二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法
【課題】床下に設備配管を配管する作業に伴う騒音および振動が少ない二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供することを目的としている。
【解決手段】複数の脚部6によって支持され、下方に設備配管3が配管される板状のパネル部5から構成される二重床パネル8において、パネル部5の下面には、設備配管3を支持する吊り部15が垂設されている。
【解決手段】複数の脚部6によって支持され、下方に設備配管3が配管される板状のパネル部5から構成される二重床パネル8において、パネル部5の下面には、設備配管3を支持する吊り部15が垂設されている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラブ上に配置されているとともに、給水、給湯、排水、ガスおよび電気等の設備配管が下方に配管されている配管付二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、床下に設備配管を配管する場合には二重床を形成する。二重床を形成する際には、まずスラブ上に設備配管を配管するとともに設備機器が設置される位置の設備配管端部に立ち上がりを形成し、その後スラブの上面と隙間をあけて床材を形成する。床材には、例えば大引きの上方に根太を架設させ、根太の上方に床板を敷設する構成からなるものや、脚部を有する床パネルをスラブ上に配置するものなどがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001‐220884号公報 (第3−4頁、第8図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の二重床によると、設備配管をスラブに固定する作業が騒音や振動を伴うため、改修工事などの場合には下階への影響が大きく、下階の居室を一時的に閉鎖するなどの措置が必要になるという問題が存在する。
【0005】
また、設備配管のメンテナンスを行う際には床材を剥がす必要があり、設備配管のメンテナンスを行うまでの作業および終了してからの復旧作業には時間がかかるという問題が存在する。また、床パネルの場合は撤去および設置は容易に行うことができるが、設備配管を盛替える場合などには床パネルの高さが低いため設備配管を固定する固定部があるところの全てを撤去する必要があり、メンテナンス作業の影響を及ぼす範囲が広範囲になるという問題が存在する。
【0006】
本発明は、上記した問題が考慮されたものであり、床下に設備配管を配管する作業に伴う騒音および振動が少ない二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供することを目的としている。また、設備配管を配管する際に墨出しを必要とせず、現場の状況に応じて容易に配管することができる二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供することを目的としている。また、設備配管のメンテナンスを行う際に容易に取り外しを行うことができる二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供するとともに、二重床パネルの全てを撤去せずに床下の設備配管のメンテナンスが行うことができる二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、複数の脚部によって支持され、下方に設備配管が配管される板状のパネル部から構成される二重床パネルにおいて、前記パネル部の下面には、前記設備配管を支持する吊り部が垂設されていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、設備配管はスラブに固定されずにパネル部下面に固定される。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の二重床パネルにおいて、前記吊り部は、前記パネル部の端部に配置されていることを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、パネル部下面に固定された吊り部に設備配管を脱着させる作業は、二重床パネルをスラブ上に置いた状態で二重床パネルの側方からでも行える。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の二重床パネルにより形成される二重床構造であって、前記吊り部が垂設された側の前記二重床パネルの側方には、前記脚部と前記パネル部とから構成され下方に前記設備配管が配管されているとともに該設備配管とは離されている吊り部無二重床パネルが配置されていることを特徴としている。
【0012】
このような特徴により、メンテナンスを行う際には吊り部無二重床パネルを取り外すことにより、設備配管が固定された二重床パネルを剥がさずに設備配管をメンテナンスされる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の床構造において、前記二重床パネルと前記吊り部無二重床パネルとのうち何れか一方には上方に開放された箱状のボックス部が備えられ、該ボックス部には一端が前記第1の接続配管の先端部に接続され他端が前記設備配管の端部に接続される継手部が挿設されていることを特徴としている。
【0014】
このような特徴により、設備機器を設置する際に二重床パネルや吊り部無二重床パネルを剥がさずに床下に配管された設備配管に接続される。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の床構造において、前記継手部が挿設されている前記ボックス部の壁部には、上方に向かって開く傾斜面が形成されていることを特徴としている。
【0016】
このような特徴により、継手部との接続部での設備配管および第1の接続配管の屈曲角度は緩やかなものとなる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項3から5のいずれかに記載の床構造において、前記二重床パネルと前記吊り部無二重床パネルとのうち何れか一方には上方に開放された箱状の受け皿部が備えられ、該受け皿部内には前記既存配管に接続された第2の接続管と前記設備配管の端部との間に介装されたヘッダーが収納されていることを特徴としている。
【0018】
このような特徴により、一本の既存配管から複数本の設備配管に分岐され、複数本の設備配管は各方向にそれぞれ設置された複数の設備機器の方向にそれぞれ配管される。
【0019】
請求項7記載の発明は、スラブ上に形成するとともに該スラブとの間に設備配管を配管する配管空間を形成する二重床の施工方法において、請求項1記載の二重床パネルを前記スラブ上に間隔をあけて配置し、該スラブ上に前記設備配管を配置するとともに該設備配管を前記吊り部に支持し、間隔をあけて配置された前記二重床パネルの間に前記脚部と前記パネル部とから構成されているとともに前記設備配管と離隔されている吊り部無二重床パネルを嵌装することを特徴としている。
【0020】
このような特徴により、吊り部無二重床パネルを配置するスペースから設備配管を吊り部に取り付けられる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、図1はキッチン台(設備機器)1が設置されるキッチン床2の見上げ図であり、図1に示すように、本実施の形態はキッチン床2を形成するとともにキッチン床(二重床)2の下にキッチン台1に接続される設備配管3を配管する場合について説明する。
【0022】
図1に示すように、キッチン床2は構造体であるスラブ4の上方に形成されている。キッチン床2は、板状のパネル部5が居室2スラブ4上に配置された複数の脚部6によって支持される構成からなる吊り部無二重床パネル7および二重床パネル8(後述するように、二重床パネル8には吊り部15が垂設されており、これに対して吊り部無二重床パネル7には吊り部15が備えられていないため、二重床パネル8は吊り部無二重床パネル7に対応させて吊り部付二重床パネルといえる。)から形成されている。下方に設備配管3が配管されるキッチン床2は、間隔をあけて配置された二重床パネル8の間に設備配管3と離隔されている吊り部無二重床パネル7が配置される構成からなり、二重床パネル8と吊り部無二重床パネル7とは交互に配置されている。
【0023】
図2はキッチン床2の一部を形成する吊り部無二重床パネル7の断面図である。図1、図2R>2に示すように、スラブ4上には複数の脚部6が配置されており、脚部6のスラブ4上面に当接する下部は滑りによる転倒を防ぐためゴム等の摩擦材6aが形成されており、脚部6の上部は上方に向かって拡大するテーパ部6bが形成されている。また、脚部6の上端面中央には円柱形の嵌入部6cが付設されている。
【0024】
脚部6の上方には、中央および四隅に貫通孔5aが形成された板状のパネル部5が配置されている。貫通孔5aには脚部6の嵌入部6cがそれぞれ嵌入されており、パネル部5は脚部6によって中央および四隅がそれぞれ支持されている。また、パネル部5は910mm×910mmの正四角形のモジュールに形成されており、この他に図示せぬ600mm×910mmおよび450mm×910mmの長方形のサブモジュールが使用される。なお、パネル部5は910mm×910mmの正四角形のモジュールに限定されず、例えば900mmや1000mmのモジュールなども考えられ、その範囲は900mmから1000mm程度のモジュールが使用される。また、サブモジュールについても600mm×910mmおよび450mm×910mmの長方形のサブモジュールに限定されず、例えば900mmのモジュールに対応して450mmや300mmのサブモジュールが考えられ、また1000mmのモジュールに対応して500mmのサブモジュールなども考えられる。サブモジュールはメインとなるモジュールに応じた寸法のものが使用され、その範囲は300mmから900mm程度のサブモジュールが使用される。
【0025】
図3はキッチン床2の一部を形成する二重床パネル8の断面図である。図1、図3に示すように、二重床パネル8は、上記した吊り部無二重床パネル7と同様の構成からなっており、上記した脚部6およびパネル部5から構成されている。また、二重床パネル8のパネル部5の下面には、キッチン床2の下に配管されキッチン台1に接続される排水管9、給水管10、給湯管11、ガス管12、100V電気配線13および200V電気配線14からなる設備配管3を吊り下げる吊り部15が付設されている。
【0026】
図4に示すように、吊り部15の下端には設備配管3を掴持するクランプ部16aが形成され、上端にはパネル部5の下面に接合される基台部16bが形成されている。基台部16bには、雄ねじ16が下方から貫通され、この雄ねじ16の先端を上端パネル部5内に定着させることでパネル部5に固定されている。吊り部15はパネル部5の端部に、複数(図では6箇所)配列されている。
【0027】
図5はキッチン台1が載置される二重床パネル8の部分断面図である。図1、図5に示すように、キッチン台1が載置される二重床パネル8のパネル部5には、長方形の開口部7aが形成されており、開口部7aの中には上方が開放された横長の箱状のボックス部17が嵌装されている。ボックス部17は断面形状がV形に形成されており、ボックス部17の傾斜面17aは上方に向かって開くように傾斜され、傾斜角度が45°に形成されている。
【0028】
図6は上記したボックス部17の平面図である。図5、図6に示すように、傾斜面17aの下端には水平の長方形板からなるボックス部17の底面17bが一体に形成されており、傾斜面17aおよび底面17bはそれぞれスチール板を二枚に重ねてピン18で固定する構成からなっている。傾斜面17aの上端は外側に張り出す形でフランジ17cが形成されており、フランジ17cはパネル部5上面の開口部5bの外縁に形成された窪み部5cに載せられている。フランジ17cには間隔をあけて雄ねじ19が上方から貫通され、ボックス部17は雄ねじ19の先端をパネル部5内に定着させることでパネル部5に固定されている。
【0029】
また、ボックス部17の傾斜面17aには、傾斜面17aと直交する方向に延在する複数の差し込み式のソケット(継手部)20がそれぞれ挿設されている。二重床パネル8の下方側のソケット20一端部には設備配管3の一端が接続されている。また、キッチン台1とボックス部17の内側のソケット20他端部とは、第1の接続配管21を介して接続されている。各々のソケット20他端に接続された第1の接続配管21のうち排水管9に接続された第1の接続配管21には圧送ポンプ22が備えられており、キッチン台1からの排水は圧送ポンプ22によって排水管9の勾配に関係なく排水管9内を流通される。
【0030】
また、各々のソケット20上方の傾斜面17aには、それぞれの設備配管3の配管位置や管径、管材種等の情報が組み込まれた識別表示23が付設されている。この識別表示23は、例えば設備配管3の情報をバーコード化した表示がシールに表記され、このシールがボックス部17の傾斜面17aに貼着される構成からなる。
【0031】
図7は設備配管3の他端部が下方に配置されている二重床パネル8の断面図であり、図1に示すA−A断面の矢視図である。また、図8は図1に示すB−B断面の矢視図である。図1、図7、図8に示すように、設備配管3の他端が下方に配置された二重床パネル8のパネル部5には、正方形の開口部5dが形成されており、開口部7bの中には上方が開放された正方形の箱状の受け皿部24が嵌装されている。受け皿部24の上端部は外側に張り出す形でフランジ24aが形成されており、フランジ24aはパネル部5下面の開口部7aの外縁に当接されている。フランジ24aには間隔をあけて雄ねじ25が下方から貫通されており、受け皿部24は雄ねじ25の先端をパネル部5内に定着させることでパネル部5に固定されている。また、受け皿部24はスチール板から形成されており、受け皿部24とスラブ4との間にはパッキン26が介在されている。
【0032】
受け皿部24の壁部には複数の貫通孔24bが設けられており、貫通孔24bには設備配管3の他端部が挿通されている。受け皿部24の内部には設備配管3の他端にそれぞれ接続されたヘッダー27が格納されている。このヘッダー27には、排水管9の他端に接続される排水ヘッダー27aと、給水管10の他端に接続される給水ヘッダー27bと、給湯管11の他端に接続される給湯ヘッダー27cと、ガス管12の他端に接続されるガス管ヘッダー27dと、100V電気配線13および200V電気配線14の他端に接続される配線ボックス27e、27fとからなっている。
【0033】
各々のヘッダー27は、各々の第2の接続配管28を介して居室2の近傍に配設された既存配管29にそれぞれ接続されている。既存配管29は、鉛直に配管された排水用たて管30および給水用たて管31およびガス用たて管32と、図示せぬ電柱などに接続された引込線33とから構成されている。給水用たて管31の端部には図示せぬバルブが備えられた給水メータ35が接続されている。また、ガス用たて管32の端部には図示せぬバルブが備えられたガスメータ38が接続されている。さらに、引込線33の端部には電力を分岐させる分電盤40が接続されている。
【0034】
また、第2の接続配管28は、排水用たて管30と排水ヘッダー27aとを接続する排水用接続配管34、給水メータ35と給水ヘッダー27bとを接続するとともに給水メータ35と給湯ヘッダー27cとを給湯器36を介して接続する給水給湯用接続配管37、ガスメータ38とガス管ヘッダー27dとを接続するガス用接続配管39、および分電盤40と配線ボックス27e、27fとを接続する接続電線41から構成されている。
【0035】
次に、上記した二重床パネル8を使用したキッチン床2の施工方法について説明する。
【0036】
まず、図4に示すように、二重床パネル8のパネル部5下面の所定位置に、吊り部15を配置して基台部16bをパネル部5下面に当接させる。そして、基台部16bの下方からインパクトにより雄ねじ16を捻じ込み、吊り部15をパネル部5下面に固定する。
【0037】
次に、図1、図2、図3に示すように、スラブ4上の設備配管3が配管される箇所に吊り部15が設けられた二重床パネル8を敷設するとともに、設備配管3が配管されない箇所に吊り部無二重床パネル7を敷設する。キッチン台1側の設備配管3の一端部が配置される箇所にはボックス部17が備えられた二重床パネル8を配置し、設備配管3の他端部が配置される箇所には、受け皿部24が備えられた二重床パネル8を配置する。また、設備配管3中間部の配管経路となるキッチン床2の形成範囲では、吊り部無二重床パネル7が嵌め込まれる程度の間隔(例えば、910mm×910mmの正四角形のモジュールに対応した間隔)をあけて二重床パネル8を配置する。
【0038】
次に、パネル部5の下方に設備配管3を配列するとともに、二重床パネル8のパネル部5の下面端部に付設された吊り部15に設備配管3をそれぞれ掴持させ、設備配管3を二重床パネル8から吊り下げる態様でスラブ4の上方に配管する。また、各々の設備配管3の一端部をボックス部17に設けられた対応するソケット20の一端に差し込んでそれぞれ接続するとともに、各々の設備配管3の他端部を受け皿部24の中に格納された対応するヘッダー27にそれぞれ接続する。
【0039】
次に、キッチン台1を二重床パネル8上に設置し、キッチン台1に第1の接続配管21の一端を接続する。そして、第1の接続配管21の他端を各々のソケット20の他端に差し込んでそれぞれ接続し、ソケット20を介して排水管9に接続される第1の接続配管21に圧送ポンプ22を介装させる。また、それぞれの設備配管3の配管位置や管径、管材種等の情報をバーコード化し、このバーコードが表記されたシールからなる識別表示23をボックス部17の傾斜面17aに貼り付ける。
【0040】
また、受け皿部24の中に格納された各々のヘッダー27と、これらのヘッダー27にそれぞれ対応する既存配管29或いは既存配管29に接続された給水メータ35やガスメータ38や分電盤40とを、第2の接続配管28によってそれぞれ接続する。
【0041】
次に、間隔をあけて配置された二重床パネル8の間に吊り部無二重床パネル7を嵌装させる。この吊り部無二重床パネル7は、二重床パネル8の間に配管された設備配管3と離隔された状態で配置される。
【0042】
上記した構成からなる二重床パネル8、キッチン床(二重床)構造およびキッチン床(二重床)の施工方法によれば、設備配管3は吊り部15によって吊り下げられているため、スラブ4に固定されずにパネル部5下面に固定される。これによって、設備配管3をキッチン床2の下に配管する作業に伴う騒音および振動が少なくすることができる。また、設備配管3は吊り部15のクランプ部15aに掴持されているので容易に取り外しを行うことができる
【0043】
また、吊り部15はパネル部の端部に配置されているため、パネル部5下面に固定された吊り部15に設備配管3を脱着させる作業は、二重床パネル8をスラブ4上に置いた状態で二重床パネル8の側方から行うことができる。これによって、設備配管3を配管する際に墨出しを必要とせず、現場の状況に応じて容易に配管することができる。
【0044】
また、二重床パネル8は間隔をあけて配置され、隣り合う二重床パネル8の間には吊り部無二重床パネル7が配置されているため、メンテナンスを行う際には吊り部無二重床パネル7を取り外すことにより、設備配管3が固定された二重床パネル8を剥がさずに行うことができる。これによって、メンテナンスの作業が容易になり、短時間に行うことができる。
【0045】
また、キッチン台1が設置される二重床パネル8には、ソケット20が取り付けられたボックス部17が備えられているため、キッチン台1を設置する際に二重床パネル8を剥がさずに二重床パネル8の下に配管された設備配管3は接続される。これによって、設置されたキッチン台1との接続作業は容易に行うことができ、キッチン台1の取り替える作業などが容易に行うことができる。また、ソケット20は傾斜面17aに取り付けられているため、設備配管3の屈曲角度は緩やかになる。これによって、屈曲し難い材質の設備配管3でも使用することができる。
【0046】
また、設備配管3の他端が配管される箇所に配置される二重床パネル8には、受け皿部24が備えられ、受け皿部24の内部にはヘッダー27が格納されているため、二重床パネル8を剥がさずに一本の既存配管29から複数の設備配管3に分岐され、複数の設備配管3は各方向にそれぞれ設置されたそれぞれの設備機器にそれぞれ配管される。これによって、キッチン床2に他の設備機器を設置する場合に簡単に配管を接続することができる。
【0047】
さらに、二重床パネル8を間隔をあけて配置し、設備配管3を配置するとともに設備配管3を吊り部15に支持し、間隔をあけて配置された二重床パネル8の間に設備配管3と離隔されている吊り部無二重床パネル7を嵌装するため、吊り部無二重床パネル7を配置するスペースから設備配管3を吊り部15に取り付けられる。これによって、吊り部15に設備配管3を取り付ける作業は簡単に行うことができる。
【0048】
以上、本発明に係る二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した本実施の形態では吊り部15は雄ねじ16によって固定されているが、本発明は、図9、図10に示すように、パネル部100に端部に形成された欠き込み部100aに、設備配管104を掴持する吊り部101が固定された既製の吊り下地102を嵌装させることで、吊り部101をパネル部100に固定してもよい。パネル部100上面の欠き込み部100a外縁には窪み部100bが形成されており、窪み部100bの上方に吊り下地102の上方端部が載せられる。吊り下地102の上方端部に形成されたねじ孔103から雄ねじ106がパネル部100内に捻じ込まれ固定される。また、吊り下地102の上面に欠き込み部102aを形成して電気配線105を床下から床上に配線してもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態では吊り部15は直接パネル部5の下面に取り付けられているが、本発明は、図11に示すように、パネル部200の下面と吊り部201との間に、パネル部200と吊り部201との間隔を調整するスペーサー202が介在されていてもよい。これによって、設備配管203同士が交わる場合に、互いに干渉せず上下に交差させることができる。
【0050】
また、上記した実施の形態では設備配管3の一端部はボックス部17に取り付けられたソケット20に接続されているが、本発明は、図12に示すように、パネル部300の端部に欠き込み部300aを形成し、この欠き込み部300aの上方に複数の欠き込み部301aが形成された矩形板301を載せて雄ねじ302で固定してもよい。これによって、矩形板301の欠き込み部301aから設備配管303が挿通され、壁際に図示せぬ設備機器がある場合等に壁際に設備配管303を立ち上げることができる。
【0051】
また、上記した実施の形態では受け皿部24を挿通する設備配管3は、受け皿部24が備えられた二重床パネル8端部に取り付けられた吊り部15によって支持されているが、本発明は、図13、図14に示すように、受け皿部400に円筒形のガイド部401を固定し、このガイド部401の中に設備配管402を挿通させて支持してもよい。このような構成により、設備配管402は、受け皿部400が備えられたパネル部403端部に吊り部を取り付けなくても支持される。このため、設備配管402を取り付ける作業は簡易化することができる。
【0052】
また、上記した実施の形態では、受け皿部24が備えられた二重床パネル8の隣りには二重床パネル8が配置されているが、本発明は受け皿部24が備えられた二重床パネル8の隣りに吊り部無二重床パネル7を配置してもよい。また、上記した実施の形態では、受け皿部24は二重床パネル8に備えられているが、吊り部無二重床パネル7に受け皿部24を取り付けてもよい。また、上記した実施の形態では、ボックス部17が備えられた二重床パネル8の隣りには吊り部無二重床パネル7が配置されているが、ボックス部17が備えられた二重床パネル8の隣りに二重床パネル8を配置してよい。さらに、上記した実施の形態では、ボックス部17は二重床パネル8に備えられているが、吊り部無二重床パネル7にボックス部17を取り付けてもよい。
【0053】
さらに、上記した実施の形態ではボックス部17および受け皿部24はそれぞれスチール板から形成されているが、その材質は適宜変更可能であり、例えば樹脂系材料やアルミ製材料、ステンレス製材料などでもよい。また、上記した実施の形態ではソケット20には差し込み式の継手部を使用しているが、本発明は捻じ込み式の継手部を使用してもよく、溶接接合する継手部を使用してよい。また、上記した実施の形態ではボックス部17の傾斜面17aの傾斜角度は45°であるが、第1の接続配管21の延在方向に応じて傾斜面17aの傾斜角度は30°から60°の範囲で適宜変更可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上のように説明した本発明に係る二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法によれば、設備配管は吊り部によって吊り下げられて支持されているため、床下に設備配管を配管する作業に伴う騒音および振動を少なくすることができる。また、設備配管は吊り部によって吊り下げられ配管されるため、設備配管を配管する際に墨出しを必要とせず、現場の状況に応じて容易に配管することができる。また、吊り部は二重床パネルの端部に設けられており、二重床パネルの側方から吊り部を取り扱うことができるため、設備配管のメンテナンスを行う際に容易に取り外しを行うことができる。また、二重床パネルの隣りに吊り部無二重床パネルが配置されるため、吊り部無二重床パネルを外すことで二重床パネル下のメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を説明するための見上図である。
【図2】本発明に係る吊り部無二重床パネルを説明するための断面図である。
【図3】本発明に係る二重床パネルを説明するための断面図である。
【図4】本発明に係る吊り部を説明するための断面図である。
【図5】本発明に係るボックス部を説明するための断面図である。
【図6】本発明にかかるボックス部の実施の形態を説明するための平面図である。
【図7】本発明に係る受け皿部を説明するための図1に示すA―A断面の矢視図である。
【図8】本発明に係る受け皿部を説明するための図1に示すB―B断面の矢視図である。
【図9】本発明のその他の実施の形態を説明するための斜視図である。
【図10】本発明のその他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図11】本発明のその他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図12】本発明のその他の実施の形態を説明するための斜視図である。
【図13】本発明のその他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図14】本発明のその他の実施の形態を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
1 キッチン台(設備機器)
2 キッチン床(二重床)
3、104、203、303、402 設備配管
5、100、200、300、403 パネル部
6 脚部
7 吊り部無二重床パネル
8 二重床パネル
15、101、201 吊り部
17 ボックス部
17a 傾斜面
20 ソケット(継手部)
21 第1の接続配管
24、400 受け皿部
27 ヘッダー
28 第2の接続配管
29 既存配管
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラブ上に配置されているとともに、給水、給湯、排水、ガスおよび電気等の設備配管が下方に配管されている配管付二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、床下に設備配管を配管する場合には二重床を形成する。二重床を形成する際には、まずスラブ上に設備配管を配管するとともに設備機器が設置される位置の設備配管端部に立ち上がりを形成し、その後スラブの上面と隙間をあけて床材を形成する。床材には、例えば大引きの上方に根太を架設させ、根太の上方に床板を敷設する構成からなるものや、脚部を有する床パネルをスラブ上に配置するものなどがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001‐220884号公報 (第3−4頁、第8図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の二重床によると、設備配管をスラブに固定する作業が騒音や振動を伴うため、改修工事などの場合には下階への影響が大きく、下階の居室を一時的に閉鎖するなどの措置が必要になるという問題が存在する。
【0005】
また、設備配管のメンテナンスを行う際には床材を剥がす必要があり、設備配管のメンテナンスを行うまでの作業および終了してからの復旧作業には時間がかかるという問題が存在する。また、床パネルの場合は撤去および設置は容易に行うことができるが、設備配管を盛替える場合などには床パネルの高さが低いため設備配管を固定する固定部があるところの全てを撤去する必要があり、メンテナンス作業の影響を及ぼす範囲が広範囲になるという問題が存在する。
【0006】
本発明は、上記した問題が考慮されたものであり、床下に設備配管を配管する作業に伴う騒音および振動が少ない二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供することを目的としている。また、設備配管を配管する際に墨出しを必要とせず、現場の状況に応じて容易に配管することができる二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供することを目的としている。また、設備配管のメンテナンスを行う際に容易に取り外しを行うことができる二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供するとともに、二重床パネルの全てを撤去せずに床下の設備配管のメンテナンスが行うことができる二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、複数の脚部によって支持され、下方に設備配管が配管される板状のパネル部から構成される二重床パネルにおいて、前記パネル部の下面には、前記設備配管を支持する吊り部が垂設されていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、設備配管はスラブに固定されずにパネル部下面に固定される。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の二重床パネルにおいて、前記吊り部は、前記パネル部の端部に配置されていることを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、パネル部下面に固定された吊り部に設備配管を脱着させる作業は、二重床パネルをスラブ上に置いた状態で二重床パネルの側方からでも行える。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の二重床パネルにより形成される二重床構造であって、前記吊り部が垂設された側の前記二重床パネルの側方には、前記脚部と前記パネル部とから構成され下方に前記設備配管が配管されているとともに該設備配管とは離されている吊り部無二重床パネルが配置されていることを特徴としている。
【0012】
このような特徴により、メンテナンスを行う際には吊り部無二重床パネルを取り外すことにより、設備配管が固定された二重床パネルを剥がさずに設備配管をメンテナンスされる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の床構造において、前記二重床パネルと前記吊り部無二重床パネルとのうち何れか一方には上方に開放された箱状のボックス部が備えられ、該ボックス部には一端が前記第1の接続配管の先端部に接続され他端が前記設備配管の端部に接続される継手部が挿設されていることを特徴としている。
【0014】
このような特徴により、設備機器を設置する際に二重床パネルや吊り部無二重床パネルを剥がさずに床下に配管された設備配管に接続される。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の床構造において、前記継手部が挿設されている前記ボックス部の壁部には、上方に向かって開く傾斜面が形成されていることを特徴としている。
【0016】
このような特徴により、継手部との接続部での設備配管および第1の接続配管の屈曲角度は緩やかなものとなる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項3から5のいずれかに記載の床構造において、前記二重床パネルと前記吊り部無二重床パネルとのうち何れか一方には上方に開放された箱状の受け皿部が備えられ、該受け皿部内には前記既存配管に接続された第2の接続管と前記設備配管の端部との間に介装されたヘッダーが収納されていることを特徴としている。
【0018】
このような特徴により、一本の既存配管から複数本の設備配管に分岐され、複数本の設備配管は各方向にそれぞれ設置された複数の設備機器の方向にそれぞれ配管される。
【0019】
請求項7記載の発明は、スラブ上に形成するとともに該スラブとの間に設備配管を配管する配管空間を形成する二重床の施工方法において、請求項1記載の二重床パネルを前記スラブ上に間隔をあけて配置し、該スラブ上に前記設備配管を配置するとともに該設備配管を前記吊り部に支持し、間隔をあけて配置された前記二重床パネルの間に前記脚部と前記パネル部とから構成されているとともに前記設備配管と離隔されている吊り部無二重床パネルを嵌装することを特徴としている。
【0020】
このような特徴により、吊り部無二重床パネルを配置するスペースから設備配管を吊り部に取り付けられる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、図1はキッチン台(設備機器)1が設置されるキッチン床2の見上げ図であり、図1に示すように、本実施の形態はキッチン床2を形成するとともにキッチン床(二重床)2の下にキッチン台1に接続される設備配管3を配管する場合について説明する。
【0022】
図1に示すように、キッチン床2は構造体であるスラブ4の上方に形成されている。キッチン床2は、板状のパネル部5が居室2スラブ4上に配置された複数の脚部6によって支持される構成からなる吊り部無二重床パネル7および二重床パネル8(後述するように、二重床パネル8には吊り部15が垂設されており、これに対して吊り部無二重床パネル7には吊り部15が備えられていないため、二重床パネル8は吊り部無二重床パネル7に対応させて吊り部付二重床パネルといえる。)から形成されている。下方に設備配管3が配管されるキッチン床2は、間隔をあけて配置された二重床パネル8の間に設備配管3と離隔されている吊り部無二重床パネル7が配置される構成からなり、二重床パネル8と吊り部無二重床パネル7とは交互に配置されている。
【0023】
図2はキッチン床2の一部を形成する吊り部無二重床パネル7の断面図である。図1、図2R>2に示すように、スラブ4上には複数の脚部6が配置されており、脚部6のスラブ4上面に当接する下部は滑りによる転倒を防ぐためゴム等の摩擦材6aが形成されており、脚部6の上部は上方に向かって拡大するテーパ部6bが形成されている。また、脚部6の上端面中央には円柱形の嵌入部6cが付設されている。
【0024】
脚部6の上方には、中央および四隅に貫通孔5aが形成された板状のパネル部5が配置されている。貫通孔5aには脚部6の嵌入部6cがそれぞれ嵌入されており、パネル部5は脚部6によって中央および四隅がそれぞれ支持されている。また、パネル部5は910mm×910mmの正四角形のモジュールに形成されており、この他に図示せぬ600mm×910mmおよび450mm×910mmの長方形のサブモジュールが使用される。なお、パネル部5は910mm×910mmの正四角形のモジュールに限定されず、例えば900mmや1000mmのモジュールなども考えられ、その範囲は900mmから1000mm程度のモジュールが使用される。また、サブモジュールについても600mm×910mmおよび450mm×910mmの長方形のサブモジュールに限定されず、例えば900mmのモジュールに対応して450mmや300mmのサブモジュールが考えられ、また1000mmのモジュールに対応して500mmのサブモジュールなども考えられる。サブモジュールはメインとなるモジュールに応じた寸法のものが使用され、その範囲は300mmから900mm程度のサブモジュールが使用される。
【0025】
図3はキッチン床2の一部を形成する二重床パネル8の断面図である。図1、図3に示すように、二重床パネル8は、上記した吊り部無二重床パネル7と同様の構成からなっており、上記した脚部6およびパネル部5から構成されている。また、二重床パネル8のパネル部5の下面には、キッチン床2の下に配管されキッチン台1に接続される排水管9、給水管10、給湯管11、ガス管12、100V電気配線13および200V電気配線14からなる設備配管3を吊り下げる吊り部15が付設されている。
【0026】
図4に示すように、吊り部15の下端には設備配管3を掴持するクランプ部16aが形成され、上端にはパネル部5の下面に接合される基台部16bが形成されている。基台部16bには、雄ねじ16が下方から貫通され、この雄ねじ16の先端を上端パネル部5内に定着させることでパネル部5に固定されている。吊り部15はパネル部5の端部に、複数(図では6箇所)配列されている。
【0027】
図5はキッチン台1が載置される二重床パネル8の部分断面図である。図1、図5に示すように、キッチン台1が載置される二重床パネル8のパネル部5には、長方形の開口部7aが形成されており、開口部7aの中には上方が開放された横長の箱状のボックス部17が嵌装されている。ボックス部17は断面形状がV形に形成されており、ボックス部17の傾斜面17aは上方に向かって開くように傾斜され、傾斜角度が45°に形成されている。
【0028】
図6は上記したボックス部17の平面図である。図5、図6に示すように、傾斜面17aの下端には水平の長方形板からなるボックス部17の底面17bが一体に形成されており、傾斜面17aおよび底面17bはそれぞれスチール板を二枚に重ねてピン18で固定する構成からなっている。傾斜面17aの上端は外側に張り出す形でフランジ17cが形成されており、フランジ17cはパネル部5上面の開口部5bの外縁に形成された窪み部5cに載せられている。フランジ17cには間隔をあけて雄ねじ19が上方から貫通され、ボックス部17は雄ねじ19の先端をパネル部5内に定着させることでパネル部5に固定されている。
【0029】
また、ボックス部17の傾斜面17aには、傾斜面17aと直交する方向に延在する複数の差し込み式のソケット(継手部)20がそれぞれ挿設されている。二重床パネル8の下方側のソケット20一端部には設備配管3の一端が接続されている。また、キッチン台1とボックス部17の内側のソケット20他端部とは、第1の接続配管21を介して接続されている。各々のソケット20他端に接続された第1の接続配管21のうち排水管9に接続された第1の接続配管21には圧送ポンプ22が備えられており、キッチン台1からの排水は圧送ポンプ22によって排水管9の勾配に関係なく排水管9内を流通される。
【0030】
また、各々のソケット20上方の傾斜面17aには、それぞれの設備配管3の配管位置や管径、管材種等の情報が組み込まれた識別表示23が付設されている。この識別表示23は、例えば設備配管3の情報をバーコード化した表示がシールに表記され、このシールがボックス部17の傾斜面17aに貼着される構成からなる。
【0031】
図7は設備配管3の他端部が下方に配置されている二重床パネル8の断面図であり、図1に示すA−A断面の矢視図である。また、図8は図1に示すB−B断面の矢視図である。図1、図7、図8に示すように、設備配管3の他端が下方に配置された二重床パネル8のパネル部5には、正方形の開口部5dが形成されており、開口部7bの中には上方が開放された正方形の箱状の受け皿部24が嵌装されている。受け皿部24の上端部は外側に張り出す形でフランジ24aが形成されており、フランジ24aはパネル部5下面の開口部7aの外縁に当接されている。フランジ24aには間隔をあけて雄ねじ25が下方から貫通されており、受け皿部24は雄ねじ25の先端をパネル部5内に定着させることでパネル部5に固定されている。また、受け皿部24はスチール板から形成されており、受け皿部24とスラブ4との間にはパッキン26が介在されている。
【0032】
受け皿部24の壁部には複数の貫通孔24bが設けられており、貫通孔24bには設備配管3の他端部が挿通されている。受け皿部24の内部には設備配管3の他端にそれぞれ接続されたヘッダー27が格納されている。このヘッダー27には、排水管9の他端に接続される排水ヘッダー27aと、給水管10の他端に接続される給水ヘッダー27bと、給湯管11の他端に接続される給湯ヘッダー27cと、ガス管12の他端に接続されるガス管ヘッダー27dと、100V電気配線13および200V電気配線14の他端に接続される配線ボックス27e、27fとからなっている。
【0033】
各々のヘッダー27は、各々の第2の接続配管28を介して居室2の近傍に配設された既存配管29にそれぞれ接続されている。既存配管29は、鉛直に配管された排水用たて管30および給水用たて管31およびガス用たて管32と、図示せぬ電柱などに接続された引込線33とから構成されている。給水用たて管31の端部には図示せぬバルブが備えられた給水メータ35が接続されている。また、ガス用たて管32の端部には図示せぬバルブが備えられたガスメータ38が接続されている。さらに、引込線33の端部には電力を分岐させる分電盤40が接続されている。
【0034】
また、第2の接続配管28は、排水用たて管30と排水ヘッダー27aとを接続する排水用接続配管34、給水メータ35と給水ヘッダー27bとを接続するとともに給水メータ35と給湯ヘッダー27cとを給湯器36を介して接続する給水給湯用接続配管37、ガスメータ38とガス管ヘッダー27dとを接続するガス用接続配管39、および分電盤40と配線ボックス27e、27fとを接続する接続電線41から構成されている。
【0035】
次に、上記した二重床パネル8を使用したキッチン床2の施工方法について説明する。
【0036】
まず、図4に示すように、二重床パネル8のパネル部5下面の所定位置に、吊り部15を配置して基台部16bをパネル部5下面に当接させる。そして、基台部16bの下方からインパクトにより雄ねじ16を捻じ込み、吊り部15をパネル部5下面に固定する。
【0037】
次に、図1、図2、図3に示すように、スラブ4上の設備配管3が配管される箇所に吊り部15が設けられた二重床パネル8を敷設するとともに、設備配管3が配管されない箇所に吊り部無二重床パネル7を敷設する。キッチン台1側の設備配管3の一端部が配置される箇所にはボックス部17が備えられた二重床パネル8を配置し、設備配管3の他端部が配置される箇所には、受け皿部24が備えられた二重床パネル8を配置する。また、設備配管3中間部の配管経路となるキッチン床2の形成範囲では、吊り部無二重床パネル7が嵌め込まれる程度の間隔(例えば、910mm×910mmの正四角形のモジュールに対応した間隔)をあけて二重床パネル8を配置する。
【0038】
次に、パネル部5の下方に設備配管3を配列するとともに、二重床パネル8のパネル部5の下面端部に付設された吊り部15に設備配管3をそれぞれ掴持させ、設備配管3を二重床パネル8から吊り下げる態様でスラブ4の上方に配管する。また、各々の設備配管3の一端部をボックス部17に設けられた対応するソケット20の一端に差し込んでそれぞれ接続するとともに、各々の設備配管3の他端部を受け皿部24の中に格納された対応するヘッダー27にそれぞれ接続する。
【0039】
次に、キッチン台1を二重床パネル8上に設置し、キッチン台1に第1の接続配管21の一端を接続する。そして、第1の接続配管21の他端を各々のソケット20の他端に差し込んでそれぞれ接続し、ソケット20を介して排水管9に接続される第1の接続配管21に圧送ポンプ22を介装させる。また、それぞれの設備配管3の配管位置や管径、管材種等の情報をバーコード化し、このバーコードが表記されたシールからなる識別表示23をボックス部17の傾斜面17aに貼り付ける。
【0040】
また、受け皿部24の中に格納された各々のヘッダー27と、これらのヘッダー27にそれぞれ対応する既存配管29或いは既存配管29に接続された給水メータ35やガスメータ38や分電盤40とを、第2の接続配管28によってそれぞれ接続する。
【0041】
次に、間隔をあけて配置された二重床パネル8の間に吊り部無二重床パネル7を嵌装させる。この吊り部無二重床パネル7は、二重床パネル8の間に配管された設備配管3と離隔された状態で配置される。
【0042】
上記した構成からなる二重床パネル8、キッチン床(二重床)構造およびキッチン床(二重床)の施工方法によれば、設備配管3は吊り部15によって吊り下げられているため、スラブ4に固定されずにパネル部5下面に固定される。これによって、設備配管3をキッチン床2の下に配管する作業に伴う騒音および振動が少なくすることができる。また、設備配管3は吊り部15のクランプ部15aに掴持されているので容易に取り外しを行うことができる
【0043】
また、吊り部15はパネル部の端部に配置されているため、パネル部5下面に固定された吊り部15に設備配管3を脱着させる作業は、二重床パネル8をスラブ4上に置いた状態で二重床パネル8の側方から行うことができる。これによって、設備配管3を配管する際に墨出しを必要とせず、現場の状況に応じて容易に配管することができる。
【0044】
また、二重床パネル8は間隔をあけて配置され、隣り合う二重床パネル8の間には吊り部無二重床パネル7が配置されているため、メンテナンスを行う際には吊り部無二重床パネル7を取り外すことにより、設備配管3が固定された二重床パネル8を剥がさずに行うことができる。これによって、メンテナンスの作業が容易になり、短時間に行うことができる。
【0045】
また、キッチン台1が設置される二重床パネル8には、ソケット20が取り付けられたボックス部17が備えられているため、キッチン台1を設置する際に二重床パネル8を剥がさずに二重床パネル8の下に配管された設備配管3は接続される。これによって、設置されたキッチン台1との接続作業は容易に行うことができ、キッチン台1の取り替える作業などが容易に行うことができる。また、ソケット20は傾斜面17aに取り付けられているため、設備配管3の屈曲角度は緩やかになる。これによって、屈曲し難い材質の設備配管3でも使用することができる。
【0046】
また、設備配管3の他端が配管される箇所に配置される二重床パネル8には、受け皿部24が備えられ、受け皿部24の内部にはヘッダー27が格納されているため、二重床パネル8を剥がさずに一本の既存配管29から複数の設備配管3に分岐され、複数の設備配管3は各方向にそれぞれ設置されたそれぞれの設備機器にそれぞれ配管される。これによって、キッチン床2に他の設備機器を設置する場合に簡単に配管を接続することができる。
【0047】
さらに、二重床パネル8を間隔をあけて配置し、設備配管3を配置するとともに設備配管3を吊り部15に支持し、間隔をあけて配置された二重床パネル8の間に設備配管3と離隔されている吊り部無二重床パネル7を嵌装するため、吊り部無二重床パネル7を配置するスペースから設備配管3を吊り部15に取り付けられる。これによって、吊り部15に設備配管3を取り付ける作業は簡単に行うことができる。
【0048】
以上、本発明に係る二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した本実施の形態では吊り部15は雄ねじ16によって固定されているが、本発明は、図9、図10に示すように、パネル部100に端部に形成された欠き込み部100aに、設備配管104を掴持する吊り部101が固定された既製の吊り下地102を嵌装させることで、吊り部101をパネル部100に固定してもよい。パネル部100上面の欠き込み部100a外縁には窪み部100bが形成されており、窪み部100bの上方に吊り下地102の上方端部が載せられる。吊り下地102の上方端部に形成されたねじ孔103から雄ねじ106がパネル部100内に捻じ込まれ固定される。また、吊り下地102の上面に欠き込み部102aを形成して電気配線105を床下から床上に配線してもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態では吊り部15は直接パネル部5の下面に取り付けられているが、本発明は、図11に示すように、パネル部200の下面と吊り部201との間に、パネル部200と吊り部201との間隔を調整するスペーサー202が介在されていてもよい。これによって、設備配管203同士が交わる場合に、互いに干渉せず上下に交差させることができる。
【0050】
また、上記した実施の形態では設備配管3の一端部はボックス部17に取り付けられたソケット20に接続されているが、本発明は、図12に示すように、パネル部300の端部に欠き込み部300aを形成し、この欠き込み部300aの上方に複数の欠き込み部301aが形成された矩形板301を載せて雄ねじ302で固定してもよい。これによって、矩形板301の欠き込み部301aから設備配管303が挿通され、壁際に図示せぬ設備機器がある場合等に壁際に設備配管303を立ち上げることができる。
【0051】
また、上記した実施の形態では受け皿部24を挿通する設備配管3は、受け皿部24が備えられた二重床パネル8端部に取り付けられた吊り部15によって支持されているが、本発明は、図13、図14に示すように、受け皿部400に円筒形のガイド部401を固定し、このガイド部401の中に設備配管402を挿通させて支持してもよい。このような構成により、設備配管402は、受け皿部400が備えられたパネル部403端部に吊り部を取り付けなくても支持される。このため、設備配管402を取り付ける作業は簡易化することができる。
【0052】
また、上記した実施の形態では、受け皿部24が備えられた二重床パネル8の隣りには二重床パネル8が配置されているが、本発明は受け皿部24が備えられた二重床パネル8の隣りに吊り部無二重床パネル7を配置してもよい。また、上記した実施の形態では、受け皿部24は二重床パネル8に備えられているが、吊り部無二重床パネル7に受け皿部24を取り付けてもよい。また、上記した実施の形態では、ボックス部17が備えられた二重床パネル8の隣りには吊り部無二重床パネル7が配置されているが、ボックス部17が備えられた二重床パネル8の隣りに二重床パネル8を配置してよい。さらに、上記した実施の形態では、ボックス部17は二重床パネル8に備えられているが、吊り部無二重床パネル7にボックス部17を取り付けてもよい。
【0053】
さらに、上記した実施の形態ではボックス部17および受け皿部24はそれぞれスチール板から形成されているが、その材質は適宜変更可能であり、例えば樹脂系材料やアルミ製材料、ステンレス製材料などでもよい。また、上記した実施の形態ではソケット20には差し込み式の継手部を使用しているが、本発明は捻じ込み式の継手部を使用してもよく、溶接接合する継手部を使用してよい。また、上記した実施の形態ではボックス部17の傾斜面17aの傾斜角度は45°であるが、第1の接続配管21の延在方向に応じて傾斜面17aの傾斜角度は30°から60°の範囲で適宜変更可能である。
【0054】
【発明の効果】
以上のように説明した本発明に係る二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法によれば、設備配管は吊り部によって吊り下げられて支持されているため、床下に設備配管を配管する作業に伴う騒音および振動を少なくすることができる。また、設備配管は吊り部によって吊り下げられ配管されるため、設備配管を配管する際に墨出しを必要とせず、現場の状況に応じて容易に配管することができる。また、吊り部は二重床パネルの端部に設けられており、二重床パネルの側方から吊り部を取り扱うことができるため、設備配管のメンテナンスを行う際に容易に取り外しを行うことができる。また、二重床パネルの隣りに吊り部無二重床パネルが配置されるため、吊り部無二重床パネルを外すことで二重床パネル下のメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二重床パネル、二重床構造および二重床の施工方法を説明するための見上図である。
【図2】本発明に係る吊り部無二重床パネルを説明するための断面図である。
【図3】本発明に係る二重床パネルを説明するための断面図である。
【図4】本発明に係る吊り部を説明するための断面図である。
【図5】本発明に係るボックス部を説明するための断面図である。
【図6】本発明にかかるボックス部の実施の形態を説明するための平面図である。
【図7】本発明に係る受け皿部を説明するための図1に示すA―A断面の矢視図である。
【図8】本発明に係る受け皿部を説明するための図1に示すB―B断面の矢視図である。
【図9】本発明のその他の実施の形態を説明するための斜視図である。
【図10】本発明のその他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図11】本発明のその他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図12】本発明のその他の実施の形態を説明するための斜視図である。
【図13】本発明のその他の実施の形態を説明するための断面図である。
【図14】本発明のその他の実施の形態を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
1 キッチン台(設備機器)
2 キッチン床(二重床)
3、104、203、303、402 設備配管
5、100、200、300、403 パネル部
6 脚部
7 吊り部無二重床パネル
8 二重床パネル
15、101、201 吊り部
17 ボックス部
17a 傾斜面
20 ソケット(継手部)
21 第1の接続配管
24、400 受け皿部
27 ヘッダー
28 第2の接続配管
29 既存配管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脚部によって支持され、下方に設備配管が配管される板状のパネル部から構成される二重床パネルにおいて、
前記パネル部の下面には、前記設備配管を支持する吊り部が垂設されていることを特徴とする二重床パネル。
【請求項2】
請求項1記載の二重床パネルにおいて、
前記吊り部は、前記パネル部の端部に配置されていることを特徴とする配管付二重床パネル。
【請求項3】
請求項1または2記載の二重床パネルにより形成される二重床構造であって、
前記吊り部が垂設された側の前記二重床パネルの側方には、前記脚部と前記パネル部とから構成され下方に前記設備配管が配管されているとともに該設備配管とは離されている吊り部無二重床パネルが配置されていることを特徴とする床構造。
【請求項4】
請求項3記載の床構造において、
前記二重床パネルと前記吊り部無二重床パネルとのうち何れか一方には上方に開放された箱状のボックス部が備えられ、該ボックス部には一端が前記第1の接続配管の先端部に接続され他端が前記設備配管の端部に接続される継手部が挿設されていることを特徴とする床構造。
【請求項5】
請求項4記載の床構造において、
前記継手部が挿設されている前記ボックス部の壁部には、上方に向かって開く傾斜面が形成されていることを特徴とする床構造。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の床構造において、
前記二重床パネルと前記吊り部無二重床パネルとのうち何れか一方には上方に開放された箱状の受け皿部が備えられ、該受け皿部内には前記既存配管に接続された第2の接続管と前記設備配管の端部との間に介装されたヘッダーが収納されていることを特徴とする床構造。
【請求項7】
スラブ上に形成するとともに該スラブとの間に設備配管を配管する配管空間を形成する二重床の施工方法において、
請求項1記載の二重床パネルを前記スラブ上に間隔をあけて配置し、該スラブ上に前記設備配管を配置するとともに該設備配管を前記吊り部に支持し、間隔をあけて配置された前記二重床パネルの間に前記脚部と前記パネル部とから構成されているとともに前記設備配管と離隔されている吊り部無二重床パネルを嵌装することを特徴とする二重床の施工方法。
【請求項1】
複数の脚部によって支持され、下方に設備配管が配管される板状のパネル部から構成される二重床パネルにおいて、
前記パネル部の下面には、前記設備配管を支持する吊り部が垂設されていることを特徴とする二重床パネル。
【請求項2】
請求項1記載の二重床パネルにおいて、
前記吊り部は、前記パネル部の端部に配置されていることを特徴とする配管付二重床パネル。
【請求項3】
請求項1または2記載の二重床パネルにより形成される二重床構造であって、
前記吊り部が垂設された側の前記二重床パネルの側方には、前記脚部と前記パネル部とから構成され下方に前記設備配管が配管されているとともに該設備配管とは離されている吊り部無二重床パネルが配置されていることを特徴とする床構造。
【請求項4】
請求項3記載の床構造において、
前記二重床パネルと前記吊り部無二重床パネルとのうち何れか一方には上方に開放された箱状のボックス部が備えられ、該ボックス部には一端が前記第1の接続配管の先端部に接続され他端が前記設備配管の端部に接続される継手部が挿設されていることを特徴とする床構造。
【請求項5】
請求項4記載の床構造において、
前記継手部が挿設されている前記ボックス部の壁部には、上方に向かって開く傾斜面が形成されていることを特徴とする床構造。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の床構造において、
前記二重床パネルと前記吊り部無二重床パネルとのうち何れか一方には上方に開放された箱状の受け皿部が備えられ、該受け皿部内には前記既存配管に接続された第2の接続管と前記設備配管の端部との間に介装されたヘッダーが収納されていることを特徴とする床構造。
【請求項7】
スラブ上に形成するとともに該スラブとの間に設備配管を配管する配管空間を形成する二重床の施工方法において、
請求項1記載の二重床パネルを前記スラブ上に間隔をあけて配置し、該スラブ上に前記設備配管を配置するとともに該設備配管を前記吊り部に支持し、間隔をあけて配置された前記二重床パネルの間に前記脚部と前記パネル部とから構成されているとともに前記設備配管と離隔されている吊り部無二重床パネルを嵌装することを特徴とする二重床の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2004−278036(P2004−278036A)
【公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−67994(P2003−67994)
【出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(502161140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(502161140)
【Fターム(参考)】
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