説明

亜臨界水分解処理物の生産方法および亜臨界水分解処理物生産装置

【課題】 固形物を含む被処理物の連続的亜臨界水分解処理において、被処理物の分解反応を制御でき、大規模化が可能で、さらに装置コストを低く抑えることができ、所望の有用物を選択的に高収率で生産する方法および装置を提供する。
【解決手段】 被処理物を予め粉砕して粒子化して、水と混合し、スラリーを調製する。このスラリーは、冠を通じて加圧手段1に送られて加圧される。次に、加圧されたスラリーは、加熱手段2に送られて加熱され、亜臨界状態になる。亜臨界状態のスラリーは、導入口8から反応容器3の底部に導入される。この反応容器3内で、下から、固定層、流動層および亜臨界水溶解層がそれぞれ形成される。亜臨界水溶解層は、反応容器3の上部および側部に設けられた排出口101〜106のいずれかを選択して亜臨界水溶解層を取り出すことで、亜臨界水の滞留時間を調整し、被処理物の亜臨界水分解反応時間を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜臨界水分解処理物の生産方法および亜臨界水分解処理物生産装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品廃棄物、廃木材等の廃棄物から有用物を回収する方法として、亜臨界水・超臨界水加水分解反応を用いる方法が知られている。例えば、バイオマス中に多量に含まれるセルロース、でんぷん等に対して亜臨界水・超臨界水による分解反応を行い、単糖類やオリゴ糖に分解し、これらを回収する方法がある。得られた単糖類やオリゴ糖は、さらにアルコール発酵若しくはメタン発酵を行うことにより、より利用しやすいエタノールやメタンガスに変換される(特許文献1参照)。この方法では、木材等の廃棄物を、あらかじめ粉砕して微粒子化し、これを水と混合してスラリー化してから亜臨界水・超臨界水により分解反応を行う。
【0003】
しかし、この方法は分解反応の制御が難しい。反応が行き過ぎると、二酸化炭素や水まで分解してしまい、有用物が回収できない。逆に、分解が不十分であると、反応残渣が多く残り、処理効率が悪くなる。このように、この方法で分解反応の制御が難しいのは、亜臨界水等による加水分解反応が廃棄物の固形成分の表面で進行するためと、考えられている。例えば、亜臨界水若しくは超臨界水によるセルロース分解反応では、セルロース自身の分解反応速度よりも、分解物である単糖やオリゴ糖の分解反応速度が速い。このため、単糖やオリゴ糖は、有機酸、二酸化炭素若しくは水に分解される、あるいは互いに重合して炭化する。
【0004】
この問題を解決する方法として、以下の方法が提案されている(特許文献2参照)。まず、両端に孔径5μmの焼結フィルターを装着した管にセルロース粉末を入れ、亜臨界状態の水を連続的に流通させながら、セルロース粉末表面で分解生成したオリゴ糖を亜臨界水で抽出する。次に、亜臨界水を急冷しながら、反応器外に取り出すことにより、オリゴ糖の分解などといった副反応を防止する。しかし、この方法は、バッチ式反応であるため、大規模化に適さない。さらに、焼結フィルターの細孔が、多様な生成物により閉塞するという問題がある。
【0005】
また、超臨界水を用いて、電子機器スクラップ、廃プラスチック等を特殊な形状の流動層で分解・可溶化し、無機固形分を分離した後、高圧反応器でガスと無機塩に完全に分解する方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法で用いる装置は、垂直の隔離壁を有する円柱状流動層反応器からなり、反応器の下部より超臨界水を圧送しながら、反応器の上部より廃棄物の粉砕物を超臨界水に分散したスラリーを圧入する。その結果、有機成分を含んだ廃棄物は、反応器内を一旦下降して、垂直隔離壁下部を潜った後に、さらに反応容器の反対側へと流入する。このときに、有機成分は、超臨界水に溶解するために反応器上部より流出する。超臨界水に溶解した有機成分は、さらに高圧反応器中で酸化剤を添加されて二酸化炭素等のガスおよび無機塩にまで完全に分解される。また、廃棄物中に含まれていたセラミック等の無機粉末は、流動層反応器上部より排出される。この方法では、廃棄物が流動層反応器内をある一定の流路に沿って移動する間に、有機物が超臨界水により分解・可溶化される。反応および抽出溶媒として密度が小さい超臨界状態の水を用いるので、この方法は、密度が大きいセラミック、廃プラスチック等を、ガスおよび無機塩にまで完全に分解する、あるいは無機固形物質を分離するのに適する。
【0006】
しかし、含水率の高い固形分を含む有機廃棄物は、超臨界水に近い密度になるため、分解反応を制御するため、あるいは特定の分解物を高収率で得るためには、この方法では問題がある。また、この方法では、超臨界水と有機廃棄物とが別の投入口から流動層に圧入されるために、装置形状が複雑となり、圧入のために少なくとも2つの高価な高圧圧入装置(加圧手段)を必要とする。さらに、超臨界水の腐食性に耐えるためには、反応器の材質として、ハステロイ、インコネルなど高価なものを用いる必要がある。このため、装置コストが高くなるという問題がある。
【0007】
その他、耐圧性反応容器の上部から、亜臨界水と有機廃棄物との混合スラリーを、反応容器内に噴射導入することによって、有機廃棄物を分解処理する方法が提案されている(特許文献4)。しかし、この方法によっても、有機廃棄物の分解を制御することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−262162号公報
【特許文献2】特開平10−327900号公報
【特許文献3】特開2002−210348号公報
【特許文献4】特開2001−246239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、亜臨界水分解処理において有用物を連続的に、効率よく生産する方法および装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、固形物を含む被処理物の連続的亜臨界水分解処理において、被処理物の分解反応を制御でき、大規模化が可能で、さらに装置コストを低く抑えることができ、所望の有用物を選択的に高収率で生産する方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、亜臨界状態における固体物の分解の進行メカニズムについて考察した結果、以下の方法および装置を見出した。すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0012】
水の亜臨界状態下では、超臨界状態下ほどではないが、分解が急激に進行する。導入口から供給された被処理物が反応容器中で亜臨界状態の水に接触すると、分解は経時的に進行する。すなわち、滞留時間に対応した低分子化が進行する。被処理物に分解が過度に進行すれば、有機物は炭酸ガスと水までに分解され、分解の途中段階で得られる有機酸、アミノ酸などの有用物が採取できなくなる。このため、有用物を採取するためには、適度な分解により所期の有用物まで分解された時点で、分解物を含む液を反応容器から取り出さなくてはならない。適当な分解状態まで分解が進行した液を、反応容器から取り出して亜臨界状態から通常の状態に戻すと、水の溶解力が下がる。このため、親水性の低い成分は油層に、親水性の高い成分は水層に、層別分離され、有用物が効率よく回収できる。
【0013】
本発明においては、一または複数の導出口から、分解物を含む液を連続的に取り出し、反応容器内に定常的あるいは擬定常的濃度分布を形成させる。被処理物の滞留時間は、導入口からの距離と流速により定まる。すなわち、所期有用物は、導入口からの距離に対応した濃度分布になる。本発明の構成によれば、所期分解物濃度の高い位置に設けられた導出口から、前記所望の分解物を取り出すので、有用物を効率よく回収できる。なお、定常的な濃度分布が形成されない場合もある。例えば、泥や砂に付着した有機物を分解する場合、分解しない砂や泥が固定層あるいは流動層として塔下部に蓄積する。これを避けるため塔底に固体抜き出し口を設け、そのようなことが起こった時は、間歇的にそこから固体粒子を抜き出すことができる。
【0014】
なお、反応容器から分解物を含む液を取り出せば、亜臨界状態ではなくなるので、分解は止まる。しかし、現実には、完全に分解が停止するまでの間にも、分解は進行する。このため、所期有用物濃度がピークになる位置よりも、少し導入口よりの位置で、分解物を含む液を取り出すことが好ましい。また、導出口は、一定の被分解物を常時分解する場合には、最適位置に固定しておけばよく、異なる被分解物を処理する場合は、導出口の位置、取り出し量、圧損を考慮して適宜設定すればよい。
【0015】
本発明の最大の特徴は、被処理物を十分に分解するためには、被処理物の固形物が完全に分解するまで、あるいは骨のように無機物と有機物とからなる固形物中に含まれる有機物のすべてが消滅するまで、前記固形物を反応容器中に留め、その一方で、亜臨界水中に可溶化した被処理物の成分が過度に分解することを抑制する、あるいは熱分解による炭化を抑制するために、亜臨界水が反応容器内に滞留する時間を任意に調整することができることにある。本発明では、重力や固形物の比重を利用して、固定層、流動層と亜臨界水溶解層(プラグフロー層)の三層のうち、少なくとも前記流動層と亜臨界水溶解層をこの順に形成させ、前記亜臨界水溶解層において、その流れる距離と流速を調整することにより、前記固形物の滞留時間と亜臨界水の滞留時間を異にさせ、亜臨界水に可溶化した前記被処理物中の成分の分解の程度を調整し、目的とする分解処理物を回収する生産方法である。
【0016】
すなわち、分解が不十分な固形物は、固定層および流動層に留まり、亜臨界水によって分解反応を受ける。一方、この分解によって生じた成分は、亜臨界水に溶解し、亜臨界水層に位置する。この亜臨界層は、反応容器の下流方向に流れている。したがって、その流れる距離および流速を調整することで、分解反応の時間を調整することができる。適当な距離を流れた亜臨界水溶解層の一部または全部を、反応容器中から取り出し、分解反応を停止させれば、それ以上の分解が生じることなく、目的とする分解物を取り出すことができる。例えば、骨などのように、固形物が有機物ではなく有機物を含む無機物の場合は、亜臨界水により骨中の分解可溶化することにより、粒子が割れて粒子径が小さくなり、最終的にリン酸カルシウムの粉になる。その過程で、流動化開始粒子径より大きな粒子からなる固定層と、流動化開始粒子径より小さな粒子径の粒子からなる流動層と、さらに微粒子化して亜臨界水と同じ速度、すなわちプラグフロー状態となり、粉化したリン酸カルシウムを含んだ亜臨界水溶解層の3層を形成させる。この亜臨界水溶解層において、この層が流れる距離を調整することで、有機物の分解程度を調整し、目的とする分解物を回収することができる。なお、前記骨中の有機物が、例えば病原性プリオンなどの毒性物質や病原性物質である場合でも、この分解過程で、それらを分解することができる。また、プラスチックのように破砕粒子そのものが亜臨界水分解により小さくなる場合も、上記と同様、固定層、流動層およびプラグフローの領域を形成する。この方法によれば、バッチ式に比べ効率のよい連続式で、処理することができる。
【0017】
本発明の具体的な方法、装置は以下の通りである。
【0018】
本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法は、(1)容器内が水の亜臨界状態に保たれた反応容器に設けられた導入口を介して、被処理物を反応容器内に連続的に供給し、(2)前記反応容器に導入口が設けられた位置とは異なる位置に設けられた一または複数の導出口から、分解物を含む液を連続的に取り出して、反応容器内で、前記分解物を含む液の滞留時間を調整することにより行う。
【0019】
また、本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法は、(1)容器内が水の亜臨界状態に保たれた反応容器に設けられた導入口を介して、被処理物を反応容器内に連続的に供給し、(2)前記反応容器に導入口が設けられた位置とは異なる位置に設けられた一または複数の導出口から、分解物を含む液を連続的に取り出して、反応容器内に、所望の分解物の定常的濃度分布を生じさせ、(3)前記一または複数の導出口のうち、所望の分解物濃度の高い位置に設けられた導出口から、前記所望の分解物を取り出すことにより行う。なお、ここで、「連続的」とは、断続を含む意である。
【0020】
本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法は、(1)容器内が水の亜臨界状態に保たれた縦型の反応容器に設けられた導入口を介して、亜臨界水による分解速度が遅く、亜臨界水とは比重が異なる固形物を含む被処理物を反応容器内に連続的に供給し、(2)前記反応容器に導入口が設けられた高さとは異なる位置に設けられた一または複数の導出口において、分解物を含む液を導出する位置とその導出量とを調整して、静止状態にある亜臨界水中で、前記固形物の沈降または浮上する方向と逆方向で、かつその沈降速度または浮上速度よりも遅い定常流を作り出し、(3)前記定常流中で、流れの上流から、前記固形物が前記亜臨界水により分解されて微粒子化し、この微粒子が流れの中で流動する流動層と、前記被処理物がさらに微粒子化した物または完全に可溶化した物となり亜臨界水とともに流れる亜臨界水溶解層とを、少なくとも形成し、(4)さらに、被処理物の種類に応じては、前記流動層の上流に、前記流れによっても一定の箇所に固形物が留まる固定層を形成し、(5)前記一または複数の導出口のいずれかを用いて、前記亜臨界水溶解層から、所望の分解物を含む液を反応容器から取り出すことにより行う。
【0021】
また、本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法は、(1)固形物を含む被処理物と亜臨界水との混合物を、静止状態にある亜臨界水中で、前記固形物が移動する方向と逆方向に流し、(2)前記流れにおいて、流れの上流から、前記固形物が前記亜臨界水により分解されて微粒子化し、この微粒子が流れの中で流動する流動層と、前記被処理物がさらに微粒子化した物または完全に可溶化した物となり亜臨界水とともに流れる亜臨界水溶解層とを、少なくとも形成し、(3)さらに、被処理物の種類に応じては、前記流動層の上流に、前記流れによっても一定の箇所に固形物が留まる固定層を形成し、(4)前記亜臨界水溶解層の流れる距離を調整して、前記固形物の滞留時間と前記亜臨界水の滞留時間とを異ならせ、亜臨界水に可溶化した前記被処理物の成分の分解程度を調整し、目的とする分解処理物を得ることとしてもよい。
【0022】
この構成においても、上記方法と同様に、目的とする分解物を取り出すことができる。
【0023】
上記生産方法においては、上記固形物が、静止状態にある混合物中で沈殿し、前記混合物の流れが、重力と逆方向であってもよく、静止状態にある混合物中で浮遊し、前記混合物の流れが、重力方向であってもよい。本発明において、前記固形物が静止状態の前記混合物中で沈殿する場合、前記混合物の流れは、重力と逆方向であることが好ましい。また、前記固形物が静止状態の前記混合物中で浮遊する場合、前記混合物の流れは、重力方向であることが好ましい。
【0024】
上記生産方法においては、上記混合物の流速が、静止状態にある混合物中で、前記混合物の沈降速度または浮上速度以下であればよい。
【0025】
上記混合物は、スラリーであればよい。
【0026】
上記生産方法においては、亜臨界水加水分解の反応温度が、130〜374℃の範囲であり、反応圧力が、反応温度の飽和水蒸気圧以上の範囲であればよい。
【0027】
本発明において、亜臨界水に代えて若しくは亜臨界水と共に超臨界水を使用してもよい。前記亜臨界水は、例えば、温度134〜374℃で圧力0.3〜100MPaであり、好ましくは、温度150〜350℃で圧力0.5〜100MPaであり、より好ましくは、温度170〜300℃で圧力0.8〜100MPaである。
【0028】
また、上記被処理物が、食品、畜産物、農産物、水産物、木材、天然有機物、プラスチック、有機塩素系化合物、ゴム、繊維、およびこれらの廃棄物、下水処理廃棄物、ならびに、廃水処理廃棄物からなる群から選択される少なくとも1つであればよい。
【0029】
上記亜臨界水分解処理物の生産方法は、以下の装置を用いて、実施することができる。
【0030】
本発明の亜臨界水分解処理装置は、被処理物を、亜臨界水を用いて分解する反応容器と、水と前記被処理物とからなる混合物を、水の亜臨界状態を形成・維持するために、加熱する加熱手段と、加圧する加圧手段と、前記被処理物を反応容器に導入するための導入手段と、前記被処理物を反応容器に導入するための導入口と、分解物と水との混合物を反応容器から導出するための導出口とを備え、前記導出口は、前記導入口が設けられた位置とは異なる位置に設けられ、複数の位置を取ることができるものである。
【0031】
また、本発明の亜臨界水分解処理装置は、被処理物を、亜臨界水を用いて分解する縦型反応容器と、水と前記被処理物との混合物を、水の亜臨界状態を形成・維持するために、加熱する加熱手段と、加圧する加圧手段と、前記被処理物を反応容器に導入するための導入手段と、前記被処理物を反応容器に導入するための導入口と、分解物と水との混合物を反応容器から導出するための導出口とを備え、前記反応容器は、実質的に垂直に設置され、前記導入口は、前記反応容器の上端部および下端部の少なくとも一方に設けられ、導入された被処理物と亜臨界水との混合物を、静止状態にある亜臨界水中で、前記固形物が移動する方向と逆方向に流し、前記流れにおいて、流れの上流から、前記固形物が前記亜臨界水により分解されて微粒子化し、この微粒子が流れの中で流動する流動層と、前記被処理物がさらに微粒子化した物または完全に可溶化した物となり亜臨界水とともに流れる亜臨界水溶解層とを、少なくとも形成し、さらに、被処理物に応じて、前記流動層の上流に、前記流れによっても一定の箇所に固形物が留まる固定層を形成するとともに、亜臨界水溶解層を導出し、亜臨界水溶解層の流れる距離を調整できるように、前記導出口の設定位置を設定できるものである。
【0032】
上記導出口は、前記流れ方向に沿って、前記反応容器側壁に複数箇所形成されていればよい。上記導出口は、前記流れ方向に沿って、連続的に移動可能な導出口であってもよい。
【0033】
上記縦型反応容器は、内部を視覚化できる観察手段を備えていてもよい。また、上記縦型反応容器が円筒状容器であり、上記導入口が円形であり、この導入口の内径が前記縦型円筒状容器の内径の1/5〜1/15倍の範囲であればよい。
【0034】
上記装置は、上記縦型反応容器を複数備えるものであってもよい。
【0035】
また、上記亜臨界水分解処理装置は、さらに、前記反応容器の導出口に接続する流通管型円筒状二次反応容器を備え、前記流通管型円筒状二次反応容器の内径が、前記縦型円筒状容器の内径の1〜1/5倍の範囲であればよい。
【0036】
上記流通管型円筒状二次反応容器が複数であり、これらの流通管型円筒状二次反応容器同士を直列接続および/または並列接続することができるものであればよい。
【0037】
上記流通管型円筒状二次反応容器における反応温度を制御する加熱冷却手段を備えることができれば好ましい。
【0038】
上記縦型反応容器には、背圧弁が設けられ、この背圧弁を用いて、前記縦型反応容器内の反応圧力を制御することができるものであればよい。
【0039】
上記背圧弁の直前に、冷却管を備えるものであればよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法および亜臨界水分解処理装置によれば、亜臨界水溶解層の滞留時間を調整することで、反応容器内において、固形物の反応時間と可溶化物の反応時間をそれぞれ任意に設定できる。この結果、被処理物の分解反応を容易に制御できる。また、本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法および亜臨界水分解処理装置は、被処理物を連続的に処理ができるので、大規模化に適する。さらに、超臨界状態に比べて、亜臨界状態は、比較的穏やかな条件で反応が進むので、装置コストを低く抑えることができる。亜臨界水溶解層の滞留時間を調整することで、所望の有用物を選択的に高収率で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の亜臨界水分解処理装置の一例を説明するための概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の亜臨界水分解処理装置の他の一例を説明するための概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の亜臨界水分解処理装置の他の一例を説明するための概略構成図である。
【図4】図4は、本発明の亜臨界水分解処理装置の他の一例を説明するための概略構成図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例における滞留時間に対する各相の収率を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の一実施例における滞留時間に対する水相中の有機酸の収率を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の一実施例における滞留時間に対する水相中のアミノ酸の収率を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明のその他の実施例における滞留時間に対する水相中の有機酸の収率を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明のその他の実施例における滞留時間に対する水相中のアミノ酸の収率を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明のさらにその他の実施例における滞留時間に対する水相中の有機酸の収率を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明のさらにその他の実施例における滞留時間に対する水相中のアミノ酸の収率を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明のさらにその他の実施例における滞留時間に対する水相中の有機酸の収率を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明のさらにその他の実施例における滞留時間に対する水相中のアミノ酸の収率を示すグラフである。
【図14】図14は、本発明のさらにその他の実施例における滞留時間に対する水相中の有機酸の収率を示すグラフである。
【図15】図15は、本発明のさらにその他の実施例における滞留時間に対する水相中のアミノ酸の収率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
[被処理物]
本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法および亜臨界水分解処理装置を用いて分解処理される被処理物としては、畜産物、農産物、水産物、木材・植物などの天然有機物やこれらの廃棄物、食品や食品廃棄物、プラスチックや有機塩素系化合物を含む合成有機物、ゴム、繊維およびこれらの廃棄物、並びに活性汚泥や余剰汚泥を含む下水処理廃棄物、廃水処理廃棄物などである。これらの被処理物は、1種類の固形物であってもよく、数種類の固形物の混合物であってもよい。また、これらの被処理物は、水を含むものであってもよい。
【0043】
上記被処理物としては、例えば、魚腸骨、イカのイカゴロやホタテのウロ、タコのはらわた、牡蠣のゴロ、魚のあら等、ウシやブタ等の動物の肉や、骨、脳、皮、内臓、脂肪、肉骨粉、病原性プリオン等、野菜くずやトウモロコシの芯、わら等、木や竹、幹や皮、大鋸屑、廃木材等、活性汚泥、余剰汚泥、動物の糞尿等が挙げられる。被処理物が骨等の硬い固形物を含む場合には、装置の導入口の大きさ、加圧に用いられるポンプ等、管路等の事情により、あるいは反応時間の短縮の要請により、被処理物は、通常粉砕または破砕して、亜臨界水分解に供される。
【0044】
ただし、本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法および処理装置で用いられる被処理物は、固形物を含む被処理物に限られない。例えば、亜臨界水に難溶性であり、亜臨界水で相を成す液体であって、亜臨界水中で浮く若しくは沈む性質を有する液体を、被処理物とすることができる。本発明によれば、このような液体に対しても、液体の反応時間と、この液体を分解した亜臨界水溶解物の反応時間とをそれぞれ調整することができる。また、本発明の方法または装置を用いれば、亜臨界水に溶解する液体からなる被処理物であっても、適切な亜臨界水分解反応の条件を選択できる。この結果、PCB(ポリ塩化ビフェニル)のような液体のみの被処理物であっても、分解処理をすることができる。このような被処理物は、有機物を含む無機物であってもよい。
【0045】
さらに、本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法および処理装置で用いられる被処理物は、亜臨界水では分解できない無機物を含んでいてもよい。このような被処理物としては、例えば、石、砂、あるいは金属片を含む汚泥、ガラス繊維を含むFRP(繊維強化プラスチック)等が挙げられる。後述するように、本発明の装置は、縦型反応容器を使用する。上記分解できない無機物は、反応容器の底部に溜まる。したがって、反応容器の底部に溜まった分解できない無機物を随時排出することで、連続的に分解処理をすることができる。
【0046】
本発明において、被処理物に含まれる「固形物」は、有機物を含む固形物であれば好ましい。このような固形物では、亜臨界水による加水分解や熱分解が、固形物表面で起こる。このため、固形物が完全に分解されるまで時間がかかる。このような固形物は、従来連続式装置で分解する場合に、目詰まりの原因となっていた。また、このような固形物は、バッチ式の装置で分解する場合に、最初に亜臨界水に溶解した固形物成分が過度の分解または熱分解による炭化を受け、目的とする有用物が効率よく生産できなかった。
【0047】
上記固形物の密度(比重)は、亜臨界水の密度より大きいか小さければよい。本発明にかかる亜臨界水による分解においては、被処理物と亜臨界水との混合物中に含まれる固形物の沈降や浮上を利用するからである。
【0048】
[亜臨界水分解処理物の生産方法]
本発明の亜臨界水分解処理物の生産方法は、本発明の亜臨界水分解処理装置を用いて行うのが好ましい。したがって、以下では、装置の説明とともに、亜臨界水分解処理物の生産方法の説明を行う。
【0049】
[亜臨界水分解処理装置]
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる反応装置の一例を示す概念構成図である。この図に示すように、この装置は、反応容器3と、加圧手段1と、加熱手段2と、冷却管4と、背圧弁5と、反応終了物回収タンク6と、排出物回収タンク7とを備える。図1の装置では、加圧手段1は、同時に混合物導入手段でもある。この反応容器3は、縦型で円筒状であり、実質的に垂直に設置されている。この反応容器3の底部には、導入口8および排出口9が設けられている。前記導入口8には、加圧手段1および加熱手段2が管により連結されている。また、排出口9には、冷却管と背圧弁11とを介して排出物回収タンク7が連結されている。反応容器3の頭部および側壁には、導出口が設けられている。図1の例では、合計8個の導出口101〜108が設けられている。導出口101〜108は、それぞれのバルブを介して反応終了物回収タンク6に連結している。
【0050】
図1の装置を用いた被処理物の分解処理は、例えば次のようにして行われる。まず、被処理物を予め粉砕して粒子化して、水と混合し、スラリーを調製する。このスラリーは、管を通じて加圧手段1に送られて加圧される。次に、加圧されたスラリーは、加熱手段2に送られて加熱され、亜臨界状態になる。亜臨界状態のスラリーは、導入口8から反応容器3の底部に導入される。この反応容器3内で、下から、固定層、流動層および亜臨界水溶解層がそれぞれ形成される。亜臨界水溶解層は、反応容器3の上部および側部に設けられた導出口101〜108のいずれかから取り出される。取り出された亜臨界水溶解層は、冷却管4および背圧弁5を介して、反応終了物回収タンク6に回収される。
【0051】
(加熱手段・加圧手段)
前記加熱手段1は、特に制限なく公知の加熱手段を用いることができる。例えば、電気ヒータ、誘導加熱装置、熱媒油・水蒸気による加熱等が挙げられる。前記加圧手段2としては、例えば、加圧ポンプなどを用いることができる。
【0052】
(導入手段)
前記導入手段は、水と被処理物との混合物を反応容器3内に導入する手段である。導入手段としては、特に制限はないが、例えば高圧圧入装置などが利用できる。本発明では、被処理物と亜臨界水との混合物を、スラリーとして反応装置に導入することが好ましい。このようにすれば、前記加圧手段1を導入手段としても使用することができる。この結果、高価な高圧圧入装置(加圧手段)は1台ですむので、装置コストを低く抑えることができる。加圧手段1を導入手段としても使用する場合には、例えば、以下のようにして、被処理物を反応容器3内に導入する。予め粉砕して微粒子化しておいた被処理物中の固形物を、水と混合してスラリー状にする。次に、このスラリー状の混合物は、加熱手段1で加熱した後、加圧手段2により、導入口8から反応容器3内に導入される。本発明の亜臨界水分解処理装置は、さらに、被処理物中の固形物を、予め粉砕して微粒子化しておくための、微粒子化手段を有していてもよい。
【0053】
本発明の装置では、被処理物の分解は、亜臨界水を用いて行うのが好ましい。超臨界水は、液体の水に比べて、強い酸化力を持ち、拡散係数が大きいので、優れた反応溶媒である。その一方で、超臨界水は、殆んど全ての被処理物を二酸化炭素にまで分解する。亜臨界水は、超臨界水に比べ酸化力は弱いが、有用物を得るための、十分な加水分解力と油や脂肪酸などに対する十分な抽出力とを有する。また、亜臨界水は、超臨界水に比べ、金属等に対する腐食性が低い。この結果、反応装置の素材としては、ハステロイ、インコネルなどの高価な材質のものを使用しなくても、例えば、通常の耐圧容器で使用されている安価な軟鋼(炭素鋼)などを使用することができる。有機酸が生成するような比較的腐食性の高い条件下においても、ハステロイ、インコネルなどに比べて、はるかに安価なSUS316程度の材質を用いることができる。なお、本発明では、必要に応じ、亜臨界水と超臨界水とを併用してもよい。また、水に酸やアルコールなどを加えて、亜臨界水としてもよい。
【0054】
(反応容器)
本発明の装置において、反応容器3の形状は、特に制限されないが、円筒状であれば好ましい。この反応容器3の上端部または下端部の少なくとも一方には、導入口8が、設けられている。前記スラリー等の被処理物は、この導入口8を介して、反応容器内に導入される。導入口8の内径は、前記したように、前記縦型円筒状容器の内径の1/5〜1/15倍の範囲であればよい。導入口8の内径が、上記範囲にあれば、以下に述べるように反応容器3内での被処理物の流速を制御できる。例えば、輸送速度若しくはそれ以上の速度で、スラリーを導入口8から反応容器3内へ導入すると、容器内へ導入されたスラリーは、反応容器3内の内径が導入口の内径より大きいので、その流速が遅くなる。この結果、スラリーの流速は、粒子の流動化開始速度(輸送速度)以上に調整されるので、反応容器3内に、固液流動層を形成することができる。ここで、輸送速度とは、前記したように粒子が静止した流体中を沈降または浮上する速度のことをいう。亜臨界水が輸送速度以上の速度で反応容器3内を流れると、被処理物中に含まれる固形物も、その流れに乗って全て流れる。この結果、固形物と亜臨界水溶解物におけるそれぞれの反応時間に差がなくなる。亜臨界水が流動化開始速度以下の速度で反応容器3内を流れると、固形物は移動せず固定層を形成する。亜臨界水が流動化開始速度以上の速度で反応容器3内を流れると、固形物は流動層を形成する。すなわち、固液流動層が形成される。
【0055】
反応容器3内に、比較的粒度の大きい、未反応の固形物が多量に存在する場合には、反応容器の上端部または下端部の、導入口8が設けられている部分では、固定床の状態(固定層)となっている。比較的粒度の大きい、未反応の固形物は、次第に亜臨界水による反応を受け、粒径が小さくなる。粒径が小さくなった粒子は、亜臨界水の流れにより反応容器の下流へ流動して、固液流動層(流動層)を形成する。亜臨界水の分解反応によって生成した有用物は、亜臨界水に溶解して、プラグフロー(亜臨界水溶解層)を形成しながら、反応容器3内の下流方向に移動していく。反応容器3内で導入口が設けられている側には、前記固定相を形成する固形物を攪拌・破砕するための手段が、設けられていてもよい。これにより、分解反応をより効率的に進めることができる。
【0056】
導出口は、前記導入口8が設けられた位置とは異なる位置に設けられる。導出口は、導入口が設けられた位置の下流側で複数の位置を取ることができる。図1の例では、前記導出口が、前記流れ方向に沿って、前記反応容器側壁に複数箇所形成されている(101〜108)。このように複数の導出口を設けることで、プラグフローを反応容器3から取り出すことができる。具体的には、亜臨界水に溶解した被処理物の滞留時間、すなわち被処理物成分の亜臨界水分解時間に対応させて、反応容器3内の亜臨界水の流れ方向に沿って、導出口の位置を設定すればよい。図1の例では、複数箇所形成されている導出口(101〜108)のいずれかを選択して、プラグフローを取り出すことができる。このように、いずれかの導出口からプラグフローを取り出すことで、亜臨界水分解反応時間を調整することができる。
【0057】
反応容器3に設ける導入口8と導出口の位置は、被処理物中の固形物の密度と、亜臨界水の密度とに基づいて決定される。例えば、導入する被処理物中の固形物の密度が、亜臨界水の密度よりも大きければ、導入口8は反応容器3の下端部に設置され、導出口は上記導入口を設けた位置よりも上部に設置される。逆に、導入する被処理物中の固形物の密度が、亜臨界水の密度よりも小さければ、導入口8は反応容器3の上端部に設置され、導出口は上記導入口を設けた位置よりも下部に設置される。あるいは、導入する被処理物中の固形物の密度が、亜臨界水の密度より大きいものと小さいものが混在する場合、導入口8は、反応容器3の上端部と下端部とに設置することができる。この場合、上下端部からそれぞれ所望の位置にある2箇所の導出口から、あるいは同一の一つの導出口から亜臨界水溶液層を取り出すことができる。また、亜臨界水より密度が大きい固形物中に、少量の亜臨界水より密度が小さい固形物が含まれている場合、反応容器の下端部のみに導入口を設置し、前記密度の小さい固形物の浮遊を抑制するためのフィルターを、一枚以上、反応容器内に設置してもよい。
【0058】
被処理物の固形物は、固定層または固液流動層に留まり、固形物の表面から亜臨界水により分解される。また、例えば骨などのように、固形物が有機物を含む無機物の場合は、骨中の有機物が、亜臨界水により分解可溶化することで、固形物は、骨の粒子が割れて粒子径が小さくなり、最終的にはリン酸カルシウムの粉となる。反応容器内では、分解の過程で、流動化開始粒子径より大きな粒子からなる固定層と、それより小さな粒子からなる流動層と、さらに粉化して亜臨界水と同じ速度、すなわちプラグフローの状態となり、粉化したリン酸カルシウムを含んだ亜臨界水溶解層との三層を形成させる。この亜臨界水溶解層において、亜臨界水溶解層の流れる距離を調整することにより、有機物の分解程度を調整し、目的とする分解物を回収することができる。骨中の有機物が、病原性プリオン(異常プリオン)などの毒性物質や病原性物質であった場合であっても、上記分解処理過程で、それらを分解し、無毒化することができる。
【0059】
スラリーを、反応容器3内まで配管圧送する場合には、スラリーの流速は、固形物の輸送速度もしくはそれ以上の速度にすることが好ましい。配管圧送時の速度が輸送速度以下となると、スラリーに含まれる固形物成分が配管底部に堆積し、管の閉塞の原因となるからである。
【0060】
亜臨界水の密度および粘度は、178℃(1MPa飽和水)で887kg/m3、0.541kg/m・hr、364℃(5MPa飽和水)で778kg/m3、0.359kg/m・hr、311℃(10MPa飽和水)で688kg/m3、0.294kg/m・hrである。例えば、亜臨界水の浸透した木粉の密度は、約1000kg/m3であるため、適切な流速で亜臨界水を流すことにより流動層を形成できる。
【0061】
被処理物中に含まれる固形物の密度が亜臨界水の密度より大きい場合、輸送速度は、亜臨界水の物性値に基づいて、固形物と粒子径の関係から計算できる。流動化開始速度(Umf)は、Wenの式で計算できる。一方、輸送速度(Ut)も、流体抵抗の式より計算できる。流動化開始速度(Umf)とは、粒子に働く流体抵抗が重力と釣り合う流速のことである。流動化開始速度(Umf)以上の流速で亜臨界水を圧送することにより、固液流動層を形成することができる。また、輸送速度(Ut)以上の流速で亜臨界水を圧送すると、前記したように、固形物が反応容器の導出口から流出する。
【0062】
固形粒子(固形分)の真比重が1500kg/m3の場合における、1MPa、5MPa、10MPaの飽和水で計算した各粒子径(mm)に対する流動化開始速度(Umf)、輸送速度(Ut)およびその比(Ut/Umf)を、下記表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から、加水分解を行う被処理物に含まれる固形物を適切なサイズに粉砕し、スラリーとすることにより、前記固形物が輸送中に沈降しない十分な速度で移送することができ、スラリーを加熱することができ、反応容器中では、スラリーの十分な流動状態が得られることがわかる。例えば、粒子径が0.1mmの被処理物のスラリーを、5MPaの飽和水で反応させる場合、輸送速度(Ut)は、0.022m/sである。これから、スラリーをその10倍の0.22m/sで輸送すれば、スラリーは十分に輸送され、加熱することが可能となる。このスラリーが、導入口の10倍の内径を持つ反応容器内に導入された場合、空筒速度は、1/100になる。この結果、固液流動層での亜臨界水の空筒速度は、0.0022m/sとなり、流動化開始速度(Umf)の約4倍の速度の固液流動層が形成できる。ここで、空筒速度とは、亜臨界水流体が反応容器3中を移動する速度のことをいう。
【0065】
表1から明らかなように、固体粒子の流動化開始速度(Umf)および輸送速度(Ut)は、固体粒子の粒子径により異なる。粒子径が大きいほど、流動化開始速度(Umf)および輸送速度(Ut)は、ともに大きくなる。このため、粒子径の異なる被処理物の粉砕物を、ある一定の空筒速度で反応容器3内を上昇させた場合、粒子径の大きな固体物は、固液流動層を形成せず、反応容器3内の底部に固定床を形成する。一旦固定床を形成した粒子径の大きな固体物も、亜臨界水による加水分解反応により、固体表面から分解物が溶解し、粒径が小さくなると、反応容器3内を上昇し、固液流動層を形成するようになる。なお、粒子径および真比重が比較的揃った固形物成分を含む被処理物を、亜臨界水分解を行う場合、その粒子径が流動化開始粒子径より小さければ、固定床(固定層)を形成しない場合がある。
【0066】
このように本発明では、反応させる固形物の密度、粒子径および反応温度により、固液比および反応時間を幅広く設定することができる。流量は、例えば加圧手段や導入手段で制御できる。例えば、加圧ポンプを用いた場合、その回転数により流量を調整できる。
【0067】
なお、図1には示されていないが、本発明にかかる反応容器3には、反応容器3の内部の様子を観察できる観察手段を設けることが好ましい。観察手段としては、特に制限はされないが、例えば反応容器側壁への窓の設置や、カメラの設置などが挙げられる。窓を設ける場合には、さらに採光用の窓を合わせて設置してもよい。また、カメラを用いる場合には、必要に応じて照明装置を設置してもよい。このように観察手段を設けることで、反応容器内の混合物の色、粒子の大きさ、濁度、固定層の長さ、流動層の流動状態とこの層の長さなどを観察または測定することにより、反応が設定どおりに進んでいるか否かを確認することができる。設置する観察手段の数は、特に制限はなく、例えば反応容器3の上端から下端まで一定間隔で設置してもよい。特に、反応容器3側壁に導出口を複数設ける場合には、導出口に対応して観察手段を設置してもよい。
【0068】
反応容器3の底部に排出口9を設けてもよい。被処理物中に含まれる亜臨界水に溶解しない無機物や炭化物等の密度は、有機性固形分の密度より大きい。反応容器3の底部に排出口9を設ければ、底部に沈降する無機物や炭化物等を排出口9から容易に排出することができる。
【0069】
本発明において、反応容器3における反応温度は、加熱手段により調整される。その温度は、130〜374℃の範囲にあることが好ましく、150〜350℃の範囲であることがより好ましく、170〜300℃の範囲であることがさらに好ましい。反応温度が150℃以上であれば、反応時間が長すぎることはない。一方、反応時間が300℃以下であれば、分解反応が過度に進む恐れもなく、また、反応容器3の腐食が防止できる。また、保温等を目的として、反応容器の外周に加熱保温装置を設けてもよい。さらに、リリーフ弁などの安全手段を設けてもよい。
【0070】
本発明の亜臨界水分解処理装置では、反応時間が極端に長くならない範囲で、比較的低温で分解反応を行うのが好ましい。有用物の熱分解を防ぎ、ランニングコストを低減できるからである。例えば、残飯に多量に含まれるでんぷんを加水分解してグルコース、オリゴ糖を得る場合、150〜220℃で加水分解を行えばよい。でんぷんは、加水分解を比較的受けやすく、また熱分解により炭化を起こしやすいからである。また、例えば、おからに含まれるセルロースを加水分解してグルコース、オリゴ糖を得る場合、170〜250℃で加水分解を行うと好ましい。セルロースは、でんぷんに比べ、加水分解速度が遅いからである。さらに、魚腸骨に含まれるタンパク質を加水分解してアミノ酸および有機酸と、油とを同時に抽出して回収する場合には、150〜250℃で加水分解を行うとよい。
【0071】
本発明では、反応を促進させるため、および熱分解を抑制するために、一般に亜臨界水分解に用いられる触媒を用いてもよい。使用する触媒としては、例えば硫酸、塩酸、リン酸などの酸触媒、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ触媒、酸化マンガン、酸化銅などの金属酸化物系触媒、ロジウム、ルテニウム、パラジウムなどの希土類酸化物系触媒、金、白金などの貴金属系触媒などが挙げられる。触媒の添加方法は、特に制限されず、例えば予めスラリーに添加しておいてもよい。
【0072】
本発明の装置では、反応圧力の制御を、背圧弁5、11の開度を調整することで行ってもよい。また、背圧弁5、11の直前に、冷却管4、10を備えていてもよい。冷却管10を備えると、反応終了物を、安全に反応終了物回収タンク6等に回収することができる。この反応終了物タンク6では、目的生成物が水溶性のオリゴ糖、単糖類、アミノ酸、有機酸、ペプチドなどである場合には、水に溶解した状態で回収され、油、脂肪等の水不溶性物質の場合は、水溶液上部に滞留した状態で回収される。
【0073】
本発明の生産方法を用いて生産される亜臨界水分解処理物は、例えば、前記反応終了物から回収できる。この反応終了物は、水相、油相、固相を含む混合物である。これらの相は、自然分離や遠心分離等によって分離できる。得られる分解処理物の種類は、温度、圧力、反応時間、あるいは被処理物の種類により異なる。
【0074】
例えば、被処理物が、ウシ由来の骨や肉等の場合、水相には、有機酸、リン酸、アミノ酸、アンモニア、および糖等が含まれる。得られる有機酸は、例えばピログルタミン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、コハク酸、ピルビン酸、プロピオン酸等の低級脂肪酸(カルボキシル基を持つもの)である。得られるアミノ酸は、例えば、ヒスチジン、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、タウリン等である。得られる糖は、例えば、グルコース、フルクトース等である。また、油相には、脂肪酸等が含まれる。脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸等が挙げられる。さらに、固相には、骨に由来するリン酸カルシウムなどが含まれる。
【0075】
また、例えば、被処理物が木材等に由来する場合、水相には、有機酸や糖等が含まれる。得られる有機酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、酢酸、ギ酸、レブリン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、およびコハク酸等が挙げられる。得られる糖としては、例えば、セロトリオース(グルコースが3つ結合したもの)、セロビオース(グルコースが2つ結合したもの)、グルコース、フルクトース、およびエリトロース(グルコースの分解生成物)等が挙げられる。油相には、例えばタール状の油状物質が含まれる。さらに、固相には、例えば、多孔構造を有する低密度炭素材が含まれる。
【0076】
さらに、例えば、被処理物が軟体動物に由来するホタテのウロ等に由来する場合、水相には、有機酸、リン酸、およびアミノ酸等が含まれる。得られる有機酸としては、例えば、ピログルタミン酸、乳酸、酢酸、ギ酸、コハク酸、ピルビン酸等が挙げられる。また油相には、たとえば脂肪酸等が含まれる。得られる脂肪酸としては、例えばエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、オレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、エイコセン酸、ドコセン酸等が挙げられる。
【0077】
これらの分解生成物をそれぞれ分離する方法については、特に制限されず、従来公知の方法により行えばよい。例えば、水相から個々の分解生成物を分離する方法としては、例えば、イオン交換法、膜分離法、晶析法、およびこれらの複合プロセスなどが挙げられる。また、油相から個々の分解生成物を分離する方法としては、例えば、真空蒸留などが挙げられる。
【0078】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1の反応装置にさらに二次反応容器を設けたものである。図2は、本発明の亜臨界水分解処理装置の他の一例を説明するための概略構成図である。図2において、図1と同一の部位には、同一符号を付している。図2に示すように、二次反応容器12は、管を介して、反応容器3の導出口101に連結している。二次反応容器12は、それぞれ管で連結されている。それぞれの管には切り替えバルブが設けられている。二次反応容器12は、バルブの切り替えにより、直列接続、並列接続が自在に切り替えられる。これらの二次反応容器12は、管によって冷却管に連結され、さらに背圧弁5と連結されている。背圧弁5の先には、反応終了物回収タンク6が配置されている。また、この図の例では、反応容器3の側壁に観察手段13が設けられている。
【0079】
本実施の形態のように、本発明の装置は、反応容器3に加えて、導出口101〜108を介して接続される二次反応容器12を備えてもよい。この構成により、亜臨界水による分解反応をさらに長時間行うことができる。このような二次反応容器12としては、例えば、流通管型円筒状二次反応容器が好ましい。
【0080】
上記二次反応容器12は、加熱手段を有することが好ましい。また、二次反応容器に連結される導入管および導出管には、それぞれ切り替えバルブを有することが好ましい。
【0081】
反応容器3と二次反応容器12とを直列に接続して、その流量をひとつの加圧手段により調整することとしてもよい。この場合、反応容器3と二次反応容器12との反応圧力および反応温度は、容器内での沸騰防止のために、大きく変化させないほうがよい。したがって、二次反応容器12では、反応達成度は、亜臨界水の流速、すなわち二次反応容器12の内径に依存し、滞留時間は二次反応容器12の長さに依存する。
【0082】
液相の反応達成度は、被処理物と反応温度に依存する。液相の反応達成度を適正に保つためには、二次反応容器12の内径は、反応容器3の内径の1〜1/5の範囲にすればよい。
【0083】
反応時間を長くするためには、複数の二次反応容器12を、連結管を用いて並列および/または直列に接続すればよい。このように接続することで、適切な滞留時間が確保できる。また、連結管に切り替えバルブを設けてもよい。それぞれの切り替えバルブを適宜開閉することで、使用する二次反応容器を選択して、反応時間を調節することができる。
【0084】
二次反応容器12は、反応容器3と接続されている。このため、両者の反応温度をほぼ等しくするために、二次反応容器12の温度を調整することが好ましい。加水分解反応等により発熱する場合には、二次反応容器12は、反応容器3の反応温度とほぼ等しくなるまで冷却することが好ましい。一方、吸熱反応や放熱を生じる場合には、二次反応容器12は、反応容器3の反応温度とほぼ等しくなるまで加熱することが好ましい。
【0085】
二次反応容器12の反応温度が、例えば150℃以下になると、加水分解等の反応速度が遅くなる。このため、二次反応容器12の長さを著しく長くしなければならない場合がある。また、反応温度が300℃を超えると、加水分解物の熱分解反応速度が大きくなる。このため、目的生成物を、高い収率で回収することが困難になるとともに、二次反応容器12が腐食することがある。
【0086】
二次反応容器12にのみ、上記触媒を利用する場合は、二次反応容器12の導入用連結管に、触媒の注入口を設け、ここから注入することとしてもよい。
【0087】
実施の形態2にかかる装置は、反応容器3から導出された反応終了物をさらに分解したい場合に、有効である。反応容器3に設けられた導出口101〜108のいずれかから、取り出された亜臨界水分解物は、管を介して二次反応容器12に導入される。図2の例では、二次反応容器12は4個ある。これらの二次反応容器12は、これらに連結されている切り替えバルブの開閉を組み合わせることにより、4個の二次反応容器12を直列若しくは並列またはこれらの組み合わせで、それぞれを接続することができる。この接続の組み合わせにより、分解反応を調整することができる。二次反応容器12内で得られた分解物は、二次反応容器12から、管を通じて、冷却管4および背圧弁5を介して、反応終了物回収タンク6に、回収される。ここで、背圧弁5は、反応容器3および二次反応容器12の双方若しくはいずれか一方の容器内の圧力を調整するためのものである。反応容器3の底部に堆積した未反応物は、排出口9、冷却管10および背圧弁11を介して排出物回収タンク7に回収される。
【0088】
(実施の形態3)
図3は、本発明の亜臨界水分解処理装置の他の一例を説明するための概略構成図である。図3において、図1と同一の部位には、同一符号を付している。図3に示すように、本実施の形態の装置では、反応容器3内の亜臨界水の流れ方向に沿って、連続的に移動可能な導出口が、設けられている。
【0089】
移動可能な導出口は、可撓性パイプ14と、その先端に位置し、所望の亜臨界水溶解層を吸入する吸入部15と、前記可撓性パイプ14を吊るチェーン16と、このチェーン16を巻き上げあるいは巻き戻し可能な槽内ホイール17とから構成される。チェーン16の長さを調整することで、吸入部15を所望の位置に固定することができる。
【0090】
この図の例では、可撓性パイプ14は、反応容器3の上端部から挿入する構成であるが、反応容器3の下端部から挿入する構成であってもよい。
【0091】
(実施の形態4)
図4は、本発明の亜臨界水分解処理装置の他の一例を説明するための概略構成図である。図4において、図1と同一の部位には、同一符号を付している。図4に示すように、反応容器3は、導出口101〜108のいずれかを介して、管により二次反応容器12と結合している。この二次反応容器12には、3つの導出口201〜203が形成されている。導出口201〜203は、それぞれ独立に、冷却管4および背圧弁5を介して反応終了物回収タンク6に連結している。この構成によれば、反応容器3から取り出され、二次反応容器12に導入された亜臨界水溶解層が、温度低下により、水相、油相、固相などに応じて層を形成した場合であっても、二次反応容器12に設けられた複数の導出口から、目的の相を回収することができる。
【実施例1】
【0092】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明は、これらによってなんら制限されるものではない。
【0093】
(実施例1)
図1の亜臨界水分解処理装置を用いて、魚あら(コノシロをミンチにしたもの)の亜臨界水処理を行った。導入口8の内径を15mm、反応容器3の内径を128mm、高さを3mとした。このとき、導入口8の内径は、反応容器3の内径の約1/9倍である。流速を1リットル/minとし、反応温度200℃および260℃の2通りの処理を行った。反応温度200℃での結果を、図5、6のグラフに、反応温度260℃での結果を、図8、9のグラフに示す。なお、図5のグラフの縦軸には、各相の収率(kg/kg−乾燥原料)を、図6〜9のグラフには、水相中の各物質の収率(kg/kg−乾燥原料)を、図5〜9の横軸には、反応容器3での滞留時間(反応時間)をとっている。反応容器3での滞留時間(反応時間)は、反応容器3の高さ方向に設けた複数の導出口101〜107のいずれかを選択することで変更した。図5〜9の横軸の上部に、導出口101〜107のそれぞれの位置での滞留時間(反応時間)を示した。また、図7、9におけるアミノ酸の略称は、以下に示すとおりである。
ASP アスパラギン酸
THR トレオニン
SER セリン
GLU グルタミン酸
PRO プロリン
GLY グリシン
ALA アラニン
CYS シスチン
VAL バリン
MET メチオニン
ILE イソロイシン
LUE ロイシン
TYR チロシン
PHE フェニルアラニン
LYS リシン
HIS ヒスチジン
ARG アルギニン
【0094】
(実施例2)
図1の亜臨界水分解処理装置を用いて、活性汚泥の余剰汚泥の亜臨界水処理を行った。導入口8の内径を15mm、反応容器3の内径を128mm、高さを3mとした。このとき、導入口49の内径は、反応容器3の内径の約1/9倍である。流速を1リットル/minとし、反応温度160℃、200℃および240℃の3通りの処理を行った。反応温度160℃での結果を、図10、11のグラフに、反応温度200℃での結果を、図12、13のグラフに、反応温度240℃での結果を、図14、15のグラフに示す。なお、図10〜15のグラフの縦軸には、水相の収率(kg/kg−乾燥原料)を、横軸には、反応容器3での滞留時間(反応時間)をとっている。反応容器3での滞留時間(反応時間)は、反応容器3の高さ方向に設けた複数の導出口101〜107のいずれかを選択することで変更した。図10〜15の横軸の上部に、導出口101〜107のそれぞれの位置での滞留時間(反応時間)を示した。また、図11、13、15におけるアミノ酸の略称は、実施例1の図7、9におけるアミノ酸の略称と同様である。
【0095】
図5に示したように、200℃で魚あらの亜臨界処理を行ったところ、残存固体の収率は、最も反応時間の短い導出口107でも、0.05(kg/kg−乾燥原料)以下である。滞留時間の増加に伴って、残存固体の収率は殆んど変化していない。これは魚あらの分解が十分に進み、リン酸カルシウムのみになっているためである。また、例えば、図11に示したように、160℃で活性汚泥の余剰汚泥の亜臨界処理を行う際には、導出口103を選択することで、メチオニンを高収率で回収できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明によれば、例えば焼却処分される廃棄物を資源化できる。この結果、本発明は、例えば、環境資源化、ゼロエミッション技術の確立等に有用である。また、本発明によれば、例えば、廃棄物が含有する有機酸、アミノ酸等の有用物の資源化も可能である。さらに、酢酸等の有機酸をメタン発酵の原料に用いれば、高速・高消化率のメタン発酵が可能となり、高効率でのエネルギー化も可能となる。さらに本発明によれば、例えば、病原性プリオン(異常プリオン)等を含む恐れのある肉骨粉等も無毒化および資源化が可能である。この結果、本発明は、環境浄化等にも有用である。さらにまた、本発明によれば、廃棄物以外の有機物原料からも、有用な亜臨界水分解処理物を生産できる。
【符号の説明】
【0097】
1 加圧手段
2 加熱手段
3 反応容器
4 冷却管
5 背圧弁
6 反応終了物回収タンク
7 排出物回収タンク
8 導入口
9 排出口
10 冷却管
11 背圧弁
12 二次反応容器
13 観察手段
14 可橈性パイプ
15 吸入部
16 チェーン
17 槽内ホイール
101、102、103、104、105、106、107、108 導出口
201、202、203 導出口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内が水の亜臨界状態に保たれた反応容器に設けられた導入口を介して、被処理物を反応容器内に連続的に供給し、
前記反応容器に導入口が設けられた位置とは異なる位置に設けられた一または複数の導出口を設け、
反応容器内で、分解物を含む亜臨界水がプラグフローを形成するように、導入口から導出口までの距離と前記分解物を含む液の反応容器内での流速を制御する亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項2】
容器内が水の亜臨界状態に保たれた反応容器に設けられた導入口を介して、被処理物を反応容器内に連続的に供給し、
前記反応容器に導入口が設けられた位置とは異なる位置に設けられた一または複数の導出口から、分解物を含む液を連続的に取り出して、反応容器内に、所期分解物の定常的濃度分布を生じさせ、
前記一または複数の導出口のうち、所期分解物濃度の高い位置に設けられた導出口から、前記所望の分解物を取り出す亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項3】
容器内が水の亜臨界状態に保たれた縦型の反応容器に設けられた導入口を介して、亜臨界水による分解速度が遅く、亜臨界水とは比重が異なる固形物を含む被処理物を反応容器内に連続的に供給し、
前記反応容器に導入口が設けられた高さとは異なる位置に設けられた一または複数の導出口において、分解物を含む液を導出する位置とその導出量とを調整して、静止状態にある亜臨界水中で、前記固形物の沈降または浮上する方向と逆方向で、かつその沈降速度または浮上速度よりも遅い定常流を作り出し、
前記定常流中で、流れの上流から、前記固形物が前記亜臨界水により分解されて微粒子化し、この微粒子が流れの中で流動する流動層と、前記被処理物がさらに微粒子化した物または完全に可溶化した物となり亜臨界水とともに流れる亜臨界水溶解層とを、少なくとも形成し、
さらに、被処理物の種類に応じては、前記流動層の上流に、前記流れによっても一定の箇所に固形物が留まる固定層を形成し、
前記一または複数の導出口のいずれかを用いて、前記亜臨界水溶解層から、所望の分解物を含む液を反応容器から取り出すことを特徴とする亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項4】
固形物を含む被処理物と亜臨界水との混合物を、静止状態にある亜臨界水中で、前記固形物が移動する方向と逆方向に流し、
前記流れにおいて、流れの上流から、前記固形物が前記亜臨界水により分解されて微粒子化し、この微粒子が流れの中で流動する流動層と、前記被処理物がさらに微粒子化した物または完全に可溶化した物となり亜臨界水とともに流れる亜臨界水溶解層とを、少なくとも形成し、
さらに、被処理物の種類に応じては、前記流動層の上流に、前記流れによっても一定の箇所に固形物が留まる固定層を形成し、
前記亜臨界水溶解層の流れる距離を調整して、前記固形物の滞留時間と前記亜臨界水の滞留時間とを異ならせ、亜臨界水に可溶化した前記被処理物の成分の分解程度を調整し、目的とする分解処理物を得ることを特徴とする亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項5】
請求項4に記載の亜臨界水分解処理物の生産方法であって、
前記固形物が、静止状態にある混合物中で沈殿し、前記混合物の流れが、重力と逆方向である亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項6】
請求項4に記載の亜臨界水分解処理物の生産方法であって、
前記固形物が、静止状態にある混合物中で浮遊し、前記混合物の流れが、重力方向である亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載の亜臨界水分解処理物の生産方法であって、
前記混合物の流速が、静止状態にある混合物中で、前記混合物の沈降速度または浮上速度以下であることを特徴とする亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかに記載の亜臨界水分解処理物の生産方法であって、
前記混合物が、スラリーである亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の亜臨界水分解処理物の生産方法であって、
亜臨界水加水分解の反応温度が、130〜374℃の範囲であり、反応圧力が、反応温度の飽和水蒸気圧以上の範囲であることを特徴とする亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載の亜臨界水分解処理物の生産方法であって、
前記被処理物が、食品、畜産物、農産物、水産物、木材、天然有機物、プラスチック、有機塩素系化合物、ゴム、繊維、およびこれらの廃棄物、下水処理廃棄物、ならびに、廃水処理廃棄物からなる群から選択される少なくとも1つである亜臨界水分解処理物の生産方法。
【請求項11】
被処理物を、亜臨界水を用いて分解する縦型反応容器と、
混合物を反応容器に導入するための導入口と、
前記縦型反応容器の縦方向に設けられた複数の導出口と、
被処理物と水からなる混合物を加圧する加圧手段と、
前記加圧された混合物を加熱する加熱手段と、
前記縦型反応容器の底部に設けられた排出口と
を備える亜臨界水分解処理装置。
【請求項12】
被処理物を、亜臨界水を用いて分解する縦型反応容器と、
水と前記被処理物とからなる混合物を、水の亜臨界状態を形成・維持するために、加熱する加熱手段と、加圧する加圧手段と、
前記混合物を反応容器に導入するための導入手段と、
前記混合物を反応容器に導入するための導入口と、
分解物と水との混合物を反応容器から導出するための導出口と
を備え、
前記導出口は、亜臨界水の流れ方向において前記導入口が設けられた位置とは異なる位置に移動可能、または異なる位置のなかから選択可能であることを特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項13】
被処理物を、亜臨界水を用いて分解する反応容器と、
水と前記被処理物とからなる混合物を、水の亜臨界状態を形成・維持するために、加熱する加熱手段と、加圧する加圧手段と、
前記混合物を反応容器に導入するための導入手段と、
前記混合物を反応容器に導入するための導入口と、
分解物と水との混合物を反応容器から導出するための導出口と
を備え、
前記導出口は、亜臨界水の流れ方向において前記導入口が設けられた位置とは異なる位置に移動可能、または異なる位置のなかから選択可能であり、
反応容器内で、前記分解物がプラグフローを形成するように、導入口から導出口までの距離と前記分解物を含む液の反応容器内での流速が制御される亜臨界水分解処理装置。
【請求項14】
被処理物を、亜臨界水を用いて分解する縦型反応容器と、
水と前記被処理物との混合物を、水の亜臨界状態を形成・維持するために、加熱する加熱手段と、加圧する加圧手段と、
前記被処理物を反応容器に導入するための導入手段と、
前記被処理物を反応容器に導入するための導入口と、
分解物と水との混合物を反応容器から導出するための導出口と
を備え、
前記反応容器は、実質的に垂直に設置され、
前記導入口は、前記反応容器の上端部および下端部の少なくとも一方に設けられ、
導入された被処理物と亜臨界水との混合物を、静止状態にある亜臨界水中で、前記固形物が移動する方向と逆方向に流し、前記流れにおいて、流れの上流から、前記固形物が前記亜臨界水により分解されて微粒子化し、この微粒子が流れの中で流動する流動層と、前記被処理物がさらに微粒子化した物または完全に可溶化した物となり亜臨界水とともに流れる亜臨界水溶解層とを、少なくとも形成し、さらに、被処理物に応じて、前記流動層の上流に、前記流れによっても一定の箇所に固形物が留まる固定層を形成するとともに、亜臨界水溶解層を導出し、亜臨界水溶解層の流れる距離を調整できるように、前記導出口の設定位置を設定できることを特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項15】
請求項14に記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記導出口が、前記流れ方向に沿って、前記反応容器側壁に複数箇所形成されている亜臨界水分解処理装置。
【請求項16】
請求項14に記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記導出口が、前記流れ方向に沿って、連続的に移動可能な導出口である亜臨界水分解処理装置。
【請求項17】
請求項14ないし16のいずれかに記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記縦型反応容器は、内部を視覚化できる観察手段を備えることを特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項18】
請求項14ないし17のいずれかに記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記縦型反応容器が円筒状容器であり、前記導入口が円形であり、この導入口の内径が前記縦型円筒状容器の内径の1/5〜1/15倍の範囲であることを特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項19】
請求項14ないし18のいずれかに記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記装置は、前記縦型反応容器を複数備えることを特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項20】
請求項14ないし19のいずれかに記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記亜臨界水分解処理装置は、さらに、前記反応容器の導出口に接続する流通管型円筒状二次反応容器を備え、
前記流通管型円筒状二次反応容器の内径が、前記縦型円筒状容器の内径の1〜1/5倍の範囲であることを特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項21】
請求項14ないし20のいずれかに記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記流通管型円筒状二次反応容器が複数であり、
これらの流通管型円筒状二次反応容器同士を直列接続および/または並列接続すること を特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項22】
請求項20または21に記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記流通管型円筒状二次反応容器における反応温度を制御する加熱冷却手段を備えることを特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項23】
請求項14ないし22のいずれかに記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記縦型反応容器には、背圧弁が設けられ、
この背圧弁を用いて、前記縦型反応容器内の反応圧力を制御することを特徴とする亜臨界水分解処理装置。
【請求項24】
請求項23に記載の亜臨界水分解処理装置であって、
前記背圧弁の直前に、冷却管を備えることを特徴とする亜臨界水分解処理装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−179302(P2010−179302A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50600(P2010−50600)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【分割の表示】特願2005−518003(P2005−518003)の分割
【原出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】