで利用可能なアプリケーションの通信を二重化することはできない。
【0007】
従って、従来は、二重化ネットワークのメリットを享受する為には、高価な専用ネットワークを用意するか、あるいは専用OSまたは汎用OS上のミドルウェアで稼動する、専用通信アプリを開発しなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「NeXUS/Dlinkガイド&リファレンスソフトウェアマニュアル」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1の方法では、前述した様に、二重化による高信頼な通信を享受し得る通信アプリケ−ションは、必ず当該ミドルウェアの提供する通信アプリケ−ションインターフェースを利用しなければならず、既存システムで稼動中の通信アプリケ−ションをそのまま利用することはできない。
【0010】
また、一般に知られている既存の情報制御システムにおいては、既存の専用システムの通信アプリケ−ションを後発的にネットワーク二重化を行うことは困難であり、また、電子メ−ル、Webブラウザ、その他の一般的な通信アプリケ−ションを、後発的に二重化対応することはできない。
【0011】
また、一般的に、情報制御システムを高信頼な通信に対応させるためには既存のOSの通信レイヤを改造することが不可避である。
【0012】
上記の問題に鑑み、本発明は、既存の通信制御システムやOS、通信レイヤを改造、改修する必要なしに、既存の専用システムまたは汎用的な通信アプリケ−ションの通信を二重化できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の代表的な一実施形態例を以下に示す。
【0014】
本発明の二重化高信頼通信方法を実現する装置は、仮想ネットワークインターフェースと、二重化通信制御デーモンと、二重化通信ミドルウェアとを具備する。
【0015】
メッセージ送信側の通信装置の当該仮想ネットワークインターフェースは、通信アプリケ−ションのメッセージを、通信レイヤ2のメッセージとして作成した後に、当該メッセージををネットワークに送出しないで、通信レイヤ2からアプリケーション層で常時稼動する二重化通信制御デーモンに転送する。二重化通信制御デーモンは、二重化通信ミドルウェアのAPIで記述される一のアプリケーションとして振る舞い、二重化通信ミドルウェアを介することによって、当該通信レイヤ2のメッセージを2つ作成して、2つの異なるネットワークに転送する。
【0016】
一方、メッセージ送信側の通信装置の二重化通信ミドルウェアは、当該2つのネットワークから転送された2つのメッセージのうち、先着メッセージのみを取り込み、後着メッセージを廃棄し、当該先着メッセージのみを二重化通信制御デーモンに転送する。
【0017】
当該二重化通信制御デーモンは、前述とは逆の方向にメッセージを転送する。すなわち、当該受信したメッセージを、今度は通信レイヤ2の仮想ネットワークインターフェースに転送し、当該仮想ネットワークインターフェースは、当該メッセージをメッセージ送信側の通信装置の通信アプリケ−ションに転送することで、汎用OSの汎用通信アプリケーションによる通信が成功することになる。
【0018】
本発明は、通信レイヤ2の仮想ネットワークインターフェースと二重化通信制御デーモンのみが追加されており、これらはユーザ空間で動作するアプリケーションとして稼動するものであることより、OS、通信レイヤ、通信アプリケ−ションを無改造、無改修のままで、高信頼二重化通信を実現する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に因れば、稼動中の専用システムまたは汎用的な通信アプリケ−ションの通信を、既存の通信制御システムやOS、通信レイヤを改造、改修する必要なしに、後発的に高信頼化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明におけるシステム構成を説明する図である。
【図2】通信装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】通信装置のソフトウェア構成を示す図である。
【図4】二重化通信制御ミドルウェアの動作概要を示す図である。
【図5】本発明の高信頼多重化通信方法の概要を示す図である。
【図6】二重化通信制御デーモンの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明に必要となるテーブルを示す図である。
【図8】フックライブラリを具備した本発明の高信頼多重化通信方法の概要を示す図である。
【図9】多重化通信方法の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)第1の実施例
以下の実施例においては、通信AP173,二重化通信管理ミドルウェア172は、ソフトウェアであり、CPU102と協働して動作するものであり、本動作に関しては、以下説明を割愛する。
【0022】
また通信メッセージは、メモリ104上で通信バッファとして格納された領域で加工されるものとし、かかる通信メッセージの全体または一部は、メモリ104,CPU102,NIC112の間を、バス110を介して移動するものとする。
【0023】
図1は、本発明におけるシステム構成を説明する図である。
【0024】
通信装置1−1ないし1−2は、ローカルエリアネットワーク(以下、LANという)10−1、10−2に接続されており、通信装置2−1は、LAN20−1、20−2に接続されている。LAN10−1、20−1は広域ネットワーク(以下、WANという)30−1に接続され、LAN10−2、20−2はWAN30−2に接続されている。
【0025】
図2は通信装置1−1、1−2、2−1のハードウェア構成を示す図である。
【0026】
ネットワークインターフェースカード(以下NICという)112−1、112−2、CPU102、メモリ104、キーボード22やマウス24を制御する入出力コントローラ106、そしてモニターコントローラ108がバス110によって接続されている。NIC112−1、112−2は、前述のLAN10−1、10−2に接続されている。
【0027】
図3は通信装置1−1、1−2、2−1のメモリ104に格納されているソフトウェアの構成を示す図である。
【0028】
NIC112を制御するためのNIC制御ドライバ174、メッセージを指定された装置へネットワーク10を介して転送する二重化通信管理ミドルウェア172、及びモニタ−14とキーボード22とマウス24を制御する入出力装置制御ドライバ150が通信装置1−1、1−2、2−1のメモリ104に格納されている。
【0029】
仮想NIC制御ドライバ175は、通信装置内部で仮想NIC175の制御管理を行なうドライバである。
【0030】
仮想NIC175は、ソフトウェアによる仮想化技術を用いて、一般的なネットワークカードなどのネットワーク機器をエミュレ−ションする仕組みや、その仕組みによって実装されたソフトウェアである。
【0031】
仮想NIC175は、仮想インターフェースとも呼ばれるものであり、OSや通信アプリケ−ションは、物理的なコンピュ−タに装着されているLANカードと同様に仮想LANカードを認識し、扱う。
【0032】
本来、物理的なインターフェースを持たないマシン内のOSは、自身が物理的なLANカードを持っていると認識し、その物理的なLANカードに対して通信を行おうとする。実際には仮想LANカードに対してソフトウェア的に通信が行われているが、通信内容をトラップすることにより、OSは二重化通信制御デーモン176と通信することができる。
【0033】
本実施例では、通信アプリケ−ション(以下、APという)148は、UDP/TCP/IP通信を行なうためのソケット通信インターフェース(以下、ソケットAPIという)を通信手段として具備するものと想定するが、AP148の通信手段はソケットAPIに限定されるものではない。AP148、二重化通信制御デーモン176の間の通信は、送信キュー166、受信キュー170、NICまたは仮想NIC175を介して行われる。
【0034】
図4は、二重化通信管理ミドルウェア172の動作概要を示す図である。
【0035】
二重化通信管理ミドルウェア172は、独自の通信APインターフェース(以下、APIという)を提供する。当該APを具備した通信AP173は、当該通信AP間で通信を実施する。
【0036】
通信AP173が当該APIを使ってメッセージを送信すると、送信元の二重化通信管理ミドルウェア172は、そのメッセージの複製を作成し、共通の通信プロトコルを使って異なるNICを介して、通信相手のNICを介してメッセージを送達する。通信プロトコルとしては、TCP/UDP/IPが著名であり、本実施例ではこれを用いるが、本実施例で使用できる通信プロトコルをこれに限定するものではない。
【0037】
送信先の二重化通信管理ミドルウェア172は、この先着メッセージのみを取り込み、送信先通信APに当該先着メッセージを届け、後着メッセージを廃棄する。先着、後着の判断は、当該ミドルウェアがメッセージに通番を付与することで実現する。なお、通番については後述する。
【0038】
このように異なるネットワークに同一のメッセージを送信することで、一方のネットワークに障害が発生した場合でも、通信が途絶えることなく継続され、その結果、通信の信頼性が向上することになる。
【0039】
二重化通信管理ミドルウェア172の一例として、日立製作所のNeXUS/Dlinkがある。以下、本実施例ではNeXUS/Dlinkを前提として、実施の態様を説明する。
【0040】
図5は、本発明の高信頼多重化通信方法の概要を示す図である。
【0041】
通信装置1−1から、通信装置1−2へメッセージを転送する処理を順を追って説明する。
【0042】
通信装置1−1の通信APソフトウェア148は、仮想NIC175にメッセージを転送する。メッセージの態様を図5(1)の(B)(C)に示す。仮想NIC175は、通常のNICがネットワークに転送するメッセージと同様のメッセージ(メッセージの態様は、図5(1)の(C))を、ネットワークに流さずに二重化通信制御デーモン176に転送する。
【0043】
通信装置1−1の二重化通信制御デーモン176は、二重化通信管理ミドルウェア172が提供する独自のAPIを具備しており、仮想NIC175から転送されたメッセージの中に含まれる送信先アドレスを読み取り、当該アドレスを適当なトランザクションコ−ド(以下、TCDという)に変換した後、当該APIを介してメッセージを送信する。この変換方法は後述する。
【0044】
トランザクションとは、商品やサ−ビス、リアルタイムイベントなどに関する処理、取引を意味し、アドレスとは異なる概念である。TCDとは、トランザクションを識別する為のコ−ドであり、TCDを指定してデ−タを転送すると、当該TCDを登録した通信装置がメッセージを受信することができるようになる。
【0045】
TCDについては、非特許文献1に詳しく記載されている。
【0046】
通信装置1−1の二重化通信制御デーモン176が当該APIを使ってメッセージを送信すると、通信装置1−1の二重化通信管理ミドルウェア172は、そのメッセージの複製を作成する。、この時、図5(1)のヘッダ部NX_H(0)と、NX_H(1)の両方に、同じ番号の通番を付与する。この番号は連続する整数であり十分に大きな値を付与できる。また最大値を越えると、再び0から通番の付与を開始する(図5(1)の(E−0)(E−1))。
これらのメッセージは、汎用OSの通信プロトコルを使って別々のNICを介して、対応する通信相手のNICにメッセージを転送する。メッセージは汎用OSの各通信レイヤを介して、ヘッダが付与される(図5(1)の(F−0)(F−1)乃至(H−0)(H−1))。
【0047】
送信先通信装置1−2は、各通信レイヤを通過するタイミングでヘッダを外し、二重化通信管理ミドルウェア172は、、図5(1)のヘッダ部NX_H(0)と、NX_H(1)の記載の通番をチェックして、2つのメッセージのうち先着のメッセージのみを取り込み、二重化通信制御デーモン176に当該メッセージを届け、後着のメッセージを廃棄する。
【0048】
送信先通信装置1−2の二重化通信制御デーモン176は、当該メッセージを仮想NIC175に転送し、仮想NIC175は、通常のNICと同様にプロトコルレイヤを介して、送信先通信装置1−2の通信AP148にメッセージを転送する。
【0049】
このように、二重化通信管理ミドルウェア172の独自のAPIを具備した通信APだけでなく、汎用的な通信APであっても、現存の通信装置等の通信装置を介して、仮想NICとユ−ザ空間で稼動する二重化通信制御デーモン176とを後から設置するだけで、OSや通信レイヤの変更を一切行なうことなく二重化通信の利益を享受することができるようになる。
【0050】
図6は、二重化通信制御デーモン176の処理手順を示すフローチャートである。
【0051】
二重化通信制御デーモン176は、通信装置1−1が具備している2つのNICの情報から、現在のNICに割り当てられたIPアドレス、サブネットアドレスを入手する。(ステップ176−2)。
【0052】
ここでは、通信装置1−1の第1のNICとして”19.16.1.1/255.255.255.0”が取得され、第2のNICとして”19.16.2.1/255.255.255.0”が取得されたとする。ここでは、第1つ目のNICと第2のNICのアドレスを比較して、ネットワーク番号の下位の値を比較して大きい方の値に1を加えた値を仮想NICのネットワークアドレスとし、第1のNICのホストアドレスと同じ番号を仮想NICのホストアドレスとする(”19.16.1.3/255.255.255.0”)。
【0053】
次に、自通信装置の受信ハンドルを作成する(ステップ176−4)。
【0054】
ここでハンドルとは通信に必要な情報の全てが記載されている識別子の一種であり、通信アプリケ−ションはハンドルの番号を使って通信を実施する。通信APは通信態様を意識する必要はない。送信用ハンドルは「デ−タの出口」として認識され、受信用ハンドルは「デ−タの入口」として認識される。
【0055】
ここでは、第1つ目のNICと第2のNICのアドレスを比較して、ホスト番号に相当する番号が小さい方の番号をTCD(#1)とし、仮想NICのネットワーク番号の下位の値を比較して小さい方の値をデータフィールド(以下、DFという)番号(#3)とする。
【0056】
ここでDFとは、デ−タが流れる、複数の通信装置との間でデ−タを共有できる場を意味し、一般には一つのネットワークアドレスで指定されるネットワークセグメント単位に設定されるものある。
【0057】
次に、DFの全通信装置情報を入手する(176−6)。
【0058】
これは表7−1のテ−ブルを作成するためであり、二重化通信制御ミドルウェアの機能を使って、他の通信装置の情報を入手しても良い。NeXUS/Dlinkの場合は、nx_get_dfstatのコマンドでこれらの情報を入手することができる。二重化通信制御デーモン176はこれらの情報を用いて表7−1を作成する。
【0059】
次に、他通信装置向けの送信ハンドルを作成する(176−8、表7−5)。
【0060】
DFとTCDは前述と同様の方法を用いることで決定され、送信先のTCDはシステム内で一意に決定される。
【0061】
表7−5を用いて、IPアドレスからTCDへ変換することができる。例えば、仮想NICアドレスが”19.16.3.2/255.255.255.0”である通信装置に対する送信ハンドルは、DF番号#3、受信TCD#2となる。
【0062】
次に、DF内の全通信装置向け送信ハンドルを作成する(176−8)(表7−2、G−3)。DF内の全通信装置向け送信は、各通信装置が共通のUDPポ−ト番号を使用することによって実現する。
【0063】
ここでは、50000にDF番号を加算した番号を、UDPポ−ト番号とする(#50003)を用いることとする。
【0064】
以上のように、仮想ネットワークインターフェースと二重化通信制御デーモンの間でメッセージ転送を行なうことを特徴とする構成を備えることで、汎用OSの汎用通信APにおいても、二重化通信の効果を奏することができるようになる。
【0065】
(2)第2の実施例
第1の実施例では、仮想NICによって構成されるネットワークは、NICによって構成されるネットワークとは異なるネットワークとして認識される。
【0066】
しかし、この場合、通信APに対してIPアドレスの変更を加えなければならず、誤ったIPアドレスが付与されると、通信できなくなる場合がある。
【0067】
この場合にも対処するため、第2の実施例では、通信APに対してIPアドレスの変更を加えることなしに、本発明の二重化通信方法を実現する方法について説明する。
【0068】
図8は、本発明の二重化通信方法を実現する仮想NIC175と、二重化通信制御デーモン176に加えて、通信APIをフックするフックライブラリ178を新規に具備した図である。フックライブラリ178は、通信APIが起動される前に、アプリケーションから当該APIに渡されるメッセージに含まれる送信先アドレスを読み出し、表Iの変換テ−ブルに基づいてアドレス変換を行う。なお、表Iは、表7−1のサブセットである。
【0069】
例えば、送信APIにおいて受け取ったメッセージの宛先アドレスが”19.16.1.2/255.255.255.0”の場合、これを”19.16.3.2/255.255.255.0”に変換する。このように変換することで、メッセージはNIC112−1に転送されずに仮想NICへと転送され、仮想NICから二重化通信制御デーモン176に転送される。
【0070】
またこれとは逆に、送信APIにおいて受け取ったメッセージの送信元アドレスが”19.16.3.2/255.255.255.0”の場合は、その送信元アドレスを”19.16.1.2/255.255.255.0”と変換して通信AP148に渡せば足りる(図8(1))。
【0071】
送信先が、本発明の仮想NIC175と二重化通信制御デーモン176を具備しない通信装置である場合には、IPアドレス、サブネットアドレス、仮想IPアドレス、サブネットアドレスが表Iの変換テ−ブルのエントリに記載されていないので、送信先のフックライブラリ178は変換処理を行わない(図8(2))。
【0072】
かかる場合には、仮想NICを介さない通信が行われ、通信APは、本発明の利用を意識することなく、本発明の二重化通信方法がすでに具備されていれば、本方法を利用した通信を実施し、具備されていなければ本方法を利用しない通常の通信を実施する。
【0073】
以上のように、通信APに対してIPアドレスに変更を加えることなく、二重化通信の効果を享受し得るようになる。
【0074】
(3)第3の実施例
図9は、本発明を応用した、多重化度が2以上であるネットワークの多重化通信を実現する方法を示す図である。
【0075】
通信AP148から転送されたメッセージは、仮想NIC175−1に転送された後、二重化通信制御デーモン176−1に転送される。さらに、二重化通信制御デーモン176−1のメッセージは、2つの仮想NIC176―2と176―3を介して、二重化通信制御デーモン176−2と、176−3に転送される。
【0076】
二重化通信制御デーモン176−2は、当該メッセージをNIC112−1、112−2に、二重化通信制御デーモン176−3は、当該メッセージをNIC112−3、112−4に転送する。これにより、四重化したメッセージ送信を実現できる。メッセージ受信についても同様に四重化することができ、その結果、四重化通信を容易に実現することができる。
【0077】
また、実施例1〜3では、NIC112−1、112−2、112−3、112−4としてイ−サネットNIC等を想定しているが、NIC112−1をイ−サネットNIC、112−2を無線LANのNIC、112−3をキャリア会社の通信カード、112−4をPLC(Power Line Communication)の通信カードというように、異なるネットワーク媒体の通信NICを用いても同様の効果が得られることは当業者には理解されよう。また異種ネットワークを使うことで、信頼性が向上するという副次的な効果も得られる。また、この二重化通信制御デーモンを用いた仕組みをさらに多段にすることで任意の多重化通信環境を作ることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 通信装置
10 LAN
30 WAN
110 バス
112 NIC
120 CPU
104 メモリ
22 キーボード
24 マウス
106 入出力コントローラ
108 モニタコントローラ
148 通信AP
150 入出力装置制御ドライバ
175 仮想NIC
174 NIC制御ドライバ
175 仮想NIC制御ドライバ
172 二重化通信管理ミドルウェア
176 二重化通信制御デーモン
166 送信キュー
170 受信キュー
180 フックライブラリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの物理的なインターフェースをそれぞれ2つのネットワークに接続し、当該ネットワークに同じメッセージを転送することによって通信アプリケーション間で高信頼な通信を行なう二重化高信頼通信装置であって、
当該物理的なインターフェースを介してメッセージを転送するソフトウェアである仮想ネットワークインターフェースと、二重化通信制御デーモンと、二重化通信ミドルウェアとを備え、
データ送信時には、
通信アプリケーションから転送されたメッセージを、仮想ネットワークインターフェースに転送し、当該仮想ネットワークインターフェースから、二重化通信制御デーモンに転送し、さらに二重化通信ミドルウェアにて当該メッセージを2以上のメッセージに複製した後に、当該2つの物理的なネットワークインターフェースから当該メッセージを転送し、
データ受信時には、
当該2つの物理的なネットワークインターフェースから1以上のメッセージを受信し、
前記二重化通信ミドルウェアは、前記当該2つの物理的なネットワークインタフェースカードから転送されたメッセージのうち先着のメッセージを取り込み、後着メッセージを廃棄することによって、前記先着メッセージのみを前記二重化通信制御デーモンに転送し、
前記二重化通信制御デーモンは、前記先着メッセージを前記仮想ネットワークインターフェースに転送し、
前記仮想ネットワークインターフェースは、前記先着メッセージを通信アプリケ−ションに転送すること
を特徴とする二重化高信頼通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の二重化高信頼通信装置であって、
データ送信時には、
メッセージに含まれる物理ネットワークインターフェースの送信元アドレスまたは送信先アドレスを、仮想ネットワークインターフェースの送信元アドレスまたは送信先アドレスに変換し、
データ受信時には、
メッセージに含まれる仮想ネットワークインターフェースの送信元アドレスまたは送信先アドレスを、物理ネットワークインターフェースの送信元アドレスまたは送信先アドレスに変換する、
ことを特徴とする二重化高信頼通信装置。
【請求項3】
2以上の物理的なインターフェースをそれぞれ2以上のネットワークに接続し、当該ネットワークに同じメッセージを転送することによって通信アプリケーション間で高信頼な通信を行なう多重化高信頼通信装置であって、
当該物理的なインターフェースを介してメッセージを転送するソフトウェアである2以上の仮想ネットワークインターフェースと、二以上の二重化通信制御デーモンと、二重化通信ミドルウェアとを備え、
データ送信時には、
通信アプリケーションから転送されたメッセージを、仮想ネットワークインターフェースに転送し、当該仮想ネットワークインターフェースから、多重化通信制御デーモンに転送し、さらに二重化通信ミドルウェアにて当該メッセージを2以上のメッセージに複製した後に、さらに、別の多重化通信制御デーモンに転送し、これらの処理を繰り返すことで、当該2以上の物理的なネットワークインターフェースから当該メッセージを転送し、
データ受信時には、
当該2以上の物理的なネットワークインターフェースから2以上のメッセージを受信し、
前記多重化通信ミドルウェアは、前記当該2以上の物理的なネットワークインタフェースカードから転送されたメッセージのうち先着のメッセージを取り込み、後着メッセージを廃棄することによって、前記先着メッセージのみを前記二重化通信制御デーモンに転送し、
前記二重化通信制御デーモンは、前記先着メッセージを前記仮想ネットワークインターフェースに転送し、前記仮想ネットワークインターフェースは、さらに、別の仮想ネットワークインターフェースに転送し、これらの処理を繰り返した後に、通信アプリケ−ションに転送すること
を特徴とする多重化高信頼通信装置。
【請求項4】
2つの物理的なインターフェースをそれぞれ2つのネットワークに接続し、当該ネットワークに同じメッセージを転送することによって通信アプリケーション間で高信頼な通信を行なう二重化高信頼通信方式であって、
当該物理的なインターフェースを介してメッセージを転送するソフトウェアである仮想ネットワークインターフェースと、二重化通信制御デーモンと、二重化通信ミドルウェアとを備え、
データ送信時には、
通信アプリケーションから転送されたメッセージを、仮想ネットワークインターフェースに転送し、当該仮想ネットワークインターフェースから、二重化通信制御デーモンに転送し、さらに二重化通信ミドルウェアにて当該メッセージを2以上のメッセージに複製した後に、当該2つの物理的なネットワークインターフェースから当該メッセージを転送し、
データ受信時には、
当該2つの物理的なネットワークインターフェースから1以上のメッセージを受信し、
前記二重化通信ミドルウェアは、前記当該2つの物理的なネットワークインタフェースカードから転送されたメッセージのうち先着のメッセージを取り込み、後着メッセージを廃棄することによって、前記先着メッセージのみを前記二重化通信制御デーモンに転送し、
前記二重化通信制御デーモンは、前記先着メッセージを前記仮想ネットワークインターフェースに転送し、
前記仮想ネットワークインターフェースは、前記先着メッセージを通信アプリケ−ションに転送する
ことを特徴とする二重化高信頼通信方式。
【請求項5】
請求項4記載の二重化高信頼通信方式であって、
データ送信時には、
メッセージに含まれる物理ネットワークインターフェースの送信元アドレスまたは送信先アドレスを、仮想ネットワークインターフェースの送信元アドレスまたは送信先アドレスに変換し、
データ受信時には、
メッセージに含まれる仮想ネットワークインターフェースの送信元アドレスまたは送信先アドレスを、物理ネットワークインターフェースの送信元アドレスまたは送信先アドレスに変換する、
ことを特徴とする二重化高信頼通信方式。
【請求項6】
2以上の物理的なインターフェースをそれぞれ2以上のネットワークに接続し、当該ネットワークに同じメッセージを転送することによって通信アプリケーション間で高信頼な通信を行なう多重化高信頼通信方式であって、
当該物理的なインターフェースを介してメッセージを転送するソフトウェアである2以上の仮想ネットワークインターフェースと、二以上の二重化通信制御デーモンと、二重化通信ミドルウェアとを備え、
データ送信時には、
通信アプリケーションから転送されたメッセージを、仮想ネットワークインターフェースに転送し、当該仮想ネットワークインターフェースから、多重化通信制御デーモンに転送し、さらに二重化通信ミドルウェアにて当該メッセージを2以上のメッセージに複製した後に、さらに、別の多重化通信制御デーモンに転送し、これらの処理を繰り返すことで、当該2以上の物理的なネットワークインターフェースから当該メッセージを転送し、
データ受信時には、
当該2以上の物理的なネットワークインターフェースから2以上のメッセージを受信し、
前記多重化通信ミドルウェアは、前記当該2以上の物理的なネットワークインタフェースカードから転送されたメッセージのうち先着のメッセージを取り込み、後着メッセージを廃棄することによって、前記先着メッセージのみを前記二重化通信制御デーモンに転送し、
前記二重化通信制御デーモンは、前記先着メッセージを前記仮想ネットワークインターフェースに転送し、前記仮想ネットワークインターフェースは、さらに、別の仮想ネットワークインターフェースに転送し、これらの処理を繰り返した後に、通信アプリケ−ションに転送する
ことを特徴とする多重化高信頼通信方式。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate