説明

二重JAK2/STAT3阻害剤としてのクルクミン類似体ならびにその同じ物を作る、および用いる方法

クルクミン類似体およびその同じものを作る、および用いる方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者: Pui-Kai Li, Chenglong Li, Jiayuh Lin, James R. Fuchs
関連出願への相互参照
[0001] この出願は2009年4月15日に出願された米国仮出願一連番号61/169,440の利益を主張し、その開示全体を特別に本明細書に援用する。
【0002】
連邦政府により資金提供を受けた研究に関する記載
[0002] この発明は国立衛生研究所により与えられた政府援助助成金番号R21CA133652−01を用いてなされなかった。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
配列リスト
[0003] 本出願はEFS−webを介して提出された配列リストを含み、それをそのまま本明細書に援用する。2010年4月12日に作成されたASCIIコピーは604_50803_SEQ_LIST_09002.txtと名付けられており、大きさは777バイトである。
【0004】
技術分野及び発明の産業上利用可能性
[0004] 本発明は、癌に関連する疾患を検出、処置、特性付け、および診断するための組成物および方法に関する。より詳細には、本発明はクルクミン(curcumin)類似体およびその同じ物を作る、および用いる方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
[0005] クルクミン、l,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−l,6−ヘプタジエン−3,5−ジオンは、ウコン(Curcuma longa)の根茎から作られる食事用香辛料であるターメリック(turmeric)から単離された主要な生理活性化合物である。ターメリックは伝統的なインドの民間薬の主軸であり、それは多くの疾患、例えば糖尿病、肝臓疾患、リウマチ性関節炎、アテローム性動脈硬化症、感染症および癌の処置のために用いられてきた。クルクミンの療法的作用は、広い範囲の分子標的に対するそれの活性の結果であると考えられている。クルクミンの最も重要な観点の1つは、化学予防的および化学療法的特性の両方を有する、様々なタイプの癌に対するそれの有効性である。クルクミンはほとんど〜全く毒性を示さないことが報告されているが(ヒトにおいて約10g/日までの用量において用量制限毒性が無い)、クルクミンの有用性は乏しい生物学的利用能および乏しい選択性により制限されている。選択性の欠如は、クルクミンが相互作用することが知られている非常に多くの分子標的によるものである。これらには癌細胞の増殖と密接に関係するいくつかの標的、例えばSTAT転写因子が含まれる。
【0006】
[0006] 従って、JAK/STAT経路の阻害においてクルクミンよりも有効である有効組成物を有することは有用であろう。
【0007】
[0007] そのような組成物を用いて異なるタイプの癌に関連する疾患、例えば固形腫瘍および造血性の癌を処置する方法を有することも有用であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 第1観点において、本明細書の図において図式的に説明されているようなクルクミン類似体を本明細書において提供する。限定的では無い例には、ジアルキル化ジメトキシクルクミン類似体、芳香族置換基を有するクルクミン類似体;ベンズアルデヒド芳香族置換基を有するクルクミン類似体;メトキシ(およびヒドロキシ)基を含む、モノ−、ジ−、およびトリ−置換ベンズアルデヒド置換基を有するクルクミン類似体。
【0009】
[0009] 別の観点において、本明細書の図において図式的に説明されているようなクルクミン類似体を合成するための方法を本明細書において提供する。
【0010】
[0010] 別の観点において、医薬組成物、少なくとも1種類の本明細書で記述されるようなクルクミン類似体を本明細書において提供する。
【0011】
[0011] 別の観点において、癌に関連する疾患を処置する方法であって、少なくとも1種類の本明細書で記述されるクルクミン類似体を投与することにより、それを必要とする対象においてJAKおよびSTATの1種類以上の活性を調節することを含む方法を本明細書において提供する。
【0012】
[0012] 別の観点において、それを必要とする対象においてJAK/STATシグナル伝達を阻害するための方法であって、1種類以上の本明細書で記述されるクルクミン類似体を投与することを含む方法を本明細書において記述する。
【0013】
[0013] 別の観点において、以下のことを含む、中間的全身性(intermediate systemic)インビボ異種移植系を本明細書において提供する:ニワトリ胚の漿尿膜(CAM)の直下に、主要な脈管から離れた位置に癌細胞を移植し;そのCAMを、許容される用量の試験している組成物で、その移植位置から遠位の領域において投与することにより処置し;ある期間の後、移植の領域を取り囲むように切り取り、その切り取ったCAMを画像化する。
【0014】
[0014] 本発明の他の系、方法、特徴、および利点は下記の図面および詳細な記述を吟味すれば当業者に明らかになるであろう。全てのそのような追加の系、方法、特徴、および利点はこの記述内に含まれ、本発明の範囲内であり、付随する特許請求の範囲により保護されることを意図する。
【0015】
[0015] 本特許または出願書類はカラーで制作された1個以上の図面および/または1枚以上の写真を含んでいてよい。カラーの図面(単数または複数)および/または写真(単数または複数)を有するこの特許または特許出願刊行物のコピーは、要求および必要な料金の支払いに応じて特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】[0016] 図1−先行技術:JAK/STAT経路の阻害剤。1−ペプチドおよびペプチド模倣性STAT2 SH2二量体化阻害剤。2−小分子STAT3 SH2二量体化阻害剤。3−JAK2阻害剤。4−天然生成物由来の阻害剤。
【図2−1】[0017] 図2a:“FLLL31”および“FLLL32”と名付けられたクルクミン類似体の構造。
【図2−2】[0018] 図2:追加のクルクミン類似体の構造。
【図3】[0019] 図3:FLLL31およびFLLL32はMDA−MB−231乳癌細胞においてSTAT3のリン酸化を阻害し、アポトーシスを誘導する。細胞を2.5および5μMのFLLL31およびFLLL32で24時間処理した。その細胞の抽出物を、特異的な抗体を用いる免疫ブロッティングのために処理した。GAPDHをロードの対照として用いた。
【図4】[0020] 図4:FLLL31およびFLLL32はMDA−MB−468乳癌細胞においてSTAT3のリン酸化を阻害し、アポトーシスを誘導する。細胞を2.5、5および10μMのクルクミン類似体で24時間処理した。その細胞の抽出物を、特異的な抗体を用いる免疫ブロッティングのために処理した。GAPDHをロードの対照として用いた。
【図5】[0021] 図5:FLLL31(10μM)、FLLL32(10μM)およびクルクミン(10μM)は、MDA−MB−231乳癌細胞においてSTAT3のDNA結合活性を阻害する。細胞をその化合物またはDMSO(対照)で24時間処理した。その細胞の抽出物を、STAT3 Transcription Factor Kitを用いてSTAT3結合活性に関して分析した。
【図6】[0022] 図6:FLLL31およびFLLL32はMDA−MB−231乳癌細胞においてSTAT3のDNA結合活性を阻害するが、STAT1のDNA結合活性は阻害しない。細胞をFLLL31(10μM)またはDMSO(対照)で24時間処理した。その細胞の抽出物を、STAT3およびSTAT1 Transcription Factor Kitを用いてSTAT3のDNA結合活性に関して分析した。
【図7】[0023] 図7a〜11b:FLLL31(図7a)およびFLLL32(図7b)は、MDA−MB−231乳癌細胞においてSTAT3依存性の(depenendt)転写ルシフェラーゼ活性の用量依存性の阻害を示す。細胞をその化合物と共に24時間培養し、その後ルシフェラーゼ活性の分析のために収集した。
【図8】[0024] 図8:FLLL32(10μM)はMDA−MB−453乳癌細胞においてIL−6およびINF−αによるSTAT3のリン酸化の刺激を阻害した。FLLL32はMDA−MB−453乳癌細胞においてINF−αにおけるSTAT1およびSTAT2のリン酸化の刺激を阻害しなかった。細胞をFLLL32と共に2時間前保温し、その後IL−6およびINF−αで0.5時間処理し、集めた。
【図9】[0025] 図9:FLLL32はBXPC−3膵臓癌細胞においてSTAT3のリン酸化を阻害し、アポトーシスを誘導する。細胞を5および10μMのFLLL32で24時間処理した。その細胞の抽出物を、特異的な抗体を用いる免疫ブロッティングのために処理した。GAPDHをロードの対照として用いた。
【図10】[0026] 図10:FLLL32はU266多発性骨髄腫細胞においてSTAT3のリン酸化を阻害し、アポトーシスを誘導する。細胞を2.5、5または10μMのFLLL32および/または5μMのクルクミン類似体で24時間処理した。その細胞の抽出物を、特異的な抗体を用いる免疫ブロッティングのために処理した。GAPDHをロードの対照として用いた。
【図11】[0027] 図11:FLLL32およびWP1066はU373ヒトグリア芽細胞腫細胞においてSTAT3のリン酸化を阻害し、アポトーシスを誘導する。細胞を5μMのFLLL32またはWP1066で24時間処理した。その細胞の抽出物を、特異的な抗体を用いる免疫ブロッティングのために処理した。GAPDHをロードの対照として用いた。
【図12】[0028] 図12:FLLL31、FLLL32、AG490、WP1066およびクルクミンのJAK2阻害活性。HTScan JAK2キナーゼアッセイキットを用いてJAK2キナーゼアッセイを実施した。DSMOと比較した統計的有意性(P<0.05)を(*)により示す。
【図13】[0029] 図13a:表1−FLLL31およびFLLL32ならびに他のJAK2.STAT3またはSTAT3二量体化阻害剤の、活性化されたSTAT3を発現するヒト乳癌(B)、膵臓癌(P)、グリア芽細胞腫(G)および多発性骨髄腫(MM)細胞におけるIC50(μM)。 [0030] 図13b:FLLL31、FLLL32(5または10μM)は、p−STAT3の持続的発現を有するPANC−1、BXPC−3およびSK−BR細胞においてアポトーシスを誘導するが、非悪性ヒト膵管上皮細胞(HPDE)、正常ヒト乳房上皮細胞(HMEC)、および正常ヒト肺線維芽細胞(W−38)においてアポトーシスを誘導しない。細胞を様々な濃度のFLLL31またはFLLL32で24時間処理した。その細胞の抽出物を、特異的な抗体を用いる免疫ブロッティングのために処理した。GAPDHをロードの対照として用いた。
【図14】[0031] 図14:クルクミンのジケトン互変異性体のJAK2(左)およびSTAT3タンパク質(右)との分子ドッキングモデル。
【図15】[0032] 図15a〜15c:FLLL32のCAMにおける血管分布および腫瘍増殖への作用。ヒトMDA−MB−231転移性乳癌細胞をニワトリ胚のCAM中に移植し、薬物を示した用量で腫瘍を移植した後の1および3日目に与え、移植後の4日目に腫瘍を画像化した。図15a−異種移植した腫瘍(“t”)の周囲の血管密度。図15b−相対的血管密度。図15c−異種移植片の相対的な腫瘍の大きさ。データは7〜8匹の別個の胚および2回の別々の実験からのものである。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、Neuman−Keulsポストテストを用いた一元配置ANOVAによる。
【図16】[0033] 図16:クルクミンおよびFLLL32に関する予備的な薬物動態学的データ。マウスにIP(50mg/kg)またはIV(25mg/kg)でクルクミンまたはFLLL32(DMSO中12.5mg/ml)を投与した。個々のマウスから2分および4時間の間のそれぞれの時点において血液を集め、親化合物の血漿濃度をLCMSMSにより測定した。線形範囲より下の決定された濃度(すなわち10nMより下)は示していない。
【図17】[0034] 図17:STAT3濃度の関数としての蛍光性p−Tyrペプチドの蛍光偏光(Fluorescant polarization)。
【図18】[0035] 図18a〜18b:JAK2に結合するクルクミンの2種類の互変異性型の計算によるモデル(図18a−ジケトン型;図18b−エノール型)。
【図19−1】[0036] 図19a:表2−クルクミンおよび類似体とJAK2およびSTAT3に関する、予想される結合エネルギー。
【図19−2】[0037] 図19b:ジアルキル化ジメトキシクルクミン類似体の系列1類似体および系列2類似体。
【図19−3】[0038] 図19c:表3−予想される結合エネルギーのフェノール置換の作用。 [0039] 図19d:表4−様々なアルキル基の中央の結合角への影響。
【図19−4】[0040] 図19e:スキーム1−系列2の類似体の合成。 [0041] 図19f:スキーム2−系列1の類似体の合成。
【図19−5】[0042] 図19g:表5−モノケトンクルクミン誘導体の乳癌細胞(MDF−7およびMDA−MB231)に対する抗増殖活性。MCF−IOA細胞(胸部上皮細胞)を“正常な”組織のモデルとして用いる。
【図20】[0043] 図20:ジアルキル化クルクミン誘導体に関する芳香族置換基の例。
【図21】[0044] 図21:類似体の合成に関するベンズアルデヒド類の例。
【図22】[0045] 図22:アナログの合成に有用であるメトキシ(およびヒドロキシ)基のみを含むモノ−、ジ−、およびトリ置換ベンズアルデヒド類の例。
【図23】[0046] 図23a:非対称JAK2阻害剤24および25の例。 [0047] 図23b:スキーム3−JAK2阻害剤としての非対称類似体の合成。 [0048] 図23c:スキーム4−メチルケトン26aのアシル化。
【図24】[0049] 図24:STAT3のSH2ドメインに関する重要な結合ポケット、または“ホットスポット”。
【図25】[0050] 図25a:クルクミンのシクロヘキシル誘導体6aの構造。 [0051] 図25b:STAT3のSH2結合部位における6aのドッキング。
【図26】[0052] 図26a:FLLL32および類似体。LogPの値はChemDraw Ultra 11.0を用いて計算した。 [0053] 図26b:スキーム5−化合物32〜25の合成に関する合成スキーム。
【図27】[0054] 図27a:STAT3のLeu706部位を標的とした類似体。
【0017】
[0055] 図27b:スキーム6−化合物36の調製。
【図28】[0056] 図28:FLLL31(R=Me)およびFLLL32(R−シクロヘキシル)のスルファメートおよびホスフェート類似体。
【図29−1】[0057] 図29a:スルファメートおよびホスフェート化合物。 [0058] 図29b:スキーム7−スルファメートおよびホスフェート誘導体の合成に関するモデル系の合成。
【図29−2】[0059] 図29c:スキーム8−FLLL31のスルファメートおよびホスフェート類似体の合成。 [0060] 図29d:スキーム9−1個の遊離のフェノールを含むFLLL32誘導体の合成。
【図29−3】[0061] 図29e:化合物58に関する類似体の例。 [0062] 図29f:化合物59に関する類似体の例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0063] この開示全体を通して、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書を、引用を確認することにより参照する。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示を、この発明が属する技術の現状をより完全に記述するために本開示の中に援用する。
【0019】
[0064] いくつかの小分子二量体化阻害剤を先行技術−図1において示す。ある阻害剤はククルビタシン(cucurbitacin)Qを含み、それはSTAT3のリン酸化を阻害するが、実際の生化学的標的(単数または複数)はまだ不明であり、そのインジルビン誘導体であるE804はSrcおよびSTAT3の両方を阻害する。カテコールを含む合成分子AG−490は選択的なJAK2阻害剤であるが、それは乏しいインビボでの安定性を欠点としてもつ。いくつかの他のJAK2阻害剤には、WP1066、SD−1008、SD−1029およびTG101348が含まれる。そのポリフェノール類の全ての中で、クルクミンは化学予防および化学療法において最も広く研究された化合物である。
【0020】
[0065] クルクミンおよび腫瘍発生
[0066] クルクミン、l,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−l,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン(先行技術−図1)は、ウコン(Curcuma longa)の根茎から作られる食事用香辛料であるターメリックから単離された主要な生理活性化合物である。ターメリックは伝統的なインドの民間薬の主軸であり、それは多くの疾患、例えば糖尿病、肝臓疾患、リウマチ性関節炎、アテローム性動脈硬化症、感染症および癌の処置のために用いられてきた。クルクミンの療法的作用は、広い範囲の分子標的に対するそれの活性の結果であると考えられている。クルクミンの最も重要な観点の1つは、化学予防的および化学療法的特性の両方を有する、様々なタイプの癌に対するそれの有効性である。ほとんどの化学療法剤とは異なり、クルクミンはほとんど〜全く毒性を示さない(ヒトにおいて10g/日までの用量において用量制限毒性が無い)。不運にも、クルクミンの潜在的有用性は乏しい生物学的利用能および乏しい選択性によりいくらか制限されている。選択性の欠如は、クルクミンが相互作用することが知られている非常に多くの分子標的によるものである。
【0021】
[0067] クルクミンの療法的活性は部分的にはJAK/STAT経路の阻害によるものであるという証拠が存在する。クルクミンはJAK2、Src、Erb2、およびEGFRを阻害することが示されており、その全てがSTAT3の活性化に関係していることが示されている。さらに、クルクミンはBcl−xL、サイクリンDl、VEGF、およびTNFの発現を下方制御することが示されており、その全てがSTAT3により制御されることが知られている。いくつかの重要なSTAT3の標的遺伝子が腫瘍の形成に関わっていることを示す証拠も存在する。
【0022】
[0068] 本発明は、少なくとも部分的に、その中心部のジケトン部分の構造および生物学的活性への影響はその芳香族置換基の影響よりも重要であるという本発明者らの発見に基づいている。本発明における発明者らは、クルクミンによるJAK/STATシグナル伝達の阻害はそれの化学療法的および化学予防的特性において重要な役割を果たしていることも発見した。
【0023】
[0069] 本発明者らは、クルクミンの2種類のジケトン類似体(FLLL31およびFLLL32)を設計し、合成した。“FLLL31”および“FLLL32”と名付けられたその類似体(図2a)および図2bおよび図2cで示した追加の類似体は、JAK2/STAT3経路の特異的な阻害剤である。
【0024】
[0070] 本発明は下記の実施例においてさらに定義され、ここで別途記載しない限り全ての部および百分率は重量によるものであり、度は摂氏である。これらの実施例は本発明の好ましい態様を示すが説明としてのみ与えられていることは理解されるべきである。上記の議論およびこれらの実施例から、当業者はこの発明の本質的な特徴を確かめることができ、その精神および範囲から逸脱すること無く本発明の様々な変更および修正を行ってそれを様々な用途および条件に適応させることができる。この明細書において参照される特許および非特許文献を含む全ての刊行物を特別に援用する。下記の実施例は本発明の特定の好ましい態様を説明することを意図するものであり、そのように明記されない限り、特許請求の範囲において定義される本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。従って、本発明の価値は本明細書の実施例への参照により理解することができる。
【実施例】
【0025】
[0071] 実施例I
[0072] FLLL31およびFLLL32は構成的活性化型のSTAT3を有する乳癌細胞においてSTAT3のリン酸化を阻害する。
【0026】
[0073] 発明者らは、FLLL31およびFLLL32が、[チロシン残基705(Y705)において]持続的にチロシンがリン酸化された、または活性化されたSTAT3を発現するMDA−MB−231およびMDA−MB−468乳癌細胞においてSTAT3のリン酸化を阻害するかどうかを調べた。FLLL31およびFLLL32はMDA−MB−231(図3)およびMDA−MB−468(図4)ヒト乳癌細胞株においてSTAT3のリン酸化を阻害した。FLLL31およびFLLL32はERK1/2、PKC−δ、mTOR、p70S6K、およびAKTのリン酸化にはほとんど作用を有しない(図3および図4)。
【0027】
[0074] FLLL31およびFLLL32によるSTAT3のリン酸化の阻害は、カスパーゼ3の切断により証明されるアポトーシスの誘導と一致している。さらに、FLLL31およびFLLL32は両方の乳癌細胞株においてSTAT3の下流標的であるサイクリンD1の下方制御を引き起こす(図3および図4)。
【0028】
[0075] FLLL31およびFLLL32によるSTAT3のDNA結合およびSTAT3依存性ルシフェラーゼ活性の阻害。
【0029】
[0076] FLLL31およびFLLL32によるSTAT3シグナル伝達の阻害を確かめるため、本発明者らはその化合物のSTAT3のDNA結合および転写がSTAT3に依存するルシフェラーゼ活性を阻害する能力を調べた。FLLL31およびFLLL32は共に、MDA−MB−231細胞において統計的に有意なSTAT3のDNA結合活性の阻害を引き起こし、それはクルクミンよりも有意により強力であった(図5)。
【0030】
[0077] さらに、FLLL31およびFLLL32は共に、STAT3のDNA結合活性を阻害するがSTAT1のDNA結合活性は阻害しない選択性を示した(図6)。
【0031】
[0078] それのリン酸化された、または活性化されたSTAT3タンパク質の高い内在性レベルのため、MDA−MB−231乳癌細胞が、チミジンキナーゼ最小レポーター中の7コピーのSTAT3結合部位を特徴とするルシフェラーゼ構築物であるpLucTKS3を安定に形質移入するために選択された。従って、ルシフェラーゼの発現はSTAT3のリン酸化および活性化を条件とする。これらの安定に形質移入された細胞を、1〜10μmol/LのFLLL31およびFLLL32で24時間処理した。ルシフェラーゼ活性をルミノメーターにより監視し、FLLL31およびFLLL32で処理された細胞の発光を未処理の対照の発光と比較した。データの正規化の後、FLLL31およびFLLL32は両方ともSTAT3依存性のルシフェラーゼ活性の用量依存性の阻害を引き起こすことが示された(図7)。
【0032】
[0079] FLLL32はIL−6によるSTAT3のリン酸化の刺激を阻害するが、IFN−αによるSTAT1およびSTAT2のリン酸化の刺激は阻害しない
[0080] IL−6はSTAT3のリン酸化を誘導し、癌の発現において役割を果たしている可能性があるため、本発明者らはFLLL32がこの誘導を阻害するかどうかを調べた。IL−6はSTAT3のリン酸化を刺激し、FLLL32により阻害される(図8)。IFN−αがSTAT3のリン酸化を誘導し、FLLL32により阻害されることも観察された。しかし、FLLL32はIFN−αによるSTAT1およびSTAT2のリン酸化の誘導は阻害しない(図8)。これは、FLLL32がJAK1またはTYK2を阻害しないことを間接的に示した。
【0033】
[0081] FLLL32による非乳癌細胞株におけるSTAT3のリン酸化の阻害
[0082] 我々は次に、FLLL32が非乳癌細胞株BXPC−3(ヒト膵臓癌、図9)、U266(多発性骨髄腫、図10)およびU373(ヒトグリア芽細胞腫、図11)においてもSTAT3のリン酸化を阻害するかどうかを調べた。3種類の細胞株は全て持続的に活性化されたSTAT3を発現する。FLLL32は3種類の細胞株全てにおいてSTAT3のリン酸化を阻害し、アポトーシスを誘導した(図9〜11)。それはSTAT3の下流標的、例えばERK1/2、サイクリンD1、Bcl−2、およびサバイビン(survivin)も下方制御した(図9〜11)。
【0034】
[0083] FLLL31、FLLL32、クルクミン、AG490およびWP−1066のJAK2キナーゼへの阻害活性。
【0035】
[0084] JAK2は、サイトカインシグナル伝達に応答するSTAT3のチロシン残基705におけるリン酸化を仲介している。従って、我々はFLLL32がJAK2キナーゼ活性を直接阻害するのかどうかを調べた。FLLL32はFLLL31およびクルクミンよりも強力にJAK2キナーゼ活性を阻害した(図12)。また、FLLL32は2種類の他の既知のJAK2阻害剤であるWP1066およびAG490よりも強力であった(図12)。10μMにおいて、クルクミンはJAK2阻害を全く示さなかった。理論により束縛されることを望むわけでは無いが、本発明者らはここで、これらの結果がFLLL32によるSTAT3のリン酸化の阻害を説明していると信じる。
【0036】
[0085] FLLL32の、構成的活性化型のSTAT3を有する癌細胞における、正常な細胞を上回る選択的細胞毒性。
【0037】
[0086] 本発明者らはさらに、FLLL32が持続性のSTAT3のリン酸化を発現していない正常なヒト細胞においてもアポトーシスを誘導するかどうかを調べた。FLLL32は正常ヒト膵管上皮細胞、正常ヒト肺線維芽細胞、または正常ヒト乳房上皮細胞では検出可能なアポトーシスを誘導しなかった。しかし、それはPANC−1およびBXPC−3膵臓癌細胞ならびにSK−BR−3乳癌細胞において(切断されたカスパーゼ3により証明される)アポトーシスを誘導した(図13a)。
【0038】
[0087] FLLL31、FLLL32および他の既知のJAK/STAT経路の阻害剤の抗増殖活性。
【0039】
[0088] 本発明者らは、FLLL31、FLLL32両方の抗増殖活性も調べ、乳(SUM−159、ZR−75−1)、膵(BXPC−3、HPAC、PANC−1、SW1990)、グリア芽細胞腫(U373)および多発性骨髄腫(U266)を含む、STAT3のリン酸化の上昇したレベルを有する8種類の癌細胞株の集団(panel)に対して、それらをいくつかの既知のJAK/STAT経路の阻害剤(WP1066、Stattic、S31−201、SD1029およびAG490)と比較した。FLLL31およびFLLL32は共に他の阻害剤よりも強力であり、IC50の値はμM以下の濃度である。FLLL32はFLLL31よりもわずかに強力であるようである(図13b−表1)。
【0040】
[0089] クルクミンのジケトン互変異性体のJAK2(ATP結合部位)およびSTAT3(SH2ドメイン)との分子ドッキングの研究。
【0041】
[0090] クルクミンの1,3−ジケトン部分のJAK2およびSTAT3への結合における役割を調べるため、分子ドッキングの研究を行った。図14a〜14bは、ジケト−クルクミンの曲がった(bent)結合方式を示す。JAK2の結合(図14a−左)に関して、その芳香族断片は左側においてATPのプリン環と競合し、他方において大部分が疎水性のポケットに結合する。加えて、その分子の中心部にあるカルボニル酸素の1個はJAK2のオキシアニオンホールと相互作用する。STAT3のSH2二量体化部位への結合に関して、その芳香族断片は同様に左側においてpTyr705結合部位と競合し、右側において大部分が疎水性のサイドポケットに結合する(図14b−右)。赤い棒は、STAT3の二量体化および活性化の間の他方のSH2ドメインからのpTyr705−Leu706ペプチド結合方式を示す。
【0042】
[0091] FLLL32のニワトリ漿尿膜(CAM)異種移植アッセイにおける血管分布および腫瘍増殖への作用。
【0043】
[0092] 本発明者らは、ニワトリ胚の漿尿膜(CAM)を用いた中間的全身性インビボ異種移植系を開発した。具体的には、50μLの不活性ヒト細胞外マトリックス(Humatrix)中の、STAT3を過剰発現することが示されているMDA−MB−231ヒト転移性乳房腫瘍細胞(250,000)を、10日培養(day of incubation)(DI)ニワトリ胚のCAMの直下に、主要な脈管から離れた位置に移植した。移植の1日後に、胚を最大耐用量(MTD)(11DIの体重に基づく)の80%のFLLL32(25mg/kg)、またはドキソルビシン(2mg/kg)またはパクリタキセル(2mg/kg)で、移植位置から遠位の領域のCAMの上にピペットで移すことにより全身的に処理した。移植の3日後に、CAMを4%パラホルムアルデヒド中0.1%トリトンX−100を用いてインサイチュで2分間固定し、移植の領域を取り囲むように切り取り、4%パラホルムアルデヒドを含む6ウェルプレート中に固定して広げた。次いでこれらの切り取られたCAMを明視野解剖顕微鏡上で6.25×の倍率で画像化した(Wild M400 Photomakroscop)。
【0044】
[0093] 25mg/kgのFLLL32は移植された腫瘍(図15aにおける“t”)の周囲の無傷の(intact)血管の数を低減させたが、一方でドキソルビシン処理もパクリタキセル処理も結果として腫瘍脈管密度の有意な変化を全くもたらさなかったことが分かった(図15aおよび図15b)。
【0045】
[0094] さらに、FLLL32は結果としてMDA−MB−231の腫瘍体積の有意な低減をもたらしたが、一方でドキソルビシンまたはパクリタキセルは効果が無かった(図15c)。
【0046】
[0095] まとめると、これらのデータは、FLLL32がSTAT3を過剰発現する乳癌のCAM異種移植片に対して有意な抗腫瘍および抗血管新生作用を有することを示している。
【0047】
[0096] ICRマウスにおけるFLLL32の薬物動態。
【0048】
[0097] 将来の決定的なPK/PD研究のための全体的なPK時間推移を見積もるため、FLLL32およびクルクミンのIPおよびIV用量両方を投与したICRマウスにおいて予備試験を行った。8〜10週齢のオスのICRマウスに、DMSO中(12.5mg/ml)のFLLL32またはクルクミンのどちらかをIP(50mg/kg)またはIV(25mg/kg)で投与した。2分および4時間の間の様々な時点においてマウスをイソフルラン麻酔下で心臓穿刺により失血させ、集めた血液試料から血漿を回収し、分析まで−70℃で保管した。組織からのクルクミン誘導体の効率的な抽出の手順を開発するための後の研究のために、マウスの亜集団からの組織を集めて保管した。クルクミンおよびFLLL32をLCMSMS分析により定量した。抽出した血漿試料(100μL)を真空下で乾燥させ、次いで0.1%ギ酸を含む80%アセトニトリル中で再構成した。注入した試料(20μL)をC−18カラム(50×2.1mm、3μm)を通して、一定の0.4mL/分の流量で、それぞれ0.1%ギ酸を含む水およびアセトニトリル中の勾配で分離した。溶離された分析物を、Quantum TSQ Discovery Max上で、大気圧化学イオン化をポジティブモードで用いて、単一反応モニタリングにより検出した。クルクミン類似体を内部標準として用いて、分析物/IS比がマウスの血漿において生成された標準曲線による定量を可能にした。このアッセイに関して用いられた線形範囲は両方の化合物に関して10nM〜1μMであり、1μMより上であると測定された試料は再度の分析のために希釈された。結果として得られたそれぞれの化合物および投与経路に関する濃度対時間のプロフィールを図16に示す。
【0049】
[0098] また、理論により束縛されることを望むわけではないが、本発明における発明者らはここで、FLLL32は、クルクミンのより低いAUCおよびより急速な消失により示されるように(すなわち、クルクミンの濃度は定量に関する10nMのカットオフ値より下に下がった)、クルクミンと比較して増大した曝露および潜在的により長い半減期を有する可能性があると信じる。
【0050】
[0099] 蛍光偏光(FP)アッセイの開発および最適化。
【0051】
[00100] 分子ドッキングの研究は、FLLL32がSTAT3のSH2ドメインに結合することができることを示した。
【0052】
[00101] 加えて、本発明における発明者らは、蛍光偏光アッセイを用いてFLLL32および/またはその類似体化合物がSH2ドメインに結合するかどうかを決定した。蛍光偏光の開発を確立した。簡潔には、そのアッセイは黒色384ウェルマイクロプレート(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ウォルサム)において、それぞれのウェルにおいて25μLの総体積で実施した。蛍光強度の値を540nmの励起フィルターおよび590nmの発光フィルターを用いて記録した。FPの測定を、100msの積分時間(integration time)、545nmの励起フィルターおよび610nmの発光フィルターを設定することにより行った。
【0053】
[00102] 全てのデータをミリ偏光単位(millipolarization unit)で表す。そのmPの値は、等式
【0054】
【化1】

【0055】
を用いて計算され、I II:平行発光強度の測定値、
【0056】
【化2】

【0057】
:垂直発光強度の測定値である。飽和曲線を記録し、ここで蛍光標識されたペプチド(4nM)を増大する量の組み換えSTAT3タンパク質で処理した。特異的な結合を結合したペプチドのシグナルへの寄与として定義し、それはmP=mPb−mPfとして計算され、ここでmPbおよびmPfはそれぞれ結合した、および遊離のトレーサーの偏光値の値であり;mPは特定のSTAT3濃度に関する記録器の偏光値である。計算された解離定数(Kd)は172nMであり(図17)、それはpTyrペプチドおよびStatのSH2ドメインの間の結合親和性と整合している。[83]。
【0058】
[00103] 実施例II
[00104] JAK2およびSTAT3阻害剤としてのFLLL32に基づくクルクミン類似体の評価。
【0059】
[00105] クルクミンは新規の抗癌剤の開発のための優秀なリード化合物を提供する。その高度にモジュール式の(modular)構造および合成が比較的容易であることは、JAK2およびSTAT3の活性に関するこの分子の構造−活性関係を調べるための、類似体化合物の高度に多様なライブラリーの迅速かつ系統的な調製および評価の両方を促進する。
【0060】
[00106] 実施例IIは、JAK/STAT経路の強力な阻害剤であることが示された(実施例I参照)ジアルキル化クルクミン類似体であるFLLL32中に見られる同じ構造モチーフを特徴とする誘導体の調製および評価に焦点を合わせる。
【0061】
[00107] クルクミンの誘導体は、JAK2およびSTAT3の活性に関して独立に、これらの標的に対してより大きな効力および特異性を得られるように最適化することができる。理論により束縛されることを望むわけでは無いが、本発明の発明者らはここで、単一のタンパク質標的に対する活性を向上するように設計された比較的小さな構造的修正でさえも最終的に結果として別のものに関する活性の減少をもたらす可能性があると信じる。
【0062】
[00108] 1.1 JAK2活性に関するクルクミン類似体の最適化。
【0063】
[00109] JAK2活性への構造的変化の作用を示すために、クルクミンの骨格を修正した。このアプローチには、以下のことが含まれる:1)ジケトン互変異性型を強制し、JAK2結合部位のポケット2と相互作用する4,4−ジアルキル化クルクミン誘導体の系列の合成、2)JAK2のホスホチロシンポケットへの結合により効力および選択性を向上するような芳香環置換基の変種、ならびに3)JAK2結合における第2の芳香環(およびその置換基)の重要性を評価するための、非対称な誘導体の合成。
【0064】
[00110] 1.1.1. 4,4−二置換クルクミン誘導体の合成。
【0065】
[00111] 実施例Iにおいて論じたように、クルクミンの1,3−ジケトン部分のJAK2(およびSTAT3)への結合における役割を調べるために分子ドッキングの研究を行った。クルクミンのケトおよびエノール型を両方用いた。興味深いことに、その2種類の互変異性型は類似の予測される結合エネルギーを示した。図18aは、ジケト−クルクミンのJAK2との曲がった結合方式を示す。その重要な結合相互作用は、左側における1つの芳香族断片のATPのプリン環との競合および他方における他方の芳香環の大部分が疎水性のポケット(ポケット2)への結合に由来する。加えて、その分子の中心部のカルボニル酸素の1個はJAK2のオキシアニオンホールと相互作用する。
【0066】
[00112] この初期のドッキングの研究の結果に基づいて、クルクミンのC−4位における二置換の高次構造的効果および立体効果を調べるために、第2の計算による研究を行った(図19a−表2および図19b)。
【0067】
[00113] この対称的な類似体の系列は、2個の中心部のアルキル置換基の存在によってのみクルクミンと異なっている(系列1)。この置換はその化合物をジケトン互変異性型に効果的に固定し、エノール化の可能性を排除する。我々のドッキングの研究において、スピロ−シクロペンチルおよび−シクロヘキシル誘導体である5および6(図19b)は、JAK2に分子レベルで最高の結合親和性を示す(図19a−表2)。従って、クルクミンのエノール互変異性体はJAK2に十分に結合することが予想されるが、化合物5および6により示された予想される結合エネルギーの向上により、ケト互変異性体の誘導体が追求されるであろう。
【0068】
[00114] これらの場合の両方において、プリンに競合する芳香族結合およびカルボニルオキシアニオンホール相互作用に加えて、本発明の発明者はその疎水性のアルキル環(シクロペンチル−およびシクロヘキシル−)がJAK2のポケット2と都合よく相互作用すると信じる。これは、クルクミンのジケトン互変異性体がJAK/STAT活性に関して重要であり、この骨格への慎重な改変は強力かつ選択的なJAK2阻害剤をもたらすことができるという証拠である。
【0069】
[00115] フェノール酸素上に追加のメチル置換基を有する別の系列の化合物を示す(系列2、図19b)。本発明者の計算によるモデルは、系列1で見られた自由なフェノールの水素結合相互作用はJAK2およびSTAT3両方への結合に重要であることを示している(図19c−表3)。しかし、自由なフェノールを欠く様々なクルクミン類似体、特にジメトキシクルクミン(8、図19e−スキーム1)に関して観察された増大した効力は、増大した安定性および血漿中濃度の増大したレベルによるものである可能性がある。従って、芳香環の4位におけるヒドロキシル置換基は、特に中性〜塩基性のpHにおいて、これらのクルクミン様化合物の観察された可溶性および安定性の問題に著しく寄与している可能性がある。従って、例えば化合物6bのような自由なフェノールを有しないジメトキシクルクミンのアルキル化誘導体を含む系列2を調製することができる。
【0070】
[00116] これらの化合物の結合エネルギーは、水素結合の程度がより低いため、わずかにより低いことが予想されるが(すなわち6b対6a、図19c−表3)、これらの化合物はより安定で膜透過性であると予想され、おそらくインビボでの活性の増大がもたらされる。
【0071】
[00117] 2つの系列のクルクミン類似体の合成は、小さいアルキル置換基(ジメチル1、シクロプロピル3)および立体的によりかさ高いがより親油性のアルキル置換基(ジ−n−ブチル2、シクロヘキシル6)を用いてポケット2の性質を調べ、発明者の結合モデルを実証するために有用である。その様々なアルキル置換基は、その2個のカルボニル基の間の角度がこれらの基の性質により劇的に変化する(105.5°から115.6°へ)ため、分子の高次構造に測定可能な影響を有する(図19d−表4)。系列2のこれらの化合物の合成は、図23e−スキーム1に従って実行することができる。
【0072】
[00118] ジメトキシクルクミン(8)は、Venkateswarluの手順に従って3,4−ジメトキシベンズアルデヒドと2,4−ペンタンジオンの縮合により調製されるであろう。適切なアルキル化剤の存在下での炭酸カリウムを用いた8の処理は、望まれる二置換反応に影響を及ぼすと予想される。ジヨードアルカン類を用いたアルキル化は、結果としてスピロ環状生成物の形成をもたらすはずである。
【0073】
[00119] 実施例Iで言及したように、本発明者らはここで、この方法で誘導体FLLL31(1b、R=メチル)およびFLLL32(6b、シクロヘキシル)を調製した。興味深いことに、8から生成したエノラートのO−アルキル化も両方の場合において観察されたが、この生成物の収率は比較的低く(<10%)、カラムクロマトグラフィーにより容易に分離することができる。
【0074】
[00120] 4−ヒドロキシ、3−メトキシで置換された芳香環を含む系列1のメンバーの合成は困難であり、望まれるアルキル化反応に影響を及ぼすために適切な保護基の使用が必要である。しかし、本発明者らはここで、これらの化合物に適用可能な、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)保護基戦略を用いる合成経路を確立した(図19−スキーム2)。この合成経路において、縮合条件を用いて調製したクルクミンを出発物質として利用することができる。t−ブチルジカーボネートを用いるクルクミンの保護は、ビス保護された(bis−protected)クルクミン誘導体9を与える。炭酸カリウムを塩基として用いるこの誘導体のアルキル化は、我々の予備的な結果に類似した二置換反応に影響を及ぼす。最後に、熱分解によるそのBoc保護基の除去は一般構造の望まれる類似体11を与える。
【0075】
[00121] 例えば、この手順は対応するシクロヘキシル誘導体6a(図19b)の合成にうまく適用された。ベンジルエーテルまたはシリルエーテル基を含む他の保護基を用いてそのフェノール類を保護/脱保護する最初の試みは、望まれる生成物を与えることができなかった。同様に、標準的なプロトン性の酸の条件の下でBoc保護基を除去する試みも、観察される生成物無しで出発物質の著しい分解をもたらした。
【0076】
[00122] 1.1.2. ジアルキル化クルクミン類似体の芳香族置換基のバリエーション。
【0077】
[00123] 本発明における発明者らは、ここで、JAK2に結合するクルクミンの計算によるモデルは、ホスホチロシンポケット中の芳香環上の置換基は結合能力において重要な役割を果たしていることを示していると信じる。理論により束縛されることを望むわけでは無いが、本発明における発明者らはここで、それらのポケットの分析は水素結合相互作用(水素結合の供与体および水素結合の受容体両方の相互作用)がこの結合能力への鍵である可能性があることを示していると信じる。
【0078】
[00124] 加えて、単一のカルボニル部分のみを含む関連するクルクミン誘導体に関する本発明者の研究は、様々な芳香族置換基を有する誘導体はしばしば癌細胞に対する類似の抗増殖活性を示すが、“健康な”モデル細胞(例えばMCF−10A)への作用は劇的に異なり得ることを示している(図19g−表5)。
【0079】
[00125] 従って、本明細書の節1.1.1において示した修飾(3−メトキシ−4−ヒドロキシおよび3,4−ジメトキシ)の範囲を超える芳香環置換基の修飾を用いて以下のことを調べることができる:1)JAK2活性におけるその置換基の役割を調べる;および2)毒性を低減させるための、癌細胞に対するその薬物の選択性。
【0080】
[00126] 商業的に入手できる、または容易に調製されるベンズアルデヒド類である3,5−ジメトキシベンズアルデヒド(21)、3−ヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒド(22)、およびピペロナール(3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、23)(図21)に由来する類似体の追加の系列(図20)を用いて、異なる環置換パターンにより引き起こされる活性の変化をさらに決定することができる。これらのベンズアルデヒド類は、前の節において存在している芳香系の立体的および電子的環境にほんのわずかな撹乱(perturbations)しかなされないように選択された。化合物12〜17は、そのタンパク質との重要な水素結合相互作用に参加することができ;さらに、C−4からC−5位への環上の置換基の位置の変更は塩基性および酸化的条件の両方に対する安定性を増大させることができる。
【0081】
[00127] 特定の態様において、クルクミンの反応性カテコールへの切断およびそれに続くオルト−キノンへの酸化は効力のある(operative)代謝経路であると考えられるため、これは特に重要である。また、メトキシ(12〜14)およびヒドロキシル置換基(15〜17)のバリエーションは、JAK2ポケットにおける水素結合の性質および重要性についてさらなる情報を提供するはずである。立体的な厳しさがより小さく疎水性がわずかに小さいアセタールへと拘束された(tied back)メチル化フェノール類を有するピペロナール由来の化合物18〜20は、3,4−ジメトキシ置換化合物を直接模倣するように設計されている。
【0082】
[00128] これらの類似体の調製に関して、図19e−スキーム1における8に類似の基質に対して同様にそのアルキル化反応が行われるであろう。3,5−ジメトキシベンズアルデヒドまたはピペロナール由来の化合物には保護基は必要では無いであろう。しかし、3−ヒドロキシ−5−メトキシベンズアルデヒドはBoc誘導体として保護される必要があるであろう。この実施例におけるクルクミン骨格の中心部の炭素上の置換基は、ジメチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル基に限定されるであろう。シクロペンチルおよびシクロヘキシル置換化合物はこのスキームに従って作ることができる。また、そのドッキングの研究は、これらの化合物がポケット2との最高の結合相互作用を有することを示している(図19a−表2)。例えば、1a、4a、5aおよび6aのような化合物が作られた。
【0083】
[00129] 加えて、非環式置換基の作用を調べるために、ジメチル置換された誘導体も調製されるであろう。本発明における発明者らは、節1.1.1の結果は、より有効なJAK2または癌細胞に対するより大きな抗増殖活性を示す別のジアルキル基を示している可能性があると信じており、そのような置換基も意図される本発明の範囲内である。
【0084】
[00130] JAK2のホスホチロシンポケットにおけるより都合のよい相互作用を有し、増大した効力をもたらす可能性のある環置換基を同定するために、計算による研究を行うこともできる。図24において図説されているように、メトキシおよびヒドロキシ基のみを含むモノ−、ジ−、およびトリ置換ベンズアルデヒド類の数はかなり多い。
【0085】
[00131] これらのアルデヒド類に基づくクルクミン類似体の可能性のある組み合わせの全てを合成するよりもむしろ、計算による化学は本発明者らが化合物の重点的なライブラリーを調べ、どの誘導体を調製することができるかを決定することを可能にした。
【0086】
[00132] このアプローチは、他の構造的に多様だが商業的に入手できる、または容易に合成されるベンズアルデヒド類および複素芳香族化合物にも拡張されるであろう。次いでこのインシリコスクリーニングに由来するヒットしたもの(Hits)が、本明細書で記述した同じ合成戦略に従って合成されるであろう。
【0087】
[00133] 1.1.3. 可能性のあるJAK2阻害剤としての非対称類似体の合成。
【0088】
[00134] クルクミンの2つの芳香環はそれぞれJAK2のホスホチロシンおよびヒンジ連結領域の両方の中に届くと予想される。これらの結合ポケットの両方における水素結合相互作用は活性に重要である可能性があり、またはそうではない可能性もある。実施例1.1.1および1.1.2で調製されたクルクミン誘導体の結合能力は実際にその骨組みの対称な性質によりプラスの影響を受けている可能性がある。
【0089】
[00135] この対称性はその類似体がその分子の相対的な配向に関わらずこれらのポケット内で効果的に水素結合することを可能にしている(すなわち、両方の芳香環が同等にうまく結合する)。この仮説を試験するため、クルクミン骨格の芳香環の内の1個(図23の分子の右側)における置換を欠いている2種類の重要な類似体(24および25)を合成する。
【0090】
[00136] これらの誘導体の合成はメチルケトン26aまたは26bのどちらかを用いて出発して実施された。これらのメチルケトン類は、対応するベンズアルデヒド類のWittigオレフィン化により入手することができる。塩基を用いた処理の際のそのメチルケトンのエノラートの形成およびそれに続く酸塩化物27を用いたアシル化は、クルクミン誘導体28aまたは28bを与えた。それに続くこれらの生成物のアルキル化は、望まれる化合物24またはBoc保護された誘導体29bをそれぞれ与えた。29bの加熱は結果としてBoc基の除去をもたらして25を与えた。
【0091】
[00137] 本発明における発明者らは最近、ケトン26aの酸塩化物31との反応によるこのアシル化戦略(図23c−スキーム4)の実現可能性を調べた。この実施例において得られる生成物ジメトキシクルクミン(8)は、本発明者らにより合成された。精製の際、その反応の生成物は以前に調製された物質と同じであることが確認された。その反応の収率を増大させるため、これらの反応条件のさらなる最適化を実施することができる。
【0092】
[00138] 特定の態様において、望まれる化合物の調製へのこのアシル化反応戦略の適用は困難であることが判明するであろうが、代わりの合成経路を用いることもできる。例えば、2,4−ペンタンジオンの3,4−二置換ベンズアルデヒドおよびベンズアルデヒド自体の両方との同時縮合は、クルクミン誘導体の混合物を与えることができる。これらの生成物のクロマトグラフィーによる分離は、望まれるクルクミン誘導体28aまたは28bをその2種類の対応する対称なクルクミン誘導体と共に与えることができる。
【0093】
[00139] しかし、特定の態様において、より効率的な代替手段はベンズアルデヒド類の2,4−ペンタンジオンとの階段的な縮合の適用である可能性がある。
【0094】
[00140] 1.2 STAT3活性に関するクルクミン類似体の最適化。
【0095】
[00141] 構造的変化のSTAT3活性への作用を決定するためにクルクミンの骨格を修正することもできる。実施例Iにおいて示したように、JAK2の研究(節1.1.1)に加えてクルクミンのSTAT3への結合の計算的研究を開始した。
【0096】
[00142] しかし、JAK2の結合の研究の結果に反して、STAT3の結合部位において“曲がった”立体構造を取ることができるクルクミンのジケトン型のみが効率的に結合すると予想された。この結果は本発明者らを、増大した効力および選択性を提供する可能性のある、STAT3のSH2ドメインにおける3個の重要な“ホットスポット”の同定へと導いた:pTyr705部位、疎水性のサイドポケット、およびLeu706部位(図24)。
【0097】
[00143] そのpTyr705部位はJAK2のホスホチロシンポケットにかなり類似しており、これはその類似したJAK2ポケットを標的とするように設計された構造的修正はSTAT3への結合にも適用可能である可能性があることを示している。STAT3の活性に関して実施例1.1において調製された化合物のスクリーニングに加えて、STAT3のSH2ドメインの我々の計算によるモデルに基づいて効力を増大させるために、2つの追加の合成戦略も用いることができる:1)SH2ドメインの疎水性のポケットに結合すると予想されるシクロヘキシル部分の大きさおよび親油性のバリエーション、ならびに2)Leu706結合ポケットを標的とするように設計されたFLLL32の非対称な類似体の合成。
【0098】
[00144] 1.2.1. 中心部のシクロヘキサン部分のバリエーション。
【0099】
[00145] FLLL32(6b)はSTAT3阻害剤であり;STAT3のSH2ドメインに結合した密接に関連する6aの計算によるモデルは、この部類の化合物に関する重要な相互作用を示している。
【0100】
[00146] 本発明の発明者らはここで、図25a〜25bにおいて図説されているように、左の芳香環(pTyr705部位)、右の芳香環(Leu706部位)、およびシクロヘキシル環(疎水性のポケット)はSH2ドメインの3つの“ホットスポット”全てに結合し、それは結果として増大したSTAT3活性および選択性をもたらすことを信じる。
【0101】
[00147] しかし、中心部のシクロヘキシル環の重要な役割にも関わらず、この特定の基の高度に疎水性の性質は、その可溶性特性に影響を及ぼすことにより、インビボでのその分子の有効性に負の影響を与える可能性がある。従って、FLLL32の可溶性を改良するため、スピロ環状環を含む少数の類似の誘導体を調製することもできる。
【0102】
[00148] その類似体(図26a)は、中心部のスピロ環状環の大きさ(5b、32、および33)および疎水性(34および35)のバリエーションによりジアルキル化類似体の系列(図19、実施例1.1.1参照)を補完する(compliment)ために設計されている。シクロペンタン誘導体5bは実施例目標1.1.1において記述されている。しかし、本発明者らは、この場合、小さな構造的変化(六員環から五員環へ)が予想されるlogP値に対してかなり大きな影響を有することも特筆する。本発明者らはここで、それはSTAT3にFLLL32とほぼ同じ結合エネルギーで結合すると信じる。
【0103】
[00149] シクロペンタン誘導体33はわずかにより疎水性が低いが、立体的にはそれもSTAT3の疎水性結合ポケットをふさぐことができるはずである。
【0104】
[00150] 最後に、そのポケットの全体的な大きさを決定するために、ジェミナルなジメチル置換基を含む化合物32を合成することができる。化合物34および35における複素原子の導入は、その水溶性をより著しく増大させることができる。
【0105】
[00151] 化合物35も、そのピペリジン窒素を最終的に癌細胞を選択的に標的とするように官能性をもたせることができるため、魅力的な化合物である。これらの化合物の合成は、図26b−スキーム5)において示されている置換反応を用いて成し遂げることができる。ジメトキシクルクミン(8)のアルキル化に必要な商業的に入手できるヨードエチルエーテルは購入することができ、一方で残りのアルキル化剤は確立された手順に従って合成することができる。
【0106】
[00152] 1.2.2. Leu706部位を標的とする:FLLL32の非対称な類似体。
【0107】
[00153] STAT3のLeu706部位を標的とすることにより、結合能力および選択性のさらなる向上を達成することができる。1つの芳香環の3位における比較的短いアルキル鎖(エチル<プロピル<イソブチル)の導入は、これらの分子のSTAT3に関する効力および選択性に深い作用を有する可能性がある。
【0108】
[00154] イソブチル側鎖を含む化合物36〜38は、図27b−スキーム6において図説されている代表的な合成計画に従って調製することができる。化合物39および40を調製してこれらの化合物の相対的な活性を36と直接比較することができる。
【0109】
[00155] 36の調製のための合成スキームを図27b−スキーム6において示す。商業的に入手できるイソ−バニリン(41)のアルキル化およびそれに続くWittigオレフィン化は、メチルケトン43を与えることができる。
【0110】
[00156] 図24c−スキーム4(実施例1.1.3)に類似したこのケトンのアシル化およびその中心部の炭素のアルキル化は36を与えることができる。
【0111】
[00157] 化合物37〜40を調製することができる。例えば、37の調製は、前に論じたように、アシル化の工程に関してBoc保護された酸塩化物の使用およびそれに続くBOC脱保護を必要とするであろう。そのベンズアルデヒド類の2,4−ペンタンジオンとの段階的な縮合は、これらの分子の調製のための代わりの戦略として用いることができる(実施例1.1.3)。実施例1.1において行われたうまく行く構造的修正を、これらの非対称な類似体の設計の中に組み込むことができる。
【0112】
[00158] 1.3. JAK/STAT阻害に関するクルクミンの薬理学的特性。
【0113】
[00159] QikProp(Schrodinger LLC)を用いて、FLLL31およびFLLL32のADME/Tox特性を、タモキシフェン、レトロゾール、ゲムシタビンおよびドキソルビシンと一緒に計算した。それぞれの化合物に関して50個の“薬らしさ(drug−likeness)”のパラメーターを評価した。際立って、FLLL31およびFLLL32化合物は両方とも高度に“薬らしい”特性を示す。
【0114】
[00160] FLLL31および32に関する選択された最も重要な部分には、以下のことが含まれる:1)タモキシフェンおよびゲムシタビンに類似した代謝安定性;2)レトロゾールおよびゲムシタビンに類似した極性;3)タモキシフェンおよびドキソルビシンに類似した複合的なlogP値;4)HERG Kチャンネルに関する予想されるIC50値はレトロゾールのIC50値に近く、タモキシフェンよりも優れている;5)予想されるCaco−2およびMCDK細胞透過性の値が優秀である(1,000を超える);6)予想される脳/血液分配係数が−1.8〜−0.8であり、それは優秀である;7)予想されるヒト血清アルブミンに対する結合の指数が0.4から0.8までの範囲であり、十分に−1.5〜1.5の推奨範囲内である;8)予想されるヒトの経口吸収百分率が97%から100%までの範囲である。全体的な指数に関して、FLLL32はシルニジピン(Cilnidipine)、ピロザジル(Pirozadil)、ミベフラジル(Mibefradil)、ビニフィブラート(Binifibrate)およびクロベノシド(Clobenoside)に80%類似している。全般的に言えば、これはジアルキル化クルクミン類似体は理にかなった薬理学的特性を有している可能性があることを示している。
【0115】
[00161] 1.3.1 構造類似体−スルファメート類およびホスフェート類
[00162] その化合物の経口での生物学的利用能および水溶性をそれぞれ改良するために、構造類似体の2つの部類であるスルファメート類およびホスフェート類(図28)を合成することもできる。さらに、本発明の発明者らはここで、これらの構造的修正は特定の態様に置いてそのフェノール部分の安定性を向上するために有用であると信じる。エストラジオールを含む様々なステロイド類のスルファメート誘導体は増大した吸収を示しており、それは増大した活性をもたらす。
【0116】
[00163] クルクミンFLLL1のビス−スルファメート誘導体(48、図29)は、MCF−7細胞に対する効力においてクルクミン自体と比較して4倍の増大を示す。類似のフェノール化合物における報告された成功に基づいて、他の可能性のある水可溶化基(water−solubilizing groups)の中からホスフェート誘導体が選択された。例えば、コンブレタスタチン(combretastatin)のホスフェートの二ナトリウム塩であるZybrestat(49)は重要な可溶性および安定性の問題を克服して抗癌剤として第III相臨床試験に進んでいる。
【0117】
[00164] 化合物51はこれらの化合物の合成のためのモデルとして有用である。51の合成は、3工程の手順を利用して達成された。クルクミンの1個のフェノール酸素のBoc誘導体としてのモノ保護(Mono−protection)は中程度の収率で成し遂げられた。炭酸カリウムの存在下での過剰量のヨードメタンによるこの生成物の処理は、結果として残りのフェノールのアルキル化および中心部の炭素のジアルキル化をもたらし、85%の収率で50を与えた。最後に、Boc基の熱分解による除去によるフェノールの脱保護は51を与えた。51の対応するスルファメート誘導体52へのさらなる変換は、スルファモイルクロリドで処理すれば成し遂げることができる(図29c−スキーム8、式1)。
【0118】
[00165] 51のその二ナトリウムホスフェート誘導体53への変換は、Pettitの手順に従って実施することができる(図33c−スキーム8、式2)。この場合、亜リン酸ジベンジルによる処理およびそれに続くヨウ化ナトリウムおよびクロロトリメチルシランを用いたベンジル保護基の除去は、その水溶性類似体を与えることができる。そのベンジル保護基を除去する試みが失敗する場合、Pettitにより利用された、類似のt−ブチルおよびトリメチルシリルエチル(trimethylsilly ethyl)(SEM)誘導体を導入および脱保護する代わりの手順を用いることができる。
【0119】
[00166] 1.3.2 シクロヘキシルを含む誘導体
[00167] 対応するシクロヘキシルを含む誘導体の合成は、図29d−スキーム9において図説されているように実施することができる。
【0120】
[00168] Boc保護されたクルクミン54は、フェノール酸素上で選択的にメチル化することができる。ジアゾメタンはクルクミンのジメトキシクルクミンへの変換に有用である。この実施例では、そのメチル化を行うためにより安全なトリメチルシリル−ジアゾメタンを用いることができる。代わりの戦略は、同じ変換を達成するためにベンゼン中の硫酸ジメチルおよび炭酸カリウムを用いる。55が手元にある場合、シクロヘキサン環を与えるためのアルキル化およびそれに続く脱保護を行うことができる。57のスルファメートおよびホスフェート誘導体への変換は、図29−スキーム8におけるジメチル化合物の変換に類似して成し遂げることができる。
【0121】
[00169] 1.3.3 追加の構造類似体
[00170] 図29eは化合物58に関する類似体の例を示す。図29fは化合物59に関する類似体の例を示す。
【0122】
[00171] 1.4. JAKおよびSTAT結合モデルの検証。
【0123】
[00172] その新規の小分子のJAK2触媒ドメインおよびSTAT3のSH2ドメインとの物理的相互作用を評価した。
【0124】
[00173] 1.4.1. SH2ドメインの精製。
【0125】
[00174] 完全長のマウスSTAT3をRT−PCRによりpcDNA3.1 CTGFP TOPTO中に、製造業者(Invitrogen)により指示されるようにクローニングし、それを用いて大腸菌DH5を形質転換した。SH2ドメイン(Y575−C687)のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合物を生成するために、その完全長のプラスミドをPCRの鋳型として、それぞれBamH1およびXho1制限部位を含む順方向プライマー5−GTAC−GGATCC−TAT ATC TTG GCC CTT TGG AA[配列番号:1]および逆方向プライマー5−GTCA−CTCGAG−CAG TAC TTT CCA AAT GCC TC[配列番号:2]と共に用いた。
【0126】
[00175] そのPCR産物およびpGEX 4T−3ベクター(Pharmacia)をBamH1およびXho1で消化し、ライゲーションしてSH2ドメインのC末端をGSTに融合させた。次いで大腸菌BL21をGST−STAT3−SH2または空のpGEX 4T−3プラスミドで形質転換し、IPTGで誘導した。細菌をPBS中で超音波処理し、1%トリトンx−100で抽出し、そのタンパク質をGSH−セファロース上で精製し、GSTに関してウェスタンブロットした。本発明者らは予想される分子量のGST−STAT3−SH2(Y575−C687)融合タンパク質(分子量40kDa)を作製した(ウェスタンは示していない)。
【0127】
[00176] 1.4.2. Jak2触媒ドメインの精製。
【0128】
[00177] その精製は公開された手順により行うことができる。ヒトJAK2のキナーゼドメイン(残基835〜1132)をpFastBacの中にクローニングすることができ、それはそのタンパク質がGST切断可能タグに融合されて発現されることを可能にする。JAK2挿入断片を含む組み換えバクミドDNAを単離し、Sf9昆虫細胞に形質移入することができる。その形質移入から得られたバキュロウイルスを用いて懸濁状態で2×10細胞/mLの密度まで増殖した昆虫Sf9細胞を10より大きい感染多重度で感染させ、感染の48時間後に回収することができる。細胞を完全プロテアーゼ阻害剤混合物(Roche Diagnostics、ドイツ、マンハイム)を補った20mMトリスHCl、pH8.5、250mM NaCl、0.5%thesit、5%グリセロール、および1mM DTTで構成される緩衝液中で再懸濁し、超音波処理により溶解し、45000gで1時間遠心分離することができる。その上清を濾過し、GST樹脂(Scientifix、オーストラリア、ヴィクトリア)上に再循環させることができる。大量の(extensive)洗浄の後、その融合タンパク質を溶離し、GST−JAK2を含む画分を集めて2mLに濃縮し、α−トロンビン(Sigma、ミズーリ州セントルイス)と共に4℃で一夜保温することができる。次いでそのタンパク質を20mMトリスpH8.5、250mM NaCl、および1mM DTT中で平衡化したSuperdex 75ゲル濾過カラム(HiLoad 16/60)上にロードすることができる。結晶化試験のためにJAK2を集めて10mg/mLに濃縮することができる。次いでハンギングドロップ蒸気拡散法を用いて、28%ポリエチレングリコール4000、0.2M酢酸アンモニウム、および0.1MシトレートpH6.0を含むリザーバー溶液で、20℃において結晶を成長させることができる。
【0129】
[00178] 1.4.3. Jak2/阻害剤およびSH2/阻害剤複合体の結晶構造。
【0130】
[00179] 精製されたJAK2およびSTAT3のSH2タンパク質を、文献において公開された結晶を生じた集中スクリーニング条件または疎行列(sparse matrix)スクリーニングのどちらかにより結晶化することができる。阻害剤は未変性の(native)結晶の中にしみ込ませるか、または未変性のタンパク質と共結晶化させるかのどちらであることもできる。その構造は、Jak2またはSH2のアポ構造をプローブとして用いる分子置換により解明することができる。
【0131】
[00180] 他の実施例との相互関係。
【0132】
[00181] 図30において示されているように、実施例IIで合成された類似体を、本明細書の実施例IIIにおいて記述されるように、向上した効力、阻害のJAK/STAT3特異性、細胞致死、および抗血管新生活性に関して試験することができ、細胞培養において活性であることが分かったそれらの化合物をヒト腫瘍異種移植モデルに供する(taken on)ことができる。さらに、実施例IIで合成された化合物を、本明細書の実施例IVにおいて記述されるように、向上したPDおよびPKパラメーターに関して試験することができる。
【0133】
[00182] 実施例III
[00183] 本発明における発明者らはここで、親化合物FLLL32はCAM中に移植されたSTAT3を過剰発現する乳癌細胞であるMDA−MB−231の血管密度を低減させることを示した(図15b)。従って、理論により束縛されることを望むわけではないが、本発明における発明者らはここで、選択的FLLL32類似体はVEGFにより仲介される血管新生において重要な抗血管新生活性を有するであろうと信じる。
【0134】
[00184] VEGFに仲介される血管新生の漿尿膜(CAM)アッセイ。
【0135】
[00185] CAMアッセイは抗血管新生剤に関する標準的なアッセイである。このアッセイにおいて、精製したVEGFを高度に血管新生化されたCAMに局所的に添加して血管新生を誘導する。次いでその膜の同じ局所的な領域に阻害剤を添加し、培養期間の後、そのCAMの処理された領域の血管密度を算出する。これらの試験において用いられたCAMアッセイは改変された。このアッセイにおいて、繁殖可能なレグホン種のニワトリの卵を、ほとんどの脈管形成が停止し、血管の形成が主に血管新生による時期である、10日培養まで成長させる。次いで血管新生促進因子であるヒトVEGF−165(100ng)を3mmの微生物試験円盤に飽和するまで添加し、その卵の上面に小さな穴を開けることによりCAMの上に置く。抗血管新生化合物をVEGF/bFGFの8時間後に同じ微生物試験円盤に飽和状態で添加し、胚をさらに40時間培養させる。48時間後、CAMを0.05%トリトンX−100を含む4%パラホルムアルデヒドで灌流し、処理した領域を取り囲むように切り取り、再度4%パラホルムアルデヒド中で固定し、パラホルムアルデヒド中のペトリ皿の上に置き、解剖顕微鏡およびCCD画像化システム(Retiga、バーナビー、バンクーバー)を用いてデジタル化された画像を得る。次いでデジタルのCAM画像に1×1cmの格子を加え、5〜7個の格子の内部の血管の平均数を血管分布の尺度として計数する。SU5416を抗血管新生活性の陽性対照として用いる。データをbFGF/VEGFを与えられたCAMのパーセントとしてグラフにし、2〜3回の別個の試験(n=5〜11)から、Prism3.0ソフトウェア(GraphPad)によるS字形用量反応関係分析を用いて、IC50の値を見積もる。
【0136】
[00186] CAM異種移植アッセイ。
【0137】
[00187] 上記のCAMアッセイのこの変形において、10DIのニワトリ胚に250,000個のMDA−MB−435転移性乳癌細胞をCAMの直下に、比較的無血管な(すなわち大きい血管から離れている)領域に移植する。次いで腫瘍移植の1日後に化合物をmg/kg基準で全身循環の中に、CAMの上に直接ピペットで移す。移植の3日後に、上記の本来のCAMアッセイにおけるようにCAMを固定し、腫瘍を取り囲むように切り取り、上記の本来のCAMアッセイにおいて記述されているように画像化する。さらに、固定したCAMを血管新生のマーカーであるVEGF、MMP−2およびMMP−9に対して免疫組織化学的に染色することができる。
【0138】
[00188] また、理論により束縛されることを望むわけではないが、本発明における発明者らはここで、FLLL32の新規類似体はSTAT3のリン酸化の上昇したレベルを有する乳癌細胞株において強力かつ選択的な活性を示すであろうと信じる。
【0139】
[00189] 実施例IV
[00190] クルクミン類似体阻害剤の薬物動態、代謝、および用量設定試験。
【0140】
[00191] 背景:クルクミンの薬物動態および代謝:
[00192] クルクミンは、アルキル鎖の還元ならびに芳香族ヒドロキシル基のグルクロン酸化および硫酸化を受ける。これは、いずれの経路により投与された場合でもクルクミンの低い生物学的利用能に寄与する。経口投与は、親化合物の代謝および乏しい腸吸収の両方により、特に低い。放射標識されたクルクミンを用いた研究は、ラットにおいて経口用量のおおよそ60%が吸収されることを示し、この百分率は10〜400mg/kgの用量で一定のままであった。吸収された物質の大部分は腸壁で代謝され、それは結果としてクルクミンの低い全身曝露をもたらす。同様に、グルクロン酸化および硫酸化された代謝産物を尿中で見出すことができるが、親化合物は尿中で見出されない。
【0141】
[00193] 新規阻害剤の薬物動態、代謝、および用量設定試験。
【0142】
[00194] クルクミンは急速に代謝され、そうしてそのインビボでの曝露を制限する。実施例IIにおいて記述したFLLL32類似体はケト型を維持しており、エノール型への互変異性化およびクルクミンの代謝的変換に関する主な経路である芳香族ヒドロキシル基のメチル化を妨げる(グルクロン酸化、硫酸化および還元は完全に妨げられる、または妨害されるであろう。
【0143】
[00195] 従って、本発明者はここで、FLLL32類似体の向上した生物学的利用能および組織吸収が存在し、そうしてインビボでの療法的濃度の達成が可能になるであろうと信じる。この向上した性質は、他のJAK2/STAT3阻害剤およびクルクミンと比較して活性および有効性を増大させるであろう。
【0144】
[00196] それぞれの化合物に関して、経口およびIP投与経路による生物学的利用能、PKの用量依存性、インビボでの分布および代謝(インビトロでの代謝を含む)、ならびにそれぞれの阻害剤の全般的な性質についての情報を含む、詳細なPKデータを生成することができる。集合的に、このデータは担腫瘍マウスにおける有効性の決定のための最適化された投与計画のモデリングおよび合理的な設計を可能にする。
【0145】
[00197] 本発明者らのアプローチは、長期有効性試験において最大耐用量を利用する典型的なアプローチとは大きく異なることは特筆すべきである。これらのアプローチはしばしば事前のPKの知識無しで適用され、そうして最適以下の投与スケジュールの選択または乏しいPK特性を有する化合物の継続した開発および評価の機会を増大させる。加えて、しばしば単一の投与計画を用いて多数の化合物が比較される。これらの化合物の間でPKが異なる場合、その比較は間違った結論をもたらす可能性がある。対照的に、本発明者らのアプローチはPKの関係を完全に特性付け、それぞれの化合物の有効性の決定に関して最大および許容可能な曝露が達成されることを保証する。
【0146】
[00198] 本発明は様々な、および好ましい態様に関連して記述されたが、当業者は、本発明の本質的な範囲から逸脱すること無く様々な変更がなされてよくその要素を均等物で置換してよいことを理解するべきである。加えて、個々の状況または材料を本発明の教示に適応させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱すること無く多くの修正がなされてよい。
【0147】
[00199] 従って、本発明はこの発明を実行するために考えられた本明細書で開示した特定の態様に限定されず、本発明は特許請求の範囲内に入る全ての態様を含むことを意図する。
【0148】
[00200] 本発明を明らかにする、または本発明の実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で用いられている刊行物および他の資料を本明細書に援用し、便宜のためにそれらを下記の参考文献一覧において提供する。
【0149】
[00201] 本明細書で列挙された文書のいずれの引用も、前述のもののいずれかが関係する先行技術であるという自認として意図するものでは無い。これらの文書の全ての日付に関する記載または内容に関する表現は出願者に利用可能な情報に基づくものであって、これらの文書の日付または内容の正確さに関する自認を構成するものでは全く無い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図2a、図2bおよび図2cにおいて示されている、クルクミン類似体FLLL31。
【請求項2】
図2、図2bおよび図2cにおいて示されている、クルクミン類似体FLLL32。
【請求項3】
系列1のジアルキル化ジメトキシクルクミン類似体1a、2a、3a、4a、5a、6a、および系列2のジアルキル化ジメトキシクルクミン類似体1b、2b、3b、4b、5b、6bを含む、図19bにおいて示されている、クルクミン類似体。
【請求項4】
図19c−表3において示されている、クルクミン類似体。
【請求項5】
図19d−表4において示されている、クルクミン類似体7。
【請求項6】
図19e−スキーム1において示されている、クルクミン類似体8。
【請求項7】
図19e−スキーム1において示されているスキーム1を用いて合成すること、または系列2の類似体を合成することを含む、クルクミン類似体を作るための方法。
【請求項8】
図19f−スキーム2において示されている、クルクミン類似体11。
【請求項9】
図19f−スキーム2において示されている、中間体クルクミン化合物9および10。
【請求項10】
図19f−スキーム2において示されているスキーム2の類似体または系列1の類似体を用いて合成することを含む、クルクミン類似体を作るための方法。
【請求項11】
図19g−表5において示されている、クルクミン類似体FLLL11、FLLL12、FLLL13、FLLL14、FLLL22、FLLL23。
【請求項12】
図20において示されている芳香族置換基12、13、14、15、16、17、18、19、20を有する、クルクミン類似体。
【請求項13】
図21において示されているベンズアルデヒド芳香族置換基21、22、23を有する、クルクミン類似体。
【請求項14】
図22において示されている、メトキシ(およびヒドロキシ)基のみを含むモノ−、ジ−、およびトリ−置換ベンズアルデヒド置換基を有する、クルクミン類似体。
【請求項15】
図23aにおいて示されている、クルクミン類似体24および25。
【請求項16】
図23aにおいて示されている、クルクミン類似体28a、28b、24、25、29b。
【請求項17】
図23bにおいて示されているスキーム3を用いて合成することを含む、クルクミン類似体を作るための方法。
【請求項18】
図23c−スキーム4において示されている、クルクミン類似体8。
【請求項19】
図23cにおいて示されているスキーム4を用いて合成することを含む、クルクミン類似体を作るための方法。
【請求項20】
図25aにおいて示されているシクロヘキシル誘導体6aを含む、クルクミン類似体。
【請求項21】
図26aにおいて示されている、クルクミン類似体6b、5b、32、33、34、35。
【請求項22】
図26bにおいて示されている、クルクミン類似体。
【請求項23】
図26bにおいて示されているスキーム5を用いて合成することを含む、クルクミン類似体を作るための方法。
【請求項24】
図27aにおいて示されている、クルクミン類似体36、37、38、39、40。
【請求項25】
図27b−スキーム6において示されている、中間体クルクミン化合物。
【請求項26】
図27bにおいて示されているスキーム6を用いて合成することを含む、クルクミン類似体を作るための方法。
【請求項27】
図28において示されている、クルクミン類似体46、47。
【請求項28】
図29aにおいて示されている、クルクミン類似体48、49。
【請求項29】
図29b−スキーム7において示されている、クルクミン類似体50、51。
【請求項30】
図29b−スキーム7において示されている、中間体クルクミン化合物。
【請求項31】
図29c−スキーム8において示されている、クルクミン類似体52,53。
【請求項32】
図29cにおいて示されているスキーム8を用いて合成することを含む、クルクミン類似体を作るための方法。
【請求項33】
図29d−スキーム9において示されている、クルクミン類似体54、55、56、57。
【請求項34】
図29d−スキーム9において示されている、中間体クルクミン化合物。
【請求項35】
図29において示されているスキーム9を用いて合成することを含む、クルクミン類似体を作るための方法。
【請求項36】
図29eにおいて示されている、クルクミン類似体58。
【請求項37】
図33fにおいて示されている、クルクミン類似体59。
【請求項38】
前記の請求項のいずれか1項に記載の少なくとも1種類のクルクミン類似体の医薬組成物。
【請求項39】
前記の請求項のいずれか1項に記載の少なくとも1種類のクルクミン類似体を投与することにより、それを必要とする対象においてJAKおよびSTATの1種類以上の活性を調節することを含む、癌に関連する疾患を処置する方法。
【請求項40】
前記の請求項のいずれか1項に記載のクルクミン類似体の1種類以上を投与することを含む、それを必要とする対象においてJAK/STATシグナル伝達を阻害するための方法。
【請求項41】
前記の請求項のいずれか1項に記載のクルクミン類似体の1種類以上を含む、化学療法的組成物。
【請求項42】
前記の請求項のいずれか1項に記載のクルクミン類似体の1種類以上を含む、化学予防的組成物。
【請求項43】
有効量の前記の請求項のいずれか1項に記載の少なくとも1種類のクルクミン化合物を含む組成物であって、その有効量の化合物が細胞中でSTAT3のリン酸化を阻害することができる、前記組成物。
【請求項44】
対象において癌を処置するための、または癌の発生もしくは再発を予防するための方法であって、以下:
その対象に有効量の前記の請求項のいずれか1項に記載の少なくとも1種類のクルクミン類似体化合物を投与する、
ことを含み、その有効量の化合物がその対象の特定の細胞中でSTAT3リン酸化シグナル伝達経路を阻害することができる、前記方法。
【請求項45】
異常なSTAT3シグナル伝達を有する対象においてSTAT3のリン酸化を阻害するための方法であって、以下の:
i)その対象においてそのシグナル伝達が異常であるかどうかを決定し;そして
ii)その対象に、前記の請求項のいずれか1項に記載のSTAT3のリン酸化を阻害するクルクミン化合物を投与する;
ことを含む、前記方法。
【請求項46】
癌を処置または予防するための可能性のある療法剤のスクリーニングの方法であって、該方法は以下の工程:
i)損なわれていないSTAT3シグナル伝達経路を有する細胞を、候補分子と接触させ;
ii)STAT3シグナル伝達経路の活性化の変化を監視し;
iii)その分子がSTAT3シグナル伝達経路を阻害することができるかどうかを決定し;そして
iv)それがSTAT3シグナル伝達経路を阻害することができると決定された場合、その分子を可能性のある療法剤として同定する;
を含む、前記方法。
【請求項47】
前記の請求項のいずれか1項に記載のクルクミン類似体コンジュゲートおよび少なくとも1種類の医薬的に許容できるキャリヤーを含む、医薬組成物。
【請求項48】
それを必要とする対象における癌、糖尿病、および炎症性疾患から選択される疾患の処置または予防の方法であって、該方法は以下:
その対象に療法上有効量の前記の請求項のいずれか1項に記載のクルクミン類似体コンジュゲートを投与する;
ことを含む、前記方法。
【請求項49】
その疾患が癌である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
その疾患が乳癌である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
その疾患が膵臓癌である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
以下:
i)ニワトリ胚の漿尿膜(CAM)の下に、主要な脈管から離れた位置に癌細胞を移植し;
ii)そのCAMを、許容される用量の試験している組成物で、その移植位置から遠位の領域において投与することにより処置し;
iii)移植の領域を取り囲むように切り取り、そして
iv)切り取られたCAMを画像化する
ことを含む、中間的全身性インビボ異種移植系。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図19−3】
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【図19−4】
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【図19−5】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29−1】
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【図29−2】
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【図29−3】
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【公表番号】特表2012−524106(P2012−524106A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506215(P2012−506215)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/031207
【国際公開番号】WO2010/121007
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(593172050)ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション (33)
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】