説明

互いに間隔をおいて設けられた複数の電極を備えたイオン移動度分光計

イオン移動度分光計は、被分析物質のイオンを生成するためのイオン化領域3に開口している、被分析物質のための導入口2を備えている。互いに平行なグリッド電極41〜43は、イオン流路を横切って横方向に延在しており、前記電界の強度が、複数周期にわたって変動する比較的小さい強度の交番電界と、前記電界の最大強度が、微分イオン移動度効果を発生させる程度に大きな強度の非対称交番電界との間で切替可能な電界をイオンに与える。集電極5は、通過したイオンを回収し、低電界期間および高電界期間双方の間に通過して回収されたイオンにより、被分析物質の性質の指標が生成される。また、略交番電界を電極間に印加することが開示され、この電界は、交番周期を超える時間にわたって低値と高値との間で変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに間隔をおいて設けられた一対の電極と、前記一対の電極間に電界を印加するために該電極に接続された、略対称な交番電界(substantially symmetric alternating field)の供給源と、を備えた検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のイオン移動度分光計(ion mobility spectrometer;IMS)は、相対的に低い低電界における被分析物質のイオンの移動度を判定することにより、ある気体または蒸気が有する性質の指標(indication)を提供するために用いられている。かかる低電界においては、イオン移動度は電界強度の変化に対して線形的な関係に従う。電界非対称イオン移動度分光計(field asymmetric ion mobility spectrometer;FAIMS)または微分移動度分光計(differential mobility spectrometer;DMS)と呼ばれる代替的な形態のイオン移動度分光計は、はるかに大きな電界を用いて、あるイオンの移動度が高電界における電界強度の変化に対する線形的な関係性から乖離する態様に基づいて、被分析物質のイオンが有する性質に関する指標を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
イオン移動度分光計(IMS)はある特定の物質の検出により適しており、電界非対称イオン移動度分光計(FAIMS)については、他の物質の検出により適しているといった具合に、イオン移動度分光計(IMS)および電界非対称イオン移動度分光計(FAIMS)にはいずれも長所と短所とがある。イオンに関する最大量の情報、および、したがって最大の選択性(selectivity)は、高電界と低電界との双方においてイオン移動度を測定することにより得ることができる。これは高電界検出器と低電界検出器とをタンデムに接続することにより達成しうるが、かかるタンデム接続形態にはエンジニアリング上の様々な問題が伴う。さらに、かかる組み合わせ型の装置は相対的に大型化してしまい、相対的に必要な電力量も大きくなってしまう。
【0004】
本発明の目的は、(従来のものに)代わる検出方法および検出装置ならびに代替的な分光計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一様相によれば、上述した種類の検出装置が提供され、この検出装置は、前記電界の強度が、交番周期(alternating period)を超える時間にわたって低値と高値との間で変動するように設定され、かつ、前記電界の最大強度が、微分イオン移動度効果(differential ion mobility effect)を発生させる程度よりも小さくなるように設定されていることを特徴としている。
【0006】
検出装置は、互いに間隔をおいて設けられた一対の電極と、それぞれ異なる低電界移動度を有する複数のイオンの一部が前記一対の電極を通過するとともに前記イオンの他の一部が前記一対の電極の間に捕捉されるのに応じて変化する出力信号を生成するために、前記対称交番電界を通過したイオンを回収する集電極と、前記出力信号に応じて、検出されたイオンの指標を提供するプロセッサと、を備えている。
【0007】
電極は、イオン流路に対して横方向に、装置を通って配置され、イオンがそれらの間を通過できるような開放構造とされている。集電極(collector)は、電極の一方を通過したイオンを回収するように設けられている。代替的には、電極は、装置の長手方向に沿ってイオン流路と平行に配置され、イオンが前記電極の間の間隙を通過できるようになっている。代替的な配置構成においては、集電極は、電極の間に設けられた間隙の長手方向に沿って通過したイオンを回収するために設けられている。
【0008】
検出装置は、被分析物のイオンが有する高電界移動度および低電界移動度の指標を提供することができるように、前記対称交番電界が適用される時間とは異なる時間において、高電界非対称交番電界(high‐field asymmetric alternating field)を前記電極に印加するように構成されている。また、前記高電界は、高電界微分移動度効果(high‐field differential mobility effect)を生じさせるに十分な程度に設定されている。
【0009】
本発明の他の様相によれば、互いに間隔をおいて設けられた複数の電極と、電圧源とを備えた検出装置において、電圧源が、検出されたイオンの移動度に関する低交番電界(low alternating field)および高交番電界(high alternating field)における互いに独立した指標を生成するために、前記低交番電界および前記高交番電界を前記複数の電極に対して印加するように設けられ、そして、プロセッサが、前記検出されたイオンの性質に関する指標を、前記低交番電界におけるイオン移動度の指標と前記高交番電界におけるイオン移動度の指標と用いて提供するように構成されていることを特徴とする検出装置が提供される。
【0010】
本発明のさらなる他の様相によれば、2つの電極の間に検出のための被分析物質のイオンを供給し、前記電極の間に、交番電界の周期を超える時間にわたって増大する相対的に低い非対称交番電界である低電界と、前記イオンにおける高電界微分移動度効果を生じるに十分な程度の相対的に高い非対称交番電界である高電界とからなる互いに異なる2つの電界を互いに異なる時間において印加し、前記2つの電界を印加する間に前記2つの電極を通過したイオンを回収し、そして、前記低電界を印加する間および前記高電界を印加する間それぞれにおいて回収された前記イオンによって生成した信号に基づいて、前記イオンの性質を示す指標を提供することを含むイオンを検出する方法が提供される。
【0011】
本発明の第四の様相によれば、被分析物質の導入口と、前記被分析物質のイオンを生成させて該イオンを電界領域に提供するように設けられたイオン化領域とを備えた分光計において、前記電界領域が、複数周期にわたって変動する相対的に低い強度の交番電界と、微分移動度効果を発生させるに十分な程度の高い強度を有する非対称交番電界とからなる2つの異なる電界に切替可能とされていることを特徴とする分光計が提供される。
【0012】
電界領域は、イオンの流路を横切って延在している2つのグリッド電極の間に、または、前記イオンの流路に沿って延在している2つの電極の間の間隙に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低電界モードおよび高電界モードからなる両モードで分光計を動作させることで、イオンの性質に関する二つの異なる指標を抽出することが可能となり、低電界移動度特性を有するイオンと、高電界移動度特性を有するイオンとをともに識別することができる。また、本発明に係る分光計のプロセッサは、前記2つのモードにより得られた情報を用いて、被分析物質の性質に関する改善された指標を提供することができる。
【0014】
また、本発明によれば、低電界モード動作時に得られた出力と高電界モード動作時に得られた出力とを組み合せることにより、イオンに関するより多くの情報を同一の検出装置を用いつつ得ることができ、選択性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】並進運動分光計(parallel‐motion spectrometer)の概略図である。
【図2】逓増する強度を有する相対的に低い交番電界に晒された場合における高移動度イオンの運動および低移動度イオンの運動を示した図である。
【図3】低強度電界によって生成されたイオン電流を時間的に示した図である。
【図4】図3のイオン電流出力を微分して示した図である。
【図5】低強度電界に代えて高強度の非対称電界を分光計において用いた場合を示した図である。
【図6】分光計の代替的形態を示した部分概略図である。
【図7】低電界モードで図6の分光計を動作させた場合に生成されるイオン電流を時間的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、分光計および物質検出方法に係る2つの異なる形態を図面を参照して説明する。
【0017】
まず図1を参照すると、気体または蒸気の状態で存在する被分析物質を導入するための導入口2をその上端部に有する分光計ハウジング1を備えた、分光計としての検出装置が図示されている。
【0018】
導入口2は、受け入れられた被分析物質の分子がイオン化されるイオン化領域3へ開口している。イオン化領域3で生成されたイオンは、電界または気体流の作用によって、分光計の下流側、電界領域4へと流れる。
【0019】
電界領域4は、分光計ハウジング1を横断する横方向に延在して設けられた2本または3本の平行なグリッド状の電極(grid‐like electrode)41ないし43で構成されている。電極のかかる開放性(open nature)は、中性である場合には、イオンが実質的に妨げられることなく電極を通過することができるようなものである。
【0020】
電界領域4の下流には、増幅器および処理装置(processing unit)6に接続されたコレクタ極板5(請求項中の「集電極」に相当)が設けられている。処理装置6(請求項中の「プロセッサ」に相当)は、表示装置(利用装置)7へ出力を提供する。概括的に参照符号8で示すガス流システムは、分光計ハウジング1の両端部の間に接続されており、必要に応じて分光計ハウジング1に沿って清浄乾燥気体の流れを供給するように構成されている。
【0021】
電極41、電極42および電極43は、電圧源オシレータ(voltage source oscillator)10に接続されている。電圧源オシレータ10は、電極に対して2つの異なる電界を選択的に印加するように設定されている。第1の電界は、相対的に低い強度の電界すなわち低電界である。本明細書において、用語「低電界(low field)」とは、イオンの移動度が電界強度(field magnitude)に応じて線形的に変化するような電界をいう。この電界は、電極41、電極42および電極43に対して、(絶対値が互いに)等しい正電圧と負電圧との間で対称的に交番(alternate)する方形波を印加することにより生成される。方形波の振幅は、方形波の発振周期(oscillation period)の複数周期に相当する時間にわたって経時的にゼロ値から最大値まで線形的に漸増するように変調される。これにより、電極41、電極42および電極43の間のイオンが、電極間において後方および前方へ振動することになる。
【0022】
高移動度を有するイオンは、相対的に大きな運動幅をもっており、他方、低移動度を有するイオンは相対的に小さい運動幅をもっており、図2の2つの波形で示すとおりである。同図中、点線は高移動度イオンを示し、実線は低移動度イオンを示す。任意の単位で表示された移動量を示す縦軸に対して水平な破線Sは、電極間の分離度(separation)を示している。
【0023】
図3は、生成されるイオン電流を示している。ここに示されたイオン電流は、高周波矩形波形からの変動を減らすために平滑化されている。現実にも低ノイズ環境用に設計された増幅器は、このような平滑形態を示すと思われる。したがって、低電界においては、すべてのイオンが電極41から電極43までの範囲内で振動するとともにどのイオンもこれらの電極を通過することがなく、したがってイオン電流はゼロとなるであろうことが理解できる。電界がさらに増大するにつれて(図2および図3の「A点」)、当初は、より高い移動度を有するイオンのみが下側の電極43に到達して下側の電極43を通過するので、検出のためコレクタ極板5まで通過するであろう。イオン電流は、したがって、より多くの高移動度イオンが通過するようになるにつれ着実に増大していく。やがてすべての高移動度イオンが、下側の電極43を通過し、その結果電流は平坦域に移行する(図中「B点」)。振動電界の強度のさらなる増大により、低い移動度を有するイオンが励振されて下側の電極43(「C点」において)を通過し始め、その結果、イオン電流が再び新たな平坦領域(図中「D点」)に至るまで上昇し、すべての低移動度イオンが励振されて下側の電極43を通過する。電界がゼロにまで再び下落した場合(図中「E点」)、サイクルの終端において、イオン電流もまたゼロにまで落ちる。
【0024】
一般的に、2つの両極の間の範囲のイオン移動度を有する一連のイオン群が存在していることが理解できる。最大電界値は、電極41、電極42および電極43の分離度に応じて選択される。最大電界値は、存在すると思われるうちで最も遅い移動度のイオンが、最大電界値より小さい任意の点において、下側の電極43を通過するような値に設定されている。
【0025】
プロセッサ6は、図3に示す曲線の特性を識別するように構成されている。この曲線により、検出されたイオンの性質に関する情報が提供される。図3に示す曲線は、この形態のままで用いられてもよく、あるいは、特性をより明確に示すため図4に示すように微分波形で示してもよい。
【0026】
振動電界によって生じる信号の変動は、図2および図4から読取ることができる。信号の変動を最小化するために、変調周波数と振動電界周波数との比を最大にすることが望ましい。変調掃引周波数は、典型的には1ヘルツから10ヘルツの範囲であり、1〜10スペクトラム毎秒となるであろう。振動波形は、必ずしも矩形でなくてもよいが、典型的には、キロヘルツ程度の周波数を有するものである。
【0027】
低電界モードから得られた低電界モード情報は、場合によっては、例えば、既知イオンの曲線特性の参照テーブルと相関付けするなどして、検出されたイオンの性質を識別するため単体で用いることができる。代替的には、これはまた本発明の一様相に従うところでもあるが、低電界モード情報は、以下に説明するように、同一の検出装置を高電界モードで動作させて導出した高電界移動度に関する情報と組み合せて用いることもできる。
【0028】
高電界情報を導出する場合、図5に示すような電圧を提供するように電圧源オシレータ10が高電界モードに切り替えられる。同一の電圧源オシレータを用いる代わりに、異なる電圧源オシレータ(図示せず)によって高電界を提供してもよい。本明細書において、用語「高電界(high field)」は、イオンに微分移動度効果(differential mobility effect)を生じさせるのに十分な程度の電界を意味するものである。
【0029】
図5に示す電圧は、従来のFAIMS装置にみられる、短時間の高電圧正パルスとこれと比較して長時間の低電圧負パルスとで構成された非対称電圧である。正パルスおよび負パルスの持続時間および大きさは、1サイクルにおける平均電圧がゼロとなるように設定されている。本例においては、電圧は、プラス4000ボルトとマイナス2000ボルトとの間で切り替わり、1サイクルのうち負の部分はその正の部分の2倍の長さとなっている。これにより、電極41、電極42および電極43の間の電界が数千ボルト毎センチメートル(V/cm)程度となる。このモードで動作する場合、高電界における微分移動度をもたないイオンの移動量は正味ゼロであり、電極41、電極42および電極43の間に滞留することになる。高電界において異なる移動度を有するイオンは、しかしながら、次第に、その電荷に応じて、一つの電極または他の電極のほうへ移動し、最終的に、電極を通過する。検出すべきイオンが下側の電極43を通過して移動し、したがって、検出のためコレクタ極板(集電極)5へ移動するシステム構成となっている。
【0030】
また、小さな直流電圧を電極41、電極42および電極43に重畳させることができ、これらの直流電圧を調節することにより、異なる微分移動度を有するイオンを選択および識別することができる。代替的には、電極の直流電圧を固定としたうえで、イオンが電極41から電極43まで通過するのに要する時間を測定することにより、イオンの微分移動度を測定することができる。また、これら2つのアプローチを組み合せた技術を用いることもできる。
【0031】
このように、低電界モードおよび高電界モードからなる両モードで分光計を動作させることにより、イオンの性質に関する二つの異なる指標を抽出することが可能となり、低電界移動度特性を有するイオンと、高電界移動度特性を有するイオンとをともに識別することができる。プロセッサ6は、前記2つのモードにより得られた情報を用いて、被分析物質の性質に関する改善された指標を提供することができる。
【0032】
図1のグリッド(電極)のうち、電極41と電極42、電極42と電極43など2つのグリッドのみを用いた分光計によって同様の測定を行うことができる。
【0033】
なお、図1に示したようなイオンの流れの方向を横断して配置された開放されたグリッド電極を用いて、平行イオン移動(parallel ion motion)を生じる動作を発生させるように分光計を設計することは必須ではなく、これに代えて、図6に示すように、従来のFAIMS装置と類似した態様の構成とすることができる(図1と等価的なコンポーネントには、同一の参照符号に100を加えて示すものとする)。
【0034】
この配置においては、電極141および電極142が検出装置の長軸に対して平行に配置されており、すなわち、気体流Gの方向かつ検出装置の長手方向に沿って配置されている。電極141および電極142は、図示したように2つの平行、固形かつ平坦なプレートで構成されているが、FAIMS検出装置における公知の2つの同軸管状電極で構成されてもよい。
【0035】
図1の配置におけるのと同一の低電圧電界が、2つの電極141および電極142の間において印加されており、これにより、図2に示す低移動度イオンおよび高移動度イオンの同一の振動動作が生成される。低電界において、電極141および電極142の間における振動の大きさは、相対的に小さいので、イオンが電極に接触することがなく、したがって、イオンは電極の間の間隙に沿って流れていくことができ、電極の右側端部から検出のためコレクタ極板105へと流れていくことができる。
【0036】
イオン電流の時間的変化は図7に示されている。振動の大きさが印加電界の増大とともに増大するにつれて、より高い移動度を有するイオンが、電極141および電極142と衝突し始めて失われるので、これによりコレクタ極板105において検出されるイオン電流の低下が生じる(図中A点)。すべてのより高い移動度を有するイオンが電極141および電極142に衝突して平坦部(図中B点)に達するまで、電界強度の増大とともにイオン電流が低下していく。これに続いて(図中C点)、低い移動度を有するイオンが、電極141および電極142と衝突し始め、すべての低い移動度を有するイオンが電極と衝突する(図中D点)まで、イオン電流が再び下落し始め、D点以降、次のサイクルがE点において開始されるまで平坦部が継続する。
【0037】
FAIMS検出装置が高電界モードで動作している場合には、低電界電圧に代えて、図5に示すような電圧が、電極141および電極142に印加される。微分高電界移動度(differenial high field mobility)を有するイオンは、電極141および電極142のいずれか一方へドリフトするので、したがって、電極の間の間隙を通過して検出されない。直流電圧を交番電圧に印加することにより、選択されたイオンが、従来のFAIMS検出装置におけると同様の仕方で電極141および電極142の間を通過して検出されることができる。
【0038】
また、検出装置によって低電界モード動作時に得られた出力と高電界モード動作時に得られた出力とを組み合せることにより、イオンに関するより多くの情報を同一の検出装置を用いつつ得ることができ、選択性が増すことになる。
【0039】
本発明における低電界構成は、パルス動作を必要としない。パルス動作は、飛行時間(time−of−flight;TOF)に基づいてイオン移動度を求める従来型の検出器において通常必要となるものであるが、すべてのイオンが分析されるというわけではないため、パルス動作の利用は比較的非効率なものである。
【0040】
検出装置は、高電界モードと低電界モードとの間で規則的な間隔で切り替えられるように設定されてもよい。これに代えて、本発明は、所定のモードで動作するように設定されてもよく、必要に応じて他のモードに手動で切り替えられるように設定されてもよい。検出装置は、所定のモードで動作しつつ前記当初のモードでは不明確な出力しか得られない場合、または、代替的モードでの検出により適した物質の存在が示唆される場合にのみ、他の代替的モードに自動的に切り替えられるように設定されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 分光計ハウジング
2 導入口
3 イオン化領域
4 電界領域
41,42,43,141,142 電極
5,105 集電極(コレクタ極板)
6,106 プロセッサ(処理装置)
7 表示装置(利用装置)
8 ガス流システム
10,110 電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)互いに間隔をおいて設けられた一対の電極と、
(b)前記一対の電極の間に対称的に交番される電界を印加するために該一対の電極に接続された電圧源と、
(c)それぞれ異なる低電界移動度を有する複数のイオンの一部が前記一対の電極を通過するとともに前記イオンの他の一部が前記一対の電極の間に捕捉されるのに応じて変化する出力信号を生成するために、前記電界を通過したイオンを回収する集電極と、
(d)前記出力信号に応じて、検出されたイオンの指標を提供するプロセッサと、
を備えた検出装置であって、
(イ)前記電界の強度が、交番周期を超える時間にわたって低値と高値との間で変動するように設定され、かつ、
(ロ)前記電界の最大強度が、微分イオン移動度効果を発生させる程度よりも小さくなるように設定されている
ことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記一対の電極が、前記検出装置の長手方向に設けられたイオン流路を横断して横方向に配置され、かつ、前記一対の電極が、イオンが前記一対の電極の間を通過することができるような開放構造とされている、ことを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記集電極が、前記一対の電極のうち下側の電極を通過したイオンを回収するように、設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記イオンが前記一対の電極の間に設けられた間隙を通過するように、前記一対の電極が、前記装置の長手方向に沿って前記イオン流路に対して平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記集電極が、前記一対の電極の間に設けられた間隙の長手方向に沿って通過したイオンを回収するように、設けられていることを特徴とする請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
被分析物のイオンが有する高電界移動度の指標と低電界移動度の指標とを提供するために、高電界としての非対称交番電界が、前記電極に印加されるように設定され、かつ、前記高電界が、前記対称交番電界を適用する時間とは異なる時間において、高電界微分移動度効果を生じさせるに十分な程度に設定されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
互いに間隔をおいて設けられた複数の電極と、電圧源と、プロセッサとを備えた検出装置において、
(イ)検出されたイオンの移動度に関する低交番電界における指標および前記低交番電界の指標に対して独立な高交番電界における指標を生成するために、前記電圧源が、前記低交番電界および前記高交番電界を前記複数の電極に対して印加するように設けられ、かつ、
(ロ)前記プロセッサが、前記検出されたイオンの性質に関する指標を、前記低交番電界における移動度の指標と前記高交番電界における移動度の指標とを用いて提供するように構成されている
ことを特徴とする検出装置。
【請求項8】
イオンを検出する方法において、
(a)2つの電極の間に検出のための被分析物質のイオンを供給し、
(b)前記電極の間に、交番電界の周期を超える時間にわたって増大する相対的に低い対称交番電界である低電界と、前記イオンにおける高電界微分移動度効果を生じるに十分な程度の相対的に高い非対称交番電界である高電界とからなる互いに異なる2つの電界を互いに異なる時間において印加し、
(c)前記2つの電界を印加する間に前記2つの電極を通過したイオンを回収し、そして、
(d)前記低電界を印加する間および前記高電界を印加する間それぞれにおいて回収された前記イオンにより生成した信号に基づいて、前記イオンの性質を示す指標を提供する
ことを含むことを特徴とするイオンを検出する方法。
【請求項9】
被分析物質のための導入口と、前記被分析物質のイオンを生成させて該イオンを電界領域に提供するように設けられたイオン化領域と、を備えた分光計において、前記電界領域が、複数周期にわたって変動する相対的に低い強度を有する交番電界と、微分移動度効果を発生させるに十分な程度の高い強度を有する非対称交番電界とからなる2つの異なる電界の間で切替できるように設定されていることを特徴とする分光計。
【請求項10】
前記電界領域が、前記イオンの流路を横切って延在している2つのグリッド電極の間に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の分光計。
【請求項11】
前記電界領域が、前記イオンの前記流路に沿って延在している2つの電極の間の間隙に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の分光計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−526401(P2010−526401A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504837(P2010−504837)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001470
【国際公開番号】WO2008/132465
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(507235789)スミスズ ディテクション−ワトフォード リミテッド (25)
【Fターム(参考)】