説明

二重配管の液漏れ検知方法及び装置

【課題】低コストの構成にて送液管の液漏れを確実に検出することができる二重配管の液漏れ検知方法及び装置を提供する。
【解決手段】送液管3とその外周を空間6をあけて覆う保護管5とから成る二重配管7における送液管3の液漏れを検知するため、保護管5の一端から他端にわたって連続する前記空間6が送液管3から漏れて溜まった液で遮断されるトラップ部13を1又は複数形成し、保護管5の一端から前記空間6に排気ブロア11などの送風手段にて気体を送風し、保護管5の他端部で圧力検出手段12にて圧力変化を検出して送液管3からの液漏れを検知するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液管とその外周を空間をあけて覆う保護管とから成る二重配管における液漏れを検知する二重配管の液漏れ検知方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば各種半導体装置等の製造工場において、図3に示すように、製造工程で必要な強酸性や強アルカリ性などの各種の薬液や純水などを、クリーンルーム21などに配設されている各種のマシン(図示せず)に供給室22から供給ポンプ(図示せず)にて送液管23を通して供給する場合、送液管23から薬液が漏れると、周囲の環境を阻害する恐れがあり、復旧に著しい手間と時間がかかるため、送液管23の外周を空間24をあけて保護管25にて覆って二重配管26とし、薬液が外部に漏れ出さないように構成されている。また、保護管25内に液が漏れていることを検知するため、二重配管26の配管経路におけるU字配管部27の下端位置で保護管に下方に突出する液溜部28を設け、この液溜部28に液検知センサ29が設けられている。
【0003】
また、ガソリンスタンドにおける油タンクと計量機の間を結ぶ給油管などの配管において、その配管が破損して周囲に油漏れが生じるのを防止するため、配管の外周を覆う保護管を設け、保護管に集液部を設けるとともにその状態を検知するセンサを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、油やガス等の配管において、スチール配管の周面をFRP材から成る被覆材で被覆するとともに、スチール配管と被覆材の間に線材を配置し、液漏れした場合の漏れ液をこの線材によって配管の下流部に導いて検知センサにて検知するようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−267300号公報
【特許文献2】特開2001−108158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図3に示した構成では、送液管23の分岐部等にはU字配管部27と液溜部28が設けられ、その液溜部28毎に液検知センサ29を設ける必要があるため、多数の液検知センサ29が必要となり、コスト高になるという問題があり、また液検知センサ29に水分が浸入して誤動作する恐れがあるという問題もあった。また、保護管25が破損した場合に、それを検知して予め対策をとっておくことで、万一液漏れがあった場合にもその破損部位から外部に液が漏れるのを防止するということができないという問題もある。
【0006】
また、特許文献1に記載の構成においても、図3の構成と同様の問題があり、また集液部の配置箇所を少なくしようとすると、漏れた液を集液部に集めるために配管に勾配を設ける必要があり、配管長が長いと、供給ポンプに大きな動力が必要になるという問題がある。また、特許文献2に記載の構成においては、線材によって漏れ液を検知センサに導いているので液漏れ箇所の特定ができず、また被覆材が破損した場合、そこから配管からの漏れ液が外部に漏れ出してしまうと、液漏れを検知できず、かつ被覆材の破損自体を検知することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、低コストの構成にて送液管の液漏れを確実に検出することができるとともに、液漏れ箇所を特定することも容易で、また保護管の破損も検知することができる二重配管の液漏れ検知方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の二重配管の液漏れ検知方法は、送液管とその外周を空間をあけて覆う保護管とから成る二重配管における送液管の液漏れ検知方法であって、保護管の一端から他端にわたって連続する前記空間が送液管から漏れて溜まった液で遮断されるトラップ部を1又は複数形成し、保護管の一端から前記空間に気体を送風し、保護管の他端部での前記空間の圧力変化を検出して送液管からの液漏れを検知するものである。なお、前記空間への送風は、保護管の一端から圧送するようにしてもよいが、他端部で吸引する方が、後述のように保護管の破損をより容易かつ的確に検出できるので好適である。
【0009】
この構成によると、送液管と保護管の間の空間の一端から気体を送風し、前記空間の他端部の圧力変化を検知することにより、送液管から液漏れがあってトラップ部で前記空間の連通状態が漏れ液で遮断されると、その部分での圧損が大きくなって検出圧力が大きく低下するため、液漏れを確実に検知することができ、しかもトラップ部が多くても単一の送風手段と圧力検知手段を設けるだけでよいので、低コストにて構成できるとともに、検出手段への水の浸入による誤動作の恐れも容易に無くすことができ、高い信頼性が得られて安全性が向上する。
【0010】
また、保護管の他端部での吸引によって前記空間に送風し、保護管の他端部で前記空間の圧力変化を検出すると、保護管が破損した場合に、破損部位から外気が前記空間内に流入することで空間を通る気体流の圧損が低下して検出圧力が正常時より高くなるため、保護管の他端部での前記空間の圧力変化の検出において、正常時より高い圧力についても検出するようにすることで保護管の破損を検知することができる。なお、保護管の一端から空間内に圧送して送風した場合には、破損部位から気流が漏れ、トラップ部が漏れ液で遮断された場合と同様に他端部での検出圧力が共に低下するため、両者を区別して検知することができない。
【0011】
また、保護管を透明な部材で構成すると、液が溜まったトラップ部を目視検出することで液漏れ箇所を特定することができる。
【0012】
また、保護管の他端部での圧力変化の検出に代えて、トラップ部の両側の差圧を検出するようにしても良く、その場合各トラップ部毎に差圧を検出する必要があるが、直ちに液漏れ箇所を特定することができる。
【0013】
また、本発明の二重配管の液漏れ検知装置は、送液管とその外周を空間をあけて覆う保護管とから成る二重配管における送液管の液漏れ検知装置であって、保護管に下方に突出させて設けた液溜部と前記空間を横断するとともにその下部が液溜部の上部に侵入する仕切板とから成る1又は複数のトラップ部を設け、保護管の一端から前記空間に気体を送風する送風手段と、保護管の他端部で前記空間の圧力を検出する圧力検出手段とを設けたものである。
【0014】
この構成によれば、送液管から液漏れがあるとトラップ部に漏れ液が溜まって前記空間の連通状態が遮断され、その部分での圧損が大きくなるため、圧力検出手段にて液漏れを確実に検知することができ、しかもトラップ部が多くても単一の送風手段と圧力検知手段を設けるだけでよいので、低コストにて構成できるとともに、検出手段への水の浸入による誤動作の恐れも容易に無くすことができ、高い信頼性が得られて安全性が向上する。
【0015】
また、保護管を透明な部材で構成すると、上記のように液が溜まったトラップ部を目視検出することで液漏れ箇所を特定することができる。
【0016】
また、圧力検出手段に代えて、トラップ部の両側部の差圧を検出する差圧検出手段を設けると、上記のように各トラップ部毎に差圧を検出することで直ちに液漏れ箇所を特定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二重配管の液漏れ検知方法及び装置によれば、送液管と保護管の間の空間の一端から気体を送風して他端部の圧力変化を検知することにより、送液管から液漏れがあると、その漏れ液が前記空間の途中に設けられたトラップ部に溜まって前記空間の連通状態が漏れ液で遮断され、その部分で圧損が大きくなって検出圧力が大きく低下するため、液漏れを確実に検知することができ、しかもトラップ部を多く設けていても単一の送風手段と圧力検知手段を設けるだけでよいので、低コストの構成にて高い信頼性をもって液漏れを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の二重配管の液漏れ検知方法及び装置の一実施形態について、図1、図2を参照して説明する。
【0019】
図1において、1は半導体装置の製造工程に使用される各種マシン(図示せず)が配設されたクリーンルーム、2は上記製造工程で使用される各種薬液や純水を収容した収容タンク(図示せず)から薬液等を前記各種マシンに向けて送給する供給ポンプ(図示せず)が配設された供給室であり、供給ポンプ(図示せず)とマシン(図示せず)が送液管3にて接続されている。薬液等は、各マシンでの使用時に適正な特性が安定して得られるように温度コントロールされた状態で送給される。
【0020】
送液管3は、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオルエチレン)などの耐薬品性のある合成樹脂やステンレス鋼などの管材にて構成されている。また、送液管3はクリーンルーム1と供給室2の間で工場建屋の室内や床下に配管され、その配管経路の途中には、一旦下方に立下がった後立上がってコ字状に屈曲する又はU字状に湾曲するU字配管部4が1又は複数(通常は複数)箇所存在している。
【0021】
送液管3は、少なくともクリーンルーム1と供給室2の間では、その外周が空間6をあけて保護管5にて覆われて二重配管7に構成されている。保護管3は、透明塩化ビニールなどの透明合成樹脂にて構成されている。保護管5の一端部5aはクリーンルーム1内に挿入されてその端が閉じられ、かつその周側に開度調整可能な開閉ダンパ9を有する吸入口8が接続されている。保護管5の他端部5bは供給室2内に挿入されてその端が閉じられ、かつその周側に接続された吸引ダクト10の先端に排気ブロア11が配設されるとともに、吸引ダクト10内の圧力を検出する圧力検出手段12が設けられている。なお、排気ブロア11を作動すると、保護管5の一端部5aから他端部5bにわたって連続する空間6内に送風が形成されるので、排気ブロア11は送風手段を構成している。
【0022】
U字配管部4の最も低い位置には、送液管3から漏れた漏れ液が溜まることで二重配管7の全長にわたって連通している空間6の連通状態を漏れ液にて遮断するトラップ部13が設けられている。このトラップ部13は、保護管5に下方に突出させて設けた液溜部14と、液溜部14の管軸方向略中央位置で空間6を横断して遮断するとともにその下部が液溜部14の上部に侵入する仕切板15にて構成されている。
【0023】
以上の構成において、供給室2の供給ポンプ(図示せず)を作動させることで、クリーンルーム1内の各種マシン(図示せず)に送液管3を通して所要の薬液等が送給される。また、その際に供給室2の排気ブロア11を作動させることで、クリーンルーム1内の温度管理された空気が保護管5の一端部5aの吸入口8から吸入され、保護管5の一端部5aから供給室2に配置されている他端部5bに向かって送液管3と保護管5の間の空間6内を送風される。このように空間6内を流れる空気流は温度管理されたものであるので、送液管3を通して供給される薬液等が供給中に温度変化の影響を受けず、そのため薬液等の温度を容易に適正管理することができて、各種マシンにおける処理を効率的に精度良く行うことができる。
【0024】
また、空間6内を送風される空気流は、吸入口8で開度調整された開閉ダンパ9と途中のトラップ部13で所定の圧損を受けて他端部5bの吸引ダクト10に到達し、その圧力が圧力検出手段12にて検出される。ここで、送液管3からの液漏れがなく、図2(a)に示すように、空気流がトラップ部13を正常に通過する場合には、トラップ部13での圧損は比較的小さい所定の正常値となり、圧力検出手段12により検出される圧力は、クリーンルーム1内の圧力から、開閉ダンパ9による圧損と、空間6の通過に伴う圧損と、トラップ部13での圧損を差し引いた値となり、それが正常値として検出される。
【0025】
一方、送液管3の何れかの箇所から液漏れして、図2(b)に示すように、対応するトラップ部13の液溜部15に漏れ液16が溜まり、仕切板15の下部がその漏れ液16中に浸漬すると、空間6の連通状態が漏れ液16で遮断された状態となり、空気流が漏れ液16中を通過するために圧損が増大することになり、圧力検出手段12により検出される圧力は上記正常値から大きく低下する。これによって、送液管3から液漏れがあると、圧力検出手段12による圧力検出によって確実に検知することができる。
【0026】
しかも、多数のトラップ部13が存在していても、単一の排気ブロア11と圧力検知手段12を設けるだけでよいので、低コストにて構成できる。また、圧力検知手段12は、水が浸入する恐れのない場所に配置できるので、従来例の液検知センサ29のように水の浸入によって誤動作する恐れもなく、高い信頼性が得られて安全性が向上する。また、保護管5を透明合成樹脂で構成しているので、上記のように圧力検出手段12にて液漏れを検知すると、二重配管7の配管経路に沿って漏れ液16が溜まったトラップ部13を目視検出することで、液漏れ箇所を特定することができる。
【0027】
また、図2(c)に示すように、保護管5に破損が発生した場合には、その破損部位17から外気が空間6内に流入するため、空間6を通る気体流の圧損が低下し、圧力検出手段12による検出圧力が上記正常値より高くなる。そのため、圧力検出手段12にて正常値より高くなる圧力変化についても検出するように構成することで、保護管5の破損も検知することができる。従って、保護管5が破損した場合にそれを検知して予め対策をとっておくことで、万一液漏れがあった場合にもその破損部位17から外部に液が漏れるのを完全に防止することができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、保護管5の一端部5aから他端部5bに向けて送風するのに、他端部5bで排気ブロア11にて吸引するようにしたが、場合によっては一端側から送風ファンにて気体を圧送して空間6に送風するようにしても良い。しかし、その場合には図2(b)のトラップ部13での遮断状態と図2(c)の保護管5の破損部位から気流漏れした状態とで、ともに圧力検出手段12の検出圧力が低下するので、両者を区別して検知するのが困難である。
【0029】
また、上記実施形態では、保護管5の他端部5bの一箇所で圧力検出手段12にて圧力変化を検出するようにしたが、各トラップ部13部にその両側の差圧を検出する差圧検出手段(図示せず)を配置した構成とすることもできる。その場合には、各トラップ部13毎に差圧検出手段(図示せず)を配設する必要があってコスト高になる恐れがあるが、直ちに液漏れ箇所を特定することができるという利点があり、またトラップ部13の数が少ない配管系の場合にはあまりコスト上昇要因にならない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の二重配管の液漏れ検知方法及び装置は、送液管から液漏れがあると、その漏れ液が送液管と保護管の間の空間の途中に設けたトラップ部に溜まるようにし、前記空間の一端から気体を送風して他端部の圧力変化を検知することにより送液管の液漏れを確実に検知できるようにしたものであり、外部に漏れてはいけない各種液体を送給するようにした二重配管における液漏れ検知に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態における二重配管の液漏れ検知装置の概略構成図。
【図2】(a)〜(c)は同実施形態における各種状態における作用説明図。
【図3】従来例の二重配管の液漏れ検知装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0032】
3 送液管
5 保護管
6 空間
7 二重配管
11 排気ブロア(送風手段)
12 圧力検出手段
13 トラップ部
14 液溜部
15 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液管とその外周を空間をあけて覆う保護管とから成る二重配管における送液管の液漏れ検知方法であって、保護管の一端から他端にわたって連続する前記空間が送液管から漏れて溜まった液で遮断されるトラップ部を1又は複数形成し、保護管の一端から前記空間に気体を送風し、保護管の他端部での前記空間の圧力変化を検出して送液管からの液漏れを検知することを特徴とする二重配管の液漏れ検知方法。
【請求項2】
保護管の他端部での吸引によって前記空間に送風し、保護管の他端部で前記空間の圧力変化を検出して保護管の破損を検知することを特徴とする請求項1記載の二重配管の液漏れ検知方法。
【請求項3】
保護管を透明な部材で構成し、液が溜まったトラップ部を目視検出して液漏れ箇所を特定することを特徴とする請求項1記載の二重配管の液漏れ検知方法。
【請求項4】
保護管の他端部での圧力変化の検出に代えて、トラップ部の両側の差圧を検出することを特徴とする請求項1記載の二重配管の液漏れ検知方法。
【請求項5】
送液管とその外周を空間をあけて覆う保護管とから成る二重配管における送液管の液漏れ検知装置であって、保護管に下方に突出させて設けた液溜部と前記空間を横断するとともにその下部が液溜部の上部に侵入する仕切板とから成る1又は複数のトラップ部を設け、保護管の一端から前記空間に気体を送風する送風手段と、保護管の他端部で前記空間の圧力を検出する圧力検出手段とを設けたことを特徴とする二重配管の液漏れ検知装置。
【請求項6】
保護管を透明な部材で構成したことを特徴とする請求項5記載の二重配管の液漏れ検知装置。
【請求項7】
圧力検出手段に代えて、トラップ部の両側部の差圧を検出する差圧検出手段を設けたことを特徴とする請求項5又は6記載の二重配管の液漏れ検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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