説明

二重構造エアゾール容器の製造方法、これに用いる内袋引上げ装置およびこれに用いる内袋

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、二重構造エアゾール容器の製造方法、これに用いる内袋引上げ装置およびこれに用いる内袋に関し、モノブロック缶、2ピース缶、3ピース缶の開口部から合成樹脂製の内袋を確実に引き上げることができるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
エアゾール容器の一つに二重構造エアゾール容器があり、内容物と噴射剤とを共存させることなく隔離するため、合成樹脂製の内袋を外筒缶内に装着して二重構造とし、内袋内に内容物を充填する一方、外筒缶と内袋との間に噴射剤を充填するようにしたり、内容物が腐蝕性の場合に外筒缶の腐食を防止するため、外筒缶内に合成樹脂製の内袋を密着させて二重構造とし、内袋内に内容物と噴射剤とを充填するようにしている。
【0003】
このような二重構造エアゾール容器は、モノブロック缶、2ピース缶、3ピース缶のいずれであっても、外筒缶と、その中に収納された内袋と、内袋のフランジ部とともに外筒缶の開口部を塞ぐマウンテンカップとで構成されており、モノブロック缶では、インパクト成形などによって胴部と底部とが一体成形され、さらに開口部をネッキング加工により絞り込んで外筒缶が構成され、2ピース缶では、絞り込まれた開口部が一体成形された胴部と底蓋とが連結されて外筒缶が構成され、また3ピース缶では、シールを有する缶胴と底蓋と缶胴を塞ぐ開口部が形成された目金蓋とが連結されて外筒缶が構成されている。
【0004】
外筒缶がいずれのものであっても二重構造エアゾール缶の内袋を納める方法としては、大別して二通りの方法がある。一つは棒状のものを内袋の中に突っ込み、外筒缶の開口部から外筒缶の内部へ押し込む方法である。この方法は開口部の内径より大きい外径を持つ内袋を無理に押し込むことになるのでしばしば内袋が損傷することがある。他の方法は内袋を何らかの方法で外筒缶内に先に入れておき、外筒缶の開口部を通して内袋のネック部とフランジ部を引き上げる方法である。この方法では内袋の損傷は起こらないので、品質保証上は前者より優れた方法である。
【0005】
3ピース缶の場合について第二の方法を具体的に示したのが図7である。シームを有する缶胴1に底蓋2を取り付けて一体とした後、合成樹脂製の内袋3を挿入し、内袋3を押し込むようにしながら目金蓋4を巻き締めて外筒缶5内に内袋3が装着された状態にし、この外筒缶5に装着された内袋3のネック部3aを引上げてフランジ部3bを外筒缶5の開口部5aの外側に位置させ、次いで図示省略したマウンテンカップとともにフランジ部を巻き締めて密封する。
【0006】
このため二重構造エアゾール容器の製造には、外筒缶5の狭い開口部5aである目金蓋4の開口部から内袋3のフランジ部3bを引き上げる必要があり、従来からその方法が種々提案されている。
【0007】
例えば内袋の引上げ方法の一つは、特開平9−136125号公報に開示されているものを図8に示すように、複数の引掛け爪6を先端部に備えたリンク機構7で構成された引き出し装置8を用い、外筒缶5の開口部5aから内袋3内に引掛け爪6を狭ばめて挿入した後、引掛け爪6を拡げて内袋3のネック部3a下端を引っ掛け、装置8全体を引き上げて内袋3のフランジ部3bを引き出すようにするものである。
【0008】
さらに、同公報には、図9に示すように、パイプ9の先端部に風船部9aを取付け、縮めた状態で風船部9aを内袋3内に挿入し、パイプ9から内部に空気を吹き込んで風船部9aを膨らませて内袋3のネック部3a下端を係止し、パイプ9ごと風船部9aを引き上げて内袋3のフランジ部3bを引き出すものが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来の内袋3の引出し装置では、引掛け爪6や風船部9aを外筒缶5の開口部5aの中心に一致させて内袋3内に挿入したのち内袋3を係止しても内袋3の外径が外筒缶5の胴部内径より小なる場合には内袋3のネック部3aの中心を外筒缶5の開口部5aの中心に必ずしも一致させることができず、内袋3を外筒缶5の外に引き上げることができない場合も起こるという問題があった。
【0010】
この発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたもので、外筒缶に収納された内袋がいかなる姿勢や位置であっても内袋ネック部の中心を外筒缶の開口部中心に一致させて確実に内袋を引き上げて二重構造エアゾール容器を製造することができる二重構造エアゾール容器の製造方法、これに用いる内袋引上げ装置およびこれに用いる内袋を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の二重構造エアゾール容器の製造方法は、外筒缶と、その中に収納された内袋と、マウテンカップとからなる二重構造エアゾール容器を製造するに際し、前記外筒缶に挿入された前記内袋内に、円周方向に複数に分割され先端部外周に内袋のネック部下端を係止する段差部が形成された分割コレットと、この分割コレットの中心軸上で往復移動可能に装着されて当該分割コレットを拡縮径する円すい部を備えた操作コアとでなる内袋引上げ装置における当該分割コレットを縮径して外筒缶の中心軸上で挿入した後、前記操作コアの移動で前記分割コレットを拡径して前記段差部で前記内袋のネック部下端を係止し、前記外筒缶の中心軸上で開口部上方に当該内袋のネック部を引き上げた後、内袋引上げ装置を後退させ、前記マウンテンカップとともに前記内袋のフランジ部を密封固定するようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
この二重構造エアゾール容器の製造方法によれば、円周方向に複数に分割された分割コレットと、その中心軸上で往復移動可能に装着されて分割コレットを拡縮径する円すい部を備えた操作コアとでなる内袋引上げ装置を用い、縮径した分割コレットと操作コアを外筒缶の開口部の中心軸上から内袋内に挿入して拡径するようにして内袋ネック部を開口部中心と同軸にするとともに、分割コレットの段差部で係止して内袋を引上げ、装置全体を後退させてマウンテンカップとともにフランジ部を密封固定するようにしており、外筒缶の開口部の中心軸上に配置した操作コアの外周で均一に拡径して内袋を係止することで内袋の姿勢、位置関係にかかわらず中心軸上に心合わせをした状態で確実に引き上げることができるようになる。
【0013】
また、この発明の請求項2記載の二重構造エアゾール容器の製造方法は、請求項1記載の構成に加え、前記分割コレットを拡径して前記内袋を外筒缶の開口部上方に引き上げるに際し、前記分割コレットの外周が前記内袋の内周に摺接しながら引き上げられるようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
この二重構造エアゾール容器の製造方法によれば、さらに内袋を外筒缶の開口部上方に引き上げる際に、分割コレットの外周が内袋の内周に摺接しながら引き上げられるように拡径しており、一層確実に内袋を引き出し、フランジ部を拡げることができるようにしている。
【0015】
さらに、この発明の請求項3記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置は、外筒缶の中に収納された内袋内に挿入されて当該内袋のネック部を外筒缶の開口部上に引き上げる装置であって、円周方向に複数に分割され先端部外周に前記内袋のネック部下端を係止する段差部が形成された分割コレットと、この分割コレットの中心軸上で往復移動可能に装着されて当該分割コレットを拡縮径する円すい部を備えた操作コアとでなることを特徴とするものである。
【0016】
この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、円周方向に複数に分割された分割コレットと、その中心軸上で往復移動可能に装着されて分割コレットを拡縮径する円すい部を備えた操作コアとで内袋引上げ装置を構成するようにしており、縮径した分割コレットと操作コアを外筒缶の開口部の中心軸上から内袋内に挿入し、外筒缶の開口部の中心軸上に配置した操作コアの外周で分割コレットを均一に拡径して内袋ネック部を開口部中心軸と同心にするとともに、分割コレットの段差部で係止して内袋を引上げることで、内袋の姿勢、位置関係にかかわらず中心軸上に心合わせをした状態で確実に引き上げることができるようになる。
【0017】
また、この発明の請求項4記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置は、請求項3記載の構成に加え、前記分割コレットの先端部外周の前記段差部の上方に、引き上げられる内袋の折り重なるフランジ部の逃げ凹部を設けてなることを特徴とするものである。
【0018】
この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに分割コレットの先端部外周の段差部の上方に、引き上げられる内袋の折り重なるフランジ部の逃げ凹部を設けるようにしており、内袋引上げの際に折り重なり厚くなるフランジ部を逃げ凹部に入れるようにでき、一層スムーズに内袋の引上げができるようにしている。
【0019】
さらに、この発明の請求項5記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置は、請求項3または4記載の構成に加え、前記分割コレットの外周に縮径方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とするものである。
【0020】
この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに分割コレットの外周に縮径方向に付勢する付勢手段を設けるようにしており、分割コレットの操作コアによる外周均一な拡径および縮径の操作が操作コアの往復移動だけで円滑にできるようになる。
【0021】
また、この発明の請求項6記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置は、請求項3〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記分割コレットおよび前記操作コアを前記内袋内に挿入・脱出される往復駆動機構と、前記往復駆動機構上に設けられ前記操作コアのみを相対往復駆動して前記分割コレットを拡縮径する拡縮径駆動機構とを備えてなること特徴とするものである。
【0022】
この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに分割コレットおよび操作コアに内袋内に挿入・脱出する往復駆動機構を設け、この往復駆動機構上に拡縮径駆動機構を設けて操作コアのみを相対往復駆動して分割コレットを拡縮径するようにしており、外筒缶の開口部からの内袋の引上げの一連の操作を自動化することもできるようになる。
【0023】
さらに、この発明の請求項7記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置は、請求項6記載の構成に加え、前記内袋内で前記操作コアにより拡径され内袋のネック部下端を前記分割コレットで係止した状態でこれら分割コレットおよび操作コアを一体として前記内袋を引き上げる引上げストローク分だけ移動する引上げ駆動機構を設けたことを特徴とするものである。
【0024】
この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに内袋内で操作コアにより拡径され内袋のネック部下端を分割コレットで係止した状態でこれら分割コレットおよび操作コアを一体として内袋を引き上げる引上げストローク分だけ移動する引上げ駆動機構を設けるようにしており、装置全体を移動して内袋内に挿入・脱出する往復駆動機構の位置決め精度によらず、確実に内袋を引き出すことができるようになる。
【0025】
また、この発明の請求項8記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置は、請求項6または7記載の構成に加え、前記拡縮径駆動機構による縮径位置を規制して内袋の内周に分割コレット外周を摺接可能とする縮径位置規制手段を設けたことを特徴とするものである。
【0026】
この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに拡縮径駆動機構による縮径位置を規制して内袋の内周に分割コレット外周を摺接可能とする縮径位置規制手段を設けるようにしており、この縮径位置規制手段によって装置全体を引き抜く場合に、分割コレットで内袋の外周を外筒缶の開口部内周に押し付けるようにでき、マウンテンカップの取付けが一層確実にできるようになる。
【0027】
さらに、この発明の請求項9記載の二重構造エアゾール容器用の内袋は、外筒缶の中に収納され外筒缶の開口部から引き上げられてマウンテンカップとともに密封固定される内袋であって、この内袋の上部ネック長さが外筒缶の開口部外周のビード直径と内袋上端外周のフランジ幅との和より大きく形成され内袋引上げの際に折り重なったフランジ部が引上げ後に水平に跳ね上がり可能としたことを特徴とするものである。
【0028】
この二重構造エアゾール容器用の内袋によれば、内袋の上部ネック長さが外筒缶の開口部外周のビード直径と内袋上端外周のフランジ幅との和より大きく形成してあり、これにより内袋引上げの際に折り重なったフランジ部が引上げ後に外筒缶のビードに当たることなく確実に水平に跳ね上がるようにでき、内袋の引上げが一層確実にできるようになる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図4はこの発明の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置の一実施の形態にかかり、図1は装置全体の正面図、図2は一部分を断面で示す装置全体の右側面図、図3は分割コレットの縦断面図および底面図、図4は操作コアの正面図である。
【0030】
この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置10は、図3に示すように、円周方向に複数に分割され、複数個で略円筒を形成する分割コレット20を備えており、ここでは円周方向6個に分割された6つのコレット21で分割コレット20が構成されている。
【0031】
この分割コレット20は、6つのコレット21を組み合わせて略円筒状を形成するが、組み合わせた状態の先端部外周にそれぞれ段差部22が形成され、内袋3のネック部3aの下端を係止できるようになっており、この段差部22の上方の外周に内袋3を引き上げる場合にフランジ部3bが折り重なって厚くなっても円滑に引き上げることができるようにそれぞれ逃げ凹部23が形成してある。
【0032】
さらに、この分割コレット20の中間部外周には、6つのコレット21を縮径方向に付勢する付勢手段24が設けられ、例えば円弧状の溝24aが形成され、この溝24a内に環状のコイルばね24bを装着することで構成されるほか、リング状のゴム等を装着して構成しても良い。
【0033】
そして、このような分割コレット20の先端部内周に先端ほど大径の円すい面25が形成され、この円すい面25を利用して6つのコレット21を均一に移動して拡縮径するのに利用される。
【0034】
この分割コレット20の上端部には、外周側に突き出した取付フランジ26が設けられ、この取付フランジ26を介して支持されるようになっている。
【0035】
一方、この分割コレット20の6つのコレット21を均一に拡縮径するため、この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置10は、図4に示すように、分割コレット20の中心軸上に装着される操作コア30を備えており、操作軸31の先端に先端程太くなる円すい状の円すい部32が設けられるとともに、円柱部を介して挿入用の先細のガイド部33が設けて構成されている。
【0036】
したがって、6つのコレット21で略円筒状をなす分割コレット20の中心軸状の中空部の下端から、操作コア30の操作軸31を装着して分割コレット20の円すい面25と操作コア30の円すい部32が接触するように組み立てておき、操作コア30を相対的に分割コレット20内に引き込むようにすることで、6つのコレット21を半径方向外側に均一に移動して6つのコレット21の外周をつないで構成される分割コレット20の外径を拡径することができ、逆に拡径状態から操作コア30を押出すように移動することで付勢手段24を構成するコイルばね24bによって6つのコレット21の外周をつないで構成される分割コレット20の外径を縮めて縮径することができる。
【0037】
この分割コレット20の拡縮径は、中心部に装着された操作コア30と同心状態で行われることになり、操作コア30を外筒缶5の開口部5aの中心軸上に沿って分割コレット20とともに内袋3内に挿入し、分割コレット20を拡径して内袋3のネック部3aの下端を段差部22で係止した状態では、外筒缶5に装着された内袋3の姿勢や位置がいかなる状態であっても開口部5aと内袋3とを同軸に位置決めした状態にすることができる。
【0038】
次に、このような分割コレット20と操作コア30とを備えて外筒缶5から内袋3のネック部3aの上端のフランジ部3bの引き上げを自動化できる二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置10について、図1および図2に基づいて説明する。
【0039】
この二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置10では、ベース盤11上に缶載置台12が取り付けられ、外筒缶5の底部を嵌合位置決めできるようにしてあり、例えば3ピース缶の場合には、底蓋2の巻締部2aを嵌合することで位置決めする嵌合凹部12aが形成してある。
【0040】
この缶載置台12の側方のベース盤11には、2本の支柱13が立設されて昇降ガイド13aが取り付けられており、これら昇降ガイド13aに沿って昇降する昇降台14が設けられ、往復駆動機構を構成する昇降用シリンダ(流体圧シリンダ、例えばエアシリンダ)15が支柱13に固定され、ロッドを昇降台14に連結することで昇降駆動されるようになっている。
【0041】
そして、この昇降台14の上端部に拡縮径駆動機構を構成する拡縮径用シリンダ(流体圧シリンダ、例えばエアシリンダ)16が取り付けられ、ロッド16aに操作コア30の操作軸31の上端部が連結され、缶載置台12に嵌合位置きめされた外筒缶5の中心軸上に操作コア30が位置するように配置されており、操作コア30を往復駆動できるようになっている。
【0042】
さらに、昇降台14の下端部には、分割コレット20の支持ブロック17が取り付けられ、拡縮径用シリンダ16に連結された操作コア30の外側に配置された6つのコレット21の取付フランジ26を支持しており、取付フランジ26と操作軸31との間に隙間があり、操作軸31の上下運動によって分割コレット20の先端部が拡縮径可能になっている。
【0043】
したがって、昇降用シリンダ15によって昇降台14を昇降することで、分割コレット20と操作コア30を一体にした状態で缶載置台12に装着した外筒缶5に挿入・脱出させることができる一方、拡縮径用シリンダ16のロッド16aを伸長・縮小することで操作コア30を移動して分割コレット20に対する相対位置を変え、分割コレット20を拡径したり、縮径することができる。
【0044】
また、支柱13の下方には、昇降台14の下端位置から内袋3の引上げストローク分だけ昇降台14を上昇する引抜き用シリンダ(流体圧シリンダ、例えばエアシリンダ)18が設けられ、縮小状態のロッド18aの先端が昇降台14の下端位置で当接し、ロッド18aを伸長させることで引上げストローク分だけ昇降台14を上昇させるようにしてある。
【0045】
さらに、昇降台14上には、内袋3を引き上げた後、内袋3内に挿入状態となっている分割コレット20および操作コア30を退避させる場合に、分割コレット20の6つのコレット21で形成される外周を、内袋3のネック部3aの内周が僅かに押し広げれれる大きさに縮径して抜き出すことができるよう操作コア30による縮径位置を規制するストッパ用シリンダ(流体圧シリンダ、例えばエアシリンダ)19と、ロッド先端のストッパ19aとが設けてある。そして、このストッパ19aを挿入・脱出することで、拡縮径用シリンダ16のロッド16aと操作軸31とを固定するナット16bの下面に当てるようにし、拡縮径用シリンダ16のストロークを規制し、分割コレット20が完全にすぼまるのを防止し、所定の拡径寸法を保持する。
【0046】
したがって、ナット16bの位置を変更することで、拡縮径用シリンダ16のストロークを調整し、分割コレット20の拡径寸法を変えることができる。
【0047】
なお、外筒缶の開口部の大きさが変わる場合には、ナット16bの位置を変更するほか、厚さのことなるストッパを有するストッパ用シリンダをもう1組用意して予め設置するなどしたり、ストッパだけを交換するようにしても良い。
【0048】
次に、このように構成した二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置10の動作とともに、二重構造エアゾール容器の製造方法について説明する。
【0049】
図5はこの発明の二重構造エアゾール容器の製造方法の一実施の形態にかかる工程図である。
【0050】
この二重構造エアゾール容器の製造方法では、製造前の準備として、内袋引上げ装置10のベース盤11上の缶載置台12の嵌合凹部12aに外筒缶5、例えば3ピース缶の場合には、底蓋2の巻締部2aを嵌合装着しておく。
【0051】
この3ピース缶の場合には、目金蓋4の取付前に、底蓋2が取り付けられた缶胴1内に内袋3が挿入され、内袋3のネック部3aおよびフランジ部3bが目金蓋4の内面で押されて内袋3の底部が撓んだ状態となっている。
【0052】
また、製造前の準備として、外筒缶5に内袋3を予め挿入したのち目金蓋4を取り付けるようにする場合に限らず、目金蓋4の下部に内袋3を係止して目金蓋4の取付けと内袋3の挿入を同一工程で行うようにしても良い。
【0053】
なお、ここで外筒缶5に装着した内袋3は底面を平坦として撓みやすくしたものを用い、目金蓋4で押さえることを容易にしている。
【0054】
そして、昇降用シリンダ15で昇降台14を上昇端に位置させておくとともに、拡縮径用シリンダ16のロッド16aを伸長させて操作コア30を突き出し、分割コレット20を最も細い縮径状態にしておく。また、引抜き用シリンダ18のロッド18aを縮小状態にするとともに、ストッパ用シリンダ19を縮小状態にしてストッパ19aを退避した状態にしておく。
【0055】
(1) こうして準備が完了した後、昇降用シリンダ15で昇降台14を下降させ、最も細い縮径状態の分割コレット20および操作コア30を一体とした状態で全体を外筒缶5の開口部5aから内袋3内に挿入する。
【0056】
この分割コレット20および操作コア30の内袋3内への挿入完了状態では、分割コレット20のそれぞれの段差部22が内袋3のネック部3aの下方に位置するようにしておく。
【0057】
(2) 昇降台14上に取り付けてある拡縮径用シリンダ16のロッド16aを縮小して分割コレット20に対して操作コア30を引き上げるようにし、操作コア30の円すい部32を分割コレット20の円すい面25と摺接させ、分割コレット20を拡径し、6つのコレット21の外周の外径と内袋3のネック部3aの内径がほぼ同じになるようにし、段差部22で内袋3のネック部3aの下端を係止できる状態にする。
【0058】
この分割コレット20の拡径状態では、分割コレット20の段差部22より上方の外径は外筒缶5の開口部5aから引き出せる大きさになっており、しかも外筒缶5の中心軸上の操作コア30の外周で均一に拡径されていることから内袋3のネック部3aは外筒缶5の開口部5aと同心状態にセンタリングされた状態となる。
【0059】
(3) 引抜き用シリンダ18のロッド18aを伸長して昇降台14ごと分割コレット20および操作ロッド30を内袋3の引上げストローク分だけ上昇させる。
【0060】
すると、拡径状態の分割コレット20が上昇し、その段差部22に内袋3のネック部3aの下端が係止されたのち、さらに上昇することで内袋3のフランジ部3bが折り重ねられた状態で引き上げられ、外筒缶5の開口部5aより抜き出されてフランジ部3bが水平に拡がった状態になる。
【0061】
この内袋3のフランジ部3bの引上げの際、フランジ部3bが、図6(a)に示すように、折り重ねられて引き上げられるが、分割コレット20の段差部22の上方に逃げ凹部23が形成してあるので、折り重なって厚くなったフランジ部3bが逃げ凹部23に入り、円滑に引き上げることができる。
【0062】
(4) こうして内袋3のフランジ部3bを引き上げた後、拡縮径用シリンダ16のロッド16aを伸長して操作コア30を分割コレット20から押出すようにし、分割コレット20を縮径する。
【0063】
この分割コレット20の縮径状態の外径は、最も細い状態として内袋3のネック部3aの内周に接触しない状態とするほか、(4´)に示すように、ストッパ用シリンダ19でストッパ19aを前進させ、拡縮径用シリンダ16のロッド16aの伸長位置を規制するようにし、内袋3の内周より僅かに大になる状態に分割コレット20の拡径状態の外径を縮径するようにしても良い。
【0064】
(5) こうして分割コレット20および操作コア30を内袋3内から抜き出すことができる状態に縮径した後、昇降用シリンダ15で昇降台14ごと上昇させることで内袋引上げ装置10を退避させることができ、内袋3の引上げが完了する。
【0065】
この後、マウンテンカップの取付けなどを行って二重構造エゾール容器の製造が完了する。また、(5´)に示すように、分割コレット20を内袋3の内周に摺接させながら引き出すこによって、フランジ部3bをより確実に引上げることができるようにできる。
【0066】
このような二重構造エアゾール容器の製造方法によれば、内袋3の姿勢や位置にかかわらず、外筒缶5の狭い開口部5aからフランジ部3bを完全に引き出すことができる。
【0067】
次に、このような二重構造エアゾール容器用の内袋3について、図6により説明する。
【0068】
内袋3のネック部3aの下端を分割コレット20の段差部22で係止して引き上げる場合に、引き上げたフランジ部3bが外筒缶5の開口部5a、例えば目金蓋4のビード4aと干渉せずに水平に突き出すようにする必要がある。
【0069】
このため、内袋3のネック長さLが、外筒缶5の開口部5a、例えば目金蓋4のビード4aの直径Dとフランジ部3bの幅Bとの和より大きくしてある。
【0070】
こうすることにより、内袋3のフランジ部3bは、外筒缶5の開口部5aから引き上げられた状態で目金蓋4のビード4aと接触することなく、水平に突き出した状態にすることができる。
【0071】
一方、参考として示す図6(b)のように、内袋3のネック長さLがビード4aの直径Dとフランジ部3bの幅Bとの和より小さい場合には、折り重なって引き上げられたフランジ部3bがビード4aと接触して水平に突き出すことが出来ず、次工程でのマウンテンカップなどの取り付けに支障をきたすことになる。
【0072】
したがって、この二重構造エアゾール容器用の内袋3を用いることで、完全に内袋3のフランジ部3aを開口部から引き出し、水平に突き出すようにすることができる。
【0073】
なお、上記各発明は、内袋内に内容物を充填し、内袋と外筒缶の間に噴射剤を充填する二重構造エアゾール容器の場合や、外筒缶に装着した内袋内に内容物と噴射剤を入れて外筒缶の腐食を防止する等の二重構造エアゾール容器の場合のいずれにも適用することができるものである。
【0074】
【発明の効果】
以上、一実施の形態とともに具体的に説明したようにこの発明の請求項1記載の二重構造エアゾール容器の製造方法によれば、円周方向に複数に分割された分割コレットと、その中心軸上で往復移動可能に装着されて分割コレットを拡縮径する円すい部を備えた操作コアとでなる内袋引上げ装置を用い、縮径した分割コレットと操作コアを外筒缶の開口部の中心軸上から内袋内に挿入し、外筒缶の開口部の中心軸上に配置した操作コアの外周で分割コレットを均一に拡径して内袋ネック部を開口部中心と同軸にするとともに、分割コレットの段差部で係止して内袋を引上げ、装置全体を後退させてマウンテンカップとともにフランジ部を密封固定するようにしたので、内袋の姿勢、位置関係にかかわらず中心軸上に心合わせをした状態で確実に内袋を引き上げることができる。
【0075】
また、この発明の請求項2記載の二重構造エアゾール容器の製造方法によれば、さらに内袋を外筒缶の開口部上方に引き上げる際に、分割コレットの外周が内袋の内周に摺接しながら引き上げられるように拡径するので、一層確実に内袋を引き出し、フランジ部を拡げることができる。
【0076】
さらに、この発明の請求項3記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、円周方向に複数に分割された分割コレットと、その中心軸上で往復移動可能に装着されて分割コレットを拡縮径する円すい部を備えた操作コアとで内袋引上げ装置を構成したので、縮径した分割コレットと操作コアを外筒缶の開口部の中心軸上から内袋内に挿入して拡径し、内袋ネック部を開口部中心軸と同心にするとともに、分割コレットの段差部で係止して内袋を引上げることで、外筒缶の開口部の中心軸上に配置した操作コアの外周で均一に拡径して内袋を係止することで内袋の姿勢、位置関係にかかわらず中心軸上に心合わせをした状態で確実に内袋を引き上げることができる。
【0077】
また、この発明の請求項4記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに分割コレットの先端部外周の段差部の上方に、引き上げられる内袋の折り重なるフランジ部の逃げ凹部を設けるようにしたので、内袋引上げの際に折り重なり厚くなるフランジ部を逃げ凹部に入れることで、一層スムーズに内袋の引上げができる。
【0078】
さらに、この発明の請求項5記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに分割コレットの外周に縮径方向に付勢する付勢手段を設けるようにしたので、分割コレットの操作コアによる外周均一な拡径および縮径の操作が操作コアの往復移動だけで円滑に行うことができる。
【0079】
また、この発明の請求項6記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに分割コレットおよび操作コアに内袋内に挿入・脱出する往復駆動機構を設け、この往復駆動機構上に拡縮径駆動機構を設けて操作コアのみを相対往復駆動して分割コレットを拡縮径するようにしたので、外筒缶の開口部からの内袋の引上げの一連の操作を自動化することもできる。
【0080】
さらに、この発明の請求項7記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに内袋内で操作コアにより拡径され内袋のネック部下端を分割コレットで係止した状態でこれら分割コレットおよび操作コアを一体として内袋を引き上げる引上げストローク分だけ移動する引上げ駆動機構を設けるようにしたので、装置全体を移動して内袋内に挿入・脱出する往復駆動機構の位置決め精度によらず、確実に内袋を引き出すことができる。
【0081】
また、この発明の請求項8記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置によれば、さらに拡縮径駆動機構による縮径位置を規制して内袋の内周に分割コレットの外周を摺接可能とする縮径位置規制手段を設けるようにしたので、この縮径位置規制手段によって装置全体を引き抜く場合に、分割コレットの外周を内袋の内周に押し付けるようにでき、内袋のフランジ部の引上げが一層確実にできる。
【0082】
さらに、この発明の請求項9記載の二重構造エアゾール容器用の内袋によれば、内袋の上部ネック長さが外筒缶の開口部外周のビード直径と内袋上端外周のフランジ幅との和より大きく形成したので、これにより内袋引上げの際に折り重なったフランジ部が引上げ後に外筒缶のビードに当たることなく確実に水平に跳ね上がるようにでき、内袋の引上げが一層確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置の一実施の形態にかかる装置全体の正面図である。
【図2】この発明の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置の一実施の形態にかかる一部分を断面で示す装置全体の右側面図である。
【図3】この発明の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置の一実施の形態にかかる分割コレットの縦断面図および底面図である。
【図4】この発明の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置の一実施の形態にかかる操作コアの正面図である。
【図5】この発明の二重構造エアゾール容器の製造方法の一実施の形態にかかる工程図である。
【図6】この発明の二重構造エアゾール容器用の内袋の一実施の形態にかかる部分拡大断面図および従来例の部分拡大断面図である。
【図7】従来の二重構造エアゾール容器の製造方法の工程説明図である。
【図8】従来の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置の一例の断面図である。
【図9】従来の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置の他の一例の断面図である。
【符号の説明】
1 缶胴
2 底蓋
2a 巻締部
3 内袋
3a ネック部
3b フランジ部
4 目金蓋
5 外筒缶
5a 開口部
10 二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置
11 ベース盤
12 缶載置台
12a 嵌合凹部
13 支柱
13a 昇降ガイド
14 昇降台
15 昇降用シリンダ
16 拡縮径用シリンダ
16a ロッド
17 支持ブロック
18 引抜き用シリンダ
18a ロッド
19 ストッパ用シリンダ
19a ストッパ
20 分割コレット
21 コレット
22 段差部
23 逃げ凹部
24 付勢手段
24a 溝
24b コイルばね
25 円すい面
26 取付フランジ
30 操作コア
31 操作軸
32 円すい部
33 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒缶と、その中に収納された内袋と、マウテンカップとからなる二重構造エアゾール容器を製造するに際し、前記外筒缶に挿入された前記内袋内に、円周方向に複数に分割され先端部外周に内袋のネック部下端を係止する段差部が形成された分割コレットと、この分割コレットの中心軸上で往復移動可能に装着されて当該分割コレットを拡縮径する円すい部を備えた操作コアとでなる内袋引上げ装置の、当該分割コレットを縮径して外筒缶の中心軸上で挿入した後、前記操作コアの移動で前記分割コレットを拡径して前記段差部で前記内袋のネック部下端を係止し、前記外筒缶の中心軸上で開口部上方に当該内袋のネック部を引き上げた後、内袋引上げ装置を後退させ、前記マウンテンカップとともに前記内袋のフランジ部を密封固定するようにしたことを特徴とする二重構造エアゾール容器の製造方法。
【請求項2】
前記分割コレットを拡径して前記内袋を外筒缶の開口部上方に引き上げるに際し、前記分割コレットの外周が前記内袋の内周に摺接しながら引き上げられるようにしたことを特徴とする請求項1記載の二重構造エアゾール容器の製造方法。
【請求項3】
外筒缶の中に収納された内袋内に挿入されて当該内袋のネック部を外筒缶の開口部上に引き上げる装置であって、円周方向に複数に分割され先端部外周に前記内袋のネック部下端を係止する段差部が形成された分割コレットと、この分割コレットの中心軸上で往復移動可能に装着されて当該分割コレットを拡縮径する円すい部を備えた操作コアとでなることを特徴とする二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置。
【請求項4】
前記分割コレットの先端部外周の前記段差部の上方に、引き上げられる内袋の折り重なるフランジ部の逃げ凹部を設けてなることを特徴とする請求項3記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置。
【請求項5】
前記分割コレットの外周に縮径方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項3または4記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置。
【請求項6】
前記分割コレットおよび前記操作コアを前記内袋内に挿入・脱出される往復駆動機構と、前記往復駆動機構上に設けられ前記操作コアのみを相対往復駆動して前記分割コレットを拡縮径する拡縮径駆動機構とを備えてなること特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置。
【請求項7】
前記内袋内で前記操作コアにより拡径され内袋のネック部下端を前記分割コレットで係止した状態でこれら分割コレットおよび操作コアを一体として前記内袋を引き上げる引上げストローク分だけ移動する引上げ駆動機構を設けたことを特徴とする請求項6記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置。
【請求項8】
前記拡縮径駆動機構による縮径位置を規制して内袋の内周に分割コレット外周を摺接可能とする縮径位置規制手段を設けたことを特徴とする請求項6または7記載の二重構造エアゾール容器の内袋引上げ装置。
【請求項9】
外筒缶の中に収納され外筒缶の開口部から引き上げられてマウンテンカップとともに密封固定される内袋であって、この内袋の上部ネック長さが外筒缶の開口部外周のビード直径と内袋上端外周のフランジ幅との和より大きく形成され内袋引上げの際に折り重なったフランジ部が引上げ後に水平に跳ね上がり可能としたことを特徴とする二重構造エアゾール容器用の内袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【特許番号】特許第3552550号(P3552550)
【登録日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【発行日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−254934
【出願日】平成10年9月9日(1998.9.9)
【公開番号】特開2000−84635(P2000−84635A)
【公開日】平成12年3月28日(2000.3.28)
【審査請求日】平成13年6月20日(2001.6.20)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【参考文献】
【文献】特開平09−118380(JP,A)