説明

井戸水採水具、井戸水採水装置および井戸水採水方法

【課題】井戸の内部に挿入しやすく、井戸内にコード等の邪魔物があっても、採水器を容器に挿入でき、かつ水を採取できる井戸水採水具、井戸水採水装置および井戸水採水方法を提供する。
【解決手段】井戸水採水具10は、複数個の採水容器1を間隔をあけて直列に連結する吊り紐2と、吊り紐2の下端に取付けた錘3とを備え、吊り紐2は、自在に曲がる柔軟性を有している。採水容器1が、下端が底部で塞がれ上端が開口した筒状容器であって、直径5〜30mm、長さ50〜200mmであり、吊り紐2で連結されている直列に隣接する採水容器1の間の間隔が、50〜200mmである。井戸水採水装置は、井戸水採水具10と、井戸の内部に挿入される誘導パイプPとからなり、誘導パイプPは、その内部に井戸水採水具10を挿入可能であり、かつ誘導パイプP自体が井戸内の邪魔物を避けて井戸内に配置できる柔軟性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、井戸水採水具、井戸水採水装置および井戸水採水方法に関する。さらに詳しくは、各種の井戸の井戸水や地下水を検査等のためサンプリングする井戸水採水具、井戸水採水装置および井戸水採水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
井戸には様々な種類のものがある。たとえば、地下水検査用の観測井、地下水を人工涵養する涵養井、家庭飲料を汲み上げる井戸などがある。観測井にも多種のものがあり、特殊なものとして、地中タンクに外部から水圧をかけて漏洩を防止するための地下水の水位などを計測する観測井もある。
これらの観測井は、井戸の直径は小さく(例えば、10〜20cm)深さが深い(たとえば、数10m)ものがあり、しかも、地下水の水位や電気伝導度、異常の有無などを計測、検知する各種センサを地下水中に漬けており、各センサと地上の計測器箱とを連結するケーブルが井戸内に配置されていることが多い。
【0003】
図8の観測井Wは、内径が10cm〜20cm位で、深さは地下水に達する長さであるから、数10mから数100mに達するものもある。そして、地下水の水位や電気伝導度等を計測するセンサ類SがコードCを介して、井戸の中に挿入されている。なお、センサ類Sは架台Fに固定され、架台FがワイヤロープRで井戸上端部から吊下げられているが、個々のセンサSがそれぞれのコードCで吊下げられるものもある。これらのコードには、出荷時の巻きぐせが付いていることから井戸W内に挿入したとき、自然と井戸内壁に接触して井戸W内で複雑に湾曲するし、また、人為的に井戸Wの上部で輪状に巻いて不要な張力が加わらないようにすることもある。そして、これらのコードCの上端部分は井戸上端部に固定され、さらに地上の計測器箱B等に接続されている。このように狭い井戸内で湾曲しているコード類は、サンプリングに使う容器を井戸内に出し入れする際には、邪魔物となる。
【0004】
従来技術の一例として、従来技術1が特許文献1に示されている。
この特許文献1のサンプリング装置は、ポンプを内蔵した採水容器に真直ぐな棒を連結した構造であり、ボーリングしてできた井戸の中に直管状の管を鉛直に設置し、その管の中に採水容器を棒で吊るした状態で真直ぐに挿入するものである。
【0005】
しかるに、図8に示すような観測井では、特許文献の従来技術1を使用することはできない。
なぜなら、内部断面積の狭い井戸内に複数本のコードCが湾曲した状態で設置されているので、直管状の管や真直ぐで曲がらない棒で支持された採水容器を井戸内に挿入することはできず、引き上げることもできないからである。
【0006】
一方、非特許文献1に記載された従来技術2,3として、つぎがある。
従来技術2は、水質検査用として広く使用されている採水器(製品名:ハイロート採水器)であり、蓋をされた採水瓶を主ロープで吊下げており、もう一本の副ロープで蓋を開閉するものである。容量が1000mlの製品では、直径約11cm、高さ約30cm位の大きさである。
しかるに、採水瓶の直径が11cmに達するほど大きいと、各種センサのコード類が入っている内径の狭い井戸に挿入することはできず、蓋を開閉するための副ロープがコードCに絡んで蓋の開閉ができなくなる等の問題も生ずる。
【0007】
従来例3は、ボーリング孔の井戸水を採水するための直管形の容器(製品名:井戸用採水器)であり、直径3〜5cm、高さ約60cm弱の大きさである。
しかるに、このように長さが60cm位ある容器が真直ぐで長いと、やはり各種センサのコードがからみ合っている隙間をくぐらせて、井戸の底まで採水器を挿入することはできない。
【0008】
以上のように、従来技術1〜3は、内部が広く邪魔物が無い井戸には使えるが、内部にコード等の邪魔物がある井戸では使いないか、甚だ使い勝手の悪いものだったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−27880号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】株式会社離合社の製品カタログ「採水器 8頁、9頁」URL: http://www.rigo.co.jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、井戸の内部に挿入しやすく、井戸内にコード等の邪魔物があっても、採水器を容器に挿入でき、かつ水を採取できる井戸水採水具、井戸水採水装置および井戸水採水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の井戸水採水具は、複数個の有底筒状の採水容器と、該複数の採水容器を間隔をあけて直列に連結する吊り紐と、該吊り紐および前記採水容器からなる取水部の下端に取付けた錘とを備え、前記吊り紐は、自在に曲がる柔軟性を有していることを特徴とする。
第2発明の井戸水採水具は、第1発明において、前記採水容器が、下端が底部で塞がれ上端が開口した筒状容器であって、直径10〜30mm、長さ50〜150mmであり、前記吊り紐で連結されている直列に隣接する採水容器の間の間隔が、50〜200mmであることを特徴とする。
第3発明の井戸水採水具は、第1または第2発明において、前記吊り紐は、2本の紐からなり、該2本の紐は、前記採水容器における中心対称な胴部外面に固定されており、かつ、前記採水容器における上端の直近上方で互いに固縛され、下端の直近下方でも互いに固縛されており、前記上下の固縛部位は、前記採水容器の中心軸上に位置することを特徴とする。
第4発明の井戸水採水具は、第3発明において、前記採水容器の長さと、直列に隣接する採水容器間の吊り紐の長さとが、ほぼ同じであることを特徴とする。
第5発明の井戸水採水装置は、請求項1記載の井戸水採水具と、請請求項1記載の井戸水採水具と、井戸の内部に挿入される誘導パイプとからなり、該誘導パイプは、その内部に前記井戸水採水具を挿入可能であり、かつ誘導パイプ自体が井戸内の邪魔物を避けて井戸内に配置できる柔軟性を有していることを特徴とする。
第6発明の井戸水採水方法は、請求項5記載の井戸水採水装置を用いる井戸水採水方法であって、前記誘導パイプを、井戸内の邪魔物を避けて内部に通し、かつ該誘導パイプの上端を井戸の上端部に取付けて固定する取付け工程と、井戸に取付けられた状態の前記誘導パイプに前記井戸水採水具の取水部を、下端の錘、その上方の複数の採水容器の順で挿入する挿入工程と、井戸水採水具の取水部を井戸内の水位以下まで降ろし、井戸内の水を採取する取水工程と、採水を終えた井戸水採水具の取水部を誘導パイプ内で引き上げる引き上げ工程とを順に実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、採水容器を吊り紐で吊るして井戸の中に入れるとき、最下端の錘によって複数個の採水容器が上下に並び、吊り紐が張った状態となるので、井戸内の邪魔物に引っ掛かりにくい。また、吊り紐は、その柔軟性によって自在に曲がるので、井戸内の邪魔物を避けながら、採水容器を井戸内で出し入れできる。さらに、採水容器は、複数個を用いるので、小形の採水容器を用いていながら、多くの水をサンプリングすることができる。
第2発明によれば、採水容器の直径も長さも小さいので、井戸内の邪魔物を避けやすくなる。しかも、上下に隣接する採水容器間の間隔は採水容器の長さと等しいかやや長いので、吊り紐と採水容器からなる取水部が自由に曲がることができ、やはり井戸内の邪魔物に引っ掛からない。さらに、採水容器が直径10〜30mm、長さ50〜150mmであると、1個では採水量が少なくなるが、複数個を用いることによって、必要な採水量を確保できる。
第3発明によれば、吊り紐が2本あるので、1本が切れても残る1本で採水ができる。また、2本の吊り紐は採水容器の胴部外面に固定されていることから、吊り紐と採水容器の動きが一体化し、井戸内の邪魔物を避ける動作が行いやすい。さらに、採水容器の上下における吊り紐の固縛位置は、採水容器の中心軸上にあるので、吊り紐をたぐることにより採水容器を井戸内に入れ、邪魔物を避けて上げ降ろしする操作がやりやすくなる。
第4発明によれば、採水容器の長さと隣接する採水容器間の吊り紐の長さがほぼ同じであるので、複数本の採水容器を束ねると、各採水容器の上端開口がほぼ同じ位置に揃うので、複数本の採水容器に採取した水を検査容器等に移し替える操作が行いやすくなる。
第5発明によれば、誘導パイプを、それ自体の柔軟性を活かして、井戸内の邪魔物を避けて井戸内に通すことができ、井戸水採水具は吊り紐の柔軟性と錘の引張り力によって、曲って井戸内に挿入された誘導パイプの中を円滑に下降するので、井戸内の邪魔物に接することなく、井戸底部の水を採取することができる。また、採取後の吊り上げも吊り紐に柔軟性があることから、自在に行うことができるので、井戸内の水のサンプリングが容易に行える。
第6発明によれば、誘導パイプの取付け工程で、誘導パイプを井戸内の邪魔物を避けておき、井戸水採水具の挿入工程で、誘導パイプ内に井戸水採水具を錘と複数の採水容器の順で挿入すれば、井戸内の水に採水容器を漬けることができるので、そこで取水工程を実施し、その後、井戸水採水具を引き上げる引き上げ工程を実行すれば、井戸水の採水を、井戸内の邪魔物に阻害されることなく容易に採水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る井戸水採水具の説明図である。
【図2】図1に示す井戸水採水具の部分拡大図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る井戸水採水具の説明図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係る井戸水採水具の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る井戸水採水装置の説明図である。
【図6】本発明に係る井戸水採水方法の説明図である。
【図7】採水容器から採水した水を検査容器等に移し替える作業の説明図である。
【図8】観測井の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(井戸水採水具)
まず、図1に基づき、井戸水採水具10を説明する。
この井戸水採水具10は、複数個の採水容器1と、これらを連結する吊り紐2と、錘3とを備えている。
採水容器1は、下端が底部で塞がれ上端が開口した筒状容器である。その大きさは、直径10〜30mm、長さ50〜200mmの容器が使用し易いものとして例示できるが、これに限られるものではなく、井戸Wの大きさや後述する誘導パイプ10の内径などから、任意の寸法のものを用いてよい。
容器の材質には、とくに制限はなく、採取液に応じて、ステンレス鋼などの金属製やプラスチックなどの合成樹脂製を用いればよい。
【0016】
複数個の採水容器1,1は、吊り紐2で互いに直列に連結されている。この吊り紐2における直列に隣接する採水容器1の間の間隔は、50〜200mmが使用し易いものとして例示できるが、採水容器1の長さとほぼ同じであってもよい。この場合、後に詳述するように、複数本の採水容器1を束ねてサンプリングした水を検査容器等に移し替える作業が容易となる。
【0017】
錘3は、複数の採水容器1を連結した吊り紐2の最下端に取付けられている。錘3の数は1個でも複数個でもよく、複数の採水容器1,1を円滑に吊り降ろしていけるだけの重量があればよい。また、錘3の形状はできるだけ小さいことが好ましい。
この錘3と複数の採水容器1,1・・・で、実際に水をサンプルする取水部4が構成されている。
【0018】
吊り紐2は、自在に曲がる柔軟性を有していることが必要である。この柔軟性は、後述する誘導パイプPの中を曲りながら通過したり、採水後に採水容器1を傾けてサンプリングした水を検査容器などに移し替える作業が容易に行える程度であれば足りる。したがって、市販されているナイロンロープや麻ロープなどの公知の紐類が、とくに支障なく使用することができる。ただし、水溶性の紐は、サンプリング水の検査精度に悪影響を及ぼすので、水質検査等には用いない方がよい場合がある。なお、水位検査等には材質面での支障はない。
【0019】
吊り紐2は、井戸の底まで届く長さを有しており、その上端は、適宜の形状の巻取り具5に止着されている。このため、巻取り具5から吊り紐2をたぐり出すと、取水部4を井戸内に降ろすことができ、逆に吊り紐2を巻取り具5に巻き取ると、取水部4を井戸から引き上げることができる。
図示の巻取り具5は、概ね四角形の木枠からなる物であるが、このような単純な器具の代りに、ハンドル操作で正逆回転できるドラムなど、種々の巻取り具を、とくに制限なく用いることができる。
【0020】
図2は採水容器1と吊り紐2の詳細を示している。
採水容器1の上端部には、中心対称に2ヵ所の小孔11が設けられ、この小孔11に吊り紐2が1本づつ通されるようになっている。
なお、採水容器1の開口部の直径をそれ以外の部分よりも小さくし側辺部が内側に絞り込んだ形状としておけば、採水容器1を引き上げる際に周囲に引っ掛かることを防いで円滑に採水できる効果がある。ただし、開口部の直径がそれ以外の部分と同じものも本発明の採水容器1に含まれる。
【0021】
吊り紐2は、2本用いられており、1本の紐2aは1方の小孔11を通されており、他の1本の紐2bは、他方の小孔11を通されている。そして、2本の紐2a,2bは採水容器1の上端部近傍で互いに固縛され、さらに採水容器1の下端部近傍でも互いに固縛されている。上下の固縛部位2f、2fは、採水容器1の中心軸2c上に位置するよう固縛されている。
【0022】
そして、2本の紐2a,2bは採水容器1における中心対称の胴部外面に沿わせられ、固定されている。固定方法は任意であり、図示の実施形態では、テープ6を巻き付けているが、接着剤で固定したり、別の紐で固縛してもよい。この場合の接着剤や固縛用の紐は、水溶性であるとサンプリング水の検査精度に悪影響を及ぼすので、水質検査等には用いない方がよい場合がある。なお、水位検査等には材質面での支障はない。
【0023】
上記の構成であると、吊り紐2が2本あるので、1本が切れても残る1本で採水ができる。また、2本の吊り紐2a,2bは採水容器1の胴部外面に固定されていることから、吊り紐2と採水容器1の動きが一体化し、井戸内の邪魔物を避ける動作が行いやすい。さらに、採水容器1の上下における吊り紐2の固縛位置2f,2fは、採水容器1の中心軸2c上にあるので、吊り紐2をたぐることにより採水容器1を井戸内に入れたり、邪魔物を避けて上げ降ろしする操作がやりやすくなる。
【0024】
図3は採水用具の他の例を示しており、(A)図のものは、2本の吊り紐を採水容器1の片側の外周面に沿わせ、テープ6で固定したものである。このように、2本の吊り紐2は必ずしも採水容器1の中心軸上に位置させなくてもよい。
【0025】
また、2本の吊り紐2,2は、(A)図に示すように採水容器1の上端近傍と下端近傍で互いに固縛してもよいが、(B)図に示すように固縛しなくてもよい。このような実施形態でも、井戸水のサンプリングは可能であり、後述する誘導パイプ20と共に用いれば、コードC等に引っ掛かることもない。
【0026】
図2および図3に示した採水容器は、上端が開口し底端が閉じられた容器であったが、これとは異なる形状の容器も用いることができる。
たとえば、図4(A)に示すような弁を用いたものでもよい。このような採水容器として、筒状の容器1Bは、その上端と下端がほぼ閉じられた形状であって、かつ小孔12が上端に、小孔13が下端に形成され、容器1の内部にフロート14が入っているものも例示できる。なお、2は吊り紐であり、テープ6で固定されている。
【0027】
図4の採水容器1Bでは、空中にあるときはフロート14が下端の小孔13を塞いでいるが、水中に漬けられるとフロート14が浮き上がり、上端の小孔12を塞ぐ状態となる。このまま、空中に採水容器1Bを引き上げると、採水容器1B内の水は落下することなく、空中に引き上げてサンプリングすることができる。
本発明では、上記のような採水容器の外、サンプリング可能なら、種々のタイプの採水容器を、とくに制限なく用いることができる。
【0028】
(井戸水採水装置)
図5に示すように、本発明の井戸水採水装置Aは、上記した井戸水採水具10と誘導パイプ20とからなる。
誘導パイプ20は、その内部に井戸水採水具10を挿入可能であり、かつ誘導パイプ20自体が井戸内の邪魔物を避けて井戸W内に配置できる柔軟性を有するパイプで構成されている。この柔軟性は、井戸W内の邪魔物を避ける程度に曲ることができ、しかしつぶれて内部が閉塞しない程度の柔軟性であればよい。
したがって、塩化ビニール製などのパイプを好適に用いることができる。パイプの形状に特に制限はないが、たとえば、蛇腹型であると、曲りやすく、しかもつぶれにくく、採水容器1や錘3も引っ掛からず通しやすいので好ましい。
【0029】
また、誘導パイプ20には通水穴21を設け、誘導パイプ内外の水が自由に出入りできるようにしておくとサンプリングの正確さが向上し望ましい。通水穴の大きさは採水容器1や錘3の挿入時に引っかかりのない程度の大きさとし、少なくとも井戸内の水位面から誘導パイプの最深部まで設ける。数や間隔は適宜選定すればよい。
【0030】
既述のごとく井戸水採水具10の吊り紐2は自由に曲がることができ、かつ採水容器1は最長で200mmまでの短いものであるので、途中が曲った状態の誘導パイプ20へ、自在に挿入でき、しかも最下端の錘3の重量で、複数の採水容器1を連結した取水部4を下方へ円滑に降ろしていくことができる。
【0031】
(井戸水採水方法)
つぎに、井戸水採水方法を図6に基づき説明する。
この井戸水採水方法は、つぎの工程を順に行うことを特徴とする。
(1)誘導パイプ20を、井戸W内の邪魔物を避けて内部に通し、かつ誘導パイプ20の上端を井戸の上端部に取付けて固定する取付け工程
(2)井戸Wに取付けられた状態の誘導パイプ20に井戸水採水具10の下端の錘3、その上方の複数の採水容器1の順で挿入する挿入工程
(3)井戸水採水具10を井戸W内の水位以下まで降ろし、井戸W内の水を採取する取水工程
(4)採水を終えた井戸水採水具10を誘導パイプ20内で引き上げる引き上げ工程
【0032】
上記採水方法によれば、誘導パイプ20の取付け工程(1)で、誘導パイプ20を井戸W内の邪魔物を避けておき、井戸水採水具の挿入工程(2)で、誘導パイプ20内に井戸水採水具10を錘3と複数の採水容器1,1の順で挿入すれば、井戸W内の水に採水容器1を漬けることができるので、そこで取水工程(3)を実施し、その後、井戸水採水具10を引き上げる引き上げ工程(4)を実行すれば、井戸水の採水を、井戸W内の邪魔物に阻害されることなく容易に採水することができる。
【0033】
そして、さらに次のような利点がある。
a)採水容器1を吊り紐2で吊るして、井戸Wの中に入れるとき、最下端の錘3によって複数個の採水容器1が上下に並び、吊り紐2が張った状態となるので、井戸W内の邪魔物に引っ掛かりにくい。
b)吊り紐2は、その柔軟性によって自在に曲がるので、井戸W内の邪魔物を避けながら、採水容器1を井戸W内で出し入れできる。
c)採水容器1は、複数個を用いるので、小形の採水容器を用いて邪魔物を避けやすくしながら、多くの水をサンプリングすることができる。
d)採水容器1の直径も長さも小さいので、井戸内の邪魔物を避けやすい。しかも、上下に隣接する採水容器1間の間隔は採水容器の長さと等しいかやや長いので、吊り紐2と採水容器1からなる取水部4が自由に曲がることができ、やはり井戸内の邪魔物に引っ掛からない。さらに、採水容器が直径10〜30mm、長さ50〜200mmであると、1個では採水量が少なくなるが、複数個を用いることによって、必要な採水量を確保できる。
e)採水容器を直列に連結した本発明の構造は、例えば、井戸に挿入し、しばらく静置した後に迅速に引き上げることにより、井戸内での深さ方向の液を同時にサンプリングし、位置による状態を測定することができる。
【0034】
また、図2に示す採水容器1を用いた場合、採水容器1の長さと吊り紐2の長さがほぼ同じであると、次のような利点がある。
すなわち、図7に示すように、複数本の採水容器1を束ねると、各採水容器1の上端開口がほぼ同じ位置に揃うので、複数本の採水容器1に採取した水を検査容器30等に移し替える操作が行いやすくなる。図では3本の例を示しているが、作業員が手で握れる限り、4〜5本以上であっても同様に移し替え作業が容易に行える。
【符号の説明】
【0035】
1 採水容器
2 吊り紐
3 錘
4 取水部
5 巻取り具
10 井戸水採水具
20 誘導パイプ
21 通水穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の有底筒状の採水容器と、
該複数の採水容器を間隔をあけて直列に連結する吊り紐と、
該吊り紐および前記採水容器からなる取水部の下端に取付けた錘とを備え、
前記吊り紐は、自在に曲がる柔軟性を有している
ことを特徴とする井戸水採水具。
【請求項2】
前記採水容器が、下端が底部で塞がれ上端が開口した筒状容器であって、直径10〜30mm、長さ50〜150mmであり、
前記吊り紐で連結されている直列に隣接する採水容器の間の間隔が、50〜200mmである
ことを特徴とする請求項1記載の井戸水採水具。
【請求項3】
前記吊り紐は、2本の紐からなり、
該2本の紐は、前記採水容器における中心対称な胴部外面に固定されており、
かつ、前記採水容器における上端の直近上方で互いに固縛され、下端の直近下方でも互いに固縛されており、
前記上下の固縛部位は、前記採水容器の中心軸上に位置する
ことを特徴とする請求項1または2記載の井戸水採水具。
【請求項4】
前記採水容器の長さと、直列に隣接する採水容器間の吊り紐の長さとが、ほぼ同じである
ことを特徴とする請求項3記載の井戸水採水具。
【請求項5】
請求項1記載の井戸水採水具と、
井戸の内部に挿入される誘導パイプとからなり、
該誘導パイプは、その内部に前記井戸水採水具を挿入可能であり、かつ誘導パイプ自体が井戸内の邪魔物を避けて井戸内に配置できる柔軟性を有している
ことを特徴とする井戸水採水装置。
【請求項6】
請求項5記載の井戸水採水装置を用いる井戸水採水方法であって、
前記誘導パイプを、井戸内の邪魔物を避けて内部に通し、かつ該誘導パイプの上端を井戸の上端部に取付けて固定する取付け工程と、
井戸に取付けられた状態の前記誘導パイプに前記井戸水採水具の取水部を、下端の錘、その上方の複数の採水容器の順で挿入する挿入工程と、
井戸水採水具の取水部を井戸内の水位以下まで降ろし、井戸内の水を採取する取水工程と、
採水を終えた井戸水採水具の取水部を誘導パイプ内で引き上げる引き上げ工程とを順に実行する
ことを特徴とする井戸水採水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−127345(P2011−127345A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287253(P2009−287253)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(500240357)住鉱テクノリサーチ株式会社 (8)