説明

交換バイアス(EXCHANGE−BIAS)に基づく多状態(MULTI−STATE)磁気メモリおよび論理装置、および磁気的に安定な磁気記憶

【課題】
磁気結合された強磁性体と反強磁性体との結合および交換バイアスを使用して2進および多状態の磁気メモリ装置を提供する磁気材料および方法。
【解決手段】
本出願では、強磁性層とこれに隣接する反強磁性層との磁気結合によって発生する磁気交換バイアスに基づいて高密度の磁気記憶を実現するための技術、材料、装置を開示する。この磁気結合を使用すると、2進の磁気メモリ装置を安定させ、多状態の磁気メモリ装置を構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、磁性材料および磁気記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2004年7月13日に出願され、その開示は参照により本出願の明細書の一部として組み込まれている、米国仮出願第60/587,789号「MAGNETIC STORAGE MEDIA BASED ON MAGNETIC PROXIMITY EFFECT」の優先権を主張するものである。
【0003】
連邦政府の補助金について
本発明は、FA9550−04−1−0160およびDE−FG03−−87ER−45332に基づく米国政府支援の一環として作成されたものである。米国政府は本発明における一定の権利を有する。
【0004】
磁性材料はデータの記憶に使用できる。磁気カード、テープ、ディスク、ハードドライブは、さまざまな磁性材料から作成された記憶装置の例である。商用の磁気記録媒体のほとんどにおいて、記録された各ビットは、記録媒体の2つの異なる磁性状態で表現される2つの論理状態、すなわち「0」と「1」をとる。たとえば、磁性材料内の磁区において2つの反対方向の磁化を使用して2進の状態を実現できる。このような材料では、記憶される情報の密度は磁区または情報を搬送する「ビット」の密度に一致する。したがって、こうした2進の磁気記録媒体では、磁区のサイズによって記憶密度が決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国仮出願第60/587,789号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Igor Roshschin et al.「Lateral length scales in exchange bias」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁気記憶の密度を向上するための1つの取り組みは、磁区のサイズまたはビット・サイズを縮小することである。これは、多くの技術を使用して実現できる。たとえば、富士通とその他の企業によって開発された磁区サイズの小さい高密度の記録用材料は、約100ギガビット/平方インチの記憶密度を実現している。しかし、磁気ビット・サイズが縮小することによって、磁気的に記憶された情報の熱的安定性と磁気的安定性が低下する場合がある。磁気媒体の不安定性は、温度の上昇、隣接するビットを操作する間に記録ヘッドから発生する浮遊磁場(stray fields)の存在、隣接するビットとの相互作用など、さまざまな要因によって発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願では、強磁性層(ferromagnetic layer)とこれに隣接する反強磁性層(antiferromagnetic layer)との磁気結合(magnetic coupling)によって発生する磁気交換バイアスに基づいて高密度の磁気記憶を実現するための技術、材料、装置を開示する。この磁気結合を使用すると、2進の磁気メモリ装置を安定させ、多状態の磁気メモリ装置を構成することができる。
【0009】
1つの実装では、2進の磁気メモリ媒体を安定させる方法について説明する。本方法は、互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備える磁気記憶材料を提供することによって、2進の磁気記憶媒体としての磁気ヒステリシス・ループを提供する。強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とは、磁気ヒステリシス・ループの中心をH=0から離してセットするように構成されることによって、2進の各状態を浮遊磁場に対して安定させる。
【0010】
別の実装では、互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備えており、反強磁性層のブロッキング温度(blocking temperature)を下回る動作温度でデータを記憶する磁気記憶材料を含む装置について説明する。このブロッキング温度は強磁性材料のキュリー(Curie)温度を下回る。この装置の1つの構成では、磁性材料が3つ以上の磁性状態をとるように構成される。この装置の別の構成では、強磁性層と反強磁性層は、材料の磁気ヒステリシス・ループをゼロ磁場(zero field)から離して装置の浮遊磁場より大きな磁場にオフセットするように選択される。
【0011】
前述の装置には、選択された磁区にデータが書き込まれるときに、この選択された磁区の温度を局所的に制御する温度制御メカニズムを含めてもよい。こうした温度制御メカニズムは、さまざまな構成が可能である。たとえば、書き込み実行中にレーザーからレーザー・ビームを選択された磁区に照射するレーザー、選択された磁区を加熱する誘導性の(conducting)走査型プローブ顕微鏡(SPM:scanning probe microcopy)チップ(tip)、各磁区の一部としての抵抗(オーム)加熱(resistive(ohmic) heating)メカニズム、選択された磁区に接触する抵抗(オーム)加熱素子(element)を追加してもよい。
【0012】
本出願では、磁気的に記録する方法についても説明する。互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備えており、反強磁性層のブロッキング温度(blocking temperature)を下回る動作温度でデータを記憶する磁気記憶材料が提供される。ブロッキング温度は強磁性材料のキュリー温度を下回る。局所的な加熱が実行されることによって、この材料内の選択された磁気ビットの温度が上昇し、ブロッキング温度を上回る。ブロッキング温度を上回る温度で、選択された磁気ビットに磁化プロセスが適用され、残留磁化が多状態記憶媒体のあらかじめ指定された残留磁化のセットから選択された値に設定され、ビットが書き込まれる。ここで、選択された磁気ビットの外部磁場(external magnetic field)が除去され、ゼロ磁場で、選択された磁気ビットの温度が低下してブロッキング温度を下回り、選択されたビットに残留磁化が記憶される。
【0013】
本出願では、磁気的に記録する別の方法についてさらに説明する。互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備えており、反強磁性層のブロッキング温度を下回る動作温度でデータを記憶する磁気記憶材料が提供される。このブロッキング温度は強磁性材料のキュリー温度を下回る。局所的な加熱が実行されることによって、この材料の選択された磁気ビットの温度が上昇し、ブロッキング温度を上回る。ブロッキング温度を上回る温度で、選択された磁気ビットに磁化プロセスが適用され、残留磁化が多状態記憶媒体のあらかじめ指定された残留磁化のセットの選択された値に設定され、ビットが書き込まれる。磁化プロセスの磁場が保持される間に、選択された磁気ビットの温度は低下してブロッキング温度を下回り、選択されたビットに残留磁化が記憶される。
【0014】
こうした実装およびその他の実装、その適用例および変形については、添付の図面、発明の実施の形態、請求項でさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】強磁性体と反強磁性体との結合による媒体の例を示す図である。
【図2】強磁性体と反強磁性体との結合による媒体を使用する磁気記憶装置の例を示す図である。
【図3】強磁性体と反強磁性体との結合による媒体のさまざまな測定値を示す図である。
【図4】強磁性体と反強磁性体との結合による媒体のさまざまな測定値を示す図である。
【図5】5mm×5mmのFeF(70nm)/Ni(70nm)/A1(4nm)サンプル上で、約500μmのレーザー・スポットによるサンプルのさまざまな部分における磁気光学Kerr効果(MOKE:Magneto−Optical Kerr Effect)を伴う容易軸(easy axis)に沿った磁気ヒステリシス・ループを示す図である。測定は、サンプルがM≒0の消磁された(demagnetized)状態からゼロ磁場で冷却された後に、FeFの遷移温度より低い温度で行われている。図5Aの背景の色は、局所的な交換バイアスの方向を表している。すなわち、赤は負、青は正である。
【図6】強磁性体のあらかじめ設定された残留磁化におけるゼロ磁場で冷却するときに反強磁性体内で凍結する磁区の構造を示す図である。
【図7】強磁性体と反強磁性体との結合による媒体のヒステリシス・ループの移動と変化を強磁性体による媒体と比較して示す図である。
【図8】2kOe磁場で冷却されたMgF/FeF/Niサンプルについて、Tより高い温度と低い温度での容易軸の磁気ヒステリシス曲線を示す図である。反強磁性体によって強磁性体に導入された単軸の異方性(uniaxial anisotropy)が示されている。
【図9】連続するAF(たとえばFeF)層上の強磁性層(たとえばFe)によって形成された磁気ドット・パターンを強磁性体のみの材料(Feのみ)と比較して示す図である。
【図10】Feのみのドット媒体とFe/FeFのドット媒体について測定された安定化データをさらに示す図である。
【図11】指定された磁場で冷却されたMgF/FeF/Ni/Alサンプルについて、容易軸の磁気ヒステリシス曲線を示す図である。残留磁化は冷却する磁場によって異なり、FeFのサンプルが冷却されてTを下回った後の値で固定される。
【図12】さまざまな残留磁化の状態からゼロ磁場冷却されたMgF/FeF/Ni/サンプルについて、T(T=10K)より低い温度で測定された容易軸の磁気ヒステリシス曲線を示す図である。FeFのTを上回る部分的な消磁によって設定された残留磁化は、サンプルが冷却されてTを下回った後も維持される。黒の曲線は、T(T=80K)より高い温度のヒステリシス曲線を示している。
【図13】多状態記憶媒体にデータを書き込むための2つの異なる書き込み方法を示す図である。
【図14】多状態記憶媒体にデータを書き込むための2つの異なる書き込み方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願で説明する磁性材料、記憶技術、および記憶装置は、磁気結合された2つの磁性層、すなわち強磁性層(FまたはFM)とこれに隣接する反強磁性層(AFまたはAFM)を使用しており、安定した2進の磁気記憶媒体および多状態の磁気記憶媒体を提供する。本明細書で説明する安定した2進の磁気記憶媒体は、読み出し/書き込みヘッドから生じる浮遊磁場、隣接する磁気ビット、およびその他の原因を含むさまざまな要因によって発生する磁気妨害に対する耐性があるので、媒体上で高密度の磁気ビットを実現するために使用できる。本明細書で説明する多状態磁気記憶媒体は、各磁気ビットの複数の状態を表す複数の残留磁化の値を提供することによって、各ビットに記憶される情報コンテンツが増大する。
【0017】
図1は、強磁性層と反強磁性層との結合による磁気媒体の例を示している。図示されているように、AF層(たとえばFeF)とF層(たとえばFe、Co、Niまたはその他のF金属または合金)は、基板MgF(110)上に構成される。この例では、AF層が直接基板上に付着している。他の実装では、AF層と基板の材料が大きく異なる場合に(たとえば格子(lattice)構造)、基板とAF層の間に1つまたは複数のシード層(seed layer)を構成してもよい。AF層は、AF材料であれば単結晶材料(単結晶)で構成しても多結晶材料で構成してもよい。多結晶材料の結晶粒サイズは、ビットを定義する各磁区のサイズより大きくなければならない。アルミニウム層などのオプションのキャッピング層(capping layer)は、磁気媒体を保護するためにF−AF層の最上部に構成でき、キャッピング層の材料の選択はF材料の選択によって変わる。キャッピング層などは、記録のプロセスには直接関与しない。データは、AF層のブロッキング温度より高い温度でF−AF結合媒体に特定の残留磁化の形で磁気的に書き込まれる。ここで、温度が低下してブロッキング温度を下回り、書き込まれた磁性状態(2進の状態または多状態の状態)がビットにインプリント(imprinted)され、読み出し/書き込みヘッドや隣接するビットを含めて、磁気メモリの標準的な操作を実行する間に存在する磁場には影響されない。さらに、AF層のブロッキング温度より低い温度で後続の読み出し操作が実行される。ブロッキング温度とは、これを下回ると2層F−AFシステムが交換バイアスを呈する温度である。交換バイアスは、通常は磁化曲線(ヒステリシス・ループ)の水平移動として観測され、システムの保磁力(coercive field)の強化を伴うのが一般的である。ブロッキング温度は、AFの遷移温度、すなわちニール(Neel)温度に等しいかそれより低温である。本出願のF−AF結合媒体は、F層のキュリー温度がAF層とAF層用に選択されたAF材料のブロッキング温度を上回るように、したがってブロッキング温度がこうした装置の動作温度の上限を上回るように設計できる(たとえば80℃以上)。このように、媒体の温度は通常ブロッキング温度を下回っており、媒体の中にデータを書き込むために媒体を加熱することによってブロッキング温度を上回る可能性がある。したがって、特にF−AFビットを使用した磁気装置には、磁気読み出し/書き込みヘッドと温度制御メカニズムが含まれる。
【0018】
図2は、安定な2進構成または多状態構成によるF−AF結合媒体を使用する磁気メモリ装置の例200を示している。媒体保持メカニズムは、結合されたF層とAF層を伴う記憶媒体201を保持するために提供される。例として、装置200がディスク・ドライブの場合は、媒体保持メカニズムにはディスクとディスクを回転させる電動式のスピンドルとを保持するカートリッジを含めてもよい。読み出し/書き込みヘッド210とヘッド210に接続するヘッド・アクチュエータを使用して、媒体201上でヘッド210を制御し、配置する。温度制御220は、F−AF媒体201の温度を制御するために提供される。温度制御220は、選択された磁気ビットに局所的に熱を供給することによって、その温度をブロッキング温度より高い温度まで上昇させる。加熱は選択されたビットのみに局所化され、隣接するビットの局所的な温度を大きく上昇させてブロッキング温度より上にすることはない。この設計では、新しいデータを書き込む場合に、媒体の各磁区またはビットを個別に加熱することができる。
【0019】
局所的な加熱は、さまざまな構成で実装できる。たとえば、温度制御220はレーザーを使用して媒体201の選択された磁気ビットに集束されたレーザー・ビームを照射して局所的に加熱してもよい。レーザー・ビームの集束は、固体浸レンズ(solid immersion lens)などの近接場光学(near−field optics)の使用によって実現できる。別の例では、電気抵抗(オーム)加熱を使用して、F−AF媒体内の個々のビット位置の加熱と温度を制御してもよい。抵抗加熱はF−AF媒体の一部として実装でき、各ビット位置に加熱電流を流すことによって各ビット自体を加熱できる。代わりの方法として、ビット領域、たとえばCMOSタイプのメモリにビットを書き込む場合のようなビット/ワード・ラインの共通部分に接触する独立した抵抗加熱素子を使用してもよい。さらに別の例では、誘導性の走査型プローブ顕微鏡(SPM)チップを使用して電流を選択した磁気ビットに流すことにより、局所的に加熱できる。特に、温度制御220は、読み出し/書き込みヘッド210の一部として統合できるので、唯一の位置決め(positioning)メカニズムを使用して局所的な加熱と磁気ヘッドの位置決めを制御できる。
【0020】
本出願で説明するF−AF材料を使用すると、可動部のないMRAMを構成することもできる。こうしたMRAMには、MRAMの各ビット位置で個別に温度を制御する温度制御が含まれる。
【0021】
以下の項では、まず交換バイアスに基づくF−AF結合媒体の材料の設計と特性について説明する。次に、2進のF−AF媒体の磁区の安定化および多状態F−AF媒体について説明する。
【0022】
強磁性体と反強磁性体との結合による媒体の特性
F層とAF層の磁気結合による交換バイアスは、F層とAF層の両方で磁気異方性が変化する原因となる。交換バイアスを説明するための1つの理論上のモデルは、水平長さスケール(lateral length scales)モデルである。2005年6月17日にhttp:/www.edpsciences.org/eplにオンライン出版されEurophysic Letters、Vol.71(2005年7月)に掲載を予定され、参照によってその全開示を本明細書に組み込まれているIgor Roshschin et al.「Lateral length scales in exchange bias」を参照されたい。他にも説明されている可能性がある。交換バイアスの局所的な型(regime)を説明する試験結果は、本明細書で単に安定化技術および多状態メモリ技術の背後にある交換バイアスに関する理解を助けるために使用されており、本出願で説明するさまざまな実装を限定するものと解釈してはならない。
【0023】
強磁性体と反強磁性体とが近接する場合は、水平長さスケール(個々の磁区のサイズなど)は交換バイアスを非常に大きく左右する可能性がある。FeFとNi、Co、Feのいずれかとによる二重層(Bilayers)は、SQUIDと空間的に分解されたMOKEを使用して研究されている。反強磁性の領域が強磁性の領域より大きい場合またはそれと同等の場合は、局所的で平均化されていない交換バイアスが観測される。この結果、異常で調整可能な磁気ヒステリシス曲線が発生する。
【0024】
2つの異なる材料が接触する場合、1つの材料がもう1つの材料の特性を変更する近接効果(proximity effect)がたびたび観測される。電子波動関数(electron wave functions)の範囲は有限であることから、近接効果は通常は界面(interface)全体の秩序パラメータ(order parameter)の空間的変動として説明される。たとえば、超伝導の標準的な二重層で発生する近接効果は、コヒーレンス長(coherence length)と呼ばれる長さスケールによって標準的な材料にもたらされる超伝導秩序パラメータの減衰によって特徴付けられる。おもしろいことに、インターフェイスの平行平面における物理的な数量の変化に固有の長さスケール間の相関が近接効果において役割を果たすことは今まで主張されていない。
【0025】
界面の両側の水平固有の長さスケール間の関係は、交換バイアスにとって重要である。交換バイアス(EB)は、互いに密に接触する強磁性(F)と反強磁性(AF)の間の近接効果である。通常、EBは界面での交換結合によってAFからFにもたらされる追加の単方向の異方性として説明される。このことによって、AF秩序化(Neel)温度Tより下で磁場軸に沿って移動した唯一の磁気ヒステリシス・ループが得られる。この移動の大きさは、交換バイアス磁場(exchange bias field)、Hとして定義され、正または負である。FによるAFの特性への影響は、AFによるFへの影響とは異なり、わかりにくく、測定がむずかしい。FとAFの両方が磁区を構成でき、これがF内の磁化の空間的変動と界面の平行平面内でAF内のスタガード磁化(staggered magnetization)をもたらす。FとAFとの相互の影響により、界面スピン構成(interfacial spin configuration)がバルクAFおよびFのそれから大きく外れる可能性がある。この開示において、交換バイアス・システムのAF領域は同じ単方向の異方性を引き起こす領域を表す。
【0026】
AF領域がF領域より大きい場合またはそれと同等の場合は、局所的で平均化されていない交換バイアスが観測される。こうしたサンプルは、同じ大きさであるが符号は逆のHを伴う2つのサブシステムに磁気的に分割できる。この状態は、部分消磁されたサンプルのゼロ磁場冷却(zero−field cooling)または適切に選択された一定の印加磁場(constant applied magnetic field)内のサンプルの冷却によって実現される。いずれの場合も、2つの磁気サブシステムは互いに独立して動作し、EBの平均化は実行されない。したがって、これ自体は明らかにダブル・ヒステリシス・ループ(double hysteresis loop)である。さらに、消磁のプロセスでF内に磁区を作成すること、あるいは磁場冷却手順を変更することによって、EBの局所的な符号を操作できる。こうした結果は、異機種環境の磁気構造と不均質な秩序パラメータによる近接効果という新しい物理学を示している。
【0027】
通常、厚さ38〜100nmのFeF層が300℃で(110)MgF基板上に成長し、続いて厚さ4〜70nmの強磁性層(Co、Fe、またはNi)が150℃で成長し、磁気層の酸化を防止するために3〜4nmのAl層でインシトゥーコーティングする。FeF反強磁性層(T=78.4K)はエピタキシャル成長し(grows epitaxially)、X線の回折によって指定される(110)MgF基板上(110)の方向によりが戻る(untwinned)。バルク構造に基づいて、(110)FeFの理想的なサーフェスには面内の容易軸の[001]方向に向いた補正済みのスピン(compensated spins)があることが想定される。X線回折の測定値は、すべてのサンプルの強磁性層が多結晶であることを示している。あらゆるサンプルに存在する単軸の磁気異方性は、FeF容易軸に沿った容易軸により、Tをはるかに上回る温度でも、成長によって引き起こされる異方性に起因する。3つの強磁性体すべての強磁性遷移温度は、室温をはるかに上回っている。印加磁場に平行な平面内のサンプル磁化は、dc SQUID磁気計と磁気光学Kerr効果(MOKE)を使用して測定される。冷却中のサンプル磁化の方向は正に指定されており、ヒステリシス・ループの移動の符号によってEBの符号が定義される。すべてのサンプルの磁気モーメントと印加磁場曲線は、Tより高い温度での一般的な強磁性体の動作、すなわち原点に関して対称なシングル・ヒステリシス・ループを示している。
【0028】
第1の一連の試験では、サンプルは300Kで容易軸Mに沿って選択された残留磁化の値、すなわち0と飽和磁化Mとの間に消磁される。これで、F領域は容易軸に沿った反対方向の磁化による配列になる。2種類の領域の磁化間のバランスによって、結果となるサンプルの磁化が決まる。サンプルがゼロ磁場(ZFC)でTより低温に冷却された後に、低磁場の磁気モーメントはさまざまな温度での印加磁場の関数として測定される。十分な残留磁化の状態から冷却されたサンプル(M−M)は、H(T)によって負の磁場に交換バイアスされたシングル・ヒステリシス・ループを示す(図3)。これに対して、減少した残留磁化(M<M)の状態からの冷却済みサンプルは、ダブル・ヒステリシス・ループを示す(たとえば、図3のM−0.5MとM−0)。各ループは、磁場軸に沿って温度に依存しないH(T)と同じ大きさだけ逆の方向に移動する。ループの高さの比率は、サンプルが冷却される残留磁化の状態によって設定され、その状態における2種類の磁化の比率に等しい。このように、システムはTより高温の残留磁化の状態を「記憶」している。
【0029】
第2の一連の試験では、同じサンプルはヒステリシス曲線の不可逆磁場(irreversibility field)の上で容易軸に沿って磁場をかけることによって、T=150Kで最初に磁化される。さらに、サンプルは印加磁場(FC)、また冷却磁場として示されるHFCで冷却される(図3)。HFCが小さい場合は、Tより低い温度の磁化曲線は、シングル・ヒステリシス・ループを負の方向にHe(T)だけ移動して構成される。HFCが大きい場合は、Tより低い温度の磁化曲線はさらにシングル・ヒステリシス・ループを示すが、正の磁場に実質的にH(T)と同じ大きさだけ移動される。HFCが中程度の場合は、第1の一連の試験と同様に、Tより低い温度の磁化曲線は2つのヒステリシス・ループを示し、1つは負の磁場、もう1つは正の磁場に同じH(T)だけ移動される。固有の冷却磁場領域は、FとAFの両方の材料と厚さによって変わる。たとえば、FeF(38nm)/Co(4nm)のサンプル(図3)の場合は、0.1kOeと30kOeの間で冷却磁場のダブル・ループが観測される。
【0030】
両方の一連の試験で、Tを下回るすべての温度で正と負の同じ大きさH(T)が検出されることは注目に値する(図4)。任意の特定温度で、両方のループの幅はシングル・ヒステリシス・ループの幅(保磁力の2倍、すなわち2H)である。垂直方向にサイズ変更された場合は、シングル・ループとダブル・ループのそれぞれの両方の形状(図3参照)と温度発展(図4参照)は全く同じである。このように、2種類の独立した領域は同じ特性で構成され、1つは正、もう1つは負に交換バイアスされる。
【0031】
こうしたサンプルでは、幅が1/2のループはその移動量を下回る。すなわちH<Hである。明らかなダブル・ヒステリシス・ループが観測される場合は、条件H≦Hが必須である。これとは対照的に、他のサンプルにおける結果は逆の限界すなわちH>>Hにあるので、ダブル・ループは解決できない。
【0032】
最初の2つの一連の試験の結論は、空間的に分解されたMOKEにより、反射したp偏光(p−polarized light)の強度の差として明白に確認される。図5Aと5Bは、関連の測定値を示している。
【0033】
この試験では、第1の一連の試験で行ったように、5mm×5mmのFeF(70nm)/Ni(70nm)/Al(4nm)のサンプルがTより高温で消磁されてから、ゼロ印加磁場でTより低温に冷却される。第1に、印加磁場の関数としてのMOKE信号(一般的には磁化に比例すると考えられる)は、ワイド・ビームで照射されたサンプルのサーフェス領域全体から収集される。この曲線は、ダブル・ヒステリシス・ループで構成される(図5B)。試験の条件が変更されない場合、MOKEの測定は4行4列で16か所(図5Aに示す位置)に配置された直径500nmのレーザー・ビームで行われる。結果として生じる信号(図5A)は、磁化に比例し、空間的に変動する。サンプルの1つの側ではシングル・ループが負の方向に移動し、もう1つの側ではシングル・ループが正の方向に移動し、ダブル・ヒステリシス・ループの間で検出される。このような16曲線を正規化して合計したもの(図5Bの緑色の三角形)は、サンプル全体から得られるヒステリシス曲線(黒い丸)によく一致する。2本の曲線のわずかな相違は、16の測定か所ではサーフェス領域が完全にはカバーされないことによるものである。サンプルが十分な残留磁化のZFCである場合は、空間的な変動は観測されない。
【0034】
この試験では、サンプルに2つの領域が含まれること、すなわちシングル・ヒステリシス・ループが1つの領域では正の方向に、もう1つの領域では負の方向に、同じHだけ移動することを確認する。レーザー・ビームが両方の領域の一部を照射する場合は、磁化曲線は反対方向に移動した2本のループで構成され、その相対的な高さは、2つの領域の比率によって決まる。
【0035】
こうした試験の結果により、2つの主要な結果が得られる。第1に、こうしたサンプルは、符号が逆のEBを伴う2つの独立したサブシステムに分割できる。これは、部分的または全体的に消磁されたサンプルをゼロ印加磁場で冷却すること、または適切に選択された中程度の印加磁場でサンプルを冷却することによって実現される。適切な磁場の範囲は、サンプルのパラメータ、すなわち材料、層の厚さ、インターフェイスの粗度などによって決まる。第2に、各F領域の交換バイアスは、さまざまなAF領域では平均化されないので、ダブル・ヒステリシス・ループが観測される。
【0036】
EBの現象は大いに注目され、EBの複数のメカニズムが提示されているが、その多くはF領域のEBのスケールの変動を考慮しない。パターン形成されたF−AF二重層または弱められた(diluted)AFにおけるAFおよび/またはFの領域サイズに、HとHが依存するかどうかについて調べている。パターン形成されたF層を伴うAF−F二重層におけるHの拡張については、小規模なF領域におけるF−F交換相互作用の抑制によって説明されている。AF領域とF領域との対応、およびEBの値の小さな空間的変動については報告されている。ダブル・ヒステリシス・ループとFおよびAFの領域構造との相関は、消磁された状態からゼロ磁場冷却されたCoO/NiFeサンプルで確認されており、交換スプリング・モデルを使用して説明されている。FeF/FeとFe0.6Zn0.4/Fe二重層内の交換バイアス磁場とダブル・ヒステリシス・ループの形状は、ゼロ印加磁場内で冷却中の残留磁化に依存することがわかっている。ダブル・ヒステリシス・ループと負の方向に移動したシングル・ヒステリシス・ループは、明確な傾向なしにさまざまな小規模磁場(0〜40Oe)に付着したFeMn/FeMnCサンプルで確認されている。ゼロ磁場に付着したNiFe/NiFeMnサンプルでは、困難軸に沿って測定されたMOKE信号の空間的な変動が他の研究者によって報告されている。
【0037】
さまざまなサンプルについて実行された多くの報告済みの試験は、一見矛盾する関係のない結果を示している。複数の解釈と組み合わせると、これは結論を導くことができない複雑で混乱させる状況につながる可能性がある。同じサンプルに関する複数の異なる試験を伴う総合的な研究のみがEB内のAF領域とF領域の相対的なサイズの役割に関する限定的な解答を提供できることは明らかである。
【0038】
EBにおいて、ここではAF領域のサイズとF領域のサイズとの関係に基づいて2つの異なる型を検出する。第1に、AF領域がF領域より小さい場合は、F領域では複数のAF領域にわたってHの方向と大きさを平均する。このことにより、FeF/Feの対によるサンプルとMnF/Feの対によるサンプルで検出されたように、冷却磁場とシングル・ヒステリシス・ループの関数としてHの連続的な変動が発生する。AF領域が非常に小さい場合は、各F領域と相互に作用するAF領域の数が非常に大きい。この場合は、各F領域は基本的に個別のサンプルとして扱うことができる。無外部磁場が、サンプルを冷却する(ZFC)間に印加される場合は、こうした領域のそれぞれについて、F領域の磁化の方向によって正味EBの符号が設定されるので、ダブル・ループが観測される場合がある。X線反射率の測定値は、(100)MgOの上に成長した(110)FeFの対における平面内構造のコヒーレンスが互いに90°の結晶の容易軸に沿って6〜10nmであることを示している。こうした容易軸の空間的変動を細かい粒度と組み合わせることによって、最大サイズのAF領域が確立され、結果としてEBを平均化する型が得られる。
【0039】
AF領域のサイズがF領域のサイズと同等またはそれより大きい場合は、各F領域がEBの特定の方向をとる唯一のAF領域に結合するので、平均化は行われない。したがって、本研究で報告するように、さまざまな冷却磁場とダブル・ヒステリシス・ループに対して、Hの大きさは同じになる。この型において、サンプルがゼロ磁場冷却されている場合は、界面の(interfacial)FモーメントとAFモーメントとの反強磁性結合によってAFの単方向の異方性が局所的に設定される。したがって、各F領域のEBの局所的な符号は、サンプルを冷却するときのその領域の磁化の方向によって決定する。このように、Tより高温での磁化方向が逆のF領域は、Tより低温での同じ大きさで符号が逆のEBを伴う。
【0040】
サンプルが磁場冷却されるときに、さらに、冷却磁場HFCによって決定するのはHの符号のみであり、Hの大きさは決まらない。これは、Htotalの容易軸上への射影であり、Htotalによって局所的なEBの符号が決定する。AFの界面スピン(interfacial spins)によって感知された局所冷却磁場の合計であるHtotalは、印加磁場HFCと界面のFのモーメントによる局所交換磁場Hの和である。サンプルの空間的不均質性によってHの不均質性がもたらされ、これによってさらにHtotalの不均質性という結果が生じる。中程度のHFCでは、このことが原因でHtotalの大きさが小さくなり、不均質になるので、Htotalの符号が正または負の界面領域の温度が上昇する。したがって、この磁場でサンプルをTより低温に冷却することによって、負と正それぞれのEBが発生する。X線反射率の測定値によって、(110)MgF単結晶基板上に成長した対になっていない(110)FeF内の平面内構造コヒーレンスは、約28nmである。さらに、対になっていないことから、対になったFeFの場合とは異なり、AF領域のサイズは粒子サイズに比べてはるかに大きくなる可能性がある。大きなmm規模のAF領域がバルク単結晶(bulk single−crystal)のフッ化物内で観測される。ZFCの場合は、AF領域とF領域が同等のサイズであり、レーザー・ビームより大きいことが確認される。相対的な領域サイズによってサンプルの2つの磁気サブシステムへの分割とEBの型が決まることが、シミュレーションで確認されている(他の場所で公開する予定である)。
【0041】
本明細書に記載する観測の他のシステムへの関連性は、AF−Fシステムを模倣する多層システムで説明されている。AFの界面スピンの役割を果たす層内のより大きな領域のサンプルでは、中程度の冷却磁場でダブル・ヒステリシス・ループが観測される。こうしたモデル・システムが実際のAF−Fシステムの領域構造を正確に模倣しているかどうかは明らかではない。しかし、こうした結果によって相対的な領域サイズが役割を果たす追加の試験構成が提供される。
【0042】
したがって、AF領域とF領域の相対的なサイズは交換バイアスに影響を与える。AF領域のサイズがF領域のサイズより大きい場合またはそれと同等の場合は、構造的または磁気的な不均質性によって、AFの遷移温度Tより低温に冷却することきに、サンプルが2つの独立したサブシステムに分割される可能性がある。各サブシステムは、大きさは等しいが符号が逆のEBを呈する。これで磁化曲線はダブル・ヒステリシス・ループになるので、平均的化されていない局所的なEBを明白に示している。この動作は、3つの異なるF、すなわちNi、Fe、Coによるサンプルについて、さまざまな厚さのF層とAF層について、再現可能な方法で観測される。こうした観測により、さらにFの特性だけでなくAFの特性もEBで変更されることがわかる。水平方向の相対的な長さスケールは、標準の金属に近接する粒状の超伝導体(S)や、領域を備えるFに近接するSなど、空間的に不均質な秩序パラメータによるその他の近接効果に関連する可能性があることを提言する。
【0043】
強磁性(F)層とこれに隣接する反強磁性(AF)層との磁気結合に基づく本発明の磁気記憶材料および装置は、F層内の残留磁化を使用してAF層へのインプリントを行う。このAF−F結合によって交換バイアスが生成される。図6は、F層に特定の値の残留磁化がある状態からのゼロ磁場冷却によるAFの単方向の異方性(AFの界面スピン)の設定を示している。このインプリントは、各ビットへのデータの書き込みに使用する。交換バイアスの結果の1つは、交換バイアス磁場Heと呼ばれるM(H)磁化曲線の水平方向の移動である。大きな交換バイアスは、連続的な多層とナノ構造にパターン形成された多層の両方で実現できる。
【0044】
磁気的に安定化された2進の記録媒体
前述の領域のインプリントによってAFからFに導入された追加の単方向の異方性の方向を局所的に制御できる。この追加の単方向の異方性によって、磁気スイッチ(magnetic switching)の効果的なエネルギー障壁が強化されるため、FビットまたはFナノ構造の磁気的な安定性が向上する。
【0045】
図7Aは、従来の多くの2進の磁気記憶装置で使用されている例示的な強磁性材料の磁気ヒステリシス・ループを示している。2つの論理状態は、2つの反対方向(正と負)の最大磁化によって表現される。ループはH=0を中心とする。したがって、磁場の強さが保磁力(coercive field)Hと同等またはそれより大きい強磁性材料の浮遊磁場によって、ビットがその磁性状態が変更され、その結果記憶された情報が消去される可能性がある。ただし、F−AF結合に基づく新しい材料では、ヒステリシス・ループの中心がH=0からH=0の正または負の側にHeだけ移動する。図7Bはこの移動を示している。結果として、大きさが|He|+|H|より小さい浮遊磁場は、浮遊磁場の大きさがHと同等の場合またはそれより大きい場合でも、材料の磁性状態には影響を及ぼさなくなる。このように、F−AF結合に基づく新しい材料はさまざまな浮遊磁場に関連して安定化される。さらに、F層とAF層との間の交換バイアスによって新しい材料の保磁力Hまたはヒステリシス・ループの幅がさらに増大し、したがって記憶されたビットの浮遊磁場に対する安定性がさらに向上する。
【0046】
したがって、本発明によって磁気媒体にF−AF結合を使用することにより、ビット・サイズの縮小が可能になり、強磁性記憶媒体における制限が緩和される。前述のように、強磁性記憶媒体では、隣接するビットを操作する記録ヘッドによって、記憶された情報の一部または全体が消去される危険性があることによる悪影響を受ける。ヒステリシス・ループを移動し、媒体の保磁力を増大するF−AF結合媒体の設計により、浮遊磁場の悪影響を大幅に削減できる。別の例として、本発明の技術では、磁気ビット内の磁気モーメントの温度変化によって記憶された情報の一部または全体が消去される危険性があることによる動作温度範囲に関する制限が除去または緩和される。本発明の磁気安定化は、高密度および高安定ハード・ディスク・ドライブ、磁気テープ、磁気RAM、およびその他の磁気メモリや論理装置などの磁気記録に使用してもよい。
【0047】
本発明の安定化技術を磁気記録装置および磁気記録媒体で平面内および垂直方向の両方の磁気記録に使用することによって、パターン形成された磁気媒体またはパターン形成されていない磁気媒体に記憶された情報を安定化でき、数百ギガビット/平方インチおよび1テラビット/平方インチ以上の密度まで記録密度を向上できる。さらに、本発明の安定化技術を使用すると、磁気記録テープに記録された情報の密度を向上でき、磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)に記録された情報の密度と安定性を向上できる。さらに、本発明の安定化技術は、目的が同じその他の磁気記録の適用例に使用してもよい。
【0048】
前述の安定化技術は、強磁性および反強磁性またはいわゆる合成反強磁性体(SAF、本明細書の以下の部分ではAFのカテゴリに含める)を含む薄膜多層の磁気記録媒体にも適用できる。ビット記録プロセスにおいて、記録ヘッドはAFのブロッキング温度Tより高温でF層とAF層を含むビットを局所的に加熱する。磁気RAMタイプのメモリの場合は、オーム加熱を使用して抵抗による加熱を実行できる。F層のビットの磁化は、既存の技術または今後提示される任意の技術と同様に、記録ヘッドによって生成される局所的な磁場がかかることによって切り替わる。次に、加熱が終了し、ビットは冷却されてTを下回り、Fに導入されたAF層の単方向の異方性が設定される。図8は、2kOeの印加磁場における冷却プロセスでMgF/FeF/Niサンプルの容易軸に沿って測定されたループを示している。ここで、F層によって導かれた単軸の異方性がAF層にインプリントされる。
【0049】
この後に磁場を停止できる。このプロセスの代わりに、サンプルを冷却する前に磁場を停止しても、図8に示すのと同じ結果が得られる。この設計および手順によってビットの切り替えに必要なエネルギー障壁が増大し、温度の変化あるいは隣接するビットの記録プロセスによってビットが消去されるのを防止する。局所的な加熱は、たとえば、レーザー、近接場光学、誘導性の走査型プローブ・チップ、ビット自体またはビット領域に接触する素子による抵抗(オーム)加熱など、任意の方法で実行され、たとえばCMOSタイプのメモリにおけるビットの書き込みのようなビット/ワード・ラインの組合せを伴う設計を使用してもよい。
【0050】
読み出しは、磁気情報を読み出す既存の技術または将来の技術を使用して実行できる。読み出しヘッドは、ビットのF層の磁気モーメントによる浮遊磁場を感知する。AF層の交換バイアスにより、こうしたビットの磁気ヒステリシス・ループは正または負の磁場に移動する。ループが負の方向に移動する場合は残留磁化が正であり、正の方向に移動する場合は残留磁化が負である。これで「0」と「1」の状態が定義される。AF材料はT>80℃である必要があります。これにはNiO、IrMn、FeMnが含まれるが、これらに限定はされない。
【0051】
F−AF結合媒体は、パターン形成することによって異なる磁気ビットを互いに分割し、安定性と漂遊磁場に対する耐性をさらに向上してもよい。図9Aおよび9Bは、連続するAF層(たとえばFeF)上の強磁性層(たとえばFe)による磁気ドット・パターンを強磁性体のみの材料(Feのみ)の場合と比較して示している。
【0052】
図10Aおよび10Bは、Feのみのドット媒体とFe/FeFのドット媒体について測定された安定化データをさらに示している。
【0053】
AF−F結合による多状態の磁気記憶
前述のF層からAF層へのインプリントを使用することによって、交換バイアスの方向を正または負のいずれかに局所的に設定できる。したがって、2つの領域の磁性状態は、2つの領域が反対方向に交換バイアスされる場合に作成される。2つの領域のサイズの比率によって、データを記憶するための磁気「ビット」として使用する磁気領域の残留磁化が決定する。こうした1つのビット位置での2つの領域の使用により、広範囲に及ぶ磁場で明確に定義された安定な多状態磁気「ビット」を備える磁気メモリを作成できる。状態は、Mri=M/n(ただし、2n+1は状態の総数、iは−nから+nまでの任意の値)となるよう正と負の飽和磁化(saturated magnetization)の値Mの間にある残留磁化の値Mに対応する。多状態の最大数は、装置の磁気感知限界によって設定される。
【0054】
図11と12は、F−AF媒体のF層の残留磁化をさまざまな磁場で冷却することによって、あるいは選択された残留磁化の状態でニール温度Tより高い温度から低い温度にゼロ磁場冷却することによって、さまざまな値に設定する例を示している。この場合、Tはブロッキング温度に一致する。
【0055】
このような多状態の記憶装置では、こうした多状態「ビット」の読み出し手順を、磁気光学または磁気抵抗による方法を含むさまざまな方法で実行できる。多状態の磁気材料は、平面内と垂直方向の両方に磁気記録を行う多状態の磁気記録装置および磁気記録媒体、および多状態の論理素子に使用できる。多くの利点の中でも、このような材料を使用すると、1ビットを上回る情報を記憶する多状態磁気「ビット」に情報を記録することによって、磁気メモリの密度を向上できる。多状態の磁気論理素子および装置は、前述の多状態ビットに基づいて構成できる。
【0056】
さまざまな実装において、このような材料を使用して、強磁性および反強磁性またはいわゆる合成反強磁性体(SAF、本明細書の以下の部分では「AF」のカテゴリに含める)を含む薄膜多層を構成できる。2つの領域のサイズの比率によって、磁気「ビット」としての磁気領域の残留磁化が決定する。正確な残留磁化の値は、さまざまな磁化のプロセスで設定でき、制御できる。
【0057】
さまざまな書き込み方法を使用して、各ビット内に希望するレベルの残留磁化を生成できる。2つの例について以下で説明する。図13は、外部磁場なしに冷却を実行する第1の書き込み方法を示している。さらに具体的に言えば、この方法では以下の手順が実行される。
1.選択された磁気ビットは、ブロッキング温度T、すなわち交換バイアスの方向が設定される温度を超えるまで加熱される。
2.選択された残留磁化Mr0は、小さなループを使用することによって実現される。考えられる手順の1つは、Mr0の方向と逆の方向に大きな磁場かけ、さらにMr0の方向に小さな磁場をかけることによってこの印加磁場を除去したときのMr0に等しい大きさの残留磁化を生成し、磁気ビットの磁化を飽和させることである。ここで磁場が除去される。
3.印加磁場がない状態で、ビットはTBより低温に冷却される。
4.残留磁化の値はこのAF−Fビットにインプリントされ、特定のビットがTより低温に維持される限り、隣接する磁気ビットの書き込みに使用する磁場によっても、隣接する磁気ビットからの浮遊磁場によっても影響されない。
【0058】
冷却プロセスの間に外部磁場がかけられる第2の書き込みプロセスについて以下で説明する。
1.選択された磁気ビットは、ブロッキング温度T、すなわち交換バイアスの方向が設定される温度を超えるまで加熱される。
2.特定の大きさの磁場がかけられる。
3.印加磁場でビットがTより低温に冷却される。
4.特定の大きさの磁場でビットを冷却すると、選択された値の残留磁化によるダブル磁気ヒステリシス・ループを示す2つの領域による構造を設定できる。残留磁化の値はこのAF−Fビットにインプリントされ、特定のビットがTより低温に維持される限り、隣接する磁気ビットへの書き込みに使用する磁場によっても、隣接する磁気ビットからの浮遊磁場によっても影響されない。
【0059】
記録される信号は、−MからMまでの間で選択された任意のビット残留磁化に対応するように設定できるので、広範な磁場で非常に安定である。局所的な加熱は、たとえば、レーザー、近接場光学、誘導性の走査型プローブ顕微鏡(SPM)チップ、ビット自体またはビット領域に接触する加熱素子による抵抗(オーム)加熱など、任意の方法で実行できる。たとえばCMOSタイプのメモリにおけるビットの書き込みのようなビット/ワード・ラインの組合せを伴う設計を使用してもよい。AF材料は、適用例に有効なT>80℃でなければならない。適切なAF材料の例には、NiO、IrMn、およびFeMnが含まれるが、これらに限定はされない。こうした多状態「ビット」の読み出し手順は、磁気光学または磁気抵抗による方法を含むさまざまな方法で実行できる。考えられるシナリオの1つは、記録された状態に対応する残留磁化の値に比例する磁気光学Kerr効果(MOKE)信号を測定することである。
【0060】
こうした多状態ビットをバイアスとして使用して、新たに多状態論理素子および装置を生成できる。この場合は、前述の書き込み手順において、レーザー加熱に代わるものとして、抵抗加熱を使用してもよい。読み出しは、磁気光学によるものでも磁気抵抗によるものでもよい。磁気抵抗による読み出しの例としては、磁気「ビット」の上部に配置された磁気抵抗によるセンサーが考えられる。このセンサーの抵抗の値は、局所的な磁場の値に一意に対応(比例)し、同様に読み出しヘッドで使用する技術に一意に対応する必要がある。
【0061】
こうした材料およびその他の材料の適用例には、高密度および高安定ハード・ディスク・ドライブ、磁気テープ、磁気RAM、その他の磁気記録装置、および論理回路の多状態論理装置および論理素子などの磁気記録が含まれる。それ以外への適用も可能である。
【0062】
いくつかの実施例と適用例についてのみ説明されているが、その他の変形や拡張も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備えることによって、前記反強磁性層のブロッキング温度を下回る動作温度でデータを記憶する磁気記憶材料と、
データが選択された磁気ビットに書き込まれる際、前記選択された磁気ビットと磁気記憶材料の領域における温度と磁場を局所的に制御する制御メカニズムとを備える装置であって、
前記ブロッキング温度は、強磁性材料のキュリー温度を下回り、
3つ以上の磁性状態を有する多状態記憶媒体を構成するために、前記磁気記憶材料の各磁気ビットは、2つ又はそれ以上の領域の反対方向の交換バイアスを有するように構成されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御メカニズムの第2の部分は、温度を制御するように構成され、レーザーを含み、書き込みの間、前記レーザーからのレーザー・ビームを選択された磁気ビットへ集中させることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御メカニズムの第2の部分は、前記レーザー・ビームを集中させるために、近接場光学をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御メカニズムの第2の部分は、温度を制御するように構成され、選択された磁気ビットを加熱する導電性走査プローブ顕微鏡を含むことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記制御メカニズムの第2の部分は、温度を制御するように構成され、各磁気ビットの一部として抵抗(オーム)加熱メカニズムを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記制御メカニズムの第2の部分は、温度を制御するように構成され、前記選択された磁気ビットに接触する抵抗(オーム)加熱素子を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記制御メカニズムの第1の部分は、磁場を制御するように構成され、前記磁気記憶材料へ書き込むための磁気ヘッド又は磁気光学ヘッドを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御メカニズムの第1の部分は、磁場を制御するように構成され、前記選択された磁気ビット領域において、2つ又はそれ以上の配線アレイが交差するように配置された配線アレイを含み、
前記配線アレイは、前記磁気記憶材料へ書き込むために操作されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記選択された磁気ビットの残留磁化の値を読むための読み出しメカニズムをさらに含み、
前記選択された磁気ビットの残留磁化の値は、前記多状態記憶媒体の残留磁化の所定のセットの一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記読み出しメカニズムは、前記選択された磁気ビットから読み出すための磁気ヘッド又は磁気光学ヘッドを含むことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記読み出しメカニズムは、前記選択された磁気ビット領域において、2つ又はそれ以上の配線アレイが交差するように配置された配線アレイを含み、
前記2つ又はそれ以上の配線の抵抗と前記2つ又はそれ以上の配線のジャンクションは、前記選択された磁気ビットの残留磁化の値に一致することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記2つの領域の反対方向の交換バイアスを有する磁気ビットの各々は、前記多状態記憶媒体の残留磁化の所定のセットから選択された値の残留磁化を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記2つの領域の反対方向の交換バイアスを有する磁気ビットの各々における記憶情報量は、前記多状態記憶媒体の残留磁化の所定のセット内のレベルの数に等しいことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
磁気記憶材料内の各磁気ビットの3つ以上の磁性状態を提供するための方法であって、
互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備えており、前記反強磁性層のブロッキング温度を下回る動作温度でデータを記憶する磁気記憶材料を提供する工程で、ここで、前記ブロッキング温度は強磁性材料のキュリー温度を下回り、そして前記磁気記憶材料内の各磁気ビットが、3つ以上の磁性状態を有する多状態記憶媒体を構成するために2つの領域の反対方向の交換バイアスによって形成され、
局所的な加熱を実行することによって前記磁気記憶材料内の2つの領域の反対方向の前記交換バイアスを有する選択された磁気ビットの温度を前記ブロッキング温度より高温に上昇させる工程と、
前記ブロッキング温度を上回る温度で、前記選択された磁気ビットに磁化プロセスを適用することによって、残留磁化をあらかじめ指定された多状態記憶媒体の残留磁化のセットの選択された値に設定し、ビットを書き込む工程と、
前記選択された磁気ビットで外部磁場を除去する工程、及び
ゼロ磁場で前記選択された磁気ビットの温度を前記ブロッキング温度より低温に下降させて前記残留磁化を前記選択された磁気ビットに記憶する工程とを備える方法。
【請求項15】
読み出しを行う前記選択された磁気ビットを感知する際に、前記選択された磁気ビットの温度を前記ブロッキング温度より低温に維持する工程をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記残留磁化を作り出すために適用された磁化プロセスは、
前記選択された磁気ビットへ第1の磁場を適用する工程と、
前記選択された磁気ビットから前記第1の磁場を取り除く工程と、
その後、前記第1の磁場と反対の方向において、前記選択された磁気ビットへ第2の磁場を適用する工程とを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記磁気記憶材料の磁気ビットの各々は、多状態記憶媒体を構成するために、特定の方向に沿って前記交換バイアスの反対の方向又は反対の成分を有する2つ又は複数の領域により形成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
磁気記憶材料内の各磁気ビットの3つ以上磁性状態を提供するための方法であって、
互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備えており、前記反強磁性層のブロッキング温度を下回る動作温度でデータを記憶する磁気記憶材料を提供する工程で、ここで、前記ブロッキング温度は強磁性材料のキュリー温度を下回り、そして前記磁気記憶材料内の各磁気ビットが、3つ以上の磁性状態を有する多状態記憶媒体を構成するために2つの領域の反対方向の交換バイアスによって形成され、
局所的な加熱を実行することによって前記磁気記憶材料内の選択された磁気ビットの温度を前記ブロッキング温度より高温に上昇させる工程と、
前記ブロッキング温度を上回る温度で、2つの領域の反対方向の前記交換バイアスを有する前記選択された磁気ビットに磁化プロセスを適用することによって、残留磁化をあらかじめ指定された多状態記憶媒体の残留磁化のセットの選択された値に設定し、ビットを書き込む工程と、
前記磁化プロセスの磁場を維持する間に、前記選択された磁気ビットの温度を前記ブロッキング温度より低温に下降させて前記残留磁化を前記選択された磁気ビットに記憶する工程とを備える方法。
【請求項19】
読み出しを行う前記選択された磁気ビットを感知するときに、前記選択された磁気ビットの温度を前記ブロッキング温度より低温に維持する工程をさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記残留磁化を作り出すために適用された磁化プロセスは、
前記選択された磁気ビットへ第1の磁場を適用する工程と、
前記選択された磁気ビットから前記第1の磁場を取り除く工程と、
その後、前記第1の磁場と反対の方向において、前記選択された磁気ビットへ第2の磁場を適用する工程とを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記磁気記憶材料の磁気ビットの各々は、多状態記憶媒体を構成するために、特定の方向に沿って前記交換バイアスの反対の方向又は反対の成分を有する2つ又は複数の領域により形成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項22】
互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備えることによって、前記反強磁性層のブロッキング温度を下回る動作温度でデータを記憶する磁気記憶材料と、
データが選択された磁区に書き込まれる際、前記選択された磁区と磁気記憶材料の領域における温度と磁場を局所的に制御する制御メカニズムとを備える装置であって、
前記ブロッキング温度は、強磁性材料のキュリー温度を下回り、
前記強磁性層と反強磁性層は、前記装置において、ゼロ磁場から離れて浮遊磁場より大きい磁場へ、前記磁気記憶材料の磁気ヒステリシス・ループをオフセットするように選択されることを特徴とする装置。
【請求項23】
前記制御メカニズムの第1の部分は、磁場を制御するように構成され、前記磁気記憶材料へ書き込むため及び前記磁気記憶材料から読み出すための磁気ヘッド又は磁気光学ヘッドを含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記制御メカニズムの第2の部分は、温度を制御するように構成され、レーザーを含み、書き込みの間、前記レーザーからのレーザー・ビームを選択された磁区へ集中させることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記制御メカニズムの第2の部分は、前記レーザー・ビームを集中させるために、近接場光学をさらに含むことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記制御メカニズムの第2の部分は、温度を制御するように構成され、選択された磁区を加熱する導電性走査プローブ顕微鏡を含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項27】
前記制御メカニズムの第2の部分は、温度を制御するように構成され、各磁区の一部として抵抗(オーム)加熱メカニズムを含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項28】
前記制御メカニズムの第2の部分は、温度を制御するように構成され、前記選択された磁区に接触する抵抗(オーム)加熱素子を含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項29】
前記制御メカニズムの第1の部分は、磁場を制御するように構成され、前記選択された磁区の領域において、2つ又はそれ以上の配線アレイが交差するように配置された配線アレイを含み、
前記配線アレイは、前記磁気記憶材料へ書き込むため及び前記磁気記憶材料から読み出すために操作されることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項30】
互いに磁気結合された強磁性層とこれに隣接する反強磁性層とを備える磁気記憶材料を提供することによって、2進の磁気記憶媒体として磁気ヒステリシス・ループを提供する工程と、
前記磁気記憶材料の強磁性層へ情報を記録する工程と
前記強磁性層と前記隣接する反強磁性層とは、横軸が磁場及び縦軸が磁化で形成された座標内の前記磁気ヒステリシス・ループの中心を、浮遊磁場より大きい量だけ前記横軸に沿って前記磁場が0(H=0)から離してセットするように構成する工程によって、前記浮遊磁場によってもたらされる磁化の変化に対して各2進の状態を安定させる、工程とを備える方法。
【請求項31】
前記構成する工程は、さらに熱振動により生じる磁化の変化に対する各2進の状態を安定させることを特徴とする請求項30に記載の方法

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−192101(P2010−192101A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68162(P2010−68162)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2007−521668(P2007−521668)の分割
【原出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(504471296)ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティー オブ カリフォルニア (13)
【Fターム(参考)】