説明

二重袋包装体用易開封性インフレーションフィルムおよび二重袋包装体

【課題】 数回プレスシールしても、シール温度を変更しても、シール時の圧力、時間、温度の影響を受けにくく、包装体を手で容易に開封できるとともに、内容物の充填時や輸送中の落下などの衝撃に対しても破袋しない二重袋包装体を提供する。
【解決手段】 イージーピール性を有する外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、および、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を含む構成の二重袋包装体用インフレーションフィルムであり、前記イージーピール性を有する外層が、シール温度130℃、140℃、および150℃のいずれにおいても0.98〜19.6N/15mm幅のイージーピール強度を有し、当該外層の厚みが3〜15μmであることを特徴とする二重袋包装体用インフレーションフィルム、および当該インフレーションフィルムから製袋されてなることを特徴とするイージーピール性を有する二重袋包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重袋包装体用インフレーションフィルム、および当該フィルムにから製袋されてなる二重袋包装体に関するものであり、例えば、80℃以上に加熱された、たれ、練り餡、チョコクリーム、ジャム、マーガリン、加工油脂等を熱間充填できるイージーピール性(易開封性)を有する二重包装体を形成するための、二重袋包装体用インフレーションフィルム、および二重袋包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食酢、清酒、醤油、ソース、たれ、スープ、つゆ、各種飲料、マーガリン、調味料、練り餡、チョコレート等の液状物や粘稠体食品を充填する包装容器として、金属缶やガラス瓶等の容器が使用されていた。しかし、最近、環境問題から、包装容器を減容化すること、易廃棄性なものとすることが求められている。これら要求に対応すべく、液状物等の包装容器として、プラスチックフィルムからなる包装体が使用されるようになってきている。
【0003】
プラスチックフィルムは、金属缶やガラス瓶と比べて、軽量であり、流通経費、廃棄コストを削減できる点で優れている。液状物や粘稠体食品を充填する包装容器としては、保管や輸送において内容物が漏れないことが絶対条件である。しかし、プラスチックフィルムは、金属缶やガラス瓶等の容器に比べて厚みが薄く、耐久性に乏しいため、輸送中の振動や衝撃、摩擦によってピンホールが発生したり破袋したりして、内容物が漏れ出す可能性があるという本質的な問題を抱えている。
【0004】
このような問題を解決するため、プラスチックフィルムからなる包装体としては、一般的にはフィルムを2枚重ねにした二重袋包装体が汎用されている(例えば、特許文献1〜5)。
【0005】
かかる2枚重ねの二重袋包装体によれば、内部に被収容物を収容している場合にも、2枚のフィルム間に一定の自由度が存在する。したがって、輸送中に、二重袋包装体に衝撃が加えられても、被収容物を支えている内部側のフィルムと、パレット、あるいは他の包装体と接して二重袋包装体を支えている外部側のフィルムとの間で、一定の滑りが生じて、該衝撃の吸収を行い、ピンホールの発生や、破袋が生じるのを防止することができる。 しかし、特許文献1に開示されているように延伸フィルムを有する積層フィルムを使用すると、フィルムが硬いため、二重包装体の開封時に内容物を絞り出しにくく、内容物が残り作業適性が悪化するという問題がある。また、内容物が残ると、廃棄するまでの間に、残存した内容物による腐敗臭が発生したり、菌が繁殖したりするという問題がある。
【0006】
また、二重袋包装体の内層を構成する樹脂材料として、例えば、特許文献3に開示されているように、比較的低密度の低密度ポリエチレン(以下において、「LDPE」という略記することがある)を用いた場合には、製袋時には、ヒートシールが容易であるという優れた一面を有する一方で、二重袋包装体の内部に80℃以上に加温された食品等を直接収容するような場合、内層同士のブロッキングが生じて、輸送中の振動や衝撃、摩擦によって破袋しやすくなってしまうという問題がある。また、充填される内容物の熱とその重さによってフィルムが伸びて連続生産時にピッチ管理しづらいという問題がある。
【0007】
上記ブロッキングの問題を解決するものとして、本発明者は、特許文献5に記載されているような、二重袋包装体の内層を構成する樹脂材料としてLDPEを使用し、このLDPEのビカット軟化点と密度とを所定の範囲に設定することで二重袋包装体の内部に80℃以上に加温された食品等を直接収容しても、内層同士のブロッキングが生じにくく、耐ピンホール性に優れ、食品等を熱間充填しても伸びにくいフィルムを提案した。
【0008】
包装体は、内容物を容易に取り出すことができるように、イージーピール性を備えていることが好まれる。しかし、特許文献5に記載のフィルムは、完全シールにより二重袋包装体を形成するものであり、包装体から内容物を取り出すには、カッターあるいははさみを使用して包装体を開封する必要がある。このため、食品を使用する現場における作業性が悪いという問題があり、また、カッター等を用いて開封するため、開封した切片がゴミとなりゴミが増える、該切片が内容物中に混入する、といった問題もある。
【0009】
そこで、本発明者はこれら問題を解決すべく、特許文献6にあるようにイージーピール層を構成する2種類の樹脂のビカット軟化点と密度とを所定の範囲に設定することでユーザーが包装体を手で容易に開封できると共に、内容物の充填時や輸送中の落下などの衝撃に対しても破袋しない二重袋包装体として開発した。しかし、2重包装体のサイズは、内容物の充填量により大小様々でシール時間やシール温度を変更した際にイージーピール強度のバラツキを生じたり、包装機の縦シールバーの長さと送りピッチが一致しなかったりするため、数回にわたりフィルムの同じ箇所をシールした際に局所的にイージーピール強度が強くなってしまい、開封性が悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−305783号公報
【特許文献2】特開2003−335302号公報
【特許文献3】特開2003−26234号公報
【特許文献4】特開2002−234547号公報
【特許文献5】特開2007−15725号公報
【特許文献6】特開2009−029434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、シール温度範囲が広く、数回プレスシールしてもイージーピール強度が安定し、シール時間・シール温度・シール圧力の影響を受けにくいフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は、イージーピール性を有する外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、および、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を含む構成の二重袋包装体用インフレーションフィルムであり、前記イージーピール性を有する外層が、シール温度130℃、140℃、および150℃のいずれにおいても0.98〜19.6N/15mm幅のイージーピール強度を有し、当該外層の厚みが3〜15μmであることを特徴とする二重袋包装体用インフレーションフィルム、および当該インフレーションフィルムから製袋されてなることを特徴とするイージーピール性を有する二重袋包装体に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明よれば、シール温度範囲が広く、数回プレスシールしてもイージーピール強度が安定し、シール時間・シール温度・シール圧力の影響を受けにくいフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のインフレーションフィルムは、所定の層厚および所定の凝集力を備えたイージーピール性を有する外層を備えている。これにより、本発明のインフレーションフィルムを用いて作製した二重包装体に良好なイージーピール性を付与できる。包装体には、内容物の漏れを防ぐための密封性が必要である。また、本発明においては、さらに包装体の使用における作業性向上のためイージーピール性を付与している。本発明では、所定の層厚および所定の凝集力を備えたイージーピール性を有する外層により、二重袋包装体における密封性とイージーピール性のバランスを図っているのである。なお、本発明におけるイージーピール性とは、凝集破壊によるものであり、二重包装体を開封する際に、イージーピール層自体が破壊されて剥離し、イージーピール層が剥離面の両側に残るものである。 本発明のインフレーションフィルムは、ポリアミド樹脂からなる中間層を備えていることにより、耐ピンホール性が付与されている。また、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備えていることにより、包装体作製時のヒートシール性が良好となる。
【0016】
本発明において、イージーピール性を有する外層(以下、「イージーピール層」という場合がある)は、外層全体の質量を100質量%として、以下で示される50〜90質量%の樹脂組成物Aと10〜50質量%の樹脂組成物Bを備えて構成されていることが好ましい。
・樹脂組成物A:主成分が、メルトフローレートが6g/10分以上の、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、およびこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種である樹脂組成物
・樹脂組成物B:主成分が、メルトフローレート2g/10分以下のポリブチレンまたはポリプロピレンである樹脂組成物
樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bにおける「主成分」とは、これら樹脂組成物全体の質量を基準(100質量%)として、それぞれ上記列挙した樹脂を好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有していることをいい、外層が備えるべき効果を損なわない限り、上記列挙した樹脂以外に各種添加剤や、汎用樹脂成分の混入を許容する趣旨である。
【0017】
本発明において、このような所定割合で樹脂組成物Aおよび樹脂組成物Bを含むイージーピール層を用いることで、イージーピール層の凝集力を上記した範囲に調整することが容易となり、イージーピール性を良好なものとすることができる。また、従来、二重包装体作製時においてカット長が異なる場合があり、シール工程で複数回にわたりシーラーによるプレスが必要となる場合があり、複数回プレスされる個所と1回のみプレスされる個所でイージーピール強度が異なるということがあったが、上記のイージーピール層を用いることで、複数回のシーラーによるプレスが加わっても安定したイージーピール強度で良好な開封性が得られる。
【0018】
また、シール時間やシール温度、シール圧力を変更しても安定したイージーピール強度が得られるという点から、樹脂組成物AおよびBは上記に示した粘度範囲の樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
樹脂組成物Aは、メルトフローレートが6g/10分以上の直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」という場合がある)を用いることが好ましい。メルトフローレートが6g/10分以上と粘度の低いタイプを用いることで、凝集破壊層の毛羽立ちを防止でき、美麗な剥離面を得ることができる。また、縦方向と横方向のイージーピール強度の差を小さくすることもできる。
【0020】
樹脂組成物Bは、メルトフローレート2g/10分以下のポリブチレン(以下、「PB」)またはポリプロピレン(以下、「PP」)を用いることが好ましい。メルトフローレート2g/10分以下と粘度の高いタイプを用いることで、凝集破壊層の樹脂組成物Aに対する分散粒子径が大きくなり、美麗な剥離面を得ることができる。
【0021】
本発明において、中間層の厚みの範囲は通常5〜30μmである。中間層の厚みをこのような範囲とすることで、形成する二重袋包装体に、良好な耐ピンホール性を付与できると共に、良好なスクイズ性(被収容物の絞り出し易さ)を付与できる。
【0022】
本発明において、外層は、スリップ剤および/またはアンチブロッキング剤を含有していることが好ましい。これにより、巻取りフィルムのコブやタルミの発生を減らすことができる。また、包装機上のロールとの摩擦や筒状に折り畳まれるフォーマー部(セーラー部)での摩擦を軽減でき、フィルム送り時の蛇行やシール漏れの原因となる製袋時のシワを軽減することができる。
【0023】
また、内層の低密度ポリエチレン樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)であることが好ましい。LLDPEは、引張強度、伸び、耐ピンホール強度、剛性等の
物性強度が強いという特徴がある。
【0024】
本発明において、中間層と外層および/または内層との間に、少なくとも1層の接着樹脂層を有していてもよい。これにより、各層間の接着強度をより高めることができる。
【0025】
本発明において、中間層と外層および/または内層との間に、少なくとも1層のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂層(以下、「EVOH層」と省略する場合がある。)を有していてもよい。これにより、インフレーションフィルムにガス(酸素)バリア性を付与できる。
【0026】
本発明の二重袋包装体用インフレーションフィルムは、まず、3種類以上の樹脂を押出機により所定温度まで加熱溶融させ、昇圧する。そして、円筒形金型の内部に空気を吹き込み、金型の隙間から外層、中間層および内層で構成されるチューブ状のフィルムを吐き出させる。チューブ状フィルムはロール等で構成される折り畳み手段により平板状フィルムに折り畳まれ、その後巻き取り機によりロール状に巻き取られる。このようにして、本発明のインフレーションフィルムは製造される。ロール上に巻き取られたフィルムは、二重袋包装体を作製する際の原反となる。
【0027】
本発明の二重袋包装体用インフレーションフィルムは、イージーピール性を有する外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、および低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備えて構成されている。
【0028】
本発明において、内層はLDPEから構成されており、これにより、二重袋包装体を製造する際に、ヒートシールにより接着させることができる。また、内層を構成するLDPEは、所定のビカット軟化点および密度を備えていることが好ましい。LDPEのビカット軟化点は、下限が110℃以上、好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、上限が125℃以下、好ましくは124℃以下である。また、密度は、下限が通常0.930g/cmであり、好ましくは0.935g/cm以上、さらに好ましくは0.937g/cm以上であり、上限は通常0.940g/cmである。
【0029】
このようなLDPEを使用することにより、良好なヒートシール性を確保しつつ、熱間充填時のチューブフィルムの内層ブロッキングを防ぐことができる。例えば、二重袋を形成した状態で、80〜100℃の被収容物を熱間充填した際に、該内層同士がブロッキングするのを防ぐことができる。ここで本発明でいうブロッキングとは、内層同士が融着してしまうことをいう。内層同士が融着してしまうと、二重袋の利点である2枚のフィルムの自由度が阻害され、衝撃が吸収できず、ピンホールの発生、破袋が生じてしまう問題が発生する。
【0030】
ビカット軟化点が110℃以上のLDPEの場合、ビカット軟化点が上昇すると、密度も次第に上昇する。例えば、ビカット軟化点が120℃以上のLDPEの場合、密度は0.940g/cmに近いものとなるため、二重袋包装体の製袋時において、食品等を熱間充填しても内層同士のブロッキングが発生しにくく、熱によるフィルムの伸びを最小限に抑えることができる。
【0031】
また、内層を構成するLDPEは、LLDPEであることが好ましく、また、LLDPEとしては、エチレンと炭素数6のヘキセン−1または炭素数8のオクテン−1との共重合体が好ましい。LLDPEはLDPEより引張強度、伸び、耐ピンホール強度、剛性等の物性強度が強い。また、上記のように共重合体の炭素数が増えると、物性強度も比例して強くなる。
【0032】
内層の厚みは、下限が通常10μmであり、好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、上限が通常50μmであり、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは35μm以下である。内層の厚みを10μm以上にすることにより、耐ピンホール性と耐熱性を維持できる。一方、内層の厚みを50μm以下にすることにより、該フィルムにより形成した二重袋包装体に適度なスクイズ性が与えられ、内容物を絞り出す作業が良好となる。
【0033】
本発明において中間層は、ポリアミド樹脂により構成されている。ポリアミド樹脂の種類は特に限定されないが、耐ピンホール性の観点から、ポリアミド系合成繊維系樹脂としては、例えば、6ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、6−66ナイロン、12ナイロン、11ナイロン、610ナイロン、612ナイロン、6I−6Tナイロン、MXD6ナイロン等の重合体またはこれら2種以上を重合単位として含む共重合体、さらにはこれら重合体の混合物を用いることが好ましい。これらの中でも6ナイロンや6−66ナイロンを用いることが、インフレーション法において押出し成形性、製膜安定性に優れており、コストが安価で安定入手可能である等の点から特に好ましい。
【0034】
中間層の厚みは、下限が通常5μmであり、好ましくは7μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、上限は通常30μmであり、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。ポリアミド樹脂により形成された中間層の厚みの下限値を5μmとすることにより、良好な耐ピンホール性が得られ、伸びにくいフィルムとなる。また上限値を30μmとすることによりフィルムにより形成した二重袋包装体に適度なスクイズ性を付与できる。
【0035】
本発明において、外層は、所定の凝集力および層厚を備えたイージーピール性を有する層である。
【0036】
外層のイージーピール強度(凝集力)は、5.88〜11.8N/15mm幅とする必要がある。凝集力が5.88N/15mm未満では、内容物を充填時に破袋してしまい、輸送中などの衝撃によりシール抜けを起こしてしまう。また、11.8N/15mmを超えると、実際に手の開封性が悪くなり、フィルムの延伸や剥離面の毛羽立ちや膜残りが発生する。
【0037】
凝集力の測定方法は、上記複合フィルムの最外層同士をヒートシール(シール温度:130℃、140℃、150℃の3種類)し、ヒートシールした部分を引張速度200mm/分で、180゜剥離したときの剥離強度を測定することにより行った。
【0038】
イ−ジーピール層を構成する樹脂は、外層全体の質量を100質量%として、50〜90質量%の樹脂組成物Aと10〜50質量%の樹脂組成物Bを備えて構成されることが好ましく、樹脂組成物Aのメルトフローレートは6g/10分以上で、樹脂組成物Bのメルトフローレートは2g/10分以下が好ましい。例えば、以下に説明する樹脂組成物Aと樹脂組成物Bとを所定割合で混合して構成することができる。
【0039】
上記樹脂組成物Aとしては、主成分が、メルトフローレート6g/10分以上の、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、融点エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、融点100℃以下のエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)およびこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂組成物を用いることができる。中でも、ホットタック性の点から直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、好適に用いることができる。
【0040】
また、上記樹脂組成物Bとしては、主成分がメルトフローレート2g/10分以下のポリプロピレンポリブチレン(PB)または(PP)である樹脂組成物を用いることができる。樹脂組成物Bの主成分を構成するPPは、ランダムコポリマー、ホモポリマー、ブロックコポリマー等のいずれも使用でき、中でもランダムコポリマーを好適に用いることができる。コポリマーの共重合成分としては、エチレン等のプロピレン以外のαオレフィンが挙げられる。
【0041】
外層の厚みは、下限が3μmであり、好ましくは5μm以上であり、上限が15μmであり、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下である。外層の厚みが薄すぎると、イージーピールの安定性が劣り、また製膜しづらいという問題がある。また、外層の厚みが厚すぎると、開封時に毛羽立ちが発生したり、膜残りが発生したりして開封しづらいという問題がある。
【0042】
本発明のインフレーションフィルムを用いて形成した包装体は、縦シール部および横シール部共に、シール部はすべてイージーピール性を備えている。よって、シール部のみを開封して内容物を取り出してもよいし、シール部と共に、縦シール部も開封して、開口部を拡大させてもよい。さらには、すべてのシール部分を開封してもよい。
【0043】
本発明の二重袋包装体は、主に内容物を大量に含む業務用の包装体として使用されることが多い。例えば、業務用のチョコレートクリームを含む包装体の場合、まず、上部シール部開封して、ここから大部分のチョコレートクリームをトレイに取り出す。その後、包装体を絞って、残った内容物をできるだけ取り出すが、包装体が大きい分、依然としてある程度の量の内容物が包装体中に残ってしまう。残ったチョコレートクリームは、使用せずに廃棄されてしまった場合、チョコレートクリームが無駄になるだけなく、生ゴミと資源ごみとの分別の問題、分別しなかった場合は、チョコレートクリームが腐敗して臭いが生じる、細菌が生じる等の衛生上の問題が生じる。
【0044】
本発明の二重袋包装体においては、上記したように、包装体を全面開封して、元のシート状に戻すことができる。よって、残存したチョコクリームをヘラ等により綺麗にふき取って利用することができる。このように、本発明の二重袋包装体においては、内容物を最大限に有効利用することができるだけでなく、ゴミ分別および衛生上の問題をも解決することができる。
【0045】
また、本発明の凝集破壊性のイージーピール層は、開封した際に、シール部分にシールマークが残るようになっている。シールマークは、製品が確実に密封されていたことを示す証となり、内容物の使用者に安心感を与えることができるという効果がある。
【0046】
内層または/および外層には、滑り性を付与する目的でスリップ剤を添加することができる。スリップ剤としては、滑り性を付与することができれば特に限定されないが、炭化水素系滑剤、脂肪酸系高級アルコール系滑剤、アミド系滑剤、エステル系滑材、金属せっけん系滑剤等が挙げられる。
【0047】
ポリエチレンのスリップ剤として代表的なアミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドがある。アミド系滑剤の添加量は各層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1〜0.5質量部の範囲が一般的であり、この添加量で内層同士のブロッキングを改良、防止することができる。金属せっけん系滑剤としては、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。金属せっけん系滑剤の添加量は、各層を構成する樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、かつ10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0048】
内層および/または外層には、アンチブロッキング性を付与する目的でアンチブロッキング剤を添加することができる。アンチブロッキング剤としては、アンチブロッキング性を付与することができれば特に限定されないが、無機系のものでは、タルク、ゼオライト等が挙げられる。タルクは潤滑性に富み油脂感のある白色粉末でその表面は親油性・疎水性である。ゼオライトは、アルカリおよびアルカリ土類金属の含水アルミノ珪酸塩であり、粘着性を防止することができる。アンチブロッキング剤は、樹脂層表面に微細な凹凸を形成して、隣接する二層が密着するのを抑制することによりブロッキングを防止する機能を発揮するものと思われる。アンチブロッキング剤の添加量は各層を構成する樹脂100質量部に対して0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、かつ10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0049】
上記のスリップ剤、アンチブロッキング剤の添加により、インフレーションフィルムにおいて内層同士がブロッキングするのを防ぎ、また、二重袋包装体の作成工程において、外層と包装機との滑りを良くすることができる。
【0050】
また、中間層と外層および/または内層との間には、少なくとも1層の接着樹脂層を設けることができる。接着樹脂層で使用される接着樹脂は、外層、中間層、および内層を必要な強度に接着することができれば特に限定されないが、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂を好適に用いることができる。不飽和カルボン酸およびその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸およびその誘導体等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸のエステルや無水物を挙げることができ、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、酢酸ビニル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0051】
市販の接着樹脂としては、例えば、三井化学社製、商品名アドマーが挙げられ、本発明において好適に使用することができる。
【0052】
接着樹脂層の厚みは、下限が通常5μmであり、好ましくは10μm以上であり、上限が通常20μmであり、好ましくは15μm以下である。接着樹脂層の厚みが薄すぎると、十分な層間接着力を得ることができない。一方、接着樹脂層の厚みが厚すぎると、原料コストがかかり、透明性が悪くなる。
【0053】
中間層と外層および/または内層との間には、酸素バリア性を付与する目的で、少なくとも1層のEVOH層を設けることができる。EVOH層で用いられるEVOHのエチレン含有率は特に限定されるものではないが、製膜安定性の観点から、下限が好ましくは32モル%であり、より好ましくは38モル%以上であり、上限が好ましくは47モル%であり、より好ましくは44モル%以下である。また、EVOHのケン化度は好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。EVOHのエチレン含有量およびケン化度を上記範囲に保つことにより、本発明のフィルムの共押出性、フィルムの強度を良好なものとすることができる。
【0054】
EVOH層を設ける場合、EVOH層の厚みは、下限は好ましくは5μmであり、より好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、上限は好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。EVOH層の厚みの下限値を5μmとすることにより十分な酸素バリア性が得られる。また上限値を30μmとすることによりフィルムの共押出性を悪化することもなく、かつ良好なフィルム強度を保持できる。
【0055】
本発明のインフレーションフィルムの層構成は、最外層としてイージーピール性を有する外層、最内層として低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を備え、これらの間にポリアミド樹脂からなる中間層を備えていれば、その他の層の層構成は特に制限されない。
【0056】
例えば、イージーピール性を有する外層(A)、中間層(B)、EVOH層(C)、内層(D)、および接着樹脂層(E)で表した場合、例えば、以下の層構成を形成することができる。
(1)A/E/B/E/D
(2)A/E/C/B/E/D
(3)A/E/B/C/E/D
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、最外層、中間層および最内層のいずれか、またはすべての層に添加剤を含有させることができる。例えば、顔料を添加した場合、遮光効果による被収容物の鮮度保持やフィルム切り片が被収容物に混入したとしても発見しやすいというメリットがある。また、色の異なる顔料を使用することで被充填物の種類を包装体の色で判別できる効果もある。なお、顔料は内容物と接触しない外層側もしくは中間層に添加することが好ましい。
【実施例】
【0057】
<評価用試料フィルムの作製>
実施例1〜5および比較例1〜9として、5層からなる共押出しインフレーションフィルムを製造した。フィルムの総厚みは60μmである。
【0058】
実施例1:
インフレーションフィルムの層構成を以下に示す。なお、内層とは円筒形フィルムの軸芯側の層であり、外層とはその反対側の層である。
第1層(外層(イージーピール層)):直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)+ポリブチレン−1樹脂(PB−1)(6μm)
第2層(接着樹脂層):カルボン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(7.5μm)
第3層(中間層):6ナイロン(11μm)
第4層(接着樹脂層):カルボン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(7.5μm)
第5層(内層):直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(28μm)
総厚み60μm
外層には、メルトフローレート8g/10分のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)80質量%と、メルトフローレート1.8g/10分のポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)20質量%のブレンド樹脂に、ブレンド樹脂全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を0.3質量部添加した組成物を用いた。
【0059】
接着性樹脂層を構成する接着性樹脂としては、カルボン酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井化学社製、アドマー)を用いた。
【0060】
中間層を構成するポリアミド樹脂としては、6ナイロン(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ノバミッド6Ny)を用いた。
【0061】
内層には、密度0.935g/cm、ビカット軟化点120℃のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)に対して、該LLDPE全体を100質量部として、スリップ剤としてアミド系滑剤を1.8質量部、アンチブロッキング剤として無機系アンチブロッキング剤を1.8質量部添加した組成物を用いた。
【0062】
実施例2:
外層として、メルトフローレート6g/10分のLLDPE(プライムポリマー社製、ウルトゼックス)80質量%と、メルトフローレート1.8g/10分のポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)20質量%のブレンド樹脂に、実施例1と同様のスリップ剤を添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0063】
実施例3:
外層として、メルトフローレート8g/10分のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)80質量%と、メルトフローレート1.3g/10分のポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製、ノバテックPP)20質量%のブレンド樹脂に、実施例1と同様のスリップ剤およびアンチブロッキング剤を添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0064】
比較例1:
外層として、メルトフローレート2.5g/10分のLLDPE(日本ポリエチレン製、ノバテックPE)80質量%と、メルトフローレート1.8g/10分のポリブチレン−1樹脂(三井化学社製、タフマー)20質量%のブレンド樹脂に、ブレンド樹脂全体を100質量部として、実施例1と同様のスリップ剤およびアンチブロッキング剤を添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0065】
比較例2:
外層として、メルトフローレート8g/10分のLLDPE(プライムポリマー社製、モアテック)80質量%と、メルトフローレート7g/10分のポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ)20質量%のブレンド樹脂に、ブレンド樹脂全体を100質量部として、実施例1と同様のスリップ剤およびアンチブロッキング剤を添加した組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを作製した。
【0066】
<評価方法>
上記実施例および比較例において作製した各評価用試料フィルムに関し、下記試験による評価を実施した。
【0067】
(1)剥離強度(凝集力)
各インフレーションフィルムを用いて、縦ピロー包装機ONP−5750(オリヒロ社製)にかけ、二重袋包装体を作製した。シール温度は、130℃、140℃、150℃の3種類とした。上記縦シール部分を15mm幅の短冊状に切り取り、引張試験機にて200mm/分の引張速度で引っ張った時の応力を測定した。測定されたイージーピール強度から、600〜1200gf/15mm幅:「○」600gf/15mm幅以下または1200gf/15mm幅以上「×」とした。
【0068】
(2)開封性
シール温度140℃で二重袋包装体の複数回シールされる縦・横シール部分を手で開封し、開封し易さを評価した。容易に開封するものを「○」とし、開封しにくいものを「×」、容易に開封する箇所と開封しにくい箇所が混在するものを「△」とした。
【0069】
(3)耐落袋性
シール温度140℃で水を充填した2重袋包装体を高さ80cmから水平に10回、落下させた。破袋やシール漏れが発生したものを「×」、破袋やシール漏れが起きなかったものを「○」とした。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜3は、シール温度を変更しても、2回プレスシールした場合でもイージーピール強度が8.04N/15mm幅〜10.59N/15mm幅と安定しており、開封性良好だった。一方、比較例1は、主剤がメルトフローレート2.5g/10分のLLDPEであるため、シール温度やシール回数によって、イージーピール強度が1.27N/15mm幅〜10.59N/15mm幅と振れ安定せず、弱いイージーピール強度の箇所でシール抜けを発生し、耐落袋性に劣っていた。また、剥離面の毛羽立ちが発生しており、開封性の点において劣っていた。また、比較例2についても、副剤がメルトフローレート7g/10分のPPであるため、比較例1と同様にシール温度やシール回数によりイージーピール強度のばらつきが目立ち、開封性および耐落袋性の点で劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のフィルムは、例えば、二重袋包装体用のフィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イージーピール性を有する外層、ポリアミド樹脂からなる中間層、および、低密度ポリエチレン樹脂からなる内層を含む構成の二重袋包装体用インフレーションフィルムであり、前記イージーピール性を有する外層が、シール温度130℃、140℃、および150℃のいずれにおいても0.98〜19.6N/15mm幅のイージーピール強度を有し、当該外層の厚みが3〜15μmであることを特徴とする二重袋包装体用インフレーションフィルム。
【請求項2】
イージーピール性を有する外層が、下記樹脂組成物Aを50〜90質量%、下記樹脂組成物Bを10〜50質量%含有する請求項1に記載の二重袋包装体用インフレーションフィルム。
樹脂組成物A:メルトフローレートが6g/10分以上である、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、およびこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とする樹脂組成物
樹脂組成物B:メルトフローレートが2g/10分以下である、ポリブチレンまたはポリプロピレンを主成分とする樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインフレーションフィルムから製袋されてなることを特徴とするイージーピール性を有する二重袋包装体。

【公開番号】特開2013−18546(P2013−18546A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229310(P2011−229310)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】