説明

二重折板屋根構造

【課題】上折板屋根材の長さの種類をできるだけ少なくし、生産性を向上させた二重折板屋根構造を提供する。
【解決手段】本発明の二重折板屋根構造は、母屋又は小梁に複数のタイトフレーム6を介して下折板屋根材11が敷設され、屋根勾配方向の端部同士が接続された複数の上折板屋根材4が、支持具5を介して下折板屋根材11に敷設された二重折板屋根構造である。上折板屋根材4の接続部分は、平面視においてタイトフレーム6からずれて位置する接続部分を含む。上折板屋根材4を支持する前記支持具5は、前記下折板屋根材11における前記タイトフレーム6の存在する位置に取り付けられて接続部分又はそれ以外の部分を支持する第1の支持具55と、前記下折板屋根材11における前記タイトフレーム6の存在しない位置に取り付けられて前記接続部分を支持する第2の支持具56とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重折板屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下折板屋根材の上に上折板屋根材が葺設され、折板屋根材が上下に隔設された二重折板屋根構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1記載の二重折板屋根構造は、小梁又は母屋(以下、母屋等という)上にタイトフレームが載設されると共にこのタイトフレーム上に下段の折板屋根材が設置され、タイトフレームの上方に取り付けられた支持具を介して上段の折板屋根材が設置されている。タイトフレームは、母屋等に載設されることで、当該母屋等のピッチと同じピッチで、互いに平行となるよう並設されている。
【0004】
ところで、折板屋根材は、屋根勾配方向(つまり流れ方向)に継ぎ目なく葺設されるのが一般的である。一方、この折板屋根材を輸送するために、通常トラックが使用されるが、このトラックは、その全長が法上制限されている(道路法第47条,車両制限令第3条)。このため、流れ方向に継ぎ目なく折板屋根材を葺設するには、例えば、屋根の流れ方向の長さに応じて、次のようにして施工する。
【0005】
屋根の流れ方向の長さが所定の長さよりも短い場合、折板屋根材をトラックに積載することができるので、折板屋根材を工場等で成形したうえで現場に搬入することが可能となる。したがって、予め成形した折板屋根材を現場に搬入し、この折板屋根材を用いて施工を行なう。
【0006】
一方、屋根の流れ方向の長さが所定の長さを超える場合には、車両長さに制約があるため、成形された折板屋根材をトラックに積載することができない。このためこの工法では、あらかじめ工場等で折板屋根材を成形したうえで輸送することができなかった。
【0007】
そこでこの場合、現場にロール成形機を搬入することで対応する。すなわち、例えばフープ材を現地に搬入し、現場に設置されたロール成形機を用いて、現場で折板屋根材を成形する。これにより長尺の折板屋根材が必要になる場合においても、現場で折板屋根材を成形しながら屋根葺き作業を行なうことができ、長尺の折板屋根を葺くことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−132172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところがこのロール成形機は、フープ材等の長尺の金属板を順次連続的に加工するものであるため、その長さ方向寸法が金属板搬送方向に長くなってしまう。このため、ロール成形機を設置するためには、相当な大きさの設置場所が必要となる。ところが現場によっては、この設置場所を確保することができない。
【0010】
このような問題点を解消するため、トラックにて運搬可能な長さの折板屋根材を複数使用し、これらを流れ方向に連結することが考えられた。トラックにより運搬可能な長さに折板屋根材を成形したうえで現場に搬入するようにすれば、ロール成形機を現場に搬入する必要がなくなり、しかも折板屋根材の長さが短いため施工者が扱い易い。
【0011】
一方、折板屋根材を流れ方向に連結させた場合、この連結部分における強度が低下するという問題が生ずる。そこでこの強度低下の問題を解消するため、次のように施工する。
【0012】
折板屋根材の長さ方向の端部がタイトフレームの丁度上方に位置するように、折板屋根材の長さ方向の寸法を決定して折板屋根材を成形する。そして長さ方向に折板屋根材を連結した際、この連結した部分をタイトフレームの上方に取り付けられた支持具によって支持固定する。このように、折板屋根材をタイトフレームのピッチに合わせた設計寸法にて成形することで、折板屋根材の連結部分を支持具によって支持できるようにし、これにより当該連結部分の強度低下を防いでいた。
【0013】
ところが実際の建物は、タイトフレームが設置される母屋等のピッチが不規則な場合がほとんどである。このためタイトフレームのピッチも不規則となってしまう。タイトフレームのピッチが不規則となると、折板屋根材の設計上の寸法もタイトフレーム間の寸法に応じて変化してしまう。このため折板屋根材を工場等において生産するには、折板屋根材の長さの種類が多く必要であり、生産性が悪いという問題があった。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上折板屋根材の長さの種類をできるだけ少なくし、生産性を向上させた二重折板屋根構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の二重折板屋根構造は、母屋又は小梁に複数のタイトフレーム6を介して下折板屋根材11が敷設され、屋根勾配方向の端部同士が接続された複数の上折板屋根材4が、支持具5を介して下折板屋根材11に敷設された二重折板屋根構造であって、前記上折板屋根材4の接続部分は、平面視においてタイトフレーム6からずれて位置する接続部分を含んでおり、前記上折板屋根材4を支持する前記支持具5は、前記下折板屋根材11における前記タイトフレーム6の存在する位置に取り付けられて前記接続部分又はそれ以外の部分を支持する第1の支持具55と、前記下折板屋根材11における前記タイトフレーム6の存在しない位置に取り付けられて前記接続部分を支持する第2の支持具56とを具備するものであることを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、不規則なピッチでタイトフレーム6が並設されたとしても、そのタイトフレーム6の位置に拘らず、上折板屋根材4を所定長さに保ったまま、強度を保持して上折板屋根材4を設置することができる。すなわちタイトフレーム6が上折板屋根材4の長手方向におけるどの位置に位置していても、それに依存することなく上折板屋根材4の設計長さを決定することができるため、上折板屋根材4の長さの種類を減らすことができる。
【0017】
また本発明の二重折板屋根構造は、前記下折板屋根材11が既設の折板屋根であり、前記上折板屋根材4が、下折板屋根材11を覆うように新設された折板屋根材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の二重折板屋根構造によれば、上折板屋根材の長さの種類をできるだけ少なくし、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の二重折板屋根構造を説明するための図であり、(a)は平面図であり(b)は正面図である。
【図2】(a)(b)は、本実施形態の二重折板屋根構造の接続部を説明するための断面図である。
【図3】本実施形態の二重折板屋根構造の要部正面図である。
【図4】本実施形態の二重折板屋根構造の第1の上折板屋根材と第2の上折板屋根材と第4の上折板屋根材の分解斜視図である。
【図5】本発明の他例の二重折板屋根構造を説明するための図であり、(a)は平面図であり(b)は正面図である。
【図6】従来の二重折板屋根構造を説明するための図であり、(a)は平面図であり(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施形態の二重折板屋根構造は、既設の下折板屋根1を改修するため当該下折板屋根1の上に新設の上折板屋根2を葺き替えたものである。本実施形態の二重折板屋根構造は、下折板屋根1の上に、全面に亘って略一定に形成された隙間を介して上折板屋根2が葺設され、上下2段となるよう構成されている。本実施形態の二重折板屋根構造は、不規則なピッチで並設された小梁又は母屋(以下、母屋等7という)の上にタイトフレーム6が載設され、このタイトフレーム6上に上下2段の折板屋根材が葺設されている。
【0022】
タイトフレーム6は、母屋等7の上に載設され下折板屋根1を固定するための部材である。本実施形態のタイトフレーム6は、図3に示されるように、断面略U字形状の下折板屋根材11が嵌め込まれる谷部61と、母屋等7の長手方向に沿って隣接配置された下折板屋根材11の端縁同士をはぜ継ぎ固定する部分となる山部62とを備えている。またタイトフレーム6は、山部62及び谷部61を母屋等7の上面に固定する固定部(図示せず)をさらに備えている。本実施形態のタイトフレーム6は、山部62と谷部61とが交互に連設されており、長手方向の両端に固定部が連設されている。タイトフレーム6は、帯状の金属板を曲げ加工することにより形成される。
【0023】
タイトフレーム6は、山部62の頂部に吊子63が取り付けられている。この吊子63は、母屋等7の長手方向に沿って並ぶように配置された下折板屋根材11間に位置しており、当該下折板屋根材11の端縁同士をはぜ締めする際に共にはぜ締めされて、下折板屋根材11を固定する。
【0024】
このタイトフレーム6は、母屋等7の長手方向に沿って略直線状に載設される。これによりタイトフレーム6は、母屋等7と略同じピッチで、且つその長手方向が互いに略平行となるようにして配置固定される。
【0025】
下側に葺設される下折板屋根1は、屋根勾配方向(つまり流れ方向)に長い下折板屋根材11が、流れ方向とは直角な方向に並ぶように複数配置され、この下折板屋根材11の隣接する端部同士が連結されることで構成されている。なお本実施形態の下折板屋根1は、改修前の既設の折板屋根により構成されている。
【0026】
下折板屋根材11は、帯状の鋼板を断面略U字形状に曲げ加工することで形成される。下折板屋根材11は、図3に示されるように、タイトフレーム6の谷部61の底面に沿って配置される底面部12と、この底面部12における長さ方向に直角な方向の両端から上方に向けて連設された一対の立設部13と、この立設部13の突出端縁から延設されたはぜ継ぎ片14とを備えている。下折板屋根材11の立設部13は、上方ほど対向間の距離が大きくなるよう傾斜しており、タイトフレーム6の山部62に沿って配置される。このような下折板屋根材11は、底面部12と立設部13とはぜ継ぎ片14とが、曲げ加工により一体に形成されている。
【0027】
本実施形態の母屋等7は、互いに略平行となるよう複数並設されている。本実施形態の母屋等7は、図1に示されるように、各母屋等7の中心間寸法が、それぞれ異なっており、不規則なピッチとなっている。母屋等7は、既存の屋根下地材であり、例えば、H型綱やC型綱やリップ溝型綱などにより構成されている。
【0028】
下折板屋根材11を葺設するには、例えば次のように施工する。
【0029】
施工者はタイトフレーム6を母屋等7に載設する。このとき、母屋等7の長手方向とタイトフレーム6の長手方向とを同一方向に向けた状態で、略一直線状にタイトフレーム6を設置する。これによりタイトフレーム6は、母屋等7の長手方向に直角な方向に離設され、当該タイトフレーム6の長手方向が、隔設された別のタイトフレーム6と略平行となる。なおこのタイトフレーム6が離間して並ぶ方向(すなわち、タイトフレーム6の並設方向)は、屋根勾配方向と同方向となる。
【0030】
次いで施工者は、略U字状の下折板屋根材11を、離設されたタイトフレーム6間を架け渡すようにして、当該タイトフレーム6の谷部61内に嵌入して設置する。このとき下折板屋根材11は、その長さ方向が、タイトフレーム6の並設方向と同じ方向となるよう配置される。
【0031】
その後施工者は、設置した下折板屋根材11に対し、タイトフレーム6の長手方向に並ぶよう別の下折板屋根材11を配置する。この後、隣接配置された両下折板屋根材11を、はぜ継ぎ片14を介してはぜ継ぎ固定する。このとき、タイトフレーム6の山部62に取り付けられた吊子63も共にはぜ締めすることで、下折板屋根材11とタイトフレーム6とを吊子63を介して固定する。
【0032】
なお、この下折板屋根1の取り付けにおいては、はぜ締めによる接合でなくてもよく、例えば、ボルト53留めや嵌合方式であってもよい。また、本実施形態の折板屋根構造においては、はぜ継ぎ部分の形状を角ハゼ形状としたが、丸ハゼ形状としたものであってもよい。
【0033】
このようにして形成された下折板屋根1は、流れ方向(例えば軒棟方向)に連続する突条部15が、流れ方向とは直角な方向に複数並んで形成される。この突条部15は、図3に示されるように、その頂面151から、下折板屋根材11のはぜ継ぎ片14同士をはぜ継ぎ固定することで形成されたはぜ継ぎ固定部16が、上方に向けて突設されている。なお、はぜ継ぎ固定部16は、突条部15の長手方向の略全長に亘って形成されている。
【0034】
本実施形態の二重折板屋根構造は、この下折板屋根1の上に上折板屋根2が葺設される。すなわち下折板屋根1を葺き替えるため、この下折板屋根1上を覆うように上折板屋根2が設置される。
【0035】
上折板屋根2は、下折板屋根1のはぜ継ぎ固定部16に取り付けられた支持具5により、下折板屋根1上に支持される。上折板屋根2は、タイトフレーム6の長手方向に並ぶように配置され且つ互いにはぜ継ぎ固定部33を介して連結された複数の折板連結体3により構成されている。各折板連結体3は、タイトフレーム6の並設方向(つまり流れ方向)に並ぶ複数の上折板屋根材4が接続部21を介して互いに連結されることで構成されている。
【0036】
なお以下、必要に応じ、タイトフレーム6の長手方向に並ぶよう配置された折板連結体3を第1の折板連結体31,第2の折板連結体32,・・・として区別する。また、第1の折板連結体31を構成する上折板屋根材4を、図1に示すように水下側から順に、第1の上折板屋根材41,第2の上折板屋根材42,第3の上折板屋根材43として区別し、第2の折板連結体32を構成する上折板屋根材4を、水下側から順に、第4の上折板屋根材44、第5の上折板屋根材45として区別する。
【0037】
上折板屋根材4は、図4に示されるように、断面略U字形状をしており、下折板屋根材11と略同じ断面形状をしている。上折板屋根材4は、平坦部46と、この平坦部46の長さ方向に直角な方向の両端から上方に向けて連設された一対の立上部47と、立上部47の端縁に設けられた連結片48とを備えている。上折板屋根材4の立上部47は、上方ほど対向間の距離が大きくなるよう傾斜しており、下折板屋根1の突条部15の斜面に沿って配置される。このような上折板屋根材4は、平坦部46と立上部47と連結片48とが、曲げ加工により一体に形成されている。この上折板屋根材4は、流れ方向に隣接する別の上折板屋根材4に接続部21を介して連結されている。
【0038】
本実施形態の上折板屋根材4は、少なくとも、第1の上折板屋根材41と第3の上折板屋根材43とが同じ長さ寸法L6で形成され、第4の上折板屋根材44と第5の上折板屋根材45とが同じ長さ寸法L7で形成されている。
【0039】
接続部21は、水下側(つまり軒側)に位置する上折板屋根材4と、水上側(つまり棟側)に位置する上折板屋根材4との連結部位である。接続部21は、水下側に位置する上折板屋根材4(例えば第1の上折板屋根材41)の水上側の端部を覆うようにして、水上側に位置する上折板屋根材4(例えば第2の上折板屋根材42)の水下側の端部が配置されることで形成される。このように本実施形態の接続部21は、上折板屋根材4の端部同士を重ね合わせることで形成されている。接続部21は、上下に重なった部分に介装された止水材8を有している。
【0040】
接続部21には、図1,2に示されるように、流れ方向とは直角な方向に隣接するようにして、流れ方向に連続する上折板屋根材4が配置固定されている。つまり接続部21における流れ方向とは直角な方向のはぜ継ぎ固定部33は、端部同士が重合された2枚の上折板屋根材4,4と、これに隣接する1枚の上折板屋根材4とが、はぜ締めされる事で形成されている。なお、図2(a)は、第1の上折板屋根材41及び第2の上折板屋根材42の接続部21と、第4の上折板屋根材44とのはぜ継ぎ固定部33を示している。また図2(b)は、第4の上折板屋根材44及び第5の上折板屋根材45の接続部21と、第2の上折板屋根材42とのはぜ継ぎ固定部33を示している。
【0041】
本実施形態の第1の折板連結体31は、所定長さの第1の上折板屋根材41と所定長さの第2の上折板屋根材42とが、接続部21を介して接続され、且つ第2の上折板屋根材42と所定長さの第3の上折板屋根材43とが接続部21を介して接続されて構成されている。これにより第1の折板連結体31は、上折板屋根材4の平坦部46及び立上部47及び連結片48が、流れ方向の全長に亘って連続する。また、第2の折板連結体32は、所定長さの第4の上折板屋根材44と所定長さの第5の上折板屋根材45とが、接続部21を介して接続されることで構成されている。第2の折板連結体32は、第1の折板連結体31と同様、上折板屋根材4の平坦部46及び立上部47及び連結片48が、流れ方向の略全長に亘って連続する。
【0042】
本実施形態の二重折板屋根構造は、母屋等7が不規則な中心間距離で配設されたものである。一方、第1の折板材と第3の折板材とは同じ長さで形成され、第4の上折板屋根材44と第5の上折板屋根材45とは同じ長さで形成されている。このため本実施形態の二重折板屋根構造は、図1に示されるように、第1の折板連結体31における接続部21がタイトフレーム6に対し、平面視において流れ方向にずれて位置している。
【0043】
支持具5は、図3に示されるように、下折板屋根1のはぜ継ぎ固定部16に装着される本体部51と、本体部51から上方に突出するようにして設けられ且つ上折板屋根材4を固定する吊子片54とを備えている。
【0044】
本体部51は、下折板屋根1の突条部15から突設されたはぜ継ぎ固定部16に取り付けられる部分であり、下折板屋根1と上折板屋根2との間に配置される。本体部51は、水平方向に着脱自在に分割された一対の分割体により構成されている。一対の分割体は、はぜ継ぎ固定部16の長手方向に直角な方向に貫通する貫通孔52を有している。本体部51は、はぜ継ぎ固定部16の両側に配置され、この状態で貫通孔52にボルト53が挿通され、当該ボルト53が締結されることで取り付けられる。なおボルト53を締結すると、分割体が互いに近付く方向に移動し、これによりはぜ継ぎ固定部16を両側から挟持する。
【0045】
吊子片54は、本体部51にボルト53を介して取り付けられている。吊子片54は、本体部51から上方に向けて突出している。本実施形態の吊子片54は、断面略逆L字状に形成されており、流れ方向とは直角な方向に隣接する上折板屋根材4間に配置される。吊子片54は、隣接配置された上折板屋根材4の連結片48と当該吊子片54とが三者共にはぜ締めされることで、上折板屋根材4を固定する。
【0046】
このような構成の支持具5は、本体部51がはぜ継ぎ固定部16に装着され、且つ吊子片54が上折板屋根材4にはぜ締めされることで、下折板屋根1上に上折板屋根2を支持する。これにより支持具5は、一定の間隔を介して下折板屋根1上に上折板屋根2を隔設する。
【0047】
本実施形態の支持具5は、図1に示されるように、下折板屋根材11において、タイトフレーム6の存在する部位に取り付けられ、且つ上折板屋根材4の接続部21を支持する位置であってタイトフレーム6の存在しない部位にも取り付けられる。以下、タイトフレーム6の存在する部位に取り付けられる支持具5を第1の支持具55とし(図3参照)、接続部21を支持する箇所であってタイトフレーム6の存在しない部位に取り付けられる支持具5を第2の支持具56とする(図2参照)。
【0048】
次に、既に葺設された下折板屋根1の上方に、新設する上折板屋根2を葺設する方法につき説明する。
【0049】
まず作業者は、平面視で下折板屋根1のはぜ継ぎ固定部16とタイトフレーム6とが重なる部位(すなわちタイトフレーム6に対応する部位)の全てに第1の支持具55を配置し固設する。次に、第1の上折板屋根材41の水下側の端部を下折板屋根1の水下側端部に揃えた状態で、当該第1の上折板屋根材41を下折板屋根1上に配置する。このとき、第1の上折板屋根材41の水上側の端部は、第1の支持具55よりも水上側に位置しており、タイトフレーム6に対応する位置から流れ方向にずれて位置している。次いで作業者は、第1の上折板屋根材41の水上側の端部の下方に、第2の支持具56を配設する。
【0050】
その後、第1の上折板屋根材41の水上側の端部に、第2の上折板屋根材42の水下側の端部を上から重ねるようにして、第2の上折板屋根材42を配置する。その後上記と同様にして、第2の上折板屋根材42の水上側の端部の下方に第2の支持具56を配置する。次いで、第2の上折板屋根材42の水上側端部に、第3の上折板屋根材43の水下側端部を重ねるようにして、第3の上折板屋根材43を配設する。これにより第1の折板連結体31が設置される。
【0051】
次いで、第1の折板連結体31に対し、流れ方向とは直角な方向に並設するようにして第2の折板連結体32を設置する。このとき、第4の上折板屋根材44と第5の上折板屋根材45との接続部21が、第1の上折板屋根材41と第2の上折板屋根材42との接続部21及び第2の上折板屋根材42と第3の上折板屋根材43との接続部21に、流れ方向とは直角な方向に重ならないよう配置される。本実施形態の第4の上折板屋根材44と第5の上折板屋根材45との接続部21は、第1の上折板屋根材41と第2の上折板屋根材42との接続部21と、第2の上折板屋根材42と第3の上折板屋根材43との接続部21との間の略中間に位置するよう構成されている。
【0052】
そしてこの状態で、流れ方向に沿って順次、連結片48同士をはぜ継ぎ締結してゆく。なお、このはぜ継ぎ締結の作業には、手動または自動による専用のカシメ工具を使用する。このようにして上折板屋根2を下折板屋根1の上に葺設することができる。
【0053】
このように本実施形態の二重折板屋根構造は、母屋等7の中心間距離が不規則であるにも拘らず、屋根の強度を確保したまま、第1の上折板屋根材41と第3の上折板屋根材43とを同じ長さにでき、また第4の上折板屋根材44と第5の上折板屋根材45とを同じ長さにすることができる。すなわち、上折板屋根材4の長さの種類を減らすことができるため、上折板屋根材4の生産性を向上させることができる。
【0054】
なおこの点について、母屋等7のピッチが不規則である場合の従来の工法では、図6に示されるように、母屋等7のピッチに合わせて折板材の長さを決定していた。これは、上折板屋根材4の接続部21を支持する支持具5を、タイトフレーム6によって支持するためである。なお、図6に示す例では、少なくとも5種類の長さ寸法(寸法L1,L2,L3,L4,L5)の上折板屋根材4が必要となる。
【0055】
また本実施形態の二重折板屋根構造につき、第4の上折板屋根材44と第5の上折板屋根材45とを同じ長さ寸法L7で形成するだけでなく、さらに第2の上折板屋根材42をこれらと同じ長さ寸法L7で形成し、第1の上折板屋根材41と第3の上折板屋根材43とを同じ長さ寸法L6で形成することも可能である。この構成によれば、最低2種類の長さ寸法の上折板屋根材4を形成すればよく、上折板屋根材4の生産性を向上させることができる。しかも、長さの種類が少ないと、施工の際に施工者が紛らわしくなくて、作業効率を向上させることができる。
【0056】
また本実施形態の二重折板屋根構造によれば、母屋等7のピッチに拘らず上折板屋根材4の寸法を決定することができるため、仮に母屋又は小梁のピッチが一定の建物に対しても、上折板屋根材4の長さを現場ごとに設計して製造する必要がない。すなわち、現場に応じて異なる母屋等7のピッチに上折板屋根材4を適合させる必要がなくなるため、上折板屋根材4を予め大量生産しておくことも可能となる。したがって、本発明の二重折板屋根構造は、母屋等のピッチが異なる建物に限定されるものではない。
【0057】
また、本実施形態の第1の支持具は、図1のように、上折板屋根材4において接続部21ではなくそれ以外の部分を支持するものであった。しかし図5に示されるように、接続部21は、複数存在する接続部21のうちの一部の接続部21が、タイトフレーム6上に位置する場合もある(図5(a)の中央部分参照)。この場合、この接続部21は第1の支持具55により支持される。したがって、本発明の第1の支持具は、接続部又はそれ以外の部分を支持するものであってもよい。
【0058】
また本実施形態の二重折板屋根構造は、既設折板屋根の下折板屋根1の上に、新設折板屋根の上折板屋根2を葺き替えるものであったが、本発明の二重折板屋根構造は、新設の下折板屋根の上に新設の上折板屋根を葺設する構造に対しても適用可能なものである。なおこの場合、下折板屋根と上折板屋根との間に、断熱材が介装されても、されなくてもどちらでもよい。したがって、下折板屋根が新設であるか又は既設であるかは、必ずしも必要な要件ではない。
【0059】
また、本実施形態の二重折板屋根構造は、上折板屋根材が4が断面略U字状となっていたが、本発明における上折板屋根材は、例えば、母屋等の長手方向に沿った方向に連続した断面角波状であってもよく、本実施形態の上折板屋根材の形状に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
1 下折板屋根
11 下折板屋根材
12 底面部
13 立設部
14 はぜ継ぎ片
15 突条部
151 頂面
16 はぜ継ぎ固定部
2 上折板屋根
21 接続部
3 折板連結体
31 第1の折板連結体
32 第2の折板連結体
4 上折板屋根材
41 第1の上折板屋根材
42 第2の上折板屋根材
43 第3の上折板屋根材
44 第4の上折板屋根材
45 第5の上折板屋根材
46 平坦部
47 立上部
48 連結片
5 支持具
51 本体部
52 貫通孔
53 ボルト
54 吊子片
55 第1の支持具
56 第2の支持具
6 タイトフレーム
61 谷部
62 山部
63 吊子
7 母屋等

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母屋又は小梁に複数のタイトフレームを介して下折板屋根材が敷設され、
屋根勾配方向の端部同士が接続された複数の上折板屋根材が、支持具を介して下折板屋根材に敷設された二重折板屋根構造であって、
前記上折板屋根材の接続部分は、平面視においてタイトフレームからずれて位置する接続部分を含んでおり、
前記上折板屋根材を支持する前記支持具は、
前記下折板屋根材における前記タイトフレームの存在する位置に取り付けられて前記接続部分又はそれ以外の部分を支持する第1の支持具と、
前記下折板屋根材における前記タイトフレームの存在しない位置に取り付けられて前記接続部分を支持する第2の支持具と
を具備するものである
ことを特徴とする二重折板屋根構造。
【請求項2】
前記下折板屋根が既設の折板屋根材であり、
前記上折板屋根材が、下折板屋根材を覆うように新設された折板屋根材である
ことを特徴とする請求項1記載の二重折板屋根構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219518(P2012−219518A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86740(P2011−86740)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】