説明

交差点交通流計測装置

【課題】従来は交通量調査員により計測作業を実施していたためコストや、計測精度のバラつきの点で課題があった。
【解決手段】複数車線の車線別の通過車両の動作状態を計測する車両通過状態検出手段と、カメラ映像を録画する画像センサー録画映像DB手段と、車線別の複数車線の車線毎の通過台数を計測する車線別通過台数計測手段と、混用車線の分岐率情報を設定する混用車線分岐率設定手段と、計測処理状態を表示する計測結果表示手段と、誤った計測値を補正する計測値補正手段により、交差点の方向別通過台数を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの調査費用や要求精度に応じ柔軟に計測メニューを提供できる交差点交通流計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交通量調査会社がアルバイト等の調査員を臨時募集し、臨時募集された調査員が交差点での方向別の通過台数の計測を行っている。大よそ1交差点あたり3名(内補助1名)から6名(内補助2名)の人員構成で計測することが一般的である。計測時間は、1日のうち12時間の交通量を基本とし、1時間単位で集計されることが多い。
【0003】
最近では、例えば〔特許文献1〕,〔特許文献2〕,〔非特許文献1〕に記載されているように、交差点全体を1台のカメラで撮影し、交差点内を通過する車両1台毎の挙動を画像解析することで通過車両の方向別通過台数を自動計測するシステムも見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−293563号公報
【特許文献2】特開2005−190142号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.omron.co.jp/press/2006/03/s0302.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように、人手による交差点の交通流計測業務では、臨時に募集したアルバイト調査員により計測作業を実施するため、計測精度にばらつきが生じるという問題があった。また、一交差点の計測費用として大よそ25万円要し、その費用の大部分が人件費のためコスト低減が難しく、大規模な調査になると調査員の確保が難しいという問題がある。
【0007】
〔特許文献1〕,〔特許文献2〕,〔非特許文献1〕に記載の画像処理による自動計測の場合も、交差点全体を1台のカメラで撮影する必要があるため、交差点付近のビルの屋上などの高所撮影になり、計測できる地点が限定される問題がある。また、交差点内部の車両の移動軌跡をトラッキングする必要があるため、画像処理の負荷も重くなる恐れがある。さらに、交差点内部を斜め前方から撮影するため、撮影角度や視野を遮る物体や車両同士の重なりによる影響を完全に除去することはできない問題や、立体交差により高架橋がある交差点では高架により高架下の交差点内部が隠れてしまうためトラッキングができなくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、従来の人手による交差点交通量調査業務に比べ省人化ができ、ユーザが希望する調査費用と要求計測精度を満足する計測業務を行うことができる交差点交通流計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の交差点交通流計測装置は、複数車線の車線毎の通過台数を計測する車線別通過台数計測手段と、混用車線の分岐率を算出する分岐率算出手段と、車線別通過台数の計測値が誤っている場合に、計測値を補正する計測値補正手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、交差点の方向別通過台数を容易に計測することができ、交通量調査に関するユーザの予算や要求精度に応じて柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例である交差点交通流計測装置の構成図である。
【図2】交差点交通流計測処理のフローを示す図である。
【図3】混用車線の分岐率設定の処理のフローを示す図である。
【図4】計測値補正処理のフローを示す図である。
【図5】交通量調査員による計測業務の概要を示す図である。
【図6】画像処理型の交差点交通流計測装置の斜視図である。
【図7】本実施例の画像センサーの設置状態を示す斜視図である。
【図8】本実施例の超音波センサーの設置状態を示す斜視図である。
【図9】計測結果の表示画面の例を示す図である。
【図10】計測値補正処理の表示画面の例を示す図である。
【図11】混用車線検出及び分岐率情報設定の表示画面の例を示す図である。
【図12】一般道の代表的な車線運用パターンを示す図である。
【図13】車線運用パターンの利用分岐率事例DBを示す図である。
【図14】他の複数車線のパターンの例を示す図である。
【図15】計測対象となる交差点の分岐率情報の例を示す図である。
【図16】分岐率事例DBの分岐率データの例を示す図である。
【図17】分岐率事例DBの交差点付近の交通状況を示す図である。
【図18】交差点流動図の例を示す図である。
【図19】画像式トラカンの計測内容を示す図である。
【図20】時間帯毎に車線別通過台数を集計した例を示す図である。
【図21】混用車線の通過台数手動算出の例を示す図である。
【図22】混用車線の通過台数手動算出の他の例を示す図である。
【図23】画像センサー2台で実施する例を示す図である。
【図24】画像センサーの撮影範囲の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施例を図1から図24を用いて説明する。図1は本実施例の交差点交通流計測装置のハードウエア構成図である。
【0013】
本実施例の交差点交通流計測装置は、交差点の各流入路の車線別の車両の走行状態を検知する超音波センサー101と、画像センサー102と、ある特定方向を通過する車両の走行台数を計測する人手補助計測部100と、各センサーの情報から車線別の車両の通過台数を計測し、計測結果として交差点の方向別通過台数を算出する車線別通過台数計測手段104と、画像センサー102の撮影映像を録画する画像センサー録画映像DB103と、流入路の車線構成の中に複数の行先方向を有する混用車線が存在する場合に、行先方向毎の通過台数の割合を表す分岐率を算出する混用車線の分岐率算出手段105と、過去の交差点調査による計測データを、混用車線の分岐率情報の事例データベースとして再利用可能な形式で蓄積した分岐率事例DB110と、分岐率事例DB110の情報、及び分岐率情報を直接入力する分岐率編集手段109と、車線別通過台数計測手段104において計測ミスが生じた場合に、計測値を補正する計測値補正手段108と、車線別通過台数計測手段104により算出された、車線別通過台数及び交差点の方向別通過台数の計測結果を蓄積する計測結果蓄積手段107と、車線別通過台数計測手段104の計測結果を表示する計測結果表示手段106で構成される。
【0014】
交差点交通流計測装置の処理の流れを図2に示す。ステップ200で、事前に計測対象となる交差点の車線構成中に混用車線があるかどうかチェックし、混用車線が存在する場合には、ステップ201で、分岐率編集手段109により、計測結果表示手段106を介して分岐率情報を設定したり、分岐率事例DB110の登録データを利用し、混用車線の分岐率算出手段105により、混用車線の分岐率情報を設定する。
【0015】
ステップ202で、人手補助計測部100,超音波センサー101,画像センサー102により車両の走行状態に関する情報を入力し、ステップ203で画像センサーか否かを判断し、ステップ204でオフライン処理か否かを判断する。
【0016】
画像センサーの場合で、かつオフライン処理の場合は、ステップ205で、カメラ映像録画処理を行い、画像センサー録画映像DB103にカメラ映像を一旦蓄積し、ステップ206で、録画した映像を再生しながら車線別通過台数計測手段104により、車線別通過台数計測処理を実行する。
【0017】
ステップ207で、この処理過程で計測値に誤りが生じたか否かを判断し、計測値に誤りが生じた場合には、ステップ208で、計測値補正手段108により、計測結果表示手段106を介して計測値の補正を行い、車線別の通過台数計測処理を再開し、ステップ209で、算出された方向別通過台数及び車両の走行状態に関する情報を、計測結果蓄積手段107に設定されたフォーマットで記録する。ステップ210で、計測時間帯が終了か否かの判断を行い、以上の処理を、予め設定された計測時間帯情報に基づいて終了時間まで繰返し実施する。
【0018】
図3は、混用車線の分岐率設定処理の流れを示す図である。ステップ300で、画像センサー録画映像DB103から録画映像を取り出し、計測結果表示手段106を介して、映像中の路面に表示される車線方向を現す車線方向区分情報を、画像処理により検出し、ステップ301で、検出された車線区分方向情報が混用車線かどうかを判断する。
【0019】
検出された車線区分方向情報が混用車線の場合は、ステップ302で、手動で混用車線の通過台数を方向別に分離するために必要となる分岐率情報を設定するか、分岐率事例DB110から過去の調査結果に基づいた分岐率情報を設定するかを決める。
【0020】
ここで、分岐率事例DB110を利用する場合には、ステップ303で、分岐率事例DB110内から計測対象となる交差点と、類似な交差点の計測データを検索し、ステップ304で、検索された交差点の計測データから対応する混用車線の分岐率情報を算出する。
【0021】
一方、手動分岐率設定処理では、ステップ305で、画像処理により自動検出された路面上の車線方向区分情報で、混用車線が検出された場合には計測結果表示手段106を介して、混用車線の方向数nのn−1方向の通過台数を、人手補助計測部100で計測した値や、専門家による経験値などをもとに算出した分岐率情報を、画面上で直接入力する。ステップ306で、直接入力した分岐率情報は分岐率事例DB110の新規データとして登録することもできる。
【0022】
図4は、計測値補正処理の流れを示す図である。車線別通過台数計測手段104の計測結果は、ステップ400で、計測結果表示手段106を介して車両の通過台数のカウントが正常に行われているかどうかを判定する。
【0023】
ここで、計測漏れには2つの状態があり、一つは計測すべき車両を画像処理で補足できなかった場合と、他の一つは計測すべきでない車両を捕捉してしまった場合がある。どちらの場合も、ステップ401,402で、一度計測処理を中断し、前者の検知漏れの場合には計測結果表示画面上で、捕捉すべき車両で捕捉されていない車両を目視で確認し、ステップ402で、画面上の該当する車両をマウス等のポインティングデバイスにより選択し、ステップ403で、該当する車両の台数カウント補正情報の入力や、車種や速度などの情報も補正が必要であれば画面上に表示された入力メニューを使って計測情報を入力し、ステップ406で、計測処理を再開する。
【0024】
後者の検知漏れの場合には、計測処理を一時中断した後、計測すべきでない車両を画像処理で捕捉してカウントしてしまったため、ステップ405で、画面上で誤って捕捉した当該車両をマウス等のポインティングデバイスで選択し、誤検知した当該車両を画面上のメニューよりカウントダウンし、ステップ406で、計測処理を再開する。
【0025】
図5は、従来の人手による交差点の交通量調査の例を示す図である。1交差点当たり流入路の車線数にもよるが、図5に示すケースでは、全ての方向別通過台数を計測するためには、図5中の表501に示す調査員の配置や計測分担のように4人必要となる。
【0026】
交差点の形状や規模にもよるが、3人から6人が計測要員の通常の目安である。計測費用の大部分が人件費であるため、調査対象となる範囲が大きいとコストが増大するという問題があり、また、人手計測のため計測精度にバラつきが生じるという課題もある。
【0027】
図6は、画像処理型の交差点交通流計測装置を示す図である。この装置では、交差点全体を交差点近傍の比較的高いビル600などの屋上に設置したカメラ601で撮影し、斜め前方に俯瞰した映像をもとにカメラ映像602内を通過する車両1台毎の走行軌跡を解析し、計測対象となる交差点の方向別通過台数を算出している。この方法では、高所からの撮影が必要になるため計測可能な地点が限定され、車両1台毎の走行軌跡を画像処理により算出するため処理負荷が重くなる問題がある。さらに、斜め前方から撮影するため、交差点内部での車両同士の重なりや電線や電柱,街路樹など周囲の構造物がカメラの視野上に存在する場合に検出率が低下する問題がある。
【0028】
図7は、本実施例の画像センサーの設置状態を示す図である。この例では、画像センサーとして、トラフィックカウンタ700,車線別の車両の通過台数を計測する画像式のトラフィックカウンタ700,701,702,703が設置されている。
【0029】
画像式のトラフィックカウンタ700を交差点の流入路704近傍に設置し、流入路704内の車線別通過台数を計測する。同様に交差点の方向別通過台数を計測するために他の残りの流入路近傍にも画像識のトラフィックカウンタ701,702,703を設置し、計測対象となる全ての交差点内の流入路の車線別通過台数を計測する。
【0030】
この計測結果もとに混用車線が存在する場合には、所定の分岐率情報を設定することで全ての方向別通過台数を求めることができる。図6に示す装置に比べると、交差点全体を分割して撮影するために、低所での撮影が可能になり、また車両1台毎の走行軌跡を画像処理により算出する必要が無いため処理負荷を低減できるメリットがある。
【0031】
図8は、本実施例の超音波センサーの設置状態を示す図である。交差点の流入路に取り付けられた超音波センサー800は、各車線毎の通過台数を計測するために、車線毎に1個づつ取り付けられた超音波センサーヘッド804,805で構成されている。
【0032】
超音波センサーヘッド804,805を車線毎に1個づつ取り付け、各センサーヘッドの直下を通過する車両の台数を信号処理して車線別の通過台数をカウントする。図7に示す画像式のトラフィックカウンタと同様に、超音波センサー800の他に、各流入路についても計測するために、超音波センサー801,802,803が必要になる。混用車線の分離については、図7に示す画像式トラフィックカウンタと同様に分岐率情報を用いて方向別の通過台数を算出する。
【0033】
図9は、計測結果表示手段106の計測結果の表示画面の例を示す図である。画像式トラフィックカウンタの計測画面では、例えば車線毎に通過車両の候補を検知するエリア903,904,905で通過車両の有無を判定し、通過車両の候補が見つかると車両の一部の画素情報900,901,902をテンプレートとして登録し、例えばオプティカルフローや正規化相関などの手法により時間方向に、トラッキング処理を行う。
【0034】
一定時間トラッキング処理をすることで通過車両かどうかを最終的に判定し、台数カウントや、移動時間と移動距離の関係から速度情報を求めることができる。ここで、車両が正常に追跡できたものはマーカー906が付与される。
【0035】
車線別の通過台数及び速度や占有率などの走行状態を集計結果907として表示することもできる。又、混用車線において画像式トラフィックカウンタにより、交差点内部への進入路近傍で、車両の姿勢方向を画像処理で判定し、混用車線での方向別通過台数を自動計測することもできる。姿勢方向の判定としては、例えば車両の特徴となる部分をテンプレートとして登録し、時間軸方向にトラッキングし、テンプレートの移動軌跡(座標)の変化から姿勢方向を判定することができる。
【0036】
図10は、計測値補正処理の表示画面の例を示す図である。この表示画面では、画像計測処理による自動計測が主になるが、100%の精度を補償することは困難であるため、目視により画面上で補正するようになっている。
【0037】
具体的には、画面上に計測処理の一時中断部1000,計測処理の再開部1001を設け、例えば車両の検知漏れが確認できた場合、該当する車両1002をマウスなどのポインティングデバイスにより画面上で選択し、選択動作と連動して画面上に表示された計測値補正メニュー1003により、本来はカウントすべき車両をカウントできなかった場合には、+1を選択し、カウントすべきでない車両をカウントした場合には、−1を選択する。これにより、数値入力をする必要が無いので容易に補正することができる。
【0038】
また、車種などの情報についても、目視で計測ミスが確認された場合は、同様に該当する車両1004を選択し、画面に表示されたメニューより項目を選択することで容易に補正することができる。
【0039】
図11は、混用車線検出及び分岐率情報設定の例を示す図である。図11中の4つの画面は、画像センサー録画映像DB103の映像をもとに、例えば1交差点分の4つの流入路について分割画面で一度に表示したものである。
【0040】
分岐率の設定の一例としては次のような場合がある。例えば、流入路の画像処理による車線方向区分情報の自動検出の際に、混用車線1101,1102,1103,1104,1105,1106が検出された場合、該当する混用車線をマウスなどのポインティングデバイスで画面上を選択すると、対応する入力画面1107により分岐率情報の入力が促され設定することができる。
【0041】
同様にして他の混用車線についても設定することで、設定された分岐率情報をもとに計測対象となる交差点の方向別通過台数を算出することができる。
【0042】
図12は、一般道の代表的な車線運用パターンを示す図である。混用車線のパターンとしては、左折直進混用1200と、左折直進右折混用1203と、直進右折混用1205があるが、左折直進右折混用は、3方向のうち2方向の通過台数を与える必要がある。しかし、実際の調査現場では、このような交差点での交通渋滞は少ないので調査機会は少ない。
【0043】
また、混用車線1200〜1206以外の車線は、車線別通過台数=方向別通過台数として計測した結果をそのまま利用できるので、全ての方向の通過方向を確認しながら計測する場合より大幅に省力化できる。
【0044】
図13は、車線運用パターン利用の分岐率事例DB110を示す図である。分岐率事例DB内のデータ構成の一例としては、流入路毎の車線運用パターン情報と、過去に交通量調査したときに整理した交差点の分岐率データと、交差点流動図,交差点概況図の図形情報及び数値データを関連付けて再利用な形式で編集登録している。
【0045】
検索の際には、例えば登録された図形情報をサムネールの形式でプレビュー表示し、表示された情報から選択的に必要な情報を選択したり、予め特徴的な情報をキーワード登録し、検索することもできる。
【0046】
図14は、他の複数車線のパターンの例を示す図である。図13に示す車線運用パターンでは、2車線の運用パターンの例を示しているが、他の例として、3車線の車線運用パターン1405や、4車線の車線運用パターン1400がある。
【0047】
全体的な傾向としては、車線数が増えるに従って、全体の車線数に占める混用車線の比率が少なくなるので、車線別通過台数計測装置における方向別通過台数の分離が増加しないため、従来手法に比べ計測処理の精度や処理負荷の点でメリットがある。
【0048】
図15は、計測対象となる交差点の分岐率情報の例を示す図で、計測対象となる交差点の分岐率情報の設定例を示している。
【0049】
分岐率情報は、車線を通過する全通過台数に占める、左折方向への通過台数の割合と、直進方向への通過台数の割合と、右折方向への通過台数の割合とを加えた値が100%となるように、各方向毎の通過台数をもとに算出する。
【0050】
ここで、方向が一意に決定している車線は100%になるが、混用車線である1500,1501,1502,1503については、左折方向の通過台数と直進方向の通過台数及び当該車線の全通過台数をもとに、文規律情報を算出することになる。
【0051】
流入路Sにおいては、直進方向は車線L2の直進方向と、混用車線L1の直進方向の2つがあり、最終的な流入路Sの文規律情報を求めるためには、車線L1の直進と車線L2の直進を加えたものが流入路Sの直進の分岐率情報として算出することが必要になる。
【0052】
図16は、分岐率事例DB110の分岐率データの例を示す図である。
【0053】
図15に示す計測対象となる交差点の混用車線では、分岐率情報が未確定であり、このままでは、車線別の通過台数計測により混用車線の全通過台数が計測できても方向別に分離することができない。このような場合、例えば、車線運用パターン利用の分岐率事例DB110に登録されている過去の調査結果から、混用車線の分岐率情報1600〜1603を設定することで混用車線の通過台数を方向別に分離することができる。
【0054】
なお、分岐率情報は、時間帯毎の分岐率情報1604として蓄積することにより、交通量の時間変動にも追従できるようになっている。
【0055】
図17は、分岐率事例DB110の交差点付近の交通状況を示す図である。車線運用パターン利用分の分岐率事例DB110内の交差点概況は、概況図1700として図形情報として登録しており、交差点近傍の施設や、駐車場の出入り口や、バス停など交通の障害になるものが確認できるため、混用車線の分岐率情報を設定する際に、類似した交差点の過去の計測データを利用する場合の判断材料となる。
【0056】
図18は、交差点流動図の例を示す図である。
【0057】
車線運用パターン利用の分岐率事例DB110内の交差点流動図では、過去の交通量調査データを集計し、方向別の通過台数を数値或いは図形1804で表示し、通過台数の多さが視覚的に分かるようになっている。このため、例えば符号1800〜1803で示す各流入路の全通過台数をもとに、計測対象となる交差点の予め算出した流入路毎の通過台数が類似する場合は、流動図と対応する混用車線の分岐率を採用する等の方法が考えられる。
【0058】
図19は、画像式トラフィックカウンタの計測内容を示す図である。画像式トラフィックカウンタの氣即結果としては、通常、検出された車両の通過時刻,車両ID,レーンID,走行速度,車種などの情報が計測処理の過程で順次作成される。本実施例では、画像式トラフィックカウンタを交差点の交通流計測に利用するため、交差点のID情報と、交差点の流入路IDの情報を付加して計測データを管理する。
【0059】
図20は、時間帯毎に車線別の通過台数を集計した例を示す図である。一般的に交差点の交通量調査では、1日12時間分の計測データを1時間単位で集計することが多い。しかし、他の用途である交通流シミュレータや信号機制御では、さらに時間帯を細分化して時間帯1900を15分単位、或いはさらに細分化した単位で集計することが必要になる。
【0060】
また、図19で示す車両の通過のタイミングで計測されたデータの情報は、一度レーン毎に集計される。ここで、台数(L1)1902は、図15に示す計測対象交差点の流入路Nの混用車線LIに対応する。
【0061】
図21は、混用車線の通過台数の手動算出の例を示す図である。混用車線の方向別通過台数の分離について説明する。図20に示す集計データ中の台数(L1)を直進と左折に分離するには、例えば左折の通過台数を時間帯毎に集計して人手で計測した場合、計測値を台数(L1)2100に入力し、エクセルのスプレッドシートに計算式2101を代入することで残りの直進の通過台数を算出することができる。
【0062】
図22は、混用車線の通過台数の手動算出の例を示す図である。図21に示すエクセルのスプレッドシートを用いて行う混用車線の方向別通過台数の分離と同様に、この場合も直進の通過台数を人手で計測して入力することで、左折の台数を求めることができる。このように、人手による計測では、通過台数が少ない方向のカウントを人手で行うのが得策である。
【0063】
また、時間帯毎の通過台数の計測は、時間帯毎の交通量の変動が少ない場合には、状況に応じて間引いて計測するように設定しても良い。
【0064】
図23は、本実施例の画像センサー2台で実施する例を示す図である。
【0065】
従来の技術では、カメラ1台で交差点全体を撮影して画像処理していたが、本実施例の応用例では、カメラを対向する流入路に1台設置し、対向する流入路を1台のカメラで撮影するようにしている。例えば、画像センサー2300で撮影範囲2304を撮影し、画像センサー2301で撮影範囲2305を撮影することにより、画像センサーの設置台数を減らすことができる。
【0066】
また、交差点内部の撮影も可能になるため、交差点内部の車両1台毎の挙動を画像処理解析して、方向別通過台数を求めたり、交差点内部の走行軌跡情報から、車両同士の干渉や走り難さなどの交通事故に関する分析も可能になる。
【0067】
ここで、4差路交差点の場合、画像センサーは最低2台必要であり、画像センサー2300,2301の組み合わせ以外にも、その他の画像センサーの組み合わせとして画像センサー2300,2303の組み合わせなど設置条件の容易さを加味して、画像センサー2300〜2303を適宜組み合わせて使うことができる。
【0068】
通過台数の計測は、前述したように、画像式トラフィックカウンタにより車線別通過台数の計測から方向別通過台数を算出しても良く、交差点内部での車両の走行軌跡情報から、方向別通過台数を求めてもよく、どちらの方法を使っても計測できる。
【0069】
図24は、画像センサーの撮影範囲の例を示す図である。
【0070】
図23に示す画像センサーの設置例では、直交する交差点を想定しているが、実際には交差点2401,2402のように交差角が異なる場合が多々ある。このような場合には、画像センサーの撮影範囲2403と2404,撮影範囲2405と2406での計測精度の状態を見ながら画像センサーの設置台数や、設置位置を決める必要がある。
【0071】
本実施例によれば、複数車線の車線別の通過台数を計測する車線別通過台数計測手段と、複数車線中の混用車線に分岐率を設定する混用車線分岐率設定手段と、車線別通過台数の計測に誤りが生じた場合に計測値を補正することができる計測値補正手段により、交差点の方向別通過台数を容易に計測することができる。又、分岐率の設定を専門家の経験値として直接入力したり、一部人手で計測した値を利用したり、過去の交差点の調査結果を事例DBとして蓄積再利用したりすることで、交通量調査に関するユーザの予算や要求精度に応じて柔軟に対応することができる。
【0072】
又、従来の人手による交差点交通量調査業務に比べ省人化ができ、ユーザが希望する調査費用と要求計測精度を満足する計測業務を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
100 人手補助計測部
101 超音波センサー
102 画像センサー
103 画像センサー録画映像DB
104 車線別通過台数計測手段
105 分岐率算出手段
106 計測結果表示手段
107 計測結果蓄積手段
108 計測値補正手段
109 分岐率編集手段
110 分岐率事例DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点流入路に設置され、該交差点の流入路と、該流入路に接続する交差点内部と、該交差点内部に接続する前記流入路に対向する流入路を含めて撮像する少なくとも2台の画像センサーと、該画像センサーにより撮影された映像をもとに車両の走行軌跡情報を算出し、算出された走行軌跡情報から、前記交差点における車両の方向別通過台数を計測する方向別通過台数計測手段を備え、複数車線を有する交差点の各流入路における車両の方向別通過台数を計測することを特徴とする交差点交通流計測装置。
【請求項2】
交差点流入路に設置され、該交差点の流入路と、該流入路に接続する交差点内部と、該交差点内部に接続する前記流入路に対向する流入路を含めて撮像する少なくとも2台の画像センサーと、該画像センサーにより撮影された映像をもとに該流入路の車線別通過台数を計測し、車両の走行軌跡情報を求める車線別通過台数計測手段と、車線において行先方向を複数有する混用車線がある場合に、該混用車線の各行先方向毎に通過する台数の割合を表す分岐率情報を設定する混用車線分岐率設定手段を備え、複数車線を有する交差点の各流入路における車両の方向別通過台数を計測することを特徴とする交差点交通流計測装置。
【請求項3】
複数車線の車線別の通過車両を計測する画像センサーと、該画像センサーで計測されたカメラ映像を録画する画像センサー録画映像DB手段と、前記複数車線の車線毎の通過台数を計測する車線別通過台数計測手段と、前記複数車線において行先方向を複数有する混用車線がある場合に、該混用車線の各行先方向毎に通過する台数の割合を表す分岐率情報を設定する混用車線分岐率設定手段と、前記録画映像及び車両別通過台数計測手段の計測処理結果を表示する計測結果表示手段を備え、複数車線を有する交差点の各流入路における車両の方向別通過台数を計測することを特徴とする交差点交通流計測装置。
【請求項4】
前記車線別通過台数の計測値が誤っている場合に、計測値を補正する計測値補正手段を具備した請求項3に記載の交差点交通流計測装置。
【請求項5】
前記混用車線分岐率設定手段は、前記混用車線における行先方向がn個ある場合、n−1個の実測値を手動又は自動で求めてn個の行先方向毎の分岐率情報を設定し、前記混用車線の行先方向毎の通過台数を算出する請求項3又は4に記載の交差点交通流計測装置。
【請求項6】
前記混用車線分岐率設定手段は、該混用車線における行先方向毎の分岐率情報の設定において、過去に計測した交差点の方向別通過台数の結果を、交差点の車線構成を表す車線パターン情報と、交差点の方向別通過台数情報と、交差点の地理的或いは道路利用条件を表す情報を関連付けて再利用可能な形式でデータベース化し、該データベース化された情報をもとに、前記混用車線の分岐率情報を設定し、行先方向毎の通過台数を算出する請求項2から4のいずれかに記載の交差点交通流計測装置。
【請求項7】
前記混用車線分岐率設定手段は、前記車線別通過台数計測装置から得られる映像から、車線毎の行先方向を画像処理により認識判定し、前記混用車線が検出された場合に前記計測結果表示画面上で分岐率を画面に表示し、前記計測結果表示画面上において分岐率を設定する請求項2から4のいずれかに記載の交差点交通流計測装置。
【請求項8】
前記計測値補正手段は、前記計測結果表示画面上で、通過台数としてカウントすべき車両をマーキングするカウント候補マーキング手段と、カウントすべき車両でマーキングされなかった車両又はマーキングされたがカウントすべきでない車両が、前記計測結果表示画面上で目視で確認された場合に、前記車線別通過台数計測処理を一時中断し、前記計測結果表示画面上で該当する車両に関する必要な情報を補正した後に、前記車線別通過台数計測処理を再開する請求項4に記載の交差点交通流計測装置。
【請求項9】
前記計測値補正手段は、前記計測結果表示画面上で、通過台数としてカウントすべき車両をマーキングするカウント候補マーキング手段と、カウントすべき車両でマーキングされなかった車両または、マーキングされたがカウントすべきでない車両が、前記計測結果表示画面上で目視で確認された場合に、該当する車両を前記計測結果表示画面上でマウスなどのポインティングデバイスで選択することで、当該車両の走行状態情報の表示及び修正する請求項4に記載の交差点交通流計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−84024(P2012−84024A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231087(P2010−231087)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】