説明

交差点監視システムおよび移動体端末装置

【課題】移動体端末装置における消費電力を低減し、簡易な構成で、容易かつ確実に、交差点付近の交通情報を移動体端末装置に配信することができる交差点監視システムおよび移動体端末装置を提供すること。
【解決手段】交差点監視システム100は、交差点200の近傍に設置された交差点基地局1と交差点200を形成する道路の交差点200から所定距離離間した地点Gを通過する移動体5に対し、LF帯の信号を送信する送信手段を有するゲート局2と、移動体5とともに移動する移動体端末装置3とを備え、移動体端末装置3は、ゲート局2から送信されたLF帯の信号を受信する受信手段と、交差点基地局1に対し、LF帯よりも高い周波数帯の信号を送受信する端末装置側通信手段とを有し、交差点基地局1は、移動体端末装置3に対し、LF帯よりも高い周波数帯の信号を送受信する基地局側通信手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点監視システムおよび移動体端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
見通しの悪い交差点等に電子カメラを設置し、道路上の移動体を撮像し、通行する移動体に対し、移動体の位置情報等を含む道路の交通状況の情報を無線を用いて提供することで、交差点での安全を図るシステムが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、従来のシステムでは、移動体に設置された移動体端末装置を常に作動させているので、消費電力が高いという欠点がある。特に、移動体端末装置として、電池が内蔵されたものを用いる場合は、その移動体端末装置での消費電力が高いと、電池の消耗が激しく、長持ちしない(寿命が短い)という欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−59609号公報
【特許文献2】特開2003−109199号公報
【特許文献3】特開2005−202693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、移動体端末装置における消費電力を低減し、簡易な構成で、容易かつ確実に、交差点付近の交通情報を移動体端末装置に配信することができる交差点監視システムおよび移動体端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明の交差点監視システムは、交差点または該交差点の近傍に設置された交差点基地局と、
前記交差点を形成する道路の該交差点から所定距離離間した地点を通過する移動体に対し、LF帯の信号を送信する送信手段を有するゲート局と、
前記移動体とともに移動する移動体端末装置とを備え、
前記移動体端末装置は、前記ゲート局から送信されたLF帯の信号を受信する受信手段と、
前記交差点基地局に対し、LF帯よりも高い周波数帯の信号を送受信する端末装置側通信手段とを有し、
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置に対し、LF帯よりも高い周波数帯の信号を送受信する基地局側通信手段を有し、
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置に対し、前記交差点付近の交通情報を送信し、
前記移動体端末装置は、前記ゲート局から送信されたLF帯の信号を受信すると、前記端末装置側通信手段を作動させ、前記交差点基地局から送信された前記交差点付近の交通情報を受信するよう構成されていることを特徴とする。
【0006】
これにより、交差点付近での移動体同士の衝突を防止することができる。
また、電子カメラ等で交差点付近を撮像することなく、簡易な構成で、移動体端末装置に対して、交差点付近の交通情報を配信することができる。
また、LF帯での通信では待受け受信の際の消費電力は低く、移動体端末装置では、ゲート局から送信されたLF帯の信号の受信をトリガーとして、通信手段を作動させるので、移動体端末装置の消費電力を低減することができ、内蔵(搭載)されるバッテリーを長持ちさせることができる。
【0007】
[適用例2]
本発明の交差点監視システムでは、前記ゲート局は、前記移動体が前記交差点から所定距離離間した地点を通過する際、前記移動体に対し、その地点の位置情報を送信し、
前記移動体端末装置は、前記位置情報を受信すると、前記交差点基地局に対し、該位置情報を送信するよう構成されていることが好ましい。
これにより、正確な交差点付近の交通情報を配信することができる。
【0008】
[適用例3]
本発明の交差点監視システムでは、前記交差点基地局は、前記移動体端末装置から送信された前記位置情報に基づいて、前記移動体端末装置とともに移動する前記移動体の前記交通情報を作成する交通情報作成手段を有することが好ましい。
これにより、正確な交差点付近の交通情報を配信することができる。
【0009】
[適用例4]
本発明の交差点監視システムでは、前記移動体端末装置は、該移動端末装置とともに移動する前記移動体の移動速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された移動速度に応じて、前記端末装置側通信手段の送信出力を調整する送信出力調整手段とを有することが好ましい。
これにより、交差点基地局に対し危険度の高い情報のみを配信することができ、また送信出力を抑えることにより移動体端末装置の消費電力を低減することができる。
【0010】
[適用例5]
本発明の交差点監視システムでは、前記移動体端末装置から前記交差点基地局に送信される信号には、送信出力レベルに係る情報が含まれており、
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置から送信された信号に含まれる前記送信出力レベルに係る情報と、前記移動体端末装置から送信された信号の受信電界レベルとに基づいて、移動端末装置とともに移動する前記移動体の位置を求める位置算出手段を有することが好ましい。
これにより、移動体端末装置から交差点基地局に送信する情報に、移動体の移動速度の情報を含める必要がなくなり、情報量(情報数)を削減することができる。
【0011】
[適用例6]
本発明の交差点監視システムでは、前記交差点基地局は、前記位置算出手段により求められた前記移動体の位置に基づいて、前記移動体端末装置とともに移動する前記移動体の前記交通情報を作成する交通情報作成手段を有することが好ましい。
これにより、交差点付近での移動体同士の衝突をより確実に防止することができる。
【0012】
[適用例7]
本発明の交差点監視システムでは、前記移動体端末装置は、該移動端末装置とともに移動する前記移動体の移動速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された移動速度に応じて、前記端末装置側通信手段の送信出力を調整する送信出力調整手段とを有し、
前記移動体端末装置から前記交差点基地局に送信される信号には、送信出力レベルに係る情報が含まれており、
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置から送信された信号に含まれる前記送信出力レベルに係る情報と、前記移動体端末装置から送信された信号の受信電界レベルとに基づいて、前記移動端末装置とともに移動する前記移動体の位置を求める位置算出手段と、
前記移動体端末装置から送信された前記位置情報と、前記位置算出手段により求められた前記移動体の位置とに基づいて、前記移動体端末装置とともに移動する前記移動体の前記交通情報を作成する交通情報作成手段とを有することが好ましい。
これにより、交差点付近での移動体同士の衝突をより確実に防止することができる。
[適用例8]
本発明の交差点監視システムでは、前記交通情報には、警告が含まれることが好ましい。
これにより、交差点付近での移動体同士の衝突をより確実に防止することができる。
【0013】
[適用例9]
本発明の交差点監視システムでは、前記移動体端末装置は、該移動体端末装置に電力を供給するバッテリーを有することが好ましい。
これにより、移動体端末装置を人が所持することができ、その人に対して、交差点付近の交通情報を知らせることができる。
【0014】
[適用例10]
本発明の交差点監視システムでは、前記基地局側通信手段は、前記移動体端末装置に対して送信する信号の方向を制限する方向制限手段を有することが好ましい。
これにより、交差点付近において、無駄な電波発生を抑制することができ、交差点基地局の消費電力を低減することができ、混信も防止することができる。
【0015】
[適用例11]
本発明の移動体端末装置は、道路を移動する移動体に設置または所持されるものであり、
LF帯の信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によりLF帯の信号を受信すると作動し、LF帯よりも高い周波数帯の信号を送受信する通信手段とを備え、
前記通信手段により、通信相手側から送信された交差点付近の交通情報を受信するよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
これにより、交差点付近での移動体同士の衝突を防止することができる。
また、LF帯での通信では待受け受信の際の消費電力は低く、移動体端末装置では、ゲート局から送信されたLF帯の信号の受信をトリガーとして、通信手段を作動させるので、移動体端末装置の消費電力を低減することができ、内蔵(搭載)されるバッテリーを長持ちさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の交差点監視システムの第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す交差点監視システムの交差点基地局を示すブロック図である。
【図3】図1に示す交差点監視システムのゲート局を示すブロック図である。
【図4】図1に示す交差点監視システムの移動体端末装置を示すブロック図である。
【図5】図1に示す交差点監視システムの交差点基地局の制御動作を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す交差点監視システムの移動体端末装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】図1に示す交差点監視システムの他の構成例を説明するための図である。
【図8】本発明の交差点監視システムの第2実施形態を示す図である。
【図9】図8に示す交差点監視システムの交差点基地局を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の交差点監視システムおよび移動体端末装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
なお、以下の実施形態では、代表的に、本発明の交差点監視システムを四方へ道路が延びる四叉路に適用した場合について説明する。また、LF帯よりも高い周波数帯として、代表的に、UHF帯を使用する場合について説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明の交差点監視システムの第1実施形態を示す図、図2は、図1に示す交差点監視システムの交差点基地局を示すブロック図、図3は、図1に示す交差点監視システムのゲート局を示すブロック図、図4は、図1に示す交差点監視システムの移動体端末装置を示すブロック図、図5は、図1に示す交差点監視システムの交差点基地局の制御動作を示すフローチャート、図6は、図1に示す交差点監視システムの移動体端末装置の制御動作を示すフローチャート、図7は、図1に示す交差点監視システムの他の構成例を説明するための図である。
【0020】
なお、以下では、図1および図8中の左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
また、図5および図6では、UHF帯での移動体端末装置から交差点基地局への通信を「f1」、UHF帯での交差点基地局から移動体端末装置への通信を「f2」と表記し、また、LF帯での通信を「LF」と表記する。
【0021】
図1に示すように、交差点監視システム100は、交差点(図示の構成では四叉路)200の近傍に設置された交差点基地局1と、交差点200を形成する道路の近傍に設置された複数(図示の構成では4つ)のゲート局2と、複数の移動体端末装置3(図示の構成では2つの移動体端末装置3a、3b)とを備えている。以下では、移動体端末装置3a、3bを総称する場合には、「移動体端末装置3」と言い、区別して言う場合には、「移動体端末装置3a」、「移動体端末装置3b」と言う。なお、交差点基地局1は、交差点200に設置されていてもよい。また、ゲート局2は、交差点200を形成する道路に設置されていてもよい。
【0022】
移動体端末装置3は、道路を移動する移動体5に設置または所持され、その移動体5とともに移動するものである。移動体5としては、例えば、人、自転車、自動車(車両)等が挙げられる。図示の構成では、自動車である移動体5aと、自転車である移動体5bとを想定する。また、移動体5aには、移動体端末装置3aが設置され、移動体5bには、移動体端末装置3bが設置されている。以下では、移動体5a、5bを総称する場合には、「移動体5」と言い、区別して言う場合には、「移動体5a」、「移動体5b」と言う。
【0023】
図4に示すように、移動体端末装置3は、LF(Low Frequency)帯アンテナ31と、ゲート局2から送信されたLF帯の信号を受信する受信機32と、UHF(Ultra High Frequency)帯アンテナ33と、アンテナ共用器34と、交差点基地局1に対し、UHF帯の信号を送信する送信機35と、増幅率が可変であり、送信出力を調整する送信アンプ(送信出力増幅部)36と、交差点基地局1から送信されたUHF帯の信号を受信する受信機37と、制御部(制御手段)38と、記憶部(記憶手段)39と、操作部41と、各情報を報知する報知部(報知手段)42と、この移動端末装置3とともに移動する移動体5a(5b)の移動速度を検出する速度検出部(速度検出手段)43と、移動体端末装置3の各部に電力を供給するバッテリー44と、バッテリー44の残量を検出するバッテリーモニター45とを備えている。なお、前記LF帯アンテナ31および受信機32により、LF帯受信手段が構成される。また、前記アンテナ共用器34、送信機35、送信アンプ36および受信機37により、通信回路30が構成され、この通信回路30およびUHF帯アンテナ33により、端末装置側通信手段が構成される。
【0024】
制御部38は、例えば、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロコンピューター等で構成され、移動体端末装置3における各種の演算処理、判断や、移動体端末装置3全体の制御等を行う。
また、記憶部39には、例えば、移動体端末装置3を設置(または所持)する移動体5の種類(例えば、自動車、自転車、人等)等を含む移動体端末装置3のID情報(個体識別)等の各種の情報や、プログラム等が記憶される。ID情報の入力の操作は、操作部41で行うことができる。
また、報知部42としては、例えば、音声を生成する音声生成部、アラーム、振動を発生する振動発生部、発光体、電子画像を表示する表示部等が挙げられ、これらのうちの2つ以上を用いてもよい。
また、速度検出部43としては、例えば、加速度センサー等が挙げられる。
【0025】
また、バッテリー44は、着脱自在に構成されていてもよく、また、取り外し不能に構成されていてもよい。
また、バッテリー44の残量は、バッテリーモニター45により検出され、制御部38は、そのバッテリーモニター45の検出結果に基づいて、バッテリー44の残量が所定の閾値よりも少ないか否かを判断し、閾値よりも少ない場合には、報知部42により、バッテリー44の残量が少ないことを報知する。これにより、移動体端末装置3を確実に作動させることができる。
交差点基地局1は、交差点200付近の交通状況等を示す情報を各移動体端末装置3から収集し、その情報や、その情報に基づいて作成した送信(配信)用の交通情報等の各種の情報を各移動体端末装置3に送信する装置である。なお、前記送信用の交通情報には、例えば、警告(注意)等も含まれる。
【0026】
図2に示すように、交差点基地局1は、UHF帯アンテナ11と、アンテナ共用器12と、移動体端末装置3に対し、UHF帯の信号を送信する送信機13と、移動体端末装置3から送信されたUHF帯の信号を受信する受信機14と、制御部(制御手段)15と、記憶部(記憶手段)16とを備えている。なお、前記UHF帯アンテナ11、アンテナ共用器12、送信機13および受信機14により、通信装置(基地局側通信手段)10が構成される。この通信装置10は、本実施形態では、1つ設置されているが、これに限定されず、例えば、2以上設置されていてもよい。
【0027】
図1に示すように、この交差点基地局1からのUHF帯での送信可能な領域である通信領域300は、交差点200付近をカバーしている。
制御部15は、例えば、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロコンピューター等で構成され、交差点基地局1における各種の演算処理、判断や、交差点基地局1全体の制御等を行う。なお、制御部15により、位置算出手段および交通情報作成手段の主機能が達成される。また、記憶部16には、例えば、プログラムや、各種の情報が記憶される。
なお、交差点基地局1は、後述する交通情報を報知する報知手段を有していてもよい。この報知手段としては、例えば、音声を生成する音声生成装置、アラーム、発光体、電子画像を表示する表示装置等が挙げられ、これらのうちの2つ以上を用いてもよい。また、報知手段は、例えば、交差点200の近傍等に設置される。
【0028】
図3に示すように、ゲート局2は、LF帯アンテナ21と、移動体端末装置3に対し、LF帯の信号を送信する送信機22と、制御部(制御手段)23とを有している。なお、前記LF帯アンテナ21および送信機22により、送信手段が構成される。
制御部23は、例えば、CPU、ROM、RAM等を有するマイクロコンピューター等で構成され、送信機22の作動を制御する。
【0029】
図1に示すように、各ゲート局2は、それぞれ、交差点200から所定距離離間した位置に設置されており、交差点200を形成する道路の交差点200から所定距離離間した地点Gを通過する移動体5(移動体端末装置3)に対し、LF帯の信号を送信し得るように構成されている。
地点Gと交差点200との間の離間距離Lは、特に限定されないが、例えば、速度40km/h制限の場所においては40〜80m程度の範囲内に設定されることが好ましい。
【0030】
このゲート局2の送信機22は、常時、作動し、LF帯で情報の送信を行っている。この情報には、ある特定された地点Gの位置情報が含まれている。
一方、移動体端末装置3の受信機32は、常時、作動し、待受け受信の状態になっている(図6のステップS201、ステップS202で「No」)。
したがって、移動体5が地点Gを通過する際、その移動体5(移動体端末装置3)が地点Gに到達するとその移動体5とともに移動する移動体端末装置3は、ゲート局2からLF帯で送信された情報(信号)を受信する(図6のステップS202で「Yes」)。
なお、移動体5が地点Gに到達したことを検出するセンサー(図示せず)を設け、このセンサーにより移動体5が地点Gに到達したことを検出した際に、ゲート局2の送信機22が作動するように構成してもよい。これにより、ゲート局2の消費電力を低減することができる。
【0031】
移動体端末装置3は、前記ゲート局2から送信された情報(信号)を受信すると、その信号の受信をトリガーとして、通信回路30に電源を投入し、その通信回路30を作動させる(図6のステップS203)。なお、通信回路30は、前記ゲート局2から送信された情報を受信するまでは、電源が投入されておらず、停止している。これにより、移動体端末装置3の消費電力を低減することができ、内蔵(搭載)されているバッテリー44を長持ちさせることができる。
【0032】
ここで、LF帯は、30〜300kHzの周波数帯であり、また、UHF帯は、0.3〜3GHzの周波数帯である。なお、LF帯での通信を「LF通信」とも言い、また、UHF帯での通信を「UHF通信」とも言う。
また、LF通信の特徴は、アンテナなど装置の構成により通信が可能な距離(通信可能距離)を柔軟に設定することができ、また、待受け受信の際の消費電力を低くすることができる。なお、LF通信での通信可能距離は、1〜10m程度の範囲内で適宜設定することができる。
これにより、移動体端末装置3では、LF帯の受信機32を待受けで常時作動させていても、それによる消費電力は少ないので、バッテリー44を長持ちさせることができる。
一方、UHF通信の特徴は、通信可能距離がLF通信に比べて長く、例えば、送信出力1mWで、通信可能距離は、5〜100m程度の範囲を通信可能とすることができる。
【0033】
また、移動体端末装置3は、前記ゲート局2から送信された情報を受信すると、その情報に含まれる地点Gの位置情報と、移動体端末装置3を設置(または所持)している移動体5の種類を含む移動体端末装置3のID情報と、送信出力レベルに係る情報を、UHF通信により、交差点基地局1に送信する(図6のステップS205)。
この場合、移動体端末装置3のUHF通信における送信出力の大きさを、前記移動体5の移動速度の大きさに対応させる。また、送信出力の大きさを示す情報(送信出力レベルに係る情報)を信号に含ませて送信する。これにより、交差点基地局1では、受信した信号に含まれる前記送信出力レベルに係る情報と、移動体端末装置3から送信された信号の受信電界レベルの検出値とに基づき、移動体5の位置を時々刻々と把握することができる。これによって、交差点に近づいてくる移動体5の危険の度合いを判断し、交差点基地局1から送信する情報量を最小限にすることができる。
【0034】
具体的には、図6のステップS205に先立って、まず、移動体端末装置3は、速度検出部43により、移動体5(移動体端末装置3)の移動速度を検出する(図6のステップS204)。そして、制御部38は、その速度検出部43により検出された移動速度に基づいて、送信アンプ36を調整し、UHF通信の送信出力を調整し、前記送信を行う(図6のステップS205)。この場合、移動速度が速いほど、送信出力を高くする。例えば、送信出力と移動速度とに比例関係をもたせる。なお、送信アンプ36および制御部38により、送信出力調整手段が構成される。
【0035】
なお、前記移動体端末装置3から交差点基地局1への送信は、通信回路30の電源を切られるまで、間欠的に行われる。
また、この移動体端末装置3から交差点基地局1への送信における搬送波の周波数をf1とし、後述する交差点基地局1から移動体端末装置3への送信における搬送波の周波数を前記f1と異なるf2とする。ことにより、両者の混信を防止することができる。
【0036】
交差点基地局1の受信機14は、常時、作動し、受信待ちの状態になっており(図5のステップS101、ステップS102で「No」)、交差点基地局1は、前記移動体端末装置3からUHF帯で送信された情報を受信する(図5のステップS102で「Yes」)。また、交差点基地局1では、受信した信号の受信電界レベルを検出し、制御部15は、その検出結果と、受信した信号に含まれる移動体端末装置3の送信出力レベルに係る情報とに基づいて、移動体5の位置を求める。なお、受信電界レベルは、例えば、RSSI機能等により測定することができる。
そして、交差点基地局1は、地点Gの位置情報、移動体端末装置3のID情報、移動体5の移動速度に基づいて、交差点200付近の交通状況を分析(確認)し、その交差点200付近の交通情報を作成する(図5のステップS103)。
【0037】
図1に示す状況では、交差点基地局1は、自動車である移動体5aが、図1中の右上の道路の地点Gから交差点200に向って移動していることと、自転車である移動体5bが、図1中の右下の道路の地点Gから交差点200に向って移動していることと、移動体5aおよび5bのそれぞれの位置とを把握する。
次に、交差点基地局1は、移動体5(移動体端末装置3)に対し、UHF通信により、交通情報を送信する(図5のステップS104)。
【0038】
この交通情報としては、例えば、前記交通状況の分析結果を示す情報、その交通状況の分析結果に基づいて作成した2次情報(例えば、警告(注意)等)が挙げられる。
すなわち、図1に示す状況では、移動体5a(移動体端末装置3a)に対して送信する交通情報としては、例えば、移動体5bが、図1中の右下の道路の地点Gから交差点200に向って移動していることを示す情報や、警告を示す情報が挙げられる。また、移動体端末装置3aとナビゲーション装置とを接続することにより、交差点200付近の交通情報を画像として表示することも可能である。
また、移動体5b(移動体端末装置3b)に対して送信する交通情報としては、例えば、移動体5aが、図1中の右上の道路の地点Gから交差点200に向って移動していることを示す情報や、警告を示す情報が挙げられる。
【0039】
また、交差点基地局1の制御部15は、前記交差点200付近の交通状況の分析結果に基づいて、移動体5aと移動体5bとの衝突が生じる確率等を考慮し、移動体端末装置3a、3bに対し、交差点200付近の交通情報のうち、必要なもののみを送信するよう構成されていてもよい。例えば、移動体5bの移動速度が比較的遅い場合は、移動体5aと移動体5bとが衝突する確率は低いので、その移動体5bの交通情報は、移動体端末装置3aに対して送信しなくてもよい。これにより、移動体5a側では、無駄な交通情報がなくなり、注意が散漫になることを防止することができ、他の移動体5との衝突を確実に回避することができる。
なお、前記交差点基地局1から移動体端末装置3への送信は、常時行われる。
【0040】
移動体端末装置3は、前記交差点基地局1からUHF帯で送信された交通情報を受信する(図6のステップS207)。そして、移動体端末装置3では、報知部42により、交差点200付近の交通状況や、警告を報知する(図6のステップS208)。これにより、移動体5同士の衝突を防止することができる。
具体的には、報知部42が音声を生成する音声生成部の場合は、交差点200付近の交通状況や、警告を音声で知らせる。
【0041】
また、報知部42がアラームの場合は、そのアラームを鳴らす。
また、報知部42が振動を発生する振動発生部の場合は、振動を発生させる。
また、報知部42が発光体の場合は、その発光体を発光する。
また、報知部42が電子画像を表示する表示部の場合は、その表示部に、交差点200付近の交通状況を画像や文字で表示する。また、警告を画像や文字で表示する。
なお、移動体端末装置3には、その移動体端末装置3を設置(または所持)している移動体5自身の交通情報も送信されるが、移動体端末装置3の制御部38は、その移動体5についての交通情報は、受信後、ID情報で確認し、利用しない。
【0042】
移動体5が交差点200を通過し、その移動体5に設置(または所持)されている移動体端末装置3の受信機37が交差点基地局1から送信される信号を受信しなくなると(図6のステップS206で「No」、ステップS209で「No」)、移動体端末装置3は、通信回路30の電源を切り、通信回路30を停止させる(図6のステップS210)。これにより、移動体端末装置3の消費電力を低減することができ、内蔵(搭載)されているバッテリー44を長持ちさせることができる。
【0043】
次に、交差点監視システム100において、移動体端末装置3のUHF通信における送信出力の大きさを移動体5の移動速度の大きさに対応させる場合の他の構成例を説明する。
図7に示すように、自動車である移動体5aと、人である移動体5cとを想定する。また、移動体5aには、移動体端末装置3aが設置され、移動体5cは、移動体端末装置3cを所持する。以下では、移動体5a、5cを総称する場合には、「移動体5」と言い、区別して言う場合には、「移動体5a」、「移動体5c」と言う。また、移動体端末装置3a、3cを総称する場合には、「移動体端末装置3」と言い、区別して言う場合には、「移動体端末装置3a」、「移動体端末装置3c」と言う。
【0044】
まず、移動体5cの移動速度は、移動体5aの移動速度に比べて非常に遅いので、交差点基地局1から移動体端末装置3aに対し、移動体5cが地点Gに到達したとき、すぐに、その移動体5cの交通情報を送信する必要はない。すなわち、図7中、二点鎖線で示すように、移動体5cがさらに交差点200側に移動したときに、その移動体5cの交通情報を送信すれば、移動体5aは、移動体5cとの衝突を回避することができる。
【0045】
前述したように、移動体5cから交差点基地局1に送信する際の送信出力は、移動体5cの移動速度に応じて設定されるので、非常に弱い出力となる。このため、移動体5cが地点Gに到達したときに移動体端末装置3cから送信された信号を交差点基地局1で受信したときの受信電界レベル(信号のパワー)は、非常に小さい。そして、移動体5cが交差点200側に移動するにしたがって、移動体5cと交差点基地局1との間の距離が小さくなるので、交差点基地局1で受信する信号の受信電界レベルは、徐々に増大する。一方、移動体5cが交差点200に接近するにしたがって移動体5aと移動体5cとの衝突の可能性は増大する。そこで、交差点基地局1で受信する信号の受信電界レベルの閾値を設定しておき、交差点基地局1で受信する信号の受信電界レベルがその閾値に到達したとき、交差点基地局1から移動体端末装置3aに対し、移動体5cの交通情報を送信するよう構成する。
これによれば、移動体端末装置3cの送信出力が低いので、移動体端末装置3cの消費電力を低減することができる。
また、移動体5aでは、衝突の確率の低い無駄な交通情報がなくなり、注意が散漫になることを防止することができ、他の移動体5との衝突を確実に回避することができる。
【0046】
以上説明したように、この交差点監視システム100によれば、交差点200付近での移動体5同士の衝突を防止することができる。
また、電子カメラ等で交差200点付近を撮像することなく、簡易な構成で、移動体端末装置3に対して、交差点200付近の交通情報を配信することができる。
また、LF帯での通信では待受け受信の際の消費電力は低く、移動体端末装置3では、ゲート局2から送信されたLF帯の信号の受信をトリガーとして、通信回路30を作動させるので、移動体端末装置3の消費電力を低減することができ、内蔵(搭載)されるバッテリーを長持ちさせることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、移動体端末装置3の電源として、移動体5側の発電機を利用し得るようにしてもよい。
また、本実施形態では、LF帯よりも高い周波数帯としては、UHF帯を用いるが、LF帯よりも高い周波数帯であれば、特に限定されず、UHF帯の他、例えば、VHF帯、SHF帯等が挙げられる。
【0048】
<第2実施形態>
図8は、本発明の交差点監視システムの第2実施形態を示す図、図9は、図8に示す交差点監視システムの交差点基地局を示すブロック図である。である。なお、以下では、図8の左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0049】
図8および図9に示すように、第2実施形態の交差点監視システム100では、交差点基地局1は、さらに、交差点200の近傍に設置され、制御部15に接続された通信装置10aを有している。この通信装置10aは、UHF帯アンテナ11aと、アンテナ共用器12aと、移動体端末装置3に対し、UHF帯の信号を送信する送信機13aと、移動体端末装置3から送信されたUHF帯の信号を受信する受信機14aとを有している。
【0050】
通信装置10aは、交差点200を介して、通信装置10と対向するように配置されている。
また、通信装置10のUHF帯アンテナ11および通信装置10aのUHF帯アンテナ11aは、それぞれ、指向性を有しており、通信装置10および10aからは、それぞれ、特定の方向にのみ送信することができるようになっている。
すなわち、通信装置10からは、領域410と、領域440と、領域410および440とのいずれかに切り替えて送信でき、また、通信装置10aからは、領域420と、領域430と、領域420および430とのいずれかに切り替えて送信できる。なお、UHF帯アンテナ11および11aにより、方向制限手段の主要部が構成される。
【0051】
図8に示す状況では、交差点200に向って移動体5aおよび5bが移動しているが、移動体5aから見ると、領域420は、視覚により安全を確認することができるので、移動体5aの交通情報は、領域430および440に配信すればよい。また、移動体5bから見ると、領域430は、視覚により安全を確認することができるので、移動体5bの交通情報は、領域410および420に配信すればよい。
そこで、本実施形態の交差点監視システム100では、移動体5aの交通情報は、通信装置10aにより、領域430に配信し、通信装置10により、領域440に配信する。
【0052】
また、移動体5bの交通情報は、通信装置10により、領域410に配信し、通信装置10aにより、領域420に配信する。
これにより、交差点200付近において、無駄な電波発生を抑制することができ、交差点基地局1の消費電力を低減することができ、混信も防止することができる。
この交差点監視システム100によれば、前述した第1実施形態と同様の効果も得られる。
【0053】
以上、本発明の交差点監視システムおよび移動体端末装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、前記実施形態では、交差点は、四方へ道路が延びる四叉路であるが、本発明では、これに限らず、この他、例えば、丁字路、Y字路等の三叉路や、五方以上へ道路が延びる交差点であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…交差点基地局 11、11a…UHF帯アンテナ 12、12a…アンテナ共用器 13、13a…送信機 14、14a…受信機 15…制御部 16…記憶部 2…ゲート局 21…LF帯アンテナ 22…送信機 23…制御部 3、3a、3b、3c…移動体端末装置 30…通信回路 31…LF帯アンテナ 32…受信機 33…UHF帯アンテナ 34…アンテナ共用器 35…送信機 36…送信アンプ 37…受信機 38…制御部 39…記憶部 41…操作部 42…報知部 43…速度検出部 44…バッテリー 45…バッテリーモニター 5、5a、5b、5c…移動体 10、10a…通信装置 100…交差点監視システム 200…交差点 300…通信領域 410〜440…領域 S101〜S104…ステップ S201〜S210…ステップ G…地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点または該交差点の近傍に設置された交差点基地局と、
前記交差点を形成する道路の該交差点から所定距離離間した地点を通過する移動体に対し、LF帯の信号を送信する送信手段を有するゲート局と、
前記移動体とともに移動する移動体端末装置とを備え、
前記移動体端末装置は、前記ゲート局から送信されたLF帯の信号を受信する受信手段と、
前記交差点基地局に対し、LF帯よりも高い周波数帯の信号を送受信する端末装置側通信手段とを有し、
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置に対し、LF帯よりも高い周波数帯の信号を送受信する基地局側通信手段を有し、
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置に対し、前記交差点付近の交通情報を送信し、
前記移動体端末装置は、前記ゲート局から送信されたLF帯の信号を受信すると、前記端末装置側通信手段を作動させ、前記交差点基地局から送信された前記交差点付近の交通情報を受信するよう構成されていることを特徴とする交差点監視システム。
【請求項2】
前記ゲート局は、前記移動体が前記交差点から所定距離離間した地点を通過する際、前記移動体に対し、その地点の位置情報を送信し、
前記移動体端末装置は、前記位置情報を受信すると、前記交差点基地局に対し、該位置情報を送信するよう構成されている請求項1に記載の交差点監視システム。
【請求項3】
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置から送信された前記位置情報に基づいて、前記移動体端末装置とともに移動する前記移動体の前記交通情報を作成する交通情報作成手段を有する請求項2に記載の交差点監視システム。
【請求項4】
前記移動体端末装置は、該移動端末装置とともに移動する前記移動体の移動速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された移動速度に応じて、前記端末装置側通信手段の送信出力を調整する送信出力調整手段とを有する請求項1ないし3のいずれかに記載の交差点監視システム。
【請求項5】
前記移動体端末装置から前記交差点基地局に送信される信号には、送信出力レベルに係る情報が含まれており、
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置から送信された信号に含まれる前記送信出力レベルに係る情報と、前記移動体端末装置から送信された信号の受信電界レベルとに基づいて、移動端末装置とともに移動する前記移動体の位置を求める位置算出手段を有する請求項4に記載の交差点監視システム。
【請求項6】
前記交差点基地局は、前記位置算出手段により求められた前記移動体の位置に基づいて、前記移動体端末装置とともに移動する前記移動体の前記交通情報を作成する交通情報作成手段を有する請求項5に記載の交差点監視システム。
【請求項7】
前記移動体端末装置は、該移動端末装置とともに移動する前記移動体の移動速度を検出する速度検出手段と、
前記速度検出手段により検出された移動速度に応じて、前記端末装置側通信手段の送信出力を調整する送信出力調整手段とを有し、
前記移動体端末装置から前記交差点基地局に送信される信号には、送信出力レベルに係る情報が含まれており、
前記交差点基地局は、前記移動体端末装置から送信された信号に含まれる前記送信出力レベルに係る情報と、前記移動体端末装置から送信された信号の受信電界レベルとに基づいて、前記移動端末装置とともに移動する前記移動体の位置を求める位置算出手段と、
前記移動体端末装置から送信された前記位置情報と、前記位置算出手段により求められた前記移動体の位置とに基づいて、前記移動体端末装置とともに移動する前記移動体の前記交通情報を作成する交通情報作成手段とを有する請求項2に記載の交差点監視システム。
【請求項8】
前記交通情報には、警告が含まれる請求項1ないし7のいずれかに記載の交差点監視システム。
【請求項9】
前記移動体端末装置は、該移動体端末装置に電力を供給するバッテリーを有する請求項1ないし8のいずれかに記載の交差点監視システム。
【請求項10】
前記基地局側通信手段は、前記移動体端末装置に対して送信する信号の方向を制限する方向制限手段を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の交差点監視システム。
【請求項11】
道路を移動する移動体に設置または所持されるものであり、
LF帯の信号を受信する受信手段と、
前記受信手段によりLF帯の信号を受信すると作動し、LF帯よりも高い周波数帯の信号を送受信する通信手段とを備え、
前記通信手段により、通信相手側から送信された交差点付近の交通情報を受信するよう構成されていることを特徴とする移動体端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−248598(P2011−248598A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120615(P2010−120615)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】