説明

二重特異性抗体ならびに作製方法および使用方法

【課題】構造的に関連する2つの異なる抗原に対して二重の特異性を有する抗体が提供される。
【解決手段】IL−1αおよびIL−1βに対して二重の特異性を有しており、IL−1αおよびIL−1βの活性をインビトロおよびインビボで中和する、全長の抗体またはその抗原結合部分。並びに、前記抗体の作製方法および使用方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
哺乳動物の免疫系には、数兆の異なる抗体特異性から構成される抗体レパートリーを全体として発現するBリンパ球が含まれる。特定の抗原に対する正常な免疫応答は、抗原と特異的に結合する1つ以上の抗体をこのレパートリーから選択し、免疫応答の成功は、少なくとも部分的にはこれらの抗体が、刺激抗原を特異的に認識し(そのような抗原を究極的には排除し)、かつそのような抗体の環境において他の分子を「無視」することができる機能により免疫応答が達成される。
【0002】
1つの特定の標的抗原を特異的に認識する抗体の有用性は、モノクローナル抗体技術の開発をもたらした。標準的なハイブリドーマ技術により、今日では、目的とする抗原に対して単一の特異性を有する抗体の調製が可能になっている。近年には、インビトロ抗体ライブラリーのスクリーニングなどの様々な組換え抗体技術が開発されている。これらの技術もまた、目的とする抗原に対して単一の特異性を有する抗体の製造を可能にしている。
【0003】
1つの標的抗原に対する特異性を有する抗体は、少なくともある種の状況下では、他の抗原に対する望ましくない交差反応性またはバックグラウンド結合を示すことがある。しかしながら、通常、この交差反応性またはバックグラウンド結合は予測することができない(すなわち、抗体がどの抗原と交差反応するかを予測することができない)。さらに、通常、この交差反応性またはバックグラウンド結合は特異的な抗原結合と区別することができない。これは、交差反応性またはバックグラウンド結合は、典型的には、抗体の結合能の非常に小さい割合(例えば、抗体結合全体の1%以下)を表すだけであり、そして典型的には、高い抗体濃度(例えば、特異的な抗原結合を観測するために必要とされるよりも1000倍以上の高い濃度)で観測されるだけであるからである。構造的に関連するタンパク質ファミリーに属し得る抗原がいくつか存在するが、特定のファミリーメンバーに対する抗体応答は非常に特異的である。さらに、同じ受容体または受容体成分または複数の構造的に関連する受容体に結合するタンパク質ファミリーメンバーの例がいくつか存在する(例えば、IL−1ファミリーおよびTNFファミリーのメンバー)が、ファミリーの1つのメンバーに対して惹起されたモノクローナル抗体は、ファミリーの他のメンバーに対しては大きい交差反応性を示さない。ファミリーの様々なメンバーに対するMAbの交差反応性がないことには2つの理由が考えられる。第1に、標準的なハイブリドーマ製造では、標的抗原に対する特異性/親和性が大きい少数の抗体のみが探索され、その後、その少数の選択された抗体の交差反応性またはバックグラウンド結合が調べられる。第2に、ファミリー内のタンパク質は構造的に関連しているが、他にはない、重複しない免疫優性エピトープを有し得る。従って、全長のタンパク質を使用することによって惹起されたMAbは、他の構造的に関連するタンパク質と交差反応しないと考えられる。
【0004】
1つの種の抗原に対して惹起されたモノクローナル抗体が別種の同じ機能的な抗原に対して特異的に結合する例もまたある。例えば、抗マウスX抗体は、ヒトに由来する抗原Xと容易に結合することができる。これは、それらが同一ではないが、それらが重要な配列および構造的類似性をともに有しているからである。しかし、そのような種交差反応性抗体は、異なる種に由来する同じ抗原に対する特異性を有するので、「二重特異性」抗体を構成しない。
【0005】
従って、予測可能な二重特異性または多重特異性を有するモノクローナル抗体、すなわち、2つ以上の異なる抗原に対して真の特異性を有する抗体が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少なくとも2つの異なる構造的に関連する抗原に対して二重の特異性を有する抗体を作製するための方法を提供する。この方法は、一般には、構造的に関連する2つの異なる分子の共通する構造的な特徴を含む抗原を提供すること;抗体レパートリーを抗原にさらすこと;および構造的に関連する2つの異なる分子と特異的に結合する抗体をレパートリーから選択し、それにより二重特異性抗体を得ることを伴う。臨床的状況において、同じタンパク質ファミリーのいくつかのメンバーが疾患プロセスの様々な症状に寄与することがある。従って、同じタンパク質ファミリーのいくつかのメンバーに結合して、そのタンパク質ファミリーの2つ以上のメンバーの機能を阻止する本発明の二重特異性抗体の使用は、疾患の症状を緩和するために、または疾患プロセス自体を妨げるために有益であり得る。さらに、本発明のそのような二重特異性抗体は、構造的に関連する抗原を検出するために有用であり、構造的に関連する抗原を精製するために有用であり、および構造的に関連する抗原を伴う診断アッセイにおいて有用である。
【0007】
好ましい実施形態において、抗原は、構造的に関連する2つの異なる分子の間で同一的な連続したトポロジー領域に基づいて設計される。例えば、構造的に関連する2つの異なる分子はタンパク質であり得るし、抗原は、この2つのタンパク質の間で同一的な連続したトポロジー領域のアミノ酸配列を含むペプチドであり得る。
【0008】
別の実施形態において、抗原は、構造的に関連する2つの異なる分子の共通する折りたたみ部のループを構造的に模倣することに基づいて設計される。例えば、抗原は、構造的に関連する2つの異なるタンパク質の共通する折りたたみ部のループを構造的に模倣する環状ペプチドであり得る。
【0009】
さらに別の実施形態において、抗原は、ハイブリッド分子を作製するために、構造的に関連する2つの異なる分子の交互に連続する部分および/または重複する部分を一緒にスプライシングすることに基づいて設計される。例えば、抗原は、構造的に関連する2つの異なる分子の交互に連続する部分および/または重複する部分を一緒にスプライシングすることによって作製されるハイブリッドペプチドであり得る。
【0010】
なおさらに別の実施形態において、抗原は、構造的に関連する2つの異なる分子の一方を含むことができ、そして方法は、両方の関連する分子を特異的に認識する抗体を選択することを伴う。
【0011】
本発明の方法において、抗体レパートリーは、目的とする抗原に対してインビボまたはインビトロのいずれにおいてもさらすことができる。例えば、1つの実施形態において、抗原に対するレパートリーの暴露は、動物を抗原でインビボにおいて免疫化することを伴う。このインビボ法は、動物のリンパ球からハイブリドーマのパネルを調製し、そして構造的に関連する2つの異なる分子と特異的に結合する抗体を分泌するハイブリドーマを選択することを伴う。免疫化される動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギまたはヤギ、あるいは前記動物のいずれかの遺伝子導入体(例えば、抗原刺激したときにヒト抗体を作製するようにヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子導入されているマウスなど)であり得る。免疫化され得る動物の他のタイプには、ヒト末梢血の単核細胞またはリンパ系細胞またはその前駆体を用いて再構成されている重症複合免疫不全症(SCID)のマウス(hu−PBMC−SCIDキメラマウス)、および致死的な全身照射、その後、重症複合免疫不全症(SCID)マウスの骨髄細胞を用いた放射線防護、その後、機能的なヒトリンパ球を用いた移植で処置されているマウス(トリメラ(Trimera)系)が含まれる。免疫化され得る動物のさらに他のタイプには、目的とする抗原(1つまたは複数)をコードする内因性遺伝子(1つまたは複数)について(例えば、相同的組換えによって)そのゲノムが「ノックアウト」されている動物(例えば、マウス)がある。この場合、そのようなKO動物は、目的とする抗原(1つまたは複数)で免疫化されたとき、その抗原を異物として認識する。
【0012】
別の実施形態において、抗体レパートリーは、組換え抗体ライブラリーを抗原でスクリーニングすることによってインビトロにおいて抗原にさらされる。組換え抗体ライブラリーは、例えば、バクテリオファージの表面において、または酵母の表面において、または細菌の表面において発現している。様々な実施形態において、組換え抗体ライブラリーは、例えば、scFvライブラリーまたはFabライブラリーである。さらに別の実施形態において、抗体ライブラリーはRNA−タンパク質融合体として発現させられる。
【0013】
二重特異性抗体を調製する別の方法は、動物を抗原でインビボにおいて免疫化することによって抗体レパートリーを抗原にさらし、その後、動物のリンパ系細胞から調製された組換え抗体ライブラリーを抗原でインビトロにおいてスクリーニングすることなどのインビボ法とインビトロ法との組合せを伴う。なおさらに別の方法は、動物を抗原でインビボにおいて免疫化することによって抗体レパートリーを抗原にさらし、その後、動物のリンパ系細胞から調製された組換え抗体ライブラリーをインビトロにおいて親和性成熟させることを伴う。さらに別の方法は、動物を抗原でインビボにおいて免疫化することによって抗体レパートリーを抗原にさらし、その後、目的とする抗体を分泌する単一の抗体産生細胞を選択し、そして重鎖可変領域および軽鎖可変領域のcDNAをこれらの選択された細胞から(例えば、PCRによって)回収し、そして重鎖可変領域および軽鎖可変領域を哺乳動物宿主細胞においてインビトロで発現させることを伴い(これは選択的リンパ球抗体法またはSLAMと呼ばれる)、それにより選択遺伝子配列のさらなる選択および操作が可能になる。なおさらに、モノクローナル抗体は、重鎖および軽鎖の抗体遺伝子を哺乳動物細胞において発現させ、そして必要な結合特異性を有する抗体を分泌する哺乳動物細胞を選択することによる発現クローニングによって選択することができる。
【0014】
本発明の方法は、完全なヒト抗体、キメラ抗体およびCDRグラフト化抗体を含む様々な異なるタイプの二重特異性抗体ならびにその抗原結合部分の調製を可能にする。本発明の方法に従って調製される二重特異性抗体もまた提供される。本発明の好ましい二重特異性抗体は、インターロイキン−1αおよびインターロイキン−1βと特異的に結合する二重特異性抗体である。そのような二重特異性抗体は、IL−1αまたはIL−1βを検出する方法において使用することができる。この方法は、IL−1αまたはIL−1βが検出されるように、IL−1αまたはIL−1βをそのような二重特異性抗体またはその抗原結合部分と接触させることを含む。中和する二重特異性抗体もまた、IL−1αまたはIL−1βの活性を阻害する方法において使用することができる。この方法は、IL−1αまたはIL−1βの活性が阻害されるように、IL−1αまたはIL−1βをそのような二重特異性抗体またはその抗原結合部分と接触させることを含む。そのような二重特異性抗体はまた、インターロイキン−1関連障害を処置する方法において使用することができる。この方法は、インターロイキン−1関連障害に罹患している患者にそのような二重特異性抗体またはその抗原結合部分を投与することを含む。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、下記の工程を行うことによって抗体またはその抗原結合部分のライブラリーを作製する方法を提供する:a)第1の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーAを得る工程;b)第1の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーBを得る工程;c)第2の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーCを得る工程;d)第2の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーDを得る工程;そしてe)組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーAを組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーDと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーXを得る工程、および/または組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーCを組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーBと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーYを得る工程。
【0016】
本発明の別の実施形態において、本発明の直前に記載された方法は、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーXを抗体またはその抗原結合部分のライブラリーYと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーZを得る工程をさらに含むことができる。
【0017】
さらなる実施形態において、本発明は、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーX、YおよびZに関する。
【0018】
別の実施形態において、本発明の方法は、第1の抗原および第2の抗原の両方と結合する抗体またはその抗原結合部分をライブラリーX、Yおよび/またはZから選択することによって二重特異性抗体またはその抗原結合部分の同定を可能にする。
【0019】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明の方法のいずれかによって作製および/または選択される二重特異性抗体に関する。
【0020】
別の実施形態において、本発明はまた、ライブラリーX、YおよびZの抗体またはその抗原結合部分のそれぞれのメンバーをコードするヌクレオチド配列;そして二重特異性抗体またはその抗原結合部分、上記に記載されるヌクレオチド配列を含むベクター、および上記に記載されるベクターでトランスフェクションされた宿主細胞に関する。
【0021】
好ましい実施形態において、第1の抗原および第2の抗原はそれぞれ独立して、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドからなる群から選択されるが、第1の抗原および第2の抗原は同じではない。さらなる実施形態において、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドは分泌型タンパク質または表面の受容体であり、分泌型タンパク質は、IFN、TNF、インターロイキン、IP−10、PF4、GRO、9E3、EMAP−II、CSF、FGFおよびPDGFからなる群から選択される。別の好ましい実施形態において、第1の抗原はIL−1αであり、第2の抗原はIL−1βである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、二重特異性抗体(すなわち、構造的に関連する少なくとも2つの異なる分子に対して親和性を有する抗体)を作製するための抗原の設計および使用、ならびにそのような二重特異性抗体の選択、調製および使用に関する。本発明の抗原の構造的関連性は抗原(例えば、タンパク質)の全域にわたってであり得るか、または特定の構造的に関連する領域だけにおいてであり得る。本発明は、構造的に関連する2つの異なる分子と特異的に結合する二重特異性抗体を得るための方法を提供する。この方法は、
構造的に関連する2つの異なる分子の共通する構造的な特徴を含む抗原を提供すること;
抗体レパートリーを抗原にさらすこと;
構造的に関連する2つの異なる分子と特異的に結合する抗体をレパートリーから選択し、それにより二重特異性抗体を得ること
を含む。
【0023】
本発明は、本明細書中では、関連する2つの異なる抗原の認識に関して記載されるが、用語「二重特異性抗体」は、関連する2つ以上の異なる抗原さえも特異的に認識する抗体、例えば、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の構造的に関連する別個の抗原を認識する抗体などを包含することを意味することを理解しなければならないことに留意しなければならない。さらに、用語「構造的に関連する異なる抗原」は、その全体的な構造が関連している抗原(例えば、タンパク質)、ならびに1つ以上の構造的に関連する領域をともに有するが、それ以外では関連性がない抗原(例えば、タンパク質)を包含することを意味する。従って、「構造的に関連する異なる」抗原には、例えば、共通する全体的な構造を有する同じタンパク質ファミリーのメンバーである2つのタンパク質を挙げることができ、または例えば、全体的な構造は似ていない(関連性がない)が、構造的に関連するドメインをそれぞれが含む2つのタンパク質を挙げることができる。
【0024】
様々なタイプの抗原を使用して、本発明の抗体を誘発させることができ、そして様々な抗体作製方法を適用して、本発明の二重特異性抗体を得ることができる。これらは、下記において、下記の節でさらに詳しく議論される。
【0025】
I.二重特異性抗原
本発明の二重特異性抗体を調製するために、抗体が、二重特異性抗体を誘発させることができる抗原に対して惹起される。そのような抗原は、一般に、本明細書中では二重特異性抗原として示される。様々な異なるタイプの二重特異性抗原を本発明において使用することができ、そして様々なタイプの二重特異性抗原の設計が下記の節においてさらに記載される。
【0026】
A.連続したトポロジー領域
1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗原は、二重特異性抗体が惹起させられる構造的に関連する2つの異なる分子の間で同一的および/または類似的な連続したトポロジー領域を含む。好ましくは、抗原は、構造的に関連する2つの異なる分子の間で同一的および/または類似的な最大(例えば、最長)の連続したトポロジー領域を含む。好ましくは、構造的に関連する2つの異なる分子はタンパク質であり、二重特異性抗原は、2つのタンパク質の間で同一的および/または類似的な最大(例えば、最長)の連続したトポロジー領域に対応する直鎖状ペプチドを含む。選ばれる同一的/類似的な適切な領域は、好ましくは、受容体またはリガンドが結合する領域であるが、同一的/類似的な他の領域もまた使用することができる。
【0027】
2つの分子(例えば、タンパク質)の間で同一的な連続したトポロジー領域を決定するために、2つの分子(例えば、タンパク質)が比較され(例えば、相同性モデリング、構造情報またはアラインメントされ)、同一の領域または類似した領域が明らかにされる。タンパク質の場合、アラインメントアルゴリズムを使用して、最適なアラインメントを作り出し、そして2つのタンパク質の間で同一的/類似的な最大(例えば、最長)の連続したトポロジー領域を同定することができる。2つの配列を比較するために利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例としては、KarlinおよびAltschul(1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、87:2264〜68)のアルゴリズムがあり、これは、KarlinおよびAltschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:5873〜77)に記載されるように改変されている。そのようなアルゴリズムは、Altschul他(1990、J.Mol.Biol.215:403〜10)のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。比較のためにギャップを有するアラインメントを得るために、Altschul他(1997)Nucleic Acids Research、25(17):3389〜3402に記載されるようなギャップ化BLASTを利用することができる。BLASTプログラムおよびギャップ化BLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の設定省略時のパラメーターを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照のこと。使用され得る別の数学的アルゴリズムには、MyersおよびMiller(1988)Comput.Appl.Biosci.4:11〜17に記載されるALLIGNプログラムにおいて使用されるアルゴリズムがある。
【0028】
同一的/類似的な適切な領域が選ばれると、その領域に対応する二重特異性抗原を化学合成することができる。例えば、ペプチド抗原の場合、ペプチドを標準的なペプチド合成法によって合成することができる。1つの実施形態において、ペプチド抗原はL−アミノ酸を含む。他の実施形態では、ペプチド抗原は、一部または全体がD−アミノ酸から構成され得る。構造的に類似する2つの異なるタンパク質の間で同一的および/または類似的な連続したトポロジー領域に基づく二重特異性抗原の設計例が実施例1に詳しく記載される。
【0029】
B.構造的ループを模倣する環状ペプチド
別の実施形態において、本発明の二重特異性抗原は、二重特異性抗体が惹起させられる構造的に関連する2つの異なる分子(例えば、タンパク質)の共通する折りたたみ部の重要なループを構造的に模倣する環状分子(好ましくは環状ペプチド)を含む。このタイプの抗原を調製するために、2つの関連する分子の構造が比較され、2つの分子において見出される共通する折りたたみ部のループが明らかにされる。標準的な分子モデリングおよび結晶学的解析を、そのようなループおよび共通する折りたたみ部の同定を助けるために使用することができる。同一の領域および類似した領域(例えば、2つのタンパク質の間でのアミノ酸配列)が同定され、コンセンサス配列を、同一ではないが、類似している領域について設計することができる。鎖状の分子(例えば、直鎖状ペプチド)がこれらの類似した領域および同一の領域に基づいて設計され、その後、この鎖状分子は、重要なループを模倣する抗原を作製するために、知られている化学的手段によって環化することができる。例えば、ペプチドを環化させるために、プロリンおよびグリシンを直鎖状ペプチドの末端に付加することができる。構造的に関連する2つの異なるタンパク質がともに有する構造的ループを模倣する環状ペプチドに基づく二重特異性抗原の設計例が実施例2に詳しく記載される。
【0030】
C.ハイブリッド分子
別の実施形態において、本発明の二重特異性抗原は、二重特異性抗体が惹起させられる構造的に関する2つの異なる分子(例えば、タンパク質)の交互に連続する領域および/または重複する領域を含むハイブリッド分子(好ましくはハイブリッドペプチド)を含む。このタイプの抗原を調製するために、2つの分子の構造が比較され、重複する領域(すなわち、同一の領域)が、同一でない領域と同様に、2つの分子の間で明らかにされる。2つの分子のそれぞれに由来する交互に連続する領域(例えば、アミノ酸配列)を両方の分子に共通する重複した領域と同様に含むことが好ましいハイブリッド分子(例えば、2つの関連する分子がタンパク質であるときにはハイブリッドペプチド)が調製される。概略的には、そのようなハイブリッド分子はX−Y−Zとして表すことができる(式中、Yは、2つの関連する分子の間で同一的または強い類似的な領域(すなわち、重複する領域)を表し、Xは、関連する分子の一方に由来する領域を表し、Zは、関連する分子のもう一方に由来する領域を表す)。構造的に関連する2つの異なるタンパク質の配列から構成されるハイブリッドペプチドに基づく二重特異性抗原の設計例が実施例3に詳しく記載される。
【0031】
別のタイプのハイブリッド分子として、(「標的」タンパク質と呼ばれる)全長のタンパク質にペプチドが導入されている分子がある。構造的に関連する2つの異なるタンパク質の機能的な領域(例えば、受容体と相互作用する領域)を表すペプチドが選択される。そのようなペプチドは、本明細書中では機能的ペプチドとして示される。関連するタンパク質の一方に由来する機能的ペプチドは、その後、もう一方の関連するタンパク質の全長タンパク質に導入されるか、あるいは関連性がないタンパク質に導入される。例えば、IL−1αの受容体相互作用領域に対応するIL−1αのペプチドが同定され、そしてIL−1αのこの機能的ペプチドが全長のIL−1βタンパク質に導入され、IL−1α/IL−1βのハイブリッド分子が作製される。同様に、IL−1βの受容体相互作用領域に対応するIL−1βのペプチドが同定され、そしてIL−1βのこの機能的ペプチドが全長のIL−1αタンパク質に導入され、IL−1α/IL−1βのハイブリッド分子が作製される。関連する全長タンパク質への機能的ペプチドのこの導入により、機能的ペプチドが両端に存在することになり、そして機能的ペプチドの折りたたみ構造が保たれる。
【0032】
IL−1α/IL−1βハイブリッドの場合、機能的ペプチドは好ましくは、IL−1αおよびIL−1βの共通する折りたたみ構造を表す標的領域に挿入される(天然アミノ酸と置き換えられる)。そのような領域はタンパク質の全長にわたって(例えば、N末端領域、タンパク質の中央部、C末端領域において)見出すことができる。さらに、共通するIL−1α/IL−1β折りたたみ構造を表す機能的ペプチドもまた、アルブミンまたは任意の他の天然に存在するタンパク質などの関連性がないタンパク質に挿入することができる。この場合、ペプチドに対する好ましい挿入部位は、ペプチドが所望する折りたたみ構造を維持することができる領域である。従って、挿入部位は、タンパク質のN末端、中央部またはC末端のいずれかであり得る。任意の天然に存在する標的タンパク質におけるペプチドの配置は、ペプチドが由来する天然タンパク質によってペプチドに負わせられる構造的制約を模倣するように選択される。機能的ペプチドのアミノ酸が標的タンパク質に付加されるように機能的ペプチドを単に標的タンパク質に挿入することができる一方で、好ましくは、機能的ペプチドのアミノ酸は、挿入される標的タンパク質の一部分を置換する。
【0033】
非限定的な例として、ハイブリッド分子が、IL−1αおよびIL−1βに対する二重特異性抗体を惹起させるための二重特異性抗原として使用するために構築される。この場合、IL−1αまたはIL−1βのいずれかの特異的な構造的エレメントに対応する機能的ペプチドが等価な構造的位置において全長のIL−1βまたはIL−1αに導入される。選ばれたハイブリッド分子により、IL−1βの残基160〜176がIL−1αの残基168〜184で置換される。得られる分子は下記のアミノ酸配列を有する(置換されたIL−1α配列(残基168〜184)には下線が付されている):
APVRSLNCTLRDSQQKSLVMSGPYELKALHLQGQDMEQQVVFSMGAYKSSKDDAKITVILGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPKNYPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFESAQFPNWYISTSQAENMPVFLGGTKGGQDITDFTMQFVSS(配列番号4)
この分子は、公開されているIL−1αおよびIL−1βのcDNA配列を使用する標準的な分子生物学的技術(例えば、クローニング、ポリメラーゼ連酸反応)および組換えタンパク質発現技術を使用して調製することができる。ハイブリッドDNAを調製して、適切な発現ベクターに導入することができ、そしてポリペプチドを、発現ベクターを適切な宿主細胞に導入することによって発現させることができる。
【0034】
D.疎水性プロットに基づくペプチド
別の実施形態において、本発明の二重特異性抗原は、非常に抗原性であることが予測されるペプチドを選択するために疎水性プロットに基づいて選択される。例えば、ペプチドの抗原性指数を、JamesonおよびWolf(CABIOS、4(1)、181〜186(1988))によって記載されるようなコンピューターソフトウエアを使用して計算することができる。抗体が結合するための目的とする領域を、抗原性の可能性を最大にするために選ぶことができる。
【0035】
E.抗原でトランスフェクションされた細胞による免疫化
別の実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、抗原でトランスフェクションされた細胞による免疫化によって調製される(すなわち、本発明の二重特異性抗原は、抗原でトランスフェクションされた細胞であり得る)。構造的に関連する2つの異なる抗原またはそれらのハイブリッド分子を安定的に発現する細胞株を作製することができる。例えば、IL−1αまたはIL−1βまたはIL−1α/IL−1βハイブリッド分子(例えば、配列番号4)を安定的に発現する細胞株を作製することができる。目的とする分子を、(可溶性タンパク質の場合には)細胞から分泌させることができ、または(受容体、酵素の場合には)細胞表面において発現させることができる。宿主細胞による抗原の発現を可能にする宿主細胞への遺伝子移入は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、細胞融合、リポフェクション、粒子衝撃導入、マイクロインジェクションまたはウイルス感染(これらに限定されない)を含む多数の従来の手段によって達成することができる。目的とする抗原を発現する細胞株は、その後、抗体を産生させるための目的とする動物の体内に1つ以上の様々な経路(腹腔内、皮下、筋肉内など)を介して移植することができる。その後、細胞は、目的とする抗原の徐放性供給源として役立つ。好ましくは、細胞は全長のタンパク質を発現する。しかしながら、抗原性のフラグメントもまた発現させることができる。可溶性タンパク質の場合、タンパク質は好ましくは、細胞によって分泌される。2つの非常に関連する受容体の細胞外ドメインに対する二重特異性抗体を作製するために、受容体は好ましくは、細胞表面において発現させられる。
【0036】
F.構造的に関連する分子の1つによる免疫化
別の実施形態において、二重特異性抗原は、二重特異性抗体が惹起させられる構造的に関連する2つの異なる分子の単に一方である。2つの関連する分子の一方が免疫化剤として使用され、その後、得られる抗体レパートリーが、構造的に関連する2つの異なる分子の両方と結合する抗体について、より好ましくは、構造的に関連する2つの異なる分子の両方を中和する抗体についてスクリーニングされる。例えば、IL−1αまたはIL−1βのいずれかで免疫化し、その後、α/βの結合体について、より好ましくは、α/βの中和体についてスクリーニングすることができる。この実施形態において使用されるように、用語「免疫化する」は、大ざっぱには、抗体レパートリーをIL−1αまたはIL−1βなどの抗原にインビボまたはインビトロのいずれかにおいてさらすことを包含することが意図される。従って、この実施形態には、動物をIL−1αまたはIL−1βのいずれかで免疫化し、得られる惹起された抗体をスクリーニングして、IL−1αおよびIL−1βの両方と結合するそのような抗体を選択すること、ならびに組換え抗体ライブラリーをインビトロにおいてIL−1αまたはIL−1βのいずれかでスクリーニングし、その後、IL−1αおよびIL−1βの両方と結合する組換え抗体を選択することが包含される。
【0037】
II.二重特異性抗体の作製方法
本発明の二重特異性抗体を調製するために、抗体レパートリー(インビボまたはインビトロのいずれか)が、前節に記載されるように調製された二重特異性抗原にさらされ、そして適切な二重特異性抗体がレパートリーから選択される。抗原の抗体認識の2つの要素は、特異的な分子相互作用に基づく構造的認識および親和性成熟である。自然の免疫応答のとき、構造的モチーフを認識する低親和性抗体(例えば、ある種のパターン認識受容体による抗原の認識)が容易に発達し、そして自然の免疫応答における初期には、少数のクローンの親和性を増大させる体細胞成熟がこれに続く。インビボおよびインビトロでの様々なプロセスが、この自然の現象を模倣するために開発されている。低親和性の二重特異性抗体を、本明細書中に記載されるインビトロ法およびインビボ法のいずれによっても作製することができ、そしてより大きい親和性の二重特異性Mabを、本明細書中に記載される体細胞変異法によって調製することができる。さらに、高親和性の二重特異性MAbを最適化するために、所望する抗原との低親和性MAbの同時結晶構造体を作製することができる。得られる構造情報は、本明細書中に記載されるように、特異的な分子相互作用を増強するためにMAbの特異的な接触残基を変化(変異)させることによってさらなる親和性増強の指針となり得る。
【0038】
インビボ法またはインビトロ法または両者の組合せを使用する二重特異性抗体の作製方法が下記の節においてさらに詳しく記載される。
【0039】
A.インビボ法
抗体を調製するための標準的なインビボ法は、適切な動物被験体を抗原で免疫化し、それによりインビボ抗体レパートリーを抗原にさらし、その後、目的とする抗体(1つまたは複数)を動物から回収することによる。そのような方法は、二重特異性抗原の使用および目的とする2つの構造的に関連する分子を特異的に認識する抗体に対する選択によって二重特異性抗体の調製に適合させることができる。二重特異性抗体は、好適な被験体(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳動物、これにはそのような哺乳動物の遺伝子導入体およびノックアウト体が含まれる)を二重特異性抗原の免疫原調製物で免疫化することによって調製することができる。適切な免疫原調製物は、例えば、化学合成または組換え発現された二重特異性抗原を含むことができる。免疫原調製物は、フロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバントなどのアジュバント、または類似する免疫刺激化合物をさらに含むことができる。さらに、特にインビボ免疫化によって抗体を惹起させるために使用されるとき、本発明の二重特異性抗原は単独で使用することができ、またはより好ましくは、キャリアタンパク質との結合体として使用される。抗体応答を増強するためのそのような方法はこの分野では十分に知られている。二重特異性抗原を結合させることができる好適なキャリアタンパク質の例には、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびアルブミンが挙げられる。
【0040】
抗体産生細胞は被験体から得ることができ、そしてKohlerおよびMilstein(1975、Nature、256:495〜497)によって最初に記載されたハイブリドーマ技術など標準的な技術によってモノクローナル抗体を調製するために使用することができる(Brown他(1981)J.Immunol.127:539〜46;Brown他(1980)J.Biol.Chem.255:4980〜83;Yeh他(1976)PNAS、76:2927〜31;Yeh他(1982)Int.J.Cancer、29:269〜75もまた参照のこと)。モノクローナル抗体ハイブリドーマを作製するための技術は十分に知られている(一般的には、R.H.Kenneth、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses、Plenum Publishing Corp.、New York、New York(1980);E.A.Lerner(1981)Yale J.Biol.Med.、54:387〜407;M.L.Gefter他(1977)Somatic Cell Genet.、3:231〜36を参照のこと)。簡単に記載すると、不死細胞株(典型的にはミエローマ)が、上記に記載されるように二重特異性免疫原で免疫化された哺乳動物に由来するリンパ球(典型的には、脾臓細胞またはリンパ節細胞または末梢血リンパ球)に対して融合させられ、そして得られるハイブリドーマ細胞の培養上清が、目的とする構造的に関連する2つの異なる分子に対して二重の特異性を有するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングされる。リンパ球および不死化細胞株を融合するために使用される多くのよく知られているプロトコルはどれも、二重特異性モノクローナル抗体を作製するために適用することができる(例えば、G.Galfre他(1977)Nature、266:550〜52;Gefter他、Somatic Cell Genet.(前掲);Lerner他、Yale J.Biol.Med.(前掲);Kenneth、Monoclonal Antibodies(前掲)を参照のこと)。さらに、当業者は、そのような方法には多くの変法があり、これらもまた有用であることを理解する。典型的には、不死細胞株(例えば、ミエローマ細胞株)は、リンパ球と同じ哺乳動物種に由来する。例えば、ネズミのハイブリドーマを、本発明の免疫原調製物で免疫化されたマウスに由来するリンパ球を不死化マウス細胞株と融合することによって作製することができる。好ましい不死細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に対して感受性を有するマウスミエローマ細胞株である。多数のミエローマ細胞物はどれも、標準的な技術に従って、融合相手として使用することができる(例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Ag14のミエローマ株)。これらのミエローマ株はAmerican Type Culture Collection(ATCC、Rockville、Md)から入手することができる。典型的には、HAT感受性のマウスミエローマ細胞が、ポリエチレングリコール(「PEG」)を使用してマウスの脾臓細胞に対して融合させられる。融合から得られるハイブリドーマ細胞は、その後、融合していないミエローマ細胞および非産生的に融合したミエローマ細胞が生存できないHAT培地を使用して選択される(融合していない脾臓細胞は、形質転換されていないので数日後に死亡する)。目的とする2つの構造的に関連する分子を特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞が、2つの関連する分子と特異的に結合するそのような抗体を選択するために、例えば、標準的なELISAアッセイを使用して、ハイブリドーマの培養上清をそのような抗体についてスクリーニングすることによって同定される。
【0041】
所望する抗体のタイプに依存して、様々な動物宿主をインビボ免疫化のために使用することができる。目的とする抗原(1つまたは複数)の内因性型を自身が発現する宿主を使用することができ、あるいは目的とする抗原(1つまたは複数)の内因性型を欠損させた宿主を使用することができる。例えば、対応する内因性遺伝子に対する相同的組換えによって特定の内因性タンパク質を欠損させたマウス(すなわち、「ノックアウト」マウス)は、そのタンパク質で免疫化されたときにタンパク質に対する液性応答を誘発し、従って、そのタンパク質に対する高親和性のモノクローナル抗体を産生させるために使用できることが示されている(例えば、Rose,J.他(1995)J.Immunol.Methods、183:231〜237;Lunn,M.P.他(2000)J.Neurochem.75:404〜412を参照のこと)。
【0042】
非ヒト抗体を(例えば、ヒトの二重特異性抗原に対して)産生させる場合、様々な非ヒト哺乳動物が抗体産生用の宿主として好適であり、これには、マウス、ラット、ウサギおよびヤギ(ならびにそれらのノックアウト体)(これらに限定されない)が含まれるが、マウスがハイブリドーマ製造には好ましい。さらに、完全なヒト抗体をヒトの二重特異性抗原に対して産生させる場合、ヒト抗体レパートリーを発現する非ヒト宿主動物を使用することができる。そのような非ヒト動物には、ヒト免疫グロブリンのトランスジーンを有する遺伝子導入動物(例えば、マウス)であるhu−PBMC−SCIDキメラマウス、およびヒト/マウスの放射線照射キメラが含まれる。これらはそれぞれが下記においてさらに議論される。
【0043】
例えば、1つの実施形態において、二重特異性抗原で免疫化される動物は、抗原刺激したときに非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)がヒト抗体を作製するようにヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子導入されている非ヒト哺乳動物(好ましくはマウス)である。そのような動物において、典型的には、ヒト生殖系列形態の重鎖免疫グロブリンおよび軽鎖免疫グロブリンのトランスジーンが、その内因性の重鎖座および軽鎖座が不活性であるように操作されている動物に導入される。そのような動物を(例えば、ヒト抗原で)抗原刺激したとき、ヒト免疫グロブリンの配列に由来する抗体(すなわち、ヒト抗体)が産生され、そしてヒトモノクローナル抗体を標準的なハイブリドーマ技術によってそのような動物のリンパ球から作製することができる。ヒト抗体の産生におけるヒト免疫グロブリン遺伝子導入マウスおよびその使用のさらなる記載については、例えば、米国特許第5,939,598号、PCT国際特許出願公開WO96/33735、PCT国際特許出願公開WO96/34096、PCT国際特許出願公開WO98/24893およびPCT国際特許出願公開WO99/53049(Abgenix Inc.)、ならびに米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、同第5,770,429号、同第5,814,318号、同第5,877,397号およびPCT国際特許出願公開WO99/45962(Genpharm Inc.)を参照のこと。また、MacQuitty,J.J.およびKay,R.M.(1992)Science、257:1188;Taylor,L.D.他(1992)Nucleic Acids Res.20:6287〜6295;Lonberg,N.他(1994)Nature、368:856〜859;Lonberg,N.およびHuszar,D.(1995)Int.Rev.Immunol.13:65〜93;Harding,F.A.およびLonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536〜546;Fishwild,D.M.他(1996)Nature Biotechnology、14:845〜851;Mendez,M.J.他(1997)Nature Genetics、15:146〜156;Green,L.L.およびJakobovits,A.(1998)J.Exp.Med.188:483〜495;Green,L.L.(1999)J.Inmunol.Methods、231:11〜23;Yang,X.D.他(1999)J.Leukoc.Biol.66:401〜410;Gallo,M.L.他(2000)Eur.J.Immunol.30:534〜540を参照のこと。
【0044】
別の実施形態において、二重特異性抗原で免疫化される動物は、ヒト末梢血の単核細胞またはリンパ系細胞またはその前駆体を用いて再構成されている重症複合免疫不全症(SCID)のマウスである。hu−PBMC−SCIDキメラマウスとして示されるそのようなマウスは、抗原刺激したときにヒト免疫グロブリン応答を産生することが明らかにされている。抗体作製におけるこれらのマウスおよびその使用のさらなる記載については、例えば、Leader,K.A.他(1992)Immunology、76:229〜234;Bombil,F.他(1996)Immunobiol.195:360〜375;Murphy,W.J.他(1996)Semin.Immunol.8:233〜241;Herz,U.他(1997)Int.Arch.Allergy Immunol.113:150〜152;Albert,S.E.他(1997)J.Imnrnnol.159:1393〜1403;Nguyen,H.他(1997)Microbiol.Immunol.41:901〜907;Arai,K.他(1998)J.Immunol.Methods、217:79〜85;Yoshinari,K.およびArai,K.(1998)Hybridoma、17:41〜45;Hutchins,W.A.他(1999)Hybridoma、18:121〜129;Murphy,W.J.他(1999)Clin.Immunol.90:22〜27;Smithson,S.L.他(1999)Mol.Immunol.36:113〜124;Chamat,S.他(1999)J.Infect.Diseases、180:268〜277;Heard,C.他(1999)Molec.Med.5:35〜45を参照のこと。
【0045】
別の実施形態において、二重特異性抗原で免疫化される動物は、致死的な全身照射、その後、重症複合免疫不全症(SCID)マウスの骨髄細胞を用いた放射線防護、その後、機能的なヒトリンパ球を用いた移植で処置されているマウスである。このタイプのキメラはトリメラ(Trimera)システムと呼ばれており、マウスを目的の抗原で免疫化し、その後、標準的なハイブリドーマ技術を使用してモノクローナル抗体を調製することによってヒトモノクローナル抗体を産生させるために使用されている。抗体作製におけるこれらのマウスおよびその使用のさらなる記載については、例えば、Eren,R.他(1998)Immunology、93:154〜161;Reisner,YおよびDagan,S.(1998)Trends Biotechnol.16:242〜246;Ilan,E.他(1999)Hepatology、29:553〜562;Bocher,W.O.他(1999)Immunology、96:634〜641を参照のこと。
【0046】
B.インビトロ法
インビボ免疫化および選択により二重特異性抗体を調製することの代わりに、本発明の二重特異性抗体は、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)を二重特異性抗原でスクリーニングし、それにより、目的とする2つの構造的に関連する異なる分子に対して特異的に結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを単離することによって同定および単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを作製し、スクリーニングするためのキットが市販されている(例えば、Pharmaciaの組換えファージ抗体システム、カタログ番号27−9400−01;およびStratageneのSurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。様々な実施形態において、ファージディスプレイライブラリーはscFvライブラリーまたはFabライブラリーである。組換え抗体ライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ技術はこの分野では幅広く記載されている。抗体ディスプレイライブラリーの作製およびスクリーニングにおける使用に特に適し得る方法および化合物の例を下記において見出すことができる:例えば、McCafferty他、国際特許出願公開WO92/01047、米国特許第5,969,108号および欧州特許EP589,877(これらは特にscFvのディスプレイを記載する)、Ladner他、米国特許第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,571,698号、同第5,837,500号および欧州特許EP436,597(これらは、例えば、pIII融合を記載する);Dower他、国際特許出願公開WO91/17271、米国特許第5,427,908号、同第5,580,717号および欧州特許EP527,839(これらは特にFabのディスプレイを記載する);Winter他、国際特許出願公開WO92/20791および欧州特許EP368,684(これらは特に免疫グロブリン可変ドメインの配列のクローニングを記載する);Griffiths他、米国特許第5,885,793号および欧州特許EP589,877(これらは、特に、組換えライブラリーを使用してヒト抗原に対するヒト抗体を単離することを記載する);Garrard他、国際特許出願公開WO92/09690(これは特にファージ発現技術を記載する);Knappik他、国際特許出願公開WO97/08320(これはヒト組換え抗体ライブラリーHuCalを記載する);Salfeld他、国際特許出願公開WO97/29131(これは、ヒト抗原(ヒト腫瘍壊死因子α)に対する組換えヒト抗体の調製、ならびに組換え抗体のインビトロ親和性成熟を記載する)、およびSalfeld他、米国仮特許出願第60/126,603号(これもまた、ヒト抗原(ヒトインターロイキン12)に対する組換えヒト抗体の調製、ならびに組換え抗体のインビトロ親和性成熟を記載する)。
【0047】
組換え抗体ライブラリースクリーニングの他の記載を、Fuchs他(1991)Bio/Technology、9:1370〜1372;Hay他(1992)Hum Antibod Hybridomas、3:81〜85;Huse他(1989)Science、246:1275〜1281;Griffiths他(1993)EMBO J、12:725〜734;Hawkins他(1992)J MoI Biol、226:889〜896;Clarkson他(1991)Nature、352:624〜628;Gram他(1992)PNAS、89:3576〜3580;Garrad他(1991)Bio/Technology、9:1373〜1377;Hoogenboom他(1991)Nuc Acid Res、19:4133〜4137;Barbas他(1991)PNAS、88:7978〜7982;McCafferty他、Nature(1990)348:552〜554;Knappik他(2000)J.Mol.Biol.296:57〜86などの科学的刊行物に見出すことができる。
【0048】
バクテリオファージディスプレイシステムを使用することの代わりに、組換え抗体ライブラリーを酵母または細菌の表面に発現させることができる。酵母の表面において発現するライブラリーを調製し、スクリーニングする方法がさらに、PCT国際特許出願公開WO99/36569に記載される。細菌の表面において発現するライブラリーを調製し、スクリーニングする方法がさらに、PCT国際特許出願公開WO98/49286に記載される。
【0049】
目的とする抗体がコンビナトリアルライブラリーから同定されると、抗体の軽鎖および重鎖をコードするDNAが、ライブラリーのスクリーニングプロセスのときに単離されたディスプレイパッケージ(例えば、ファージ)からDNAをPCR増幅することなどによる標準的な分子生物学的技術によって単離される。PCRプライマーが調製され得る抗体の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子のヌクレオチド配列はこの分野では知られている。例えば、多くのそのような配列が、Kabat,E.A.他(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、米国厚生省、NIH刊行物番号91−3242)に、そして「Vbase」ヒト生殖系列配列データベースに開示されている。
【0050】
本発明の抗体または抗体の一部は、免疫グロブリンの軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子を宿主細胞において組換え発現することによって調製することができる。抗体を組換え発現するために、宿主細胞は、軽鎖および重鎖が宿主細胞において発現するように、好ましくは、宿主細胞が培養される培地に分泌され、そしてそのような培地から抗体が回収され得るように、抗体の免疫グロブリンの軽鎖および重鎖をコードするDNAフラグメントを有する1つまたは複数の組換え発現ベクターでトランスフェクションされる。標準的な組換えDNA方法論が、抗体の重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を得るために、そしてこれらの遺伝子を組換え発現ベクターに組み込むために、そしてベクターを宿主細胞に導入するために使用される。そのような方法論は、例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis(編)、Molecular Cloning;A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989)、Ausubel,F.M.他(編)、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates、1989)および米国特許第4,816,397号(Boss他)などに記載されている。
【0051】
目的とする抗体のVHセグメントおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られると、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域の遺伝子を全長の抗体鎖遺伝子に、またはFabフラグメントの遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することができる。これらの操作において、VLまたはVHをコードするDNAフラグメントは、抗体の定常領域または柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNAフラグメントに対して機能的に連結される。これに関連して使用される用語「機能的に連結される」は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列の読み枠が変わらないように2つのDNAフラグメントが連結させられることを意味することが意図される。
【0052】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することによって全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒトの重鎖定常領域遺伝子の配列はこの分野では知られており(例えば、Kabat,E.A.他(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、米国厚生省、NIH刊行物番号91−3242)を参照のこと)、これらの領域を含むDNAフラグメントを標準的なPCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgDの定常領域であり得るが、最も好ましくはIgG1またはIgG4の定常領域である。Fabフラグメントの重鎖遺伝子の場合、VHをコードするDNAを、重鎖のCH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に機能的に連結することができる。
【0053】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に機能的に連結することによって全長の軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒトの軽鎖定常領域遺伝子の配列はこの分野では知られており(例えば、Kabat,E.A.他(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、米国厚生省、NIH刊行物番号91−3242)を参照のこと)、これらの領域を含むDNAフラグメントを標準的なPCR増幅により得ることができる。軽鎖定常領域はカッパまたはラムダの定常領域であり得るが、最も好ましくはカッパの定常領域である。
【0054】
scFv遺伝子を作製するために、VHおよびVLをコードするDNAフラグメントは、VL領域およびVH領域が柔軟なリンカーによって連結されている連続した単一鎖タンパク質としてVH配列およびVL配列が発現し得るように、柔軟なリンカーをコードする別のフラグメントに、例えば、アミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする別のフラグメントに機能的に連結される(例えば、Bird他(1988)Science、242:423〜426;Huston他(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879〜5883;McCafferty他、Nature(1990)、348:552〜554を参照のこと)。
【0055】
本発明の組換え抗体または抗体の一部分を発現させるために、部分的または全長の軽鎖および重鎖をコードするDNA(これは上記に記載されるようにして得られる)を、これらの遺伝子が転写制御配列および翻訳制御配列に機能的に連結されるように発現ベクターに挿入することができる。これに関連して、用語「機能的に連結される」は、ベクター内の転写制御配列および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するその意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクター内に連結されることを意味することが意図される。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合し得るように選ばれる。抗体の軽鎖遺伝子および抗体の重鎖遺伝子は別個のベクターに挿入することができ、またはより典型的には、両方の遺伝子は同じ発現ベクター内に挿入される。これらの抗体遺伝子は標準的な方法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクターにおける相補的な制限部位の連結、または制限部位が存在しない場合の平滑末端連結)によって発現ベクターに挿入される。軽鎖配列または重鎖配列の挿入に先立って、発現ベクターは抗体の定常領域配列を既に有することができる。例えば、VH配列およびVL配列を全長の抗体遺伝子に変換する1つの方法は、VHセグメントがベクター内のCHセグメント(1つまたは複数)に機能的に連結され、かつVLセグメントがベクター内のCLセグメントに機能的に連結されるように、重鎖定常領域および軽鎖定常領域をそれぞれ既にコードしている発現ベクターにそれらを挿入することである。さらに、または代わりに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端に読み枠を合わせて連結されるようにベクター内にクローン化することができる。シグナルペプチドは免疫グロブリンのシグナルペプチドまたは異種のシグナルペプチド(すなわち、免疫グロブリン以外のタンパク質に由来するシグナルペプチド)であり得る。
【0056】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。用語「調節配列」は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御配列(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望するタンパク質の発現レベルなどのような要因に依存し得ることが当業者によって理解される。哺乳動物宿主細胞での発現について好ましい調節配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を行わせるウイルスエレメントが含まれ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(CMVプロモーターおよび/またはエンハンサーなど)、シミアンウイルス40由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(SV40プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)、アデノウイルス由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーなどがある。ウイルス調節エレメントのさらなる記載およびその配列については、例えば、米国特許第5,168,062号(Stinski)、米国特許第4,510,245号(Bell他)および米国特許第4,968,615号(Schaffner他)を参照のこと。
【0057】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子などのさらなる配列を有することができる。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号および同第5,179,017号(すべてAxel他)を参照のこと)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、G418、ヒグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を、ベクターが導入されている宿主細胞に付与する。好ましい選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr宿主細胞において使用される)およびneo遺伝子(G418選択用)が挙げられる。
【0058】
軽鎖および重鎖を発現させるために、軽鎖および重鎖をコードする発現ベクター(1つまたは複数)は標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクションされる。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、外因性のDNAを原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞に導入するために一般的に使用されている広範囲の技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAEデキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。本発明の抗体を原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞のいずれかにおいて発現させることは理論的には可能であるが、真核生物細胞(最も好ましくは哺乳動物宿主細胞)において抗体を発現させることが最も好ましい。そのような真核生物細胞(特に哺乳動物細胞)は、正しく折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立てて、分泌する可能性が原核生物細胞よりも高いからである。抗体遺伝子の原核生物での発現は、大量の活性な抗体を製造するためには効果的ではないことが報告されている(Boss,M.A.およびWood,C.R.(1985)Immunology Today、6:12〜13)。
【0059】
本発明の組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(dhfr−CHO細胞を含む;これはUrlaubおよびChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216〜4220に記載され、例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601〜621に記載されるように、DHFR選択マーカーとともに使用される)、NS0ミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されたとき、抗体は、宿主細胞における抗体の産生を可能にする十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって、またはより好ましくは、宿主細胞が増殖する培養培地中への抗体の分泌を可能にする十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収することができる。
【0060】
宿主細胞はまた、FabフラグメントまたはscFv分子などの無傷の抗体の一部分を製造するために使用することができる。上記手法に対する様々な変法は本発明の範囲内に含まれることが理解される。例えば、宿主細胞を、本発明の抗体の軽鎖または重鎖の(両方ではなく)いずれかをコードするDNAでトランスフェクションすることが望ましい場合がある。組換えDNA技術はまた、目的とする抗原に対する結合のためには必要ない、軽鎖および重鎖のいずれかまたはその両方をコードするDNAの一部またはすべてを除くために使用することができる。そのような短縮型DNA分子から発現する分子もまた本発明の抗体によって包含される。さらに、本発明の抗体を別の抗体に標準的な化学的架橋方法によって架橋することによって、1つの重鎖および1つの軽鎖が本発明の抗体であり、それ以外の重鎖および軽鎖が目的とする抗原とは異なる抗原に対して特異的である二官能性抗体を製造することができる。
【0061】
本発明の抗体またはその抗原結合部分を組換え発現させる好ましいシステムにおいて、抗体の重鎖と抗体の軽鎖との両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによってdhfr−CHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内において、抗体の重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子はそれぞれ、遺伝子の高レベルの転写を行わせるCMVエンハンサー/AdMLPプロモーターの調節エレメントに機能的に連結されている。組換え発現ベクターはまた、ベクターでトランスフェクションされたCHO細胞の選択を、メトトレキサートによる選択/増幅を使用して可能にするDHFR遺伝子を有する。選択された形質転換宿主細胞は、抗体の重鎖および軽鎖の発現を行わせるために培養され、そして完全な抗体が培養培地から回収される。標準的な分子生物学的技術が、組換え発現ベクターを調製するために、宿主細胞をトランスフェクションするために、形質転換体を選択するために、宿主細胞を培養するために、そして抗体を培養培地から回収するために使用される。なおさらに、本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで本発明の宿主細胞を好適な培養培地において培養することによって本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。この方法は、組換え抗体を培養培地から単離することをさらに含むことができる。
【0062】
ファージディスプレイによる組換え抗体ライブラリーをスクリーニングすることの代わりに、大きいコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするためにこの分野で知られている他の方法論を適用して、本発明の二重特異性抗体を同定することができる。代わりの発現システムの1つのタイプは、PCT国際特許出願公開WO98/31700(SzostakおよびRoberts)に、そしてRoberts,R.W.およびSzostak,J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12297〜12302に記載されるような、組換え抗体ライブラリーをRNA−ペプチド融合体として発現させるシステムである。このシステムでは、共有結合した融合体が、ピューロマイシン(ペプチジルのアクセプター抗生物質)をその3’末端に有する合成mRNAをインビトロ翻訳することによって、mRNAと、mRNAがコードするペプチドまたはタンパク質との間で生じる。従って、特定のmRNAを、コードされるペプチドまたはタンパク質(例えば、抗体またはその一部分)の性質に基づいて、例えば、抗体またはその一部分の結合が二重特異性抗原に結合することなどの性質に基づいてmRNAの複雑な混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー)から濃縮することができる。そのようなライブラリーのスクリーニングから回収された抗体またはその一部分をコードする核酸配列を、(例えば、哺乳動物宿主細胞において)上記に記載されるような組換え手段によって発現させることができ、そしてさらには、上記に記載されるように、最初に選択された配列(1つまたは複数)に変異が導入されているmRNA−ペプチド融合体のスクリーニングをさらに行うか、または組換え抗体のインビトロでの親和性成熟に関する他の方法のいずれかによってさらなる親和性成熟に供することができる。
【0063】
C.組合せ法
本発明の二重特異性抗体はまた、二重特異性抗原と結合する抗体の産生を刺激するために、二重特異性抗原が最初に宿主動物においてインビボで抗体レパートリーにさらされるが、1つ以上のインビトロ技術を使用して、抗体のさらなる選択および/または成熟(すなわち、改善)が達成される方法などの、インビボ法とインビトロ法との組合せを使用して調製することができる。
【0064】
1つの実施形態において、そのような組合せ法は、最初に非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、またはそれらの遺伝子導入体、またはキメラマウス)を二重特異性抗原で免疫化して、抗原に対する抗体応答を刺激し、その後、二重特異性抗原にさらされることによってインビボで刺激されたリンパ球に由来する免疫グロブリンの配列を使用してファージディスプレイ抗体ライブラリーを調製し、スクリーニングすることを含む。この組合せ手法の最初の段階は、上記のIIA節に記載されるように行うことができ、この手法の第2段階は、上記にIIB節に記載されるように行うことができる。非ヒト動物を過免疫化し、その後、刺激されたリンパ球から調製されたファージディスプレイライブラリーをインビトロでスクリーニングする好ましい方法論には、BioSite Inc.により記載される方法論が含まれる。例えば、PCT国際特許出願公開WO98/47343、PCT国際特許出願公開WO91/17271、米国特許第5,427,908号および米国特許第5,580,717号を参照のこと。
【0065】
別の実施形態において、組合せ法は、最初に非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、あるいはそれらのノックアウト体および/または遺伝子導入体、またはキメラマウス)を二重特異性抗原で免疫化して、抗原に対する抗体応答を刺激し、そして(例えば、免疫化された動物から調製されるハイブリドーマをスクリーニングすることによって)所望する二重特異性を有する抗体を産生しているリンパ球を選択することを含む。選択されたクローンに由来する再配置された抗体遺伝子が、その後、(逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応などの標準的なクローニング方法によって)単離され、そしてインビトロ親和性成熟に供され、それにより、選択された抗体(1つまたは複数)の結合特性が強化される。この手法の最初の段階は、上記のIIA節に記載されるように行うことができ、この手法の第2段階は、特に、PCT国際特許出願公開WO97/29131およびPCT国際特許出願公開WO00/56772に記載される方法などのインビトロ親和性成熟法を使用して、上記のIIB節に記載されるように行うことができる。
【0066】
さらに別の組合せ法では、組換え抗体が、米国特許第5,627,052号、PCT国際特許出願公開WO92/02551、およびBabcock,J.S.他(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:7843〜7848に記載されるように、選択的リンパ球抗体法(SLAM)としてこの分野では呼ばれている手法を使用して、単一の単離されたリンパ球から作製される。この方法では、本発明の二重特異性抗体に適用されるように、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、またはそれらの遺伝子導入体、またはキメラマウス)が最初に二重特異性抗原でインビボにおいて免疫化され、抗原に対する抗体応答が刺激され、その後、目的とする抗体、例えば、二重特異性抗原に対して特異的である抗体を分泌する単一細胞が、抗原に特異的な溶血性プラークアッセイを使用して選択される(例えば、二重特異性抗原自体、または目的とする構造的に関連する分子は、ビオチンなどのリンカーを使用してヒツジの赤血球にカップリングされ、それにより、適切な特異性を有する抗体を分泌する単一細胞の同定が、溶血性プラークアッセイを使用して可能になる)。目的とする抗体分泌細胞を同定した後、重鎖および軽鎖の可変領域のcDNAが逆転写酵素−PCRによって細胞から取り出され、その後、これらの可変領域を、適切な免疫グロブリンの定常領域(例えば、ヒトの定常領域)との組合せで、COS細胞またはCHO細胞などの哺乳動物宿主細胞において発現させることができる。インビボで選択されたリンパ球に由来する増幅された免疫グロブリン配列でトランスフェクションされた宿主細胞は、その後、例えば、所望する二重特異性を有する抗体を発現する細胞を単離するためにトランスフェクション細胞をパンニングすることによって、インビトロでのさらなる分析および選択を受けることができる。増幅された免疫グロブリン配列は、上記に記載されるように、インビトロ親和性成熟などによってインビトロでさらに操作することができる。
【0067】
別の実施形態において、二重特異性抗体を製造するための組合せ法は下記の工程を伴う。第1の非ヒト動物が第1の抗原で免疫化され、そして、第1の抗原と構造的に類似していることが好ましい第2の異なる抗原で第2の非ヒト動物が免疫化され、抗体応答がインビボで刺激される。組換え重鎖ライブラリーおよび組換え軽鎖ライブラリーが、第1の非ヒト動物および第2の非ヒト動物に由来する抗体遺伝子から、IIB節に記載されるようにそれぞれ構築される。第1の抗原で免疫化された動物に由来する重鎖ライブラリーを第2の抗原で免疫化された動物に由来する軽鎖ライブラリーと組み合わせて、抗体ライブラリーXが作製される。同様に、第2の抗原で免疫化された動物に由来する重鎖ライブラリーを第1の抗原で免疫化された動物に由来する軽鎖ライブラリーと組み合わせて、抗体ライブラリーYが作製される。さらに、ライブラリーXおよびライブラリーYを組み合わせて、ライブラリーXYを作製することができる。第1の抗原および第2の抗原の両方と結合する二重特異性抗体を、Xライブラリー、Yライブラリーおよび/またはXYライブラリーから同定および単離することができる。
【0068】
III.二重特異性抗体の特徴
本発明は、本発明の方法に従って調製され得る二重特異性抗体ならびにその抗体部分を提供する。好ましくは、抗体またはその一部分は単離抗体である。好ましくは、抗体またはその一部分は中和抗体である。本発明の抗体には、モノクローナル抗体および組換え抗体およびそれらの一部分が含まれる。様々な実施形態において、抗体またはその一部分は、完全なヒト抗体または完全なマウス抗体またはそれらの一部分などの、1つの種に全体が由来するアミノ酸配列を含むことができる。他の実施形態において、抗体またはその一部分はキメラ抗体またはCDRグラフト抗体または他の形態のヒト化抗体であり得る。
【0069】
本明細書中で使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結された2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖との4つのポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン分子を示すことが意図される。ぞれぞれの重鎖は重鎖可変領域(本明細書中ではHCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2およびCH3)から構成される。ぞれぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書中ではLCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL)から構成される。VH領域およびVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に分割することができ、超可変領域には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在している。それぞれのVHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRから構成され、これらはアミノ末端からカルボキシ末端に下記の順で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0070】
抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)の用語は、本明細書中で使用される場合、構造的に関連する2つの異なる抗原と特異的に結合する能力を保持している二重特異性抗体の1つ以上のフラグメントを示す。抗体の抗原結合機能が全長抗体のフラグメントによって発揮され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」の用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)Fabフラグメント、すなわち、VLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント、すなわち、ヒンジ領域におけるジスルフィド結合によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメント;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLドメインおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward他(1989)Nature、341:544〜546);そして(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン(VLおよびVH)は、別個の遺伝子によってコードされるが、組換え法を使用して、それらが単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって連結させることができ、この場合、単一のタンパク質鎖において、VL領域およびVH領域は対形成して、(単鎖Fv(scFv)として知られる)一価の分子を形成する(例えば、Bird他(1988)Science、242:423〜426;Huston他(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879〜5883を参照のこと)。そのような単鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合部分」の用語に包含されることが意図される。ジアボディーなどの他の形態の単鎖抗体もまた包含される。ジアボディーは、VHドメインおよびVLドメインが単一のポリペプチド鎖で発現される二価の二重特異的抗体であるが、同じ鎖における2つのドメインの間での対形成ができない短いリンカーが使用され、それにより、そのドメインが別の鎖の相補的なドメインと対形成させられ、そして2つの抗原結合部位が生じている二価の二重特異的抗体である(例えば、Holliger,P.他(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444〜6448;Poljak,R.J.他(1994)Structure、2:1121〜1123を参照のこと)。
【0071】
なおさらに、抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分が1つ以上の他のタンパク質またはペプチドと共有結合的または非共有結合的に結合することによって形成されるより大きい免疫接着分子の一部であり得る。そのような免疫接着分子の例には、四量体のscFV分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.他(1995)Human Antibodies and Hybridomas、6:93〜101)、そして二価のビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジン標識の使用(Kipriyanov,S.M.他(1994)Mol.Immunol.31:1047〜1058)が含まれる。FabフラグメントおよびF(ab’)フラグメントなどの抗体部分はそれぞれ、完全な抗体のパパイン消化またはペプシン消化などの従来技術を使用して完全な抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着分子は、標準的な組換えDNA技術を使用して得ることができる。
【0072】
本明細書中で使用される「単離された二重特異性抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない二重特異性抗体を示すことが意図される(例えば、構造的に関連する2つの異なる抗原と特異的に結合するか、またはそうでない場合には関連性がない抗原の構造的に関連する領域と特異的に結合する単離された抗体であるが、関連性がない他の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない単離された抗体)。さらに、単離された二重特異性抗体は他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0073】
本明細書中で使用される「中和抗体」は、特定の抗原に対するその結合が抗原の生物学的活性の阻害を生じさせる抗体を示すことが意図される。抗原の生物学的活性のこの阻害は、適切なインビトロアッセイまたはインビボアッセイを使用して抗原の生物学的活性の1つ以上の指標を測定することによって評価することができる。
【0074】
本明細書中で使用される「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマに由来する抗体(例えば、KohlerおよびMilsteinの標準的なハイブリドーマ方法論などのハイブリドーマ技術により調製されたハイブリドーマによって分泌される抗体)を示すことが意図される。従って、ハイブリドーマに由来する本発明の二重特異性抗体は、2つ以上の抗原に対する抗原特異性を有するが、それでもモノクローナル抗体として示される。
【0075】
用語「組換え抗体」は、組換え手段によって調製、発現、作製または単離される抗体を示し、例えば、宿主細胞にトランスフェクションされた組換え発現ベクターを使用して発現させられた抗体、組換えのコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子が遺伝子導入されている動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor,L.D.他(1992)Nucl.Acids Res.20:6287〜6295を参照のこと)、または特定の免疫グロブリン遺伝子の配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子の配列など)をスプライシングして他のDNA配列にすることを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製もしくは単離された抗体などをいう。組換え抗体の例には、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体およびヒト化抗体が含まれる。
【0076】
用語「ヒト抗体」は、例えば、Kabat他によって記載されるように、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列に対応または由来する可変領域および定常領域を有する抗体をいう(Kabat他(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、米国厚生省、NIH刊行物番号91−3242)を参照のこと)。しかし、本発明のヒト抗体は、例えば、CDRにおいて、特にCDR3において、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含むことができる。
【0077】
本発明の組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列に由来する可変領域を有し、そしてヒト生殖系列の免疫グロブリンの配列に由来する定常領域もまた含むことができる(Kabat,S.A.他(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、米国厚生省、NIH刊行物番号91−3242)を参照のこと)。しかし、いくつかの実施形態において、そのような組換えヒト抗体はインビトロ変異誘発に供され(またはヒトIg配列に対する遺伝子導入された動物が使用されるときには、インビボ体細胞変異誘発に供され)、従って、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH配列およびVL配列に由来し、かつ関連する一方で、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリーにおいて天然に存在しないことがある配列である。しかし、いくつかの実施形態において、そのような組換えヒト抗体は選択変異誘発または逆変異またはその両方の結果である。
【0078】
用語「逆変異」は、ヒト抗体の体細胞変異したアミノ酸の一部またはすべてが、相同的な生殖系列の抗体配列に由来する対応した生殖系列残基によって置換されるプロセスをいう。本発明のヒト抗体の重鎖配列および軽鎖配列は、最も大きい相同性を有する配列を同定するために、VBASEデータベース内の生殖系列配列と別々にアラインメントされる。本発明のヒト抗体において異なるところが、そのような異なるアミノ酸をコードする明らかにされたヌクレオチド位置を変異させることによって生殖系列の配列に戻される。逆変異の候補としてこのようにして同定された各アミノ酸の役割が、抗原結合における直接的または間接的な役割について調べられるはずであり、そしてヒト抗体の何らかの望ましい特徴に影響を及ぼすことが変異後に見出される何らかのアミノ酸は最終的なヒト抗体には含められないはずである。逆変異を受けるアミノ酸の数を最小限に抑えるために、最も近縁の生殖系列の配列とは異なるが、別の生殖系列の配列において対応するアミノ酸と同一であることが見出されたそのようなアミノ酸位置は、別の生殖系列の配列が少なくとも10アミノ酸(好ましくは12アミノ酸)について本発明のヒト抗体の配列と同一であり、かつ共直線的であるならば、問題としているアミノ酸の両側に残留させることができる。逆変異は、抗体を最適化する任意の段階で行うことができる。
【0079】
用語「キメラ抗体」は、1つの種に由来する重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列と、別の種に由来する定常領域配列とを含む抗体を示し、例えば、ネズミの重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列がヒトの定常領域に連結されている抗体などをいう。
【0080】
用語「CDRグラフト化抗体」は、1つの種に由来する重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含むが、Vおよび/またはVLのCDR領域の1つ以上の配列が別の種のCDR配列で置換されている抗体を示し、例えば、ネズミの重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を有し、1つ以上のネズミCDR(例えば、CDR3)がヒトのCDR配列で置換されている抗体をいう。
【0081】
用語「ヒト化抗体」は、非ヒト種(例えば、マウス)に由来する重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を含むが、VH配列および/またはVL配列の少なくとも一部が、より「ヒト様」であるように、すなわち、ヒトの生殖系列の可変配列により類似するように変化している抗体をいう。1つのタイプのヒト化抗体には、ヒトCDR配列が、対応する非ヒトCDR配列を置換するために非ヒトのVH配列およびVL配列に導入されているCDRグラフト化抗体がある。
【0082】
抗体の結合速度論を測定する1つの方法は表面プラズモン表面による。本明細書中で使用される用語「表面プラズモン表面」は、例えば、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala(スェーデン)およびPiscataway、NJ)を使用して、バイオセンサーマトリックス内でのタンパク質濃度の変化を検出することによってリアルタイムでの生物特異的な相互作用の分析を可能にする光学的現象をいう。さらなる記載については、Jonsson,U.他(1993)Ann.Biol.Clin.51:19〜26;Jonsson,U.他(1991)Biotechniques、11:620〜627;Johnsson,B.(1995)J.Mol.Recognit.8:125〜131;Johnsson,B.(1991)Anal.Biochem.198:268〜277を参照のこと。
【0083】
本明細書中で使用される用語「Koff」は、抗体/抗原複合体から抗体が解離することに関する解離速度定数を示すことが意図される。
【0084】
本明細書中で使用される用語「K」は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を示すことが意図される。
【0085】
本発明の二重特異性抗体は、上記のII節に記載される抗体を調製するための様々な方法のいずれかを使用して調製される。本発明の二重特異性抗体は、本質的には任意の構造的に関連する抗原に対し得るが、本発明の好ましい二重特異性抗体は、IL−1αおよびIL−1βと特異的に結合する二重特異性抗体であり、そのような抗体は、実施例1から4に記載される二重特異性抗原などの二重特異性抗原を使用して調製することができる。本発明に適用され得る他の構造的に関連する抗原には、カスパーゼファミリーのメンバー、サイトカインファミリー、例えば、IL−1ファミリーのメンバー(例えば、IL−1/IL−18)、TNFファミリーメンバー(例えば、TNFα/TNFβ)、IL−6ファミリーのメンバー、インターフェロン、TGFβファミリーのメンバー、EGFファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、PDGFファミリーのメンバー、VEGFFファミリーのメンバー、アンギオポエチンファミリーのメンバー、骨形態形成タンパク質、分泌型プロテイナーゼ(メタロプロテイナーゼ)など、ならびにサイトカイン受容体のファミリー、例えば、IL−1受容体ファミリーのメンバー、TNF受容体ファミリーのメンバー、TGFβ受容体ファミリーのメンバー、EGF受容体ファミリーのメンバー、FGF受容体ファミリーのメンバー、PDGF受容体ファミリーのメンバー、VEGF受容体ファミリーのメンバー、およびアンギオポエチン受容体ファミリーのメンバーなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の二重特異性抗体は、二重特異性抗体が結合する構造的に関連する2つの異なる抗原に対して等しい結合活性を示すことができ、あるいは2つの抗原の一方に対してより優先的に結合することができるが、関連性がない抗原と比較して、その2つの抗原に対する特異性を依然として有する。構造的に関連する抗原に対する二重特異性抗体の結合活性、ならびに関連性がない抗原に対する二重特異性抗体の結合活性は、ELISA分析またはBIAcore分析などの標準的なインビトロ免疫アッセイを使用して評価することができる。好ましくは、構造的に関連しない抗原に対する抗体のKdと、構造的に関連する抗原に対する抗体のKdとの比は、少なくとも3であることが望ましく、さらにより好ましくは、その比は少なくとも5であることが望ましく、さらにより好ましくは、その比は少なくとも10であることが望ましく、さらにより好ましくは、その比は少なくとも50、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000であることが望ましい。
【0087】
定量的には、バックグラウンド結合と二重特異性との差はレベルまたは程度の差である。例えば、バックグラウンド結合は低いレベルであり、例えば、5%未満であり、より好ましくは3%未満であり、最も好ましくは約0.1%から1%であり、これに対して、特異的な交差反応性または二重特異性の結合はより大きいレベルであり、例えば、1%よりも大きく、より好ましくは3%よりも大きく、さらにより好ましくは5%よりも大きく、さらにより好ましくは10%よりも大きい。さらに、好ましくは、標的抗原に対する二重特異性抗体のIC50は所与のバイオアッセイにおける抗原のED50に近い。
【0088】
本発明の二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、二重特異性抗体またはその抗原結合部分が特異的に結合する抗原の一方について、より好ましくはそのような抗原の両方について望ましい結合速度論(例えば、大きい親和性、低い解離、遅い解離速度、強い中和活性)を有するように選択されることが好ましい。例えば、二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、表面プラズモン共鳴によって測定されたときに、0.1s−1以下のkoff速度定数で、より好ましくは1×10−2−1以下のkoff速度定数で、さらにより好ましくは1×10−3−1以下のkoff速度定数で、さらにより好ましくは1×10−4−1以下のkoff速度定数で、さらにより好ましくは1×10−5−1以下のkoff速度定数で、構造的に関連する抗原の一方と結合することができ、より好ましくはその両方と結合することができる。あるいは、またはさらに、二重特異性抗体またはその一部分は、1×10−6M以下のIC50で、さらにより好ましくは1×10−7M以下のIC50で、さらにより好ましくは1×10−8M以下のIC50で、さらにより好ましくは1×10−9M以下のIC50で、さらにより好ましくは1×10−10M以下のIC50で、さらにより好ましくは1×10−11M以下のIC50で、構造的に関連する抗原の一方の活性を阻害することができ、より好ましくはその両方の活性を阻害することができる。好ましくは、IC50は高感度なバイオアッセイを使用して測定されることが望ましく、そのようなバイオアッセイでは、IC50値は、そのアッセイにおける抗原のED50に近いはずである。
【0089】
本発明はまた、本発明の二重特異性抗体またはその抗原結合部分と、医薬適合性のキャリアとを含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物はさらに、少なくとも1つのさらなる治療剤含むことができ、例えば、二重特異性抗体の使用が障害の緩和に対して有益である障害を処置するための1つ以上のさらなる治療剤を含むことができる。例えば、二重特異性抗体がIL−1αおよびIL−1βと特異的に結合する場合、医薬組成物は、IL−1活性が有害である障害を処置するための1つ以上のさらなる治療剤をさらに含むことができる。
【0090】
本発明の抗体および抗体部分は、患者への投与に好適な医薬組成物に配合することができる。典型的には、医薬組成物は、本発明の抗体または抗体部分と、医薬適合性のキャリアとを含む。本明細書中で使用される「医薬適合性のキャリア」には、生理学的に適合し得る任意およびすべての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。医薬適合性のキャリアの例には、水、生理的食塩水、リン酸塩緩衝化生理的食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つまたは複数、ならびにそれらの組合せが挙げられる。多くの場合、等張剤(例えば、糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトールなど)または塩化ナトリウム)を組成物に含むことは好ましい。医薬適合性のキャリアはさらに、抗体または抗体部分の貯蔵安定性または有効性を高める微量の補助的な物質、例えば、湿潤化剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤を含むことができる。
【0091】
本発明の抗体および抗体部分は、非経口投与に好適な医薬組成物に配合することができる。好ましくは、抗体または抗体部分は、0.1mg/mlから250mg/mlの抗体を含有する注射可能な溶液として調製される。注射可能な溶液は、フリントガラスもしくは褐色のバイアル、アンプル、または充填済みのシリンジにおいて、液体の投薬形態物または凍結乾燥された投薬形態物のいずれかから構成され得る。緩衝剤は、pHが5.0から7.0(最適にはpH6.0)であるL−ヒスチジン(1mMから50mM)(最適には5mMから10mM)であり得る。他の好適な緩衝剤には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。塩化ナトリウムを、0mMから300mM(最適には、液体の投薬形態物については150mM)の濃度で溶液の張性を変化させるために使用することができる。凍結保護剤を凍結乾燥された投薬形態物の場合には含めることができ、凍結保護剤は主として0%から10%のスクロース(最適には0.5%から1.0%)である。他の好適な凍結保護剤には、トレハロースおよびラクトースが挙げられる。増量剤を凍結乾燥された投薬形態物の場合には含めることができ、増量剤は主として1%から10%のマンニトール(最適には2%から4%)である。安定化剤を液体の投薬形態物および凍結乾燥された投薬形態物の両方において使用することができ、安定化剤は主として1mMから50mMのメチオニン(最適には5mMから10mM)である。他の好適な増量剤には、グリシン、アルギニンが含まれ、他の好適な増量剤は、0%から0.05%のポリソルベート−80(最適には0.005%から0.01%)として含めることができる。さらなる界面活性剤には、ポリソルベート20およびBRIJの界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明の組成物は様々な形態にすることができる。これらには、例えば、液体および半固体および固体の投薬形態物が含まれ、例えば、液体溶液(例えば、注射可能な溶液および注入可能な溶液)、分散物または懸濁物、錠剤、ピル、粉末、リポソームおよび坐薬などが含まれる。好ましい形態は、意図された投与様式および治療的適用に依存する。典型的な好ましい組成物は、他の抗体を用いたヒトの受動免疫化のために使用される組成物に類似する組成物などの注射可能な溶液または注入可能な溶液の形態である。好ましい投与様式は非経口的(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態において、抗体は静脈内への注入または注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、抗体は筋肉内注射または皮下注射によって投与される。
【0093】
治療組成物は、典型的には、製造および保存の条件のもとで無菌および安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散物、リポソーム、または大きい薬物濃度に好適な他の規定された構造物として配合することができる。無菌の注射溶液は、必要に応じて上記に列記された成分の1つまたはその組合せとともに、必要とされる量の活性な化合物(すなわち、抗体または抗体部分)を適切な溶媒に混合し、その後、ろ過滅菌することによって調製することができる。一般には、分散物が、基礎となる分散媒体と、上記に列記された成分に由来する必要とされる他の成分とを含有する無菌のビヒクルに活性な化合物を混合することによって調製される。無菌の注射溶液を調製するための無菌の凍結乾燥粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分およびさらなる所望する成分の粉末がその前記の無菌ろ過された溶液から得られる真空乾燥およびスプレー乾燥である。溶液の適正な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散物の場合には必要とされる粒子サイズを維持することによって、そして界面活性剤の使用によって維持することができる。注射可能な組成物の長期にわたる吸収が、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアラート塩およびゼラチン)を組成物に含めることによってもたらされ得る。
【0094】
本発明の抗体および抗体部分は、この分野で知られている様々な方法で投与することができるが、多くの治療的適用の場合、好ましい投与経路/様式は皮下注射または静脈内への注射もしくは注入である。当業者によって理解されるように、投与経路/様式は、所望する結果に依存して変化する。いくつかの実施形態において、活性な化合物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出配合物などの、迅速な放出から化合物を保護するキャリアとともに調製され得る。生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などを使用することができる。そのような配合物を調製する多くの方法が特許化され、または当業者に広く知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems(J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978)を参照のこと。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗体部分は、例えば、不活性な希釈剤または吸収され得る食用キャリアとともに経口投与することができる。化合物(および所望する場合には他の成分)はまた、硬殻ゼラチンカプセルまたは軟殻ゼラチンカプセルで包むことができ、または錠剤に圧縮成形することができ、または患者の食事に直接混合することができる。経口による治療的投与の場合、化合物は賦形剤と混合され、摂取可能な錠剤、口内錠剤、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシュ剤などの形態で使用することができる。本発明の化合物を非経口投与以外で投与するためには、化合物を、その不活性化を防止する物質でコーティングするか、または化合物を、その不活性化を防止する物質と同時に投与することが必要になる場合がある。
【0096】
補助的である活性な化合物もまた組成物に配合することができる。いくつかの実施形態において、本発明の抗体または抗体部分は、IL−1活性が有害である障害を処置するために有用な1つ以上のさらなる治療剤と同時に配合され、かつ/または同時に投与される。例えば、本発明の抗IL−1α/IL−1β二重特異性抗体または抗体部分は、他の標的と結合する1つ以上のさらなる抗体(例えば、他のサイトカインと結合する抗体または細胞表面分子と結合する抗体)と同時に配合することができ、かつ/または同時に投与することができる。さらに、本発明の1つまたは複数の抗体は、2つ以上の前記治療剤と組み合わせて使用することができる。そのような組合せ療法は、好都合には、投与される治療剤のより少ない投薬量を利用することができ、従って、様々な単一療法に付随する考えられる毒性または合併症を避けることができる。
【0097】
IV.二重特異性抗体の使用
構造的に関連する2つの異なる抗原と結合するその能力を考えた場合、本発明の二重特異性抗体またはその一部分は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)または組織免疫組織化学などの従来の免疫アッセイを使用して、(例えば、血清または血漿などの生物学的サンプルにおける)これらの抗原のいずれかまたはその両方を検出するために使用することできる。本発明は、生物学的サンプルにおける抗原を検出するための方法を提供する。この方法は、生物学的サンプルを、抗原を特異的に認識する本発明の二重特異性抗体または抗体部分と接触させること、そして抗原に結合した抗体(もしくは抗体部分)または結合していない抗体(もしくは抗体部分)のいずれかを検出し、それにより生物学的サンプル中の抗原を検出することを含む。抗体は、結合した抗体または結合していない抗体の検出を容易にするために検出可能な物質で直接的または間接的に標識される。好適な検出可能な物質には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が含まれる。好適な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。好適な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる。好適な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシル塩化物またはフィコエリトリンが挙げられる。発光物質の例には、ルミノールが挙げられる。好適な放射性物質の例には、125I、131I、35SまたはHが挙げられる。
【0098】
抗体を標識することの代わりに、抗原(1つまたは複数)は、検出可能な物質で標識された抗原標準物およびその抗原に対して特異的な標識されていない二重特異性抗体を用いる競合的な放射免疫アッセイによって生物学的体液においてアッセイすることができる。このアッセイにおいて、生物学的サンプル、標識された抗原標準物、および二重特異性抗体は一緒にされ、標識されていない抗体に結合した標識された抗原標準物の量が測定される。生物学的サンプルにおける抗原の量は、標識されていない抗体に結合した標識された抗原標準物の量に反比例する。
【0099】
好ましい実施形態において、二重特異性抗体はIL−1αおよびIL−1βを特異的に認識し、従って前記の検出方法は、IL−1αおよび/またはIL−1βを検出するために使用される。従って、本発明はさらに、生物学的サンプルまたは組織におけるIL−1αまたはIL−1βを検出する方法を提供する。この方法は、IL−1αまたはIL−1βを含有することが疑われる生物学的サンプルまたは組織を本発明の二重特異性抗体またはその抗原結合部分と接触させること、そして生物学的サンプルまたは組織におけるIL−1αまたはIL−1βを検出することを含む。生物学的サンプルは、例えば、細胞、組織または体液(例えば、血液、血漿、尿、唾液など)のサンプルなどのインビトロサンプルであり得る。さらに、検出される組織は、患者の体内に存在する組織であり、例えば、(例えば、標識された抗体を使用して)組織をインビボ画像化することによって可視化された組織であり得る。
【0100】
本発明の二重特異性抗体はまた診断目的のために使用することができる。1つの実施形態において、本発明の抗体はインビトロでの診断アッセイにおいて使用され、例えば、目的とする抗原(1つまたは複数)を検出するための試験室試験において、または目的とする抗原(1つまたは複数)を検出するための管理試験のときに使用される。抗体を利用する十分に確立されたインビトロアッセイの例には、各種のELISA、RIA、ウエスタンブロットなどが含まれる。別の実施形態において、本発明の抗体は、インビボ画像化試験などのインンビボでの診断アッセイにおいて使用される。例えば、抗体は、インビボで検出され得る検出可能な物質で標識することができ、標識された抗体を患者に投与することができ、そして標識された抗体をインビボで検出することができ、それによりインビボ画像化が可能になる。
【0101】
IL−1αおよびIL−1βを特異的に認識する本発明の二重特異性抗体は、例えば、様々な炎症性の疾患および障害ならびに胎児の自然吸収における診断目的のためにIL−1αおよび/またはIL−1βを検出する診断アッセイにおいて使用することができる。特定タイプの疾患および障害に関して、本発明の二重特異性の抗IL−1α/IL−1β抗体は、そのような抗体の治療的使用に関して本明細書中に記載される疾患/障害のいずれか、例えば、下記にさらに議論される、IL−1活性が有害である障害などにおける診断目的のために使用することができる(下記を参照のこと)。
【0102】
本発明の二重特異性抗体および抗体部分は、好ましくは、二重特異性抗体および抗体部分が結合する抗原の活性をインビトロおよびインビボの両方で中和することができる。従って、本発明のそのような抗体および抗体部分は、例えば、抗原を含有する細胞培養物において、または本発明の二重特異性抗体が反応する抗原を有するヒト患者もしくは他の哺乳動物患者において抗原の活性を阻害するために使用することができる。1つの実施形態において、本発明は、抗原の活性を阻害するための方法を提供する。この方法は、抗原の活性が阻害されるように抗原を本発明の二重特異性抗体または抗体部分と接触させることを含む。好ましい実施形態において、二重特異性抗体はIL−1αおよびIL−1βと結合し、従って、この方法は、IL−1αおよび/またはIL−1βを二重特異性抗体またはその一部分と接触させることによってIL−1αおよび/またはIL−1βの活性を阻害するための方法である。IL−1αおよび/またはIL−1βの活性は、例えば、インビトロで阻害することができる。例えば、IL−1αおよび/またはIL−1βを含有するか、またはIL−1αおよび/またはIL−1βを含有することが疑われる細胞培養物において、本発明の抗体または抗体部分は、培養物におけるIL−1αおよび/またはIL−1βの活性を阻害するために培養培地に加えることができる。あるいは、IL−1αおよび/またはIL−1βの活性は患者におけるインビボで阻害することができる。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、抗原の活性が有害である障害に罹患している患者における抗原の活性を阻害するための方法を提供する。本発明は、そのような障害に罹患している患者における抗原の活性を阻害するための方法を提供する。この方法は、患者における抗原の活性が阻害されるように本発明の二重特異性抗体または抗体部分を患者に投与することを含む。好ましくは、抗原はヒト抗原であり、患者はヒト患者である。本発明の抗体は、治療目的のためにヒト患者に投与することができる。さらに、本発明の抗体は、獣医学的目的のために、またはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が結合する抗原を発現する非ヒト哺乳動物に投与することができる。後者に関して、そのような動物モデルは、本発明の抗体の治療効力を評価するために有用であり得る(例えば、投薬量および投与時間経過を試験することに関して有用であり得る)。
【0104】
好ましくは、二重特異性抗体はIL−1αおよびIL−1βと結合し、従って患者における抗原の活性を阻害するためのこの方法は、患者(例えば、IL−1の活性が有害である障害に罹患している患者)においてIL−1の活性を阻害するための方法である。本明細書中で使用される「IL−1の活性が有害である障害」は、そのような障害に罹患している患者におけるIL−1(これはIL−1αおよびIL−1βの両方を包含する)の存在が、障害の病理生理学または障害の悪化に寄与する因子のいずれかに関わっていることが示されているか、または障害の病理生理学または障害の悪化に寄与する因子のいずれかに関わっていることが疑われる疾患および他の障害を包含することが意図される。従って、IL−1の活性が有害である障害は、IL−1活性(すなわち、IL−1αおよびIL−1βのいずれかまたはその両方)の阻害により、障害の症状および/または進行の緩和が期待される障害である。そのような障害は、例えば、障害に罹患している患者の生物学的体液におけるIL−1濃度の増大(例えば、患者の血清、血漿、滑液などにおけるIL−1濃度の増大)によって明らかにされ得る。この場合、IL−1は、例えば、抗IL−1抗体を上記に記載されるように使用して検出することができる。
【0105】
インターロイキン1は、様々な免疫エレメントおよび炎症エレメントを伴う様々な疾患に関連する病理学において重要な役割を果たしている。このような疾患には、下記が含まれるが、それらに限定されない:慢性滑節リウマチ、変形性関節症、若年性慢性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、臓器移植に伴う急性免疫疾患または慢性免疫疾患、類肉腫症、アテローム性動脈硬化症、汎発性血管内凝固、川崎病、グレーヴズ病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ヴェーゲナー肉芽腫症、ヘノッホ−シェーンライン紫斑病、腎臓の顕微鏡的脈管炎、慢性の活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染性疾患、寄生虫疾患、後天性免疫不全症症候群、急性横断脊髄炎、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、発作、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、散発性のI型多線性不全症およびII型多線性不全症、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎性関節症、腸症性滑膜炎、クラミジアおよびエルシニアおよびサルモネラに関連する関節症、脊椎関節症、アテローム性の疾患/動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱疾患、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA疾患、自己免疫性溶血性貧血、クーム陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、突発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症疾患症候群、後天性免疫不全症関連疾患、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型低γグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣機能不全、成熟前の卵巣機能不全、線維症性肺疾患、突発性線維化肺胞炎、炎症後の間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織疾患関連間質性肺疾患、混合型結合組織疾患関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、慢性関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連間質性肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患、ヘモジデリン沈着症関連肺疾患、薬物誘導による間質性肺疾患、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後の間質性肺疾患、痛風関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的な自己免疫性肝炎またはルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫媒介による低血糖症、黒色表皮肥厚症を伴うB型インスリン耐性、上皮小体機能低下症、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、1型乾癬、2型乾癬、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎臓疾患(NOS型)、糸球体腎炎、腎臓の顕微鏡的脈管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、男性不妊症(特発性またはNOS型)、精子自己免疫性、多発性硬化症(すべてのサブタイプ)、交感性眼炎、結合組織疾患の二次的な肺性高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性動脈周囲炎の肺発現、急性リウマチ熱、リウマチ様脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、シェーグレン症候群、高安病/関節炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫、水晶体原性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑、中枢神経系の疾患(例えば、うつ病、精神分裂病、アルツハイマー病、パーキンソン病など)、急性痛および慢性痛、ならびに脂質不均衡。本発明のヒト抗体および抗体部分は、自己免疫疾患(特に、リウマチ様脊椎炎、アレルギー、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎を含む、炎症を伴う自己免疫疾患)に罹患しているヒトを処置するために使用することができる。
【0106】
好ましくは、本発明のIL−1α/IL−1β二重特異性抗体またはその抗原結合部分は、慢性関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病および乾癬を処置するために使用される。
【0107】
本発明のIL−1α/IL−1β二重特異性抗体または抗体部分はまた、自己免疫性疾患および炎症性疾患の処置において有用な1つ以上のさらなる治療剤とともに投与することができる。
【0108】
本発明の抗体またはその抗原結合部分は、そのような疾患を処置するために単独または組合せで使用することができる。本発明の抗体またはその抗原結合部分は単独で使用することができ、またはその意図された目的のために当業者によって選択されるさらなる薬剤(例えば、治療剤)と組み合わせて使用できることを理解しなければならない。例えば、そのようなさらなる薬剤は、本発明の抗体によって処置されている疾患または状態を処置するために有用であることがこの分野で認識されている治療剤であり得る。そのようなさらなる薬剤はまた、治療組成物に有益な特性を付与する薬剤、例えば、組成物の粘性をもたらす薬剤であり得る。
【0109】
本発明の範囲に包含され得る組合せ物は、その意図された目的のために有用であるそのような組合せ物であることをさらに理解しなければならない。下記に示される薬剤は例示目的であり、限定することを目的としていない。本発明の一部である組合せ物は、本発明の抗体、および下記のリストから選択される少なくとも1つの薬剤であり得る。組合せはまた、形成された組成物がその意図された機能を発揮し得るように組合せがなされるならば、2つ以上のさらなる薬剤(例えば、2つまたは3つのさらなる薬剤)を含むことができる。
【0110】
好ましい組合せ物は、NSAIDSとも呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬であり、これはイブプロフェンおよびCOX−2阻害剤のような薬物を含む。他の好ましい組合せ物は、プレドニゾロンを含むコルチコステロイドである;ステロイド使用のよく知られている副作用を、患者を処置するときに必要とされるステロイド量を本発明の抗IL−1抗体と組合せて徐々に減少させることによって低下させることができ、または除くことさえできる。本発明の抗体または抗体部分を組み合わせることができる慢性関節リウマチ用治療剤の非限定的な例には、下記が挙げられる:サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);他のヒトサイトカインもしくは増殖因子(例えば、TNF、LT、IL−2、IL−6、IL−6、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGF)に対する抗体またはそれらのアンタゴニスト。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90またはそれらのリガンド(CD154(gp39またはCD40L)を含む)などの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることができる。
【0111】
治療剤の好ましい組合せ物は、自己免疫およびその後の炎症カスケードにおける種々の点を妨害することができる;好ましい例には、キメラTNF抗体またはヒト化TNF抗体またはヒトTNF抗体であるD2E7(PCT国際特許出願公開WO97/29131)、CA2(Remicade(商標))、CDP571、CDP870、サリドマイドのようなTNFアンタゴニスト、および可溶性のp55TNF受容体またはp75TNF受容体、その誘導体(p75TNFR1gG(Enbrel(商標))またはp55TNFR1gG(Lanercept))、そしてまたTNFα変換酵素(TACE)阻害剤が含まれる;同様に、同じ理由から、IL−1阻害剤(インターロイキン−1変換酵素阻害剤、IL−1RAなど)は効果的であり得る。他の好ましい組合せ物はインターロイキン11を含む。さらに別の好ましい組合せ物は、IL−1の機能と同時に、またはIL−1の機能に依存して、またはIL−1の機能と協調して作用し得る自己免疫応答の他の重要な因子である;IL−12抗体および/もしくはIL−18抗体、または可溶性のIL−12受容体および/もしくはIL−18受容体、またはIL−12結合タンパク質および/もしくはIL−18結合タンパク質を含むIL−12アンタゴニストおよび/もしくはIL−18アンタゴニストが特に好ましい。IL−12およびIL−18は、重複するが、異なる機能を有しており、両者に対するアンタゴニストの組合せは最も効果的であり得ることが示されている。さらに別の好ましい組合せ物は、枯渇しない抗CD4阻害剤である。さらに別の好ましい組合せ物には、抗体、可溶性の受容体またはアンタゴニスト性リガンドを含む同時刺激経路のアンタゴニストであるCD80(B7.1)またはCD86(B7.2)が含まれる。
【0112】
本発明の抗体またはその抗原結合部分はまた、様々な薬剤と組み合わせることができ、例えば、メトトレキサート、6−MP、アザチオプリン、スルファサラジン、メサラジン、オルサラジンクロロキニン/ヒドロキシクロロキン、ペンシラミン、金チオリンゴ酸塩(筋肉内および経口)、アザチオプリン、コチシン、コルチコステロイド(経口、吸入および局所注射)、β−2アドレナリン受容体アゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテラール)、キサンチン類(テオフィリン、アミノフィリン)、クロモグリカート、ネドクロミル、ケトチフェン、イプラトロピウムおよびオキシトロピウム、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノラートモフェチル、レフルノミド、NSAID(例えば、イブプロフェン)、コルチコステロイド(プレドニゾロンなど)、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作動剤、TNFαまたはIL−1などの前炎症性サイトカインによるシグナル変換を妨害する薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38キナーゼ阻害剤またはMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル変換阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体(例えば、可溶性のp55TNF受容体またはp75TNF受容体およびその誘導体(p75TNFRIgG(Enbrel(商標))およびp55TNFGIgG(Lenercept))、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R)、ならびに抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13およびTGFβ)などと組み合わせることができる。好ましい組合せ物はメトトレキサートまたはレフルノミドを含み、そして中程度または重度の慢性関節リウマチの場合にはシクロスポリンを含む。
【0113】
本発明の抗体または抗体部分を組み合わせることができる炎症性腸疾患用治療剤の非限定的な例には、下記が挙げられる:ブデノシド;上皮増殖因子;コルチコステロイド;シクロスポリン、スルファサラジン;アミノサリチラート;6−メルカプトプリン;アザチオプリン;メトロニダゾール;リポキシゲナーゼ阻害剤;メサラミン;オルサラジン;バルサラジド;抗酸化剤;トロンボキサン阻害剤;IL−1受容体アンタゴニスト;抗IL−1βモノクローナル抗体;抗IL−6モノクローナル抗体;増殖因子;エラスターゼ阻害剤;ピリジニルイミダゾール化合物;他のヒトサイトカインまたは増殖因子(例えば、TNF、LT、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGF)に対する抗体またはそれらのアンタゴニスト。本発明の抗体は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD90またはそれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることができる。本発明の抗体またはその抗原結合部分はまた、様々な薬剤と組み合わせることができ、例えば、メトトレキサート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノラートモフェチル、レフルノミド、NSAID(例えば、イブプロフェン)、コルチコステロイド(プレドニゾロンなど)、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作動剤、TNFαまたはIL−1などの前炎症性サイトカインによるシグナル変換を妨害する薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38キナーゼ阻害剤またはMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤、TNFα変換酵素阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル変換阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン類、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体(例えば、可溶性のp55TNF受容体またはp75TNF受容体、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R)、ならびに抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13およびTGFβ)などと組み合わせることができる。
【0114】
抗体または抗原結合部分を組み合わせることができるクローン病用治療剤の好ましい例には、下記が挙げられる:TNFアンタゴニスト、例えば、抗TNF抗体のD2E7(PCT国際特許出願公開WO97/29131)、CA2(Remicade(商標))、CDP571、TNFR−Ig構築物(p75TNFRIgG(Enbrel(商標))およびp55TNFGIgG(Lenercept))阻害剤、ならびにPDE4阻害剤。本発明の抗体またはその抗原結合部分またはその抗原結合部分はコルチコステロイド(例えば、ブデノシドおよびデキサメタゾン)と組み合わせることができる。本発明の抗体またはその抗原結合部分はまた、スルファサラジン、5−アミノサリチル酸およびオルサラジンなどの薬剤と組み合わせることができ、そしてIL−1などの前炎症性サイトカインの合成または作用を妨害する薬剤(例えば、IL−1β変換酵素阻害剤およびIL−1ra)と組み合わせることができる。本発明の抗体またはその抗原結合部分はまた、T細胞シグナル変換阻害剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤の6−メルカプトプリン類)と組み合わせることができる。本発明の抗体またはその抗原結合部分はIL−11とと組み合わせることができる。
【0115】
本発明の抗体または抗体部分を組み合わせることができる多発性硬化症用治療剤の非限定的な例には、下記が挙げられる:コルチコステロイド;プレドニゾロン;メチルプレドニゾロン;アザチオプリン;シクロホスファミド;シクロスポリン;メトトレキサート;4−アミノピリジン;チザニジン;インターフェロン−β1a(Avonex;Biogen);インターフェロン−β1b(Betaseron;Chiron/Berlex);コポリマー1(Cop−1;Copaxone;Teva Pharmaceutical Industries,Inc.);高圧酸素;静脈注射免疫グロブリン;クラブリビン;他のヒトサイトカインまたは増殖因子(例えば、TNF、LT、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−18、EMAP−II、GM−CSF、FGFおよびPDGF)に対する抗体またはそれらのアンタゴニスト。本発明の抗体またはその抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90またはそれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせることができる。本発明の抗体またはその抗原結合部分はまた、様々な薬剤と組み合わせることができ、例えば、メトトレキサート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノラートモフェチル、レフルノミド、NSAID(例えば、イブプロフェン、COX−2阻害剤)、コルチコステロイド(プレドニゾロンなど)、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作動剤、TNFαまたはIL−1などの前炎症性サイトカインによるシグナル変換を妨害する薬剤(例えば、IRAK、NIK、IKK、p38キナーゼ阻害剤またはMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤、TACE阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル変換阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン類、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体(例えば、可溶性のp55TNF受容体またはp75TNF受容体、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R)、ならびに抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL−13およびTGFβ)などと組み合わせることができる。
【0116】
本発明の抗体またはその抗体部分を組み合わせることができる多発性硬化症用治療剤の好ましい例には、インターフェロン−β(例えば、IFNβ1aおよびIFNβ1b);コパキソン、コルチコステロイド、IL−1阻害剤、TNF阻害剤、ならびにCD40リガンドおよびCD80に対する抗体が挙げられる。
【0117】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体または抗体部分の「治療効果的な量」または「予防効果的な量」を含むことができる。「治療効果的な量」は、所望する治療的結果を達成するための必要な投薬量および時間での効果的な量をいう。抗体または抗体部分の治療効果的な量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに個体において所望する応答を生じさせる抗体または抗体部分の能力などの要因に依存して変化し得る。治療効果的な量はまた、抗体または抗体分子の何らかの毒性作用または有害作用よりも、治療的に有益な作用が勝っている量である。「予防効果的な量」は、所望する予防的結果を達成するための必要な投薬量および時間での効果的な量をいう。典型的には、予防的用量が、より初期の疾患段階に先立って、またはより初期の疾患段階で対象体において使用されるので、予防効果的な量は、治療効果的な量よりも少ない。
【0118】
投薬法は、最適な所望する応答(例えば、治療的または予防的な応答)が得られるように調節することができる。例えば、単回のボーラス剤を投与することができ、または数個の分割用量を所定時間にわたって投与することができ、または用量を、治療状況の要件によって示されるように対応して減少もしくは増大させることができる。投与を容易にし、かつ投薬を均一にするために投薬ユニット形態で非経口組成物を配合することは特に好都合である。本明細書中で使用される投薬ユニット形態は、処置される哺乳動物患者に対する単位投薬量として適する物理的に分離したユニットをいう。この場合、ユニットは、所望する治療効果をもたらすために計算された所定量の活性な化合物を、必要とされる薬学的キャリアと一緒に含有する。本発明の投薬ユニット形態物の仕様は、(a)活性な化合物の特徴的な特性および達成される特定の治療効果または予防効果、そして(b)個体における感受性を処置するためにそのような活性な化合物を配合することのこの分野における固有的な制限によって決定され、かつそれらに直接依存している。
【0119】
本発明の抗体または抗体部分の治療効果的または予防効果的な量の例示的で非限定的な範囲は0.1mg/kgから20mg/kgであり、より好ましくは1mg/kgから10mg/kgである。投薬量の値は、緩和される状態のタイプおよび重篤度によって変化し得ることに留意しなければならない。任意の特定の患者に対して、特定の投薬法は、個体の必要性および組成物を投与する医師または組成物の投与を監督する医師の専門的判断に従って時間とともに調節されなければならないこと、そして本明細書中に示される投薬量の範囲は例示にすぎず、請求項に記載される組成物の範囲または実施を制限することを意図していないことをさらに理解しなければならない。
【0120】
本発明は下記の実施例によってさらに例示されるが、下記の実施例は決して限定として解釈してはならない。本明細書中を通して引用されているすべての引用参考文献(文献、発行された特許および公開された特許明細書を含む)の内容はこれらにより参考として特に組み込まれる。
【実施例】
【0121】
実施例1:同一の連続したトポロジー領域に基づく二重特異性抗原の設計
本実施例では、構造的に関連する2つの異なるタンパク質のIL−1αおよびIL−1βの間で最も長い同一の連続したトポロジー領域が、IL−1αおよびIL−1βに対する二重特異性抗体を惹起させるための二重特異性抗原を示すための基礎として決定された。BLASTアルゴリズムが、この2つのタンパク質を比較するために使用された。これにより、類似する構造的領域または機能的領域において別の残基に置換するための残基の傾向を見積もることができる。この分析により、IL−1αおよびIL−1βの間で最も長い同一の連続したトポロジー領域の同定が可能になり、そして二重特異性抗原として役立つ直鎖状ペプチドを作製するために類似する妥当な領域を伴ってこの領域を拡大することができた。これらの基準を最も良く満たすペプチドは下記のアミノ酸配列を有する:
NEAQNITDF(配列番号1)
* ****
アスタリクス(*)は両方のタンパク質において同一の残基を示し、それ以外の残基は、BLASTアルゴリズムにより強い類似性を有する。例えば、リシンは、相同的なタンパク質において、フェニルアラニンではなく、アルギニンの代わりに使用されることが多い。配列番号1のこのペプチドは、反対方向で伸びている構造の2つの異なる部分から得られるハイブリッドであり、従って、このエピトープの別の妥当な表示を下記に示す:
dNdEdAdQNITDF
(式中、「d」の添え字は、そのアミノ酸残基がD−アミノ酸残基であることを示す)。ペプチドのL−アミノ酸型およびD−アミノ酸残基で部分的に置換された型はともに標準的な化学的方法によって合成される。その後、ペプチドはキャリアタンパク質(例えば、KLHまたはアルブミン)に結合させられ、そして結合させられたペプチドは、インビトロ法またはインビボ法によって抗体を選択するために使用される。
【0122】
実施例2:共通する折りたたみ部のループを模倣する環状ペプチドに基づく二重特異性抗原の設計
本実施例では、構造的に関連する2つの異なるタンパク質のIL−1αおよびIL−1βの間において共通する折りたたみ部の重要なループを構造的に模倣する環状ペプチドが、IL−1αおよびIL−1βに対する二重特異性抗体を惹起させるための二重特異性抗原として使用するために構築された。選ばれたループはIL−1αの残基168〜184およびIL−1βの残基160〜176を表す。そのコンセンサス配列を下記に示す:
Cyclo−MAFLRANQNNGKISVAL(PG)(配列番号2)
*cbcccccccc**c*b*
アスタリクス(*)はIL−1αおよびIL−1βの間で同一の残基を示し、cはコンセンサス残基(すなわち、IL−1αおよびIL−1βに類似しているが、実際にはいずれかのタンパク質においてこの位置には存在していない残基)を示し、そしてbは、明瞭なコンセンサス残基が存在せず、従ってIL−1β配列そのものが保持されていたことを示す。この直鎖状ペプチドは標準的な化学的合成法によって合成される。このペプチドを環化するために、プロリン残基およびグリシン残基が付加される。この環状ペプチドは、N,N−ジメチルホルムアミドにおける高希釈度(1mg/ml)での標準的なカップリング条件を使用して合成することができる。典型的な反応が、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリスピロリジノホスホニウム・ヘキサフルオロホスファート(PyBOP;2当量)および重炭酸ナトリウム(10当量)などの過剰なカップリング試薬を使用して室温で行われる。その後、ペプチドはキャリアタンパク質(例えば、KLHまたはアルブミン)に結合させられ、そして結合させられたペプチドは、インビトロ法またはインビボ法によって抗体を選択するために使用される。
【0123】
実施例3:ハイブリッドペプチドに基づく二重特異性抗原の設計
本実施例では、構造的に関連する2つの異なるタンパク質のIL−1αおよびIL−1βの交互に連続する配列または重複する配列を含むハイブリッドペプチドが、IL−1αおよびIL−1βに対する二重特異性抗体を惹起させるための二重特異性抗原として使用するために構築された。ハイブリッドペプチドを作製するために、IL−1αおよびIL−1βの交互に連続するアミノ酸配列または重複するアミノ酸配列が、下記のペプチドを作製するために同定され、一緒にスプライシングされた:
TKGGQDITDFQILENQ(配列番号3)
bbbbbbbbbb
aaaaaaaaaa
aおよびbは、残基がどのタンパク質から由来するかを示している(a=IL−1α;b=IL−1β)。両方のタンパク質に共通するITDF(配列番号4)モチーフがハイブリッドペプチドに含まれた。さらに、このハイブリッドペプチドは、両方のタンパク質のカルボキシ末端に由来する配列に集中しており、そして両方のタンパク質における中和抗体に対して抗原性であることもまた知られている。このハイブリッドペプチドは標準的な化学的合成法によって合成される。その後、ペプチドはキャリアタンパク質(例えば、KLHまたはアルブミン)に結合させられ、そして結合させられたペプチドは、インビトロ法またはインビボ法によって抗体を選択するために使用される。
【0124】
実施例4:IL−1αおよびIL−1βに対する二重特異性抗体の作製
NEAQNITDF(配列番号1)
Cyclo−MAFLRANQNNGKISVAL(PG)(配列番号2)
TKGGQDITDFQILENQ(配列番号3)
配列番号1、2および3のペプチドをKLHと結合して、個々のウサギを免疫化した。3つのペプチドのそれぞれで免疫化されたウサギから得られた抗血清は、抗原として使用されたペプチドに対して良好な抗体応答を示した。しかし、配列番号3のペプチドで免疫化されたウサギから得られた抗血清だけは、IL−1αタンパク質およびIL−1βタンパク質の両方と結合することができた。
【0125】
5匹のマウス(BA119〜BA123)を、KLHと結合させた配列番号3のペプチドおよびフロインド不完全アジュバント(FIA)を用いて、3週間毎に1回、合計で3回、皮下注射によって免疫化し、その後、KLHと結合させた配列番号3のペプチドを用いた2回の静脈内注射による追加免疫を行った。各マウスはそれぞれの免疫化の10日後に採血され、抗体力価がELISAによって測定された。BA119およびBA123のマウスから得られた脾臓細胞をそれぞれ、IIA節に記載されるように、ミエローマ細胞株P3X36Ag8.635と融合し、得られた融合細胞を、限界希釈を使用して数枚の96ウエルプレートにウエルあたり1個の細胞で播種した。増殖したハイブリドーマクローンを、抗体産生クローンを同定するために、標準的なELISAによってIgGおよびIgMの産生について最初にアッセイした。マウス#BA123の融合から合計で945個のクローンが単離された。ELISAで試験された355個のクローンから得られた上清が、IL−1α、またはIL−1β、またはIL−1αおよびIL−1βの両方に対する抗原結合活性を示した。
【0126】
【表1】

【0127】
均等物
当業者は、日常的にすぎない実験を使用して、本明細書中に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、またはそのような均等物を確認することができる。そのような均等物は、添付されている請求項によって包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−1αおよびインターロイキン−1βと特異的に結合する二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、0.1s−1以下のkoff速度定数でインターロイキン−1αと結合し、または1×10−5M以下のIC50でインターロイキン−1αの活性を阻害する、請求項1に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、0.1s−1以下のkoff速度定数でインターロイキン−1βと結合し、または1×10−5M以下のIC50でインターロイキン−1βの活性を阻害する、請求項1に記載の二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
インターロイキン−1αおよびインターロイキン−1βと特異的に結合する二重特異性抗体を得る方法であって、
IL−1αおよびIL−1βの共通する構造的な特徴を含む抗原を提供すること、
抗体レパートリーを抗原にさらすこと、
IL−1αおよびIL−1βと特異的に結合する抗体をレパートリーから選択し、それにより二重特異性抗体を得ること
を含む方法。
【請求項5】
抗原が、IL−1αとIL−1βとの間で同一的な連続したトポロジー領域に基づいて設計される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗原がNEAQNITDF(配列番号1)またはdNdEdAdQNITDFのアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抗原が、IL−1αおよびIL−1βの共通する折りたたみ部のループを構造的に模倣することに基づいて設計される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
抗原が、Cyclo−MAFLRANQNNGKISVAL(PG)(配列番号2)のアミノ酸配列を含む環状ペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗原が、ハイブリッド分子を作製するために、IL−1αおよびIL−1βの重複する部分を一緒にスプライシングすることに基づいて設計される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
抗原がTKGGQDITDFQILENQ(配列番号3)のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
抗原が、下記のアミノ酸配列:
APVRSLNCTLRDSQQKSLVMSGPYELKALHLQGQDMEQQVVFSMGAYKSSKDDAKITVILGLKEKNLYLSCVLKDDKPTLQLESVDPKNYPKKKMEKRFVFNKIEINNKLEFESAQFPNWYISTSQAENMPVFLGGTKGGQDITDFTMQFVSS(配列番号4)
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
抗体レパートリーが、動物を抗原で免疫化することによってインビボにおいて抗原にさらされる、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
動物のリンパ球に由来するハイブリドーマのパネルを調製し、そしてIL−1αおよびIL−1βと特異的に結合する抗体を分泌するハイブリドーマを選択することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
動物が、マウス、ラット、ウサギおよびヤギからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
動物が、IL−1α、またはIL−1β、またはIL−1αおよびIL−1βの両方について欠損したノックアウトマウスである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
動物が、抗原刺激したときにヒト抗体を作製するようにヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子導入されているマウスである、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
動物が、ヒト末梢血の単核細胞またはリンパ系細胞またはその前駆体で再構成されている重症複合免疫不全症(SCID)マウスである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
動物が、致死的な全身照射、その後、重症複合免疫不全症(SCID)マウスの骨髄細胞を用いた放射線防護、その後、機能的なヒトリンパ球またはその前駆体を用いた移植で処置されているマウスである、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
抗体レパートリーが、組換え抗体ライブラリーを抗原でスクリーニングすることによってインビトロにおいて抗原にさらされる、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
組換え抗体ライブラリーがバクテリオファージの表面において発現している、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組換え抗体ライブラリーが酵母の表面において発現している、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
組換え抗体ライブラリーが細菌の表面において発現している、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
組換え抗体ライブラリーがRNA−タンパク質融合体として発現される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
組換え抗体ライブラリーがscFvライブラリーまたはFabライブラリーである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
抗体レパートリーが、動物を抗原でインビボにおいて免疫化し、その後、動物のリンパ系細胞から調製された組換え抗体ライブラリーを抗原でインビトロにおいてスクリーニングすることによって抗原にさらされる、請求項4に記載の方法。
【請求項26】
抗体レパートリーが、動物を抗原でインビボにおいて免疫化し、その後、動物のリンパ系細胞から調製された組換え抗体ライブラリーをインビトロにおいて親和性成熟させることによって抗原にさらされる、請求項4に記載の方法。
【請求項27】
抗体レパートリーが、動物を抗原でインビボにおいて免疫化し、その後、抗原と結合する抗体を分泌する単一細胞を選択し、そして重鎖可変領域および軽鎖可変領域のcDNAをこの単一細胞から回収することによって抗原にさらされる、請求項4に記載の方法。
【請求項28】
二重特異性抗体が完全なヒト抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項29】
二重特異性抗体がキメラ抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項30】
二重特異性抗体がCDRグラフト化抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項31】
請求項4に記載の方法によって得られる、インターロイキン−1αおよびインターロイキン−1βと特異的に結合する二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項32】
構造的に関連する2つの異なる分子と特異的に結合する二重特異性抗体を得る方法であって、
構造的に関連する2つの異なる分子の共通する構造的な特徴を含む抗原を提供すること、
抗体レパートリーを抗原にさらすこと、
構造的に関連する2つの異なる分子と特異的に結合する抗体をレパートリーから選択し、それにより二重特異性抗体を得ること
を含む方法。
【請求項33】
抗原が、構造的に関連する2つの異なる分子の間で同一的な連続したトポロジー領域に基づいて設計される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
構造的に関連する2つの異なる分子がタンパク質であり、抗原が、この2つのタンパク質の間で同一的な連続したトポロジー領域のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
抗原が、構造的に関連する2つの異なる分子の共通する折りたたみ部のループを構造的に模倣することに基づいて設計される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
構造的に関連する2つの異なる分子がタンパク質であり、抗原が、この2つのタンパク質の共通する折りたたみ部のループを構造的に模倣する環状ペプチドである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗原が、ハイブリッド分子を作製するために、構造的に関連する2つの異なる分子の重複する部分を共にスプライシングすることに基づいて設計される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
構造的に関連する2つの異なる分子がタンパク質であり、抗原が、この2つのタンパク質の重複するアミノ酸配列を一緒にスプライシングすることによって作製されるハイブリッドペプチドである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
抗原が構造的に関連する2つの異なる分子の一方である、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
抗体レパートリーが、動物を抗原で免疫化することによってインビボにおいて抗原にさらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
動物のリンパ球に由来するハイブリドーマのパネルを調製し、そして構造的に関連する2つの異なる分子と特異的に結合する抗体を分泌するハイブリドーマを選択することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
動物が、マウス、ラット、ウサギおよびヤギからなる群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
動物が、抗原の内因性型について欠損したノックアウトマウスである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
動物が、抗原刺激したときにヒト抗体を作製するようにヒト免疫グロブリン遺伝子について遺伝子導入されているマウスである、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
動物が、ヒト末梢血の単核細胞またはリンパ系細胞またはその前駆体を用いて再構成されている重症複合免疫不全症(SCID)マウスである、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
動物が、致死的な全身照射、その後、重症複合免疫不全症(SCID)マウスの骨髄細胞を用いた放射線防護、その後、機能的なヒトリンパ球を用いた移植で処置されているマウスである、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
抗体レパートリーが、組換え抗体ライブラリーを抗原でスクリーニングすることによってインビトロにおいて抗原にさらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項48】
組換え抗体ライブラリーがバクテリオファージの表面において発現している、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
組換え抗体ライブラリーが酵母の表面において発現している、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
組換え抗体ライブラリーが細菌の表面において発現している、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
組換え抗体ライブラリーがRNA−タンパク質融合体として発現させられる、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
組換え抗体ライブラリーがscFvライブラリーまたはFabライブラリーである、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
抗体レパートリーが、動物を抗原でインビボにおいて免疫化し、その後、動物のリンパ系細胞から調製された組換え抗体ライブラリーを抗原でインビトロにおいてスクリーニングすることによって抗原にさらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項54】
抗体レパートリーが、動物を抗原でインビボにおいて免疫化し、その後、動物のリンパ系細胞から調製された組換え抗体ライブラリーをインビトロにおいて親和性成熟させることによって抗原にさらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項55】
抗体レパートリーが、動物を抗原でインビボにおいて免疫化し、その後、抗原と結合する抗体を分泌する単一細胞を選択し、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のcDNAをこの単一細胞から回収することによって抗原にさらされる、請求項32に記載の方法。
【請求項56】
二重特異性抗体が完全なヒト抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項57】
二重特異性抗体がキメラ抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項58】
二重特異性抗体がCDRグラフト化抗体である、請求項32に記載の方法。
【請求項59】
請求項32に記載される方法によって得られる二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項60】
生物学的サンプルまたは組織におけるIL−1αまたはIL−1βを検出する方法であって、IL−1αまたはIL−1βを含有することが疑われる生物学的サンプルまたは組織を請求項1に記載される二重特異性抗体またはその抗原結合部分と接触させて、生物学的サンプルまたは組織におけるIL−1αまたはIL−1βを検出するための含む方法。
【請求項61】
IL−1αまたはIL−1βが診断目的のために検出される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
生物学的サンプルがインビトロでのサンプルである、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
組織が被験体においてインビボで存在し、かつ方法が組織のインビボ画像化を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
IL−1αまたはIL−1βの活性を阻害する方法であって、IL−1αまたはIL−1βの活性が阻害されるように、IL−1αまたはIL−1βを請求項1に記載される二重特異性抗体またはその抗原結合部分と接触させることを含む方法。
【請求項65】
IL−1αまたはIL−1βの活性がインビトロで阻害される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
インターロイキン−1関連障害を処置する方法であって、インターロイキン−1関連障害に罹患している患者に、請求項1に記載される二重特異性抗体またはその抗原結合部分を、インターロイキン−1関連障害について患者が処置されるように投与することを含む方法。
【請求項67】
IL−1関連障害が炎症性障害である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
IL−1関連障害が自己免疫障害である、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
IL−1関連障害が、慢性関節リウマチ、クローン病、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病および乾癬からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
抗体またはその抗原結合部分のライブラリーを作製する方法であって、
a)第1の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーAを得る工程、
b)第1の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーBを得る工程、
c)第2の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーCを得る工程、
d)第2の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーDを得る工程、
e)組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーAを組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーDと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーXを得る工程、および/または組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーCを組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーBと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーYを得る工程、
を含む方法。
【請求項71】
抗体またはその抗原結合部分のライブラリーXを抗体またはその抗原結合部分のライブラリーYと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーZを得る工程をさらに含む、請求項70に記載の抗体またはその抗原結合部分のライブラリーを作製する方法。
【請求項72】
請求項70に記載される方法に従って作製される、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーX。
【請求項73】
請求項70に記載される方法に従って作製される、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーY。
【請求項74】
請求項71に記載される方法に従って作製される、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーZ。
【請求項75】
二重特異性抗体またはその抗原結合部分を作製する方法であって、
a)第1の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーAを得る工程、
b)第1の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーBを得る工程、
c)第2の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーCを得る工程、
d)第2の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーDを得る工程、
e)組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーAを組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーDと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーXを得る工程、および/あるいは組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーCを組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーBと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーYを得る工程、そして
f)第1の抗原および第2の抗原の両方と結合する抗体またはその抗原結合部分を抗体またはその抗原結合部分のライブラリーXおよび/あるいは抗体またはその抗原結合部分のライブラリーYから選択する工程
を含む方法。
【請求項76】
請求項75に記載される方法によって作製される二重特異性抗体。
【請求項77】
二重特異性抗体またはその抗原結合部分を作製する方法であって、
a)第1の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーAを得る工程、
b)第1の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーBを得る工程、
c)第2の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーCを得る工程、
d)第2の抗原にさらすことから生じる抗体レパートリーから組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーDを得る工程、
e)組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーAを組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーDと組み合わせて、抗体ライブラリーXを得る工程、および/または組換え重鎖またはその抗原結合部分のライブラリーCを組換え軽鎖またはその抗原結合部分のライブラリーBと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーYを得る工程、
f)抗体またはその抗原結合部分のライブラリーXを抗体またはその抗原結合部分のライブラリーYと組み合わせて、抗体またはその抗原結合部分のライブラリーZを得る工程、
g)第1の抗原および第2の両方と結合する抗体またはその抗原結合部分を抗体またはその抗原結合部分のライブラリーZから選択する工程
を含む方法。
【請求項78】
請求項77に記載される方法によって作製される二重特異性抗体またはその抗原結合部分。
【請求項79】
第1の抗原および第2の抗原がそれぞれ独立して、タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドからなる群から選択され、第1の抗原および第2の抗原が同じではない、請求項70、75または77に記載の方法。
【請求項80】
タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドが分泌型タンパク質または表面の受容体である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
分泌型タンパク質が、IFN、TNF、インターロイキン、IP−10、PF4、GRO、9E3、EMAP−II、CSF、FGFおよびPDGFからなる群から選択される、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
第1の抗原がIL−1αであり、第2の抗原がIL−1βである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
請求項72、73または74に記載される抗体またはその抗原結合部分のライブラリー(1つまたは複数)の各メンバーをコードするヌクレオチド配列。
【請求項84】
請求項76または78に記載される二重特異性抗体またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列。
【請求項85】
請求項72、73または74に記載される抗体またはその抗原結合部分のライブラリーのメンバー(1つまたは複数)をコードするヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項86】
請求項76または78に記載される二重特異性抗体またはその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項87】
請求項85に記載されるベクターでトランスフェクションされた宿主細胞。
【請求項88】
請求項86に記載されるベクターでトランスフェクションされた宿主細胞。

【公開番号】特開2012−31178(P2012−31178A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−188635(P2011−188635)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【分割の表示】特願2002−508013(P2002−508013)の分割
【原出願日】平成13年6月28日(2001.6.28)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】