説明

二重殻タンクの解体工法

【課題】 工期の短縮と工費の削減を図り得る二重殻タンクの解体工法を提供する。
【解決手段】 内槽屋根部4aを外槽屋根部4bに対し一体に連結した上で前記内槽屋根部4aを内槽側板の上端から切り離し、該内槽側板を上端側から順に内側に切り落として解体し、次いで、外槽1b内に水を張って前記内槽屋根部4aの下端部を水没させることにより該内槽屋根部4a内に封じ込められた空気の浮力で両屋根部4a,4bを支え得る状態とし、前記外槽屋根部4bを外槽側板2bの内径より小さな径で該外槽側板2bの上端から切り離して両屋根部4a,4bを水6に浮かべ、前記外槽1b内の水6を抜いて両屋根部4a,4bをタンク底部3aまで降下した後に両屋根部4a,4bを地上作業にて解体し、然る後に、前記外槽側板2bを上端側から順に内側に切り落として解体する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、LNG等の低温液化ガスを貯蔵する二重殻タンクの解体工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】LNG等の低温液化ガスを貯蔵する二重殻タンクの建て替え、或いは撤去等を行う場合には、二重殻タンクをトラック等に積んで搬送できる程度の大きさに解体する必要がある。
【0003】従来、このような二重殻タンクの解体を行う場合には、タンク周囲に仮設した作業足場を利用して作業員が二重殻タンクの上部構造から順次バーナで適宜な大きさに切断し、大型のクレーンにより地上に吊り降ろす作業を繰り返して行うようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、斯かる従来の解体工法では、屋根部の解体作業を作業性の悪い高所で長時間に亘って行わなければならないという不具合があり、しかも、高所で解体した解体片を地上まで繰り返し吊り降ろす荷下ろし作業に多大な労力と時間を要していた為、工期が長くなると共に工費も嵩むという問題があった。
【0005】本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、工期の短縮と工費の削減を図り得る二重殻タンクの解体工法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、内槽屋根部を外槽屋根部に対し一体に連結した後に前記内槽屋根部を内槽側板の上端から切り離し、該内槽側板を上端側から順に内側に切り落として解体し、次いで、外槽内に水を張り前記内槽屋根部の下端部を水没させて該内槽屋根部内に封じ込められた空気の浮力により両屋根部を支え、前記外槽屋根部を外槽側板の内径より小さな径で該外槽側板の上端から切り離して両屋根部を水に浮かべ、前記外槽内の水を抜いて両屋根部をタンク底部まで降下した後に両屋根部を地上作業にて解体し、然る後に、前記外槽側板を上端側から順に内側に切り落として解体することを特徴とする二重殻タンクの解体工法、に係るものである。
【0007】このようにすれば、両屋根部を外槽内の水に浮かべながら水位を下げて落下衝撃を生じないよう徐々に降下し、両屋根部を作業性の良い地上にて解体することが可能となり、しかも、両屋根部全体の地上への荷下ろし作業を一度に集約して行うことが可能となる。
【0008】更に、外槽側板の上端に予め複数のシーブを略均等に配置して取り付け、両屋根部を外槽内の水に浮かべて降下する際に、前記各シーブの夫々に掛け回したワイヤロープの一端を外槽屋根部上面の円周方向複数箇所に夫々接続し且つ外槽側板の周囲に垂下した前記各ワイヤロープの他端にカウンターウエイトを夫々懸吊してバランスをとりながら両屋根部を降下することが好ましく、また、内槽屋根部の下端部分に予め複数のガイドローラを略均等に配置して取り付け、該各ガイドローラにより前記内槽屋根部の下端部分を外槽側板の内周面に沿わせて案内しながら両屋根部を降下するようにしても良い。
【0009】このようにすれば、両屋根部が降下中に転覆するような不具合を未然に防ぐことが可能となり、外槽内の水位の低下に応じて両屋根部を安定した状態で良好に降下させることが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0011】図1〜図6は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図中1は内槽1aと外槽1bとから成る二重殻タンクを示し、内槽1a及び外槽1bの夫々の胴部分は内槽側板2a及び外槽側板2bとして円筒状に形成されており、内槽側板2aはタンク底部3a上に立設され、外槽側板2bは基礎スラブ3b上に立設されており、内槽側板2a及び外槽側板2bの夫々の上端にはドーム状の内槽屋根部4a及び外槽屋根部4bが接合されている。
【0012】このような二重殻タンク1の解体を行う場合には、先ず二重殻タンク1内の貯蔵液と気化ガスとを抜き出して空の状態とし、次いで、内槽1aと外槽1bとの間に充填されているパーライト等の保冷材を吸込み真空法で吸引排出し、然る後に、二重殻タンク1内の雰囲気を空気に置換した上で内部の附属品(液面計、温度計、ノズル等)を撤去する。
【0013】以上の如くして解体準備が整ったら、図1に示す如く、内槽屋根部4aを外槽屋根部4bに対しサポート5を介して一体に連結し、次いで、図2に示す如く、内槽屋根部4aを内槽側板2aの上端から切り離し、該内槽側板2aを上端側から順に解体片2a’として内側に切り落として解体する。
【0014】次いで、図3に示す如く、外槽1b内に水6を張って前記内槽屋根部4aの下端部を水没させることにより該内槽屋根部4a内に封じ込められた空気の浮力で両屋根部4a,4bを支え得る状態とし、図4に示す如く、前記外槽屋根部4bを外槽側板2bの内径より小さな径で該外槽側板2bの上端から切り離して両屋根部4a,4bを水6に浮かべる。
【0015】この際、外槽屋根部4bを外槽側板2bの上端から切り離すのに先立ち、該外槽側板2bの上端に複数のシーブ7を円周方向に略均等に配置して取り付け、該各シーブ7の夫々にワイヤロープ8を掛け回して該各ワイヤロープ8の一端を外槽屋根部4b上面の円周方向複数箇所に夫々接続し、前記各シーブ7から外槽側板2bの周囲に垂下した前記各ワイヤロープ8の他端にカウンターウエイト9を夫々懸吊しておき、外槽1b内の水6に浮かべた両屋根部4a,4bが転覆しないようバランスをとるようにすることが好ましい。
【0016】次いで、図5に示す如く、前記外槽1b内の水6を抜いて水位を下げることにより、両屋根部4a,4bを落下衝撃を生じないよう徐々にタンク底部3aまで降下し、前記両屋根部4a,4bを地上作業にて解体し、既に解体済みとなっている内槽側板2aの解体片2a’と共に外槽側板2bの外部へ撤去する。
【0017】このとき、両屋根部4a,4bは、カウンターウエイト9によりバランスをとられた状態で降下するので、両屋根部4a,4bが降下中に転覆するような不具合を未然に防ぐことが可能となり、外槽1b内の水位の低下に応じて両屋根部4a,4bを安定した状態で良好に降下させることが可能となる。
【0018】尚、内槽側板2aの解体片2a’については、内槽側板2aを解体した後に直ちに外槽側板2bの外部へ撤去しておいても良いが、その際に外槽側板2bに開けた搬出口は、外槽1b内に水6を張る前に確実に密閉しておく必要がある。
【0019】更に、最後に残った外槽側板2bについては、図6に示す如く、前述した内槽側板2aの解体作業と同様にして、上端側から順に解体片2b’として内側に切り落として解体する。
【0020】従って上記形態例によれば、両屋根部4a,4bを外槽1b内の水6に浮かべながら水位を下げて落下衝撃を生じないよう徐々に降下し、両屋根部4a,4bを作業性の良い地上にて解体することができるので、両屋根部4a,4bを効率良く且つ安全に解体することができ、しかも、両屋根部4a,4b全体の地上への荷下ろし作業を一度に集約して行うことができるので、該荷下ろし作業に要する労力と時間を大幅に低減することができ、これによって、工期の短縮と工費の削減を図ることができる。
【0021】図7は本発明を実施する形態の他の例を示すもので、両屋根部4a,4bを外槽1b内の水6に浮かべて降下するに際し、外槽屋根部4bを外槽側板2bの上端から切り離すのに先立って、内槽屋根部4aの下端部分に複数のガイドローラ10を略均等に配置して取り付けておき、該各ガイドローラ10により前記内槽屋根部4aの下端部分を外槽側板2bの内周面に沿わせて案内しながら両屋根部4a,4bを降下することも可能である。
【0022】ここで、内槽屋根部4aの下端部分にガイドローラ10を取り付けるに当っては、内槽屋根部4aを解体前の内槽側板2aから切り離す際に、内槽屋根部4aの下端部分に前記内槽側板2aの一部を残しておき、この部分を利用してガイドローラ10の取り付けを容易に行い得るようにすると良い。
【0023】このようにした場合も、両屋根部4a,4bが降下中に転覆するような不具合を未然に防ぐことが可能となり、外槽1b内の水位の低下に応じて両屋根部4a,4bを安定した状態で良好に降下させることが可能となる。
【0024】尚、本発明の二重殻タンクの解体工法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0025】
【発明の効果】上記した本発明の二重殻タンクの解体工法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0026】(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、両屋根部を外槽内の水に浮かべながら水位を下げて落下衝撃を生じないよう徐々に降下し、両屋根部を作業性の良い地上にて解体することができるので、両屋根部を効率良く且つ安全に解体することができ、しかも、両屋根部全体の地上への荷下ろし作業を一度に集約して行うことができるので、該荷下ろし作業に要する労力と時間を大幅に低減することができ、これによって、工期の短縮と工費の削減を図ることができる。
【0027】(II)本発明の請求項2又は3に記載の発明によれば、両屋根部が降下中に転覆するような不具合を未然に防ぐことができ、外槽内の水位の低下に応じて両屋根部を安定した状態で良好に降下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内槽及び外槽のタンク屋根同士を一体に連結した状態を示す概略図である。
【図2】内槽側板を解体した状態を示す概略図である。
【図3】外槽内に水を張った状態を示す概略図である。
【図4】外槽内の水に両屋根部を浮かべた状態を示す概略図である。
【図5】両屋根部をタンク底部まで降下した状態を示す概略図である。
【図6】外槽側板を解体した状態を示す概略図である。
【図7】本発明を実施する形態の他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 二重殻タンク
1a 内槽
1b 外槽
2a 内槽側板
2b 外槽側板
3a タンク底部
4a 内槽屋根部
4b 外槽屋根部
6 水
7 シーブ
8 ワイヤロープ
9 カウンターウエイト
10 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内槽屋根部を外槽屋根部に対し一体に連結した後に前記内槽屋根部を内槽側板の上端から切り離し、該内槽側板を上端側から順に内側に切り落として解体し、次いで、外槽内に水を張り前記内槽屋根部の下端部を水没させて該内槽屋根部内に封じ込められた空気の浮力により両屋根部を支え、前記外槽屋根部を外槽側板の内径より小さな径で該外槽側板の上端から切り離して両屋根部を水に浮かべ、前記外槽内の水を抜いて両屋根部をタンク底部まで降下した後に両屋根部を地上作業にて解体し、然る後に、前記外槽側板を上端側から順に内側に切り落として解体することを特徴とする二重殻タンクの解体工法。
【請求項2】 外槽側板の上端に予め複数のシーブを略均等に配置して取り付け、両屋根部を外槽内の水に浮かべて降下する際に、前記各シーブの夫々に掛け回したワイヤロープの一端を外槽屋根部上面の円周方向複数箇所に夫々接続し且つ外槽側板の周囲に垂下した前記各ワイヤロープの他端にカウンターウエイトを夫々懸吊してバランスをとりながら両屋根部を降下することを特徴とする請求項1に記載の二重殻タンクの解体工法。
【請求項3】 内槽屋根部の下端部分に予め複数のガイドローラを略均等に配置して取り付け、両屋根部を外槽内の水に浮かべて降下する際に、前記各ガイドローラにより前記内槽屋根部の下端部分を外槽側板の内周面に沿わせて案内しながら両屋根部を降下することを特徴とする請求項1に記載の二重殻タンクの解体工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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