説明

亜鉛を用いる埋め込み可能な医療装置

亜鉛を用いる埋め込み可能な装置(10)、およびそのための方法は、1以上の有利な効果を組織に提供する。1の具体例において、少なくとも1つの亜鉛含有成分を、1以上の亜鉛キレート剤を介してステントと結合させて、該ステントのプラーク形成およびステント内再狭窄に対する耐性を増強する。エラスチン産生もまた、亜鉛と結合した装置によって増強されうる。増強されたエラスチン産生は、例えば、動脈瘤位置またはその近くの血管を治療するのに使用することができる。いくつかの具体例において、エラスチン産生およびプラーク耐性の両方が増強される。例えば、エラスチンを増加するために、およびプラーク形成に抵抗するために、ゲルまたは他の担体物質を介して、静脈移植片に亜鉛を塗布してもよい。亜鉛と結合させた埋め込み可能な装置(10)は、埋め込み可能な装置を含む医学的および外科的手法の改善された結果を提供し、その結果、処置を繰り返す必要性が減る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本発明は、概して、米国特許出願第60/421,336号、代理人の整理番号020154−00100US、名称「組織特性を改善するための亜鉛レベルの調節(Modulation of Zinc Levels to Improve Tissue Properties)」および米国特許出願第60/421,278号、代理人の整理番号020154−001200US、名称「亜鉛を用いる埋め込み可能な医療装置(Implantable Medical Devices Using Zinc)」に関し、これにより、それらは出典明示により完全に本明細書の一部とされる。
【0002】
発明の背景
本発明は、概して、医療装置に関する。より詳細には、本発明は、プラーク形成の阻害、エラスチン産生の増強などのための亜鉛と結合させた埋め込み可能な医療装置に関する。
【0003】
血管疾患(管疾患)は、しばしば、「アテローム」と呼ばれる塊またはプラークが管腔内壁に蓄積するときに発症し、その結果、アテローム性動脈硬化症として知られる状態をもたらす。アテローム性動脈硬化症は、体内のいずれの血管にも起きうるが、特に、心臓に血液を供給する動脈および下肢に血液を供給する動脈において一般的である。アテローム性動脈硬化症は、加齢により自然に起きるが、ダイエット、高血圧、遺伝、管傷害などの因子によっても悪化しうる。アテロームおよび他の管沈着物は、血流を制限し、体の一部における血液不足(虚血として知られる状態)を引き起こすことができる。虚血は、次に、心筋梗塞(心臓発作)または下肢の壊疽などの組織死を引き起こすことができる。アテローム性沈着物は、幅広く種々の性質を有し、比較的柔らかいものも、繊維質または石灰化したものもある。
【0004】
管疾患を治療するための1の方法は、1以上のステントを血管内のアテローム性動脈硬化症部位に留置することを含む。ステントは、一般に、管腔の開通性を維持するように血管壁を支えることによって、閉塞または弱体化した管腔を治療するために使用される。多くの手法において、まず、バルーン血管形成カテーテルまたは同様の装置を用いて血管を広げ、次いで、その広げられた領域の直径を維持するように1以上のステントをその領域に置く。
【0005】
ステントの使用は虚血性管疾患の治療を大いに改善したが、解決されていないステントの1つの欠点は、ステント内再狭窄の頻繁な発生である。再狭窄は、平滑筋細胞の増殖および埋め込まれたステントの領域およびその周辺の血管壁領域への平滑筋細胞の移動の過程をいい、その結果、血管の再閉塞または遮断を引き起こす。かくして、再狭窄は、ステントが防ごうとしている心臓発作などの虚血状態をもたらすことがある。多くの研究者は、現在、薬剤でのステントの被覆やステントの照射処理などの、かかる再狭窄を予防するための装置および方法を研究している。しかしながら、現在入手可能な装置は、再狭窄問題を十分には解決していない。
【0006】
亜鉛は、ヒトの健康および栄養において最も重要な微量元素の1つであり、多くの細胞内蛋白質の機能において重要な役割を果たす。亜鉛は、遺伝子発現および核酸代謝にとって非常に重要であり、そのことが、一部、細胞成長および分化におけるその重要性を説明する。近年の研究は、亜鉛が実際に、調節の役割を有しうることを示す。亜鉛は、幅広い範囲の酵素の触媒部位で効果的に利用されるリガンド結合性を有する。さらに、それは、生体膜(Tangら、(2001) J. Nutr. 131: 1414-14200)、細胞受容体、および蛋白質(すなわち、転写因子およびDNA複製に関与する蛋白質)において、多くの構造的役割を有しうる。亜鉛の性質および特徴の多くのさらなる記載のために、上記で出典明示により本明細書の一部とした米国特許出願第60/421,336号(「組織特性を改善するための亜鉛レベルの調節(Modulation of Zinc Levels to Improve Tissue Properties)」に言及する。
【0007】
さらに下記で論じるように、亜鉛は、管疾患の治療において、1以上の有益な効果を有しうる。したがって、亜鉛を用いる埋め込み可能な医療装置および方法は、血管、心筋、静脈移植片などの組織において1以上の組織特性を改善するのに有利である。例えば、亜鉛は、プラーク形成の予防、エラスチン産生の増強、プラーク形成予防およびエラスチン産生の増強の両方などを提供するような配置で、埋め込み可能な装置と共に使用されてもよい。これらの目的のうち少なくともいくつかは、本発明によって達成されるであろう。
【0008】
発明の簡単な概要
本発明の装置および方法は、組織の1以上の特性を増強するための亜鉛を用いる埋め込み可能な医療装置を提供する。例えば、いくつかの方法は、プラーク形成に抵抗するため、エラスチン産生を増強するため、またはその両方のための少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置の使用を含む。例えば、該装置は、冠動脈、末梢血管、腹大動脈などの血管中に設置するための1以上のステント、移植片またはステント−移植片であってもよい。他の具体例において、該装置は、ゲルまたは他の亜鉛担体物質、バルーン拡張カテーテルなどのカテーテル、亜鉛固定物質または装置、またはいずれか他の適当な装置から構成されうる。少なくとも1つの亜鉛含有成分、およびその量、濃度、亜鉛を装置に結合させるための方法などは、所望の効果を標的組織に提供するように選択されればよい。一般に、「亜鉛含有成分」なる語は、亜鉛化合物、複合体、キレートまたはいずれか他の亜鉛含有成分をいう。標的組織は、いずれか適当な組織、例えば、血管、心筋、動脈瘤組織、製造された移植材料、遺伝子操作した組織、動物組織などであってもよい。
【0009】
1の態様において、組織においてプラーク形成に抵抗するための方法は、少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置を提供し;該少なくとも1つの埋め込み可能な装置に結合させ、血管中に埋め込んだときに、プラーク形成を阻害する少なくとも1つの亜鉛含有成分の配置を同定し;該少なくとも1つの亜鉛含有成分を該埋め込み可能な装置に同定された配置で結合させ;次いで、該亜鉛含有成分がプラーク形成を阻害するように、該少なくとも1つの装置を埋め込むことを含む。いくつかの具体例において、例えば、組織は、動脈組織、静脈組織、心臓組織、天然移植片組織、人工移植片組織または遺伝子操作した組織を包含しうる。該装置は、いずれかの適当な装置であればよい。いくつかの具体例において、該装置は、ステント、移植片、ステント−移植片、ゲル、担体、亜鉛固定装置、化合物、バルーン拡張装置またはカテーテルである。1の具体例において、例えば、該装置は、生物分解性ステントを包含する。
【0010】
上記のように、少なくとも1つの亜鉛含有成分は、いずれかの適当な亜鉛物質または組み合わせを含みうる。いくつかの具体例において、例えば、少なくとも1つの亜鉛含有成分は、1以上の亜鉛塩、例えば、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、シトラコン酸塩、シトラマル酸塩、クエン酸塩、EDTA、ギ酸塩、フマル酸塩、没食子酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヨウ素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウレイン酸塩(laureate)、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、モノリン酸塩、ミリスチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩(octoate)、オレイン酸塩、オロチン酸塩(orotate)、オルトリン酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過マンガン酸塩、フェノールスルホン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、セレン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テトラメタリン酸塩、チタン酸塩、トランスフェリン、トリポリリン酸塩、ウンデシル酸塩、または吉草酸塩を含む。
【0011】
所望により、本発明において有用な亜鉛含有成分は、装置を血管中に埋め込んだときに亜鉛イオンを提供するように選択されうる。また、所望により、亜鉛の量は、埋め込まれた装置に隣接する血管領域中の亜鉛イオン濃度が約1.0pM〜約500mMとなるように選択されうる。種々の具体例において、亜鉛の濃度または量は、少なくとも標的持続期間の間、プラーク阻害を提供するように選択されうる。例えば、1の具体例において、標的持続期間は、少なくとも約6ヶ月であってもよい。いくつかの具体例において、亜鉛含有成分の配置は、装置からの亜鉛イオンの徐放を提供する。
【0012】
亜鉛含有成分は、いずれかの適当な配置で、またはいずれかの適当な手段によって、医療装置と結合させればよい。1の具体例において、少なくとも1つの亜鉛含有成分を装置の一部分に選択的に付着させる。例えば、亜鉛含有成分を主として装置の組織に面した表面に付着させてもよい。他の具体例において、装置全体が亜鉛と結合していてもよく、または亜鉛で被覆されていてもよい。
【0013】
1の具体例において、亜鉛含有成分の埋め込み可能な医療装置への結合は、亜鉛キレート剤の該装置への結合、および該亜鉛含有成分の該キレート剤への解離可能な結合を包含する。所望により、該方法は、さらに、キレート剤の重合を含んでいてもよい。
【0014】
別の態様において、血管を治療するための方法は、治療すべき血管の疾患位置を同定し;装置の埋め込みによって治療した場合に、血管が該疾患位置でプラーク形成しやすいことを決定し;該決定工程に応じて、少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置を選択し;次いで、該亜鉛含有成分がプラークの形成を阻害するように、選択された医療装置を該疾患位置に埋め込むことを含む。記載の方法を用いる場合、いずれかの適当な装置、いずれかの形態の亜鉛、亜鉛を装置に結合させるためのいずれかの手段、亜鉛のいずれかの量または濃度などは、いずれかの所定の具体例において、組織に対して所望の効果を提供するように選択されうる。
【0015】
別の態様において、組織のプラーク耐性、エラスチン産生またはその両方を増強するために少なくとも1つの亜鉛含有成分を埋め込み可能な医療装置と結合させるための方法は、少なくとも1つの結合剤を埋め込み可能な医療装置の少なくとも1つの表面に結合させ、および少なくとも1つの亜鉛含有成分と該少なくとも1つの結合剤を結合させることを包含する。いくつかの具体例において、少なくとも1つの結合剤と少なくとも1つの表面との結合は、キレート剤と該表面との結合を含む。上記のように、該方法は、さらに、該キレート剤の重合を包含しうる。該結合剤は、いずれの適当な結合剤であってもよいが、1の具体例において、それは、ポリアスパルテートと結合したアリルアミンを包含し、亜鉛含有成分が該ポリアスパルテートと結合している。さらに、いずれの適当な埋め込み可能な装置、いずれの適当な形態または量の亜鉛ならびに亜鉛と装置とを結合させるためのいずれの適当な手段を用いてもよい。
【0016】
また別の態様において、組織のエラスチン産生を増強するための方法は、増強されたエラスチン産生から利益を得る組織領域を同定し;少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置を該組織領域またはその近辺に埋め込み、ここに、該装置は少なくとも1つの亜鉛含有成分を含み;次いで、該埋め込み可能な医療装置の亜鉛含有成分を用いて、該組織領域またはその近辺でエラスチン形成を促進することを含む。上記の方法を用いる場合、組織は、種々の具体例において、動脈組織、静脈組織、心臓組織、天然移植片組織、人工移植片組織または遺伝子操作した組織であってもよい。例えば、該組織領域は、腹部大動脈瘤内またはその隣接する領域を含んでいてもよい。さらにここに、いずれの装置、亜鉛の形態または量、または結合手段を用いてもよい。
【0017】
いくつかの具体例において、促進工程は、組織領域のエラスチン含量を、通常のエラスチン含量よりも有意に高い増加したエラスチン含量に上げる。しばしば、組織領域は、埋め込み工程の前に、通常のエラスチン含量を有する。いくつかの具体例において、同定工程は、通常のエラスチン含量よりも有意に低い不足したエラスチン含量を有する組織の領域の同定を含む。
【0018】
別の態様において、プラーク形成の阻害、エラスチン産生の促進、またはその両方のための装置は、少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置と、該装置に結合させた亜鉛含有成分からなる。種々の具体例において、該装置は、移植片、ステント、ステント−移植片、ゲル、亜鉛固定装置、局所化合物または複合体またはいずれかの他の適当な装置であってもよい。亜鉛含有成分は、上記のように亜鉛塩であってもよく、または亜鉛キレートもしくはいずれか他の形態の亜鉛であってもよい。
【0019】
いくつかの具体例において、該装置は、埋め込まれたときに亜鉛イオンを提供するように配置される。例えば、約1.0pM〜約500mMの亜鉛イオン濃度が、埋め込まれた装置の隣接領域に提供されればよい。上記のように、亜鉛の配置、結合方法、量および濃度などは、組織に対する所望の効果を達成するように変更してもよい。種々の具体例を下記に、より詳細に記載する。
【0020】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の1の具体例にしたがって、結合剤を介して亜鉛が装置の表面に結合した埋め込み可能な医療装置の一部を示す断面図である。
【0021】
図2は、本発明の1の具体例にしたがって、重合した結合剤を介して亜鉛が装置の表面に結合した埋め込み可能な医療装置の一部を示す断面図である。
【0022】
図3は、本発明の1の具体例にしたがって、複数の異なる結合剤を介して亜鉛が装置の表面に結合した埋め込み可能な医療装置の一部を示す断面図である。
【0023】
図4は、本発明の1の具体例にしたがって、電気メッキまたはスパッタ被覆技術を介して亜鉛が装置の表面に結合した埋め込み可能な医療装置の一部を示す断面図である。
【0024】
図5は、本発明の1の具体例にしたがって、ゲルを介して亜鉛が装置の表面に結合した埋め込み可能な医療装置の一部を示す断面図である。
【0025】
図6は、本発明の1の具体例にしたがって、ゲルおよび結合剤を介して亜鉛が装置の表面に結合した埋め込み可能な医療装置の一部を示す断面図である。
【0026】
図7は、本発明の1の具体例にしたがって、亜鉛−結合剤の一部を形成するようにアリルアミンで修飾された表面を有する埋め込み可能な医療装置の一部を示す断面図である。
【0027】
図8は、本発明の1の具体例にしたがって、ポリアスパルテートと結合した、図7のようなアリルアミンから形成された結合剤を介して亜鉛が装置の表面に結合した埋め込み可能な医療装置の一部を示す断面図である。
【0028】
発明の詳細な記載
本発明の装置および方法は、概して、組織、例えば、血管、心臓組織、静脈移植片などを治療するための少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置、例えば、ステントまたは移植片を包含する。一般に、組織に対してどのような効果が望まれるかを決定し、次いで、埋め込み可能な装置に結合させるための亜鉛含有成分の配置を選択する。上記のように、亜鉛含有成分は、亜鉛化合物、複合体、キレート、またはいずれか他の適当な形態の亜鉛あるいは亜鉛の形態の組み合わせであってもよい。例えば、種々の具体例において、プラーク形成の阻害、エラスチン産生の促進またはその両方のために、亜鉛の異なる配置を用いてもよい。ステントと結合させた亜鉛の1の配置は、例えば、冠動脈においてプラーク形成を防ぐために有益でありうる。別の配置は、静脈移植片でのプラーク形成の予防に功を奏しうる。また別の配置は、動脈瘤中またはその近辺でのエラスチン産生の促進に有益でありうる。いくつかの具体例において、プラーク阻害およびエラスチン促進の両方が達成されうる。
【0029】
一般に、種々の具体例によると、少なくとも1つの亜鉛含有成分のいずれかの配置をいずれかの埋め込み可能な装置と共に使用すればよい。装置は、ステント、移植片、ステント−移植片などの多くの埋め込み可能な装置のうちいずれも包含しうる。本明細書の目的の場合、「装置」なる語は、組織または他の表面に亜鉛を運搬または塗布するいずれかの手段として定義される。例えば、いくつかの具体例において、装置は、組織に塗布されると、亜鉛を解離して所望の効果を達成しうる局所的亜鉛含有成分を含んでいてもよい。他の具体例において、装置は、ゲル、解離可能に亜鉛を運搬するための容器、組織に亜鉛を固定するための固定装置などを含んでいてもよい。かくして、下記の種々の装置の具体例、例えば、ステントおよび移植片は、本発明の範囲または「装置」なる語の意味を限定するものと解釈されるべきではない。本発明にしたがって、いずれかの装置を使用すればよい。
【0030】
したがって、本発明の装置は、亜鉛を所望の場所に送達または塗布するいずれの手段も包含しうる。該場所は、典型的には、組織または組織近辺である。いくつかの具体例において、該組織は、ヒト患者の組織、例えば、心筋、動脈壁組織、静脈組織などであってもよい。他の具体例において、該組織は、移植片組織、例えば、静脈移植片を含みうる。また別の具体例において、亜鉛を、人工組織、遺伝子操作した組織、動物組織などに対する研究または治療状況において使用してもよい。一般に、研究、患者のケアまたは他の適当な状況におけるヒト、動物または他の組織などのいずれの組織に対する適用も意図される。
【0031】
同様に、亜鉛のいずれの配置も本発明で使用してもよい。一般に、本発明の装置および方法は、治療されるべき組織またはその近辺への亜鉛イオンの送達を提供する。しかしながら、いずれかの適当な形態の亜鉛を、亜鉛を送達するための1以上の装置に結合させればよく、現在知られているか、または下記において見出された全ての形態の亜鉛が意図される。さらに、いずれかの適当な濃度、量、化学的配置などを用いればよい。いくつかの具体例において、例えば、ステントの組織接触面に亜鉛を塗布してもよい。他の具体例において、ステント全体またはステントのいずれかの他の表面に亜鉛を塗布してもよい。種々の所望の効果のために、装置に、亜鉛を異なる厚さで被覆してもよく、亜鉛の徐放を提供するように亜鉛を結合させてもよく、または種々の濃度の亜鉛を結合させるなどしてもよい。亜鉛は、また、いずれかの適当な手段によって装置と結合させればよい。種々の具体例は、また、亜鉛を装置に結合させるための異なる手段を用いうる。例えば、亜鉛キレート剤または他の結合剤を用いて装置の表面に亜鉛を結合させてもよく、電気メッキによって亜鉛を装置に結合させてもよく、またはいずれか他の適当な方法を用いてもよい。かくして、本発明にしたがって、いずれかの適当な医療装置およびいずれかの適当な配置、量、組成などを用いればよい。
【0032】
このように、本発明にしたがって1以上の装置に結合させた亜鉛、または別法で該装置と共に使用される亜鉛は、いずれの適当な組成を有していてもよい。上記のように、本発明において使用される亜鉛は、典型的には、「少なくとも1つの亜鉛含有成分」と呼ばれ、それは、限定するものではないが、種々の具体例において、少なくとも1つの亜鉛化合物、複合体、キレート、その組み合わせなどを包含しうる。いくつかの具体例において、例えば、1以上の亜鉛塩が用いられうる。適用な亜鉛塩は、限定するものではないが、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、シトラコン酸塩、シトラマル酸塩、クエン酸塩、EDTA、ギ酸塩、フマル酸塩、没食子酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヨウ素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウレイン酸塩(laureate)、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、モノリン酸塩、ミリスチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩(octoate)、オレイン酸塩、オロチン酸塩(orotate)、オルトリン酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過マンガン酸塩、フェノールスルホン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、セレン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テトラメタリン酸塩、チタン酸塩、トランスフェリン、トリポリリン酸塩、ウンデシル酸塩、および吉草酸塩を包含する。また、亜鉛のキレートおよび他の型の亜鉛含有化学物質の、例えば、複合体、例えば、亜鉛とアミノ酸、例えば、メチオニンとの複合体も、本発明において有用である。
【0033】
いくつかの具体例において、亜鉛含有成分は、放出制御性または徐放性の亜鉛を所望の場所に提供するように、選択されるか、または装置と結合させてもよい。例えば、亜鉛含有成分は、種々の「解離性」の程度で、装置と結合させてもよく、その結果、いくらかの亜鉛は埋め込み後すぐに解離し、他の亜鉛は時間と共に解離される。他の具体例において、亜鉛は、分解性の装置、例えば、分解性ステント、カプセル、他の固定装置などに結合させるか、または該装置の中に入れてもよく、その結果、該装置は時間と共に分解し、亜鉛は徐々にまたは制御されて放出される。さらなる例示的な具体例において、亜鉛含有成分は、経時的な亜鉛の放出を提供するために、マトリックス、リポソーム、小胞、マイクロカプセル、マイクロスフェア、固形粒子などの中に入れてもよい。
【0034】
一般に、所望の効果、治療されている組織、所望の治療期間などに依存して、いずれかの適当な亜鉛放出期間を選択すればよい。いくつかの具体例において、例えば、装置の埋め込み直後に亜鉛の放出を引き起こすこと、比較的迅速に亜鉛放出のプラトーレベルに達すること、および長期にわたってその放出レベルを維持することが望ましい。1の具体例において、例えば、治療場所での亜鉛の所望のレベルは、装置の埋め込み後2週間以内に達成され、そのレベルは少なくとも6ヶ月間維持されうる。いずれかの他の徐放性または放出制御性パターンも、本発明の範囲内とされる。
【0035】
本発明の装置と共に使用される亜鉛の量、濃度、組成またはいずれかの他の特徴は、標的組織に対する1の特定の効果または効果の組み合わせを提供するように選択されればよい。いくつかの具体例において、例えば、装置と結合させた亜鉛は、治療領域、例えば、冠動脈内でプラーク形成を阻害するように配置される。別の具体例において、エラスチン産生を増強するために、例えば、動脈瘤またはその近辺でのエラスチン産生を増強するために、亜鉛を装置と結合させてもよい。いくつかの具体例において、装置と結合させた亜鉛は、プラーク阻害および増強したエラスチン産生の両方を引き起こしうる。装置、亜鉛含有成分またはその両方に適用するいずれか1つの変数または多くの変数は、所定の組織において所望の効果を達成するように選択されうるが、いまだ、本発明の範囲内にある。
【0036】
上記のように、本発明の具体例は、一般に、少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置(装置は本明細書中で定義される)を包含する。装置、亜鉛含有成分、および装置と亜鉛を結合させる手段は、典型的には、組織または類似の物質に対して所望の効果を生ずるべき場所で、該装置からの亜鉛イオンの放出を提供するように選択される。例えば、本発明の種々の具体例において使用される装置は、種々の既知の技術、例えば、米国特許第6,113,636、6,190,407、6,267,782および6,322,588号に記載の技術(出典明示により、その完全な内容が本明細書の一部とされる)によって作成されうる。かかる技術は、適当な生体適合性材料、例えば、ステンレンススチール、チタン、ニチノール、セラミック、ポリテトラフルオロエチレン、シラスティック、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリドなど、アクリレート、メタクリレート、ポリウレタン、またはこれらの組み合わせから形成される装置(例えば、ステントまたはインプラント)の表面に、金属または化合物、例えば、亜鉛または亜鉛化合物を付着させることを含む。他の生体適合性材料または化合物も同様に、かかる装置において使用されうる。付着は、すでに形成された装置上に、またはその後にかかる装置の製造に使用される生体適合性材料上において行ってもよい。該付着は、米国特許第6,113,636号に記載のように、装置または生体適合性材料の亜鉛塩溶液とのインキュベーションなどの技術によって行われる。別法では、亜鉛は、亜鉛元素の形態で、装置または生体適合性材料上に付着させてもよい。米国特許第6,113,636号は、化学的還元、光化学的還元、および電着または電気メッキを包含するかかる亜鉛含有材料の製造法を記載する。また、該特許に記載されるように、亜鉛元素と亜鉛塩の組み合わせを該材料上に付着させてもよい。
【0037】
米国特許第6,267,782号は、亜鉛または亜鉛塩−含有生体適合性材料または装置の付加的な製造手段であって、亜鉛元素を材料または装置上に物理的に押し付けること、亜鉛元素を、生体適合性材料、例えば、ポリマーを形成するのに使用される物質中にその形成の間、混合すること、および蒸着させることを包含する手段を記載する。米国特許第6,322,588号は、かかる生体適合性材料上での金属付着について付加的な情報を含む。
【0038】
上記のように、装置と結合させる亜鉛含有成分の量は、一般に、所望の期間、所望の効果を達成するのに有効な量の亜鉛イオンを提供するように選択されうる。例えば、本発明の具体例は、典型的に、プラーク形成の予防または組織弾力性の増加もしくはエラスチンレベルの増加のために、組織亜鉛レベルを増加させるのに使用される1以上の埋め込み可能な医療装置を包含する。かかる装置は、例えば、管装置、例えば、ステント、移植片、ステント−移植片、カテーテル、ゲル、局所化合物、亜鉛固定装置などを包含し、それらは、エラスチン分解状態を逆転させるために、アテローム性動脈硬化性管疾患を治療するために、動脈瘤疾患を修復または予防するなどのために埋め込むことができる。1の具体例において、例えば、血管内ステントを1以上の亜鉛含有成分で被覆して、プラーク進行または再狭窄を予防または治療する。
【0039】
いくつかの具体例において、組織上または組織中の所定の場所に所望の濃度の亜鉛イオンを提供するように、亜鉛を装置に結合させる。例えば、1の具体例において、装置の埋め込み時、標的組織またはその近辺での亜鉛濃度が約1.0pM〜約500mM、より好ましくは、約100pM〜約50mMになるように、少なくとも1つの亜鉛含有成分を装置に結合させる。これらの濃度範囲は、組織−装置中間面で概算されるが、また、該中間面の周囲または隣接する領域であってもよい。上記の範囲は、種々の設定において、プラーク阻害効果、エラスチン促進効果、またはその両方を有しうる。他の範囲は、標的組織に対する他のまたは付加的な効果を提供するように選択されうる。
【0040】
時折、ステント、移植片、ステント−移植片などの装置を例示的な具体例として示しているが、組織に亜鉛を送達または塗布するためのいずれかの適当な手段が意図されることは、さらに強調すべきである。例えば、1の具体例において、冠動脈にバイパスをつけるための埋め込み用静脈バイパス移植片に亜鉛を直接、塗布する。埋め込み後に、いったん静脈移植片に塗布された亜鉛は、該移植片またはその近辺においてエラスチン産生を増強し、それにより、移植片のアテローム性動脈硬化を予防しうることが見出された。それは、亜鉛と結合したゲル、別の形態の局所化合物、またはいずれか他の適当な送達薬剤として塗布されうる。さらに、亜鉛ゲルまたは他の塗布可能な化合物は、いずれかの適当な手段を介して送達されうる。1の具体例において、例えば、亜鉛は、バルーン拡張カテーテルを介して徐放形態において塗布されうる。静脈移植片においてプラーク形成を阻害するために使用される亜鉛含有成分は、組織−装置中間面にて、いずれかの適当な亜鉛濃度を提供しうるが、1の具体例において、約1.0pM〜約500mM、より好ましくは、約100pM〜約50mMの濃度を提供しうる。
【0041】
1の具体例において、亜鉛イオンは、例えば、他の活性薬剤と共に、または他の活性薬剤を伴わないで、ゲル組成物から放出されうる。例えば、ステントの表面に共有結合により固定していることを含むリン酸緩衝化セーライン中の架橋された30%ポリエチレングリコールジメタクリレートから構成されたゲルから、亜鉛イオンを放出することができた。亜鉛は、最終組成物に加えられたリン酸バッファーと共に、酢酸亜鉛の形態で包含された。メタクリレートは、メタクリレート・アーム(United Chemical)を有するシランを用いて、ステント表面に導入した。該ゲルは、UV架橋され、反応性ステント・メタクリレートに固定された。別法では、亜鉛イオンを含有し、好ましくはpHバッファーを含有しているポリラクチド−コ−グリコシド・マイクロスフェアをゲル中に組み込むか、または別法で、ステントに固定することができた(例えば、"Development of a Platform to Evaluate and Limit in-Stent Restenosis", Elkinsら、Tissue Eng., 2002 Jun; 8(3): 395-407)に記載の方法にしたがう)。
【0042】
別の具体例において、心臓エラスチン含量を増加し、コンプライアンスを改善するために、亜鉛を用いてもよい。1の具体例において、組織の遊離亜鉛イオンレベルを増加して、心臓組織におけるエラスチン産生を増加または心臓組織のコンプライアンスを改善するために、亜鉛と結合したゲル、パッチまたは他の装置を用いる。本出願は、心臓発作後または心臓病由来の症状を最小限にするために、特に重要でありうる。1の具体例において、亜鉛含有物質の濃度範囲は、約1.0pM〜約1000mM、好ましくは、約100pM〜約900mMである。上記のステントおよび管移植片の例における場合、亜鉛は、ゲル(別の装置を用いて、または用いないで)、心臓の外側に貼られたパッチまたは心臓に設置されたいずれかの他の装置を介して塗布することができた。亜鉛は、金属(スパッタリング、メッキまたは他の手段によって塗布される)、キレート(上記のポリ−結合剤を包含する)または塩であることができる。亜鉛含有成分を機械的または化学的に付着させて、亜鉛イオンが時間と共に、組織に利用可能となる。
【0043】
1の例示的方法は、下記の通り行われた。心筋梗塞後、酢酸亜鉛を負荷した緩衝化生物侵食性PLGAマイクロスフェアを含有する滅菌性20%プルロニック(pluronic)f−127(BASF)ゲルの内視鏡的送達は、ちょうど心膜の深部の心筋に注射することによって達成することができた。該方法において、梗塞部リモデリングの間に亜鉛イオンを放出でき、その結果、瘢痕組織は弾力性があり、残存する心膜を助けて血液を押し出すための内向きの力を提供した。このように、心筋梗塞の症状を減少することができた。同じアプローチが、管内アクセスによる心臓内送達を包含する種々の技術によって達成できた。これらのアプローチは、また、レーザーまたは他の技術ならびに治療剤と組み合わせることができた。
【0044】
ここで、図1を参照すると、表面11を有するステント10の一部が、複数の結合剤12を介して表面11に付着した複数の亜鉛イオン14と共に、断面で示される。一般に、ステント10は、亜鉛と共に使用可能なステント、移植片またはいずれか他の適当な埋め込み可能な装置であればよい。亜鉛イオン14は、上記の亜鉛含有成分のいずれか、または亜鉛含有成分のいずれかの組み合わせを含みうる。同様に、結合剤12は、ステント10の1以上の表面11と亜鉛イオンを結合させるためのいずれかの適当な結合成分を包含しうる。いくつかの具体例において、結合剤12は、1以上の亜鉛キレート化剤を含む。
【0045】
図2は、亜鉛イオン14が結合剤12の鎖を介して表面11に結合する以外は、図1と同様の断面図を示す。かかる結合剤12の鎖は、表面11の表面積1単位あたり、より多数の亜鉛イオン14をステント10に結合させることが可能である。したがって、より多量の亜鉛が、図1と同じステント10によって投与されうる。
【0046】
図3は、同じステント10の1以上の表面11に亜鉛イオン14を結合させるために、複数の異なる結合剤12a−cを用いてもよいことを明らかにする。複数の結合剤12a−cの使用は、ステント10から、異なる速度で亜鉛イオン14を放出させて、治療領域に亜鉛の持続性放出または徐放を提供することを可能にする。
【0047】
図4は、同様のステント10を断面図で示すが、亜鉛イオン14は表面11上に電気メッキまたはスパッタ被覆された。垂直方向の点線の右側のステント10の一部は、亜鉛14でメッキまたはスパッタ被覆されたステントを酸化的ストレスがあるイン・ビボ環境に置くとき、ここに、、亜鉛イオン14がステント10から放出されることを示す。
【0048】
図5は、亜鉛イオン14を包含するゲル被覆13を有するステント10の断面図を示す。以前の例におけるように、亜鉛イオン14は、酸化過程の結果として、ゲル分解のため、またはその両方のために、時間と共に放出される。また他の具体例において、図6に示すように、ゲル被覆13および1以上の結合剤12の組み合わせによって、亜鉛をステント10の表面11に結合させてもよい。かかる組み合わせは、治療を強化するために有利な亜鉛放出パターンまたはタイミングを達成しうる。
【0049】
図7は、亜鉛イオン14のための結合剤の1の可能な具体例を示す。図7において、アリルアミン15をまず、表面11に結合させて、反応性第一級アミンを生成し、それを次いで、アミド結合を介して単一のアスパルテート17と結合させてもよい。アスパルテート17は次いで、亜鉛14と結合するための結合剤として作用する。図8は、アリルアミン15で修飾して反応性第一級アミンを生成し、次いで、アミド結合を介してポリアスパルテート16と結合させた表面11を示す。次いで、各アスパルテートが亜鉛結合剤として作用することができる。下付き文字「n」および「m」によって示されるように、亜鉛イオンの数は、アスパルテートの数と必ずしも一致しない。
【0050】
下記の実施例は、単なる説明の手段として提供されるのであり、限定の手段としてではない。
【実施例】
【0051】
実施例1
ステント留置後の放出制御のために、化学的結合剤またはキレートによってステントに固定された亜鉛
【0052】
該実施例の目的のために、市販のCordis BX−VelocityTM(登録商標)ステント(Cordis, Miami, FL)を出発装置として用いたが、いずれの適当なステント装置も用いることができた。ステントは、アルゴン雰囲気中、400ワットで3分間プラズマチャンバー中で前処理し、次いで、18mL/時間のアリルアミン流を用いて、アルゴン雰囲気中400ワットにて、プラズマ中で誘導体化し、次いで、アルゴンフラッシュを3分間流した。該処理は、図7に図解されるように、ステントの表面に反応性のアミン部位を生じた。他の機能性は、化学的、物理的、または同じ目的のためのプラズマによって導入することができた。機能的誘導体化の程度は、例えば、多重反射型全減衰反射率(multiple bounce attenuated total reflectance)を用いる表面走査型IR、または着色化合物もしくは蛍光化合物を表面に結合することによって評価してもよい。
【0053】
次いで、図7−8に図解するように、適当なリンカーを用いて、亜鉛結合剤を該ステント表面の反応性アミンに固定した。該方法の変形として、リンカー鎖を用いて、1つの鎖につき複数の亜鉛原子を結合させて、表面積の制約を除去し、全亜鉛投与量を増やすことができた。これらのキレート剤は、主としてキレート剤の個性に依存した時間経過で、時間と共に亜鉛を放出する。創傷後の局所pHおよび酸化的ストレスの二次的影響を用いて、亜鉛放出に「スマートな(smart)」環境感受性成分を加えることができる。
【0054】
亜鉛化合物の中でも、本発明の組成物および方法において特に有用なものは、亜鉛塩であり、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、シトラコン酸塩、シトラマル酸塩、クエン酸塩、EDTA、ギ酸塩、フマル酸塩、没食子酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヨウ素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウレイン酸塩(laureate)、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、モノリン酸塩、ミリスチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩(octoate)、オレイン酸塩、オロチン酸塩(orotate)、オルトリン酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過マンガン酸塩、フェノールスルホン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、セレン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テトラメタリン酸塩、チタン酸塩、トランスフェリン、トリポリリン酸塩、ウンデシル酸塩、および吉草酸塩を包含する。亜鉛のキレートおよび他の型の亜鉛含有化学物質、例えば、複合体、例えば、亜鉛とアミノ酸、例えば、メチオニンとの複合体もまた、本発明において使用可能である。典型的には、1個の亜鉛原子につき6個未満の炭素原子を有する亜鉛結合剤が亜鉛の迅速な放出を提供する。異なる結合剤の組み合わせ(いくつかは短く、いくつかは長い)ならびに結合剤の鎖は、所望の複合体放出曲線を有する亜鉛原子の長期の送達を達成することができる。
【0055】
該実施例において、いずれかのカルボキシレート含有化合物が特にリンカーとして有用であり、それを用いて、ステントの遊離アミン基に対しアミド結合を形成することができる。例えば、1の具体例において、ステントを、EDCおよびNHSで適当に前処理したポリアスパルテート(Ajinomoto, Japan)中に浸漬した。5mlの活性化バッファー(0.1M MES、0.5M NaCl、pH=6.0)に、50mLのポリアスパラギン酸ナトリウム溶液(n−asp)(30%v/v)を加えた。次いで、約6mgのEDCおよび4mgのNHSを加え、n−asp溶液中に溶解した。該溶液を室温で15分間反応させた。次いで、アミノ化したステントを活性化した−asp溶液中に2時間、充分に浸漬した。該ステントを取り出し、脱イオン水中でリンスし、よく乾燥させた。アスパラギン酸のカルボキシレートは、他の出願において、亜鉛キレート剤として作用することが知られており(例えば、米国特許第5,059,416号)、よって、このような固定化したポリアスパルテート鎖は、時間と共に放出されることのできる複数の亜鉛イオンのための固定結合剤を代表する(図12)。
【0056】
実施例2
動脈ステント留置後のプラーク−耐性動脈を作成するための亜鉛処方の局所適用
【0057】
ステント設計は、Palmaz−Schatz冠状動脈ステントに基づく。ステントは、亜鉛で電気メッキするか、または未処理のままであった。電気メッキは、1.5M酢酸亜鉛溶液中、カソードとしてステントを浸漬し、270ミリアンペアでの固定電流モードにて(300ワットおよび300ボルトでコントロールするが、電流は制限する)5分間実行することによって達成された。メッキしたステントを脱イオン水中で5分間リンスし、金属顕微鏡上で検査し、バルーンに装着し、一晩、凍結乾燥させた。亜鉛のスパッタリングまたは亜鉛含有化合物の付着は、より制御された方法で、同じ目的を達成した。さらに、イン・ビボでの埋め込み時の刺激を少なくするために、表面を磨くことが望ましかった。しかしながら、磨くには、しばしば、研磨の間の喪失を埋め合わせるために、亜鉛のより厚い付着が必要となる。しばしば、酸の回避によって、またはこれらの過程の間に酸を緩衝または中和することによって、イン・ビボでのpH減少効果を最小限にすることが望ましい。埋め込み可能なステントをメッキする方法は、当該分野でよく知られており、例えば、米国特許出願第366022号および第803843号および米国特許第6,099,561号に記載されている。
【0058】
NIHおよび企業のガイドラインにしたがって、年齢を揃えた体重3.8−4.2kgの成体雄性ニュージーランドホワイトウサギを用いた(1群につきn=3動物)。全身麻酔下で、大腿動脈にて動脈切開を行い、5Fr導入シースを置いた。蛍光透視鏡ガイダンスの下、ステントを腎臓下の腹大動脈中に留置した。ステントを、8気圧にて、5mmの血管形成バルーン(Jupiter, Cordis, Miami、FL)を用いて、ステント部分内にブランチが確実に存在しないように注意しながら、ベースラインより125%大きい最終管腔サイズまで後拡張した。留置前および後のデジタル・サブトラクション血管造影図は、ブランク処理コントロールおよびアンギオスタチン処理群について記録された。ウサギは、該介入後に、0.25%コレステロール餌を与えられた。
【0059】
28日後、動物に、ステントを含有する大動脈切片の即時摘出を伴う、全身の潅流−固定を行った。試験片を10%中性緩衝化ホルマリン中で固定し、光学顕微鏡および組織分析のためにPolyBedTM(Polysciences, Warrington, PA)中に包埋した。28日目の試験片分析(1群につきn=3動物)について、各プラスチック−包埋大動脈を縦に同じ長さの5つのピースに切断した。これらのピースを修飾したVerhoeff Von Giessonエラスチン(elastic)染色によって全体染色した。染色した大動脈の1の断面画像を1ゾーンにつき得た(1群につきn=15断面)。組織学的断面図の高解像度デジタル画像を、Plan ApochromatTM レンズを備えたNikon E600上で表示したとき、Diagnostic Instruments SPOTトゥルーカラーカメラ(Diagnostic Instruments, Sterling Heights, MI)から100X倍率で得た。Image Pro PlusTMソフトウェア(Media Cybernetics, Silver Spring, MD)を用いて、脈管内膜および中膜の断面積を盲目観察者によって決定した。次いで、脈管中膜面積に対する内膜面積の比率を各々につき作表した。平均、標準誤差および有意性を決定した。結果を下表5に示す。
【0060】
表1
磨かれたメッキしていない対照ステントまたは磨いていないZnメッキステントの埋め込み後28日目のステント内プラーク進行の測定値としての脈管中膜面積に対する内膜の比率(P=0.0001)
【表1】

【0061】
全体的に、電気メッキしたステント由来のZnイオンの局所的有用性は、ステント留置後または創傷後の局所的酸化ストレスによって提供される。これらのレベルは、エラスチン含量における有意な増加およびプラーク進行における有意な減少を提供する。増加したエラスチン含量は、さらに、プラークが形成するものを安定化しうる。ちなみに、プラーク進行を制限する因子の1つは、表面平滑である。ここに、対照は電気研磨されるが、Zn−メッキステントはざらざらしていて、研磨していない。強力な前プラーク効果であるはずであるにもかかわらず、該Znメッキステントは、有意なプラーク減少および安定化を示す。
【0062】
実施例3
動脈においてエラスチンを増加するための亜鉛処方の局所適用
【0063】
該実施例は、特に、動脈瘤管理または予防に関する。該実施例において、ゲルを直接、動脈に塗布する。しかしながら、同じ方法は、ステント−移植片または管移植片からのゲルに基づく放出によって達成することができる。かかる方法は、上記ステント実施例におけるように、適宜、移植片表面、ステント表面またはその両方に直接、ゲルを固定でき、または直接的な亜鉛結合剤をも固定できた。亜鉛は、所望により、共有結合により、または機械的に付着させることができた。ここに、酢酸亜鉛を用いるが、重合した亜鉛結合剤(上記のステント実施例におけるように)を包含するいずれの亜鉛イオン供給源も応用でき、かかる薬剤は、ゲル成分自体に、または移植片/ステント表面に共有結合または非共有結合することができた。
【0064】
本実施例において、NIHおよび企業のガイドラインにしたがって、雄性ニュージーランドホワイトウサギ(3.0−3.5kg)を用いた(1処理群につきn=3動物)。全身麻酔下(ケタミン/キシラジン(xylazine)誘導およびハロタン(halothane)維持)で、右総大腿動脈を隔離し、外膜を周囲に曝した。2mm x 2cm SAVVY血管形成バルーン(Cordis, Miami, FL)を動脈切開によって浅大腿動脈中に導入し、総大腿動脈中に進めた。2回の1分サイクルにおいて、該バルーンを6気圧にふくらませ、次いで、回収した。総大腿動脈の周囲の円周分布を保証するために、20%ポリエチレングリコールジメタクリレート(MW1000、Polysciences, Warrington, PA)を単独のゲルまたは100mM酢酸Zn(pH7.2)を有するゲル(各々、n=3)のいずれにも適用し、血管周囲に塗布した。閉鎖後、該動物は、0.25%コレステロール餌で開始した。
【0065】
機械的拡張およびゲルの血管周囲送達後28日で、処理した動脈(28日で、1群につきn=3)を潅流−固定し、採取した。採取した動脈(約1.5cm長)を10%中性緩衝化ホルマリン中で後固定し、パラフィン包埋の前に、3つの等しい切片に分割した。各切片の近位面から一連の(5mm)断面図を得た。1動脈切片につき2断面において、Verhoeff von Giesson−Masson3色二重染色を行った。代表的なデジタル顕微鏡画像は、プラン・アポクロマート・レンズを備えたNikon E600エピ蛍光顕微鏡上で表示したとき、Diagnostic Instruments SPOTトゥルーカラーカメラから得られた増加したエラスチン含量を示した。亜鉛は、動脈のエラスチン含量において著しい増加を引き起こすことが示された。
【0066】
実施例4
プラーク−耐性または狭窄−耐性静脈セグメントを作成するための亜鉛処方の局所適用
【0067】
該実施例は、特に、冠動脈バイパス移植、特に静脈移植片を用いる冠動脈バイパス移植に関する。さらに、該実施例は、静脈確保の間または後の、または動脈−静脈瘻における静脈狭窄の予防に関する。全動物実験は、NIHおよび企業のガイドラインにしたがって行われた。2.5〜3.5kgの雄性ニュージーランドホワイトウサギ(1処理につきn=3)に、ケタミン(22mg/kg)およびメデトミジン(medethomidine)(225μg/kg)の導入後、イソフルラン(3%)で全身麻酔をかけた。切開前に、セファゾリン(15mg/kg)の静脈内投与によって、抗生物質予防を行った。鼠蹊の横断線切開によって、左浅大腿静脈の3cm部分を解剖した。全サイドブランチを10−0ナイロン縫合糸(Ethilon 2820G, Ethicon Inc., NJ)で結紮し、隔離した。該動物をヘパリン処理し(200UI/kg)、静脈を近位および遠位に鉗子で締めた。該静脈に27ゲージ針でカテーテル挿入した。右浅大腿動脈の3cmを鼠蹊の横断線切開によって解剖した。インキュベーション期間の最後に、該静脈を採取し、生理食塩水でリンスした。右浅大腿動脈は、大腿深動脈のすぐ下を鉗子で締められ、近位鉗子の1.5cm下位を6−0ポリプロピレン縫合糸(Prolene, Ethicon Inc., NJ)で結紮した。外科手術的倍率下で、鉗子とステッチの間で近位縦方向の動脈切開を行い、結節10−0ナイロン縫合糸(Ethilon 2820G, Ethicon Inc., NJ)を用いて、該静脈を端側逆に吻合した。次いで、SFAを遠位で鉗子で締め、近位吻合の1.5cm下で、同じ技術を用いて遠位吻合を行った。20%ポリエチレングリコールジメタクリレート(MW1000、Polysciences, Warrington, PA)ゲル(単独のゲルまたは10mM酢酸Zn(pH7.2)を加えたゲルのいずれか。各々、n=3)を血管周囲に塗布した。鉗子を除去し、リドカイン0.5%を局所適用して痙攣を減らし、創傷を二層で閉鎖した。外科手術後、28日目に静脈移植片を回収するまで、0.25%コレステロールを含有する餌で動物を維持した。類似の効果が、静脈における抗プラークまたはプロ−エラスチン沈着のためのステントまたは移植片に基づく装置のいずれかを用いることによって得ることができた。これらのアプローチ、特に、本明細書に記載の方法にしたがう亜鉛イオンのステントに基づく放出は、特に、静脈アクセス狭窄および静脈冠動脈バイパス移植片に関連する。
【0068】
外科手術および単独のゲルまたはZnゲルの送達から28日後(28日時点に関し、1群につきn=3)、動物に、以前に記載されたような全身の潅流−固定を行った(Pattiら、(1998) J Clin Invest 101: 1519)。移植片を10%中性緩衝化ホルマリン中14−18時間、後固定し、近位吻合、中間移植部および遠位吻合に対応する3つの切片に分けた。標準的なミクロトームを用いて、一連の断面図(4mm)を各切片の近位面から得た。下記に詳述する方法を行うための盲目観察者によって、1血管につき3つ(1切片につき1つ)のランダムな断面図を得た。Verhoeff von Gieson−Masson3色二重染色のためのルーチンな方法を用いた。Diagnostic Instruments SPOT(Diagnostic Instruments, Sterling Heights, MI)トゥルーカラーデジタルカメラを用いて、プラン・アポクロマート・レンズを備えたNikon E600エピ蛍光顕微鏡上で表示したとき、高い解像度で、各スライドの非補間顕微鏡画像を記録した。得られた画像をImage−pro Plus分析システム(Media Cybernetics, Silver Spring, MD)を用いて分析して、面積測定に基づいて、各々の内膜対中膜比を決定した。全分析値の平均および標準誤差を各群につき決定し、95%で評価された有意性を伴う一元配置ANOVA反復測定、ならびにマッキントッシュ用StatviewまたはSPSS6.1(Prentice Hall, Upper Saddle River, NJ)において実施されたBonferroni、Tukey−AおよびStudent−Newman−Keulsポストホック(post-hoc)試験、およびテキストで報告されたように決定された個々のp値を用いて、統計学的比較を行った。全体的に、Znで処理した静脈は、弾性の増加およびプラーク形成における著しい減少を示す。
【0069】
上記は、完全かつ正確に本発明の多くの具体例を記載するが、特許請求の範囲に定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、記載した具体例の変更、付加および改変をおこなってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
(原文に記載なし)

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置を提供し;
該少なくとも1つの埋め込み可能な装置に結合させ、組織に埋め込んだときにプラーク形成を阻害する少なくとも1つの亜鉛含有成分の配置を同定し;
該少なくとも1つの亜鉛含有成分を該埋め込み可能な医療装置に同定した配置で結合させ;次いで
該亜鉛含有成分がプラーク形成を阻害するように、該少なくとも1つの装置を埋め込むことを特徴とする組織におけるプラーク形成に抵抗する方法。
【請求項2】
組織が、動脈組織、静脈組織、心臓組織、天然移植片組織、人工移植片組織、および遺伝子操作した組織からなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの埋め込み可能な装置の提供が、ステント、移植片、ステント−移植片、ゲル、担体、亜鉛固定装置、化合物、バルーン拡張装置、およびカテーテルからなる群から選択される少なくとも1つの装置の提供からなる請求項1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの埋め込み可能な装置の提供が、少なくとも1つの生物分解性ステントの提供からなる請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が少なくとも1つの亜鉛塩を含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの亜鉛塩が、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、シトラコン酸塩、シトラマル酸塩、クエン酸塩、EDTA、ギ酸塩、フマル酸塩、没食子酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヨウ素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウレイン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、モノリン酸塩、ミリスチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、オルトリン酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過マンガン酸塩、フェノールスルホン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、セレン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テトラメタリン酸塩、チタン酸塩、トランスフェリン、トリポリリン酸塩、ウンデシル酸塩、および吉草酸塩からなる群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が1以上の亜鉛キレートを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの亜鉛含有成分の配置の同定が、装置が血管に埋め込まれたときに亜鉛イオンを提供するような成分の選択を含む請求項1記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの亜鉛含有成分の配置の同定が、装置と結合させるための少なくとも1つの成分の量の選択を含み、ここに、該量が、埋め込まれた装置に隣接する血管領域中の亜鉛イオン濃度が約1.0pM〜約500mMとなるように選択される請求項1記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの亜鉛含有成分の配置の同定が、少なくとも標的持続期間の間、プラーク阻害を提供するような配置の選択を含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
標的持続期間が少なくとも約6ヶ月である請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの亜鉛含有成分の配置の同定が、亜鉛イオンの徐放を提供するような配置の選択を含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの亜鉛含有成分の埋め込み可能な医療装置への結合が、該装置の一部分に該成分を選択的に付着させることからなる請求項1記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの亜鉛含有成分を主として装置の組織に面した表面に付着させる請求項13記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの亜鉛含有成分の埋め込み可能な医療装置への結合が、
亜鉛キレート剤の該装置への結合;次いで
少なくとも1つの亜鉛含有成分の該キレート剤への解離可能な結合からなる請求項1記載の方法。
【請求項16】
さらにキレート剤の重合を含む請求項15記載の方法。
【請求項17】
治療されるべき血管の疾患位置を同定し;
装置の埋め込みによって治療した場合に、該疾患位置で血管がプラーク形成しやすいことを決定し;
該決定工程に応じて、少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置を選択し;次いで
亜鉛含有成分がプラークの形成を阻害するように、選択された医療装置を該疾患位置に埋め込むことを特徴とする血管の治療方法。
【請求項18】
少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置の選択が、ステント、移植片、ステント−移植片、ゲル、担体、亜鉛固定装置、化合物、バルーン拡張装置およびカテーテルからなる群から少なくとも1つの装置を選択することからなる請求項17記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が少なくとも1つの亜鉛塩を含む請求項17記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの亜鉛塩が、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、シトラコン酸塩、シトラマル酸塩、クエン酸塩、EDTA、ギ酸塩、フマル酸塩、没食子酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヨウ素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウレイン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、モノリン酸塩、ミリスチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、オルトリン酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過マンガン酸塩、フェノールスルホン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、セレン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テトラメタリン酸塩、チタン酸塩、トランスフェリン、トリポリリン酸塩、ウンデシル酸塩、および吉草酸塩からなる群から選択される請求項19記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が1以上の亜鉛キレートを含む請求項17記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置の選択が、該装置が血管に埋め込まれたときに亜鉛イオンを提供するような成分の選択を含む請求項17記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置の選択が、該装置と結合させるための少なくとも1つの成分の量の選択を含み、ここに、該量が、埋め込まれた装置に隣接する血管領域中の亜鉛イオン濃度が約1.0pM〜約500mMとなるように選択される請求項17記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置の選択が、少なくとも標的持続期間の間、プラーク阻害を提供するような亜鉛含有成分の配置の選択を含む請求項17記載の方法。
【請求項25】
標的持続期間が少なくとも約6ヶ月である請求項24記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置の選択が、亜鉛イオンの徐放を提供するような亜鉛含有成分の配置の選択を含む請求項17記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置の選択が、該亜鉛含有成分を装置の一部分に付着させた装置の選択からなる請求項17記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が主として装置の組織に面した表面に付着している請求項27記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合させた埋め込み可能な医療装置の選択が、キレート剤によって該亜鉛含有成分を装置に解離可能に結合させた装置の選択からなる請求項17記載の方法。
【請求項30】
キレート剤が重合している請求項29記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1つの結合剤を、埋め込み可能な医療装置の少なくとも1つの表面に結合させ;次いで
少なくとも1つの亜鉛含有成分を該少なくとも1つの結合剤と結合させることを特徴とする、組織においてプラーク抵抗、エラスチン産生、またはその両方を増強するために、少なくとも1つの亜鉛含有成分を埋め込み可能な医療装置と結合させる方法。
【請求項32】
少なくとも1つの結合剤の少なくとも1つの表面との結合が、キレート剤と該表面との結合からなる請求項31記載の方法。
【請求項33】
さらにキレート剤の重合を含む請求項32記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの結合剤が、ポリアスパルテートと結合したアリルアミンを含み、ここに、少なくとも1つの亜鉛含有成分の結合が、該亜鉛含有成分とポリアスパルテートとの結合からなる請求項31記載の方法。
【請求項35】
亜鉛含有成分が少なくとも1つの亜鉛塩を含む請求項31記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つの亜鉛塩が、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、シトラコン酸塩、シトラマル酸塩、クエン酸塩、EDTA、ギ酸塩、フマル酸塩、没食子酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヨウ素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウレイン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、モノリン酸塩、ミリスチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、オルトリン酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過マンガン酸塩、フェノールスルホン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、セレン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テトラメタリン酸塩、チタン酸塩、トランスフェリン、トリポリリン酸塩、ウンデシル酸塩、および吉草酸塩からなる群から選択される請求項35記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が1以上の亜鉛キレートを含む請求項31記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つの結合剤の結合が、該剤と、ステント、移植片、ステント−移植片、ゲル、担体、亜鉛固定装置、化合物、バルーン拡張装置、およびカテーテル・ステントからなる群から選択される少なくとも1つの装置との結合からなる請求項31記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの亜鉛含有成分と結合剤との結合が、少なくとも1つの亜鉛含有成分の量の選択を含み、ここに、該量が、埋め込まれた装置に隣接する血管領域中の亜鉛イオン濃度が約1.0pM〜約500mMになるように選択される請求項31記載の方法。
【請求項40】
増強されたエラスチン産生から利益を得る組織の領域を同定し;
少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置を該組織領域に、またはその近くに埋め込み、ここに、該装置は少なくとも1つの亜鉛含有成分を含み;次いで
該埋め込み可能な医療装置の少なくとも1つの亜鉛含有成分を用いて、該組織領域での、またはその近くでのエラスチン形成を促進することを特徴とする、組織のエラスチン産生を増強する方法。
【請求項41】
組織の領域の同定が、動脈組織、静脈組織、心臓組織、天然移植片組織、人工移植片組織、および遺伝子操作した組織からなる群から選択される組織の領域の同定からなる請求項40記載の方法。
【請求項42】
組織の領域が、腹部大動脈動脈瘤内領域またはその隣接領域を含む請求項41記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が少なくとも1つの亜鉛塩を含む請求項40記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの亜鉛塩が、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、シトラコン酸塩、シトラマル酸塩、クエン酸塩、EDTA、ギ酸塩、フマル酸塩、没食子酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヨウ素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウレイン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、モノリン酸塩、ミリスチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、オルトリン酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過マンガン酸塩、フェノールスルホン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、セレン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テトラメタリン酸塩、チタン酸塩、トランスフェリン、トリポリリン酸塩、ウンデシル酸塩、および吉草酸塩からなる群から選択される請求項43記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が1以上の亜鉛キレートを含む請求項40記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの装置が、ステント、移植片、ステント−移植片、ゲル、担体、亜鉛固定装置、化合物、バルーン拡張装置、およびカテーテル・ステントからなる群から選択される請求項40記載の方法。
【請求項47】
該組織領域またはその近辺に約1.0pM〜約500mMの亜鉛イオン濃度を提供するのに十分な量で、少なくとも1つの亜鉛含有成分を該装置と結合させる請求項40記載の方法。
【請求項48】
促進工程が、該組織領域のエラスチン含量を、通常のエラスチン含量よりも有意に大きい増強されたエラスチン含量まで上げる請求項40記載の方法。
【請求項49】
埋め込み工程前に、該組織領域が通常のエラスチン含量を有する請求項48記載の方法。
【請求項50】
同定工程が、通常のエラスチン含量よりも有意に少ない不十分なエラスチン含量を有する組織領域を同定することからなる請求項40記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置と
該装置に結合させた少なくとも1つの亜鉛含有成分からなる、プラーク形成の阻害、エラスチン産生の促進、またはその両方のための装置。
【請求項52】
少なくとも1つの埋め込み可能な医療装置が、移植片、ステント、ステント−移植片、ゲル、亜鉛固定装置、および局所化合物または複合体からなる群から選択される請求項51記載の装置。
【請求項53】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が少なくとも1つの亜鉛塩を含む請求項51記載の装置。
【請求項54】
少なくとも1つの亜鉛塩が、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、酪酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、シトラコン酸塩、シトラマル酸塩、クエン酸塩、EDTA、ギ酸塩、フマル酸塩、没食子酸塩、グルコン酸塩、ハロゲン化物、ヨウ素酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウレイン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、モノリン酸塩、ミリスチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、オルトリン酸塩、シュウ酸塩、酸化物、パルミチン酸塩、過マンガン酸塩、フェノールスルホン酸塩、リン酸塩、ピコリン酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、セレン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テトラメタリン酸塩、チタン酸塩、トランスフェリン、トリポリリン酸塩、ウンデシル酸塩、および吉草酸塩からなる群から選択される請求項53記載の装置。
【請求項55】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が1以上の亜鉛キレートを含む請求項51記載の装置。
【請求項56】
1以上のキレートが重合している請求項55記載の装置。
【請求項57】
該装置を埋め込んだときに、少なくとも1つの亜鉛含有成分が亜鉛イオンを提供する請求項51記載の装置。
【請求項58】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が、埋め込まれた装置に隣接する領域中に、約1.0pM〜約500mMの亜鉛イオン濃度を提供する請求項57記載の装置。
【請求項59】
少なくとも1つの亜鉛含有成分が少なくとも標的持続期間の間、プラーク阻害を提供する請求項51記載の装置。
【請求項60】
標的持続期間が少なくとも約6ヶ月である請求項59記載の装置。
【請求項61】
少なくとも1つの亜鉛含有成分を装置の一部分に選択的に付着させた請求項51記載の装置。
【請求項62】
少なくとも1つの亜鉛含有成分を主として装置の組織に面した表面に付着させた請求項61記載の装置。


【公表番号】特表2006−503657(P2006−503657A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547124(P2004−547124)
【出願日】平成15年10月22日(2003.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/033752
【国際公開番号】WO2004/037120
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
マッキントッシュ
【出願人】(503028086)エッセンシア・バイオシステムズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ESSENTIA BIOSYSTEMS, INC.
【Fターム(参考)】