説明

二重瞼形成化粧料

【課題】変色やラテックス成分の分離、あるいはアレルギー発症などの危険のない理想的な二重瞼形成化粧料を得る。
【解決手段】 ラテックス成分のうち少なくとも50/w%以上の合成ラテックスを含む。これにより十分な接着力が得られ、またたとえ天然ゴムラテックスを含んでいたとしても蛋白質等不純物成分の含有量が微量であり、したがって変色しても実用上においては何ら支障のない範囲内であり、しかも漿液とゴム粒子分との分離がなく、またアレルギーの原因物質を含まないので安心して利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変色やラテックス成分の分離、あるいはアレルギー発症などの危険のない理想的な二重瞼形成用化粧料を提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
二重瞼を形成するための手段として、フィルムからなるテープを貼り付けて二重瞼を形成するようにした二重瞼形成用テープがすでに知られている(特開平10−304935号公報参照)。また最近では簡便な二重瞼形成のための化粧料が開発されている。
【0003】
このような化粧料としては、たとえばアクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合体や酢酸ビニル/クロトン酸共重合体などの皮膜形成能をもつ高分子化合物と、アミノ基含有ポリシロキサンとアニオン性ポリマーとの反応成生物をアルカリ性化合物を用いて中和することにより得られる複合高分子のシリコーン変性ポリマー、および主として該シリコーン変性ポリマーの溶媒として機能するエチルアルコールとからなり、しかも上記皮膜形成能をもつ高分子化合物に対するエチルアルコール成分の配合重量比を0.1〜10.0とすることにより、皮膜の弾力性と持続性に優れ、しかもべたつき等の不快な使用感のない化粧料が提案されている(特開平11−171728号公報参照)。
【特許文献1】特開平10−304935号公報
【特許文献2】特開平11−171728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のテープを貼り付けるものにあっては柔軟性に欠けるために使用中に目元に引きつれを起こしやすく違和感があり、また使用中は外出しづらいといった課題がある。さらに皮膜形成能をもつ高分子化合物と、シリコーン変性ポリマーの配合量比を特定した化粧料にあっては製造に手間がかかりコスト高となって必ずしも汎用に向かない。
【0005】
また現在市販されている二重瞼形成のための化粧料は、バインダーの主体として二重瞼化粧料としての接着性ならびに剥離性に優れた天然ゴムラテックスを使用しているが、接着力が必ずしも十分ではないために他の接着樹脂の添加が必要となり、しかも含有不純物が容器内の僅かな酸素により経時的に酸化して黄色に変色し、また外部光により変色が促進される。
【0006】
さらに天然ゴムラテックスは比重約1.0の漿液に対し、比重約0.83程度のゴム粒子がコロイド状に分散されているものであるために、天然ゴムラテックス単体であれば粒子のブラウン運動により分離はある程度遅延されるが、二重瞼形成用化粧料として用いる場合においては、その使用感を向上させる目的で粘度を増大させる必要がある関係で、上記した粒子のブラウン運動が阻害され、長時間の静置により前記した漿液とゴム粒子分との分離が起こりやすい。この場合の分離は初期には攪拌により比較的容易に解消させることができるが、その後不可逆的に増大するために、二重瞼形成用化粧料として用いた場合には、審美的不快感を増すことが多い。
【0007】
また天然ゴムラテックスにはアレルギー性が確認されており、使用者の体質如何にもよるが、軽度のアレルギー症状の発症から、時には抗原抗体反応による激しいショック症状を伴った重篤なアナフィラキシーショックを引き起こすこともあるために天然ゴムラテックス成分を配合した化粧料についてはアレルギー体質の者には使用できない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで二重瞼形成のための化粧料として上記した変色や漿液とゴム粒子分との分離、あるいはアレルギーの問題のない材料について種々研究した結果、意外にも合成ラテックスがこれに適することを見出した。合成ラテックスは石油由来であり、純度も高く、しかもアレルギー原因物質である蛋白質を全く含まない。さらに合成ラテックスの中でも二重瞼形成のための化粧料として、好適なバインダー特性ならびに剥離性の点において最も優れる変性SBRラテックスが好ましいことを突き止め、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明はラテックス成分のうち少なくとも50/w%以上の合成ラテックス、さらに好ましくはスチレンブタジエン系のラテックスを含み、さらに必要に応じてこれに皮膜形成剤、増粘剤、防腐剤、水、あるいは香料や保湿剤などの助剤うち1種又は2種以上を添加してなることを特徴とした二重瞼形成化粧料を内容とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記したように、ラテックス成分のうち少なくとも50/w%以上の合成ラテックスを含むものであるから十分な接着力が得られ、またたとえ天然ゴムラテックスを含んでいたとしてもその不純物成分の含有量が微量であり、したがって変色しても実用上においては何ら支障のない範囲内であり、しかも漿液とゴム粒子分との分離がなく、またアレルギーの原因物質を含まないので安心して利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において本発明の具体的な内容を実施例をもとに説明すると、本発明はラテックスとこれに添加される皮膜形成剤、増粘剤、防腐剤、水、あるいは香料や保湿剤などの助剤からなる二重瞼化粧料において、上記したラテックス成分のうち少なくとも50/w%以上を合成ラテックスで占めるようにしたものである。
【0012】
ラテックスは、植物(ヘベア・ブラジリエンシス樹)の代謝作用による天然の生産物であるNRラテックス(天然ラテックス)と、乳化重合法により合成された合成ラテックス、および固形ゴムを水中に乳化分散した転相ラテックスの三種に区別され、さらに分散されているポリマーの種類によってもSBR、BR、NBR、CR、IRラテックスなどに分類される。
【0013】
合成ラテックスについては、たとえば耐衝撃性や耐寒性に優れるところからABS樹脂のベースポリマーとして用いられるBRや、耐油性・接着性が良好で繊維処理や手袋等に用いられるNBR、そして加工性に優れ、しかも架橋物の物性バランスがよく耐油性・耐候性・難燃性・耐薬品性が良好であるところから含浸製や弾性セメントなどに用いられるCR、さらにはタイヤコードの繊維処理用のビニルピリジンラテックスやゴルフボール用糸ゴム等に用いられるIR等が存在する。
【0014】
さらに上記した合成ラテックスのうち、SBR(スチレン・ブタジエン)系のラテックスは顔料との接着性や平滑性、光沢を得るための熱可塑性、耐水性を得るための疎水性等の特質を有するところから汎用性があり、これまでは主にカレンダーや包装紙など紙加工の分野において用いられてきた。
【0015】
またこれらのSBR系ラテックスの中でも、スチレン・ブタジエン共重合体、あるいはカルボキシル化スチレン・ブタジエン共重合体などのSBRラテックスであって、カルボキシル基あるいはトリエトキシシリル基により変性した変性SBRラテックスは、皮膜形成能力に優れ、しかもあまり硬い皮膜ではなく、使用時において接着力が十分でありながら剥離時においては比較的容易に剥離することができ、しかも刺激性がないために目の近くで使用する二重瞼形成のための化粧料として用いた場合に、理想的であることが各種の実験結果より明らかとなった。
【0016】
さらにラテックス成分のうち、合成ラテックスの占める割合について種々の実験をしたところ、50/w%未満では天然ラテックス量が多すぎるために含有蛋白質により変色し、またラテックス成分の分離が避けられず、しかも十分な接着力を得ることが困難であることが解った。また50/w%以上であれば、ラテックス成分全量(100/w%)を合成ラテックスで占めても格別問題がないどころか、変色、分離、接着性、剥離容易性、無刺激性などの諸点においてきわめて良好であることが判明した。
【0017】
さらに助剤としては、アクリル樹脂などの皮膜形成剤、増粘剤、防腐剤、水、あるいは香料や保湿剤などの助剤うち1種又は2種以上を必要に応じて添加する。また合成ラテックスの中でも稀に微量の成分分離を伴うものもあるが、この場合にはカルボマーや増粘多糖類、PVP等の増粘剤を添加することにより容易に解決できる。
【実施例】
【0018】
サンプルとして以下の4種の二重瞼形成用化粧料を準備し、サンプル(2)〜(4)には合成ラテックスとして変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(日本ゼオン株式会社 品名:LX426)を使用した。
【0019】
〔サンプル〕
(1)100/w%天然ラテックスに皮膜形成剤、増粘剤、防腐剤、水、香料、保湿剤などの助剤を添加した二重瞼形成化粧料
(2)ラテックス成分のうち合成ラテックス45/w%、残りを天然ラテックスとし、これに皮膜形成剤、増粘剤、防腐剤、水、香料、保湿剤などの助剤を添加した二重瞼形成化粧料
(3)ラテックス成分のうち合成ラテックス55/w%、残りを天然ラテックスとし、これに皮膜形成剤、増粘剤、防腐剤、水、香料、保湿剤などの助剤を添加した二重瞼形成化粧料
(4)ラテックス成分のうち合成ラテックス80/w%、残りを天然ラテックスとし、これに皮膜形成剤、増粘剤、防腐剤、水、香料、保湿剤などの助剤を添加した二重瞼形成化粧料
上記した4種の二重瞼形成化粧料を用意し、それぞれのサンプルについて各20人の女性モニターに試してみた。
【0020】
その結果は以下の通りであった

(変色) (分離) (接着力) (易剥離性) (刺激)
サンプル(1) × △ △ △ △
サンプル(2) △ ○ △ △ ○
サンプル(3) ○ ○ ○ ○ ○
サンプル(4) ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

〔×=不良 △=多少難有り ○=良好 ◎=最適〕
【0021】
以上の結果より明らかであるように、ラテックス成分のうち合成ラテックス50/w%未満のもの(サンプル1および2)は、変色しやすいばかりでなく全体的に難点があり実用性に乏しいのに対し、ラテックス成分のうち合成ラテックス50/w%以上のもの(サンプル3および4)は、各試験項目共に十分に満足できる機能を有することが解った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックス成分のうち少なくとも50/w%以上の合成ラテックスを含み、さらに必要に応じてこれに皮膜形成剤、増粘剤、防腐剤、水、あるいは香料や保湿剤などの助剤うち1種又は2種以上を添加してなることを特徴とした二重瞼形成化粧料。
【請求項2】
合成ラテックスがスチレンブタジエン系のラテックスであるところの請求項1に記載の二重瞼形成化粧料。



























【公開番号】特開2007−106711(P2007−106711A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300358(P2005−300358)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(591165780)株式会社コージー本舗 (7)
【Fターム(参考)】