説明

亜酸化窒素の分解触媒及びその触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法

【課題】排気ガス中に含まれる亜酸化窒素を効率的に、かつ、300℃以下という低温域でも効果的に分解除去できる触媒を提供すること。
【解決手段】四三酸化コバルト(Co34)を主成分とする酸化コバルトとアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とからなる亜酸化窒素分解触媒、及びその触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法、並びにa)コバルト塩、b)コバルト塩の酸化物、及びc)水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質の少なくとも一方を水溶液の状態に調製した後これらを混合させることによって生じた沈殿物、からなる群より選択される少なくとも一つに対し、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩を含浸担持により添加し、乾燥後、焼成する亜酸化窒素分解触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜酸化窒素(N2O)の分解用触媒及びその製造方法並びにその触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法に関し、詳しくは、医療現場で使用される麻酔、アジピン酸や硝酸の製造プロセスを有する化学工場、農業、自動車、ゴミ焼却炉や下水汚泥焼却炉などの廃棄物処理設備などから排出される排気ガス中に含まれる亜酸化窒素を分解除去する際に用いる触媒及びその製造方法並びにその触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱装置、燃焼炉、自動車などから排出される窒素酸化物(NOX:NO、NO2)は、人間の呼吸器官や神経系に障害を与えるばかりでなく、酸性雨や光化学スモッグの発生原因の主因となる大気汚染物質であるために、その排出については厳しく制限されている。これに対して、亜酸化窒素(N2O)は大気の恒常成分であり、化学的には安定であるため、従来直接的な生態系への影響は少ないとされてきた。そのために、これまでは亜酸化窒素に対する法的な規制値がなく、未処理のままで排出されることもあった。しかしながら、最近になって亜酸化窒素がフロンと同様に成層圏のオゾン層破壊にかかわっており、またCO2と同様に地球の温度上昇をもたらすことが指摘され、その対策について検討が始められるようになった。このような背景から亜酸化窒素の処理方法、すなわち、亜酸化窒素分解触媒への関心が高まっており、いくつかの触媒が具体的に提示されてきた。
【0003】
例えば、亜酸化窒素分解触媒として、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム又はルテニウム類を含むもの(特許文献1参照)や、ゼオライト系の担体に各種の遷移金属や貴金属を担持させたもの(特許文献2参照)や、三二酸化コバルト(Co23)、マンガン化合物、及びアルカリ金属化合物若しくはアルカリ土類金属化合物を有効成分として含有する多元触媒(特許文献3参照)や、三二酸化コバルト(Co23)、セリウム化合物、及びアルカリ金属化合物若しくはアルカリ土類金属化合物を有効成分として含有する多元触媒(特許文献4参照)などが既に知られている。
【0004】
しかしながら、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム又はルテニウム類を含むものやゼオライト系の担体に各種の遷移金属や貴金属を担持させたものは、いずれも活性を示す温度が高く、400℃程度の温度を必要とし、200℃から300℃付近の温度域では、充分な性能が得られないという問題を有するものであった。なお、亜酸化窒素を分解するために、排ガス温度を上げることは、温暖化を促進する炭酸ガスの排出量も同時に増加させることとなり、亜酸化窒素を分解する意義が少なくなる。従って、400℃以上の温度を必要とするこれらの触媒には依然改善の余地があった。
【0005】
一方、三二酸化コバルト(Co23)、マンガン化合物、及びアルカリ金属化合物若しくはアルカリ土類金属化合物を有効成分として含有する多元触媒には、例えばマンガン化合物の使用は環境に対し好ましくないという問題点があり、三二酸化コバルト(Co23)、セリウム化合物、及びアルカリ金属化合物若しくはアルカリ土類金属化合物を有効成分として含有する多元触媒には、例えばセリウム化合物の使用は資源として少ないためコスト面でも不利であるという問題点があり、亜酸化窒素分解触媒には更なる改良の余地があった。
【0006】
【特許文献1】特開昭55−031463号公報
【特許文献2】特開平05−245384号公報
【特許文献3】特開平06-106027号公報
【特許文献4】特開平06-106028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、排気ガス中に含まれる亜酸化窒素を効率的に、かつ、300℃以下という低温域でも効果的に分解除去できる触媒及びその触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目標を解決するために、鋭意検討を行った結果、四三酸化コバルト(Co34)を主成分とする酸化コバルトとアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とを含む亜酸化窒素分解触媒であれば、効果的に低温で亜酸化窒素を分解できることを見出し、本発明を完成させた。なお、及び/又はとは、どちらか一方の成分であっても、両方の成分であってもよいという意味である。
【0009】
すなわち、本発明は、四三酸化コバルト(Co34)を主成分とする酸化コバルトとアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とからなる亜酸化窒素分解触媒を提供する。
【0010】
本発明はまた、a)コバルト塩、b)コバルト塩の酸化物、及びc)水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質の少なくとも一方を水溶液の状態に調製した後これらを混合させることによって生じた沈殿物、からなる群より選択される少なくとも一つに対し、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩を含浸担持により添加し、乾燥後、焼成する亜酸化窒素分解触媒の製造方法を提供する。
【0011】
更に、本発明は、前記亜酸化窒素分解触媒を使用する亜酸化窒素分解方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の亜酸化窒素分解触媒及び本発明の亜酸化窒素分解触媒を使用する亜酸化窒素分解方法であれば、前記の課題である排気ガス中に含まれる亜酸化窒素を効率的に、かつ、300℃以下という低温域でも効果的に分解除去できる。
【0013】
また、本発明の亜酸化窒素分解触媒の製造方法であれば、前記の課題である排気ガス中に含まれる亜酸化窒素を効率的に、かつ、300℃以下という低温域でも効果的に分解除去できる亜酸化窒素分解触媒を製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0015】
本発明の亜酸化窒素分解触媒は、酸化コバルト、特に活性種である四三酸化コバルト(Co34)を主成分として含有する。酸化コバルトには2価コバルト、3価コバルトの酸化物及び2価コバルトと4価コバルトを含む酸化物があるが、本発明の酸化コバルトは特に2価コバルトと4価コバルトを含む四三酸化コバルト(Co34)を主成分とすることがエックス線回折試験により確認されている。なお、本発明の酸化コバルトは、組成比上四三酸化コバルトの定数比とならず、若干のゆらぎが認められることがある。
【0016】
本発明の亜酸化窒素分解触媒は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を0.01乃至15重量%好ましくは0.1乃至10重量%含有する。アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が0.01重量%より少ない場合は、亜酸化窒素分解性能が低下するために好ましくない。一方、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が15重量%を超える場合は、活性成分である酸化コバルトの表面がアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩により被覆され、活性が十分発揮できなくなってしまうこととなり、好ましくない。
【0017】
また、本発明の亜酸化窒素分解触媒が含有するアルカリ金属は、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムである。また更に、本発明の亜酸化窒素分解触媒が含有するアルカリ土類金属は、好ましくはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムである。
【0018】
なお、触媒の形状には特に制限はなく、粉体、顆粒、球状、押し出し成形体、タブレットなどに成形することもでき、また、ハニカムなどにウォッシュコーティングして、使用することもできる。
【0019】
本発明の亜酸化窒素分解触媒の製造方法は、a)コバルト塩、b)コバルト塩の酸化物、又は、c)水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質の少なくとも一方を水溶液の状態に調製した後これらを混合させることによって生じた沈殿物、からなる群より選択される少なくとも一つに対し、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩を含浸(混練)担持により添加し、乾燥後、焼成する亜酸化窒素分解触媒の製造方法であり、以下のような特徴を有する。
【0020】
本発明の亜酸化窒素分解触媒を製造するにあたり使用されるa)コバルト塩は、好ましくは炭酸コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルトである。
【0021】
本発明の亜酸化窒素分解触媒を製造するにあたり使用されるb)コバルト塩の酸化物は、例えばコバルト塩を焼成して得られた酸化物であり、好ましくは水酸化コバルト、硝酸コバルト等を200乃至700℃にて1乃至10時間焼成してなる酸化コバルトである。焼成温度が200℃未満の場合、コバルト塩の分解が十分に行われないために酸化物に至らず、十分な性能を発揮できないので好ましくなく、また、焼成温度が700℃を超えると、コバルト酸化物のシンタリングにより、活性低下が起こるので好ましくない。なお、焼成時間が1時間未満の場合、コバルト塩の分解が十分に行われないために酸化物に至らず、十分な性能を発揮できないので好ましくなく、また、焼成時間が10時間を越えると、コバルト酸化物のシンタリングにより活性低下が起こるので好ましくない。
【0022】
本発明の亜酸化窒素分解触媒を製造するにあたり使用されるc)水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質の少なくとも一方を水溶液の状態に調製した後これらを混合させることによって生じた沈殿物は、コバルトの硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物等の水溶性のコバルト塩をアンモニア、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素カリウム等のアルカリ性物質と少なくとも一方が水溶液の状態にて混合させることによって生じた沈殿物であり、コバルト塩水溶液とアルカリ性水溶液を混合する方法、固体状態の水溶性のコバルト塩をアルカリ性水溶液に混合する方法、或いは固体状態のアルカリ性物質をコバルト塩水溶液に混合する方法によって沈殿物を生じさせることが可能である。なお、溶液温度0乃至90℃にて調製を行うと、粒子径の小さなコバルト化合物を調製することが可能であり好ましい。また、これら水溶性のコバルト塩のコバルト成分とアルカリ性物質中のアルカリ成分のコバルト/アルカリモル比が0.5乃至4.0であると、安定したコバルト化合物が得られるので好ましい。コバルト/アルカリモル比が0.5より少ない場合は、アルカリが過剰となり沈殿物として生成したコバルト化合物が再溶解する問題があり好ましくない。また、コバルト/アルカリモル比が4.0より多い場合は、アルカリ量が十分ではなくコバルト化合物としての沈殿物が十分に採取できないので好ましくない。また、沈殿物を更にイオン交換水によってデカンテーションによる洗浄を行うと、コバルト塩由来の硝酸塩、酢酸塩、塩化物を低減できるので好ましい。
【0023】
上記、a)コバルト塩、b)コバルト塩の酸化物及びc)水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質の少なくとも一方を水溶液の状態に調製した後これらを混合させることによって生じた沈殿物からなる群より選択される少なくとも一つは、更に上述のアルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩を添加、乾燥そして焼成することで、本発明の亜酸化窒素分解触媒が得られる。
【0024】
本発明の亜酸化窒素分解触媒を製造するにあたり使用されるアルカリ金属の塩は、特に制限はないが、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムといったアルカリ金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酢酸塩等を含むものなどが使用できる。
【0025】
本発明の亜酸化窒素分解触媒を製造するにあたり使用されるアルカリ土類金属の塩は、特に制限はないが、好ましくはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムといったアルカリ土類金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物、酢酸塩等を含むものなどが使用できる。
【0026】
本発明の亜酸化窒素分解触媒の製造方法において、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩の添加方法は、特に制限はないが、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩が不溶性の場合、焼成処理前の段階のa)コバルト塩、b)コバルト塩の酸化物及びc)水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質の少なくとも一方を水溶液の状態に調製した後これらを混合させることによって生じた沈殿物からなる群より選択される少なくとも一つに対し乾式で混合後、成型、乾燥そして焼成することで添加することもできる。アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩が水溶性の場合、焼成処理前の段階のa)コバルト塩、b)コバルト塩の酸化物及びc)水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質の少なくとも一方を水溶液の状態に調製した後これらを混合させることによって生じた沈殿物からなる群より選択される少なくとも一つに対し、これら塩の水溶液を含浸担持により添加後、乾燥そして焼成することで添加することもできる。
【0027】
アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩の添加量は、本製造方法によって得られた触媒中にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が0.01乃至15重量%好ましくは0.1乃至10重量%存在するような量が好ましい。得られた触媒中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が0.01重量%より少ない場合、本製造方法によって得られた触媒の亜酸化窒素分解性能が低下するために好ましくない。一方、得られた触媒中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が15重量%を超える場合、本製造方法によって得られた触媒の活性成分である酸化コバルトの表面がアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩により被覆され、活性が十分発揮できなくなってしまうこととなり、好ましくない。
【0028】
乾燥条件はその触媒調製条件によって適宜変更可能であるが、例えば、80乃至200℃にて3乃至16時間が適当である。乾燥温度が80℃未満の場合、乾燥が不十分になる、乾燥時間に時間がかかるなどの製造上の問題があるので好ましくなく、また、乾燥温度が200℃を超えると、物理的な付着水の脱離とコバルト塩の分解が同時に起こり、触媒性能が低下する可能性があるので好ましくない。なお、乾燥時間が3時間未満の場合、乾燥が不十分になり好ましくなく、また、乾燥時間が16時間を越えると、生産性が悪くなり、コスト面での負担が高くなるので好ましくない。
【0029】
また、焼成条件もその触媒調製条件によって適宜変更可能であるが、例えば、200乃至700℃好ましくは300乃至500℃にて1乃至10時間好ましくは3乃至5時間が適当である。焼成温度が200℃未満の場合、コバルト塩の分解が十分に行われないために酸化物に至らず、十分な性能を発揮できないので好ましくなく、また、焼成温度が700℃を超えると、コバルト酸化物のシンタリングにより、活性低下が起こるので好ましくない。なお、焼成時間が1時間未満の場合、コバルト塩の分解が十分に行われないために酸化物に至らず、十分な性能を発揮できないので好ましくなく、また、焼成時間が10時間を越えると、コバルト酸化物のシンタリングにより活性低下が起こるので好ましくない。
【0030】
本発明の亜酸化窒素の分解触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法において、使用される触媒の量は、反応条件(すなわち、温度、圧力など)と、処理されるプロセス流れに残留するN2Oの量によって変化する。一般的に、これら排気ガスにおけるN2Oの含有量は100ppmから80容積%である。好ましくは、触媒の有効量、すなわち、N2Oを列挙された触媒と特定の反応条件で接触する位置に配置されると反応を起こさせる量を用いる。
【0031】
また、本発明の亜酸化窒素の分解触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法において、触媒使用時の温度が200乃至700℃、好ましくは250乃至450℃の範囲であると効率よく亜酸化窒素を分解することが可能であるが、本発明の触媒を用いた亜酸化窒素の分解方法では特に300℃以下、例えば250乃至300℃の範囲という低温域においても効果的に亜酸化窒素を分解除去することが可能である。触媒使用時の圧力は常圧でも良いが、加圧下のほうが、より効果的に亜酸化窒素を分解することができる。例として、0.3乃至3.0MPaの範囲が挙げられる。特に、設備面及び運転面でのコスト高を鑑み、好ましい加圧条件は、例えば0.3乃至1.0MPaの範囲である。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
市販(和光純薬製)の炭酸コバルトを400℃で2時間焼成して得られた酸化コバルト50gに硝酸リチウム0.49gとイオン交換水17gからなる硝酸リチウム水溶液を含浸担持により添加し、混練を行った後に80℃で10時間の乾燥、400℃で4時間の焼成を行って、50g触媒を得た。触媒中のLi量は0.1重量%であった。
【0033】
(実施例2)
添加成分が硝酸ナトリウム0.19gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のNa量は0.1重量%であった。
【0034】
(実施例3)
添加成分が硝酸カリウム0.13gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のK量は0.1重量%であった。
【0035】
(実施例4)
添加成分が硝酸セシウム0.07gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のCs量は、0.1重量%であった。
【0036】
(実施例5)
添加成分が硝酸マグネシウム3.1gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のMg量は、1.0重量%であった。
【0037】
(実施例6)
添加成分が硝酸カルシウム2.1gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のCa量は、1.0重量%であった。
【0038】
(実施例7)
添加成分が硝酸ストロンチウム1.2gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のSr量は、1.0重量%であった。
【0039】
(実施例8)
添加成分が硝酸バリウム0.95gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のBa量は、1.0重量%であった。
【0040】
(実施例9)
添加成分が硝酸ナトリウム1.9gである以外は、実施例1と同様の方法で、51gの触媒を得た。触媒中のNa量は、1.0重量%であった。
【0041】
(実施例10)
添加成分が硝酸ナトリウム9.2gである以外は、実施例1と同様の方法で、55gの触媒を得た。触媒中のNa量は、5.0重量%であった。
【0042】
(実施例11)
添加成分が硝酸カリウム1.3gである以外は、実施例1と同様の方法で、51gの触媒を得た。触媒中のK量は、1.0重量%であった。
【0043】
(実施例12)
添加成分が硝酸バリウム0.1gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のBa量は、0.1重量%であった。
【0044】
(実施例13)
添加成分が硝酸バリウム4.8gである以外は、実施例1と同様の方法で、55gの触媒を得た。触媒中のBa量は、5.0重量%であった。
【0045】
(実施例14)
添加成分が硝酸バリウム9.5gである以外は、実施例1と同様の方法で、60gの触媒を得た。触媒中のBa量は、10重量%であった。
【0046】
(実施例15)
添加成分が炭酸ナトリウム0.90gである以外は、実施例1と同様の方法で、50gの触媒を得た。触媒中のNa量は、1.0重量%であった。
【0047】
(実施例16)
市販(和光純薬製)の炭酸コバルトを400℃で2時間焼成して得られた酸化コバルト50gに炭酸バリウム0.72gを添加混合し、混練を行った後に80℃で10時間の乾燥、400℃で4時間の焼成を行って、50gの触媒を得た。触媒中のBa量は1.0重量%であった。
【0048】
(実施例17)
炭酸水素ナトリウム1.2モルをイオン交換水2.5Lに溶解して得た炭酸水素ナトリウム水溶液に硝酸コバルト六水和物0.3モルをイオン交換水500mlに溶解して得た硝酸コバルト水溶液を35℃下で、数秒でフィードして、沈殿物を得た。5Lのイオン交換水によってデカンテーションによる洗浄を行い、80℃×10時間の乾燥により、40gの炭酸コバルトを得た。その炭酸コバルト40gに硝酸ナトリウム0.92gとイオン交換水14gからなる硝酸ナトリウム水溶液を添加混合し、混練を行った後に80℃×10時間の乾燥、400℃×4時間の焼成を行って、27gの触媒を得た。触媒中のNa量は1.0重量%であった。
【0049】
(実施例18)
市販(和光純薬製)の水酸化コバルト50gに硝酸ナトリウムを1.3gとイオン交換水17gからなる硝酸ナトリウム水溶液を添加混合し、混練を行った後に80℃×10時間の乾燥、400℃×4時間の焼成を行って、35g触媒を得た。触媒中のNa量は1.0重量%であった。
【0050】
(比較例1)
実施例1と同じ市販(和光純薬製)の炭酸コバルトを400℃で2時間焼成して、酸化コバルトを得た。
【0051】
(比較例2)
貴金属触媒として、ズードケミー触媒製のN−350(Pd量0.5重量%、アルミナ)を評価に供した。
【0052】
(試験例)
実施例1乃至18にて得られた本発明の触媒と比較例1及び2の触媒を用いて、以下の要領にて亜酸化窒素分解試験を行った。その結果を表1に示す。
【0053】
また、実施例1乃至18にて得られた本発明の触媒と比較例1及び2の触媒の組成を分析すべく、以下の要領にて組成分析を行った。その結果を表1に示す。
【0054】
また更に、実施例1の触媒のX線回折分析を以下の要領にて行ったところ、図1に示すチャートが得られた。この回折ピークは四三酸化コバルトに帰属されるものであった。なお、三二酸化コバルトのピークは見出すことができなかった。なお、実施例2乃至18にて得られた本発明の触媒も同様のチャートが得られた。
【0055】
(亜酸化窒素の分解試験)
顆粒状に成形し、10から22メッシュに分級した触媒0.5gを反応管に充填した。反応ガスとしてN2O;5,000ppm、O2;2%、Heバランスの混合ガスを使用した。これを、W/F=0.3g/(mL/sec)、常圧下で、所定の温度で流通させて、試験を行った。
【0056】
反応は、触媒をヘリウム気流中500℃で30分間、前処理した後に行った。出口ガスの分析にはガスクロ(CHROMPACK社製Micro−GC CP2002、使用カラム:Molケイ素eve−5A及びPora PLOT Q)を用いた。
【0057】
(組成分析)
添加成分は、触媒を濃硫酸と硝酸の混合溶液に溶解して、測定用の試料を調製し、島津製作所製ICPS−1000IVを用いて、分析した。
【0058】
(X線回折分析)
マックスサイエンス製のX線回折装置(MXLabo)を用い、管電圧50kV、管電流30mAの条件にて分析を行った。
【0059】
【表1】

【0060】
表1の結果より、本発明の触媒では、300℃以下という低温域でも高分解率にて効果的に亜酸化窒素を分解除去できることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施例1で得られた本発明の亜酸化窒素分解触媒のX線回折分析結果を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四三酸化コバルト(Co)を主成分とする酸化コバルトとアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属とを含む亜酸化窒素分解触媒。
【請求項2】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の亜酸化窒素分解触媒における配合量が0.01乃至15重量%である請求項1記載の亜酸化窒素分解触媒。
【請求項3】
アルカリ金属がリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選択される少なくとも一つである請求項1記載の亜酸化窒素分解触媒。
【請求項4】
アルカリ土類金属がマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選択される少なくとも一つである請求項1記載の亜酸化窒素分解触媒。
【請求項5】
下記のa)、b)及びc)から構成される群より選択される少なくとも一つに対し、アルカリ金属の塩及び/又はアルカリ土類金属の塩を含浸担持により添加し、乾燥後、焼成する亜酸化窒素分解触媒の製造方法、
a)コバルト塩、
b)コバルト塩の酸化物、及び
c)水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質の少なくとも一方を水溶液の状態に調製した後これらを混合させることによって生じた沈殿物。
【請求項6】
前記a)コバルト塩が炭酸コバルト、水酸化コバルト及び硝酸コバルトからなる群より選択される少なくとも一つである請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項7】
前記b)コバルト塩の酸化物が炭酸コバルト、水酸化コバルト及び硝酸コバルトからなる群より選択される少なくとも一つのコバルト塩を200乃至700℃にて1乃至10時間焼成してなる請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項8】
前記c)の沈殿物を調製するにあたり使用される水溶性のコバルト塩がコバルトの硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩及び塩化物からなる群より選択される少なくとも一つであり、請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項9】
前記c)の沈殿物を調製するにあたり使用されるアルカリ性物質がアンモニア、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素カリウムからなる群より選択される少なくとも一つである請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項10】
前記c)の沈殿物を調製するにあたり、水溶性のコバルト塩のコバルト成分とアルカリ性物質中のアルカリ成分のコバルト/アルカリモル比が0.5乃至4.0である請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項11】
前記c)の沈殿物を調製するにあたり、水溶性のコバルト塩とアルカリ性物質との混合時の溶液温度が0乃至90℃である請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項12】
前記c)の沈殿物を調製するにあたり、沈殿物に対し更にイオン交換水によってデカンテーションによる洗浄が行われる請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項13】
前記アルカリ金属の塩がリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選択される少なくとも一つのアルカリ金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物及び/又は酢酸塩である請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ土類金属の塩がマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選択される少なくとも一つのアルカリ土類金属の硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物及び/又は酢酸塩である請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項15】
焼成温度が200乃至700℃である請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項16】
焼成時間が1乃至10時間である請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項17】
得られた亜酸化窒素分解触媒におけるアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の配合量が0.01乃至15重量%となるようアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を添加する請求項5記載の亜酸化窒素分解触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の亜酸化窒素分解触媒を使用する亜酸化窒素分解方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−54714(P2007−54714A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241756(P2005−241756)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(591110241)ズードケミー触媒株式会社 (31)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】