交流−直流電力変換器の制御装置
【課題】制御周期におけるスイッチング損失、ノイズ及び出力電圧リプルを低減させた交流−直流電力変換器の制御装置を提供する。
【解決手段】三相交流電源10の各相に接続される複数の交流入力端子と2つの直流出力端子とが複数の半導体スイッチにより接続され、前記スイッチのオンオフ動作により交流電圧を任意の大きさの直流電圧に変換する交流−直流電力変換器の制御装置に関する。三相交流電源10の相電圧値または電力変換器の入力電流指令値の大小関係が変化しない範囲において、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるようにスイッチングパタンを決定し、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるようにスイッチングパタンを決定する。
【解決手段】三相交流電源10の各相に接続される複数の交流入力端子と2つの直流出力端子とが複数の半導体スイッチにより接続され、前記スイッチのオンオフ動作により交流電圧を任意の大きさの直流電圧に変換する交流−直流電力変換器の制御装置に関する。三相交流電源10の相電圧値または電力変換器の入力電流指令値の大小関係が変化しない範囲において、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるようにスイッチングパタンを決定し、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるようにスイッチングパタンを決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ等の大形のエネルギーバッファを用いることなく、半導体スイッチを用いて多相交流電圧を任意の大きさの直流電圧に変換する交流−直流電力変換器に関し、特に、直流出力電圧のリプルやスイッチング損失の低減、ノイズの抑制、入力力率の調整を可能にした交流−直流電力変換器の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流−直流電力変換器としての電流形電力変換器が記載されている。
図21は、特許文献1に記載された電流形電力変換器とほぼ同様の回路である。図21において、10は三相交流電源、20は負荷、100は制御装置、CfはLCフィルタを構成するコンデンサ、Lfは同じくリアクトル、Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnは半導体スイッチ(以下、単にスイッチともいう)、Lは平滑用のリアクトルである。なお、gup,gvp,gwp,gun,gvn,gwnは、スイッチSup〜Swnに対するオン信号(駆動信号)である。
一般に、この種の電流形電力変換器では直流側にリアクトルLが直列に接続されるので、電力変換器の制御に当たっては出力電圧の波形制御は行わず、交流側の電流高調波を抑制するために交流入力電流の波形制御に重点が置かれている。
【0003】
ここで、非特許文献1には、電圧形電力変換器の三角波比較方式PWMパタン発生法に対して双対な電流形電力変換器のPWMパタン発生法が開示されている。
図22は、非特許文献1における動作波形を示しており、対象とする電力変換器の構成は図21と同様であるため、図22では図21に付した参照記号を用いている。
【0004】
非特許文献1では、入力電流を制御するため、制御装置100において入力相電流指令値i*uw(=(i*u−i*w)/3),i*vu,i*wvを線間電圧実効値Eの入力電圧eu,ev,ewと同相で与えている。これらの入力相電流指令値i*uw,i*vu,i*wvと振幅Idc/2の三角波キャリア信号とを比較し、その大小関係から得られる信号を簡単な論理回路に通すことにより、スイッチSup〜Swnのオン信号gup〜gwnが得られる。
図22に示すように、例えばu相の入力電流波形iuは、指令値と同符号の電流パルスによって実現でき、その高調波成分を低減することができる。三角波キャリア信号の半周期において三相全体で3回の転流があり、出力電圧Vcの波形は、電源線間電圧の正の3レベルの電圧と零電圧とによって実現される。
また、出力電圧Vcの波形においては、最大電圧から零電圧に変化するスイッチングがあり、三相入力相電圧において最大電圧相から最小電圧相へ転流しているため、この転流ではスイッチング損失及びノイズが大きくなる。
【0005】
一方、非特許文献2には、p側またはn側のスイッチのうち1つのスイッチを制御周期間導通させ続けると共に反対側のスイッチで転流を行い、転流回数を2回に低減すると同時に、スイッチング損失を低減するように電源の最大電圧相と最小電圧相との間の転流を行わないようにした制御方法が開示されている。
この制御方法によれば、交流入力電流の波形は指令値と同符号の電流パルスによって構成され、高調波電流が抑制されることになるが、直流出力電圧の波形は常に零電圧を含むため、出力電圧リプルは十分に低減されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3590195号公報(段落[0002]〜[0003]、図4等)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】竹下隆晴、外山浩司、松井信行、「電流形三相インバータ・コンバータの三角波比較方式PWM制御」、電気学会論文誌D、産業応用部門誌、Vol.116,No.1,pp.106−107(1996年)
【非特許文献2】茂木進一、「三相電流形変換器のための新しい二相変調法の提案とその効果」、電気学会半導体電力変換研究会資料、SPC−11−1、pp.1−6、(2011年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の制御方法または制御装置では、スイッチング損失やノイズ、出力電圧リプルを十分に低減することができないという問題があった。
そこで、本発明の解決課題は、交流−直流電力変換器の制御周期におけるスイッチング損失、ノイズ及び出力電圧リプルの低減を可能にし、装置全体の小型化、低価格化を可能にした交流−直流電力変換器の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、多相交流電源の各相に接続される複数の交流入力端子と正負の直流出力端子とが複数の半導体スイッチを介してそれぞれ接続され、前記半導体スイッチのオンオフ動作により、交流電圧を任意の大きさの直流電圧に変換する交流−直流電力変換器において、
前記交流電源の相電圧値の大小関係または前記電力変換器の入力電流指令値の大小関係が変化しない範囲において、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定するものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最大電圧相と中間電圧相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最小電圧相と中間電圧相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定するものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧及び前記変換器の直流出力電圧指令値に基づいて前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、を備えたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの入力電流指令値の最大相と中間相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの入力電流指令値の最小相と中間相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定するものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1または4に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧に基づいて電源電圧位相角を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記電源電圧位相角、入力力率角指令値、及び、前記変換器の直流出力電圧指令値から前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、を備えたものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
入力力率角指令値が電気角で+30度〜−30度の範囲外である場合には、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最大電圧相とその他の電圧相一相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最小電圧相とその他の電圧相一相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定するものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1または6に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧に基づいて電源電圧位相角を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記電源電圧位相角、入力力率角指令値、及び、前記変換器の直流出力電圧指令値から前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記入力力率角指令値、前記直流出力電圧指令値、及び、前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、を備えたものである。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7の何れか1項に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
前記変換器の出力電力または出力電圧に応じて前記入力力率角指令値を演算する手段を備えたものである。
【0017】
請求項9に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載した交流−直流電力変換器の制御装置であって、前記直流出力端子に直列にリアクトルとコンデンサとが接続されると共に、前記コンデンサに並列に負荷が接続されてなる交流−直流電力変換器の制御装置において、
前記コンデンサの電圧指令値と電圧検出値とから直流出力電流指令値を演算する手段と、
前記直流出力電流指令値と直流出力電流検出値とから前記直流出力電圧指令値を演算する手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スイッチング損失の低減により電力変換効率を向上させることができる。また、発生ノイズの低減によるノイズフィルタの小型化、出力電圧リプルの低減による出力フィルタの小型化が可能であり、装置全体の小型化、低価格化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】各実施形態における半導体スイッチの構成例を示す図である。
【図3】第1実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の基本原理を説明する波形図である。
【図4】第1実施形態における半導体スイッチのデューティ比を求めるための交流−直流電力変換器のモデルを示す図である。
【図5】図3(a)において、出力電圧指令値の符号を負にした場合の動作波形図である。
【図6】第1実施形態における入力電流指令値演算手段の構成を示すブロック図である。
【図7】第1実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の動作波形図である。
【図8】第1実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の構成を示すブロック図である。
【図9】図8におけるpスイッチオン信号選択手段の主要部の論理回路例を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図11】第2実施形態における電源電圧位相角検出手段の構成を示すブロック図である。
【図12】第2実施形態における入力電流指令値演算手段の構成を示すブロック図である。
【図13】第2実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の動作波形図である。
【図14】本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図15】第3実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の構成を示すブロック図である。
【図16】第2実施形態及び第3実施形態の動作波形図である。
【図17】第3実施形態の動作波形図である。
【図18】本発明の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
【図19】第4実施形態における入力力率角指令値演算手段の作用を説明するための入力u相の等価回路及びそのベクトル図である。
【図20】本発明の第5実施形態の構成を示すブロック図である。
【図21】特許文献1に記載された電流形電力変換器と同様の回路を示す図である。
【図22】非特許文献1における動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
なお、以下の説明において参照する各図では、同一の機能を有する回路構成要素及び電気量等に同一の参照符号を付してある。
【0021】
図1は本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。なお、この第1実施形態以降の各実施形態では、多相交流電源を三相として説明する。
図1において、交流−直流電力変換器は、三相交流電源10と、その各相に接続されたリアクトルLfと、各線間に接続されたコンデンサCfと、三相の交流入力端子u,v,wと正負の直流出力端子p,nとの間に接続された半導体スイッチSup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnと、を備え、直流出力端子p,nの相互間には負荷20が接続されている。
【0022】
上記交流−直流電力変換器を制御する制御装置100Aは、三相交流電源10の各相の電圧eu,ev,ewを検出する電源電圧検出手段110と、前記電源電圧eu,ev,ewと直流出力電圧指令値Vc*とから各相の入力電流指令値i*u,i*v,i*wを演算する入力電流指令値演算手段120と、前記入力電流指令値i*u,i*v,i*wから前記スイッチSup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnのデューティ比を演算し、各スイッチのオン信号を発生するデューティ比演算・オン信号発生手段130とを備え、最終出力として、PWMパタンである各スイッチのオン信号gup,gvp,gwp,gun,gvn,gwnを得る。
【0023】
図2は、図1における交流−直流電力変換器のスイッチの構成例を示しており、u相のスイッチSup,Sunの構成を例示してある。
図2(a)は、出力電流Idcが常時、正(Idc≧0)の場合に使用するスイッチSup,Sunの例である。直流出力端子pに接続されるスイッチSupには、交流電源10(入力端子u)から端子pに電流が流れるスイッチを用い、直流出力端子nに接続されるスイッチSunには、端子nから交流電源10(入力端子u)に電流が流れるスイッチを用いる。
【0024】
図2(b)は、出力電流Idcが常時、負(Idc≦0)の場合に使用するスイッチSup,Sunの例である。直流出力端子pに接続されるスイッチSupには、端子pから交流電源10(入力端子u)に電流が流れるスイッチを用い、直流出力端子nに接続されるスイッチSunには、交流電源10(入力端子u)から端子nに電流が流れるスイッチを用いる。
図2(c)は、出力電流Idcの符号が正負の両方になるスイッチSup,Sunの例であり、両スイッチSup,Sunには双方向に電流が流れるスイッチを用いる。
ここで、図2(a)〜(c)の構成は他のスイッチSvp,Swp,Svn,Swnについても同様である。
【0025】
図3は、第1実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段130の基本原理図であり、その動作の概要について以下に説明する。
図3(a)は、直流出力電圧指令値V*cが高い場合であり、図3(b)は低い場合である。
出力電圧Vcは平均値として出力電圧指令値V*cに一致しており、入力電流iuの基本波成分は入力力率1の入力電流指令値i*uに一致している。各スイッチSup〜Swnのオン信号gup〜gwnを発生するPWM制御法としては、電源電圧eu,ev,ewと同相の入力電流指令値i*u,i*v,i*wと、Idc〜零、零〜−Idcの範囲で変化する2つの三角波キャリア信号Tp,Tnとをそれぞれ比較し、その大小関係から直接、スイッチSup〜Swnのスイッチングパタンを得ている。
【0026】
電源電圧位相角θ〔rad〕が、例えば、0<θ<π/3(eu>ev>ew)の範囲では、端子p側のスイッチは、スイッチSup,Svpの電源の二相へ接続するオン信号gup,gvpのみが与えられ、端子n側のスイッチは、スイッチSvn,Swnの電源の二相へ接続するオン信号gvn,gwnのみが与えられる。
このとき、p側スイッチSup,Svpの動作は、最大電圧euから中間電圧evへの転流、n側スイッチSvn,Swnの動作は、最小電圧ewから中間電圧evへの転流であり、最大電圧と最小電圧との間の転流ではなく、三相全体で転流回数を2回に低減できるので、スイッチング損失及びノイズを低減することができる。
図3(a)の出力電圧指令値V*cが高い場合には、出力電圧Vcの波形は、正の3レベルの入力線間電圧により実現され、零電圧まで下がらないので、出力電圧リプルを低減することが可能である。また、図3(b)の出力電圧指令値V*cが低い場合には、出力電圧Vcの波形は、正の最大の入力線間電圧レベルを用いずに、低い2レベルの入力線間電圧と零電圧とによって実現されており、出力電圧リプルを低減できている。
【0027】
次に、デューティ比演算・オン信号発生手段130におけるデューティ比演算式を導出する。
出力瞬時電力poutは、出力電圧指令値V*c及び出力電流Idcを用いて数式1により得ることができる。
【数1】
交流−直流電力変換器はコンデンサ等のエネルギーバッファを持たないので、出力瞬時電力poutと等しい入力瞬時電力pinが実現されるように入力電流指令値を定めることで、指令値通りの出力電圧Vcを得ることができる。
【0028】
ここで、図1の入力リアクトルLfにおける電圧降下は電源電圧に比較して十分小さいと仮定し、これを無視して説明する。
三相交流電源電圧eu,ev,ewは、電源電圧実効値E、位相角θ(=ωt)を用いて数式2により与えられる。
【数2】
なお、電源電圧実効値Eは、数式3に示すように、相電圧の2乗和の平方根により得られる。
【数3】
【0029】
電源電圧に対して入力電流指令値i*u,i*v,i*wは、入力電流実効値指令値I*、入力力率角指令値ψ*を用いて数式4により表される。
【数4】
よって、入力瞬時電力pinは、数式2,4から数式5によって得ることができる。
【数5】
【0030】
入力力率角指令値ψ*は任意の値に設定可能であるが、入力電流実効値指令値I*については、前述したように入出力の瞬時電力をバランスさせる観点から、数式1〜数式5に基づいて数式6により求められる。
【数6】
【0031】
次に、図4は、各スイッチのデューティ比を求めるための交流−直流電力変換器のモデルを示している。
制御周期Ts(三角波キャリア信号の半周期)は回路の時定数に比較して十分短いものとして、ここでは入力のLCフィルタを省略し、入力電圧及び出力電流を一定値と近似する。図4では、各相の電源電圧eu,ev,ewを直流電圧源により、出力電流Idcを直流電流源によりそれぞれ表している。また、制御周期Ts間の出力電圧指令値V*c、入力電流指令値i*u,i*v,i*wをそれぞれ一定値として扱う。
本実施形態では、スイッチング損失(スイッチング回数)及び出力電圧リプルを共に低減するために、導通させないスイッチを設けてあり、図4では、電源電圧位相角θが0<θ<π/3の範囲において、導通させないスイッチを破線で示している。
【0032】
なお、図4におけるスイッチSup〜Swnは、例えば前述の図2(c)のような双方向スイッチであり、これら6個の双方向スイッチSup〜Swnの制御周期Ts間のデューティ比をそれぞれdup〜dwnとする。
出力電流の連続性を確保し、入力線間電圧の短絡を引き起こさないように、直流出力端子p,nにそれぞれ接続されるスイッチのうち何れかのスイッチを導通させることから、デューティ比について数式7,8が成立する。
【数7】
【数8】
【0033】
入力電流指令値i*u,i*v,i*wは、デューティ比を用いて数式9〜数式11によって表すことができる。
【数9】
【数10】
【数11】
【0034】
数式7〜11から各デューティ比を一意に決定することはできないので、後述するように拘束条件を与えてデューティ比を決定する。
制御周期Ts間の出力電圧平均値Vc(本文中では使用可能な文字に制限があるため、「  ̄ 」を省略する)は数式12の上段により得られ、これを数式1,5,9〜11を用いて変形すると、数式12の下段に示すように出力電圧指令値V*c通りに制御されていることがわかる。
【数12】
【0035】
第1実施形態における各スイッチのデューティ比を導出する条件として、出力電圧指令値V*c>0として、電源電圧位相角が0<θ<π/3、すなわち、各相電圧の大小関係がeu>ev>ewの場合につき考える。出力電圧リプルを小さくするため、直流出力端子pを入力最小電圧相wに、直流出力端子nを入力最大電圧相uにそれぞれ接続しない制約条件を設け、数式13のようにデューティ比dwp,dunを零とする。
【数13】
【0036】
数式7〜11から、数式13の制約条件のもとで残りの各デューティ比dup,dvp,dvn,dwnを求めると、数式14が得られる。
【数14】
【0037】
以下の表1は、p側スイッチ及びn側スイッチにつきそれぞれ1つずつオンさせないスイッチの組み合わせと、各デューティ比とをまとめたものであり、全部で6通りのデューティ比のパタンpdが得られる。
従って、デューティ比演算・オン信号発生手段130では、電源電圧位相角または入力電流指令値に応じて表1のデューティ比のパタンpdを使用することにより、各スイッチのオン信号gup〜gwnを発生させることができる。
【表1】
【0038】
次に、図5は、図3(a)において、出力電圧指令値V*cの符号を負にした場合のデューティ比演算・オン信号発生手段130の動作説明図である。ここでは、出力電圧指令値V*cが負になるので、入力電流指令値i*u,i*v,i*wの波形も図3(a)に対して正負反転している。
【0039】
デューティ比演算・オン信号発生手段130は、入力電流指令値i*u,i*v,i*wと、Idc〜零、零〜−Idcの範囲で変化する2つの三角波キャリア信号Tp,Tnとをそれぞれ比較し、その大小関係から直接、スイッチSup〜Swnのスイッチングパタンを得る。例えば、電源電圧位相角が0<θ<π/3(eu>ev>ew)の範囲では、出力電圧リプルを小さくするため、出力電圧の負側端子pを入力最大電圧相uに、出力電圧の正側端子nを入力最小電圧相wにそれぞれ接続しないという制約条件を設け、対応するスイッチSup,Swnのデューティ比dup,dwnを共に零とするように、表1におけるデューティ比のパタンpd=4を用いる。
このように出力電圧指令値V*cが負の場合にも、出力電圧Vcの平均値を出力電圧指令値V*c通りに、入力電流iuの基本波成分を入力力率1の入力電流指令値i*u通りに、それぞれ制御することができる。
【0040】
次いで、図1に示した制御装置100A内の各ブロックについて説明する。
図1の電源電圧検出手段110では、例えば、三相交流電源10の電圧を星形結線した抵抗等により分圧し、電源10の各相電圧eu,ev,ewを検出する。図1では電源電圧から各相電圧eu,ev,ewを検出しているが、フィルタコンデンサCfの電圧を検出しても良い。
【0041】
図6は、図1の入力電流指令値演算手段120の構成を示すブロック図である。
この入力電流指令値演算手段120では、電源電圧実効値Eの二乗E2を演算し、このE2と、出力電圧指令値V*cに比例するV*cIdcとを用いて、数式15により、電源電圧eu,ev,ewと同相の入力電流指令値i*u,i*v,i*wを演算する。この数式15は、数式4に数式2,6の関係を代入したものである。
なお、電源電圧実効値の二乗E2は数式3に基づいて演算する。
【数15】
【0042】
数式15において、出力電流Idc(>0)として検出値を用いることもできるが、表1のデューティ比の演算では入力電流指令値をIdcで除するので、Idcを正の任意の値に設定しても、デューティ比の演算結果に影響を与えない。従って、出力電流Idcを実際に検出する必要はなく、例えば、Idc=1と規格化して演算することができる。
【0043】
図7は、図1のデューティ比演算・オン信号発生手段130の動作説明図であり、制御周期Ts間のデューティ比と出力電圧波形とを示している。図7において、Tsは電源周期に比較して十分短いものとし、入力電流指令値i*u,i*v,i*wを一定値としている。
図7(a)は、入力力率1で、出力電圧指令値V*c(>0)が高い場合、図7(b)は、V*cを図7(a)の1/2とした出力電圧指令値V*cが低い場合、図7(c)は、図7(a)のV*cの符号を負にした場合である。電源電圧位相角θは0<θ<π/3であり、電源電圧値の大小関係はeu>ev>ewである。
ここでは入力電流指令値を電源電圧と同相にしているので、図7(a),(b)では電流指令値の大小関係がi*u>i*v>i*wであり、図7(c)ではi*w>i*v>i*uである。
【0044】
図7(a)及び図7(b)では、出力電圧リプルを小さくするため、直流出力端子pを入力最小電圧相wに接続せず、直流出力端子nを入力最大電圧相uに接続しない制約条件を設け、スイッチSwp,Sunに対するデューティ比dwp,dunを零とする。すなわち、表1におけるデューティ比のパタンpd=1を用い、前述した数式14のデューティ比を実現する。
【0045】
表1のパタンpd=1において、スイッチSupのデューティ比dup=i*u/Idcに相当するオン信号gupは、入力電流指令値i*uと、零〜Idcの間で変化する三角波キャリア信号Tpとを比較し、i*u>Tpの信号として得られる。また、スイッチSvpのオン信号gvpは、i*u<Tpの信号として得られる。
同じくパタンpd=1において、スイッチSwnのデューティ比dwn=i*w/−Idcに相当するオン信号gwnは、入力電流指令値i*wと、−Idc〜零の間で変化する三角波キャリア信号Tnとを比較し、i*w<Tnの信号として得られる。また、スイッチSvnのオン信号gvnは、i*w>Tnの信号として得られる。
【0046】
図7(a)の出力電圧指令値V*cが高いときには、出力電圧Vcは−ewu,evw,euvの3レベルの正の電圧により指令値通りの電圧を実現している。図7(b)の出力電圧指令値V*cが低いときには、evw,euv,零の3レベルの電圧を出力し、最大電圧である−ewuを出力していない。従って、図7(a),(b)共に出力電圧リプルを低減できている。
【0047】
図7(c)では、出力電圧指令値V*cの符号が負であるため、直流出力端子pを入力最大電圧相uに接続せず、直流出力端子nを入力最小電圧相wに接続しない制約条件を設け、スイッチSup,Swnに対するデューティ比dup,dwnを零とする。すなわち、表1におけるデューティ比のパタンpd=4を用いる。
【0048】
表1のパタンpd=4において、スイッチSwpのデューティ比dwp=i*w/Idcに相当するオン信号gwpは、入力電流指令値i*wと、零〜Idcの間で変化する三角波キャリア信号Tpとを比較し、i*w>Tpの信号として得られる。また、スイッチSvpのオン信号gvpは、i*w<Tpの信号として得られる。
同じくパタンpd=4において、スイッチSunのデューティ比dun=i*u/−Idcに相当するオン信号gunは、入力電流指令値i*uと、−Idc〜零の間で変化する三角波キャリア信号Tnとを比較し、i*u<Tnの信号として得られる。また、スイッチSvnのオン信号gvnは、i*u>Tnの信号として得られる。
図7(c)の出力電圧指令値V*cが負のときの出力電圧Vcの波形は、図7(a)の出力電圧Vcを正負反転した波形に相当し、ewu,−evw,−euvの3レベルの負の電圧によって構成されるので、出力電圧リプルを低くできると共に、指令値通りの電圧を実現している。
【0049】
図8は、図1のデューティ比演算・オン信号発生手段130の構成を示すブロック図である。
デューティ比演算・オン信号発生手段130では、入力電流指令値i*u,i*v,i*wをコンパレータに入力して三角波キャリア発生手段131からの三角波キャリア信号Tp,Tnとそれぞれ比較し、その結果をQup〜Qwnとして出力する。ここで、三角波キャリア信号TpはIdc〜零の範囲で変化し、三角波キャリア信号Tnは零〜−Idcの範囲で変化するものである。三角波のピーク値Idc,−Idcは、実際の検出電流を用いる必要はなく、入力電流指令値演算手段120において用いた値に設定すれば良い。
【0050】
上記の比較結果Qup〜Qwnは、表2に示すデューティ比信号に相当している。ただし、表2のデューティ比は、入力電流指令値i*u,i*v,i*wが比較される三角波キャリア信号の範囲内の値であるときに成立するものである。
【表2】
【0051】
一方、図8のオンスイッチパタン選択手段132は、入力電流指令値i*u,i*v,i*wの最大、中間、最小(すなわち大小関係)を判別する。
この大小関係を判別するために、まず、入力電流指令値の差i*uv,i*vw,i*wuを数式16により計算する。
【数16】
【0052】
表3は、入力電流指令値の大小判別とデューティ比のパタン選択との関係を示している。
オンスイッチパタン選択手段132は、数式16により求めた電流指令値の差i*uv,i*vw,i*wuの符号から、入力電流指令値i*u,i*v,i*wの最大、中間、最小を判別することができる。更に、最大電流指令値の入力相と直流出力端子p、最小電流指令値の入力相と直流出力端子nをそれぞれ接続しないように、表1のデューティ比のパタンpdを選択して出力する。
【表3】
【0053】
図8のpスイッチオン信号選択手段133では、入力電流指令値i*u,i*v,i*wとIdc〜零の範囲で変化する三角波キャリア信号Tpとの比較結果Qup,Qvp,Qwpと、デューティ比のパタンpdとを用いて,p側スイッチSup,Svp,Swpのオン信号gup,gvp,gwpを発生する。
具体的には、表1のデューティ比のパタンpdのデューティ比を実現するように、表2の比較結果Qup,Qvp,Qwpが発生するデューティ比をそれぞれ割り振ればよい。例えば、デューティ比のパタンpd=1では、dup=i*u/Idc,dvp=1−i*u/Idcであるから、比較結果Qupがi*u/Idcのデューティ比に相当する信号であり、オン信号は、gup=Qup,gvp=Qupの反転信号,gwp=0によって得られる。
【0054】
なお、図8のnスイッチオン信号選択手段134では、入力電流指令値i*u,i*v,i*wと−Idc〜零の範囲で変化する三角波キャリア信号Tnとの比較結果Qun,Qvn,Qwnと、デューティ比のパタンpdとを用いて,n側スイッチSun,Svn,Swnのオン信号gun,gvn,gwnを発生する。
【0055】
表4は、デューティ比のパタンpdに対するpスイッチオン信号選択手段133及びnスイッチオン信号選択手段134の動作をまとめたものである。
【表4】
【0056】
次に、図9は、pスイッチオン信号選択手段133において、一例としてスイッチSupのオン信号gupを実現するオン信号選択手段の論理回路例である。
表4より、オン信号gupは、デューティ比のパタンpd=1,pd=6のとき比較結果Qupを、pd=2のとき比較結果Qvpの反転信号を、pd=5のとき比較結果Qwpの反転信号を、それぞれ出力する。デューティ比のパタンpdが1,2,5,6のそれぞれの状態を表す信号としてpd1,pd2,pd5,pd6を定義すれば、図9の論理回路が得られる。他のオン信号を発生する回路についても、同様に構成することができる。
【0057】
なお、本実施形態の三角波キャリア発生手段131により用いた2つの三角波キャリア信号Tp,Tnは同相であるが、本実施形態は、互いに逆相や位相差を持たせた三角波キャリア信号を用いても実現可能である。更に、キャリア信号として、三角波の代わりに傾きが正または負の鋸歯状波を用いることもできる。この場合、2つのキャリア信号の鋸歯状波の傾きの選び方として、正正、正負、負正、負負などの組み合わせを制御周期ごとに選ぶこともできる。
また、本実施形態における電源電圧検出手段110はあくまで一例であり、出力として線間電圧を検出してもよいし、電源電圧の振幅を一定値とみなして、電源電圧の正負を検出するだけでも実現可能である。
【0058】
次いで、図10は本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。この実施形態に係る制御装置100Bは、第1実施形態の制御装置100Aに入力力率の調整機能を追加したものである。
すなわち、図10において、制御装置100Bは電源電圧位相角検出手段140を備えており、電源電圧eu,ev,ewから位相角θを検出して入力電流指令値演算手段120に出力する。入力電流指令値演算手段120では、入力力率角指令値ψ*に従って入力電流指令値i*u,i*v,i*wを演算し、出力する。
なお、電源電圧検出手段110及びデューティ比演算・オン信号発生手段130の機能は、第1実施形態と同様である。
【0059】
図11は、電源電圧位相角検出手段140の構成を示すブロック図であり、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)を用いている。
図11において、波形整形回路141は、電源電圧eu,ev,ewの零クロスを検知し、π/3ごとに変化する電源1周期当たり3パルスの信号θoを発生する。また、カウンタ142は、信号θoに対応した信号θpを発生する。位相比較器143は、信号θoと信号θpとの位相角誤差Δθを検出し、この位相角誤差Δθが減少するように発振器144の出力パルスpの周波数を調整する。この出力パルスpをカウンタ142が計数することにより、カウンタ142の出力値が電源電圧位相角θになる。
【0060】
図12は、図10における入力電流指令値演算手段120の構成を示すブロック図である。入力電流指令値演算手段120は、数式4に数式2,6の関係を代入し、数式17によって入力電流指令値i*u,i*v,i*wを演算する。
【数17】
【0061】
図12に示すように、数式17の右辺の分子は、出力電圧指令値V*cと直流出力電流Idcとの積により演算される。ここで、出力電流Idcの値は、第1実施形態と同様に、入力電流指令値演算手段120及びデューティ比演算・オン信号発生手段130におけるIdcと同じ値にすることで、正の任意の値に設定することができる。
また、数式17の右辺の分母については、数式3を用いて電源電圧実効値Eを演算すると共に、入力力率角指令値ψ*から三角関数テーブルを用いて入力力率指令値cosψ*を求め、これらを乗じてEcosψ*を演算する。更に、数式17の右辺の電流指令値振幅の係数√(2/3)を乗じることにより、入力電流指令値振幅√2I*が演算される。
【0062】
数式17における入力電流指令値i*u,i*v,i*wの位相角は、入力力率角指令値ψ*と電源電圧位相角θとから得られる。更に、三角関数テーブルを用いて、各入力相の余弦cos(θ+ψ),cos(θ+ψ*−2π/3),cos(θ+ψ*+2π/3)を得て、これらの余弦値に前記入力電流指令値振幅√2I*を乗じることにより、入力電流指令値i*u,i*v,i*wを得る。
これらの入力電流指令値i*u,i*v,i*wを、図8に示したデューティ比演算・オン信号発生手段130に入力することによりデューティ比が演算され、各スイッチSup〜Swnのオン信号gup〜gwnが演算される。
【0063】
次に、図13は第2実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段130の動作波形図であり、制御周期Ts間のデューティ比、入力電流及び出力電圧波形を示している。Tsは電源周期に比較して十分短いものとして、入力電流指令値i*u,i*v,i*wを一定値としている。
図13(a)は図7(b)の波形に等しく、出力電圧指令値Vc*>0、入力力率角指令値ψ*=0の場合である。また、図13(b)は、図13(a)に対して入力力率角指令値ψ*=−π/3とした場合である。
【0064】
図13(a)では、入力電流指令値の大小関係がi*u>i*v>i*wとなっており、表4のデューティ比のパタンpd=1が選択され、p側スイッチはデューティ比dup,dvpに、n側スイッチはデューティ比dvn,dwnに値をそれぞれ持つ。入力電流iu,iv,iw及び出力電圧Vcは、制御周期Tsの平均値としてそれぞれの指令値に一致した値が得られている。
図13(b)では、入力力率角指令値ψ*=−π/3としているため、入力電流指令値の大小関係がi*u>i*w>i*vとなっており、表4のデューティ比のパタンpd=6が選択され、p側スイッチはデューティ比dup,dwpに、n側スイッチはデューティ比dwn,dvnにそれぞれ値を持つ。入力電流iu,iv,iw及び出力電圧Vcは、制御周期Tsの平均値としてそれぞれの指令値に一致した値が得られている。
【0065】
図14は、本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態の制御装置100Cでは、入力力率角指令値ψ*が大きくなったときに電流指令値の大小関係が変化しても、電源電圧の大小関係を優先してデューティ比のパタンを選択することにより、出力電圧リプルを低減する。
制御装置100C内のデューティ比演算・オン信号発生手段130Cにおいて、第1実施形態のデューティ比演算・オン信号発生手段130に、新たに電源電圧eu,ev,ewと入力力率角指令値ψ*と出力電圧指令値V*cとが入力されており、これらに基づいてスイッチのオン信号及びキャリア信号の選択を変更している。
なお、図14の電源電圧検出手段110は第1実施形態における電源電圧検出手段110と、図14の電源電圧位相角検出手段140,入力電流指令値演算手段120は、第2実施形態における電源電圧位相角検出手段140、入力電流指令値演算手段120と、それぞれ同じ機能を有している。
【0066】
図15は、第3実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段130Cの構成を示すブロック図である。
入力電流指令値i*u,i*v,i*wと三角波キャリア信号Tp,Tnとはそれぞれ6個の比較器により比較され、比較結果Qup〜Qwnを得る。三角波キャリア信号Tp,Tnは、それぞれIdc〜零、零〜−Idcの範囲で変化する波形である。比較結果Qup〜Qwnから各スイッチのオン信号を選択するが、その選択基準は電源電圧値の大小関係に基づいている。ここで、三角波キャリア信号の変化範囲を決定するIdcの値については、第1実施形態と同様に、入力電流指令値演算手段120におけるIdcと同じ値にすることで、正の任意の値に設定することができる。
【0067】
図15の符号演算器135によって出力電圧指令値Vc*の符号(±1)を演算し、この符号を電源電圧eu,ev,ewに乗じて基準電圧値e0u,e0v,e0wを得る。オンスイッチパタン選択手段132では、基準電圧値e0u,e0v,e0wの大小関係を判別するために基準電圧値の差e0v,e0w,e0uを数式18により計算する。
【数18】
【0068】
表5は、基準電圧値の大小判別とデューティ比のパタン選択とを示している。基準電圧値の差電圧e0uv,e0vw,e0wuの符号から、基準電圧値の最大、中間、最小を判別することができる。入力力率角指令値ψ*により、電流指令値の大小関係が変化しても、電源電圧の大小関係を優先してデューティ比のパタンを選択することにより、出力電圧リプルを低減する。
入力力率角指令値については、−π/2<ψ*<−π/6、−π/6≦ψ*≦π/6、π/6<ψ*<π/2に分け、基準電圧値の大小関係を優先して、正の電圧を出力させる直流出力端子はできるだけ入力電圧の高い電圧相に、負の電圧を出力させる直流出力端子はできるだけ入力電圧の低い電圧相にそれぞれ接続する。
【表5】
【0069】
表6は、表5により決まったデューティ比のパタンを実現するオン信号選択動作表であり、各パタンに応じたオン信号は先に示した表4と同様である。
なお、三角波キャリア信号Tp,Tnについては、入力力率角指令値ψ*が−π/6≦ψ*≦π/6の場合には同相とし、これ以外の場合には、逆相を選択する。
【表6】
【0070】
次に、図16は、電源電圧の大小関係がeu>ev>ewであり、電源電圧位相角が12[deg]の場合の、出力電圧指令値V*c>0と入力力率角指令値ψ*=−π/6を与えたときの動作波形であり、図16(a)は第2実施形態を、図16(b)は第3実施形態をそれぞれ示している。
図16(a)の第2実施形態では、入力電流指令値の大小関係がi*u>i*w>i*vであり、この大小関係に基づいて表4からデューティ比のパタンpd=6が選択される。この第2実施形態では入力電流指令値の大小関係を優先しているために、出力電圧Vcの波形は負の電圧−evwを用いることになり、出力電圧リプルが大きくなる。
一方、図16(b)の第3実施形態では、入力力率角指令値ψ*=−π/6であるため、電源電圧の大小関係がeu>ev>ewである基準電圧の大小関係e0u>e0v>e0wに基づいて、表5からデューティ比のパタンpd=1が選択される。この第3実施形態では電源電圧の大小関係を優先しているために、出力電圧Vcの波形は正の電圧または零を用いることになり、第2実施形態よりも出力電圧リプルを抑制できている。
【0071】
図17は、第3実施形態における動作波形であり、入力力率角指令値ψ*=−π/3を与えた場合のものである。この動作波形は、第2実施形態の図13(b)の動作波形と同じ条件である。第2実施形態では三角波キャリア信号Tp,Tnを同相としたのに対し、第3実施形態では、入力力率角指令値ψ*=−π/3において三角波キャリア信号Tp,Tnとして逆相を選択するので、図17の動作波形が得られ、出力電圧Vcの波形のリプルを抑制できている。
【0072】
図18は、本発明の第4実施形態の構成を示すブロック図である。この実施形態の制御装置100Dは、図14の入力力率角指令値ψ*を与える入力力率角指令値演算手段150を備えており、この演算手段150は電源力率を1に制御するように入力力率角指令値ψ*を決定する。
図18における入力力率角指令値演算手段150以外のブロックは、図14の第3実施形態と同様である。ただし、入力力率角指令値演算手段150では、入力電流指令値演算手段120によって得られる電源電圧実効値Eを演算に用いている。
【0073】
ここで、電源高調波を抑制するためのリアクトルLfとコンデンサCfとからなるLCフィルタにより、入力電流指令値と電源電流との間に位相差を持つので、入力電流を力率1に制御したとしても、電源力率は必ずしも1にならない。そこで、入力力率角指令値演算手段150として、LCフィルタに流れ込む進相電流が無視できなくなる軽負荷時などにおいて、電源力率を1に制御する方法について説明する。
【0074】
図19(a)はLCフィルタを有する入力u相の等価回路であり、図19(b)はそのベクトル図である。
図19(a)では、交流−直流電力変換器に対するu相の入力電流指令値i*uを電流源にて示している。i*u=0としたとき、LCフィルタのコンデンサ電流Icuは数式19により表される。
【数19】
【0075】
通常、LCフィルタの共振周波数は電源周波数より十分高く、数式19においてωLf−1/3ωCf<0の関係が得られるので、Iq>0となり、コンデンサ電流Icuは進み電流となる。
図19(b)及び数式20に示すように、電源電流Isuを有効電流成分Ipのみとして電源力率1を実現するためには、数式21に従って入力電流指令値I*uを与えればよい。
すなわち、図19(b)に示す入力力率角指令値ψ*を与えることで、電源力率1を実現することができる。
【数20】
【数21】
【0076】
電源力率1としたときの入力有効電流実効値Ipは、出力電圧指令値V*c、出力電流検出値Idc、電源電圧実効値Eを用いて、数式6においてψ*=0を代入することにより数式22によって得ることができる。
【数22】
【0077】
なお、損失を考慮する場合には、損失分に相当した有効電流を数式22の右辺に加算して対応することができる。一方、電源電圧実効値Eと数式19との関係から、コンデンサCfに流れる無効電流Iqは数式23により得られる。
【数23】
【0078】
数式22,23を用いて、図19(b)のベクトル関係から、入力力率角指令値ψ*は数式24によって与えられる。
【数24】
なお、この実施形態の入力力率角指令値演算手段150は、図10の第2実施形態における入力力率角の調整にも適用可能である。
【0079】
次いで、図20は本発明の第5実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態は、図20に示すように、直流出力端子p,nに直列にリアクトルLとコンデンサCとが接続され、コンデンサCに並列に負荷20が接続された交流−直流電力変換器において、コンデンサCの直流電圧を制御する制御系を備えたものである。
【0080】
図20に示す制御装置100Eは、コンデンサCの両端の電圧検出値Vdc及びコンデンサ電圧指令値Vdc*が入力されて直流出力電流指令値Idc*を演算する直流出力電流指令値演算手段160と、直流出力電流指令値Idc*及び直流出力電流検出値Idcが入力されて図14における出力電圧指令値Vc*を演算する直流出力電圧指令値演算手段170と、を備えている。
直流出力電流指令値演算手段160では、数式25に示す電圧偏差ΔVdcに対して、数式26に示すように、電圧制御系の比例ゲインKPVと積分ゲインKIVとを持つPI(比例積分)制御を施して直流出力電流指令値Idc*を演算する。
【数25】
【数26】
【0081】
直流出力電圧指令値演算手段170では、数式27に示す電流偏差ΔIdcに対して、数式28に示すように、電流制御系の比例ゲインKPIと積分ゲインKIIとを持つPI制御を施して出力電圧指令値Vc*を演算する。
【数27】
【数28】
【0082】
本実施形態では、電圧制御系及び電流制御系にPI制御を用いているが、二自由度制御などの他の制御法を用いても良い。
なお、この実施形態における直流出力電流指令値演算手段160及び直流出力電圧指令値演算手段170を、図1の第1実施形態に係る制御装置100Aや図10の第2実施形態に係る制御装置100Bに適用して直流出力電流Idcやコンデンサ電圧Vdcを制御することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
10:三相交流電源
20:負荷
100,100A,100B,100C,100D,100E:制御装置
110:電源電圧検出手段
120:入力電流指令値演算手段
130,130C:オンデューティ比演算・オン信号発生手段
131:三角波キャリア発生手段
132:オンスイッチパタン選択手段
133:pスイッチオン信号選択手段
134:nスイッチオン信号選択手段
135:符号演算器
140:電源電圧位相角検出手段
141:波形整形回路
142:カウンタ
143:位相比較器
144:発振器
150:入力力率角指令値演算手段
160:直流出力電流指令値演算手段
170:直流出力電圧指令値演算手段
Lf,L:リアクトル
Cf,C:コンデンサ
u,v,w:交流入力端子
p,n:直流出力端子
Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swn:半導体スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ等の大形のエネルギーバッファを用いることなく、半導体スイッチを用いて多相交流電圧を任意の大きさの直流電圧に変換する交流−直流電力変換器に関し、特に、直流出力電圧のリプルやスイッチング損失の低減、ノイズの抑制、入力力率の調整を可能にした交流−直流電力変換器の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交流−直流電力変換器としての電流形電力変換器が記載されている。
図21は、特許文献1に記載された電流形電力変換器とほぼ同様の回路である。図21において、10は三相交流電源、20は負荷、100は制御装置、CfはLCフィルタを構成するコンデンサ、Lfは同じくリアクトル、Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnは半導体スイッチ(以下、単にスイッチともいう)、Lは平滑用のリアクトルである。なお、gup,gvp,gwp,gun,gvn,gwnは、スイッチSup〜Swnに対するオン信号(駆動信号)である。
一般に、この種の電流形電力変換器では直流側にリアクトルLが直列に接続されるので、電力変換器の制御に当たっては出力電圧の波形制御は行わず、交流側の電流高調波を抑制するために交流入力電流の波形制御に重点が置かれている。
【0003】
ここで、非特許文献1には、電圧形電力変換器の三角波比較方式PWMパタン発生法に対して双対な電流形電力変換器のPWMパタン発生法が開示されている。
図22は、非特許文献1における動作波形を示しており、対象とする電力変換器の構成は図21と同様であるため、図22では図21に付した参照記号を用いている。
【0004】
非特許文献1では、入力電流を制御するため、制御装置100において入力相電流指令値i*uw(=(i*u−i*w)/3),i*vu,i*wvを線間電圧実効値Eの入力電圧eu,ev,ewと同相で与えている。これらの入力相電流指令値i*uw,i*vu,i*wvと振幅Idc/2の三角波キャリア信号とを比較し、その大小関係から得られる信号を簡単な論理回路に通すことにより、スイッチSup〜Swnのオン信号gup〜gwnが得られる。
図22に示すように、例えばu相の入力電流波形iuは、指令値と同符号の電流パルスによって実現でき、その高調波成分を低減することができる。三角波キャリア信号の半周期において三相全体で3回の転流があり、出力電圧Vcの波形は、電源線間電圧の正の3レベルの電圧と零電圧とによって実現される。
また、出力電圧Vcの波形においては、最大電圧から零電圧に変化するスイッチングがあり、三相入力相電圧において最大電圧相から最小電圧相へ転流しているため、この転流ではスイッチング損失及びノイズが大きくなる。
【0005】
一方、非特許文献2には、p側またはn側のスイッチのうち1つのスイッチを制御周期間導通させ続けると共に反対側のスイッチで転流を行い、転流回数を2回に低減すると同時に、スイッチング損失を低減するように電源の最大電圧相と最小電圧相との間の転流を行わないようにした制御方法が開示されている。
この制御方法によれば、交流入力電流の波形は指令値と同符号の電流パルスによって構成され、高調波電流が抑制されることになるが、直流出力電圧の波形は常に零電圧を含むため、出力電圧リプルは十分に低減されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3590195号公報(段落[0002]〜[0003]、図4等)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】竹下隆晴、外山浩司、松井信行、「電流形三相インバータ・コンバータの三角波比較方式PWM制御」、電気学会論文誌D、産業応用部門誌、Vol.116,No.1,pp.106−107(1996年)
【非特許文献2】茂木進一、「三相電流形変換器のための新しい二相変調法の提案とその効果」、電気学会半導体電力変換研究会資料、SPC−11−1、pp.1−6、(2011年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の制御方法または制御装置では、スイッチング損失やノイズ、出力電圧リプルを十分に低減することができないという問題があった。
そこで、本発明の解決課題は、交流−直流電力変換器の制御周期におけるスイッチング損失、ノイズ及び出力電圧リプルの低減を可能にし、装置全体の小型化、低価格化を可能にした交流−直流電力変換器の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、多相交流電源の各相に接続される複数の交流入力端子と正負の直流出力端子とが複数の半導体スイッチを介してそれぞれ接続され、前記半導体スイッチのオンオフ動作により、交流電圧を任意の大きさの直流電圧に変換する交流−直流電力変換器において、
前記交流電源の相電圧値の大小関係または前記電力変換器の入力電流指令値の大小関係が変化しない範囲において、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定するものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最大電圧相と中間電圧相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最小電圧相と中間電圧相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定するものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧及び前記変換器の直流出力電圧指令値に基づいて前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、を備えたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの入力電流指令値の最大相と中間相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの入力電流指令値の最小相と中間相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定するものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1または4に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧に基づいて電源電圧位相角を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記電源電圧位相角、入力力率角指令値、及び、前記変換器の直流出力電圧指令値から前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、を備えたものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
入力力率角指令値が電気角で+30度〜−30度の範囲外である場合には、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最大電圧相とその他の電圧相一相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最小電圧相とその他の電圧相一相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定するものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1または6に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧に基づいて電源電圧位相角を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記電源電圧位相角、入力力率角指令値、及び、前記変換器の直流出力電圧指令値から前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記入力力率角指令値、前記直流出力電圧指令値、及び、前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、を備えたものである。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7の何れか1項に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
前記変換器の出力電力または出力電圧に応じて前記入力力率角指令値を演算する手段を備えたものである。
【0017】
請求項9に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載した交流−直流電力変換器の制御装置であって、前記直流出力端子に直列にリアクトルとコンデンサとが接続されると共に、前記コンデンサに並列に負荷が接続されてなる交流−直流電力変換器の制御装置において、
前記コンデンサの電圧指令値と電圧検出値とから直流出力電流指令値を演算する手段と、
前記直流出力電流指令値と直流出力電流検出値とから前記直流出力電圧指令値を演算する手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スイッチング損失の低減により電力変換効率を向上させることができる。また、発生ノイズの低減によるノイズフィルタの小型化、出力電圧リプルの低減による出力フィルタの小型化が可能であり、装置全体の小型化、低価格化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】各実施形態における半導体スイッチの構成例を示す図である。
【図3】第1実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の基本原理を説明する波形図である。
【図4】第1実施形態における半導体スイッチのデューティ比を求めるための交流−直流電力変換器のモデルを示す図である。
【図5】図3(a)において、出力電圧指令値の符号を負にした場合の動作波形図である。
【図6】第1実施形態における入力電流指令値演算手段の構成を示すブロック図である。
【図7】第1実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の動作波形図である。
【図8】第1実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の構成を示すブロック図である。
【図9】図8におけるpスイッチオン信号選択手段の主要部の論理回路例を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。
【図11】第2実施形態における電源電圧位相角検出手段の構成を示すブロック図である。
【図12】第2実施形態における入力電流指令値演算手段の構成を示すブロック図である。
【図13】第2実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の動作波形図である。
【図14】本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図15】第3実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段の構成を示すブロック図である。
【図16】第2実施形態及び第3実施形態の動作波形図である。
【図17】第3実施形態の動作波形図である。
【図18】本発明の第4実施形態の構成を示すブロック図である。
【図19】第4実施形態における入力力率角指令値演算手段の作用を説明するための入力u相の等価回路及びそのベクトル図である。
【図20】本発明の第5実施形態の構成を示すブロック図である。
【図21】特許文献1に記載された電流形電力変換器と同様の回路を示す図である。
【図22】非特許文献1における動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
なお、以下の説明において参照する各図では、同一の機能を有する回路構成要素及び電気量等に同一の参照符号を付してある。
【0021】
図1は本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図である。なお、この第1実施形態以降の各実施形態では、多相交流電源を三相として説明する。
図1において、交流−直流電力変換器は、三相交流電源10と、その各相に接続されたリアクトルLfと、各線間に接続されたコンデンサCfと、三相の交流入力端子u,v,wと正負の直流出力端子p,nとの間に接続された半導体スイッチSup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnと、を備え、直流出力端子p,nの相互間には負荷20が接続されている。
【0022】
上記交流−直流電力変換器を制御する制御装置100Aは、三相交流電源10の各相の電圧eu,ev,ewを検出する電源電圧検出手段110と、前記電源電圧eu,ev,ewと直流出力電圧指令値Vc*とから各相の入力電流指令値i*u,i*v,i*wを演算する入力電流指令値演算手段120と、前記入力電流指令値i*u,i*v,i*wから前記スイッチSup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnのデューティ比を演算し、各スイッチのオン信号を発生するデューティ比演算・オン信号発生手段130とを備え、最終出力として、PWMパタンである各スイッチのオン信号gup,gvp,gwp,gun,gvn,gwnを得る。
【0023】
図2は、図1における交流−直流電力変換器のスイッチの構成例を示しており、u相のスイッチSup,Sunの構成を例示してある。
図2(a)は、出力電流Idcが常時、正(Idc≧0)の場合に使用するスイッチSup,Sunの例である。直流出力端子pに接続されるスイッチSupには、交流電源10(入力端子u)から端子pに電流が流れるスイッチを用い、直流出力端子nに接続されるスイッチSunには、端子nから交流電源10(入力端子u)に電流が流れるスイッチを用いる。
【0024】
図2(b)は、出力電流Idcが常時、負(Idc≦0)の場合に使用するスイッチSup,Sunの例である。直流出力端子pに接続されるスイッチSupには、端子pから交流電源10(入力端子u)に電流が流れるスイッチを用い、直流出力端子nに接続されるスイッチSunには、交流電源10(入力端子u)から端子nに電流が流れるスイッチを用いる。
図2(c)は、出力電流Idcの符号が正負の両方になるスイッチSup,Sunの例であり、両スイッチSup,Sunには双方向に電流が流れるスイッチを用いる。
ここで、図2(a)〜(c)の構成は他のスイッチSvp,Swp,Svn,Swnについても同様である。
【0025】
図3は、第1実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段130の基本原理図であり、その動作の概要について以下に説明する。
図3(a)は、直流出力電圧指令値V*cが高い場合であり、図3(b)は低い場合である。
出力電圧Vcは平均値として出力電圧指令値V*cに一致しており、入力電流iuの基本波成分は入力力率1の入力電流指令値i*uに一致している。各スイッチSup〜Swnのオン信号gup〜gwnを発生するPWM制御法としては、電源電圧eu,ev,ewと同相の入力電流指令値i*u,i*v,i*wと、Idc〜零、零〜−Idcの範囲で変化する2つの三角波キャリア信号Tp,Tnとをそれぞれ比較し、その大小関係から直接、スイッチSup〜Swnのスイッチングパタンを得ている。
【0026】
電源電圧位相角θ〔rad〕が、例えば、0<θ<π/3(eu>ev>ew)の範囲では、端子p側のスイッチは、スイッチSup,Svpの電源の二相へ接続するオン信号gup,gvpのみが与えられ、端子n側のスイッチは、スイッチSvn,Swnの電源の二相へ接続するオン信号gvn,gwnのみが与えられる。
このとき、p側スイッチSup,Svpの動作は、最大電圧euから中間電圧evへの転流、n側スイッチSvn,Swnの動作は、最小電圧ewから中間電圧evへの転流であり、最大電圧と最小電圧との間の転流ではなく、三相全体で転流回数を2回に低減できるので、スイッチング損失及びノイズを低減することができる。
図3(a)の出力電圧指令値V*cが高い場合には、出力電圧Vcの波形は、正の3レベルの入力線間電圧により実現され、零電圧まで下がらないので、出力電圧リプルを低減することが可能である。また、図3(b)の出力電圧指令値V*cが低い場合には、出力電圧Vcの波形は、正の最大の入力線間電圧レベルを用いずに、低い2レベルの入力線間電圧と零電圧とによって実現されており、出力電圧リプルを低減できている。
【0027】
次に、デューティ比演算・オン信号発生手段130におけるデューティ比演算式を導出する。
出力瞬時電力poutは、出力電圧指令値V*c及び出力電流Idcを用いて数式1により得ることができる。
【数1】
交流−直流電力変換器はコンデンサ等のエネルギーバッファを持たないので、出力瞬時電力poutと等しい入力瞬時電力pinが実現されるように入力電流指令値を定めることで、指令値通りの出力電圧Vcを得ることができる。
【0028】
ここで、図1の入力リアクトルLfにおける電圧降下は電源電圧に比較して十分小さいと仮定し、これを無視して説明する。
三相交流電源電圧eu,ev,ewは、電源電圧実効値E、位相角θ(=ωt)を用いて数式2により与えられる。
【数2】
なお、電源電圧実効値Eは、数式3に示すように、相電圧の2乗和の平方根により得られる。
【数3】
【0029】
電源電圧に対して入力電流指令値i*u,i*v,i*wは、入力電流実効値指令値I*、入力力率角指令値ψ*を用いて数式4により表される。
【数4】
よって、入力瞬時電力pinは、数式2,4から数式5によって得ることができる。
【数5】
【0030】
入力力率角指令値ψ*は任意の値に設定可能であるが、入力電流実効値指令値I*については、前述したように入出力の瞬時電力をバランスさせる観点から、数式1〜数式5に基づいて数式6により求められる。
【数6】
【0031】
次に、図4は、各スイッチのデューティ比を求めるための交流−直流電力変換器のモデルを示している。
制御周期Ts(三角波キャリア信号の半周期)は回路の時定数に比較して十分短いものとして、ここでは入力のLCフィルタを省略し、入力電圧及び出力電流を一定値と近似する。図4では、各相の電源電圧eu,ev,ewを直流電圧源により、出力電流Idcを直流電流源によりそれぞれ表している。また、制御周期Ts間の出力電圧指令値V*c、入力電流指令値i*u,i*v,i*wをそれぞれ一定値として扱う。
本実施形態では、スイッチング損失(スイッチング回数)及び出力電圧リプルを共に低減するために、導通させないスイッチを設けてあり、図4では、電源電圧位相角θが0<θ<π/3の範囲において、導通させないスイッチを破線で示している。
【0032】
なお、図4におけるスイッチSup〜Swnは、例えば前述の図2(c)のような双方向スイッチであり、これら6個の双方向スイッチSup〜Swnの制御周期Ts間のデューティ比をそれぞれdup〜dwnとする。
出力電流の連続性を確保し、入力線間電圧の短絡を引き起こさないように、直流出力端子p,nにそれぞれ接続されるスイッチのうち何れかのスイッチを導通させることから、デューティ比について数式7,8が成立する。
【数7】
【数8】
【0033】
入力電流指令値i*u,i*v,i*wは、デューティ比を用いて数式9〜数式11によって表すことができる。
【数9】
【数10】
【数11】
【0034】
数式7〜11から各デューティ比を一意に決定することはできないので、後述するように拘束条件を与えてデューティ比を決定する。
制御周期Ts間の出力電圧平均値Vc(本文中では使用可能な文字に制限があるため、「  ̄ 」を省略する)は数式12の上段により得られ、これを数式1,5,9〜11を用いて変形すると、数式12の下段に示すように出力電圧指令値V*c通りに制御されていることがわかる。
【数12】
【0035】
第1実施形態における各スイッチのデューティ比を導出する条件として、出力電圧指令値V*c>0として、電源電圧位相角が0<θ<π/3、すなわち、各相電圧の大小関係がeu>ev>ewの場合につき考える。出力電圧リプルを小さくするため、直流出力端子pを入力最小電圧相wに、直流出力端子nを入力最大電圧相uにそれぞれ接続しない制約条件を設け、数式13のようにデューティ比dwp,dunを零とする。
【数13】
【0036】
数式7〜11から、数式13の制約条件のもとで残りの各デューティ比dup,dvp,dvn,dwnを求めると、数式14が得られる。
【数14】
【0037】
以下の表1は、p側スイッチ及びn側スイッチにつきそれぞれ1つずつオンさせないスイッチの組み合わせと、各デューティ比とをまとめたものであり、全部で6通りのデューティ比のパタンpdが得られる。
従って、デューティ比演算・オン信号発生手段130では、電源電圧位相角または入力電流指令値に応じて表1のデューティ比のパタンpdを使用することにより、各スイッチのオン信号gup〜gwnを発生させることができる。
【表1】
【0038】
次に、図5は、図3(a)において、出力電圧指令値V*cの符号を負にした場合のデューティ比演算・オン信号発生手段130の動作説明図である。ここでは、出力電圧指令値V*cが負になるので、入力電流指令値i*u,i*v,i*wの波形も図3(a)に対して正負反転している。
【0039】
デューティ比演算・オン信号発生手段130は、入力電流指令値i*u,i*v,i*wと、Idc〜零、零〜−Idcの範囲で変化する2つの三角波キャリア信号Tp,Tnとをそれぞれ比較し、その大小関係から直接、スイッチSup〜Swnのスイッチングパタンを得る。例えば、電源電圧位相角が0<θ<π/3(eu>ev>ew)の範囲では、出力電圧リプルを小さくするため、出力電圧の負側端子pを入力最大電圧相uに、出力電圧の正側端子nを入力最小電圧相wにそれぞれ接続しないという制約条件を設け、対応するスイッチSup,Swnのデューティ比dup,dwnを共に零とするように、表1におけるデューティ比のパタンpd=4を用いる。
このように出力電圧指令値V*cが負の場合にも、出力電圧Vcの平均値を出力電圧指令値V*c通りに、入力電流iuの基本波成分を入力力率1の入力電流指令値i*u通りに、それぞれ制御することができる。
【0040】
次いで、図1に示した制御装置100A内の各ブロックについて説明する。
図1の電源電圧検出手段110では、例えば、三相交流電源10の電圧を星形結線した抵抗等により分圧し、電源10の各相電圧eu,ev,ewを検出する。図1では電源電圧から各相電圧eu,ev,ewを検出しているが、フィルタコンデンサCfの電圧を検出しても良い。
【0041】
図6は、図1の入力電流指令値演算手段120の構成を示すブロック図である。
この入力電流指令値演算手段120では、電源電圧実効値Eの二乗E2を演算し、このE2と、出力電圧指令値V*cに比例するV*cIdcとを用いて、数式15により、電源電圧eu,ev,ewと同相の入力電流指令値i*u,i*v,i*wを演算する。この数式15は、数式4に数式2,6の関係を代入したものである。
なお、電源電圧実効値の二乗E2は数式3に基づいて演算する。
【数15】
【0042】
数式15において、出力電流Idc(>0)として検出値を用いることもできるが、表1のデューティ比の演算では入力電流指令値をIdcで除するので、Idcを正の任意の値に設定しても、デューティ比の演算結果に影響を与えない。従って、出力電流Idcを実際に検出する必要はなく、例えば、Idc=1と規格化して演算することができる。
【0043】
図7は、図1のデューティ比演算・オン信号発生手段130の動作説明図であり、制御周期Ts間のデューティ比と出力電圧波形とを示している。図7において、Tsは電源周期に比較して十分短いものとし、入力電流指令値i*u,i*v,i*wを一定値としている。
図7(a)は、入力力率1で、出力電圧指令値V*c(>0)が高い場合、図7(b)は、V*cを図7(a)の1/2とした出力電圧指令値V*cが低い場合、図7(c)は、図7(a)のV*cの符号を負にした場合である。電源電圧位相角θは0<θ<π/3であり、電源電圧値の大小関係はeu>ev>ewである。
ここでは入力電流指令値を電源電圧と同相にしているので、図7(a),(b)では電流指令値の大小関係がi*u>i*v>i*wであり、図7(c)ではi*w>i*v>i*uである。
【0044】
図7(a)及び図7(b)では、出力電圧リプルを小さくするため、直流出力端子pを入力最小電圧相wに接続せず、直流出力端子nを入力最大電圧相uに接続しない制約条件を設け、スイッチSwp,Sunに対するデューティ比dwp,dunを零とする。すなわち、表1におけるデューティ比のパタンpd=1を用い、前述した数式14のデューティ比を実現する。
【0045】
表1のパタンpd=1において、スイッチSupのデューティ比dup=i*u/Idcに相当するオン信号gupは、入力電流指令値i*uと、零〜Idcの間で変化する三角波キャリア信号Tpとを比較し、i*u>Tpの信号として得られる。また、スイッチSvpのオン信号gvpは、i*u<Tpの信号として得られる。
同じくパタンpd=1において、スイッチSwnのデューティ比dwn=i*w/−Idcに相当するオン信号gwnは、入力電流指令値i*wと、−Idc〜零の間で変化する三角波キャリア信号Tnとを比較し、i*w<Tnの信号として得られる。また、スイッチSvnのオン信号gvnは、i*w>Tnの信号として得られる。
【0046】
図7(a)の出力電圧指令値V*cが高いときには、出力電圧Vcは−ewu,evw,euvの3レベルの正の電圧により指令値通りの電圧を実現している。図7(b)の出力電圧指令値V*cが低いときには、evw,euv,零の3レベルの電圧を出力し、最大電圧である−ewuを出力していない。従って、図7(a),(b)共に出力電圧リプルを低減できている。
【0047】
図7(c)では、出力電圧指令値V*cの符号が負であるため、直流出力端子pを入力最大電圧相uに接続せず、直流出力端子nを入力最小電圧相wに接続しない制約条件を設け、スイッチSup,Swnに対するデューティ比dup,dwnを零とする。すなわち、表1におけるデューティ比のパタンpd=4を用いる。
【0048】
表1のパタンpd=4において、スイッチSwpのデューティ比dwp=i*w/Idcに相当するオン信号gwpは、入力電流指令値i*wと、零〜Idcの間で変化する三角波キャリア信号Tpとを比較し、i*w>Tpの信号として得られる。また、スイッチSvpのオン信号gvpは、i*w<Tpの信号として得られる。
同じくパタンpd=4において、スイッチSunのデューティ比dun=i*u/−Idcに相当するオン信号gunは、入力電流指令値i*uと、−Idc〜零の間で変化する三角波キャリア信号Tnとを比較し、i*u<Tnの信号として得られる。また、スイッチSvnのオン信号gvnは、i*u>Tnの信号として得られる。
図7(c)の出力電圧指令値V*cが負のときの出力電圧Vcの波形は、図7(a)の出力電圧Vcを正負反転した波形に相当し、ewu,−evw,−euvの3レベルの負の電圧によって構成されるので、出力電圧リプルを低くできると共に、指令値通りの電圧を実現している。
【0049】
図8は、図1のデューティ比演算・オン信号発生手段130の構成を示すブロック図である。
デューティ比演算・オン信号発生手段130では、入力電流指令値i*u,i*v,i*wをコンパレータに入力して三角波キャリア発生手段131からの三角波キャリア信号Tp,Tnとそれぞれ比較し、その結果をQup〜Qwnとして出力する。ここで、三角波キャリア信号TpはIdc〜零の範囲で変化し、三角波キャリア信号Tnは零〜−Idcの範囲で変化するものである。三角波のピーク値Idc,−Idcは、実際の検出電流を用いる必要はなく、入力電流指令値演算手段120において用いた値に設定すれば良い。
【0050】
上記の比較結果Qup〜Qwnは、表2に示すデューティ比信号に相当している。ただし、表2のデューティ比は、入力電流指令値i*u,i*v,i*wが比較される三角波キャリア信号の範囲内の値であるときに成立するものである。
【表2】
【0051】
一方、図8のオンスイッチパタン選択手段132は、入力電流指令値i*u,i*v,i*wの最大、中間、最小(すなわち大小関係)を判別する。
この大小関係を判別するために、まず、入力電流指令値の差i*uv,i*vw,i*wuを数式16により計算する。
【数16】
【0052】
表3は、入力電流指令値の大小判別とデューティ比のパタン選択との関係を示している。
オンスイッチパタン選択手段132は、数式16により求めた電流指令値の差i*uv,i*vw,i*wuの符号から、入力電流指令値i*u,i*v,i*wの最大、中間、最小を判別することができる。更に、最大電流指令値の入力相と直流出力端子p、最小電流指令値の入力相と直流出力端子nをそれぞれ接続しないように、表1のデューティ比のパタンpdを選択して出力する。
【表3】
【0053】
図8のpスイッチオン信号選択手段133では、入力電流指令値i*u,i*v,i*wとIdc〜零の範囲で変化する三角波キャリア信号Tpとの比較結果Qup,Qvp,Qwpと、デューティ比のパタンpdとを用いて,p側スイッチSup,Svp,Swpのオン信号gup,gvp,gwpを発生する。
具体的には、表1のデューティ比のパタンpdのデューティ比を実現するように、表2の比較結果Qup,Qvp,Qwpが発生するデューティ比をそれぞれ割り振ればよい。例えば、デューティ比のパタンpd=1では、dup=i*u/Idc,dvp=1−i*u/Idcであるから、比較結果Qupがi*u/Idcのデューティ比に相当する信号であり、オン信号は、gup=Qup,gvp=Qupの反転信号,gwp=0によって得られる。
【0054】
なお、図8のnスイッチオン信号選択手段134では、入力電流指令値i*u,i*v,i*wと−Idc〜零の範囲で変化する三角波キャリア信号Tnとの比較結果Qun,Qvn,Qwnと、デューティ比のパタンpdとを用いて,n側スイッチSun,Svn,Swnのオン信号gun,gvn,gwnを発生する。
【0055】
表4は、デューティ比のパタンpdに対するpスイッチオン信号選択手段133及びnスイッチオン信号選択手段134の動作をまとめたものである。
【表4】
【0056】
次に、図9は、pスイッチオン信号選択手段133において、一例としてスイッチSupのオン信号gupを実現するオン信号選択手段の論理回路例である。
表4より、オン信号gupは、デューティ比のパタンpd=1,pd=6のとき比較結果Qupを、pd=2のとき比較結果Qvpの反転信号を、pd=5のとき比較結果Qwpの反転信号を、それぞれ出力する。デューティ比のパタンpdが1,2,5,6のそれぞれの状態を表す信号としてpd1,pd2,pd5,pd6を定義すれば、図9の論理回路が得られる。他のオン信号を発生する回路についても、同様に構成することができる。
【0057】
なお、本実施形態の三角波キャリア発生手段131により用いた2つの三角波キャリア信号Tp,Tnは同相であるが、本実施形態は、互いに逆相や位相差を持たせた三角波キャリア信号を用いても実現可能である。更に、キャリア信号として、三角波の代わりに傾きが正または負の鋸歯状波を用いることもできる。この場合、2つのキャリア信号の鋸歯状波の傾きの選び方として、正正、正負、負正、負負などの組み合わせを制御周期ごとに選ぶこともできる。
また、本実施形態における電源電圧検出手段110はあくまで一例であり、出力として線間電圧を検出してもよいし、電源電圧の振幅を一定値とみなして、電源電圧の正負を検出するだけでも実現可能である。
【0058】
次いで、図10は本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図である。この実施形態に係る制御装置100Bは、第1実施形態の制御装置100Aに入力力率の調整機能を追加したものである。
すなわち、図10において、制御装置100Bは電源電圧位相角検出手段140を備えており、電源電圧eu,ev,ewから位相角θを検出して入力電流指令値演算手段120に出力する。入力電流指令値演算手段120では、入力力率角指令値ψ*に従って入力電流指令値i*u,i*v,i*wを演算し、出力する。
なお、電源電圧検出手段110及びデューティ比演算・オン信号発生手段130の機能は、第1実施形態と同様である。
【0059】
図11は、電源電圧位相角検出手段140の構成を示すブロック図であり、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)を用いている。
図11において、波形整形回路141は、電源電圧eu,ev,ewの零クロスを検知し、π/3ごとに変化する電源1周期当たり3パルスの信号θoを発生する。また、カウンタ142は、信号θoに対応した信号θpを発生する。位相比較器143は、信号θoと信号θpとの位相角誤差Δθを検出し、この位相角誤差Δθが減少するように発振器144の出力パルスpの周波数を調整する。この出力パルスpをカウンタ142が計数することにより、カウンタ142の出力値が電源電圧位相角θになる。
【0060】
図12は、図10における入力電流指令値演算手段120の構成を示すブロック図である。入力電流指令値演算手段120は、数式4に数式2,6の関係を代入し、数式17によって入力電流指令値i*u,i*v,i*wを演算する。
【数17】
【0061】
図12に示すように、数式17の右辺の分子は、出力電圧指令値V*cと直流出力電流Idcとの積により演算される。ここで、出力電流Idcの値は、第1実施形態と同様に、入力電流指令値演算手段120及びデューティ比演算・オン信号発生手段130におけるIdcと同じ値にすることで、正の任意の値に設定することができる。
また、数式17の右辺の分母については、数式3を用いて電源電圧実効値Eを演算すると共に、入力力率角指令値ψ*から三角関数テーブルを用いて入力力率指令値cosψ*を求め、これらを乗じてEcosψ*を演算する。更に、数式17の右辺の電流指令値振幅の係数√(2/3)を乗じることにより、入力電流指令値振幅√2I*が演算される。
【0062】
数式17における入力電流指令値i*u,i*v,i*wの位相角は、入力力率角指令値ψ*と電源電圧位相角θとから得られる。更に、三角関数テーブルを用いて、各入力相の余弦cos(θ+ψ),cos(θ+ψ*−2π/3),cos(θ+ψ*+2π/3)を得て、これらの余弦値に前記入力電流指令値振幅√2I*を乗じることにより、入力電流指令値i*u,i*v,i*wを得る。
これらの入力電流指令値i*u,i*v,i*wを、図8に示したデューティ比演算・オン信号発生手段130に入力することによりデューティ比が演算され、各スイッチSup〜Swnのオン信号gup〜gwnが演算される。
【0063】
次に、図13は第2実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段130の動作波形図であり、制御周期Ts間のデューティ比、入力電流及び出力電圧波形を示している。Tsは電源周期に比較して十分短いものとして、入力電流指令値i*u,i*v,i*wを一定値としている。
図13(a)は図7(b)の波形に等しく、出力電圧指令値Vc*>0、入力力率角指令値ψ*=0の場合である。また、図13(b)は、図13(a)に対して入力力率角指令値ψ*=−π/3とした場合である。
【0064】
図13(a)では、入力電流指令値の大小関係がi*u>i*v>i*wとなっており、表4のデューティ比のパタンpd=1が選択され、p側スイッチはデューティ比dup,dvpに、n側スイッチはデューティ比dvn,dwnに値をそれぞれ持つ。入力電流iu,iv,iw及び出力電圧Vcは、制御周期Tsの平均値としてそれぞれの指令値に一致した値が得られている。
図13(b)では、入力力率角指令値ψ*=−π/3としているため、入力電流指令値の大小関係がi*u>i*w>i*vとなっており、表4のデューティ比のパタンpd=6が選択され、p側スイッチはデューティ比dup,dwpに、n側スイッチはデューティ比dwn,dvnにそれぞれ値を持つ。入力電流iu,iv,iw及び出力電圧Vcは、制御周期Tsの平均値としてそれぞれの指令値に一致した値が得られている。
【0065】
図14は、本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態の制御装置100Cでは、入力力率角指令値ψ*が大きくなったときに電流指令値の大小関係が変化しても、電源電圧の大小関係を優先してデューティ比のパタンを選択することにより、出力電圧リプルを低減する。
制御装置100C内のデューティ比演算・オン信号発生手段130Cにおいて、第1実施形態のデューティ比演算・オン信号発生手段130に、新たに電源電圧eu,ev,ewと入力力率角指令値ψ*と出力電圧指令値V*cとが入力されており、これらに基づいてスイッチのオン信号及びキャリア信号の選択を変更している。
なお、図14の電源電圧検出手段110は第1実施形態における電源電圧検出手段110と、図14の電源電圧位相角検出手段140,入力電流指令値演算手段120は、第2実施形態における電源電圧位相角検出手段140、入力電流指令値演算手段120と、それぞれ同じ機能を有している。
【0066】
図15は、第3実施形態におけるデューティ比演算・オン信号発生手段130Cの構成を示すブロック図である。
入力電流指令値i*u,i*v,i*wと三角波キャリア信号Tp,Tnとはそれぞれ6個の比較器により比較され、比較結果Qup〜Qwnを得る。三角波キャリア信号Tp,Tnは、それぞれIdc〜零、零〜−Idcの範囲で変化する波形である。比較結果Qup〜Qwnから各スイッチのオン信号を選択するが、その選択基準は電源電圧値の大小関係に基づいている。ここで、三角波キャリア信号の変化範囲を決定するIdcの値については、第1実施形態と同様に、入力電流指令値演算手段120におけるIdcと同じ値にすることで、正の任意の値に設定することができる。
【0067】
図15の符号演算器135によって出力電圧指令値Vc*の符号(±1)を演算し、この符号を電源電圧eu,ev,ewに乗じて基準電圧値e0u,e0v,e0wを得る。オンスイッチパタン選択手段132では、基準電圧値e0u,e0v,e0wの大小関係を判別するために基準電圧値の差e0v,e0w,e0uを数式18により計算する。
【数18】
【0068】
表5は、基準電圧値の大小判別とデューティ比のパタン選択とを示している。基準電圧値の差電圧e0uv,e0vw,e0wuの符号から、基準電圧値の最大、中間、最小を判別することができる。入力力率角指令値ψ*により、電流指令値の大小関係が変化しても、電源電圧の大小関係を優先してデューティ比のパタンを選択することにより、出力電圧リプルを低減する。
入力力率角指令値については、−π/2<ψ*<−π/6、−π/6≦ψ*≦π/6、π/6<ψ*<π/2に分け、基準電圧値の大小関係を優先して、正の電圧を出力させる直流出力端子はできるだけ入力電圧の高い電圧相に、負の電圧を出力させる直流出力端子はできるだけ入力電圧の低い電圧相にそれぞれ接続する。
【表5】
【0069】
表6は、表5により決まったデューティ比のパタンを実現するオン信号選択動作表であり、各パタンに応じたオン信号は先に示した表4と同様である。
なお、三角波キャリア信号Tp,Tnについては、入力力率角指令値ψ*が−π/6≦ψ*≦π/6の場合には同相とし、これ以外の場合には、逆相を選択する。
【表6】
【0070】
次に、図16は、電源電圧の大小関係がeu>ev>ewであり、電源電圧位相角が12[deg]の場合の、出力電圧指令値V*c>0と入力力率角指令値ψ*=−π/6を与えたときの動作波形であり、図16(a)は第2実施形態を、図16(b)は第3実施形態をそれぞれ示している。
図16(a)の第2実施形態では、入力電流指令値の大小関係がi*u>i*w>i*vであり、この大小関係に基づいて表4からデューティ比のパタンpd=6が選択される。この第2実施形態では入力電流指令値の大小関係を優先しているために、出力電圧Vcの波形は負の電圧−evwを用いることになり、出力電圧リプルが大きくなる。
一方、図16(b)の第3実施形態では、入力力率角指令値ψ*=−π/6であるため、電源電圧の大小関係がeu>ev>ewである基準電圧の大小関係e0u>e0v>e0wに基づいて、表5からデューティ比のパタンpd=1が選択される。この第3実施形態では電源電圧の大小関係を優先しているために、出力電圧Vcの波形は正の電圧または零を用いることになり、第2実施形態よりも出力電圧リプルを抑制できている。
【0071】
図17は、第3実施形態における動作波形であり、入力力率角指令値ψ*=−π/3を与えた場合のものである。この動作波形は、第2実施形態の図13(b)の動作波形と同じ条件である。第2実施形態では三角波キャリア信号Tp,Tnを同相としたのに対し、第3実施形態では、入力力率角指令値ψ*=−π/3において三角波キャリア信号Tp,Tnとして逆相を選択するので、図17の動作波形が得られ、出力電圧Vcの波形のリプルを抑制できている。
【0072】
図18は、本発明の第4実施形態の構成を示すブロック図である。この実施形態の制御装置100Dは、図14の入力力率角指令値ψ*を与える入力力率角指令値演算手段150を備えており、この演算手段150は電源力率を1に制御するように入力力率角指令値ψ*を決定する。
図18における入力力率角指令値演算手段150以外のブロックは、図14の第3実施形態と同様である。ただし、入力力率角指令値演算手段150では、入力電流指令値演算手段120によって得られる電源電圧実効値Eを演算に用いている。
【0073】
ここで、電源高調波を抑制するためのリアクトルLfとコンデンサCfとからなるLCフィルタにより、入力電流指令値と電源電流との間に位相差を持つので、入力電流を力率1に制御したとしても、電源力率は必ずしも1にならない。そこで、入力力率角指令値演算手段150として、LCフィルタに流れ込む進相電流が無視できなくなる軽負荷時などにおいて、電源力率を1に制御する方法について説明する。
【0074】
図19(a)はLCフィルタを有する入力u相の等価回路であり、図19(b)はそのベクトル図である。
図19(a)では、交流−直流電力変換器に対するu相の入力電流指令値i*uを電流源にて示している。i*u=0としたとき、LCフィルタのコンデンサ電流Icuは数式19により表される。
【数19】
【0075】
通常、LCフィルタの共振周波数は電源周波数より十分高く、数式19においてωLf−1/3ωCf<0の関係が得られるので、Iq>0となり、コンデンサ電流Icuは進み電流となる。
図19(b)及び数式20に示すように、電源電流Isuを有効電流成分Ipのみとして電源力率1を実現するためには、数式21に従って入力電流指令値I*uを与えればよい。
すなわち、図19(b)に示す入力力率角指令値ψ*を与えることで、電源力率1を実現することができる。
【数20】
【数21】
【0076】
電源力率1としたときの入力有効電流実効値Ipは、出力電圧指令値V*c、出力電流検出値Idc、電源電圧実効値Eを用いて、数式6においてψ*=0を代入することにより数式22によって得ることができる。
【数22】
【0077】
なお、損失を考慮する場合には、損失分に相当した有効電流を数式22の右辺に加算して対応することができる。一方、電源電圧実効値Eと数式19との関係から、コンデンサCfに流れる無効電流Iqは数式23により得られる。
【数23】
【0078】
数式22,23を用いて、図19(b)のベクトル関係から、入力力率角指令値ψ*は数式24によって与えられる。
【数24】
なお、この実施形態の入力力率角指令値演算手段150は、図10の第2実施形態における入力力率角の調整にも適用可能である。
【0079】
次いで、図20は本発明の第5実施形態の構成を示すブロック図である。
この実施形態は、図20に示すように、直流出力端子p,nに直列にリアクトルLとコンデンサCとが接続され、コンデンサCに並列に負荷20が接続された交流−直流電力変換器において、コンデンサCの直流電圧を制御する制御系を備えたものである。
【0080】
図20に示す制御装置100Eは、コンデンサCの両端の電圧検出値Vdc及びコンデンサ電圧指令値Vdc*が入力されて直流出力電流指令値Idc*を演算する直流出力電流指令値演算手段160と、直流出力電流指令値Idc*及び直流出力電流検出値Idcが入力されて図14における出力電圧指令値Vc*を演算する直流出力電圧指令値演算手段170と、を備えている。
直流出力電流指令値演算手段160では、数式25に示す電圧偏差ΔVdcに対して、数式26に示すように、電圧制御系の比例ゲインKPVと積分ゲインKIVとを持つPI(比例積分)制御を施して直流出力電流指令値Idc*を演算する。
【数25】
【数26】
【0081】
直流出力電圧指令値演算手段170では、数式27に示す電流偏差ΔIdcに対して、数式28に示すように、電流制御系の比例ゲインKPIと積分ゲインKIIとを持つPI制御を施して出力電圧指令値Vc*を演算する。
【数27】
【数28】
【0082】
本実施形態では、電圧制御系及び電流制御系にPI制御を用いているが、二自由度制御などの他の制御法を用いても良い。
なお、この実施形態における直流出力電流指令値演算手段160及び直流出力電圧指令値演算手段170を、図1の第1実施形態に係る制御装置100Aや図10の第2実施形態に係る制御装置100Bに適用して直流出力電流Idcやコンデンサ電圧Vdcを制御することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
10:三相交流電源
20:負荷
100,100A,100B,100C,100D,100E:制御装置
110:電源電圧検出手段
120:入力電流指令値演算手段
130,130C:オンデューティ比演算・オン信号発生手段
131:三角波キャリア発生手段
132:オンスイッチパタン選択手段
133:pスイッチオン信号選択手段
134:nスイッチオン信号選択手段
135:符号演算器
140:電源電圧位相角検出手段
141:波形整形回路
142:カウンタ
143:位相比較器
144:発振器
150:入力力率角指令値演算手段
160:直流出力電流指令値演算手段
170:直流出力電圧指令値演算手段
Lf,L:リアクトル
Cf,C:コンデンサ
u,v,w:交流入力端子
p,n:直流出力端子
Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swn:半導体スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相交流電源の各相に接続される複数の交流入力端子と正負の直流出力端子とが複数の半導体スイッチを介してそれぞれ接続され、前記半導体スイッチのオンオフ動作により、交流電圧を任意の大きさの直流電圧に変換する交流−直流電力変換器において、
前記交流電源の相電圧値の大小関係または前記電力変換器の入力電流指令値の大小関係が変化しない範囲において、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定することを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最大電圧相と中間電圧相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最小電圧相と中間電圧相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定することを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧及び前記変換器の直流出力電圧指令値に基づいて前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの入力電流指令値の最大相と中間相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの入力電流指令値の最小相と中間相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定することを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項5】
請求項1または4に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧に基づいて電源電圧位相角を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記電源電圧位相角、入力力率角指令値、及び、前記変換器の直流出力電圧指令値から前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
入力力率角指令値が電気角で+30度〜−30度の範囲外である場合には、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最大電圧相とその他の電圧相一相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最小電圧相とその他の電圧相一相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定することを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項7】
請求項1または6に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧に基づいて電源電圧位相角を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記電源電圧位相角、入力力率角指令値、及び、前記変換器の直流出力電圧指令値から前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記入力力率角指令値、前記直流出力電圧指令値、及び、前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか1項に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
前記変換器の出力電力または出力電圧に応じて前記入力力率角指令値を演算する手段を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載した交流−直流電力変換器の制御装置であって、前記直流出力端子に直列にリアクトルとコンデンサとが接続されると共に、前記コンデンサに並列に負荷が接続されてなる交流−直流電力変換器の制御装置において、
前記コンデンサの電圧指令値と電圧検出値とから直流出力電流指令値を演算する手段と、
前記直流出力電流指令値と直流出力電流検出値とから前記直流出力電圧指令値を演算する手段と、
を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項1】
多相交流電源の各相に接続される複数の交流入力端子と正負の直流出力端子とが複数の半導体スイッチを介してそれぞれ接続され、前記半導体スイッチのオンオフ動作により、交流電圧を任意の大きさの直流電圧に変換する交流−直流電力変換器において、
前記交流電源の相電圧値の大小関係または前記電力変換器の入力電流指令値の大小関係が変化しない範囲において、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定することを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最大電圧相と中間電圧相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最小電圧相と中間電圧相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定することを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧及び前記変換器の直流出力電圧指令値に基づいて前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの入力電流指令値の最大相と中間相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの入力電流指令値の最小相と中間相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定することを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項5】
請求項1または4に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧に基づいて電源電圧位相角を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記電源電圧位相角、入力力率角指令値、及び、前記変換器の直流出力電圧指令値から前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
入力力率角指令値が電気角で+30度〜−30度の範囲外である場合には、正の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最大電圧相とその他の電圧相一相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定し、かつ、負の電圧を出力させる直流出力端子が複数の交流入力端子のうちの最小電圧相とその他の電圧相一相との二相に接続されるように前記スイッチのスイッチングパタンを決定することを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項7】
請求項1または6に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
交流電源電圧を検出する手段と、
前記交流電源電圧に基づいて電源電圧位相角を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記電源電圧位相角、入力力率角指令値、及び、前記変換器の直流出力電圧指令値から前記変換器の入力電流指令値を演算する手段と、
前記交流電源電圧、前記入力力率角指令値、前記直流出力電圧指令値、及び、前記入力電流指令値から前記スイッチのデューティ比を演算して前記スイッチのオン信号を発生する手段と、
を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか1項に記載した交流−直流電力変換器の制御装置において、
前記変換器の出力電力または出力電圧に応じて前記入力力率角指令値を演算する手段を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載した交流−直流電力変換器の制御装置であって、前記直流出力端子に直列にリアクトルとコンデンサとが接続されると共に、前記コンデンサに並列に負荷が接続されてなる交流−直流電力変換器の制御装置において、
前記コンデンサの電圧指令値と電圧検出値とから直流出力電流指令値を演算する手段と、
前記直流出力電流指令値と直流出力電流検出値とから前記直流出力電圧指令値を演算する手段と、
を備えたことを特徴とする交流−直流電力変換器の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−55780(P2013−55780A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191872(P2011−191872)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
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