説明

互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造及びその製造方法

【課題】本発明の課題は、強度や剛性に優れた閉断面形状を容易に、しかも安価なコストで形成することができ、充分な接合強度を発揮しながら互いに異なる材質成分の金属部品同士を一体化することができる一体化構造を提供することにある。
【解決手段】ステアリングコラム取り付け部20を支持させるこのステアリングコラム取り付け部20とは異なった材質成分のステアリングハンガービーム10を複数部品に分割し、複数部品のうちの一部の部品11bを軽金属で鋳包んでステアリングコラム取り付け部20を軽金属ダイキャスト成形品として一体化すると共に、ステアリングコラム取り付け部20と一体化した当該複数部品のうちの一部の部品11bと、前記複数部品うちの残りの部品11a,11cとを接合したことを特徴とする一体化構造としてのステアリングハンガー1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の軽量化を図るためにアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属を使用した車体部品が知られており、例えば特許文献1には、ダイキャストで製造したステアリングハンガーが開示されている。
このステアリングハンガーは、車室の前方でステアリングを支持するものであって、車体の幅方向に延設されて車体に取り付けられたステアリングハンガービームと、ステアリングホイールを左右のいずれに配置するかに応じてステアリングハンガービームの適所に設けられたステアリングコラム取り付け部とを備えている。このステアリングハンガーは、ステアリングコラムをボルト等の所定の締結具でステアリングコラム取り付け部に固定している。
【0003】
特許文献1のステアリングハンガーは、前記したように軽金属のダイキャストで製造されることによって、ステアリングハンガービームとステアリングコラム取り付け部とが金型内で一体成形される。したがって、このステアリングハンガーによれば、ステアリングハンガービームに別部材のステアリングコラム取り付け部を溶接等で接合する必要がないので、製造の工数が減って製造コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4109390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の車体部品(例えば、特許文献1参照)のように、軽金属を使用したダイキャストで車体部品を製造しようとすると、中空構造のような閉断面形状を形成しづらいことから強度や剛性を充分に確保できない問題があった。
【0006】
また、前記したステアリングハンガーのような比較的大きな車体部品をダイキャストで製造しようとすると、金型が大きくなると共に使用する軽金属の量も多くなって製造コストが著しく高くなる問題もあった。
【0007】
そこで、車体部品を、軽金属で形成される部分と軽金属よりも安価な、例えば鋼材で形成される部分とに分けて製造し、これらを溶接で接合して車体部品を組み立てることも考えられる。
しかしながら、軽金属と鋼材のように、互いに異なる材質成分の金属部品同士を溶接で接合しようとすると、互いに同じ材質成分の金属部品同士を溶接する場合と異なって、車体部品として要求される接合強度が得られないという新たな問題が生じる。
【0008】
本発明の課題は、強度や剛性に優れた閉断面形状を容易に、しかも安価なコストで形成することができ、充分な接合強度を発揮しながら互いに異なる材質成分の金属部品同士を一体化することができる一体化構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決した本発明は、第1材質部品を支持させるこの第1材質部品とは異なった材質成分の第2材質部品を複数部品に分割し、前記複数部品のうちの一部の部品を軽金属で鋳包んで前記第1材質部品を軽金属ダイキャスト成形品として一体化すると共に、前記第1材質部品と一体化した当該複数部品のうちの一部の部品と、前記複数部品うちの残りの部品とを接合したことを特徴とする互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造である。
なお、ここで「第2材質部品を複数部品に分割し」の意味は、第2材質部品を複数部品に予め分けて各々製造する意味を主とするが、一体となっている第2材質部品を複数部品に切断する意味も含んでいる。
このような一体化構造によれば、軽金属を使用するので軽量化を図ることができる。
また、このような一体化構造によれば、第2材質部品を複数部品に分割し、分割した一部の部品を軽金属で鋳包むので、最初から全体構造を軽金属で鋳込むものと異なって、金型を小型化できると共に高価な軽金属の使用量が少なくなって製造コストの低減を図ることができる。つまり、この一体化構造によれば、軽量化の度合いと製造コストのバランスを調節することができる。
また、このような一体化構造によれば、第1材質部品を鋳包みで一体化させた第2材質部品の一部の部品に対して、同じ材質成分の第2材質部品の残りの部品を接合することになるので、異種金属同士を接合するものと比較して溶接による接合が容易になると共に接合強度が格段に向上する。
【0010】
また、この一体化構造においては、前記第1材質部品はステアリングコラム取り付け部であり、前記第2材質部品はステアリングハンガービームであって、複数部品に分割した前記ステアリングハンガービームの一部の部品を軽金属で鋳包んで前記ステアリングコラム取り付け部を形成した構成であってもよい。
ここでの一体化構造としてのステアリングハンガーによれば、ステアリングコラム取り付け部と、ステアリングハンガービームとの溶接等による接合が不要となるので、例えばステアリングハンガービームを鋼材からなるパイプで形成し、ステアリングコラム取り付け部を、軽金属を使用したダイキャストで製造するように、互いに異なる材質成分の金属部品同士を一体化することができる。その結果、この一体化構造によれば、軽金属で製造すべき部品を適宜に選択して自由に設計できるので、ステアリングハンガーの製造コストと軽量化とのバランスといった車体部品の設計自由度の幅が一段と拡大する。
【0011】
また、この一体化構造においては、前記ステアリングコラム取り付け部によって鋳包まれた前記ステアリングハンガービームの一部の部品は、断面視で非真円形であると共に、凹形状及び凸形状の少なくともいずれかを有した構成であってもよい。
このような一体化構造によれば、ステアリングハンガービームの断面が非真円形となっているので、ステアリングコラム取り付け部に対してステアリングハンガービームがその軸周りに回動するのを確実に防止することができる。また、このような一体化構造によれば、ステアリングハンガービームが鋳包み部分で凹形状及び凸形状の少なくともいずれかの形状となっているので、ステアリングコラム取り付け部に対してステアリングハンガービームがその軸方向に移動するのを確実に防止することができる。また、このような一体化構造によれば、ステアリングハンガービームが鋳包み部分で凹形状及び凸形状の少なくともいずれかの形状となっているので、軽金属による鋳包みの際の圧力に対抗する充分な強度及び剛性を発揮することができる。
【0012】
また、この一体化構造においては、前記ステアリングコラム取り付け部によって鋳包まれた前記ステアリングハンガービームの一部の部品はアンカー部材を別体で備え、前記アンカー部材は前記ステアリングコラム取り付け部によって鋳包まれるアンカー穴を有しており、前記アンカー部材は前記ステアリングハンガービームに取り付けられている構成であってもよい。
このような一体化構造によれば、ステアリングコラム取り付け部によって鋳包まれるアンカー穴を有するアンカー部材がステアリングハンガービームに取り付けられているので、ステアリングコラム取り付け部に対してステアリングハンガービームがその軸周りに回動するのを、より確実に防止することができると共に、ステアリングコラム取り付け部に対してステアリングハンガービームがその軸方向に移動するのを、より確実に防止することができる。また、このような一体化構造によれば、アンカー部材がステアリングハンガービームに取り付けられているので、軽金属による鋳包みの際の圧力に対抗する充分な強度及び剛性を発揮することができる。
【0013】
また、この一体化構造においては、前記第2材質部品は中空部材であって、前記第1材質部品によって鋳包まれた前記第2材質部品の内側には隔壁が設けられている構成であってもよい。
このような一体化構造によれば、第2材質部品の内側に隔壁が設けられているので、軽金属による鋳包みの際の圧力に対抗する充分な強度及び剛性を発揮することができる。
【0014】
そして、前記課題を解決した本発明の製造方法は、第1材質部品を支持させるこの第1材質部品とは異なった材質成分の第2材質部品を軽金属で鋳包んで前記第1材質部品を軽金属ダイキャスト成形品として前記第2材質部品と一体化した互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造の製造方法であって、前記第2材質部品が中空であり、この第2材質部品を予め複数部品となるように分割して各々製造する工程と、複数部品に分割した前記第2材質部品の一部の部品における中空部に中子を配置した後にこれを前記第1材質部品の外形を模ったキャビティを有する金型内に配置する工程と、前記金型内に軽金属を注湯して前記第1材質部品によって鋳包まれた前記第2材質部品の一部の部品を形成する工程と、前記第1材質部品で鋳包まれて前記第1材質部品と一体化した前記第2材質部品の一部の部品を離型すると共に前記中子を取り出す工程と、前記中子を取り出した前記第2材質部品の一部の部品と、複数部品に分割した前記第2材質部品の残りの部品とを接合する工程と、を有することを特徴とする。
このような製造方法によれば、中空の第2材質部品に対して鋳包みで第1材質部品を形成する際に、第2材質部品の中空部に中子が配置されるので、軽金属による鋳包みの際に第2材質部品が充分な強度及び剛性を発揮することができる。
【0015】
また、この製造方法においては、前記第1材質部品によって鋳包まれる前記第2材質部品の一部は、両端が開口したパイプ形状を有していると共に軸方向に沿って並ぶ複数のアンカー穴が中空部に連通するように設けられており、前記中子は外形が略円柱形状を有すると共に前記アンカー穴の位置に対応して軸方向に延びるように溝が形成されている構成であってもよい。
このような製造方法によれば、前記した製造方法と同様の効果を奏するほか、中空の第2材質部品に対して鋳包みで第1材質部品を形成する際に、第2材質部品のアンカー穴に軽金属が鋳込まれるので、ステアリングコラム取り付け部に対してステアリングハンガービームがその軸周りに回動するのを、より確実に防止することができると共に、ステアリングハンガービームの軸方向に移動するのを、より確実に防止することができる。
また、このような製造方法では、前記したように、第2材質部品に対して鋳包みで第1材質部品を形成した際にアンカー穴内に軽金属が鋳込まれる。この際、本発明の製造方法によれば、中子が略円柱形状であって、アンカー穴の位置に対応して軸方向に延びるように溝が形成されているので、パイプ形状をした第2材質部品の両端から中子を容易に抜き取ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、強度や剛性に優れた閉断面構造を容易に、しかも安価なコストで製造することができ、所定の接合強度を発揮しながら互いに異なる材質成分の金属部品同士を一体化することができる一体化構造及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るステアリングハンガー(一体化構造)の斜視図であり、仮想線で描かれたステアリングホイール及びステアリングコラムを含む図である。
【図2】第1実施形態に係るステアリングハンガー(一体化構造)の断面図であり、図1のII−II断面に対応する図である。
【図3】(a)は金型内に配置したステアリングハンガービーム(第2材質部品)の一部の部品を鋳包む様子を示す概念図であり、図1のII−II断面に対応する断面で表した図、(b)は(a)のIII−III断面図である。
【図4】(a)は金型内に配置したステアリングハンガービーム(第2材質部品)の一部の部品を鋳包む様子であって、当該部品の中空部に中子を配置した様子を示す概念図、(b)は(a)のIV−IV断面図である。
【図5】(a)は、第2実施形態に係るステアリングハンガー(一体化構造)に使用されるステアリングハンガービーム(第2材質部品)の部分斜視図であり、ステアリングコラム取り付け部(第1材質部品)が取り付けられる部分を拡大して表した図、(b)は金型内に配置したステアリングハンガービーム(第2材質部品)の一部の部品を鋳包む様子を示す概念図であり、(a)のVb−Vb断面図、(c)は(b)のVc−Vc断面図である。
【図6】(a)は第3実施形態に係るステアリングハンガー(一体化構造)に使用されるステアリングハンガービーム(第2材質部品)の部分斜視図であり、ステアリングコラム取り付け部(第1材質部品)が取り付けられる部分を拡大して表した図、(b)は金型内に配置したステアリングハンガービーム(第2材質部品)の一部の部品を鋳包む様子を示す概念図であり、(a)のVI−VI断面に対応する図である。
【図7】(a)は金型内に配置した第4実施形態に係るステアリングハンガービーム(第2材質部品)の一部の部品を鋳包む様子を示す概念図、(b)は(a)のVII−VII断面図である。
【図8】第5実施形態に係るステアリングハンガー(一体化構造)に使用されるステアリングハンガービーム(第2材質部品)の部分斜視図であり、ステアリングコラム取り付け部(第1材質部品)が取り付けられる部分を拡大して表した図である。
【図9】(a)は金型内に配置したステアリングハンガービーム(第2材質部品)の一部の部品を鋳包む様子を示す概念図であり、図8のIXa−IXa断面に対応する図、(b)は(a)のIXb−IXb断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態においては、一体化構造としてのステアリングハンガーについて説明する。
このステアリングハンガーは、車両(自動車)の車室の前方でステアリングを支持するものであって、後記するように、車体の幅方向に延設されて車体に取り付けられるステアリングハンガービームと、ステアリングコラムを固定するステアリングコラム取り付け部とを備えている。そして、本実施形態でのステアリングハンガーは、後記するように、鋼材からなるステアリングハンガービームの一部をマグネシウム合金、アルミニウム合金等の軽合金をはじめとする各種軽金属で鋳包むようにしてステアリングコラム取り付け部を形成したことを主な特徴点としている。
なお、ここでは互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造として、車体部品のステアリングハンガーを例にとって説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば車両用のボディ本体、車体フレーム、サブフレーム、サスペンション等の広義の車体部品に適用することができ、更には航空機、船舶、その他の産業機械等の全ての機械構造に適用することができる。
【0019】
以下に、本発明の一体化構造の第1実施形態から第5実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明するが、説明における前後左右上下の方向は、これらの実施形態に係るステアリングハンガーが搭載される車両(自動車)の前後左右上下の方向に一致させた図1の各方向を基準とする。
【0020】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係るステアリングハンガー1は、ステアリングハンガービーム10とステアリングコラム取り付け部20とを備えている。
なお、ステアリングコラム取り付け部20は、特許請求の範囲にいう「第1材質部品」に相当し、ステアリングハンガービーム10は、特許請求の範囲にいう「第2材質部品」に相当する。
【0021】
本実施形態でのステアリングハンガービーム10は、車両の幅方向に延びる中空の管部材であって、その断面形状は真円形となっている。このステアリングハンガービーム10は鋼材で形成されている。
ステアリングハンガービーム10は、車両の左側から右側に向かって3つの部品11a,11b,11cがこの順番で配置されている。これらの部品11a,11b,11cは、特許請求の範囲にいう「複数部品」に相当する。
これらの部品11a,11b,11c同士は、相互に溶接で接合されて一体となっている。
更に詳しく説明すると、図2に示すように、部品11bの両端部にはこの部品11bの内径と略同寸法に外径が縮径した部品11aの左端部、及び部品11cの右端部とが嵌合している。そして、部品11aと部品11bとの合せ目、及び部品11bと部品11cとの合せ目には、アーク溶接が施されている。図2中の符号16は溶接ビードである。
【0022】
また、図1に示すように、部品11aの左端部及び部品11cの右端部にはフランジ12a及びフランジ12bがそれぞれ形成されている。そして、部品11cの左端部にはステー13が下方に延びるように設けられている。
ちなみに、フランジ12a,12bは車両の両側に配置されるフロントピラー(図示省略)に取り付けられ、ステー13の下端部はフロントフロアトンネル(図示省略)に取り付けられることでステアリングハンガービーム10を車体に固定することとなる。
ステアリングハンガービーム10の部品11bには次に説明するステアリングコラム取り付け部20が設けられている。
【0023】
図1に示すように、ステアリングコラム取り付け部20は、ステアリングホイール3を左右のいずれに配置するかに応じてステアリングハンガービーム10の適所に設けられている。ちなみに、本実施形態に係るステアリングハンガー1は、いわゆる左ハンドル車に適用するものであって、ステアリングコラム取り付け部20がステアリングハンガービーム10の左側寄りに位置するように配置されている。したがって、ステアリングハンガービーム10の部品11cは、部品11aよりも長くなるように形成されている。
【0024】
ステアリングコラム取り付け部20は、ステアリングコラム2をステアリングハンガービーム10に取り付けるものであって、ステアリングハンガービーム10に支持されている。
このステアリングコラム取り付け部20は、図1及び図2に示すように、中空のステアリングハンガービーム10(部品11b)の周面を所定の厚さで取り巻くように形成された略円筒形状の軸部21と、この軸部21から略前後方向に延出する板状体であってステアリングコラム2を支持する延出部22(図1参照)と、延出部22の板面と軸部21の周面とに跨るように立設された複数の板状体で形成される補強部23とを備えている。ちなみに、ステアリングコラム2は、図1に示すように、延出部22の下面側に配置されると共に延出部22に対してボルト等の所定の締結具24で固定されている。
【0025】
このようなステアリングコラム取り付け部20は、ステアリングハンガービーム10の部品11bを鋳包むように形成された軽金属のダイキャスト成形品である。なお、軽金属としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム合金、アルミニウム合金等が挙げられる。
【0026】
次に、ステアリングハンガー1の製造方法について説明する。
この製造方法では、ステアリングハンガービーム10が予め3つの部品11a,11b,11c(複数部品)に分けて製造される。これらの部品11a,11b,11cの製造方法としては、例えば圧延、押し出し、溶接・鍛接等の公知のパイプの製造方法が挙げられる。この工程は、特許請求の範囲にいう「第2材質部品を予め複数部品となるように分割して各々製造する工程」に相当する。
【0027】
次に、このステアリングハンガー1の製造方法では、図3(a)及び(b)に示すように、ステアリングハンガービーム10の部品11bが、ステアリングコラム取り付け部20(図2参照)の外形を模ったキャビティを有する金型31内に配置されると共にこの金型31内に軽金属30の溶湯が図示しない湯口を介して圧入される。この工程は、特許請求の範囲にいう「複数部品に分割した第2材質部品の一部の部品を第1材質部品の外形を模ったキャビティを有する金型内に配置する工程」、及び「金型内に軽金属を注湯して第1材質部品によって鋳包まれた第2材質部品の一部の部品を形成する工程」に相当する。
これらの工程を経ることで、金型31内には、ステアリングハンガービーム10の部品11bを軽金属30が鋳包むようにしてステアリングコラム取り付け部20が形成される。
なお、図3(a)及び(b)中、符号21は軸部であり、符号22は延出部であり、符号23は補強部であり、符号31bは固定型であり、符号31aは可動型である。
【0028】
次に、この製造方法では、軽金属30を所定の温度まで冷却した後に金型31からステアリングコラム取り付け部20で鋳包んだ部品11bを取り出す。この工程は、特許請求の範囲にいう「第1材質部品で鋳包まれて第1材質部品と一体化した第2材質部品の一部の部品を離型する工程」に相当する。
【0029】
そして、図2に示すように、部品11bに対して部品11a及び部品11cを溶接で接合して一体化することでステアリングハンガービーム10を形成すると共に、ステアリングハンガービーム10にフランジ12a,12b及びステー13を溶接で接合することによって本実施形態に係るステアリングハンガー1が完成する。この工程は、特許請求の範囲にいう「第2材質部品の一部の部品と、複数部品に分割した第2材質部品の残りの部品とを接合する工程」に相当する。
【0030】
また、このようなステアリングハンガー1の製造方法においては、金型31内に軽金属30の溶湯を圧入する際に、図4(a)及び(b)に示すように、ステアリングハンガービーム10の中空内に中子34,34を配置してもよい。
なお、図4(a)及び(b)中、符号21は軸部であり、符号22は延出部22であり、符号23は補強部23であり、符号31bは固定型であり、符号31aは可動型である。
更に詳しく説明すると、この製造方法では、図4(a)及び(b)に示すように、部品11bの内径と略同じ外径の円柱形状を有する一対の中子34,34が、部品11bの中空部に両端からそれぞれ挿嵌されることとなる。
【0031】
次に、本実施形態に係るステアリングハンガー1の作用効果について説明する。
このようなステアリングハンガー1によれば、軽金属30を使用するので軽量化を図ることができる。
【0032】
また、このようなステアリングハンガー1によれば、ステアリングハンガービーム10に対して鋳包むようにステアリングコラム取り付け部20を形成するので、ステアリングハンガービーム10に対してステアリングコラム取り付け部20を溶接によって接合する必要がない。
【0033】
また、このようなステアリングハンガー1によれば、ステアリングコラム取り付け部20と、ステアリングハンガービーム10との溶接等による接合が不要となるので、前記したように、例えばステアリングハンガービーム10を鋼材からなるパイプで形成し、ステアリングコラム取り付け部20を、軽金属30を使用したダイキャストで製造するように、互いに異なる材質成分の金属部品同士を一体化することができる。その結果、このステアリングハンガー1によれば、軽金属30で製造すべき部品を適宜に選択して自由に設計できるので、ステアリングハンガー1の製造コストと軽量化とのバランスの自由度といった設計自由度の幅が一段と拡大する。
【0034】
また、このようなステアリングハンガー1によれば、ステアリングハンガービーム10を部品11a,11b,11cの複数部品に分割し、分割した一部の部品11bを軽金属30で鋳包むので、ステアリングハンガービーム10の全体を軽金属30で鋳込むものと異なって、金型31を小型化できると共に高価な軽金属30の使用量が少なくなって製造コストの低減を図ることができる。
また、金型31を小型化できるので、軽金属30の金型31内での溶湯の流動制御が簡単になって、空気の巻き込み等が少なくなる。
【0035】
また、このようなステアリングハンガー1によれば、ステアリングコラム取り付け部20を鋳包みで形成したステアリングハンガービーム10の一部の部品11bに対して、同じ材質成分のステアリングハンガービーム10の残りの部品11a及び部品11cを接合することになるので、異種金属同士を接合するものと比較して溶接による接合が容易になると共に接合強度が格段に向上する。
【0036】
また、ステアリングハンガー1の前記した製造方法によれば、ステアリングハンガービーム10の部品11bに対してステアリングコラム取り付け部20を鋳包むことで形成するので、ステアリングハンガー1を容易に製造することができる。
【0037】
また、部品11bの中空部に中子34,34を配置する製造方法によれば、金型31内に軽金属30の溶湯が圧入される際に、部品11bが充分な強度及び剛性を発揮するので、つまり、圧入される軽金属30の溶湯で部品11bが変形することが防止されるので、軸部21の厚さが変動しない。また、部品11bが充分な強度及び剛性を発揮するので、ステアリングハンガービーム10の肉厚が薄くても、湯圧で部品11bが潰れることを防止することができる。つまり、ステアリングハンガービーム10の肉厚を低減することができる。その結果、ステアリングハンガー1の更なる軽量化を図ることができる。
なお、本実施形態においては、部品11a,11b,11cをそれぞれ分けて製造しているが、一体となっているステアリングハンガービーム10を切断して部品11a,11b,11cを形成してもよい。
また、本実施形態においては、ステアリングハンガービーム10(第2材質部品)を鋼材で形成し、ステアリングコラム取り付け部20(第1材質部品)を軽金属のダイキャスト成形品で形成することを想定しているが、本発明は第1材質部品と第2材質部品とが相互に異なる材質成分であればよく、例えば、第1材質部品と第2材質部品とが相互に溶接接合が困難な異なる材質成分の軽金属同士であってもよいし、相互に溶接接合が困難な異なる材質成分の鋼材同士であってもよい。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るステアリングハンガー1について説明する。
ここで参照する図5(a)は、第2実施形態に係るステアリングハンガーに使用されるステアリングハンガービームの部分斜視図であり、ステアリングコラム取り付け部が取り付けられる部分を拡大して表した図である。なお、図5(a)中、ステアリングコラム取り付け部は、仮想線(二点鎖線)で表している。そして、ここでは、前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0039】
この第2実施形態においては、図5(a)に示すように、ステアリングハンガービーム10の形状が前記第1実施形態のものと異なっており、このステアリングハンガービーム10を鋳包むようにステアリングコラム取り付け部20が形成された以外は第1実施形態と同様にステアリングハンガー1が構成されている。したがって、図5(a)には図示されていないが、ステアリングハンガービーム10の部品11aの左端部及び部品11cの右端部にはフランジ12a及びフランジ12b(図1(a)参照)がそれぞれ形成されている。そして、部品11cの左端部にはステー13(図1(a)参照)が下方に延びるように設けられている。
【0040】
図5(a)に示すステアリングハンガービーム10の断面形状は、非真円形となっており、具体的には、略D字形状となっている。ちなみに、前記した「非真円形」は、この第2実施形態における略D字形状に限定されずに、楕円形状、多角形状、直線や曲線で形成される真円以外の閉断面形状等が挙げられる。
【0041】
そして、ステアリングハンガービーム10の部品11bは、その周面を取り巻くように環状の突出部17が一対形成されている。この突出部17は、部品11bを構成する管部材が部分的に径方向外側に膨らむように形成されたいわゆるビード状になっている。なお、突出部17は、特許請求の範囲にいう「凸形状」を構成している。
この突出部17は、後記するようにステアリングコラム取り付け部20の軸部21(図5(b)参照)に鋳包まれることとなる。
ちなみに、ここではビード状の突出部17を有するものについて説明したが、突出部17は、突起状や柱状のものであってもよい。
【0042】
また、突出部17に代えて又は突出部17と共に、凹部を部品11bの周面に有するものであってもよい。そして、この凹部は、溝状であってもよいし、穴状であってもよい。このような凹部は、特許請求の範囲にいう「凹形状」を構成することとなる。
【0043】
次に、この第2実施形態に係るステアリングハンガー1の製造方法について説明する。
この製造方法では、前記第1実施形態での製造方法と同様に、ステアリングハンガービーム10が予め3つの部品11a,11b,11c(複数部品)に分けて製造され、部品11bが金型内に配置される。
ここで参照する図5(b)は金型内に配置したステアリングハンガービームの一部の部品を鋳包む様子を示す概念図であり、図5(a)のVb−Vb断面図、図5(c)は図5(b)のVc−Vc断面図である。
【0044】
図5(b)及び(c)に示すように、ステアリングハンガービーム10の部品11bが、ステアリングコラム取り付け部20(図2参照)の外形を模ったキャビティを有する金型31内に配置されると共にこの金型31内に軽金属30の溶湯が図示しない湯口を介して圧入される。
その結果、金型31内には、ステアリングハンガービーム10の部品11bを軽金属30が鋳包むようにしてステアリングコラム取り付け部20が形成される。
この際、突出部17,17は、軸部21に鋳包まれる。
なお、図5(b)及び(c)中、符号22は延出部22であり、符号23は補強部23であり、符号31bは固定型であり、符号31aは可動型である。
【0045】
そして、この製造方法では、第1実施形態での製造方法と同様に、金型31からステアリングコラム取り付け部20で鋳包んだ部品11bを取り出すと共に、部品11bに対して部品11a、及び部品11c、並びに図1に示すフランジ12a,12b及びステー13を接合することによってステアリングハンガー1が完成する。
【0046】
次に、本実施形態に係るステアリングハンガー1の作用効果について説明する。
このようなステアリングハンガー1によれば、ステアリングハンガービーム10の断面が非真円形となっているので、ステアリングコラム取り付け部20に対してステアリングハンガービーム10がその軸周りに回動するのを確実に防止することができる。
【0047】
また、このようなステアリングハンガー1によれば、ステアリングハンガービーム10が鋳包み部分で凹形状及び凸形状の少なくともいずれかの形状となっているので、ステアリングコラム取り付け部20に対してステアリングハンガービーム10がその軸方向に移動するのを確実に防止することができる。
【0048】
また、このようなステアリングハンガー1によれば、ステアリングハンガービーム10が鋳包み部分で凹形状及び凸形状の少なくともいずれかの形状となっているので、軽金属による鋳包みの際の圧力に対抗する充分な強度及び剛性を発揮することができる。つまり、ステアリングハンガービーム10の肉厚を低減することができる。その結果、ステアリングハンガー1の更なる軽量化を図ることができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るステアリングハンガー1について説明する。ここで参照する図6(a)は、第3実施形態に係るステアリングハンガーに使用されるステアリングハンガービームの部分斜視図であり、ステアリングコラム取り付け部が取り付けられる部分を拡大して表した図である。なお、図6(a)中、ステアリングコラム取り付け部は、仮想線(二点鎖線)で表している。そして、ここでは、前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0050】
この第3実施形態においては、第1実施形態と同様の円管形状のステアリングハンガービーム10を備えている。そして、ステアリングハンガービーム10が次に説明するアンカー部材14を備えている点で第1実施形態のものと異なっており、このステアリングハンガービーム10を鋳包むようにステアリングコラム取り付け部20が形成された以外は第1実施形態と同様にステアリングハンガー1が構成されている。
更に詳しく説明すると、図6(a)に示すように、ステアリングハンガービーム10の部品11bは、アンカー部材14を別体で備えている。つまり、部品11bとは別の部材で形成されたアンカー部材14が部品11bに接合されている。
【0051】
アンカー部材14は、部品11bの周面から鍔状に張り出すようにリング状の板体を備えて形成されている。そして、このアンカー部材14は、リング状の板体部分に、周方向に等間隔となるように複数のアンカー穴32が形成されている。なお、本実施形態でのアンカー穴32はリング状の板体部分を貫通する孔で構成されているが貫通していなくてもよい。
本実施形態のでアンカー部材14は、鋼材で形成されており、部品11bとは溶接で接合されている。
アンカー部材14は、部品11bに一対設けられている。そして、アンカー部材14は、次に説明するこのステアリングハンガービーム10の製造方法で示すように、ステアリングコラム取り付け部20の補強部23(図6(b)参照)で鋳包まれる位置に配置される。
【0052】
次に、この第3実施形態に係るステアリングハンガー1の製造方法について説明する。
この製造方法では、前記第1実施形態での製造方法と同様に、ステアリングハンガービーム10が予め3つの部品11a,11b,11c(複数部品)に分けて製造され、部品11bが金型内に配置される。
ここで参照する図6(b)は金型内に配置したステアリングハンガービームの一部の部品を鋳包む様子を示す概念図であり、図6(a)のVI−VI断面に対応する図である。
【0053】
図6(b)に示すように、ステアリングハンガービーム10の部品11bが、ステアリングコラム取り付け部20(図2参照)の外形を模ったキャビティを有する金型31内に配置されると共にこの金型31内に軽金属30の溶湯が図示しない湯口を介して圧入される。
その結果、金型31内には、ステアリングハンガービーム10の部品11bを軽金属30が鋳包むようにしてステアリングコラム取り付け部20が形成される。
この際、アンカー部材14は、補強部23に鋳包まれる。
なお、図6(b)中、符号16は溶接ビードであり、符号21は軸部21であり、符号22は延出部22であり、符号31bは固定型であり、符号31aは可動型である。
【0054】
そして、この製造方法では、第1実施形態での製造方法と同様に、金型31からステアリングコラム取り付け部20で鋳包んだ部品11bを取り出すと共に、部品11bに対して部品11a、及び部品11c、並びに図1に示すフランジ12a,12b及びステー13を接合することによってステアリングハンガー1が完成する。
【0055】
次に、本実施形態に係るステアリングハンガー1の作用効果について説明する。
このようなステアリングハンガー1によれば、ステアリングコラム取り付け部20によって鋳包まれるアンカー穴32を有するアンカー部材14がステアリングハンガービーム10に取り付けられているので、ステアリングコラム取り付け部20に対してステアリングハンガービーム10がその軸周りに回動するのを、より確実に防止することができると共に、ステアリングコラム取り付け部20に対してステアリングハンガービーム10がその軸方向に移動するのを、より確実に防止することができる。
【0056】
また、このようなステアリングハンガー1によれば、アンカー部材14がステアリングハンガービーム10に取り付けられているので、軽金属による鋳包みの際の圧力に対抗する充分な強度及び剛性を発揮することができる。
【0057】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るステアリングハンガー1について説明する。
この第4実施形態においては、第1実施形態と同様の円管形状のステアリングハンガービーム10を備えている。そして、次に説明する製造方法で示すように、ステアリングハンガービーム10の部品11bの内側の中空部に隔壁が設けられている以外は第1実施形態と同様にステアリングハンガー1が製造されたものである。
ここで参照する図7(a)は、金型内に配置した第4実施形態に係るステアリングハンガービーム(第2材質部品)の一部の部品を鋳包む様子を示す概念図、図7(b)は、図7(a)のVII−VII断面図である。
【0058】
この第4実施形態に係るステアリングハンガー1の製造方法では、前記第1実施形態での製造方法と同様に、図2に示す部品11a,11b,11cがそれぞれ分けて製造される。
【0059】
次に、図7(a)及び(b)に示すように、ステアリングハンガービーム10の部品11bが、ステアリングコラム取り付け部20(図2参照)の外形を模ったキャビティを有する金型31内に配置される。この際、部品11bの内側には、複数の隔壁15が等間隔となるように内嵌される。
この隔壁15は、平面視で真円形であって、部品11bの内側に形成された中空部を隔てるように配置されている。そして、隔壁15は、その周縁部が部品11bの内側面に沿って当接するように部品11bの軸方向に屈曲している。
また、隔壁15は、位置決め治具の挿入孔18が形成されている。つまり、挿入孔18は、前記したように、部品11bの内側に隔壁15を内嵌する際に、この挿入孔18に位置決め治具(図示省略)を挿入して係止させ、この位置決め治具を部品11bの軸方向に抜き差しすることで隔壁15の配置位置を調節するためのものである。
【0060】
そして、金型31内に軽金属30の溶湯が図示しない湯口を介して圧入される。
その結果、金型31内には、ステアリングハンガービーム10の部品11bを軽金属30が鋳包むようにしてステアリングコラム取り付け部20が形成される。
【0061】
そして、この製造方法では、第1実施形態での製造方法と同様に、金型31からステアリングコラム取り付け部20で鋳包んだ部品11bを取り出すと共に、部品11bに対して、図1に示す部品11a、部品11c、フランジ12a,12b及びステー13を接合することによってステアリングハンガー1が完成する。
【0062】
このような本実施形態に係るステアリングハンガー1によれば、ステアリングハンガービーム10の部品11bの内側に隔壁15が設けられているので、軽金属による鋳包みの際の圧力に対抗する充分な強度及び剛性を発揮することができる。
【0063】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係るステアリングハンガー1について説明する。ここで参照する図8は、第5実施形態に係るステアリングハンガーに使用されるステアリングハンガービームの部分斜視図であり、ステアリングコラム取り付け部が取り付けられる部分を拡大して表した図である。なお、図8中、ステアリングコラム取り付け部は、仮想線(二点鎖線)で表している。そして、ここでは、前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0064】
図8に示すように、この第5実施形態においては、第1実施形態と同様の円管形状のステアリングハンガービーム10にアンカー穴33を形成したものが使用されている。そして、このステアリングハンガービーム10を鋳包むようにステアリングコラム取り付け部20が形成された以外は第1実施形態と同様にステアリングハンガー1が構成されている。
【0065】
アンカー穴33は、部品11bの中空部に貫通するように周面に設けられており、軸方向に沿って複数個が等間隔で並んで列を形成している。そして、部品11bの周方向にはこのアンカー穴33の列が等間隔に複数列形成されており、本実施形態では4列形成されている。
【0066】
次に、この第5実施形態に係るステアリングハンガー1の製造方法について説明する。
この製造方法では、前記第1実施形態での製造方法と同様に、ステアリングハンガービーム10が予め3つの部品11a,11b,11c(複数部品)に分けて製造され、部品11bが金型内に配置される。
ここで参照する図9(a)は金型内に配置したステアリングハンガービームの一部の部品を鋳包む様子を示す概念図であり、図8のIXa−IXa断面に対応する図、図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb断面図である。
【0067】
図9(a)に示すように、ステアリングハンガービーム10の部品11bが、ステアリングコラム取り付け部20(図2参照)の外形を模ったキャビティを有する金型31内に配置されると共に、部品11bの中空部に一対の中子35,35がその両端から挿嵌される。
【0068】
この中子35は、第1実施形態での中子34(図4(a)及び(b)参照)に、更に溝36を形成したものである。
この溝36は、図9(a)及び(b)に示すように、アンカー穴33の位置に対応して軸方向に延びるように形成されている。つまり、本実施形態での中子35は、その周面に4本の溝36が軸方向に延びるように形成されている。
【0069】
そして、金型31内に軽金属30の溶湯が図示しない湯口を介して圧入される。この際、溶湯は、ステアリングコラム取り付け部20の外形を模ったキャビティ内に充填されると共に、アンカー穴33内及び溝36内に充填される。
なお、図9(a)及び(b)中、符号21は軸部21であり、符号22は延出部22であり、符号23は補強部であり、符号31bは固定型であり、符号31aは可動型である。
【0070】
そして、この製造方法では、第1実施形態での製造方法と同様に、金型31からステアリングコラム取り付け部20で鋳包んだ部品11bを取り出すと共に、中子35を部品11bから抜き出す。次いで、部品11bに対して部品11a、及び部品11c、並びに図1に示すフランジ12a,12b及びステー13を接合することによってステアリングハンガー1が完成する。
【0071】
次に、本実施形態に係るステアリングハンガー1の作用効果について説明する。
このようなステアリングハンガー1によれば、部品11bのアンカー穴33内に軽金属が鋳込まれるので、ステアリングコラム取り付け部20に対してステアリングハンガービーム10がその軸周りに回動するのを、より確実に防止することができると共に、ステアリングハンガービーム10の軸方向に移動するのを、より確実に防止することができる。
【0072】
また、このステアリングハンガー1の製造方法では、アンカー穴33内に軽金属が鋳込まれた際に、中子35が略円柱形状であって、アンカー穴33の位置に対応して軸方向に延びるように溝36が形成されているので、パイプ形状をしたステアリングハンガービーム10の部品11bの両端から中子35を容易に抜き出すことができる。
【符号の説明】
【0073】
1 ステアリングハンガー
2 ステアリングコラム
3 ステアリングホイール
10 ステアリングハンガービーム
11a 部品
11b 部品
11c 部品
12a フランジ
12b フランジ
13 ステー
14 アンカー部材
15 隔壁
17 突出部
20 ステアリングコラム取り付け部
31 金型
30 軽金属
32 アンカー穴
33 アンカー穴
34 中子
35 中子
36 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材質部品を支持させるこの第1材質部品とは異なった材質成分の第2材質部品を複数部品に分割し、
前記複数部品のうちの一部の部品を軽金属で鋳包んで前記第1材質部品を軽金属ダイキャスト成形品として一体化すると共に、前記第1材質部品と一体化した当該複数部品のうちの一部の部品と、前記複数部品うちの残りの部品とを接合したことを特徴とする互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造。
【請求項2】
前記第1材質部品はステアリングコラム取り付け部であり、前記第2材質部品はステアリングハンガービームであって、
複数部品に分割した前記ステアリングハンガービームの一部の部品を軽金属で鋳包んで前記ステアリングコラム取り付け部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造。
【請求項3】
前記ステアリングコラム取り付け部によって鋳包まれた前記ステアリングハンガービームの一部の部品は、断面視で非真円形であると共に、凹形状及び凸形状の少なくともいずれかを有していることを特徴とする請求項2に記載の互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造。
【請求項4】
前記ステアリングコラム取り付け部によって鋳包まれた前記ステアリングハンガービームの一部の部品はアンカー部材を別体で備え、前記アンカー部材は前記ステアリングコラム取り付け部によって鋳包まれるアンカー穴を有しており、前記アンカー部材は前記ステアリングハンガービームに取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造。
【請求項5】
前記第2材質部品は中空部材であって、前記第1材質部品によって鋳包まれた前記第2材質部品の内側には隔壁が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造。
【請求項6】
第1材質部品を支持させるこの第1材質部品とは異なった材質成分の第2材質部品を軽金属で鋳包んで前記第1材質部品を軽金属ダイキャスト成形品として前記第2材質部品と一体化した互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造の製造方法であって、
前記第2材質部品が中空であり、この第2材質部品を予め複数部品となるように分割して各々製造する工程と、
複数部品に分割した前記第2材質部品の一部の部品における中空部に中子を配置した後にこれを前記第1材質部品の外形を模ったキャビティを有する金型内に配置する工程と、
前記金型内に軽金属を注湯して前記第1材質部品によって鋳包まれた前記第2材質部品の一部の部品を形成する工程と、
前記第1材質部品で鋳包まれて前記第1材質部品と一体化した前記第2材質部品の一部の部品を離型すると共に前記中子を取り出す工程と、
前記中子を取り出した前記第2材質部品の一部の部品と、複数部品に分割した前記第2材質部品の残りの部品とを接合する工程と、
を有することを特徴とする互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造の製造方法。
【請求項7】
前記第1材質部品によって鋳包まれる前記第2材質部品の一部は、両端が開口したパイプ形状を有していると共に軸方向に沿って並ぶ複数のアンカー穴が中空部に連通するように設けられており、前記中子は外形が略円柱形状を有すると共に前記アンカー穴の位置に対応して軸方向に延びるように溝が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の互いに異なる材質成分の金属部品同士の一体化構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−260479(P2010−260479A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113819(P2009−113819)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】