説明

交戦訓練システム

【課題】人員が装着するハーネス装置と火器との間の通信を、柔軟に着脱可能・交換可能としながらも、確実で安定した通信を行なうことができる交戦訓練システムを提供する。
【解決手段】訓練者が装着するためのハーネス装置2とレーザ照射を行なう火器3とを有する交戦訓練システムであって、ハーネス装置に設けられ、訓練者に関する情報を取得する情報取得部12と、ハーネス装置に接続される導体16と、火器に設けられレーザ照射のタイミングを与えるトリガ部22と、火器に設けられ導体とトリガ部との電気的接触を検出するとこの電気的接触により発生した導電路を用いてハーネス装置へ情報の送信を要求して情報を受信する制御部21をもつ交戦訓練システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人員が装着するハーネス装置とレーザ照射を行なう火器を有する交戦訓練システムに関し、特に、ハーネス装置と火器との間で行なわれる通信に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ照射を行なうレーザ銃と、射撃結果を知らせる制御装置をもつ交戦訓練システムが知られている。このような交戦訓練システムでは、訓練者が所有するレーザ銃と制御装置との間において、射撃情報、すなわち、どの訓練者からどの訓練者へどの銃でどの位置から射撃が行なわれたか等の情報が送受信される。
【0003】
特許文献1は、レーザ照射を行なうレーザ銃と、射撃結果を知らせる制御装置との間が通信のために接続されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−70011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、火器と制御装置である人員のハーネス装置との間を、例えば、単に固定的な有線で接続すると、実際の火器(銃)とは異なってしまうので、違和感を生じてしまう、また、一つの火器が一人の人員の専用となってしまい柔軟性がないという不具合がある。一方、無線で接続した場合には、複数の人員が近い位置(通信エリア内)に存在すると人員と火器の関連付けを誤るおそれがある。
【0006】
本発明は、人員が装着するハーネス装置と火器との間の通信を、柔軟に着脱可能・交換可能としながらも、確実で安定した通信を行なうことができる交戦訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決する一実施形態は、
訓練者が装着するためのハーネス装置(2)とレーザ照射を行なう火器(3)とを有する交戦訓練システムであって、
前記ハーネス装置に設けられ、前記訓練者に関する情報を取得する情報取得部(12)と、
前記ハーネス装置に接続される導体(16)と、
前記火器に設けられ、レーザ照射のタイミングを与えるトリガ部(22)と、
前記火器に設けられ、前記導体と前記トリガ部との電気的接触を検出すると、この電気的接触により発生した導電路を用いて前記ハーネス装置へ前記情報の送信を要求して前記情報を受信する制御部(21)と、
を具備することを特徴とする交戦訓練システムである。
【発明の効果】
【0008】
ハーネス装置に接続される導体であるグローブが、火器のトリガ部に接触することにより生じた導線路を介して、ハーネス装置と火器との間において、訓練者に関する情報の交換を確実に行なう。これにより、有線の導電路を用いて、確実な通信が可能となると共に、複数の訓練者の間で、火器の所有を交換することも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る交戦訓練システムの概要を説明する説明図。
【図2】当該交戦訓練システムのハーネス装置と火器の構成を示すブロック図。
【図3】当該交戦訓練システムの動作の一例を示すフローチャート。
【図4】交戦訓練システムの火器とグローブの関係の一例を示す概観図。
【図5】交戦訓練システムの火器とグローブの関係の一例を示す概観図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る交戦訓練システムの概要を説明する説明図、図2は、当該交戦訓練システムのハーネス装置と火器の構成を示すブロック図である。本発明の一実施形態に係る交戦訓練システムは、図1および図2に示すように、全体の交戦訓練を複数のハーネス装置2と無線通信することにより管理しているホスト局1と、複数の人員(訓練者)がそれぞれ装着するハーネス装置2と、複数の人員が装備するレーザ照射を行なう火器3を有している。
【0011】
ここで、ハーネス装置2は、全体の動作を制御する制御部10と、制御部10に接続されておりホスト局1と通信を行なって発射情報や被弾情報を送信し損耗情報等を受信する通信部11と、制御部10に接続されておりハーネス装置の現在位置を検出するGPS部12と、制御部10に接続されており損耗状態等を人員(訓練者)に知らせるブザーやスピーカ等の発音部13と、同じく制御部10に接続されており損耗状態等を人員(訓練者)に知らせるLEDや液晶表示器等の発光部14と、制御部10に接続されており上述した火器3から照射されるレーザ光を検知するレーザセンサ15と、制御部10に配線されて接続している導電体であるグローブ16を有している。
【0012】
また、火器3は、全体の動作を制御する制御部21と、実弾を模擬したレーザを照射するレーザ照射部23と、レーザ照射のタイミングを与えるトリガスイッチ22を有している。トリガスイッチ22は、操作者が指でトリガスイッチ22を引くことによりスイッチ信号を制御部21に供給する。さらに、トリガスイッチ22が導電性をもっており、同じく導電性をもっている例えばグローブ16等が接触することで形成される導電路を介して、制御部21に導電信号を供給する。
【0013】
(動作)
このような構成をもつ交戦訓練システムの動作の一例を、図3のフローチャートを用いて以下に詳細に説明する。交戦訓練システムの訓練状況は、ホスト局1が、発射者であるハーネス装置2からの発射情報と被弾者であるハーネス装置2からの被弾情報とを無線通信により受信し、発射情報と被弾情報を管理することで訓練状況を認識することができる。また、人員(訓練者)は、自身の射撃状況、損耗状況について、ハーネス装置2の発音部13、発光部(表示部)14により知ることができる。
【0014】
火器3−4において、図4および図5に示される導電性をもったグローブ16の特に指先部16−1がトリガスイッチ22に接触することで、ハーネス装置2−4の制御部10から印加された導電信号がトリガスイッチ22を介して制御部21に供給される。制御部21は、この導電信号を検出すると(ステップS11)、グローブ16とトリガスイッチ22が接触することで形成された導電路を介して、情報要求信号を火器3−4の識別情報を伴ってハーネス装置2−4の制御部10に供給する(ステップS12)。この情報供給信号には、火器の識別信号が含まれる。ハーネス装置2−4の制御部10は、火器3−4の識別情報により火器Aを登録し(ステップS13)、また、情報要求信号に応じて、ハーネス装置2−4のGPS部12が取得した位置情報と、ハーネス装置2−4を装着する人員Aの人員個別番号を、グローブ16とトリガスイッチ22が接触することで形成された導電路を介して火器3−4の制御部21に供給する(ステップS14)。
【0015】
火器3−4の制御部21は、供給された位置情報と人員Aの人員個別番号を取得して記憶部に格納する(ステップS15)。その後、操作者である人員Aによりトリガスイッチ22が引かれるとスイッチ信号が制御部21に供給され(ステップS16)、制御部21はこのタイミングでレーザ照射部23からレーザを照射する(ステップS17)。このとき、レーザにはレーザ情報が含まれており、一例として、『発射者情報(ハーネス装置から供給された人員個別番号)、機材/弾種情報(火器固有の情報)、発射位置情報(ハーネス装置から供給された位置情報)』が挙げられる。これと同時に、制御部21は、発射通知データをハーネス装置2−4の制御部10にグローブ16とトリガスイッチ22が接触することで形成された導電路を介して供給する(ステップS18)。発射通知データには、下記の識別番号、機材/弾種情報が含まれる。
【0016】
ハーネス装置2−4の制御部10は、通信部11を用いて、ホスト局1に発射情報を送信する(ステップS19)。発射情報の一例は、『弾種、残弾数、発射者情報』である。また、レーザが照射された人員Bのハーネス装置2−6は、レーザセンサ15の検出結果とレーザに含まれる発射情報に基づき、命中有無や損耗部位、区分を判定して記憶し、被弾情報として、通信部11を用いて、ホスト局1に送信する(ステップS20)。ここで、被弾情報の一例は、『被弾者情報、損耗区分、損耗部位、発射者情報、加害機材/弾種情報、発射位置情報』等である。ホスト局1は、これらハーネス装置2−4からの発射情報、ハーネス装置2−6からの被弾情報に基づいて、交戦訓練システムの訓練状況を認識して記憶する。
【0017】
さらに、この交戦訓練システムにおいて、人員Aの損耗状態が死亡となり、交戦訓練の継続が不能となると(ステップS21)、人員Aが使用していた火器Aを人員Bが取得して使用することが可能となる(ステップS22)。すなわち、火器Aは人員Aから独立して使用可能に存在するものであり、人員Aの損耗状態が「訓練続行不能」となった後に、人員Bが自身のグローブ16により火器Aのトリガスイッチ22に接触することで(ステップS23)、グローブ16とトリガスイッチ22が接触することで形成された導電路を介して、情報要求信号を火器3−4の識別情報を伴ってハーネス装置2−6の制御部10に供給する(ステップS24)。ハーネス装置2−6の制御部10は、火器3−4の識別情報により火器Aを新たに登録し(ステップS22)、また、ハーネス装置2−6のGPS部12が検出した位置情報と、ハーネス装置2−6を装着する人員Bの人員個別番号を、グローブ16とトリガスイッチ22が接触することで形成された導電路を介して火器3−4の制御部21に供給する(ステップS26)。
【0018】
火器3−4の制御部21は、供給された位置情報と人員Bの人員個別番号を取得して記憶部に格納する(ステップS27)。その後、操作者である人員Bによりトリガスイッチ22が引かれるとスイッチ信号が制御部21に供給され(ステップS28)、制御部21はこのタイミングでレーザ照射部23からレーザ情報を含むレーザを照射する(ステップS29)。これと同時に、制御部21は、発射通知データをハーネス装置2−6の制御部10にグローブ16とトリガスイッチ22が接触することで形成された導電路を介して供給する(ステップS30)。ハーネス装置2−6の制御部10は、通信部11を用いて、ホスト局1に発射情報を送信する(ステップS31)。ホスト局1は、これらハーネス装置2−6からの発射情報を認識して記憶する。
【0019】
このように、本発明の一実施形態である交戦訓練システムにおいては、人員Aの損耗状態が「訓令続行不能」となったの後、人員Bが火器Aに触れることで、火器Aの持ち主は人員Bとなり、火器Aを用いた交戦訓練を継続することができる。これにより、人員の損耗状態により火器が使用できなくなるような不具合を回避することができる。
【0020】
また、本発明の一実施形態である交戦訓練システムにおいては、ハーネス装置2と火器3の間を接触により生じた導電路とすることで、赤外線通信等の無線を利用した際のように他機器の影響を受けて通信の失敗が起きることもなく確実に情報を送受信することができる。
【0021】
なお、上述した実施形態において、ハーネス装置2の制御部10に接続される導体の一例としてグローブ16が挙げられたがこれに限定されるものではなく、同様の導電機能をもつものであれば同様の作用効果を得られるものである。また、グローブ16と火器3−4の接続箇所は、グローブ16の指先部16−1とトリガスイッチ22に限定されるものではなく、例えば、グローブ16全体と火器3−4の握り部分であってもよく、また、他の部分であってもよい。
【0022】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能であり、これらの記載により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0023】
1…ホスト局、2−1〜2−6…ハーネス装置、3−1〜3−6…火器、10…制御部、11…通信部、12…GPS部、13…発音部、14…発光部、15…レーザセンサ、16…グローブ、21…制御部、22…トリガスイッチ、23…レーザ照射部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練者が装着するためのハーネス装置とレーザ照射を行なう火器とを有する交戦訓練システムであって、
前記ハーネス装置に設けられ、前記訓練者に関する情報を取得する情報取得部と、
前記ハーネス装置に接続される導体と、
前記火器に設けられ、レーザ照射のタイミングを与えるトリガ部と、
前記火器に設けられ、前記導体と前記トリガ部との電気的接触を検出すると、この電気的接触により発生した導電路を用いて前記ハーネス装置へ前記情報の送信を要求して前記情報を受信する制御部と、
を具備することを特徴とする交戦訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−2188(P2011−2188A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146727(P2009−146727)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】