説明

亜鉛および亜鉛合金被覆の電気的析出のための、シアン化物を含有しない水性アルカリ性浴

本発明は、基体表面上に亜鉛および亜鉛合金の被覆を析出するための、シアン化物を含有しない水性アルカリ性電解質浴に関する。前記浴は、(a)亜鉛イオン源および任意的にさらに別の金属イオン源、(b)水酸化物イオン、(c)一般式Iの浴に可溶のポリマーおよび(d)一般式IIまたはIIIの少なくとも一種のピリジニウム化合物を含有する。上記電解質浴は、光沢のある平坦な亜鉛および亜鉛金属被覆の電気的析出に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錯化剤としてのシアン化物イオンを添加していない、亜鉛および亜鉛合金の被覆を析出するための水性、アルカリ性の電気浴に関する。前記浴は、添加剤としてビス−(N,N−ジアミノアルキル)尿素−α,ω−ジハロアルキルコポリマーまたはオリゴマーおよび1位が4級化された3−カルバモイルピリジニウム化合物を含有する。さらに、本発明は、光沢のある平坦な亜鉛および亜鉛合金被覆を析出させるための前記浴を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シアン化物を含有するアルカリ性溶液からの亜鉛の析出は、長年にわたってかなりのマーケットシェアを占めている。しかし、使用済みの亜鉛および亜鉛合金電解質浴の廃棄に関する法律規制の厳しさが増大し、廃液の厳格なコントロールが法定されていることから、シアン化物を含有しない亜鉛および亜鉛合金電解質に対する関心が増大している。
かかる金属被覆は、腐食特性を改善し、一定の視覚上の特性を得るために用いられる。従って、自動車工業において相応のコストで高度の耐腐食性を有する被覆を得るために、電気めっきされた亜鉛が数十年にわたって使用されている。
シアン化物を含有しない亜鉛電解質およびこれと類似する合金浴は、二種類の浴に分類することができる。すなわち、弱酸性の亜鉛電解質(塩化亜鉛または硫酸亜鉛を含有する)およびアルカリ性の亜鉛電解質である。弱酸性亜鉛浴は、均一に光沢のある亜鉛層を析出する。しかし、弱酸性亜鉛浴は、広い範囲の電流密度にわたって電流効率が常に100%であるという欠点がある。このことは、基体が単純な形状を有している場合には、電流が亜鉛の析出にのみ使用されることから長所となりうる。しかし、基体が複雑な形状である場合、電流密度の高い領域では過度に厚い亜鉛層となり、電気密度の低い領域では薄い亜鉛層となる。
電流密度の低い領域における亜鉛層の厚さに対する電流密度の高い領域における亜鉛層の厚さとの比は層の厚さ分布と呼ばれ、理想的には1(分散係数)となるべきである。技術的および機能的見地から、基体上の亜鉛層は、基体のすべてにわたって同じないしほぼ同じ層厚を有しているべきであり、高い光沢を有しているべきである。
良好な層の厚さ分布は、電流密度の低い領域における電流効率を維持しつつ、電流密度の高い領域における電流効率を減少することによっても実現しうるであろう。電流密度の広い範囲にわたる亜鉛層の厚さについての、この方法による均一化は、これまでにシアン化物を含有しないアルカリ性電解質からの亜鉛析出において実現されている。
【0003】
アルカリ性の亜鉛電気めっき浴は、一般に、水酸化アルカリ金属を含有する亜鉛酸イオンの水溶液をベースとして構成されている。特許文献1および特許文献2には、このような電解質が記載されているが、これらの文献に従って得られる亜鉛層は、均一な層厚分布を示さない。
当業界において、適当な添加剤を加えることにより層の厚さ分布を改善することの示唆が数多くなされている。
このような添加剤系は、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6に記載されている。
特許文献7には、ピリジニウム−3−カルボン酸の4級誘導体、N,N−ビス−[3−(ジアルキルアミノ)−アルキル]尿素とα,ω−ジハロアルカンとのコポリマーおよび芳香族アルデヒドからなり、亜鉛の析出と関連付けて説明されることの多い泡の発生が回避できることを特徴とする配合が記載されている。上記のタイプのコポリマーは、さらに、特許文献3、特許文献4および特許文献8にも記載されている。上記のような成分とは別に、特許文献8は、光沢のある析出物を得るために還元糖を使用している。この方法の欠点は、高濃度の還元糖によって排水のCODおよびTOC濃度が高くなることである。
特許文献7、特許文献3および特許文献4に記載されているコポリマーは、市販で直ちに入手可能なニコチン酸の4級誘導体、特にN−ベンジルニコチン酸塩、とともに、光沢剤として使用されている。
【0004】
シアン化物を含有するアルカリ性の亜鉛電解質への1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリドの使用は、非特許文献1に記載されている。
特許文献9には、4級ピリジニウム誘導体およびジアミンと1,3−ジハロプロパン−2−オールとのカチオン性コポリマーからなる浴系が記載されている。
上記の示唆にもかかわらず、電気めっき工業にはいまだに経済上および環境上の逼迫した要望が存在し、一方で添加剤の量を減少しつつ層の厚さ分布が改善され、他方で電流効率が向上され、良好な光沢を示す、アルカリ性でシアン化物を含有しない亜鉛および亜鉛合金の電解質の改善に対する一定のニーズがある。上記の層の厚さ分布の見地とは別に、エネルギーコストが絶え間なく上昇するときに、電流効率は投資コストおよび運転コストと逆比例することから重要な役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE 25 25 264
【特許文献2】US3,884,774
【特許文献3】US5,405,523
【特許文献4】US5,435,898
【特許文献5】DE 19 50 9713
【特許文献6】US4,030,987
【特許文献7】EP1114206B1
【特許文献8】WO2004/044269A2
【特許文献9】US4,071,418
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"金属表面技術”(1980), 31, p.244−248
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い光沢と良好なないし改善された層厚分布を有する亜鉛および亜鉛合金層を高い電流効率で与える亜鉛および亜鉛合金電解質を提供することにある。
【0008】
ここに、特許文献7(EP 1 114 206 B1)、特許文献3(US5,405,523)および特許文献4(US5,435,898)に記載されたコポリマーと適当な光沢剤とを組み合わせることにより、驚くべきほど改善された層厚分布、改善された光沢および向上された電流効率を示す亜鉛および亜鉛合金層を与える電解質を得ることができることを見い出した。特に、光沢剤としてピリジン−3−カルボン酸アミドを使用することにより、高い光沢、改善された層厚分布および向上された電流効率を特徴とする電解質組成物が得られる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
要するに本発明は、基体表面上に、亜鉛および亜鉛合金被覆を析出するための、シアン化物を含有しない水性アルカリ性の電解質浴を与える。前記浴は、以下の成分を含有する。
a)亜鉛イオン源、任意的にさらに別の金属イオン源、
b)水酸化物イオン
c)一般式Iで表される浴に可溶のポリマー
【0010】
【化1】

【0011】
ここで、mは1〜5、好ましくは2〜5または1〜4、より好ましくは2〜3の整数であり、
nは1よりも大きな整数、好ましくは2よりも大きな整数であり、
R1、R2、R3、R4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、置換または無置換の、炭素原子数1〜6の炭化水素残基、好ましくはメチル、エチル、ヒドロキシメチルまたは−CHCH(OCHCH−OH、ただしyは0〜6の間である、であり、
R5は(CH、ただしpは2〜12の整数である、好ましくはメチレン、もしくはプロピレン基であるか、または−(CH−O−(CH−もしくは−(CH−O−(CH−O−(CH−基であり、そして
はカウンターイオン、好ましくはハロゲン化物イオンまたは擬ハロゲン化物イオンである;ならびに
d)一般式IIまたはIIIで表されるピリジニウム化合物のうちの少なくとも一種
【0012】
【化2】

【0013】
ここで、Rは置換または無置換の、飽和または不飽和の、炭素原子数1〜12の脂肪族またはアリール脂肪族(araliphatic)残基であり、
’は2価の、置換または無置換の、飽和または不飽和の、炭素原子数1〜12の脂肪族またはアリール脂肪族残基であり、
およびXはNR、ただしRおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、そして
はカウンターイオンである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい態様では、式II中のRは、下記式R1a〜R1lで表される置換アリール基である;
【0015】
【化3】

【0016】
ここで、FGはカルボキシ、エステル、スルホン酸、カルバモイル、アミノ、シアノ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、アリル、プロパルギル−、4−スルホブチル、3−スルホプロピル、4−カルボキシブチル、3−カルボキシプロピル残基、水素原子ならびにフッ素原子、塩素原子および臭素原子から選択されるハロゲン原子よりなる群から選択される残基であり、
式III中のR’はブタ−2−エニル、ブタ−2−イニルまたは下記式R’a〜R’rのアリールである;
【0017】
【化4】

【0018】
ここで、FGはカルボキシ、エステル、スルホン酸、カルバモイル、アミノ、シアノ、アルキル、アルコキシ、トリフルオロメチル残基、水素原子ならびにフッ素原子、塩素原子および臭素原子から選択されるハロゲン原子よりなる群から選択される残基であり、
すべての環または個々の縮合した環は置換されていてもよい。
【0019】
式IIおよびIIIの残基RおよびR’はメチレン基を介してピリジニウム残基に結合していることが好ましい。
好ましいアリール脂肪族炭化水素残基は、例えばベンジル(R1a)およびナフチルメチル(R1b)である。
【0020】
本発明の文脈において、ハロゲン化物としてはフッ化物、塩化物および臭化物を使用することができる。さらに、本発明の浴は、物理的および化学的性質が上記ハロゲン化物と類似の化合物、すなわち擬ハロゲン化物も含有することができる。かかる擬ハロゲン化物はそれ自体当業者に知られており、また例えばRompp−Lexikon, Chemie, 10th edition, page3609に記載されている。本発明の文脈において、擬ハロゲン化物はメシチレートおよびトリフレートの如き残基を有していてもよい。
【0021】
浴に含有される一般式Iの可溶性ポリマーは、EP 1 114 206 B1に従い、N,N−ビス−[(ジアルキルアミノ)−アルキル]−尿素とα,ω−ジハロアルカンとの反応により得ることができる。EP 1 114 206 B1に記載された化合物のほかに、これに分類される特に好ましいポリマーは、Rhodiaから入手可能なMirapol(登録商標) WTまたはBASFから入手可能なLualvan(登録商標) Pである。
本発明によると、式Iのポリマーは、好ましくは0.1〜50g/L、より好ましくは0.25〜10g/Lの量で浴に含有される。浴は、式Iの可溶性ポリマーの異なる複数種を組み合わせて含有してもよい。
【0022】
本発明の電気めっき浴は、浴のpHを少なくとも10、そして好ましくは少なくとも11、に設定するために、無機アルカリ成分、好ましくはアルカリ金属の水酸化物、そして特に好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび/または水酸化リチウムを含有する。この目的のために、50〜約250g/L、好ましくは90〜130g/L、の量のアルカリ成分を使用することができる。
本発明の電気めっき浴は、亜鉛イオンを一般に約0.1〜約100g/Lの範囲の濃度で含有し、4〜30g/Lの濃度が好ましい。亜鉛イオンは、可溶性の塩、例えば酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、スルファミン酸亜鉛、水酸化亜鉛、酒石酸亜鉛、の形態で本発明の浴中に存在することができる。
【0023】
本発明の浴は、合金の添加金属(alloying metal)として、約0.1〜50g/Lの金属イオンを含有する。適当な金属塩は、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、硫酸アンモニウム塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩およびハロゲン化物、好ましくは塩化物および臭化物、である。適当な添加金属としては、好ましくはコバルト、ニッケル、マンガンおよび/または鉄である。本発明の浴中における添加金属イオンの濃度は、広い範囲にわたって変量することができ、好ましくは0.01〜100g/Lである。異なるタイプの合金は、添加金属について要求される含量が異なる。例えば腐食に対する防護効果を向上するための上記濃度は、金属イオンごとに異なる。
【0024】
好ましくは、本発明の浴は、添加金属として約0.1〜50g/Lのニッケルイオンを含有する。適当なニッケル塩は、水酸化ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸アンモニウムニッケル、スルファミン酸ニッケル、酢酸ニッケル、ギ酸ニッケルおよびハロゲン化ニッケルである。
好ましい態様において、電解質浴は、0.1〜30g/Lの量の亜鉛、10〜120mg/Lの量のコバルト、0.3〜3g/Lの量のニッケル、10〜100g/Lの量のマンガンおよび/または10〜120mg/Lの量の鉄を含有する。
【0025】
本発明の電解質浴は、析出層のレベリング特性および光沢特性を電流密度の広い範囲にわたって十分に向上するために、上述した一般式IIおよびIIIの窒素含有芳香族複素環化合物を含有する。従って、本発明において式IIおよびIIIの化合物は、以下、光沢剤という。
【0026】
好ましい式IIおよびIIIの化合物は、1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(2’−クロロベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(2’−フルオロベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(2’−メトキシベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(2’−カルボキシベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(2’−カルバモイルベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(3’−クロロベンジル)−3−カルバモイルピリジニウム、1−(3’−フルオロベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(3’−メトキシベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(3’−カルボキシベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(3’−カルバモイルベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(4’−クロロベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(4’−フルオロベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(4’−メトキシベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(4’−カルボキシベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−(4’−カルバモイルベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、(1’−メチルナフチル)−3−カルバモイルピリジニウム、(1’−メチルナフチル)−3−カルバモイルピリジニウムブロミド、(1’−メチルナフチル)−3−カルバモイルピリジニウムフルオリド、1,1’−(ブタ−2−エニル)−3,3’−ビスカルバモイルビスピリジニウムジクロリド、1,1’−(ブタ−2−エニル)−3,3’−ビスカルボキシビスピリジニウムジクロリド、1−アリル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1−アリル−3−カルボキシピリジニウムクロリド、1−プロパルギル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド、1,1’−(ブタ−2−イニル)−3,3’−ビスカルバモイルビスピリジニウムジクロリド、1,1’−(ブタ−2−イニル)−3,3’−ビスカルボキシビスピリジニウムジクロリド、1,1’−(キシレニル)−3,3’−ビスカルバモイルビスピリジニウムジブロミド、1−(3’−スルホプロピル)−3−カルバモイルピリジニウムベタインおよび上記化合物の対応する臭化物、フッ化物、ヨー化物および擬ハロゲン化物(例えばトリフレート、トシレート)である。
【0027】
光沢剤は、対応するニコチン酸アミド誘導体と対応する塩化ベンジルとを、実質的にエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、メタノールまたはこれらの混合物、DMF、DMAc、NMP、NEPの如き適当な溶媒中、または水性媒体中において、常圧または加圧下、加熱下に反応させることにより、容易に調製することができる。反応時間は、使用する出発原料に応じて1〜48時間の範囲が必要である。このとき、従来の加熱源のほか、電子レンジを使用することができる。得られたピリジニウム化合物は水溶液またはアルコール性反応溶液としてそのまま使用することができ、あるいは冷却後にろ過または対応する溶媒を除去することにより単離してもよい。上記化合物は、エタノールの如き適当な溶媒からの再結晶、沈殿法またはカラムクロマトグラフィーにより精製することができる。
【0028】
一般式IIのビスピリジニウム化合物は、米国特許6,652,728に従って調製することができる。
式IIまたはIIIの化合物は、単独でまたは混合物として、濃度0.001〜20g/L、好ましくは0.001〜10g/L、の濃度で使用することができる。浴は、式IIおよびIIIのピリジニウム化合物を組み合わせて含有することができる。
【0029】
本発明の浴は、公知の方法、例えば所定の量の上記の成分および水を加えること、により調製することができる。水酸化ナトリウムの如き塩基性成分の量は、浴のpHが、少なくとも10、そして好ましくは11を超える所定値となるのに十分な量とすべきである。
本発明の浴は、約15℃〜50℃、好ましくは20℃〜30℃、より好ましくは約25℃、の通常の温度において、光沢のある、平坦な、延性のある亜鉛または亜鉛合金層を析出する。本発明の浴はこの温度において、0.01〜10A/dm、好ましくは0.5〜4A/dmの電流密度の広い範囲にわたって安定且つ効果的である。
本発明の浴は、連続またはバッチ方式により使用することができ、各成分は時々補充しなければならないであろう。浴の各成分は、単独でまたは組み合わせて添加することができる。さらに、薬品を加える亜鉛および亜鉛合金浴のタイプおよび性質に応じて、広い範囲で変更することができる。
【0030】
表1に、亜鉛層を析出するための本発明の電解質における特に好ましい態様につき、層の厚さ(従って電流効率)、光沢度および層厚分布に対する影響を示した(ピリジニウム化合物10−4mmol/LおよびEP 1 114 206 B1の調製例2.2に準拠したポリマー添加剤を用いた)。
【0031】
【表1】

【0032】
表1から明らかなように、本発明の新規な電解質は、顕著に優れた層厚分布を示し、同時に電流効率が向上した。電流密度の高い領域および低い領域において、旧来のピリジニウム化合物と比較して、10〜30%(電流密度の高い領域)または30〜50%(電流密度の低い領域)高い電流効率を達成した。特に、電流密度の低い領域における極めて高い電流効率は、ドラム電気めっき法を使用する用途との関係で、非常に興味深いものである。
上記のピリジニウム化合物(US4,071,418により公知である)と上記一般式Iのコポリマーとを組み合わせた本発明の系は、析出層が予想外の有利な特性を示した。表2に、本発明の電解質組成物の相互作用効果を示した。
【0033】
【表2】

【0034】
表2に示したとおり、US4,071,418の配合は、高い電流密度の領域において高い電流効率に達した;しかし、この電解質を用いて得られた光沢度および層厚分布係数は、本発明の配合による場合に比べて顕著に劣っていた。予想に反して、一般式IIおよびIIIのピリジニウム化合物は、US4,071,418に記載されたカチオン性ポリマーとの組み合わせでは、旧来の広く用いられているニコチン酸ベンジルよりもより劣った結果を示した。
EP 1 114 206 B1の電解質と比較した本発明の電解質のさらなる利点は、本発明における4級ニコチン酸アミド誘導体の消費量が、N−ベンジルニコチン酸塩と比べて驚くほど少ないことである。適用例12に示したように、本発明において光沢剤として機能するピリジニウム化合物の消費量は顕著に少なく、従って、従来から使用されているニコチン酸ベースのピリジニウム誘導体よりも経済的である。
上述した添加剤とは別に、本発明の浴は、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールおよび/またはチオ尿素(チオ尿素が好ましく常用されている)の如きレベリング剤を含有することができる。
【0035】
本発明の電解質浴は、原則として、イオウ化合物、アルデヒドもしくはその重亜硫酸付加物、ケトン、アミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、タンパク質またはハロヒドリンと脂肪族もしくは芳香族アミン、ポリアミンまたは窒素含有複素環化合物との反応生成物およびこれらの混合物よりなる群から選択される別の光沢剤をさらに含有することができる。別の光沢剤としては、特に4−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシベンズアルデヒドおよびこれらの混合物よりなる群から選択される芳香族アルデヒドならびにこれらの重亜硫酸付加物を、0.001〜1.0g/Lの量で使用することができる。
【0036】
驚くべきことに、本発明の電解質は、別の光沢剤として芳香族アルデヒドまたはその重亜硫酸付加物、例えば4−ヒドロキシベンジルアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド、2−ヒドロキシベンズアルデヒドもしくはこれらの混合物またはこれらの重亜硫酸付加物を常套的に使用することは必須ではないことが分かった。
【0037】
従って好ましい態様では、本発明の電解質浴は、別の光沢剤としての芳香族アルデヒドまたはその重亜硫酸付加物、特に4−ヒドロキシベンジルアルデヒド、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒドもしくは2−ヒドロキシベンズアルデヒドまたはこれらの重亜硫酸付加物を含有しない。
本発明の電解質浴は、錯化剤ないし硬水軟化剤を含有することができる。錯化剤は、好ましくはキレート形成剤であり、好ましくは2〜200g/Lの量で存在する。
本発明の電解質浴は、レベリング剤として、イオウ化合物、例えば3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールおよび/またはチオ尿素、も、好ましくは0.01〜0.50g/Lの量で含有することができる。
本発明の水性、アルカリ性の浴は、亜鉛または亜鉛合金を析出しうるすべてのタイプの基体に一般的に使用することができる。適当な基体の例は、軟鋼、ばね鋼、クロム鋼、クロム−モリブデン鋼、銅、銅/亜鉛合金である。
【0038】
従って本発明は、本発明の電解質浴を使用して慣用の基体上へ亜鉛および亜鉛合金被覆を電気的に析出する方法をも提供する。本発明の方法は、被覆の析出を、好ましくは0.01A/dm〜10A/dmの電流密度および15〜50℃の範囲の温度、好ましくは20〜30℃、より好ましくは約25℃において行う。
【0039】
本発明の方法は、例えば小さな基体に適用するときはバレルめっき法およびより大きな基体に適用するときはラック電気めっき法として行うことができる。本発明の方法は、可溶性アノード、例えばカソード上に析出した亜鉛をアノードから溶出した亜鉛で補充するための亜鉛イオン源としても働く亜鉛アノード、の使用を伴う。
しかし、合金の析出により電解質から除去された亜鉛イオンおよび/または別の金属イオンが他の方法、例えば亜鉛溶媒槽の使用、により電解質に追加されるのであれば、不溶性アノード(例えばプラチナチタン混合酸化物アノード)も使用することができる。
【0040】
本発明の方法は、電気めっきにおいて通常可能なように、空気注入(injection of air)を行いつつ、基体を振動させつつまたは振動させないで行うことができる。これらの操作により、得られる被覆が損なわれることはない。添加剤の酸化を回避または緩和するため、電極の領域を分離し、またはアノード膜を使用してもよい。
電源は、慣用の整流器またはパルス整流器であることができる。
【実施例】
【0041】
下記の実施例は本発明を説明するものであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
調製例1: 1−(4’−メトキシベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリドの合成
還流器を装着した100mLの丸底フラスコ中で、60mLの水、9.2gのニコチン酸アミド(98%)(0.0738mol)、11.68gの塩化4−メトキシベンジル(99%)(0.07378mol)を還流下に24時間加熱した。反応終了後、水を真空下で除去し、残存物を200mLのエタノールで回収し、さらに1時間還流下に加熱した。次いで反応混合物を4℃に冷却し、得られた白色固体をろ取し、真空下で乾燥した。16.92gの白色固体を得た(理論収量の82.26%)。
【0043】
調製例2: 1−(4’−クロロベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリドの合成
還流器を装着した100mLの丸底フラスコ中で、60mLのエタノール、10gのニコチン酸アミド(98%)(0.0802mol)、13.05gの塩化4−クロロベンジル(99%)(0.0802mol)を還流下に24時間加熱した。反応終了後、固体状の残存物をエタノール/メタノール混合物中でさらに15分間加熱し、4℃に冷却した。得られた固体をろ取し、真空下で乾燥した。18.82gの白色固体を得た(理論収量の82.87%)。
【0044】
調製例3: 1,1’−(キシレニル)−3,3’−ビスカルバモイルビスピリジニウムジクロリドの合成
還流器を装着した100mLの丸底フラスコ中で、60mLのエタノール、10gのニコチン酸アミド(98%)(0.0802mol)、7.16gのα,α’−ジクロロ−p−キシレン(98%)(0.0401mol)を還流下に24時間加熱した。反応終了後、固体状の残存物をエタノール/メタノール混合物中でさらに15分間加熱し、4℃に冷却した。得られた固体をろ取し、真空下で乾燥した。12.29gの白色固体を得た(理論収量の73.13%)。
【0045】
調製例4: 1−(4’−トリフルオロメチルベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリドの合成
還流器を装着した100mLの丸底フラスコ中で、80mLの水、3.11gのニコチン酸アミド(98%)(24.93mmol)、4.95gのα−クロロ−α,α,α−トリフルオロパラキシレン(98%)(24.93mmol)を還流下に24時間加熱した。反応終了後、反応混合物を真空下で濃縮し、得られた固体を真空下で乾燥した。5.99gの白色固体を得た(理論収量の75.82%)。
【0046】
調製例5: ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリドの合成
還流器を装着した100mLの丸底フラスコ中で、60mLのエタノール、10gのニコチン酸アミド(98%)(0.0802mol)、10.252gの塩化ベンジル(99%)(0.0802mol)を還流下に24時間加熱した。反応終了後、反応混合物を4℃に冷却して得られた固体をろ取し、1Lのエタノールから再結晶を行った。19.00gの白色固体を得た(理論収量の95.33%)。
【0047】
調製例6: 1−ベンジル−3−N,N−ジメチルカルバモイルピリジニウムクロリドの合成
還流器を装着した50mLの丸底フラスコ中、10mLのDMF中に、1gのピリジン−3−N,N−ジメチルカルボン酸アミド(6.658mmol)、0.841gの塩化ベンジル(99%)(6.658mmol)を仕込み、120℃にて12時間加熱した。反応終了後、過剰の溶媒を真空下で除去し、粗生成物を水/エチルアセテートで長時間抽出した。得られたエチルアセテート相を廃棄し、水相を真空下で濃縮した。得られた固体をオイルポンプ真空下で乾燥した。1.8gの淡褐色の生成物を得た(理論収量の97.7%)。
【0048】
適用例1(EP 1 114 206 B1に準拠した比較例):
下記の組成を有する電解質を用いた:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
25mg/L 1−ベンジル−3−カルボキシピリジニウムクロリド
1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
250mLの電解質をハルセルに満たした。スチール製アノードを用いた。カソードのシートにつき、1Aにて15分間の被覆を行った。反応終了後、シートをリンスし、圧縮空気で乾燥した。電流密度の高い(3A/dm)地点と低い地点(0.5A/dm)の2点(底辺から3cm、右辺および左辺から2.5cm)において層の厚さを測定した。
層厚比は、電流密度の高い地点と低い地点とにおける層の厚さの比である。
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0049】
【表3】

【0050】
適用例2:
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
25mg/L 1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0051】
【表4】

【0052】
適用例3:
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
27.8mg/L 1−(4’−メトキシベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0053】
【表5】

【0054】
適用例4:
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
31.7mg/L 1−(4’−トリフルオロメチルベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0055】
【表6】

【0056】
適用例5:
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
41.9mg/L 1,1’−(キシレニル)−3,3’−ビスカルバモイルビスピリジニウムジクロリド
1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0057】
【表7】

【0058】
適用例6:
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
28.3mg/L 1−(4’−クロロベンジル)−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0059】
【表8】

【0060】
適用例7:
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
27.mg/L 1−ベンジル−3−N,N−ジメチルカルバモイルピリジニウムクロリド
1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0061】
【表9】

【0062】
適用例8:
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
100mg/L 1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0063】
【表10】

【0064】
適用例9(US4,071,418において1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリドを用いた比較例)
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
100mg/L 1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
1g/L US4,071,418の調製例1によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する光沢のある析出物が得られた:
【0065】
【表11】

【0066】
適用例10(US4,071,418に準拠した比較例)
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
200mg/L 1−ベンジル−3−カルボキシピリジニウムクロリド(ニコチン酸N−ベンジル)
1g/L US4,071,418の調製例1によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
下記のような層厚を有する光沢のある析出物が得られた:
【0067】
【表12】

【0068】
適用例11:
下記の組成を有する電解質を用いたほかは、適用例1を繰り返した:
12.5g/L Zn(OH)
120g/L NaOH
25mg/L 1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
1g/L Mirapol(登録商標) WT(rel. 100%)
下記のような層厚を有する極めて光沢のある析出物が得られた:
【0069】
【表13】

【0070】
適用例12:添加剤の消費量を測定するための、5リットルの浴を用いた長期実験
比較実験では、下記の組成を有する電解質を用いた:
12.5g/L 酸化亜鉛
130g/L NaOH
20g/L 炭酸ナトリウム
1g/L 1g/LのEP 1 114 206 B1調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
25mg/L ピリジニウム化合物(ニコチン酸N−ベンジルまたは1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド)
100mg/L 3−メルカプトチアゾール
50mg/L p−ヒドロキシベンズアルデヒド(重亜硫酸付加物の活性物質)
ニコチン酸N−ベンジルの使用は、従来技術(EP 1 114 206 B1の実施例14)が教示したところに相当する。
【0071】
本発明の電解質および従来技術の電解質における添加剤の消費量を比較すべく、Nortonシートを電気めっきするために、上記適用例に記載の電解質の双方につき5リットルの浴を使用した。本実験では、Nortonシートを6Aにて30分間電気めっきし、次いで層の厚さおよび外観を評価した。EDTA溶液を用いた滴定によって定量可能な亜鉛およびニッケル成分が十分に存在し、Nortonシートの外観が良好で光沢があるときには、電気めっきを継続した。(上記の如き)ハルセル試験ならびに亜鉛およびNaOH濃度測定からなる浴試験の全部を、50Ah(10Ah/L)のインターバルで実施した。亜鉛(ターゲット値:10g/Lの酸化亜鉛)またはNaOH濃度が低すぎることとなった場合、失われた量を追加した。光沢度が低下した後、ピリジニウム化合物を補充した。
10,000Ahにおいて、ピリジニウム化合物が下記の消費量で光沢剤として使用されたことが測定された。
【0072】
【表14】

【0073】
適用例13:
下記組成の電解質を用いた:
12g/L ZnO
9.5g/L 硫酸ニッケル6水和物
120g/L NaOH
30g/L テトラエチレンペンタミン
0.1g/L EP 1 114 206 B1の調製例2.2によるポリマー添加剤(記載の量は固形分含量換算値である)
50mg/L 1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
250mLの電解質をハルセルに満たした。ニッケルアノードを用いた。カソードを、1Aにて15分間電気めっきした。電気めっきの終了後、金属シートをリンスし、圧縮空気で乾燥した。電流密度の高い(3A/dm)地点と低い地点(0.5A/dm)の2点(底辺から3cm、右辺および左辺から2.5cm)において層の厚さを測定した。同じ地点においてニッケル含量の測定を行った。測定はXRFによって行い、測定誤差を最小化するため各位置において4点の測定を行った。得られた被覆は、高度に光沢があった。
以下のような層厚およびニッケル含量が得られた。
【0074】
【表15】

【0075】
適用例14:
亜鉛鉄層の析出に適する電解質を調製した。この電解質は、以下の組成を有する:
12.5g/L ZnO
120g/L NaOH
50mg/L 鉄(FeSO・7HOの形態)
25g/L グルコン酸ナトリウム
1g/L US6,652,728(rel. 100%)の調製例2.2によるポリマー添加剤
100mg/L 1−ベンジル−3−カルバモイルピリジニウムクロリド
ハルセルシートを1アンペアにて10分間被覆した。極めて光沢のある析出物が得られた。ハルセルシートをリンスし、亜鉛鉄層用黒クロム化剤(Trudur(登録商標) black liquid ZnFe、Atotech)中でクロム化した。クロム化後のシートは、良好な黒色の色彩を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含有する、基体表面上を亜鉛および亜鉛合金で被覆するための、シアン化物を含有しない水性アルカリ性浴:
a) 亜鉛イオン源および任意的にさらに別の金属イオン源
b) 水酸化物イオン
c)一般式Iで表される浴に可溶のポリマー
【化1】

ここで、mは1〜5であり、
nは1よりも大きな整数であり、
R1、R2、R3、R4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、置換または無置換の、炭素原子数1〜6の炭化水素残基または−CHCH(OCHCH−OH、ただしyは0〜6の間である、であり、
R5は(CH、ただしpは2〜12の整数である、であるか、または−(CH−O−(CH−もしくは−(CH−O−(CH−O−(CH−基であり、そして
はカウンターイオンである;ならびに
d)一般式IIまたはIIIで表されるピリジニウム化合物のうちの少なくとも一種
【化2】

ここで、Rは置換または無置換の、飽和または不飽和の、炭素原子数1〜12の脂肪族またはアリール脂肪族残基であり、
’は2価の、置換または無置換の、飽和または不飽和の、炭素原子数1〜12の脂肪族またはアリール脂肪族残基であり、
およびXはNR、ただしRおよびRは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、そして
はカウンターイオンである。
【請求項2】
式II中のRが、下記式R1a〜R1lで表される置換されたアリール残基である、請求項1の電解質浴。
【化3】

ここで、FGはカルボキシ、エステル、スルホン酸、カルバモイル、アミノ、シアノ、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、アリル、プロパルギル−、4−スルホブチル、3−スルホプロピル、4−カルボキシブチル、3−カルボキシプロピル残基、水素原子ならびにフッ素原子、塩素原子および臭素原子から選択されるハロゲン原子よりなる群から選択される残基であり、すべての環または個々の縮合した環は置換されていてもよい。
【請求項3】
式III中のR’が、ブタ−2−エニル、ブタ−2−イニルまたは下記式R’a〜R’rで表されるアリール残基である、請求項1または2の電解質浴:
【化4】

ここで、FGはカルボキシ、エステル、スルホン酸、カルバモイル、アミノ、シアノ、アルキル、アルコキシ、トリフルオロメチル残基、水素原子ならびにフッ素原子、塩素原子および臭素原子から選択されるハロゲン原子よりなる群から選択される残基であり、すべての環または個々の縮合した環は置換されていてもよい。
【請求項4】
式II中のRおよび/または式III中のR’がピリジニウム残基にメチレン基を介して結合している、請求項1〜3のいずれかの電解質浴。
【請求項5】
式IIまたはIII中のYがハロゲン化物イオンまたは擬ハロゲン化物イオンである、請求項1〜4のいずれかの電解質浴。
【請求項6】
一般式Iの浴に可溶のポリマーが0.1〜50g/Lの量で存在する、請求項1〜5のいずれかの電解質浴。
【請求項7】
一般式Iの浴に可溶のポリマーが0.25〜10g/Lの量で存在する、請求項6の電解質浴。
【請求項8】
式IIまたはIIIの少なくとも一つのピリジニウム化合物が0.001〜20g/Lの量で存在する、請求項1〜7のいずれかの電解質浴。
【請求項9】
式IIまたはIIIの少なくとも一つのピリジニウム化合物が0.001〜10g/Lの量で存在する、請求項8の電解質浴。
【請求項10】
式IIおよびIIIのピリジニウム化合物を組み合わせて含有する、請求項1〜9のいずれかの電解質浴。
【請求項11】
式Iの可溶性ポリマーのうちの種類の異なるものを組み合わせて含有する、請求項1〜10のいずれかの電解質浴。
【請求項12】
亜鉛イオン源が酸化亜鉛または水酸化亜鉛である、請求項1〜11のいずれかの電解質浴。
【請求項13】
亜鉛イオンの濃度が0.1〜100g/Lである、請求項1〜12のいずれかの電解質浴。
【請求項14】
亜鉛イオンの濃度が0.1〜30g/Lである、請求項13の電解質浴。
【請求項15】
別の金属イオンがコバルト、ニッケルマンガンおよび/または鉄イオンである、請求項1〜14のいずれかの電解質浴。
【請求項16】
亜鉛が0.1〜30g/Lの量で存在し、コバルトが10〜120mg/Lの量で存在し、ニッケルが0.3〜3g/Lの量で存在し、10〜100g/Lの量のマンガンおよび/または10〜120mg/Lの量の鉄が存在する、請求項15の電解質浴。
【請求項17】
塩基として水酸化アルカリ金属を含有する、請求項1〜16のいずれかの電解質浴。
【請求項18】
水酸化アルカリ金属が水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであり、水酸化アルカリ金属の量が50〜250g/Lである、請求項17の電解質浴。
【請求項19】
浴のpHが少なくとも10である、請求項1〜18のいずれかの電解質浴。
【請求項20】
浴がさらに別の光沢剤を含有しない、請求項1〜19のいずれかの電解質浴。
【請求項21】
錯化剤ないし硬水軟化剤を含有する、請求項1〜20のいずれかの電解質浴。
【請求項22】
錯化剤がキレート形成剤である、請求項21の電解質浴。
【請求項23】
錯化剤が2〜200g/Lの量で存在する、請求項21または22の電解質浴。
【請求項24】
浴がレベリング剤としてイオウ化合物を含有する、請求項1〜23のいずれかの電解質浴。
【請求項25】
レベリング剤が3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールおよび/チオ尿素を含むものである、請求項24の電解質浴。
【請求項26】
イオウ化合物が0.01〜0.50g/Lの量で存在する、請求項24または25の電解質浴。
【請求項27】
被覆されるべき基体を請求項1〜26のいずれかの電解質浴に浸漬する工程を含む、光沢のある平坦な亜鉛および亜鉛合金被覆を電気的に析出する方法。
【請求項28】
浴が0.01〜10A/dmの電流密度で運転される、請求項27の方法。
【請求項29】
浴が15〜50℃の温度において運転される、請求項27または28の方法。
【請求項30】
浴が25〜35℃の温度において運転される、請求項29の方法。
【請求項31】
ドラム電気めっき法を用いて導電性の基体の上に被覆を析出する、請求項27〜30のいずれかの方法。
【請求項32】
ラック電気めっき法を用いて導電性の基体の上に被覆を析出する、請求項27〜30のいずれかの方法。
【請求項33】
基体上に亜鉛被覆を析出する、請求項27〜32のいずれかの方法。
【請求項34】
基体上に亜鉛合金被覆を析出する、請求項27〜32のいずれかの方法。
【請求項35】
基体上に、コバルト、ニッケル、マンガンおよび/または鉄よりなる群から選択される一種以上を含む亜鉛合金の被覆を析出する、請求項34の方法。

【公表番号】特表2009−541580(P2009−541580A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515771(P2009−515771)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005490
【国際公開番号】WO2007/147603
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】