説明

二重被覆錠剤

【課題】錠剤をその包装より取り出し、無包装の状態にした場合であっても、湿度、光等の外的環境より、当該錠剤に含有されている医薬の安定性を確保することができる二重被覆錠剤を提供する。
【解決手段】医薬(好ましくは、潮解性医薬、吸湿性医薬又は光不安定医薬)を含有する内核錠に、デンプン及び糖から主としてなる被覆剤で第一被覆層を形成し、更にその上に高分子から主としてなる被覆剤で第二被覆層を形成したことを特徴とする二重被覆錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重被覆錠剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬の中には、外的環境(例えば、湿度や光)により、その安定性が大きく変動するものがある。例えば、潮解性医薬であれば、大気中の水分を容易に吸収し、その一部又は全部が液状化し、また光不安定医薬であれば、光照射により、色変又は含量の低下が生じる。
【0003】
従来、これらの問題に対し、潮解性医薬であれば錠剤の包装技術により、また光不安定医薬であれば錠剤の包装技術及びコーティング技術等の製剤的工夫により対処されていた。例えば、包装技術であれば、PTP包装や遮光包装を挙げることができ、コーティング技術であれば、遮光フィルムコーティングを挙げることができる(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
最近、医療現場では、患者のコンプライアンス向上を目的として、一回に服用する数種類の製剤を各包装より取り出し、一つの包装とする「一包化調剤」が行われている。しかし、何ら製剤的な工夫のなされていない潮解性医薬や光不安定医薬を含有する錠剤を包装より取り出し、一包化調剤を行った場合、錠剤に含有される医薬の安定性を確保することができないため、当該医薬を含有する錠剤は、包装された状態で提供しなければならなかった(例えば、非特許文献1を参照)。
【0005】
更に、遮光フィルムコーティングを施した光不安定医薬を含有する錠剤でも、当該錠剤を長期保存した場合には、含有されている医薬の安定性を確保することはできず、やはり包装形態を工夫する必要がある。そのため、当該錠剤をその包装より取り出し、一包化調剤を行うことは困難であった(例えば、非特許文献1を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平4−346929
【非特許文献1】西岡 豊ら、「病院薬学」、1999年、25巻、4号、p.385−392
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、錠剤をその包装より取り出した場合であっても、当該錠剤に含有されている医薬の安定性を確保することができる二重被覆錠剤を提供することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、デンプン及び糖から主としてなる被覆剤で、医薬を含有する内核錠に第一被覆層を形成し、更にその上に高分子から主としてなる被覆剤で第二被覆層を形成することにより上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明としては、例えば、下記(1)〜(3)を挙げることができる。
(1)医薬を含有する内核錠に、デンプン及び糖から主としてなる被覆剤で第一被覆層が形成され、更にその上に高分子から主としてなる被覆剤で第二被覆層が形成されていることを特徴とする二重被覆錠剤。
(2)第二被覆層を形成する被覆剤に、更に防湿剤を含む上記(1)記載の二重被覆錠剤。
(3)医薬が、潮解性医薬、吸湿性医薬又は光不安定医薬である上記(1)又は(2)のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外的環境(例えば、湿度、光)を遮断することにより、内核錠に含有される医薬の安定性を向上させることができる。特に、内核錠に含有される医薬が潮解性医薬、吸湿性医薬又は光不安定医薬の場合には、最近の医療現場で行われている「一包化調剤」に対応した、錠剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る第一被覆層を形成する被覆剤において用い得る「デンプン」としては、医薬上許容されるデンプンであれば特に制限されないが、例えば、天然デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、カンショデンプン、タピオカデンプン、キャッサバデンプン)、化工デンプン(例えば、白色デンプン、黄色デンプン、アルファ化デンプン)を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。それらの中で、特にトウモロコシデンプンが好ましい。当該デンプンの第一被覆層中における含有量は、内核錠に含まれる医薬の性質、他の添加剤の有無等により異なるが、5〜80重量%の範囲内が適当であり、30〜70重量%の範囲内が好ましい。
【0012】
本発明に係る第一被覆層を形成する被覆剤において用い得る「糖」としては、医薬上許容される糖類であれば特に制限されないが、例えば、単糖類(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース)、二糖類(例えば、トレハロース、ラクトース、マルトース、スクロース)、糖アルコール(例えば、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール)、オリゴ糖(例えば、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖)を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。それらの中で、特にスクロースが好ましい。当該糖の第一被覆層中における含有量は、内核錠に含まれる医薬の性質、他の添加剤の有無等により異なるが、5〜80重量%の範囲内が適当であり、10〜60重量%の範囲内が好ましく、20〜40重量%の範囲内がより好ましい。
【0013】
第一被覆層中に含まれるデンプンと糖の重量比率(糖/デンプン)は、内核錠に含まれる医薬の性質、他の添加剤の有無等により異なるが、0.3〜0.8の範囲内が適当であり、0.4〜0.6の範囲内が好ましい。
【0014】
本発明に係る第一被覆層を形成する被覆剤には、上述したデンプン及び糖以外に、任意に医薬上許容される添加剤を配合することができる。かかる添加剤として、例えば、賦形剤(例えば、タルク、酸化チタン、沈降炭酸カルシウム)、吸着剤(例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸マグネシウム)、コーティング剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、プルラン)、可塑剤(例えば、マクロゴール、プロピレングリコール、ソルビトール)、甘味剤(例えば、グリセリン、サッカリン、アスパルテーム)、粘稠化剤(例えば、軽質無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、糖衣剤(例えば、タルク、アラビアゴム、ゼラチン)を挙げることができる。当該添加剤の含有量は、第一被覆層中に40重量%以下が適当である。
【0015】
本発明に係る第一被覆層の被覆量は、内核錠に含まれる医薬の性質、他の添加剤の有無等により異なるが、内核錠の重量に対して、10〜70重量%の範囲内が適当であり、20〜60重量%の範囲内が好ましく、30〜50重量%の範囲内がより好ましい。
【0016】
本発明に係る第二被覆層を形成する被覆剤において用い得る「高分子」としては、医薬上許容される高分子であれば特に制限されないが、例えば、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース)、合成高分子(例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、ポリビニルアルコール)を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。それらの中で、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。当該高分子の第二被覆層中における含有量は、内核錠に含まれる医薬の性質、他の添加剤の有無等により異なるが、30〜90重量%の範囲内が適当であり、40〜80重量%の範囲内が好ましく、50〜70重量%の範囲内がより好ましい。
【0017】
本発明に係る第二被覆層を形成する被覆剤において用い得る「防湿剤」としては、医薬上許容されるものであれば特に制限されないが、例えば、ステアリン酸、硬化油、オレイン酸、ミリスチン酸を挙げることができる。これらを一種又は二種以上使用することができる。それらの中で、特にステアリン酸が好ましい。当該防湿剤の第二被覆層中における含有量は、内核錠に含まれる医薬の性質、他の添加剤の有無等により異なるが、5〜40重量%の範囲内が適当であり、10〜30重量%の範囲内が好ましい。
【0018】
本発明に係る第二被覆層を形成する被覆剤には、上述した高分子及び防湿剤以外に、任意に医薬上許容される添加剤を配合することができる。かかる添加剤として、例えば、コーティング剤(例えば、アラビアゴム、エチルセルロース、グリセリン)、可塑剤(例えば、マクロゴール、プロピレングリコール、ソルビトール)、甘味剤(例えば、グリセリン、サッカリン、アスパルテーム)、粘稠化剤(例えば、ポリビニルアルコール、ポピドン、ヒドロキシエチルセルロース)、着色剤(例えば、タール色素、酸化チタン、三二酸化鉄)、光沢化剤(例えば、カルナウバロウ、薬用炭、サラシミツロウ)を挙げることができる。当該添加剤の第二被覆層中における含有量は、40重量%以下が適当である。
【0019】
本発明に係る第二被覆層の被覆量は、内核錠に含まれる医薬の性質、他の添加剤の有無等により異なるが、内核錠の重量に対して、1〜20重量%の範囲内が適当であり、3〜15重量%の範囲内が好ましい。
【0020】
本発明に係る内核錠に含有される医薬としては、特に制限されないが、その中で、特に潮解性医薬、吸湿性医薬又は光不安定医薬が好ましい。
【0021】
「潮解性医薬」とは、当業者にとって自明であるが、医薬が空気中にさらされている場合に、大気中の水蒸気を捕らえて、その水に溶解する性質を有する医薬をいう。本発明に用いうる潮解性医薬としては、一般に潮解性を示す医薬であれば特に制限されないが、例えば、温度40℃、相対湿度75%の条件下で48時間以内に潮解性を示す医薬が好ましく、温度25℃、相対湿度60%の条件下で48時間以内に潮解性を示す医薬がより好ましい。
【0022】
具体的な潮解性医薬としては、例えば、バルプロ酸ナトリウム、トシル酸スプラタクト、臭化ピリドスチグミン、生薬エキスを挙げることができる。更に、生薬エキスとしては、例えば、ウラジロガシエキス、アカメガシワエキスを挙げることができる。
【0023】
「吸湿性医薬」とは、当業者にとって自明であるが、医薬が空気中にさらされている場合に、大気中の水蒸気を吸収して、物性が変化する性質を有する医薬をいう。本発明に用いうる吸湿性医薬としては、一般に吸湿性を示す医薬であれば特に制限されない。
【0024】
具体的な吸湿性医薬としては、例えば、パンクレアチン、デキストラン硫酸ナトリウム、ショウサイコトウ、クエン酸、アスコルビン酸、重酒石酸カリウム、生薬エキスを挙げることができる。更に、生薬エキスとしては、例えば、酵母エキス、漢方薬エキスを挙げることができる。
【0025】
「光不安定医薬」とは、当業者にとって自明であるが、医薬が一定時間の光照射条件下において色変または含量の低下を起こす性質を有する医薬をいう。本発明に用いうる光不安定医薬としては、一般に光不安定な性質を有する医薬であれば特に制限されない。
【0026】
具体的な光不安定医薬としては、例えば、ソファルコン、ユビデカレノン、ビタミンD類、ビタミンK類、ビタミンE類、メシル酸ブロモクリプチン、ニフェジピン、塩酸インデノロール、塩酸オクスブレノール、塩酸ブフェトロール、リボフラビン、酪酸エステル、塩酸アンブロキソール、ぺミロラストカリウム、アテノロール、ワルファリンカリウム、アルファカルシドール、塩酸クレンブテロール、フロセミド、クラリスロマイシン、マニジピン、塩酸テルビナフィン、ニトレンジピン、フルタミド、ニソルジピン、セフジトレンピボキシル、プルリフロキサシンを挙げることができる。
【0027】
本発明に係る内核錠は、常法に従い製造される。例えば、医薬を適当な添加剤と混合し、造粒後、打錠することにより製造することができる。また、常法に従い、当該内核錠に公知のコーティングを施してもよい。かかる添加剤としては、医薬上許容されるものであれば特に制限されないが、例えば、賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、結合剤、流動化剤、安定化剤、滑沢剤、吸着剤を挙げることができる。
【0028】
第一被覆層及び第二被覆層の形成は、第一被覆層又は第二被覆層を形成する被覆剤を適当量の溶媒に分散させたコーティング液を用い、常法に従い、行うことができる。かかる溶媒としては、例えば、水、エタノール、塩化メチレンを挙げることができる。第二被覆層の形成は、第一被覆層の形成が完了した後に行うが、その際、時間をおいて第二被覆層の形成を行ってもよく、また連続的に第二被覆層の形成を行ってもよい。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例、比較例、試験例を掲げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に示される範囲に限定されるものではない。
【0030】
実施例1
1)内核錠の製造
ウラジロガシエキス(タジマ食品社製。)450g、乳糖(ダイラクトーズS、フロイント産業社製。)134g、トウモロコシデンプン(コーンスターチ(W)、日本食品加工社製。以下同じ。)80g、含水二酸化ケイ素(カープレックス、DSLジャパン社製。以下同じ。)26g、クロスカルメロースナトリウム(AcDiSol、旭化成工業社製。)40g、結晶セルロース(アビセルPH301、旭化成工業社製。)40g、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製。以下同じ。)10gをボーレコンテナミキサー(MC−20型、コトブキ技研工業社製。以下同じ。)で混合し、打錠用顆粒を得た。得られた打錠用顆粒を12×5.5mmの杵を用いて、ロータリー打錠機(Barpress、菊水製作所製。以下同じ。)で1錠あたり225mgとなるよう圧縮成形し、内核錠を得た。
2)二重被覆層の形成
上記1)で得られた内核錠に、スクロース(グラニュウ糖、東洋精糖社製。以下同じ。)180g、トウモロコシデンプン 360g、含水二酸化ケイ素 20g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC−5、信越化学工業社製。以下同じ。)12g、タルク(タルクPKP−81、富士タルク工業社製。以下同じ。)32gを水 900gに分散し、調製した第一層コーティング液を用いて、ドリアコーター(DRC200、パウレック社製。以下同じ。)で1錠あたり85mgのコーティングを施した。
続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 65.2g、プロピレングリコール(ナカライテスク社製。以下同じ。)10g、ステアリン酸(油化産業社製。以下同じ。)28g、黄色三二酸化鉄(癸巳化学社製。以下同じ。)0.4g、酸化チタン(タイペークA−100、石原産業社製。以下同じ。)8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール(シオエ製薬社製。以下同じ。)400gに分散し、調製した第二層コーティング液を用いて、1錠あたり17mgのコーティングを施し、本発明に係る二重被覆錠剤を得た。
【0031】
実施例2
実施例1の1)で得られた内核錠に、スクロース 180g、バレイショデンプン(東海澱粉社製。)360g、含水二酸化ケイ素 20g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12g、タルク 32gを水 900gに分散し、調製した第一層コーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり85mgのコーティングを施した。
続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 65.2g、プロピレングリコール 10g、ステアリン酸 28g、黄色三二酸化鉄 0.4g、酸化チタン 8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製した第二層コーティング液を用いて、1錠あたり17mgのコーティングを施し、本発明に係る二重被覆錠剤を得た。
【0032】
実施例3
実施例1の1)で得られた内核錠に、エリスリトール(日研化学社製。以下同じ。)180g、トウモロコシデンプン 360g、含水二酸化ケイ素 20g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12g、タルク 32gを水 900gに分散し、調製した第一層コーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり85mgのコーティングを施した。
続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 65.2g、プロピレングリコール 10g、ステアリン酸 28g、黄色三二酸化鉄 0.4g、酸化チタン 8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製した第二層コーティング液を用いて、1錠あたり17mgのコーティングを施し、本発明に係る二重被覆錠剤を得た。
【0033】
実施例4
実施例1の1)で得られた内核錠に、スクロース 180g、トウモロコシデンプン 360g、含水二酸化ケイ素 20g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12g、タルク 32gを水 900gに分散し、調製した第一層コーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり85mgのコーティングを施した。
続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 65.2g、プロピレングリコール 10g、硬化油(ラブリーワックス101、川研ファインケミカル社製。)28g、黄色三二酸化鉄 0.4g、酸化チタン 8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製した第二層コーティング液を用いて、1錠あたり17mgのコーティングを施し、本発明に係る二重被覆錠剤を得た。
【0034】
実施例5
実施例1の1)で得られた内核錠に、マンニトール(D-マンニトール、東和化成社製。)180g、トウモロコシデンプン 360g、含水二酸化ケイ素 20g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12g、タルク 32gを水 900gに分散し、調製した第一層コーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり85mgのコーティングを施した。
続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 65.2g、プロピレングリコール 10g、黄色三二酸化鉄 0.4g、酸化チタン 8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製した第二層コーティング液を用いて、1錠あたり13mgのコーティングを施し、本発明に係る二重被覆錠剤を得た。
【0035】
実施例6
1)内核錠の製造
メシル酸ブロモクリプチン(局方品)11.48g、乳糖(HMS、HOLLANDSCHE MELKSUIKER FABRIEK社製。以下同じ。)358.52g、トウモロコシデンプン 148gを流動層造粒乾燥機(MP−01型、パウレック社製。以下同じ。)に仕込み、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL、日本曹達社製。以下同じ。)12gを含む結合剤水溶液 172gを噴霧して造粒した。当該造粒物にカルメロース(NS−300、ニチリン化学工業社製。以下同じ。)28g、ステアリン酸マグネシウム 2gを添加して混合し、打錠用顆粒を得た。得られた打錠用顆粒を7mmφの杵を用いて、ロータリー打錠機で1錠あたり140mgとなるよう圧縮成形し、内核錠を得た。
2)二重被覆層の形成
上記1)で得られた内核錠に、スクロース 180g、トウモロコシデンプン 360g、含水二酸化ケイ素 20g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12g、タルク 32gを水 900gに分散し、調製した第一層コーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり40mgのコーティングを施した。
続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 65.2g、プロピレングリコール 10g、酸化チタン 8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製した第2層コーティング液を用いて、1錠あたり5mgのコーティングを施し、本発明に係る二重被覆錠剤を得た。
【0036】
実施例7
1)内核錠の製造
ワルファリンカリウム(局方品)4g、乳糖 238g、トウモロコシデンプン 100gを流動層造粒乾燥機に仕込み、ポピドン(コリドン、BASFジャパン社製。)20gを含む結合剤水溶液 250gを噴霧して造粒した。当該造粒物にカルメロース 32g、ステアリン酸マグネシウム 6gを添加して混合し、打錠用顆粒を得た。得られた打錠用顆粒を6.5mmφの杵を用いて、ロータリー打錠機で1錠あたり100mgとなるよう圧縮成形し、内核錠を得た。
2)二重被覆層の形成
上記1)で得られた内核錠に、スクロース 180g、トウモロコシデンプン 360g、含水二酸化ケイ素 20g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12g、タルク 32gを水 900gに分散し、調製した第一層コーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり30mgのコーティングを施した。
続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 65.2g、プロピレングリコール 10g、酸化チタン 8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製した第2層コーティング液を用いて、1錠あたり3mgのコーティングを施し、本発明に係る二重被覆錠剤を得た。
【0037】
実施例8
1)内核錠の製造
ニフェジピン(局方品)200g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 1600g、エリスリトール 200gをボーレコンテナミキサーに投入して20分間混合し、かかる混合物をスクリュー回転数50rpm、ダイの口径2mm、全バレル及びダイの温度を170℃に設定した、ひねり角度が60°のニーディングエレメントを含む2軸混練エクストルーダー(KEXN−30型、栗本鉄工所製。)で混練・押し出し処理を行い、固体分散体を得た。得られた固体分散体をミクロパルベライザー(AP−S型、ホソカワミクロン社製。)を用いて粉砕した。なお、パンチスクリーンは口径1mmのものを用いた。当該粉砕顆粒200g、低置換度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(L−HPC、信越化学工業社製。)25g、乳糖 33.5g、ステアリン酸マグネシウム 1.2gをボーレコンテナミキサーで混合し、打錠用顆粒を得た。得られた打錠用顆粒を12×5.5mmの杵を用いて、ロータリー打錠機で1錠あたり260mgとなるよう圧縮成形し、内核錠を得た。
2)二重被覆層の形成
上記1)で得られた内核錠に、スクロース 180g、トウモロコシデンプン 360g、含水二酸化ケイ素 20g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12g、タルク 32gを水 900gに分散し、調製した第一層コーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり135mgのコーティングを施した。
続いてヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 65.2g、プロピレングリコール 10g、酸化チタン 8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製した第2層コーティング液を用いて、1錠あたり9mgのコーティングを施し、本発明に係る二重被覆錠剤を得た。
【0038】
比較例1
実施例1の1)で得られた内核錠に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 70g、プロピレングリコール 14g、黄色三二酸化鉄 0.4g、酸化チタン 8g、タルク 8gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製したコーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり10mgのコーティングを施して、比較用錠剤を得た。
【0039】
比較例2
1)内核錠の製造
実施例1の1)で得られた打錠用顆粒を9mmφの杵を用いて、ロータリー打錠機で1錠あたり225mgとなるよう圧縮成形し、内核錠を得た。
2)糖衣の形成
上記1)で得られた内核錠に、スクロース 76g、沈降炭酸マグネシウム(備北粉化工業社製。)63g、タルク 22g、アラビアゴム末(日本粉末薬品社製。)4.7g、トウモロコシデンプン 7.2g、ポリビニルアルコール 1.1g、黄色三二酸化鉄 0.4gを水117gからなる糖衣液及びスクロースからなる単シロップを用いて、糖衣機(NC16C−100、菊水製作所製。)で、常法により、1錠あたり250mgの糖衣コーティングを施して、比較用錠剤を得た。
【0040】
比較例3
実施例6の1)で得られた内核錠に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 70g、プロピレングリコール 14g、酸化チタン 14g、タルク 3gを水 400g及びエタノール 400gに分散し、調製したコーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり5mgのコーティングを施して、比較用錠剤を得た。
【0041】
比較例4
実施例6の1)で得られた内核錠に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 70g、プロピレングリコール 14g、酸化チタン 14g、三二酸化鉄(癸巳化学社製。)2.5gを水400g及びエタノール400gに分散し、調製したコーティング液を用いて、ドリアコーターで1錠あたり5mgのコーティングを施して、比較用錠剤を得た。
【0042】
試験例1
実施例1〜5で得られた錠剤について、温度40℃、相対湿度75%、無包装の条件下で放置した際の錠剤の経時的外観変化を観察した。なお、比較対照として、比較例1及び2で得られた錠剤を用いた。
その結果を表1に示す。なお、表中の記号は、○:変化なし、×:錠剤の外観に変化又は変色が認められたもの、××:錠剤外部へ潮解した薬物の浸出又は錠剤の亀裂が認められたものを意味する。
【0043】
【表1】

【0044】
試験例2
実施例1、2及び4で得られた錠剤について、温度60℃、無包装の状態で放置した際の錠剤の経時的外観変化を観察した。なお、比較対照として、比較例1及び2で得られた錠剤を用いた。
その結果を表2に示す。なお、表中の記号は、○:変化なし、×:錠剤の外観に変化又は変色が認められたもの、××:被覆層の亀裂又は割れが認められたものを意味する。
【0045】
【表2】

【0046】
試験例3
実施例6及び7で得られた内核錠及び二重被覆錠剤について、D65蛍光ランプ(東芝社製。)で、6500lux/hrで総照射60万lux・hr又は120万lux・hr照射した際の錠剤の外観変化を観察し、また、下記1)に示す方法により色差を測定した。更に、120万lux・hrの条件下については、下記2)に示す方法により含有されている医薬の残存率も合わせて測定した。なお、比較対照として、比較例3及び4で得られた錠剤を用いた。
その結果を表3に示す。なお、外観変化の結果を表す表中の記号は、○:変化なし、×:変色が認められたもの、××:著しい変色が認められたもの、−:測定を行わなかったものを意味する。
1)色差の測定法
各錠剤の色調を色差計(Spectrophotometer SE−Σ80、NIPPON DENKOU社製。)を用いて、3mmφの集光レンズ、反射法の条件でLab法により測定し、初期値に対する色差を算出した。
2)医薬残存率の測定法
メシル酸ブロモクリプチンの残存量は、日本薬局方外医薬品規格の「メシル酸ブロモクリプチン錠」の定量法に従い、測定した。また、ワルファリンカリウムの残存量は、日本薬局方(14局)の「ワルファリンカリウム錠」の定量法に従い、測定した。
【0047】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬を含有する内核錠に、デンプン及び糖から主としてなる被覆剤で第一被覆層が形成され、更にその上に高分子から主としてなる被覆剤で第二被覆層が形成されていることを特徴とする二重被覆錠剤。
【請求項2】
第二被覆層を形成する被覆剤に、更に防湿剤を含む請求項1に記載の二重被覆錠剤。
【請求項3】
第一被覆層中に含まれるデンプンが、天然デンプン又は化工デンプンである請求項1又は2のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【請求項4】
第一被覆層中に含まれるデンプンが、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、カンショデンプン、タピオカデンプン、キャッサバデンプン、白色デキストリン、黄色デキストリン又はアルファ化デンプンである請求項1又は2のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【請求項5】
第一被覆層中に含まれる糖が、単糖類、二糖類、糖アルコール又はオリゴ糖である請求項1〜4のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【請求項6】
第一被覆層中に含まれる糖が、グルコース、フルクトース、ガラクトース、トレハロース、ラクトース、マルトース、スクロース、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖又はキシロオリゴ糖である請求項1〜4のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【請求項7】
第一被覆層中に、デンプンを5〜80重量%の範囲内で含有する請求項1〜6のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【請求項8】
第一被覆層中に、糖を5〜80重量%の範囲内で含有する請求項1〜7のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【請求項9】
第一被覆層中に含まれるデンプンと糖の重量比率(糖/デンプン)が、0.3〜0.8の範囲内である請求項1〜8のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【請求項10】
医薬が、潮解性医薬、吸湿性医薬又は光不安定医薬である請求項1〜9のいずれかに記載の二重被覆錠剤。
【請求項11】
潮解性医薬が、バルプロ酸ナトリウム、トシル酸スプラタクト、臭化ピリドスチグミン、ウラジロガシエキス又はアカメガシワエキスである請求項10に記載の二重被覆錠剤。
【請求項12】
吸湿性医薬が、パンクレアチン、デキストラン硫酸ナトリウム、ショウサイコトウ、クエン酸、アスコルビン酸、重酒石酸カリウム、酵母エキス又は漢方薬エキスである請求項10に記載の二重被覆錠剤。
【請求項13】
光不安定医薬が、ソファルコン、ユビデカレノン、ビタミンD類、ビタミンK類、ビタミンE類、メシル酸ブロモクリプチン、ニフェジピン、塩酸インデノロール、塩酸オクスブレノール、塩酸ブフェトロール、リボフラビン、酪酸エステル、塩酸アンブロキソール、ぺミロラストカリウム、アテノロール、ワルファリンカリウム、アルファカルシドール、塩酸クレンブテロール、フロセミド、クラリスロマイシン、マニジピン、塩酸テルビナフィン、ニトレンジピン、フルタミド、ニソルジピン、セフジトレンピボキシル又はプルリフロキサシンである請求項10に記載の二重被覆錠剤。

【公開番号】特開2006−83162(P2006−83162A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236183(P2005−236183)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000004156)日本新薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】