説明

交差点交通流計測装置

【課題】交差点の交通流を解析するにあたって、効率のよい画像処理を行うようにした交差点交通流計測装置を得る。
【解決手段】交差点を撮像するように撮像手段201を配置し、この撮像手段201から得られる映像を処理する画像処理手段202が、交差点を複数の仮想単路として捉え、仮想単路毎の交通流に関する情報を画像処理結果222として出力するようにし、この画像処理手段202によって得られる仮想単路毎の交通流に関する情報を、情報統合手段203により、撮像手段の設置情報211及び交差点の線形情報212を参照して合成して、交差点の交通流に関する情報を得るようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交差点の周辺に設置され、この交差点を撮像する撮像手段からの映像を処理して、交差点内の交通状況、および故障車両やそれを避けようとする走行車両の挙動を把握し、交差点の交通流を解析する交差点交通流計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交差点は、種々の方向へ向かう車両が進入、通過する場所であり、車両同士の衝突や接触が発生しやすい場所であることから、従来から監視のための撮像手段すなわち監視カメラが多く設置されている。そして、この映像を処理して万一の事態が発生した場合に、すばやく対処できるような装置が考えられている。
例えば、特許文献1の交差点車両挙動把握装置では、交差点を撮像するように設置した複数の撮像手段から得られた複数の画像を合成処理して交差点全体が1枚の画像に撮像されるような交差点画像を生成し、これを表示したり蓄積したりしていた。
【0003】
【特許文献1】特開2001−118183号公報(第2〜3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の交差点車両挙動把握装置では、画像処理技術によって交差点での車両の挙動を自動的に解析し、把握しようとすると、まず、複数の撮像手段すなわち監視カメラから得られる映像を合成することが必要であった。
複数の監視カメラの設置位置は、固定されているので、映像の合成そのものには撮像された物体の位置ずれを考慮する必要はないが、映像に撮像された車両の映像を合成することには困難が伴うという問題があった。それは、監視カメラごとに違った角度から撮像される映像が、同一の車両の映像であるかどうかを判定することが困難であったり、車両によっては角度により全く異なった形に見えるためである。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、交差点の交通流を解析するにあたって、効率のよい画像処理を行うようにした交差点交通流計測装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる交差点交通流計測装置においては、交差点を撮像するように配置された撮像手段、交差点を通過する交通流毎に単路を仮想した複数の仮想単路として交差点を捉え、撮像手段から得られる映像を処理して、仮想単路毎の交通流に関する情報を得る画像処理手段、及びこの画像処理手段によって得られる仮想単路毎の交通流に関する情報を、装置内部に記憶された交差点の道路線形と照合して合成する情報統合手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、交差点を撮像するように配置された撮像手段、交差点を通過する交通流毎に単路を仮想した複数の仮想単路として交差点を捉え、撮像手段から得られる映像を処理して、仮想単路毎の交通流に関する情報を得る画像処理手段、及びこの画像処理手段によって得られる仮想単路毎の交通流に関する情報を、装置内部に記憶された交差点の道路線形と照合して合成する情報統合手段を備えたので、映像の合成を行うことなく、画像処理を簡単にして交差点についての交通流に関する情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置における三叉路の仮想単路を示す説明図である。
図1において、三叉路Dでは、A方面、B方面、C方面からの道路が交差する。A方面の路側には監視カメラなどの撮像手段101があり、三叉路D方向を撮像している。図1では、A方面、C方面からの信号が青になり、三叉路Dに車両が進入している状況を図示している。車両121は、A方面からB方面へ右折しようとして、対向車120の通過待ちをしているところである。車両122や車両123は、前方の車両121が右折待ちで三叉路D内で停止したため、進路を左方に変更しつつ、C方面へ通過しようとしているところである。車両125は、A方面からB方面へ右折したところ、先にC方面からB方面へ左折しようとした車両124があったため、この車両124をやり過ごそうと停止したところである。一方の車両124は、横断歩道の手前で安全確認をしつつ、B方面への道路へ進入しようとしているところである。
ここで、単路は、交差点などの枝道のない道路であり、仮想単路は、単路を仮想した道路である。
仮想単路102は、A方面からB方面へ右折する車両が進行する部分の道路で単路を仮想した道路を表し、仮想単路103は、A方面からC方面へ直進する車両が進行する部分の道路で単路を仮想した道路を表している。
【0009】
図2は、この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
図2において、撮像手段201は、撮像手段101と同じであり、交差点映像221を撮像し、画像処理手段202に入力する。画像処理手段202は、入力された交差点映像221を処理して、複数の仮想単路を設定し、各仮想単路の交通流に関する情報(事象情報)としての画像処理結果222を得る。画像処理結果222は、情報統合手段203に入力される。情報統合手段203は、画像処理結果222と、撮像手段の設置情報211と、交差点の線形情報212を用いて、各仮想単路の事象情報を合成し、交差点の事象情報223として出力する。
なお、撮像手段の設置情報211と、交差点の線形情報212は、記憶手段に記憶されている。
【0010】
図3は、この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置の画像処理手段を示す構成図である。
図3において、入力された交差点映像221は、画像解析処理部321、331に入力され、それぞれの仮想単路に対応した仮想単路の事象情報322、332を出力する。この仮想単路の事象情報322、332が画像処理結果222である。
【0011】
図4は、この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置における三叉路の屈曲路の仮想単路を示す説明図である。
図4において、101、102、120〜125は図1におけるものと同一のものである。
【0012】
図5は、この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置における三叉路の直線路の仮想単路を示す説明図である。
図5において、101、103、121〜123は図1におけるものと同一のものである。
【0013】
図6は、この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置の情報統合手段を示す構成図である。
図6において、情報合成部601は、画像処理結果222である仮想単路の事象情報322、332と、撮像手段の設置情報211と、交差点の線形情報212とにより、各仮想単路の事象情報の合成を行う。情報修正部602は、情報合成部601によって合成された情報に、交差点の道路交通として合理的な解釈にするための変更を加えて、交差点の事象情報223として出力する。
【0014】
次に、動作について説明する。
図2の撮像手段201は、交差点映像221を撮像し、画像処理手段202の入力とする。画像処理手段202は、これを処理して画像処理結果222を得る。すなわち、画像処理手段202に入力された交差点映像221は、画像処理手段202の内部で、図3のように、仮想単路数だけ分配される。実施の形態1においては、仮想単路102と仮想単路103に対応して二分配されることになる。
【0015】
次に、図4と図5を用いて、仮想単路102を画像処理する画像解析処理部321および仮想単路103を画像処理する画像解析処理部331が内部的にどのように映像を処理するかについて説明する。
図4は、画像解析処理部321が処理する映像の内容を示し、もともと撮像手段201から得られた交差点映像221すなわち図1に示された状況のうち、A方面からB方面への右屈曲路に相当する部分が画像解析処理部321の処理対象道路すなわち仮想単路102とみなされる。
画像解析処理部321は、仮想単路102の映像を、単路の映像と同様にして、事象検出を実行する。実施の形態1では、車両121は、前方左側路外から進入してきた車両120を避けるために、停止し、車両122や車両123は、車両121を避けるために左側路外へ向けて進路変更したものと解釈される。また、車両125は、これも左側路外から進入してきた車両124を待つために停止したと解釈される。これらの解釈の結果が、図3に示す仮想単路の事象情報322である。
すなわち、仮想単路の事象情報322は、車両124が左側路外から仮想単路102内に進入、車両125が停止、車両120も左側路外から仮想単路102内に進入、車両121は停止、車両122と車両123は、左方へ進路変更というのが具体的内容になる。
【0016】
図5は、画像解析処理部331が処理する映像の内容を示しており、もともと撮像手段201から得られた交差点映像221すなわち図1に示された状況のうち、A方面からC方面への直線路に相当する部分が、画像解析処理部331の処理対象道路すなわち仮想単路103とみなされる。
画像解析処理部331は、仮想単路103の映像を、通常の単路の映像と同様にして事象検出を実行する。実施の形態1では、車両121が、道路右寄りで停止し、車両122や車両123は、車両121を避けるために左側へ進路変更したものと解釈される。この解釈の結果が、図3に示す仮想単路の事象情報332である。
すなわち、仮想単路の事象情報332は、車両121が停止、車両122と車両123は、左方へ進路変更というのが具体的内容になる。
【0017】
このようにして得られた仮想単路の事象情報322と仮想単路の事象情報332をまとめて、画像処理結果222として、図2に示す情報統合手段203に入力する。
情報統合手段203を示す図6で、撮像手段の設置情報211は、具体的には撮像手段101が道路や交差点に対してどのような位置関係で設置されていて、どの範囲が撮像されているかを知るための情報であり、路面からの設置高さ、路肩からの隔離距離などの構造物としての設置要件と、撮像素子の物理的な大きさ、撮像レンズの焦点距離、撮像方向すなわち道路正面方向と撮像中心方向の振れ角など撮像装置としての設置要件とからなるものである。
また、交差点の線形情報212は、実際の交差点がどのような仮想単路に分解されて扱われているかを示す情報であり、これは、例えば実施の形態1においては、交差点Dは、直進道路と右折道路を持つ三叉路で、仮想単路102と仮想単路103は、A方面から交差点Dに相当する部分を共有する構造になっているという情報である。
【0018】
情報合成部601は、画像処理結果222、すなわち仮想単路の事象情報322と仮想単路の事象情報332、および撮像手段の設置情報211、交差点の線形情報212をもとに、各仮想単路の事象情報の重ね合わせを行う。
すなわち、各仮想単路の事象情報に含まれている情報について、位置関係にもとづき同一の車両に関する事象を一つにまとめる処理を行う。実施の形態1では、情報合成部601の処理の結果、車両120が車両121の進行方向へ進入、そのため車両121は停止、車両122と車両123は、車両121を避けるため左方へ進路変更、車両124が車両125の進行方向へ進入、そのため車両125は、停止というように合成された結果が得られる。
なお、上述の実施の形態1の説明では、便宜上あらかじめ同一の車両には同一の番号を付与しているが、検出された事象を引き起こしている車両の同一性は、本来は情報合成部601によって確認されるものであることはいうまでもない。
【0019】
情報合成部601によって合成された各仮想単路の事象情報は、交差点で発生している事象を表現する情報として十分ではあるが、その内容については、解釈に変更を加える必要がある場合が多い。例えば、車両121は進行方向へ進入してきた車両120との衝突を回避するために停止したのであるが、これは交差点の通行方法としては当然であって、直進車両の優先の原則にしたがっただけと解釈するのが正しい。
一般に、単路で検出される事象は、停止、低速走行、避走(障害物を避けるために進路変更して走行すること)、渋滞、障害物などであるが、交差点の場合は、右折車両の対向車通過待ちや右折待ち車両を避けるための進路変更、さらには、通行そのものが徐行(低速走行に相当)であったり、いわゆる信号渋滞のような特別な事象が検出される。
このように、情報修正部602は、交差点の道路交通として合理的な解釈にするための変更を加える部分である。本実施の形態1について考えると、車両120はC方面からA方面へ普通に通行している車両であり、車両121は単なる右折待ち、車両122と車両123はいずれも単にA方面からC方面へ通行している車両、車両124は交差点を徐行して通行(左折)していく車両、車両125も右折待ちの車両と解釈すればよい。そうすると、出力される交差点の事象情報223では、衝突など異常が懸念される事象は発生していない、ということになる。
【0020】
上述のように、交差点特有の複雑な交通流の情報の把握を、画像処理終了後に道路線形にしたがって合成するように構成することにより、通常の単路の画像処理技術を適用することが可能となり、処理系そのものを安価に得ることができる。
また、画像処理後の交通流の情報は、具体的には、交差点を通行している車両の位置や速度といった情報であり、撮像手段によって異なった結果が得られるものではないため、合成処理の際の同一性を確認する処理が不要となり、画像処理結果の精度の向上が期待できる。
【0021】
実施の形態1によれば、本来複雑な道路形状を持ち、これまでの画像処理では処理困難であった交差点について、交差点を仮想単路の合成とみなすことで画像処理を簡単にし、かつカメラの配置と道路線形という簡明な情報をもとに正確な事象情報を得ることができる。
【0022】
実施の形態2.
実施の形態1では、単一の撮像手段を考えたが、現実の交差点では、路側の建築物や構造物のために撮像手段からの視界を確保できないことがある。そこで、実施の形態2では、複数の撮像手段を用いることを考える。
図7は、この発明の実施の形態2による交差点交通流計測装置における三叉路の仮想単路を示す説明図である。
図7において、101〜103、120〜125は図1におけるものと同一のものである。図7では、三叉路Dの右手前に建築物131がある。このため撮像手段101と、撮像手段111の複数の撮像手段が設けられている。
図8は、この発明の実施の形態2による交差点交通流計測装置の画像処理手段を示す構成図である。
図8において、202、222、321、322、331、332は図3におけるものと同一のものである。図8では、二つの撮像手段101、111からの交差点映像320、330が、それぞれ画像解析処理部321、331に入力される。仮想単路102の部分の映像が撮像手段111から交差点映像320として、また仮想単路103の部分の映像が撮像手段101から交差点映像330として入力される。
【0023】
次に、動作について説明する。
図7は、図1と類似の状況であるが、三叉路の右手前に建築物131があって、撮像手段101からではB方面の遠方、すなわち仮想単路102のB方面寄りが撮像不可能な状況にある。そこで、実施の形態2においては、新たに撮像手段111を設け、仮想単路102については撮像手段111からの映像を処理することを考える。
図8の画像処理手段202には、撮像手段が複数になったので、それぞれの撮像手段に対応した複数の交差点映像320、330が入力される。すなわち、仮想単路102の部分の映像が、撮像手段111から交差点映像320として、また仮想単路103の部分の映像が、撮像手段101から交差点映像330として入力される。画像解析処理部321と画像解析処理部331の出力である仮想単路の事象情報331と仮想単路の事象情報332は、それぞれ仮想単路102と仮想単路103に対応した事象情報となる。
【0024】
実施の形態2では、撮像手段101と撮像手段111が異なる位置に設置されているため、情報統合手段203による処理では、この撮像手段の設置位置の差の情報も、撮像手段の設置情報211に含まれて入力され、これをもとに情報合成部601、情報修正部602の処理が実行されて交差点の事象情報223を得る。本実施の形態2では、撮像手段の位置が異なることを、事象情報の合成の際に考慮した処理を行うことで簡単に吸収することができる。
【0025】
実施の形態2によれば、単一の撮像手段では、路側の建築物や構造物のために撮像手段からの視界を確保できないときでも、複数の撮像手段を用いることにより、視界を確保することができる。
【0026】
実施の形態3.
実施の形態1及び実施の形態2では、単一の撮像手段で一つの仮想単路全体の映像が撮像可能であるとして説明した。しかし、実際には、撮像手段の能力や設置のされ方、建築物や構造物によって、単一の撮像手段では一つの仮想単路全体を見渡すことが困難な状況も考えられる。実施の形態3は、このような状況に対応するためになされたものである。
【0027】
図9は、この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における三叉路の仮想単路を示す説明図である。
図9において、101〜103、120〜125は図1におけるものと同一のものである。図9では、撮像手段101と、撮像手段112と、撮像手段113との複数の撮像手段が設けられている。
【0028】
図10は、この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における撮像手段が配置された三叉路の屈曲路の仮想単路を示す説明図である。
図10において、102、120〜123は図9におけるものと同一のものである。図10では、撮像手段101により三叉路が撮像される。
【0029】
図11は、この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における別の撮像手段が配置された三叉路の屈曲路の仮想単路を示す説明図である。
図11において、102、120〜123は図9におけるものと同一のものである。図11では、撮像手段112により三叉路が撮像される。
【0030】
図12は、この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における撮像装置が配置された三叉路の直線路の仮想単路を示す説明図である。
図12において、103、121〜123は図9におけるものと同一のものである。図12では、撮像手段101により三叉路が撮像される。
【0031】
図13は、この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における別の撮像装置が配置された三叉路の直線路の仮想単路を示す説明図である。
図13において、101、102、120〜125は図1におけるものと同一のものである。図13では、撮像手段113により三叉路が撮像される。
【0032】
実施の形態3は、図9に示すように、撮像手段101と、撮像手段112と、撮像手段113が三叉路に配置されている。すなわち、仮想単路102は、撮像手段101(図10)と撮像手段112(図11)により、仮想単路103は、撮像手段101(図12)と撮像手段113(図13)により、それぞれ撮像される。
【0033】
実施の形態3においては、交差点映像221は、図10〜図13に対応した4種類となる。画像処理結果222も同様の4種類の情報をまとめたものになる。情報統合手段4の情報合成部601、情報修正部602は、単一の仮想単路を区間ごとに別の撮像手段によって映像を取得したことを撮像手段の設置情報211から知り、正しい情報の合成処理を行うようにする。
【0034】
実施の形態3によれば、一つの仮想単路を複数の撮像手段により撮像するようにしたので、撮像手段の能力や設置のされ方、建築物や構造物によって、単一の撮像手段では仮想単路全体を見渡すことが困難な状況にも対応することができる。
【0035】
実施の形態4.
実施の形態4は、実施の形態2と実施の形態3が複合した場合に対応するものである。
図14は、この発明の実施の形態4による交差点交通流計測装置における三叉路の仮想単路を示す説明図である。
図14において、102、103、120〜125は図9におけるものと同一のものである。図14には、撮像手段101、113により仮想単路103が撮像され、撮像手段111、112により仮想単路102が撮像される。
【0036】
実施の形態4では、仮想単路102は、撮像手段111と撮像手段112によって映像が取得され、また、仮想単路103は、撮像手段101と撮像手段113によって映像が取得される。撮像手段が増えても、撮像手段の設置情報211から仮想単路の事象情報の位置関係を補正し、情報統合手段203の情報合成部601と情報修正部602で、各仮想単路の事象情報の合成を実施することは、実施の形態1〜実施の形態3と同様である。
【0037】
実施の形態4によれば、仮想単路のすべての区間を撮像できる撮像手段が存在するので、その映像と位置関係の情報を使って、正しい交差点の事象情報を得ることが可能になる。
【0038】
なお、上述の実施の形態1〜実施の形態4の仮想単路の説明は、図1、図7、図9、図14に示すような三叉路を例示して行ったが、これは通常の交差点や五叉路以上の変形交差点であっても同様であることはいうまでもない。
また、例えば図1のC方面からA方面、C方面からB方面の交通や、B方面からA方面、B方面からC方面の交通についても同様であることは自明である。
【0039】
図15は、この発明の実施の形態4による交差点交通流計測装置における道路沿いに駐車場がある場合の仮想単路を示す説明図である。
図15において、駐車場141があり、仮想単路104と仮想単路105を設定する。
図16は、この発明の実施の形態4による交差点交通流計測装置におけるバス停がある場合の仮想単路を示す説明図である。
図16において、バス停142があり、仮想単路106と仮想単路107を設定する。
さらに、図15のように、駐車場へ出入りするような場合や、図16のように、バス停で客扱いのためにバスが停車するような場合も、車両の進行方向に沿った仮想単路104、105(図15)や仮想単路106、107(図16)を設定し、その情報を線形情報として扱うことで異常な事象が発生しているか否かを判断することができる。
【0040】
実施の形態5.
図17は、この発明の実施の形態5による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
図17において、201〜203、211、212、221〜223は図2におけるものと同一のものである。図17には、交差点の事象情報223を元に異常事象を判断する異常事象判断手段204と、この判断結果、異常時の交差点映像221を蓄積する映像蓄積手段205を設けている。
【0041】
実施の形態5では、異常事象判断手段204は、交差点の事象情報223に交差点の通行状況が通常とは異なることを示す事象情報が含まれていたとき、これを映像蓄積手段205に通知し、映像蓄積手段205は、交差点映像221に含まれるカメラ映像を全部、または適切なカメラの映像を選択して記録するようにした。
交差点の通行状況が通常とは異なることを示す事象情報としては、例えば、信号と同期しない車両の停止のような事象や、複数の車両が至近距離で停止したままの状態を継続する事象がある。このような事象は、交差点の通常の通行状況として合理的な解釈が困難であり、前者は車両の立ち往生(あるいは単独の自損事故)、後者は衝突事故が発生している可能性を強く示唆する。
結局、交差点の通行状況が通常とは異なるということは、情報統合手段203の情報合成部601と情報修正部602で解釈しきれずに残った部分が存在するということであり、異常事象判断手段204は、これをきっかけとして映像蓄積手段205に対して通知すればよいことがわかる。
【0042】
異常事象判定手段204から映像蓄積のための通知を受けた映像蓄積手段205は、異常な事象が発生している場所や車線、信号制御の状況などから適切に判断して交差点映像221のカメラ映像を蓄積する。
蓄積は、テープレコーダ様のものでもハードディスクや半導体メモリなどの記録装置でも映像が記録できるものであれば何でもかまわないが、事後の検索性を考えると蓄積時の時刻情報を同時に記録することが望ましい。
また、記録性を重視するとフルフレームでカメラ映像を記録することが望ましいが、蓄積の目的を損なわない程度にフレームレートを下げて記録したり、映像の解像度を下げて記録するようにしてもかまわない。
【0043】
実施の形態5によれば、交差点の事象情報から異常な事象を判定する手段を用意し、その出力にしたがって映像を蓄積することにより、交差点の監視において重要であると考えられる通行状況が通常とは異なる場合においてのみ、カメラ映像を収集することができるので、事故原因の解析や責任の明確化、道路の改良に必要なデータを効率よく収集することが可能になる。
【0044】
実施の形態6.
図18は、この発明の実施の形態6による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
図18において、201〜204、211、212、221〜223は図17におけるものと同一のものである。図18には、異常事象判断手段204により異常事象が判断されたとき、事象発生を通知する事象発生通知手段206を設けている。
【0045】
実施の形態6では、異常事象判断手段204は、交差点の事象情報223に交差点の通行状況が通常とは異なることを示す事象情報が含まれていたとき、これを事象発生通知手段206に通知し、その通知を受けた事象発生通知手段206は、サイレン、回転灯、情報表示板、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等の手段を用いて、交差点周辺の車両や歩行者など、交差点の交通障害によって影響を受ける可能性がある人や車両に、異常な事象の発生を知らせるようにする。
交差点の通行状況が通常とは異なることを示す事象情報は、実施の形態5と同様に、例えば、信号と同期しない車両の停止のような事象や、複数の車両が至近距離で停止したままの状態を継続する事象を発見すればよい。
【0046】
事象発生通知手段206は、異常な事象の発生を確実に知らせることを目的として、前述のサイレンやベルやブザーの鳴動、回転灯やフラッシュライトの点灯や点滅、情報表示板へ異常な事象の発生の表示や迂回のための情報の表示の制御、DSRCやVICS(Vehicle Information and Communication System)を使用した交差点の交通障害の報知の他、発炎筒の着火による警告、専用の放送設備を用いた状況案内等、交差点の異常を知らせる手段として妥当な手段であれば、どれでも使用可能である。
【0047】
実施の形態6によれば、異常事象判断手段204と事象発生通知手段206を備えることによって、交差点での異常な事象の発生を周辺に知らせることが可能となり、更なる事故の発生を回避することが可能になる他、交差点周辺の混雑の解消や、場合によっては、交差点周辺からの円滑な避難を助けることが可能になる。
【0048】
実施の形態7.
図19は、この発明の実施の形態7による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
図19において、201〜204、211、212、221〜223は図17におけるものと同一のものである。図19には、異常事象判断手段204により異常事象が判断されたとき、事象発生をネットワークを介して管理者に通知する事象発生通信手段207を設けている。
【0049】
実施の形態7では、異常事象判断手段204は、交差点の事象情報223に交差点の通行状況が通常とは異なることを示す事象情報が含まれていたとき、これを事象発生通信手段207に通知し、その通知を受けた事象発生通信手段207は、ネットワークなどを経由してその道路を管理する管理者等へ異常な事象の発生を伝えるようにする。
交差点の通行状況が通常とは異なることを示す事象情報は、実施の形態5や実施の形態6と同様に、例えば、信号と同期しない車両の停止のような事象や、複数の車両が至近距離で停止したままの状態を継続する事象を発見すればよい。
【0050】
事象発生通信手段207は、異常な事象の発生を道路の管理者に知らせることを目的として、ネットワーク機能等の通信手段を用いて、交通障害の発生等を伝送するものである。この通信手段は、専用のネットワークはもちろん、公衆回線から回線事業者の提供する専用線であっても、インターネットを経由する通信であってもよいことはいうまでもない。
また、通信内容は、異常な事象の発生を単に知らせるだけという単純なものでも実用上支障がないことから、必ずしもEthernet(登録商標)のような高度なプロトコルを使用可能な通信回線である必要もなく、単純な接点信号を伝送できるような回線であってもかまわない。
【0051】
実施の形態7によれば、異常事象判断手段204と事象発生通信手段207を備え、ネットワークなどを経由してその道路を管理する管理者等へ異常な事象の発生を伝えることで、交差点における交通障害の発生の状況を遠隔地の管理者が遅滞なく把握することが可能となり、管理者への通報が不要となるばかりでなく、復旧のための手配が迅速に行えるようになる等、管理者としての必要な措置を的確にとることができるようになる。
【0052】
実施の形態8.
図20は、この発明の実施の形態8による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
図20において、201〜205、211、212、221〜223は図17におけるものと、206は図18におけるものと、207は図19におけるものとそれぞれ同一のものである。
実施の形態8は、実施の形態5〜実施の形態7で述べた、異常事象判断手段204と映像蓄積手段205と事象発生通知手段206と事象発生通信手段207を同時に備えたものである。
【0053】
実施の形態8によれば、このような構成にすることで、交差点で交通事故が発生したような場合に、発生前後の映像情報が記録され、また交通事故の発生を直ちに管理者へ通報すると同時に交差点周辺の人や車両に事故の発生を伝えて、二次災害の防止をはかるシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置における三叉路の仮想単路を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置の画像処理手段を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置における三叉路の屈曲路の仮想単路を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置における三叉路の直線路の仮想単路を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態1による交差点交通流計測装置の情報統合手段を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2による交差点交通流計測装置における三叉路の仮想単路を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態2による交差点交通流計測装置の画像処理手段を示す構成図である。
【図9】この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における三叉路の仮想単路を示す説明図である。
【図10】この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における撮像手段が配置された三叉路の屈曲路の仮想単路を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における別の撮像手段が配置された三叉路の屈曲路の仮想単路を示す説明図である。
【図12】この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における撮像手段が配置された三叉路の直線路の仮想単路を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態3による交差点交通流計測装置における別の撮像手段が配置された三叉路の直線路の仮想単路を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態4による交差点交通流計測装置における三叉路の仮想単路を示す説明図である。
【図15】この発明の実施の形態4による交差点交通流計測装置における道路沿いに駐車場がある場合の仮想単路を示す説明図である。
【図16】この発明の実施の形態4による交差点交通流計測装置におけるバス停がある場合の仮想単路を示す説明図である。
【図17】この発明の実施の形態5による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
【図18】この発明の実施の形態6による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
【図19】この発明の実施の形態7による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
【図20】この発明の実施の形態8による交差点交通流計測装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0055】
101 撮像手段
102 仮想単路(A方面→B方面)
103 仮想単路(A方面→C方面)
104 仮想単路
105 仮想単路
106 仮想単路
107 仮想単路
111 撮像手段
112 撮像手段
113 撮像手段
141 駐車場
142 バス停
120 車両
121 車両
122 車両
123 車両
124 車両
125 車両
131 建築物
201 撮像手段
202 画像処理手段
203 情報統合手段
204 異常事象判断手段
205 映像蓄積手段
206 事象発生通知手段
207 事象発生通信手段
211 撮像手段の設置情報
212 交差点の線形情報
221 交差点映像
222 画像処理結果
320 交差点映像
321 画像解析処理部
322 仮想単路の事象情報
330 交差点映像
331 画像解析処理部
332 仮想単路の事象情報
601 情報合成部
602 情報修正部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点を撮像するように配置された撮像手段、上記交差点を通過する交通流毎に単路を仮想した複数の仮想単路として上記交差点を捉え、上記撮像手段から得られる映像を処理して、上記仮想単路毎の交通流に関する情報を得る画像処理手段、及びこの画像処理手段によって得られる仮想単路毎の交通流に関する情報を、装置内部に記憶された上記交差点の道路線形と照合して合成する情報統合手段を備えたことを特徴とする交差点交通流計測装置。
【請求項2】
上記撮像手段は、複数が配置され、上記画像処理手段は、上記仮想単路毎に異なる撮像手段から得られる映像を処理することを特徴とする請求項1記載の交差点交通流計測装置。
【請求項3】
上記撮像手段は、同一の仮想単路を撮像するように複数が配置され、上記画像処理手段は、上記同一の仮想単路について上記複数の撮像手段から得られる映像を処理することを特徴とする請求項1記載の交差点交通流計測装置。
【請求項4】
上記撮像手段は、仮想単路毎に上記仮想単路を撮像するように複数が配置され、上記画像処理手段は、上記仮想単路毎に異なる上記複数の撮像手段から得られる映像を処理することを特徴とする請求項1記載の交差点交通流計測装置。
【請求項5】
上記交差点の道路線形及び上記撮像手段の設置情報を記憶する記憶手段を備え、上記情報統合手段は、上記記憶手段に記憶された上記交差点の道路線形及び上記撮像手段の設置情報を用いて、上記仮想単路毎の交通流に関する情報を合成することを特徴とする請求項1記載の交差点交通流計測装置。
【請求項6】
上記情報統合手段により合成された結果により、上記交差点に異常事象が発生したことを判断する異常事象判断手段、及びこの異常事象判断手段により異常事象の発生が判断されたとき、上記撮像手段によって撮像された映像を蓄積する映像蓄積手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の交差点交通流計測装置。
【請求項7】
上記情報統合手段により合成された結果により、上記交差点に異常事象が発生したことを判断する異常事象判断手段、及びこの異常事象判断手段により異常事象の発生が判断されたとき、上記交差点の周辺に上記異常事象の発生を通知する事象発生通知手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の交差点交通流計測装置。
【請求項8】
上記情報統合手段により合成された結果により、上記交差点に異常事象が発生したことを判断する異常事象判断手段、及びこの異常事象判断手段により異常事象の発生が判断されたとき、ネットワークを介して管理者に上記異常事象の発生を通知する事象発生通信手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の交差点交通流計測装置。
【請求項9】
上記情報統合手段により合成された結果により、上記交差点に異常事象が発生したことを判断する異常事象判断手段、この異常事象判断手段により異常事象の発生が判断されたとき、上記撮像手段によって撮像された映像を蓄積する映像蓄積手段、上記異常事象判断手段により異常事象の発生が判断されたとき、上記交差点の周辺に上記異常事象の発生を通知する事象発生通知手段、及び上記異常事象判断手段により異常事象の発生が判断されたとき、ネットワークを介して管理者に上記異常事象の発生を通知する事象発生通信手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の交差点交通流計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−293563(P2007−293563A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120177(P2006−120177)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】