説明

亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板用塗料組成物及びその塗装鋼板

【課題】クロメート系防錆顔料を用いずに、耐食性及び加工性に優れた塗膜を与えることができる、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板用塗料組成物を提供する。
【解決手段】塗料組成物成分として、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種の有機樹脂(a)と、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物及び多価カルボン酸から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(b)と、縮合リン酸カルシウムからなる防錆顔料(c)とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板用塗料組成物に関し、クロメート系防錆顔料を使用しなくとも、耐食性及び加工性に優れ、特にプレコートメタルの塗装に適した塗料組成物及びこの塗料組成物が塗装された塗装鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛めっき鋼板や、亜鉛合金めっき鋼板などは、耐久性鋼板として広く使用されている。これらの鋼板は、屋根材や、雨戸、外装材、シャッター、サイディング材などの建築材料や、家電製品などの金属製品をはじめとする広い分野で使用されている。
これらの鋼板は、リン酸亜鉛処理や、クロメート処理などの化成処理を施した後、塗料を塗装した、いわゆるプレコートメタルとして使用されることが多い。
【0003】
プレコートメタルは、塗装した鋼板に曲げ加工を施して所定の形状に形成される。これらのプレコートメタルにおいては、その切断面や、カット部、傷部などの耐食性が重要である。これらの耐食性を満足させるため、一般に塗料の樹脂組成の改良や、クロメート系防錆顔料の配合量の増大等の対策が取られている。
しかしながら、昨今では環境保護の観点から毒性の強いクロムを含有しないクロムフリーのプレコートメタルの開発が要望されている。例えば、塩基性亜リン酸塩系防錆顔料を下塗り塗膜中に含有させることにより、クロムフリーでかつ耐食性に優れたプレコートメタルが提案されている(特許文献1参照)。
また、イソシアネート化合物及びリン酸系防錆顔料を下塗り塗膜中に含有させることにより、耐食性や加工性に優れた無公害型塗装鋼板が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、これら従来のクロムフリープレコートメタルにおいて、高耐食性クロム系プレコートメタル並みの耐食性を付与するためには、下塗り塗膜中に多量の防錆添加剤を含有させる必要がある。一方、これにより加工を受けない平面部や端面の耐食性は確保されるとしても、加工部の耐食性や、塗膜密着性は逆に低下してしまうなど問題となる。
プレコートメタルは、加工を受けた後に製品として使用されるため、加工を受けた部分の耐食性や、塗膜密着性は非常に重要な特性である。
【0005】
【特許文献1】特開平8−319437号公報
【特許文献2】特開平8−11257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、クロメート系防錆顔料を用いずに、耐食性及び加工性に優れた塗膜を与えることができる亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板用塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の防錆顔料を併用することにより上記の目的が達成されることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明の塗料組成物は、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種の有機樹脂(a)と、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物及び多価カルボン酸から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(b)と、防錆顔料としての縮合リン酸カルシウム(c)とを必須成分とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗料組成物は、耐食性及び加工性に優れた塗膜を形成できるので、下塗塗料組成物として好適に使用できる。本発明の塗料組成物は、防錆顔料としてクロメート系顔料を使用しないため、6価クロムによる問題を解決でき安全衛生上有利である。
本発明の塗料組成物は、特にプレコートメタル塗装鋼板用の下塗塗料として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の塗料組成物に使用される塗膜形成樹脂は、塗膜形成能を有する樹脂であり、ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種の有機樹脂(a)と、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物及び多価カルボン酸から選ばれる少なくとも1種のその硬化剤(b)との混合物からなる。
有機樹脂(a)としては、特に水酸基含有ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂が好適である。有機樹脂(a)は、通常、樹脂酸価が、50mgKOH/g未満であることが好適である。
【0010】
好適な水酸基含有ポリエステル樹脂としては、例えば、オイルフリーポリエステル樹脂や、油変性アルキド樹脂、これらの樹脂の変性物、例えば、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂などが好適に挙げられる。水酸基含有ポリエステル樹脂は、例えば、数平均分子量(Mn)1,500〜35,000、好ましくは、2,000〜25,000、ガラス転移温度(Tg)10〜100℃、好ましくは、20℃〜80℃、水酸基価2〜100mgKOH/g、好ましくは、5〜80mgKOH/gを有するものが好適である。
本発明において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査型熱分析(DSC)によるものであり、また数平均分子量(Mn)はゲル透過クロマトグラフィ(GPC)によって、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。
【0011】
オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるものである。多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸や、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及び、これらの二塩基酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸や、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコールや、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、
【0012】
1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、更に必要に応じて、グリセリンや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは、単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。酸成分としては、例えば、イソフタル酸や、テレフタル酸、これらの酸の低級アルキルエステル化物が特に好ましい。
油変性アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸や、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキド樹脂の油長は、例えば、30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
【0013】
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物と、それ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物と、それ自体既知の方法で反応せしめたものが好適に挙げられる。ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートや、イソホロンジイソシアネート、
【0014】
キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して30質量%以下の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基と、エポキシ基含有樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂中の水酸基と、エポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物などの、ポリエステル樹脂と、エポキシ樹脂との付加や、縮合、グラフトなどの反応による反応生成物が好適に挙げられる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、例えば、0.1〜30質量%となる量であることが好適である。
【0015】
アクリル変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基又は水酸基にこれらの基と反応性を有する基、例えば、カルボキシル基や、水酸基、エポキシ基などを含有するアクリル樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂に(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステルなどをパーオキサイド系重合開始剤を使用してグラフト重合してなる反応生成物を好適に挙げることができる。かかるアクリル変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、アクリル樹脂の量がアクリル変性ポリエステル樹脂に対して、例えば、0.1〜50質量%となる量であることが好適である。
ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、東洋紡績(株)製の、バイロンGK−78CSや、バイロンGK−29CSなどを好適に挙げることができる。
以上に述べたポリエステル樹脂のうち、なかでもオイルフリーポリエステル樹脂や、エポキシ変性ポリエステル樹脂が、塗膜の加工性や、耐食性などのバランスの点から好適である。
【0016】
有機樹脂(a)として好適なエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂や、ノボラック型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤を反応せしめた変性エポキシ樹脂などを好適に挙げることができる。変性エポキシ樹脂の製造において、その変性剤による変性時期は、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂製造の途中段階に変性してもエポキシ樹脂製造の最終段階に変性してもよい。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂や、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂などが好適に挙げられる。
【0017】
上記ビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]や、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを好適に挙げることができ、なかでもビスフェノールAや、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノールは、1種単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、大日本インキ化学製の、エピクロン9055−40AX;油化シェルエポキシ(株)製の、エピコート828、同812、同815、同820、同834、同1001、同1004、同1007、同1009、同1010;旭チバ(株)製の、アラルダイトAER6099;及び三井化学(株)製の、エポミックR−309などを好適に挙げることができる。
【0018】
また、エポキシ樹脂として使用できるノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂など、各種のノボラック型エポキシ樹脂などを好適に挙げることができる。
上記変性エポキシ樹脂としては、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分を反応させたエポキシアクリレート樹脂;イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂;上記ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂又は上記各種変性エポキシ樹脂中のエポキシ基にアミン化合物を反応させて、アミノ基又は4級アンモニウム塩を導入してなるアミン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
硬化剤(b)として使用される、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物、多価カルボン酸は、加熱により有機樹脂(a)と反応して硬化させることができるものである。
【0019】
上記アミノ樹脂としては、例えば、メラミンや、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログタナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂などが好適に挙げられる。上記反応に用いられるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒドや、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が好適に挙げられる。また、上記メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものも、アミノ樹脂として使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としては、例えば、メチルアルコールや、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
アミノ樹脂の市販品としては、例えば、三井サイテック(株)製の、サイメル303などが好適に挙げられる。
【0020】
硬化剤(b)として使用されるブロック化ポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化してなる化合物である。
ブロック化する前のポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートや、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートや、イソホロンジイソシアネートなどの環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネートや、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類等の有機ジイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が好適に挙げられる。
【0021】
イソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、例えば、フェノールや、クレゾール、キシレノールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどラクタム系;メタノール、エタノール、n−又はi−プロピルアルコール、n−、i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系などのブロック化剤を好適に使用することができる。上記ポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、住友バイエルウレタン(株)デスモデュールBL−3175などが好適に挙げられる。
【0022】
硬化剤(b)として使用される多価カルボン酸は、有機樹脂(a)がエポキシ樹脂を含有する場合に、加熱によりエポキシ基と反応して硬化に寄与することができるものであり、1分子中に2個以上のカルボキシル基又は1個以上の酸無水基を有するものであり、例えば、酸価50〜500mgKOH/g、好ましくは、80〜300mgKOH/gのカルボキシル基を有する化合物であることが好適であり、代表例として、カルボキシル基を有するビニル系重合体や、カルボキシル基含有ポリエステル化合物などを好適に挙げることができる。
上記カルボキシル基を有するビニル系重合体は、カルボキシル基を有するビニルモノマーと、その他のビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。上記カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸や、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸など;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水基を有するビニルモノマーの酸無水基を脂肪族モノアルコールなどによりハーフエステル化してなる基(ハーフエステル基)を有するビニルモノマーを挙げることができる。また、カルボキシル基を有するビニル系重合体としては、例えば、無水マレイン酸や、無水イタコン酸等の酸無水基を有するビニルモノマーと、その他のビニルモノマーとの共重合体における酸無水基をハーフエステル化してなる共重合体も好適に挙げることができる。
【0023】
多価カルボン酸として用いることができるカルボキシル基含有ポリエステル化合物の代表例としては、例えば、ポリオールと1,2−酸無水物との付加反応により生成する、例えば、数平均分子量Mn1000未満、好ましくは、Mn=400〜900の低分子量ハーフエステルを好適に挙げることができる。この低分子量ハーフエステルは、ポリオールと1,2−酸無水物とを、通常、不活性ガス雰囲気下、溶剤の存在下にて、酸無水物の開環反応が起こるが、実質上、生成したカルボキシル基によるポリエステル化反応が起こらない条件下、例えば、反応温度70〜150℃、好ましくは、90〜120℃で、例えば、10分〜24時間程度反応させることによって得ることができる。
上記低分子量ハーフエステルの製造に用いられる1,2−酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物や、メチルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、マレイン酸無水物などを好適に挙げることができる。
【0024】
上記低分子量ハーフエステルの製造に用いられるポリオールとしては、炭素数2〜20、好ましくは2〜10のジオール類、3価以上のポリオール類を、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。上記ジオール類としては、例えば、エチレングリコールや、1,2−又は1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサンなどを挙げることができ、上記トリ以上のポリオール類としては、例えば、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを好適に挙げることができる。
硬化剤(b)は、単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0025】
有機樹脂(a)と、硬化剤(b)とを塗膜形成性樹脂(A)として使用する場合の両者の配合割合は、特に限定されるものではないが、通常、両者の固形分合計100質量部に基づいて、例えば、有機樹脂(a)が40〜95質量部、特に60〜90質量部の範囲内であり、固形分量で、硬化剤(b)が5〜60質量部、特に10〜40質量部の範囲内であることが好適である。有機樹脂(a)が40質量部より少ないと、塗膜物性が低下しやすく、また、95質量部より多いと、塗膜が硬化し難くなる等の問題が生ずる恐れがあり、硬化剤(b)が5質量部より少ないと、塗膜の硬化不良がおこり易く、また、60質量部より多いと、塗膜物性が低下しやすい等の問題が生ずる恐れがある。
本発明に使用する防錆顔料(c)は、縮合リン酸カルシウムである。縮合リン酸カルシウムは、カルシウムとリンとのモル比率(Ca/P=m)が、0.50<m<1.00となるように、カルシウム含有化合物、リン含有化合物及びカルシウムとリンとを含有する化合物からなる群から選択した化合物を、180〜350℃、好ましくは、200〜290℃で焼成することによって得られる。好ましくは、モル比率mは、0.60<m<0.80である。
カルシウムとリンとのモル比率(Ca/P=m)が、m≦0.50の場合には、縮合リン酸カルシウムの溶出量が過剰となり、塗膜の膨れが生じ、防錆効果が低下する。また、m≧1.00の場合には、不動態皮膜形成に必要な縮合リン酸イオンの溶出量が低くなり、また、本発明で使用される縮合リン酸カルシウムを製造することが実際上困難である。
【0026】
本発明に用いられる縮合リン酸カルシウムは、下記式(1)、
Caxy(Pn3n+1z (1)
(式中、xは、1〜4の実数であり、yは、0〜2の実数であり、zは、1〜2の実数であり、nは、2〜6の整数であり、かつ、2x+y=(n+2)zである。)
で表される化合物であることが望ましい。
但し、式(1)の縮合リン酸カルシウムは、任意の数の結晶水を持つ化合物も含む。
上記式(1)で表される縮合リン酸カルシウムとしては、CaH227や、Ca227、Ca32(P272、Ca42(P3102、Ca4619などが代表的なものであり、これらは、単一で使用してもよく、混合物として使用してもよい。
式(1)で表される縮合リン酸カルシウムは、主にX線回折法を用いて決定することができる。
【0027】
本発明に用いられる縮合リン酸カルシウムは、単一の結晶状態であっても、種々の結晶状態(非晶質も含む)の混合物であってもよい。
本発明に用いられる縮合リン酸カルシウムは、前述のカルシウム含有化合物、リン含有化合物及びカルシウムとリンとを含有する化合物からなる群から選択される化合物を、180〜350℃、好ましくは、200〜290℃の温度で焼成する。焼成温度が180℃より低いと、リン酸の縮合が起こり難く、上記縮合リン酸カルシウムが得られ難い。また、焼成温度が350℃より高いと、生成した縮合リン酸カルシウムの多くがメタリン酸カルシウムに転じ、防錆性を有する縮合リン酸カルシウムは得られ難い。
焼成時間は、特に制限はないが、例えば、1〜30時間が好ましい。また、焼成後の縮合リン酸カルシウムには、用途等に応じて粉砕や分級などの操作を行ってもよい。
【0028】
リン含有化合物としては、例えば、正リン酸や、ポリリン酸、亜リン酸、五酸化二燐等が好適に挙げられる。また、カルシウム含有化合物としては、例えば、カルシウム単体や、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が好適に挙げられる。カルシウムとリンとを含有する化合物としては、リン酸−水素カルシウムや、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウムなどが好適に挙げられる。いずれにしても、焼成温度において、mの値が、上記範囲内に入るように配合されていればよい。典型的には、焼成される化合物は、カルシウム含有化合物とリン含有化合物との混合物か、カルシウム含有化合物又は/及びリン含有化合物と、カルシウムとリンとを含有する化合物との混合物が例示される。なお、硝酸カルシウムや、酢酸カルシウム、塩化カルシウムは、焼成物中に水可溶性のイオンが残存し、顔料の防錆性が低下する傾向にある。
【0029】
防錆顔料(c)は、必要に応じて、アルカリ土類金属化合物を併用してもよい。このようなアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カルシウムや、マグネシウム、ストロンチウム等の酸化物や、水酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩などが好適に挙げられる。アルカリ土類金属化合物を併用することにより、防錆性が更に向上する。アルカリ土類金属化合物としては、特にマグネシウムの化合物を用いるのが望ましい。
アルカリ土類金属化合物は、上記縮合リン酸カルシウムと併用する場合、縮合リン酸カルシウム対アルカリ土類金属化合物の混合質量比は、例えば、10/1〜1/10が好ましく、特にアルカリ土類金属化合物として塩基性の強い酸化物や水酸化物を用いる場合は、10/1〜10/3が望ましい。また、アルカリ土類金属化合物は、単独で併用してもよく、それらの混合物として併用してもよい。
【0030】
アルカリ土類金属化合物の配合量が、縮合リン酸カルシウムに対して、多すぎると、防錆作用を発揮する要因となる縮合リン酸イオンの溶出量が少なくなり、防錆効果が不足する傾向が生じる。一方、アルカリ土類金属化合物の配合量が少なすぎると、アルカリ土類金属化合物の相対的な減少により、縮合リン酸カルシウムが有する固体酸性を中性化する傾向が低下し易く、縮合リン酸カルシウムに基づく防錆効果が低下し易くなるとともに、塗膜ふくれ等の欠陥が生じ易くなる傾向が生じ易い。
アルカリ土類金属化合物は、単に縮合リン酸カルシウムと混合して併用してもよく、それらの混合物を焼成して、併用してもよい。
縮合リン酸カルシウムは、本発明の塗料組成物の固形分100質量部に対して、例えば、1〜30質量%(固形分)であることが望ましい。配合量が、1質量%未満であると、耐食性の発現が悪く、また、30質量%を超えると、塗料粘度が上昇し、塗料の塗装作業性が悪くなり易い。
本発明の塗料組成物には、上記成分の他に、通常、有機溶剤が配合され、更に必要に応じて、硬化触媒や、顔料、消泡剤、塗面調整剤、沈降防止剤、顔料分散剤、シランカップリング剤、固体潤滑剤などを配合することができる。
【0031】
有機溶剤は、本発明の塗料組成物の塗装性の改善などのために必要に応じて配合されるものであり、塗膜形成性樹脂を溶解ないし分散できるものが使用される。このような有機溶媒としては、具体的には、例えば、トルエンや、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上の混合物として使用してもよい。
硬化触媒は、有機樹脂(a)と、硬化剤(b)との硬化反応を促進するために必要に応じて配合されるものであり、硬化剤(b)の種類などに応じて適宜選択して使用される。
【0032】
硬化剤(b)がアミノ樹脂、特に低分子量の、メチルエーテル化又はメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂を含有する場合には、硬化触媒としては、例えば、スルホン酸化合物や、スルホン酸化合物のアミン中和物などが好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、例えば、p−トルエンスルホン酸や、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。これらのうち、塗料の安定性、反応促進効果、得られる塗膜の物性などの点から、p−トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。
【0033】
硬化剤(b)がブロック化ポリイソシアネート化合物である場合には、硬化剤であるブロック化ポリイソシアネート化合物のブロック剤の解離を促進する硬化触媒が好適であり、このような好適な硬化触媒として、例えば、オクチル酸錫や、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機金属触媒などを好適に挙げることができる。
硬化剤(b)が多価カルボン酸である場合には、硬化触媒として、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライドや、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスホニウムブロマイドなどの4級塩触媒;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類を好適に挙げることができる。
【0034】
硬化触媒の配合量は、通常、塗膜形成性樹脂(A)100質量部に対して、例えば、0.1〜2.0質量部の範囲であることが好適である。硬化触媒量は、硬化触媒がスルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物である場合には、その触媒の有効成分量はスルホン酸の含有量を意味し、硬化触媒が有機金属触媒の場合には固形分量を意味するものとする。
本発明の塗料組成物中に必要に応じて配合できる顔料としては、チタン白などの着色顔料や、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの体質顔料などを好適に挙げることができる。
【0035】
シランカップリング剤は、亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板からなる素地と、塗膜との密着性を改善し、耐食性を更に向上させるために本発明の塗料組成物に必要に応じて添加される。更に、本発明の塗料組成物を塗布処理した上に、上塗り塗料を塗装する場合の上塗り塗膜との密着性を向上させることにも役立つ。
このようなシランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシランや、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、
【0036】
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどを好適に挙げることができる。シランカップリング剤としては、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、メタアクリロキシ基から選ばれた少なくとも1種の反応性官能基を有するシランカップリング剤を使用することができる。シランカップリング剤は、塗料組成物の固形分100質量部に対して、0.2〜5.0質量部の割合で配合するのが好適である。
固体潤滑剤は、本発明の塗料組成物を塗布処理した亜鉛系めっき鋼板の加工性を向上するために任意に配合される。
固体潤滑剤としては、例えば、ポリオレフィンワックスや、パラフィンワックス、フッ素樹脂系ワックス、脂肪酸アミド系化合物、金属石けん類、金属硫化物等が好適に挙げられる。固体潤滑剤は、潤滑性付与、加工特性改善を目的とし、一般的に利用される固体粒子状潤滑剤を使用することができる。固体潤滑剤の平均粒子径としては、0.05〜10μmのものが好ましく、塗膜厚の2倍以下の平均粒子径のものがより好ましい。
【0037】
本発明の塗料組成物は、亜鉛系めっき鋼板に適用した場合、耐食性及び加工性に優れた効果を発揮するものであり、亜鉛めっき鋼板に限らず、亜鉛系合金化めっき鋼板、例えば、電気亜鉛−ニッケル(Zn−Ni)めっき鋼板、亜鉛−アルミ(Zn−Al)溶融めっき鋼板、亜鉛−鉄(Zn−Fe)溶融めっき鋼板などに適用した場合でも、同様な効果を発揮するものであり、亜鉛系のめっきが施された鋼板であれば、特に使用を限定するものではない。
本発明の塗料組成物を鋼板に塗布する方法としては、例えば、ロールコーターや、スプレー法、浸漬法、カーテンフロー法など、従来より塗装に採用されている塗布方法であれば各種の方法を使用することができる。
【0038】
本発明の塗料組成物を塗布した後は、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いて乾燥を行うことができる。乾燥温度は、板温の到達温度で、例えば、80〜250℃が好ましい。その到達温度が80℃よりも低いと、皮膜の乾燥が不充分でベタツキが生じ易く、十分な性能が出ないばかりか、ブロッキング性に問題が生じ易い。また、その到達温度が250℃以上での乾燥は、皮膜の性能上の問題は生じないが、不経済である。
本発明の塗料組成物の塗布量は、乾燥膜厚として、例えば、0.2〜10.0μmであるのが好ましいが、特に制限を受けるものではない。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について、実施例及び比較例に基づいて、更に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」や「%」はいずれも質量を基準にしたものである。
【0040】
<防錆顔料(縮合リン酸カルシウム)の調製方法1>
水酸化カルシウム148.2gと、市販の85%リン酸(正リン酸)345.9gとをフラスコに採り(m=Ca/P=2/3=0.667)、攪拌しながら80℃で3時間反応させた。この反応物を放冷後、200℃に設定した乾燥機にて、30時間焼成し、縮合リン酸カルシウムを合成した。この縮合リン酸カルシウムは、CaH227やCa42(P3102、Ca32(P272、Ca227等の混合物であった。これを防錆顔料Aとした。更に、防錆顔料Aに対し、アルカリ土類金属化合物として、水酸化マグネシウムを混合し、pH7.5になるよう調製したものを、防錆顔料Bとした。
【0041】
<塗料組成物の製造方法>
(実施例1)
ポリエステル樹脂バイロンGK−78CS(東洋紡績(株)製、固形分40%溶液、数平均分子量約10,000、ガラス転移温度約40℃)187.5部(固形分量で75部)、チタン白10部、防錆顔料A5部、及び混合溶剤(ソルベッソ150(エッソ石油(株)製、芳香族炭化水素系溶剤)とシクロヘキサノンとの1/1混合溶剤)の適当量を混合し、防錆顔料の粒子径が10μm以下となるまで練合及び分散を行った。次いで、この分散物に硬化剤として、アミノ樹脂サイメル303(三井サイテック(株)製、メチルエーテル化メラミン樹脂)25部、及び硬化触媒として、ネイキュア5225(米国キング・インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン塩、有効成分約25%)1.6部(有効成分0.4部)を加えて均一に混合し、更に上記混合溶剤を加えて、粘度約100秒(フォードカップ#4/25℃)に調整し、実施例1の塗料組成物を得た。
【0042】
(実施例2〜6、及び比較例1〜3)
下記表1に示す組成としたことを除いて、実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜3の塗料組成物を得た。
【0043】
<塗装鋼板の作製>
得られた各塗料組成物を表1に記載した鋼板に、表1に記載の乾燥膜厚となるようにロールコーターで塗布し、50秒で鋼板の到達温度が、225℃となるよう加熱し、塗膜を乾燥固化させ、塗装鋼板の試験片をそれぞれ作製した。
























【0044】
表1 塗料組成(単位:質量部(硬化触媒は有効成分量、このもの以外は固形分量))

【0045】
※1)バイロンGK−78CS(東洋紡績(株)製、固形分40%溶液、数平均分子量約10,000、ガラス転移温度約40℃)
※2)エピクロン9055−40AX(大日本インキ化学製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂溶液、固形分40%、樹脂の数平均分子量約5,200)
※3)K−White G105(テイカ(株)製、表面を亜鉛化合物で処理したトリポリリン酸2水素アルミニウム)
【0046】
※4)サイメル303(三井サイテック(株)製、メチルエーテル化メラミン樹脂)
※5)デスモデュールBL−3175(住友バイエルウレタン(株)、メチルエチルケトオキシムでブロック化したHDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物溶液、固形分75%)
※6)ネイキュア5225(米国キング・インダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン塩、有効成分約25%)
※7)使用した鋼板の種類A〜B
鋼板A:溶融亜鉛めっき材(GI材)
鋼板B:合金化溶融亜鉛めっき材(GA材)
【0047】
<評価及び試験方法>
作製した試験片について、各塗装鋼板の特性(耐食性、上塗塗膜密着性)を以下の試験方法に従って評価した。
【0048】
<塩水噴霧試験>
各塗装鋼板の試験片を70mm×150mmの大きさに切断後、端面部をシールし、塩水噴霧試験(JIS Z−2371)を行い、各試験片の塗膜表面に白錆が全体の面積の5%発生するまでに要した時間を、下記評価基準に従い評価し、結果を以下の表2に示した。
◎ : 240時間以上
○ : 160時間以上〜240時間未満
△ : 72時間以上〜160時間未満
× : 72時間未満
【0049】
<複合サイクル腐食試験>
上記と同様な試験片を用い、塩水噴霧2時間、乾燥4時間、湿潤2時間の合計8時間を1サイクルとして複合サイクル腐食試験を実施した。塩水噴霧の条件は、JIS K5400に従った。乾燥条件は、温度50℃、湿度30%RH以下とし、湿潤条件は、温度35℃、湿度95%RH以上とした。各試験片の塗膜表面に白錆が全体の面積の25%発生するまでに要したサイクル数を、下記評価基準に従い評価し、結果を以下の表2に示した。
◎ : 100サイクル以上
○ : 50サイクル以上〜100サイクル未満
△ : 30サイクル以上〜50サイクル未満
× : 30サイクル未満
【0050】
<上塗塗膜密着性>
上記と同様な試験片を用い、JIS K−5400に準拠して、メラミン−アルキッド樹脂系塗料(大日本塗料(株)製 デリコン#300 ホワイト)を膜厚30μmとなるよう塗装、焼き付けた後、碁盤目(1mm間隔で10×10の碁盤目)のカットを入れて、粘着テープによる貼着・剥離を行い、目視による観察によって、その塗膜の剥離面積率(%)を算出し、下記の評価基準に従い評価した。その結果を下の表2に示した。
◎ : 剥離なし
○ : 剥離面積率が5%未満
△ : 剥離面積率が5%以上〜20%以下
× : 剥離面積率が20%以上
【0051】
表2 評価結果

【0052】
<防錆顔料(縮合リン酸カルシウム)の調製方法2>
上記調製方法1と同様にして、但し、モル比率(m)及び焼成温度を変えて、以下の表3に示すように、防錆顔料D〜Eを調製した。

【0053】
表3

【0054】
<塗料組成物の製造方法>
(比較例4〜7)
上記防錆顔料D〜Gを以下の表4に示す配合割合で使用することを除いて、実施例1と同様にして、塗料組成物を得た。
<塗装鋼板の作製>
得られた各塗料組成物を、以下の表4に記載した鋼板に、同表4に記載の膜厚となるようにロールコーターで塗布し、50秒で鋼板の到達温度が、225℃となるよう加熱し、塗膜を乾燥固化させ、塗装鋼板の試験片をそれぞれ作製した。
【0055】
表4

【0056】
上記と同様にして、塗膜特性を評価した。その結果を、以下の表5に示す。
【0057】
表5

【0058】
上記表5の結果から明らかなように、縮合リン酸カルシウムを調製する際に、モル比率m及び焼成温度が、それぞれ、所定の範囲内にない場合には、それを配合した塗料組成物から得られた塗膜を有する亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板の耐食性及び加工性が大きく低下することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板用の塗料組成物であって、
ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種の有機樹脂(a)と、アミノ樹脂、ブロック化ポリイソシアネート化合物及び多価カルボン酸から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(b)と、防錆顔料(c)としての縮合リン酸カルシウムとを含有し、前記縮合リン酸カルシウムが、カルシウムとリンとのモル比率(Ca/P=m)が、0.50<m<1.00となるように、カルシウム含有化合物、リン含有化合物及びカルシウムとリンとを含有する化合物からなる群から選択した化合物を、180〜350℃で焼成してなる縮合リン酸カルシウムであることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記縮合リン酸カルシウムが、下記式、
Caxy(Pn3n+1)z
(式中、xは、1〜4の実数であり、yは、0〜2の実数であり、zは、1〜2の実数であり、nは、2〜6の整数であり、かつ、2x+y=(n+2)zである。)
で表される化合物である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記縮合リン酸カルシウムが、CaH227、Ca42(P3102、Ca32(P272及びCa227からなる群から選択される化合物を含有する、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
塗料組成物中の固形分100質量部に対して、前記有機樹脂(a)40〜95質量部と、前記硬化剤(b)4〜60質量部と、前記防錆顔料(c)1〜30質量部とを含有する、請求項1〜3の何れかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
亜鉛めっき鋼板又は亜鉛合金めっき鋼板上に、請求項1〜4の何れかに記載の塗料組成物を塗装して形成された塗膜を有することを特徴とする塗装鋼板。

【公開番号】特開2007−126565(P2007−126565A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320690(P2005−320690)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】