説明

亜鉛−ニッケル合金めっき液及びめっき方法

【課題】金属部材に、Ni共析率が高く、外観及び耐食性に優れた亜鉛−ニッケル合金膜による皮膜を形成しうる亜鉛−ニッケル電解めっき液が望まれている。
【解決手段】1分子中の窒素数が4以上のアミン類と、エポキシ基とハロゲン基をともに1分子中に含む化合物を混合して製造することを特徴とする反応生成物1種以上と溶解性ポリマーとよりなる亜鉛ニッケルめっき液により課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亜鉛−ニッケル合金めっきに関し、既存のニッケル錯化剤及び光沢剤・添加剤では事実上不可能であった、浴温25℃以上でも低温時と変わらぬ良好なめっきを実現するめっき方法及びめっき液である。しかも、このめっき液は従来の亜鉛−ニッケル合金めっきでは安定的に供給できないニッケル共析率を持つ優れためっき皮膜を析出させることを可能にし、従来より安定的に供給できる方法のあったニッケル共析率のニッケルめっきについても提供可能である上、本発明にかかるめっき液はこれまでのめっき液では不可能な管理方法によるロングライフ化にも成功している。
【背景技術】
【0002】
亜鉛めっきの耐食性を向上する目的で亜鉛合金めっきが広く行われている。その中でも亜鉛−ニッケル合金めっきは自動車部品、特に高温環境下に置かれるエンジン部品や、高い耐食性が要求される部品等に広範囲に使用されている。従来の亜鉛−ニッケル合金めっきは特開昭63−53285号に開示されているように錯化剤で可溶化したニッケルを含有するするアルカリ性電気亜鉛めっき浴で電解めっきを行うことにより亜鉛めっき皮膜中にニッケルを析出させる方法により行われる。ニッケル共析率2%以上が得られる錯化剤としてポリアルケンポリアミン類、アルカノールアミン類が挙げられている。また、光沢剤は1次光沢剤としてアミン類とエピハロヒドリンの反応生成物が、2次光沢剤として芳香族アルデヒド類が、3次光沢剤としてテルル化合物が用いられる。また、その後、錯化剤としても1次光沢剤と同様にアミン化合物とエピハロヒドリン等グリシジルエーテル類の反応生成物を用いるめっき浴も特開平6−173073号、特開2007−2274号に開示されている。これはアミン類をそのまま錯化剤として用いるよりもランニング性に優れるため、現在の亜鉛−ニッケル合金めっきでは最も一般的に用いられる錯化剤となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−53285号公報
【特許文献2】特開平6−173073号公報
【特許文献3】特開2007−2274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の亜鉛−ニッケル合金めっき液は非常に温度に弱い特性を有する。25℃以上でめっきラインを動かし続けると錯化剤及び1次光沢剤が反応により変化し、キレートが強くなってしまう。するとニッケル共析率が低下するばかりかめっきの物性が低下し、高電流部にコゲが発生してしまう症状が発生する。さらに電流効率が亜鉛めっきと比べて低いため発熱が非常に大きく、20℃前後の低い温度を維持するために多大なエネルギーと温度管理の手間を要する。そのため、25℃以上でも20℃前後でめっきした場合と変わらないめっき皮膜を提供することは亜鉛ニッケル合金めっきにおける大きな課題である。また、従来のアミン類とエピハロヒドリンの反応生成物を用いた錯化剤および光沢剤を用いためっき液を用いためっきでは安定して供給できるニッケル共析率が8〜10%にとどまる。これは錯化剤を変更することによって安定的に得られることが知られている15%以上のニッケル共析率を持つ合金めっきと比較すると加工性で上回るものの耐食性で劣る。また、両者の中間のニッケル共析率を持つ合金めっきを安定的に得られる方法は存在しなかった。また、濃度管理の面においても、従来の亜鉛−ニッケル合金めっきにおいてはめっき浴建浴時の最適なニッケル濃度、錯化剤濃度を維持した場合、ランニングとともに錯化剤及び光沢剤・添加剤が変化し、キレートが強くなるためにニッケル共析率が低下する現象が見られる。しかし、ニッケル濃度を上昇させるとニッケル共析率は維持できるものの外観、物性の悪化が見られる。よって頻繁な再建浴を強いられ、非経済的であるばかりか環境への悪影響も大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が鋭意研究した結果、(A)従来は錯化剤に用いるアミンとして分子中の窒素原子数が3以下のものを用いてきたが、窒素原子数が4以上となるアミンを用い(B)一次光沢剤・添加剤として構造式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は水素、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、−CH2CH2(OCH2CH2XOH(Xは0〜5)又は−CH2CH2(OCCH2CH2XOH(Xは0〜5)を表わし、nは1以上を表わす)で表されるポリマー、構造式(2)
【化2】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素、メチル、エチル、イソプロピル、2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCH2CH2)xOH(Xは0〜6)又は2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCCH2CH2)xOH(Xは0〜6)を表わし、R5は(CH22−O−(CH22、(CH22−O−(CH22−O−(CH22又はCH2−CHOH−CH2−O−CH2−CHOH−CH2を表わし、nは1以上であり、YはS又はOである)で表されるポリマー、構造式(3)
【化3】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素、メチル、エチル、イソプロピル、2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCH2CH2)xOH(Xは0〜6)又は2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCCH2CH2)xOH(Xは0〜6)を表わし、R5は(CH22−O−(CH22、(CH22−O−(CH22−O−(CH22又はCH2−CHOH−CH2−O−CH2−CHOH−CH2を表わし、nは1以上を表わし、YはS又はOを表わす)で表されるポリマー、構造式(4)
【化4】

(式中、R1及びR2はそれぞれ水素、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、−CH2CH2(OCH2CH2XOH(Xは0〜5)又は−CH2CH2(OCCH2CH2XOH(Xは0〜5)を表わし、nは1以上を表わし、YはO又はSを表わす)をモノマーとするポリマー、構造式(5)
【化5】

(式中、R1又はR2は水素、メチル、エチル、ブチル又はイソブチルを表し、R3はCH2、C24又はC36を表わす)で表されるポリマー、構造式(6)
【化6】

(式中、R1及びR2はそれぞれ水素又は炭素数が10以下のアルキルを表わす)で表されるポリマー、構造式(7)
【化7】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素又はCが5以下のアルキルを表わし、Xは無機陰イオンを表わし、YはS又はOを表わす)で表されるポリマー、構造式(8)
【化8】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素又は炭素数が5以下のアルキルを表わし、Xは無機陰イオンを表わし、YはS又はOを表わす)で表されるポリマー、及び構造式(9)
【化9】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素、メチル、エチル、イソプロピル、2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCH2CH2)xOH(Xは0〜6)又は2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCCH2CH2)xOH(Xは0〜6)を表わし、nは2〜4を表わす)で表されるポリマー、及び、(a)イミダゾール、(b)エピハロヒドリンの水溶性反応生成物、及び、(a)ニコチン酸、(b)エピハロヒドリンの水溶性反応生成物、及び、(a)尿素又はチオ尿素、(b)ジアルキルアミノエチルアミン及び/又はジアルキルアミノプロピルアミン及び(c)ジクロルアルキルエーテルの水溶性反応性生成物から成る群から選択される1種以上を用いることにより課題を解決した。
【0006】
従来、(A)群に属する1分子中の窒素原子数が4以上のアミンとエピハロヒドリンの反応生成物を錯化剤に用いた場合にはめっきの光沢が弱くなるため、実際には窒素原子数が2〜3のアミンを用いた反応生成物のみが実用化されてきた経緯がある。
【0007】
また、(B)群に属する物質を一次光沢剤・添加剤として添加することは特開平11−193488号、特開2001−226793号などに開示されていたが実際に亜鉛−ニッケル合金めっきに添加した場合には三号ケイ酸ソーダの添加を行わない場合に電流効率、ニッケル共析率が低下する上、めっき外観が悪化する。三号ケイ酸ソーダを添加した場合は従来の亜鉛−ニッケル合金めっきと比較して電流効率が低下する特徴があるため、亜鉛−ニッケル合金めっきには使用されず亜鉛めっきに限定して用いられてきた経緯がある。
【0008】
以上より、亜鉛−ニッケル合金めっき液に単独で適用してもめっき状況が悪化する上、有効な相互作用があるとも事前には推考できない錯化剤としての(A)群と添加剤としての(B)群の物質を併用することは当業者にとって容易に想到し得ないものであると言える。しかし、実際に併用した上で浴組成を再検討した場合、25℃以上においても安定した合金めっき皮膜を継続的に得ることができる上に従来の亜鉛ニッケル合金めっきと比較して互角以上の外観をもち、その皮膜はニッケル共析率が10〜13%の合金めっきであり、従来、安定して得られる方法のあったニッケル共析率8〜10%または15%以上の皮膜のいずれよりも耐食性が高い。また、ニッケル濃度を変化させることでニッケル共析率15%以上の合金めっきの形成も可能であり、25℃以上の高温でも安定した合金めっき皮膜を形成できる。電流効率も従来のめっき浴と差のないものとなる。濃度管理においてもランニングでニッケル共析率の低下が起こった場合に、めっき浴自体のニッケル濃度を上げ、錯化剤として用いられる(A)群の濃度を下げることでニッケル共析率を維持できる上にめっき外観と物性の悪化も招かないため、結果としてめっき浴のロングライフ化に成功し、コストダウンと環境負荷の低減を達成している。
【0009】
本発明の実施態様によれば、次の各発明が提供される。
(1)1分子中の窒素数が4以上のアミン類と、エポキシ基とハロゲン基をともに1分子中に含む化合物を混合して製造することを特徴とする反応生成物1種以上と浴溶解性ポリマーとして構造式(1)〜(9)のいずれか一種以上、又は(a)イミダゾールと(b)エピハロヒドリンの水溶性反応生成物、(a)ニコチン酸と(b)エピハロヒドリンの水溶性反応生成物、及び、(a)尿素又はチオ尿素、(b)ジアルキルアミノエチルアミン及び/又はジアルキルアミノプロピルアミン及び(c)ジクロルアルキルエーテルの水溶性反応性生成物から成る群から選択される1種以上と、亜鉛−ニッケル合金めっき用金属イオン源とを含有する電解めっき液。
(2)前記反応生成物と浴溶解性ポリマーの添加量の比が10:1以上である上記(1)に記載のめっき液。
(3)ニッケル源として、塩化ニッケル、水酸化ニッケル及び炭酸ニッケルから成る群から一部或いは全部のニッケルが供給される上記(1)又は(2)に記載のめっき液。
(4)めっき液温25℃以上で使用される上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のめっき液。
(5)前記アミン類がポリアルケンポリアミン類である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のめっき液。
(6)前記化合物がエピハロヒドリン類である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のめっき液。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の電解めっき液を使用して、ニッケル共析率10〜13%の亜鉛−ニッケル合金めっきを施すことを特徴とする電解めっき方法。
(8)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の電解めっき液を使用して亜鉛−ニッケル合金めっきを施した部材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の亜鉛−ニッケル合金めっきに関し、詳細に説明する。
(A)群の、錯化剤成分に用いるアミンとしてはトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミンなどを用いることが出来るがこれに限定されない。これとエピハロヒドリンを反応させたものを錯化剤として用いる。(B)群の光沢剤・添加剤として用いるアミンポリマーとしては(1)のポリマーの例としてローヌ・プーランから市販されている「MIRAPOL(商標)100」、前記構造式(2)のポリマーの例としては「MIRAPOL(商標)WT」、前記構造式(3)のポリマーの例としては「MIRAPOL(商標)AD−1」、前記構造式(4)のポリマーの例としては「MIRAPOL(商標)550」などがあるが、これに限定されない。また、(9)の化合物の例としてはアミノエチルエタノールアミンやテトラメチルエチレンジアミンなどがあるが、これに限定されない。
【0011】
めっきの対象部材は鉄素材のものが用いられる。めっき浴組成は下の表1の通りであり、従来のめっき浴と比較すると亜鉛濃度が低く、ニッケル濃度が高いという特徴がある。
【0012】
【表1】

【0013】
亜鉛イオン濃度については高すぎると必要な光沢剤量が多くなってしまい、非経済的である。さらに皮膜の均一性が低下し、複雑な形状の部材においては低電流部へのつきまわりが弱くなってしまう。低すぎるとめっき速度が低下する。ニッケルについては高すぎても低すぎても皮膜中のニッケル共析率が適切な値にならず、めっき皮膜の外観並びに化成皮膜処理後の外観が悪化する上、必要な耐食性が得られない。特に赤錆発生が早くなる傾向がある。水酸化物イオンは高すぎると光沢剤分子を破壊し、必要な光沢剤量が多くなってしまうことが知られており、非経済的である。低すぎると皮膜の均一性、めっきのつきまわりが悪化する。錯化剤濃度が高すぎると電流効率が低下するほか、補給量も多くなってしまい、排水処理の手間も増大し非経済的である。低すぎると皮膜の均一性が悪化し、めっき皮膜の外観はもとより、化成皮膜処理後の外観も悪化する。(B)群濃度が高すぎると効果は頭打ちで非経済的であり、低すぎると、めっき皮膜に十分に光沢が出ない。
【0014】
ニッケル源については特に限定はない。実際の生産現場ではコスト等の問題から長年にわたって硫酸ニッケルが用いられてきた。しかし、本発明においてはその他のニッケル化合物、例えば塩化ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケルも使用可能であり、特に炭酸ニッケル、水酸化ニッケルを用いた場合には従来の硫酸ニッケルを用いた場合と比べてめっき液の寿命が長くなる効果を有する。
【0015】
また、上記以外に、従来の亜鉛−ニッケル合金めっきで使用可能な光沢剤成分を使うことができる。例えばアルデヒド類、テルル化合物などが使用可能である。
【0016】
めっき条件については静止めっきで電流密度1〜6A/dm2、バレルめっきで0.5〜1.5A/dm2で行う。めっき温度は15〜50℃の範囲で可能であり、これにより従来の亜鉛−ニッケル合金めっきと比較して冷却にかかるコスト、エネルギーを大幅に低減できる。
【実施例】
【0017】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。試験片に適当な前処理を行った後、以下に示すそれぞれの実施例に従いめっきを行った。以下の実施例では特に断りのない場合、陰極となる試験片は鉄板(50×100×2mm)を使用し、陽極にはニッケル板を用いた。めっき条件は電流密度4A/dm2、めっき浴温25℃、めっき時間60分であり、めっき後に耐食性評価のため三価クロム化成皮膜処理を施した。ニッケル供給源は硫酸ニッケルを用いた。三価クロム化成皮膜処理は日本表面化学(株)製TRN−988を用いて標準条件で行った。
【0018】
I めっき浴組成の変化とめっき外観、ニッケル共析率、耐食性
亜鉛、ニッケル、錯化剤、(B)群物質を変化させ外観、耐食性を評価した。以下、特に断りのない場合、錯化剤はトリエチレンテトラミンとエピクロルヒドリンの反応物を、(B)群物質は「MIRAPOL(商標)100」を用いた。外観は光沢、均一性を評価した。耐食性は赤錆発生までの時間を測定した。結果は表2の通りである。
【0019】
【表2】

【0020】
II 錯化剤成分
本発明の錯化剤成分は窒素原子数4以上のアミンとエピハロヒドリンの反応生成物により与えられる。そこで、複数のアミンとエピハロヒドリンの生成物に対して実施例1と同条件でめっきを行い、外観、ニッケル共析率、耐食性を比較した。結果は表3の通りである。
【0021】
【表3】

【0022】
III (B)群物質
「MIRAPOL(商標)100」以外の物質で実施例1と同条件でめっきを行った結果は下の表4の通りである。
【0023】
【表4】

【0024】
IV 温度
めっき時の温度変化以外実施例1と同条件でめっき試験を行った。結果は表5の通りである。
【0025】
【表5】

【0026】
V ニッケル共析率変化
本発明のめっき液はニッケル濃度を変化させることでニッケル共析率を変化させためっきを安定して得ることができる。結果は表6の通りである。
【0027】
【表6】

【0028】
さらに、実施例28のニッケル濃度で温度変化試験を行うと下の表7の通りになる。
【0029】
【表7】

【0030】
VI バレルめっき試験
試験片に適当な前処理を行った後、以下に示すそれぞれの実施例に従いめっきを行った。
陰極となる試験片はボルト(M8×50mm)を使用し、陽極にはニッケル板を用いた。
めっき条件は電流密度1A/dm2、めっき浴温25℃、めっき時間90分であり、めっき後に三価クロム化成皮膜処理を施した。三価クロム化成皮膜処理は日本表面化学(株)製TRN−988を用いて標準条件で行った。結果を表8の通りである。
【0031】
【表8】

【0032】
比較例1〜4
錯化剤成分にジエチルトリアミンとエピクロルヒドリンの反応生成物を用いて各種試験を行った。結果は表9の通りである。
【0033】
【表9】

【0034】
比較例5〜12
錯化剤成分にトリエチレンテトラミンとエピクロルヒドリンの反応生成物を用いて各種試験を行った。結果は表10の通りである。
【0035】
【表10】

【0036】
比較例13〜16
比較例1について、温度を変化させてめっきを行った。結果は表11の通りである。
【0037】
【表11】

【0038】
比較例17〜21
ニッケル共析率15%以上の高ニッケルめっきを安定的に供給できる既存製品である日本表面化学(株)製錯化剤・光沢剤ZN−204を標準条件で使用してめっき浴を建浴し、温度変化試験を行ったところ、結果は表12の通りとなった。
【0039】
【表12】

【0040】
比較例22〜25
ZN−204を20℃で使用し、めっき浴中のニッケル濃度を変化させたところ、以下の表13に示す結果となり、ニッケル濃度を低下させても本発明のニッケル濃度10〜13%のめっき皮膜は安定的に供給できないことがわかる。
【0041】
【表13】

【0042】
実施例1と比較例1のめっき液それぞれ、1日10AH/Lで1カ月間ランニング試験を行った。適切に薬剤を補給した上、ニッケル共析率を維持するため、めっき液中のニッケル濃度を次第に上昇させ、錯化剤濃度を次第に低下させていったところ、以下の表14の結果となった。
【0043】
【表14】

【0044】
また、比較例1のランニング試験をNi濃度、(A)群濃度を変化させずに行ったところ、以下の表15の結果となった。
【0045】
【表15】

【0046】
比較例18についてもランニング試験を実施したところ以下の表16の結果となった。
【0047】
【表16】

【0048】
また、比較例18のランニング試験をNi濃度、(A)群濃度を変化させずに行ったところ、以下の表17の結果となった。
【0049】
【表17】

【0050】
実施例1と、ニッケル供給源を炭酸ニッケル及び水酸化ニッケルに変更したケースにおいて、三カ月間ランニング試験を行ったところ、硫酸ニッケルを使用した場合、耐食性に変化はなかったが外観にムラが生じた。炭酸ニッケル及び水酸化ニッケルを使用した場合には外観、耐食性ともに良好な状態を維持し続けた。また、硫酸ニッケルと水酸化ニッケルを半分ずつ使用した場合には、全量を硫酸ニッケルで補給した場合と比べて外観のムラの程度が小さかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中の窒素数が4以上のアミン類と、エポキシ基とハロゲン基をともに1分子中に含む化合物を混合して製造される反応生成物1種以上と、浴溶解性ポリマーとして構造式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は水素、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、−CH2CH2(OCH2CH2XOH(Xは0〜5)又は−CH2CH2(OCCH2CH2XOH(Xは0〜5)を表わし、nは1以上を表わす)で表されるポリマー、構造式(2)
【化2】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素、メチル、エチル、イソプロピル、2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCH2CH2)xOH(Xは0〜6)又は2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCCH2CH2)xOH(Xは0〜6)を表わし、R5は(CH22−O−(CH22、(CH22−O−(CH22−O−(CH22又はCH2−CHOH−CH2−O−CH2−CHOH−CH2を表わし、nは1以上であり、YはS又はOである)で表されるポリマー、構造式(3)
【化3】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素、メチル、エチル、イソプロピル、2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCH2CH2)xOH(Xは0〜6)又は2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCCH2CH2)xOH(Xは0〜6)を表わし、R5は(CH22−O−(CH22、(CH22−O−(CH22−O−(CH22又はCH2−CHOH−CH2−O−CH2−CHOH−CH2を表わし、nは1以上を表わし、YはS又はOを表わす)で表されるポリマー、構造式(4)
【化4】

(式中、R1及びR2はそれぞれ水素、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、−CH2CH2(OCH2CH2XOH(Xは0〜5)又は−CH2CH2(OCCH2CH2XOH(Xは0〜5)を表わし、nは1以上を表わし、YはO又はSを表わす)をモノマーとするポリマー、構造式(5)
【化5】

(式中、R1又はR2は水素、メチル、エチル、ブチル又はイソブチルを表し、R3はCH2、C24又はC36を表わす)で表されるポリマー、構造式(6)
【化6】

(式中、R1及びR2はそれぞれ水素又は炭素数が10以下のアルキルを表わす)で表されるポリマー、構造式(7)
【化7】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素又はCが5以下のアルキルを表わし、Xは無機陰イオンを表わし、YはS又はOを表わす)で表されるポリマー、構造式(8)
【化8】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素又は炭素数が5以下のアルキルを表わし、Xは無機陰イオンを表わし、YはS又はOを表わす)で表されるポリマー、及び構造式(9)
【化9】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素、メチル、エチル、イソプロピル、2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCH2CH2)xOH(Xは0〜6)又は2−ヒドロキシルエチル−CH2CH2(OCCH2CH2)xOH(Xは0〜6)を表わし、nは2〜4を表わす)で表されるポリマー、及び(a)イミダゾールと(b)エピハロヒドリンの水溶性反応生成物、(a)ニコチン酸と(b)エピハロヒドリンの水溶性反応生成物、及び、(a)尿素又はチオ尿素、(b)ジアルキルアミノエチルアミン及び/又はジアルキルアミノプロピルアミン及び(c)ジクロルアルキルエーテルの水溶性反応性生成物から成る群から選択される1種以上と、亜鉛−ニッケル合金めっき用金属イオン源とを含有する電解めっき液。
【請求項2】
前記反応生成物と浴溶解性ポリマーの添加量の比が10:1以上である請求項1記載のめっき液。
【請求項3】
ニッケル源として、塩化ニッケル、水酸化ニッケル及び炭酸ニッケルから成る群から一部或いは全部のニッケルが供給される請求項1又は2に記載のめっき液。
【請求項4】
めっき液温25℃以上で使用される請求項1〜3のいずれか1項に記載のめっき液。
【請求項5】
前記アミン類がポリアルケンポリアミン類である請求項1〜4のいずれか1項に記載のめっき液。
【請求項6】
前記化合物がエピハロヒドリン類である請求項1〜4のいずれか1項に記載のめっき液。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解めっき液を使用して、ニッケル共析率10〜13%の亜鉛−ニッケル合金めっきを施すことを特徴とする電解めっき方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解めっき液を使用して亜鉛−ニッケル合金めっきを施した部材。

【公開番号】特開2013−14833(P2013−14833A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152913(P2011−152913)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000232656)日本表面化学株式会社 (29)
【Fターム(参考)】