説明

交流パルスアーク溶接制御方法

【課題】消耗電極式交流パルスアーク溶接において、電極マイナス極性電流比率を30%以上に設定しても、安定した溶接を行えるようにすること。
【解決手段】電極マイナス極性ピーク期間Tpn中は電極マイナス極性ピーク電流Ipnを通電し、続けて電極プラス極性ピーク期間Tp中は電極プラス極性ピーク電流Ipを通電し、続けて電極プラス極性ベース期間Tb中は電極プラス極性ベース電流Ibを通電し、続けて電極マイナス極性ベース期間Tbn中は電極マイナス極性ベース電流Ibnを通電して溶接を行う交流パルスアーク溶接制御方法において、電極プラス極性ピーク期間Tp又は電極プラス極性ベース期間Tb中に溶滴移行が行われなかったときは、電極プラス極性ベース期間Tbと電極マイナス極性ベース期間Tbnとの間に電極プラス極性ピーク期間Tp及び電極プラス極性ベース期間Tbを再度設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極マイナス極性電流比率を大きな値に設定したときに、安定した溶接状態を得ることができる交流パルスアーク溶接制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流パルスアーク溶接では、電極プラス極性期間中のピーク電流及びベース電流の通電と、電極マイナス極性期間中のベース電流の通電とを1周期として繰り返すことによって溶接が行われる。この交流パルスアーク溶接では、電極マイナス極性期間を調整して電極マイナス極性電流比率を変化させることによって、母材への入熱を調整することができる。このために、低入熱溶接が可能となり、高品質な薄板溶接を行うことができる。また、電極マイナス極性電流比率を変化させることによって、溶け込み深さ、余盛り高さ等のビード形状をワークに合わせて適正化することができる。以下、従来技術の交流パルスアーク溶接について説明する(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図4は、交流パルスアーク溶接における一般的な電流・電圧波形図である。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示す。同図において、0A及び0Vから上側が電極プラス極性EP時であり、下側が電極マイナス極性EN時である。溶接電流Iwはアークを通電する電流であり、溶接電圧Vwは溶接ワイヤと母材との間の電圧である。ここで、溶接ワイヤと母材との電圧を検出することは難しいので、溶接トーチの給電チップと母材との間の電圧又は溶接電源の出力端子間の電圧を検出してその代わりとするのが通常である。溶接ワイヤは予め定めた送給速度で送給されている。また、極性切換時には、アーク切れを防止するために、数百Vの高電圧(図示は省略)を短時間溶接ワイヤと母材との間に印加している。以下、同図を参照して説明する。
【0004】
電極マイナス極性期間Ten中は、同図(A)に示すように、予め定めた電極マイナス極性ベース電流Ibnが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス極性ベース電圧Vbnが印加する。この電極マイナス極性ベース電流Ibnは、溶接ワイヤ先端に溶滴を形成しないように臨界値未満の値に設定される。例えば、Ibn=20〜200A程度である。臨界値とは、溶接ワイヤの溶滴移行状態がスプレー移行状態になる溶接電流値のことであり、その値は溶接ワイヤの材質、シールドガスの種類等によって異なる。交流パルスアーク溶接によく使用されるアルミニウムワイヤ(シールドガスはアルゴンガス)の場合では、臨界値は350A程度である。また、鉄鋼ワイヤ(シールドガスはアルゴンガス80%+炭酸ガス20%)の場合では、臨界値は450A程度である。
【0005】
電極プラス極性期間Tepは、ピーク期間Tpとベース期間Tbとに分かれる。このピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、溶滴移行をさせるために臨界値以上の大電流値に予め定めたピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、ピーク電圧Vpが印加する。ここで、ピーク期間Tp及びピーク電流Ipは、いわゆる1パルス1溶滴移行状態になるように設定される。1パルス1溶滴移行状態とは、1回のピーク電流Ipの通電によって1周期中に1回の溶滴が溶融池へと移行する状態であり、安定した溶接状態となる。ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、溶滴を形成しないために臨界値未満の小電流値に予め定めたベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbが印加する。例えば、Ib=20〜80A程度である。
【0006】
上記の電極マイナス極性期間Ten、上記のピーク期間Tp及び上記のベース期間Tbを1パルス周期Tfとして繰り返して溶接が行われる。上記の電極マイナス極性期間Ten及び上記のピーク期間Tpは予め定めた期間であり、上記のベース期間Tbはアーク長が適正になるようにフィードバック制御によって定まる期間である。このアーク長制御は、同図(B)の破線で示す溶接電圧Vwの絶対値の平均値(電圧平均値Vav)が予め定めた電圧設定値Vr(図示は省略)と等しくなるようにベース期間Tbの長さが制御されることによって行われる。
【0007】
交流パルスアーク溶接における溶滴の形成及び移行についてまとめると以下のようになる。上記のピーク期間Tpの終了前後(終了前、終了時又は終了後)において溶滴が移行する。続くベース期間Tb中は、臨界値未満の小電流値のベース電流Ibが通電するので、溶接ワイヤ先端はほとんど溶融せず溶滴は形成されない。続く電極マイナス極性期間Ten中は、臨界値未満の小電流値の電極マイナス極性ベース電流Ibnが通電する。同一値の小電流であっても、電極マイナス極性EN時の方が電極プラス極性EP時よりも溶接ワイヤ先端を溶融する作用が大きくなる。しかし、交流パルスアーク溶接では、電極マイナス極性電流比率が0〜30%程度の範囲で使用されるのが一般的であるので、上記の電極マイナス極性期間Tenは短い期間となる。このために、溶接ワイヤ先端が少し溶融する程度であり、小さな溶滴が形成されることになる。続くピーク期間Tp中は、臨界値以上の大電流値のピーク電流Ipが通電する。このピーク電流Ipの通電に伴って溶接ワイヤ先端が急激に溶融して溶滴が形成される。さらに、ピーク電流Ipの通電によって形成された溶滴上部に電磁的ピンチ力が作用してくびれが形成される。そして、ピーク期間Tpの終了前後においてくびれが急激に進行して、溶滴が溶融池へと移行する。直流パルスアーク溶接においても、ピーク期間Tp中に溶滴の形成及び移行が行われる。交流パルスアーク溶接では、電極マイナス極性期間Ten中に小さな溶滴が形成される場合があるが、基本的には直流パルスアーク溶接のときと同様に、ピーク期間Tp中に溶滴の形成及び移行が行われると考えて良い。上記のように、1周期で1溶滴移行を行わせる1パルス1溶滴移行状態にすることが、安定した溶接状態にすることになり、良好な溶接品質を得ることになる。
【0008】
上記の電極マイナス極性電流比率Ren(%)は以下のように定義される。
Ren=((Ten・|Ibn|)/(Ten・|Ibn|+Tp・Ip+Tb・Ib))×100
すなわち、この電極マイナス極性電流比率Renは、溶接電流の絶対値の平均値に占める電極マイナス極性期間中の溶接電流の比率を表している。
【0009】
上式において、ピーク電流Ip、ベース電流Ibは所定値であり、ピーク期間Tpも所定値である。ベース期間Tbもアーク長が適正値にある定常状態では略所定値と見なせる。したがって、電極マイナス極性期間Ten及び/又は電極マイナス極性ベース電流Ibnを調整することによって電極マイナス極性電流比率Renを調整することができる。この電極マイナス極性電流比率Renを変化させると、溶け込み部及び余盛り部が変化してビード形状が変化することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−86271号公報
【特許文献2】特開2007−283393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、交流パルスアーク溶接においては、電極マイナス極性電流比率を0〜30%程度の範囲でワークに合わせて適正値に設定して溶接を行うのが一般的である。電極マイナス極性電流比率が0%とは、直流パルスアーク溶接のことになる。この電極マイナス極性電流比率が上記の通常範囲では、電極マイナス極性期間Ten中に溶滴が大きく形成されることがないので、ピーク期間Tpにおいて溶滴の形成及び移行を行わせることができる。
【0012】
しかし、ワークによっては、溶け込み部を小さくし、余盛り部を大きくした希釈率の小さなビード形状を形成する必要がある場合がある。例えば、鉄鋼材の薄板溶接において、溶接継手部に大きなギャップがあるワークを高速溶接するような場合である。このような場合には、ギャップを溶融金属で埋め、かつ溶け込みを小さくするために、希釈率の小さなビード形状が必要になる。このようなビード形状を形成するためには、電極マイナス極性電流比率を上記の通常範囲よりも大きな値である30%以上に設定する必要がある。ときには50%を超える値に設定する必要がある場合も生じる。従来技術において、電極マイナス極性電流比率を大きな値に設定するには、上述したように、電極マイナス極性期間Ten及び/又は電極マイナス極性ベース電流Ibnを大きな値に設定することになる。このようにすると、電極マイナス極性期間Ten中において溶接ワイヤ先端が溶融されることになり、大きな溶滴が形成されることになる。この状態でピーク期間Tpに入るので、ピーク期間Tp中に溶滴はさらに巨大になり、ピーク期間Tpが終了しても溶滴が完全には移行することができず、溶接ワイヤ先端に溶滴が残留することになる。この残留溶滴が次の周期の溶滴移行に影響を与えることになり、結果的に1パルス1溶滴移行状態を保つことができなくなり、溶滴移行がランダムに生じる不安定な溶接状態になる。
【0013】
そこで、本発明では、電極マイナス極性電流比率を通常範囲よりも大きな値に設定しても安定した溶接状態を得ることができる交流パルスアーク溶接制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、溶接ワイヤを送給すると共に、電極マイナス極性ピーク期間中は臨界値以上の電極マイナス極性ピーク電流を通電し、続けて電極プラス極性ピーク期間中は臨界値以上の電極プラス極性ピーク電流を通電し、続けて電極プラス極性ベース期間中は臨界値未満の電極プラス極性ベース電流を通電し、続けて電極マイナス極性ベース期間中は臨界値未満の電極マイナス極性ベース電流を通電し、これらの通電を1周期として繰り返して溶接を行う交流パルスアーク溶接制御方法において、
前記電極プラス極性ピーク期間又は前記電極プラス極性ベース期間中に溶滴移行が行われなかったときは、前記電極プラス極性ベース期間と前記電極マイナス極性ベース期間との間に前記電極プラス極性ピーク期間及び前記電極プラス極性ベース期間を再度設ける、
ことを特徴とする交流パルスアーク溶接制御方法である。
【0015】
第2の発明は、再度設けた前記電極プラス極性ピーク期間又は再度設けた前記電極プラスベース期間中に溶滴移行が行われなかったときは、さらに再度電極プラス極性ピーク期間及び前記電極プラス極性ベース期間を設ける、
ことを特徴とする第1の発明記載の交流パルスアーク溶接制御方法である。
【0016】
第3の発明は、前記溶滴移行が行われなかったことを、溶接電圧の変化によって判別する、
ことを特徴とする第1又は第2の発明記載の交流パルスアーク溶接制御方法である。
【0017】
第4の発明は、前記溶滴移行が行われなかったことを、溶接電圧の変化率が予め定めた基準値未満であったことによって判別する、
ことを特徴とする第1又は第2の発明記載の交流パルスアーク溶接制御方法である。
【0018】
第5の発明は、前記溶滴移行が行われなかったことを、溶接電圧の変化が所定範囲内であったことによって判別する、
ことを特徴とする第1又は第2の発明記載の交流パルスアーク溶接制御方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ピーク期間を電極マイナス極性ピーク期間及び電極プラス極性ピーク期間から形成することによって、電極マイナス極性電流比率を大きな値に設定することが可能となった。さらに、溶滴移行の有無に応じて電極プラス極性ピーク期間及び電極プラス極性ベース期間を複数回繰り返すことによって、1周期ごとに確実に1つの溶滴を移行させることができる。このために、電極マイナス極性電流比率が通常範囲よりも大きな値に設定されたときでも、安定した溶接を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接制御方法を示す溶接電流Iw及び溶接電圧Vwの波形図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る溶接電源のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接制御方法を示す溶接電流Iw及び溶接電圧Vwの波形図である。
【図4】従来技術の交流パルスアーク溶接における電流・電圧波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接制御方法を示す電流・電圧波形図である。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示す。同図において、0A及び0Vから上側が電極プラス極性EPを示し、下側が電極マイナス極性ENを示す。同図は、電極マイナス極性電流比率が通常範囲(0〜30%程度)よりも大きく設定された場合である。同図(B)において、極性切換時のアーク切れを防止するために、極性切換時に短時間の間、高電圧(図示は省略)を溶接電圧Vwに重畳している。以下、同図を参照して説明する。
【0023】
同図において、時刻t1〜t2の期間は電極マイナス極性ベース期間Tbnを示し、時刻t2〜t3の期間は電極マイナス極性ピーク期間Tpnを示し、時刻t3〜t4の期間は電極プラス極性ピーク期間Tpを示し、時刻t4〜t5の期間は電極プラス極性ベース期間Tbを示し、時刻t5〜t6の期間は電極マイナス極性ベース期間Tbnを示す。また、時刻t6〜t7の期間は電極マイナス極性ピーク期間Tpnを示し、時刻t7〜t8の期間は電極プラス極性ピーク期間Tpを示し、時刻t8〜t9の期間は電極プラス極性ベース期間Tbを示し、時刻t9〜t10の期間は2回目の電極プラス極性ピーク期間Tpを示し、時刻t10〜t11の期間は2回目の電極プラス極性ベース期間Tbを示し、時刻t11〜t12の期間は電極マイナス極性ベース期間Tbnを示す。時刻t2〜t6の期間が第n回目のパルス周期Tf(n)となり、時刻t6〜t12の期間が第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)となる。第n回目のパルス周期Tf(n)においては、電極プラス極性ベース期間Tb中の時刻t41に溶滴移行が行われた場合である。また、第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)においては、2回目の電極プラス極性ベース期間Tb中の時刻t101に溶滴移行が行われた場合である。
【0024】
(1)第n回目のパルス周期Tf(n)中の動作
時刻t1〜t2の電極マイナス極性ベース期間Tbn中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極マイナス極性ベース電流Ibnが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス極性ベース電圧が印加する。時刻t2から第n回目のパルス周期Tf(n)が開始する。時刻t2〜t3の電極マイナス極性ピーク期間Tpn中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極マイナス極性ピーク電流Ipnが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス極性ピーク電圧が印加する。時刻t3において極性が反転する。時刻t3〜t4の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極プラス極性ピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ピーク電圧が印加する。時刻t4〜t5の電極プラス極性ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極プラス極性ベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ベース電圧が印加する。第n回目のパルス周期Tf(n)においては、この電極プラス極性ベース期間Tb中の時刻t41時点で、溶滴移行が行われる。そして、上記の電極プラス極性ピーク期間Tp又は上記の電極プラス極性ベース期間Tb中に溶滴移行が行われたために、電極マイナス極性ベース期間Tbnに移行する。電極プラス極性ピーク期間Tp又は電極プラス極性ベース期間Tb中に溶滴移行が行われなかったときの動作については、第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)において説明する。時刻t5において極性が反転し、時刻t5〜t6の期間は、再び上記の電極マイナス極性ベース期間Tbnとなり、時刻t6において第n回目のパルス周期Tf(n)が終了する。時刻t1〜t3の期間が、電極マイナス極性期間Tenとなる。
【0025】
第n回目のパルス周期Tf(n)における溶滴の形成及び移行について説明する。時刻t1〜t2の電極マイナス極性ベース期間Tbnにおいて、溶接ワイヤ先端に溶滴が形成される。同図は、電極マイナス極性電流比率が大きい場合であるので、電極マイナス極性ベース期間Tbnが長くなる。このために、電極マイナス極性ベース電流Ibnが臨界値未満の小電流値であっても、電極マイナス極性ENでは溶接ワイヤ先端の溶融が促進されるので溶滴が形成されることになる。時刻t2〜t3の電極マイナス極性ピーク期間Tpn中は、臨界値以上の大電流が通電するために溶滴はさらに大きくなる。時刻t3〜t4の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、臨界値以上の大電流が通電するために、溶滴に強い電磁的ピンチ力が作用して溶滴上部にくびれが形成され、このくびれが急速に進行する。そして、電極プラス極性ピーク期間Tpの終了時点t4の前後において、溶滴は溶融池へと移行することになる。ここで、電極プラス極性ピーク期間Tpの終了時点の前後とは、電極プラス極性ピーク期間Tp中、電極プラス極性ピーク期間Tpの終了時点又は電極プラス極性ベース期間Tb中を意味している。ここでは、同図(B)に示すように、電極プラス極性ベース期間Tbに入った直後の時刻t41において、溶滴が移行した場合を示している。時刻t4〜t5の電極プラス極性ベース期間Tb中は、極性が電極プラス極性であり、かつ、臨界値未満の小電流値の電極プラス極性ベース電流Ibが通電するために、溶接ワイヤ先端はほとんど溶融しないので溶滴はほとんど形成されない。時刻t5〜t6の電極マイナス極性ベース期間Tbnの動作は上述したとおりである。上記において、移行する溶滴サイズは直流パルスアーク溶接及び通常の電極マイナス電流比率での交流パルスアーク溶接の場合に比べて大きくなる。上述したように、電極マイナス極性電流比率が大きな値に設定されるときは、電極マイナス極性ベース期間Tbn中にも溶滴が形成されることになり、ピーク期間中に移行させるべき溶滴のサイズが大きくなる。このために、ピーク期間を2つ設け、かつ、一方を電極マイナス極性ピーク期間Tpnとし、他方を電極プラス極性ピーク期間Tpとすることによって、大きなサイズの溶滴を移行させるようにしている。さらに、この2つのピーク期間の極性を変えることによって、電極マイナス極性電流比率を大きな値に設定しやすくしている。
【0026】
上記において、溶滴が移行するときには、以下の2つのパターンがある。一つ目は、短絡を伴うことなく溶滴が自由落下によって移行する場合である。二つ目は、短時間の短絡を伴って移行する場合である。アーク長が比較的長い場合には、前者の短絡を伴わない移行形態となることが多い。逆に、高速溶接時のようにアーク長が比較的短い場合、又は溶接ワイヤの材質がアルミニウム材である場合には、後者の短絡を伴う移行形態になることが多い。短絡を伴わない移行形態の場合には、溶滴が移行したときのアーク長が瞬間的に長くなるために、溶接電圧Vwは瞬間的に大きくなる。他方、短絡を伴う移行形態の場合には、溶滴が移行したときに短絡状態になるために、同図(B)の時刻t41に示すように、溶接電圧Vwは瞬間的に0V近くまで急降下する。溶滴移行が終了すると短絡状態が解消されるために溶接電圧Vwは元の値に復帰する。したがって、溶接電圧Vwの変化を検出することによって、溶滴移行の有無を判別することができる。すなわち、溶接電圧Vwの変化率(微分値)の絶対値を算出し、この算出値が基準値以上であるときは溶滴移行が行われたと判別することができる。溶接電圧Vwの変化率の符号が正であるときは、上述した短絡を伴わない溶滴移行が行われたときであり、符号が負であるときは、上述した短絡を伴う溶滴移行が行われたときである。上記の基準値は、溶接ワイヤの種類、シールドガスの種類、溶接ワイヤの送給速度、電圧設定値等に応じて適正値に設定される。また、電極プラス極性ピーク期間Tp及び電極プラス極性ベース期間Tb中の溶接電圧Vwが各々の期間における所定範囲外になったときは、溶滴移行が行われたと判別することができる。すなわち、電極プラス極性ピーク期間Tp中の溶接電圧Vwの変化に対して所定範囲を設け、溶接電圧Vwの変化がこの所定範囲外になったときは溶滴移行が行われたと判別する。同様に、電極プラス極性ベース期間Tb中の溶接電圧Vwの変化に対して所定範囲を設け、溶接電圧Vwの変化がこの所定範囲外になったときは溶滴移行が行われたと判別する。電極プラス極性ピーク期間Tp及び電極プラス極性ベース期間Tb中の各々の所定範囲は、溶接ワイヤの種類、シールドガスの種類、溶接ワイヤの送給速度、電圧設定値等に応じて適正値に設定される。ここで、電極プラス極性ピーク期間Tp又は電極プラス極性ベース期間Tb中に溶滴移行が行われなかったことを判別するときは、両期間中の溶接電圧の変化率(絶対値)が基準値未満であったことを判別するか、又は両期間中の溶接電圧の変化が所定範囲内であったことを判別するかによって行うことができる。
【0027】
上記の電極プラス極性ピーク期間Tp、上記の電極プラス極性ピーク電流Ip、上記の電極マイナス極性ピーク期間Tpn、上記の電極マイナス極性ピーク電流Ipn、上記の電極マイナス極性ベース電流Ibn及び上記の電極プラス極性ベース電流Ibは、予め適正値に設定されている。また、溶接電圧の絶対値の平均値が予め定めた電圧設定値に等しくなるように上記のパルス周期Tfの長さがフィードバック制御(アーク長制御)される。このパルス周期Tfを変化させるために上記の電極プラス極性ベース期間Tb又は上記の電極マイナス極性ベース期間Tbnが上記のフィードバック制御によって変化する。上記の電極プラス極性ベース期間Tbがフィードバック制御によって変化するときは、上記の電極マイナス極性ベース期間Tbnは予め適正値に設定される。逆に、上記の電極マイナス極性ベース期間Tbnがフィードバック制御によって変化するときは、上記の電極プラス極性ベース期間Tbは予め適正値に設定される。同図においては、電極マイナス極性電流比率Renは以下のようになる。
Ren=((Tpn・|Ipn|+Tbn・|Ibn|)/(Tp・Ip+Tpn・|Ipn|+Tbn・|Ibn|+Tb・Ib))×100
【0028】
同図において、上記の電極プラス極性ベース期間Tbがフィードバック制御によって変化する場合に電極マイナス極性電流比率を変化させるときは、上記の電極マイナス極性ピーク期間Tpn、電極マイナス極性ピーク電流Ipn、電極マイナス極性ベース期間Tbn又は電極マイナス極性ベース電流Ibnの少なくとも1つ以上を変化させることによって行う。上記の電極マイナス極性ベース期間Tbnがフィードバック制御によって変化する場合に電極マイナス極性電流比率を変化させるときは、上記の電極マイナス極性ピーク期間Tpn、電極マイナス極性ピーク電流Ipn又は電極マイナス極性ベース電流Ibnの少なくとも1つ以上を変化させることによって行う。ここで、電極マイナス極性電流比率を通常範囲よりも大きく設定するためには、上記の電極マイナス極性ピーク期間Tpn又は上記の電極マイナス極性ピーク電流Ipnの少なくとも1つ以上を調整することによって行うことが望ましい。
【0029】
(2)第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)中の動作
時刻t6から第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)が開始する。時刻t6〜t7の電極マイナス極性ピーク期間Tpn中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極マイナス極性ピーク電流Ipnが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス極性ピーク電圧が印加する。時刻t7において極性が反転する。時刻t7〜t8の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極プラス極性ピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ピーク電圧が印加する。時刻t8〜t9の電極プラス極性ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極プラス極性ベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ベース電圧が印加する。時刻t7〜t8の電極プラス極性ピーク期間Tp又は時刻t8〜t9の電極プラス極性ベース期間Tb中の溶接電圧Vwは、同図(B)に示すように、急上昇も急降下もしていないので、これらの期間中には溶滴移行が行われなかったことを示している。このために、本来の動作である電極マイナス極性ベース期間Tbnへの移行は行わずに、2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び2回目の電極プラス極性ベース期間Tbに移行する。時刻t9〜t10の2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極プラス極性ピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ピーク電圧が印加する。時刻t10〜t11の2回目の電極プラス極性ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極プラス極性ベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ベース電圧が印加する。この2回目の電極プラス極性ベース期間Tb中の時刻t101において、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwが短時間の間急降下している。このことは、時刻t101において、溶滴移行が行われたことを示している。但し、2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は2回目の電極プラス極性ベース期間Tb中に、溶滴移行が行われたか否かにかかわらず、電極マイナス極性ベース期間Tbnに移行する。時刻t11において極性が反転し、時刻t11〜t12の電極マイナス極性ベース期間Tbn中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極マイナス極性ベース電流Ibnが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス極性ベース電圧が印加する。これで、第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)が終了し、次のパルス周期へと移行する。
【0030】
第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)における溶滴の形成及び移行について説明する。前パルス周期中の時刻t5〜t6の電極マイナス極性ベース期間Tbnにおいて、溶接ワイヤ先端に溶滴が形成される。時刻t6〜t7の電極マイナス極性ピーク期間Tpn中は、臨界値以上の大電流が通電するために溶滴はさらに大きくなる。時刻t7〜t8の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、臨界値以上の大電流が通電するために、溶滴に強い電磁的ピンチ力が作用して溶滴上部にくびれが形成される。しかし、大きなサイズの溶滴に対してアーク力、重力等が作用して、その形状が歪な形状になる場合がある。このような場合には、くびれが充分に進行しない状態で、電極プラス極性ピーク期間Tpが終了することになる。くびれが充分に進行しない状態で、時刻t8からの電極プラス極性ベース期間Tbに入っても、この期間中には溶滴移行は行われない。このようなときには、時刻t9から2回目の電極プラス極性ピーク期間Tpを設けて、溶滴移行を促すようにしている。すなわち、時刻t9〜t10の2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び時刻t10〜t11の電極プラス極性ベース期間Tbを設けて、溶滴を移行させるようにしている。もし、溶滴移行が行われていないにもかかわらず、時刻t9において電極マイナス極性ベース期間Tbnに移行すると、大きな溶滴がさらに巨大になり、ピーク電流の通電と同期することなくランダムに移行するようになる。このような状態になると、スパッタの発生が多くなり、ビード外観も悪くなる。したがって、1パルス周期ごとに1つの溶滴を移行させることは、良好な溶接品質を得るために重要である。2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は2回目の電極プラス極性ベース期間Tbにおいても、溶滴移行が行われないことはまれなことである。したがって、本実施の形態では、2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は2回目の電極プラス極性ベース期間Tb中に溶滴移行が行われたか否かにかかわらず、電極マイナス極性ベース期間Tbnに移行する。
【0031】
電極マイナス極性電流比率を通常範囲よりも大きく設定した交流パルスアーク溶接では、パルス周波数は100Hz程度となる。パルス周波数はパルス周期の逆数であるので、1秒間に100回のパルス周期が繰り返されることになる。この100回のパルス周期のほとんどは、上述した第n回目のパルス周期Tf(n)と同様の動作となる。これは、1回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は1回目の電極プラス極性ベース期間Tb中において、溶滴移行がほとんど行われるためである。しかし、ときたま、溶滴移行が行われない場合が生じる。このような場合には、上述した第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)と同様の動作を行うことによって、1パルス1溶滴移行の状態を維持するようにしている。従来技術のように、第n回目のパルス周期Tf(n)と同様の動作だけを行っている場合には、ときどき生じる1パルス周期中に溶滴移行が行われなかった状態を起因として、溶接状態が不安定になることがあった。本実施の形態では、このような状態になることを抑制することができる。
【0032】
同図においては、上記の電極プラス極性ピーク電流Ip及び上記の電極マイナス極性ピーク電流Ipnの立上り及び立下りが急峻であり矩形波となる場合を示している。しかし、これらピーク電流の立上り及び又は立下りに所定の傾斜を持たせるようにして、台形波となるようにしても良い。アルミニウム材に対する交流パルスアーク溶接では、これらピーク電流を台形波にすることで、アーク力を弱くしてスパッタの発生を削減することができる。
【0033】
図2は、上述した本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図である。同図は、上記の電極マイナス極性ベース期間Tbnがフィードバック制御によって変化する場合である。同図において、上述した極性切換時の高電圧印加回路については省略している。以下、同図を参照して各ブロックについて説明する。
【0034】
インバータ回路INVは、3相200V等の交流商用電源(図示は省略)を入力として、整流及び平滑した直流電圧を、後述する電流誤差増幅信号Eiによるパルス幅変調制御によりインバータ制御を行い、高周波交流を出力する。インバータトランスINTは、高周波交流電圧をアーク溶接に適した電圧値に降圧する。2次整流器D2a〜D2dは、降圧された高周波交流を直流に整流する。電極プラス極性トランジスタPTRは後述する電極プラス極性駆動信号Pdによってオン状態になり、このときは溶接電源の出力は電極プラス極性EPになる。電極マイナス極性トランジスタNTRは後述する電極マイナス極性駆動信号Ndによってオン状態になり、このときは溶接電源の出力は電極マイナス極性ENになる。リアクトルWLは、リップルのある出力を平滑する。溶接ワイヤ1は、ワイヤ送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を送給されて、母材2との間にアーク3が発生する。
【0035】
電圧検出回路VDは、溶接電圧Vwの絶対値を検出して、電圧検出信号Vdを出力する。電圧平均化回路VAVは、この電圧検出信号Vdを平均化して、電圧平均値信号Vavを出力する。電圧設定回路VRは、予め定めた電圧設定信号Vrを出力する。電圧誤差増幅回路EVは、上記の電圧設定信号Vrと上記の電圧平均値信号Vavとの誤差を増幅して、電圧誤差増幅信号Evを出力する。電圧・周波数変換回路VFは、この電圧誤差増幅信号Evに比例した周波数の信号に変換して、この周波数ごとに短時間だけHighレベルになるパルス周期信号Tfを出力する。
【0036】
電極プラス極性ピーク期間設定回路TPRは、予め定めた電極プラス極性ピーク期間設定信号Tprを出力する。電極マイナス極性ピーク期間設定回路TPNRは、予め定めた電極マイナス極性ピーク期間設定信号Tpnrを出力する。電極プラス極性ベース期間設定回路TBRは、予め定めた電極プラス極性ベース期間設定信号Tbrを出力する。溶滴移行判別回路MDは、上記の電圧検出信号Vd及び後述するタイマ信号Tmを入力として、タイマ信号Tmの値が1(電極マイナス極性ピーク期間Tpn)になるとLowレベルにリセットされ、タイマ信号Tmの値が2(電極プラス極性ピーク期間Tp)又は3(電極プラス極性ベース期間Tb)のときに電圧検出信号Vdの変化によって溶滴移行が行われたかを判別して行われたときはHighレベルにセットされ、タイマ信号Tmの値が4(電極マイナス極性ベース期間Tbn)になると再びLowレベルにリセットされる溶滴移行判別信号Mdを出力する。電圧検出信号Vdの変化から溶滴移行が行われたかの判別方法については、図1で上述したとおりである。すなわち、電圧検出信号Vdの変化率(絶対値)が基準値以上になったときは溶滴移行が行われたと判別する。また、電圧検出信号Vdの値が各期間ごとに設定された所定範囲外になったときは溶滴移行が行われたと判別する。
【0037】
タイマ回路TMは、上記のパルス周期信号Tf、上記の電極マイナス極性ピーク期間設定信号Tpnr、上記の電極プラス極性ピーク期間設定信号Tpr、上記の電極プラス極性ベース期間設定信号Tbr及び上記の溶滴移行判別信号Mdを入力として、以下の処理を行い、タイマ信号Tmを出力する。
(1)パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化した時点から電極マイナス極性ピーク期間設定信号Tpnrによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を1にして出力する。
(2)続いて、電極プラス極性ピーク期間設定信号Tprによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を2にして出力する。
(3)続いて、電極プラス極性ベース期間設定信号Tbrによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を3にして出力する。そして、この期間が終了した時点で、溶滴移行判別信号MdがHighレベル(溶滴移行あり)であるかを判断し、YESならば(6)に進み、NOならば(4)に進む。
(4)続いて、再び電極プラス極性ピーク期間設定信号Tprによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を2にして出力する。
(5)続いて、再び電極プラス極性ベース期間設定信号Tbrによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を3にして出力する。
(6)続いて、再びパルス周期信号Tfが短時間Highレベルになるまでの期間中は、タイマ信号Tmの値を4にして出力する。以後、これらの動作を繰り返す。
【0038】
電極プラス極性ピーク電流設定回路IPRは、予め定めた電極プラス極性ピーク電流設定信号Iprを出力する。電極マイナス極性ピーク電流設定回路IPNRは、予め定めた電極マイナス極性ピーク電流設定信号Ipnrを出力する。電極マイナス極性ベース電流設定回路IBNRは、予め定めた電極マイナス極性ベース電流設定信号Ibnrを出力する。電極プラス極性ベース電流設定回路IBRは、予め定めた電極プラス極性ベース電流設定信号Ibrを出力する。切換回路SWは、上記のタイマ信号Tm、上記の電極マイナス極性ピーク電流設定信号Ipnr、上記の電極プラス極性ピーク電流設定信号Ipr、上記の電極プラス極性ベース電流設定信号Ibr及び上記の電極マイナス極性ベース電流設定信号Ibnrを入力として、タイマ信号Tm=1のとき電極マイナス極性ピーク電流設定信号Ipnrを電流設定信号Irとして出力し、タイマ信号Tm=2のとき電極プラス極性ピーク電流設定信号Iprを電流設定信号Irとして出力し、タイマ信号Tm=3のとき電極プラス極性ベース電流設定信号Ibrを電流設定信号Irとして出力し、タイマ信号Tm=4のとき電極マイナス極性ベース電流設定信号Ibnrを電流設定信号Irとして出力する。電流検出回路IDは、溶接電流Iwの絶対値を検出して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の電流設定信号Irと上記の電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。
【0039】
駆動回路DVは、上記のタイマ信号Tmを入力として、タイマ信号Tm=1又は4のとき上記の電極マイナス極性駆動信号Ndを出力し、タイマ信号Tm=2又は3のとき上記の電極プラス極性駆動信号Pdを出力する。これによって、電極マイナス極性ベース期間及び電極マイナス極性ピーク期間は電極マイナス極性となり、電極プラス極性ピーク期間及び電極プラス極性ベース期間は電極プラス極性となる。送給速度設定回路FRは、予め定めた送給速度設定信号Frを出力する。送給制御回路FCは、この送給速度設定信号Frを入力として、その値に対応した送給速度で溶接ワイヤ1を送給するための送給制御信号Fcを上記のワイヤ送給モータWMに出力する。
【0040】
[実施の形態2]
図3は、本発明の実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接制御方法を示す電流・電圧波形図である。同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示す。同図において、0A及び0Vから上側が電極プラス極性EPを示し、下側が電極マイナス極性ENを示す。同図は、電極マイナス極性電流比率が通常範囲(0〜30%程度)よりも大きく設定された場合である。同図(B)において、極性切換時のアーク切れを防止するために、極性切換時に短時間の間、高電圧(図示は省略)を溶接電圧Vwに重畳している。同図は、上述した図1と対応しており、時刻t1〜t9の期間の動作は同一であるので、これらの期間の説明は省略する。以下、同図を参照して説明する。
【0041】
同図において、時刻t1〜t2の期間は電極マイナス極性ベース期間Tbnを示し、時刻t2〜t3の期間は電極マイナス極性ピーク期間Tpnを示し、時刻t3〜t4の期間は電極プラス極性ピーク期間Tpを示し、時刻t4〜t5の期間は電極プラス極性ベース期間Tbを示し、時刻t5〜t6の期間は電極マイナス極性ベース期間Tbnを示す。また、時刻t6〜t7の期間は電極マイナス極性ピーク期間Tpnを示し、時刻t7〜t8の期間は電極プラス極性ピーク期間Tpを示し、時刻t8〜t9の期間は電極プラス極性ベース期間Tbを示し、時刻t9〜t10の期間は2回目の電極プラス極性ピーク期間Tpを示し、時刻t10〜t11の期間は2回目の電極プラス極性ベース期間Tbを示し、時刻t11〜t12の期間は3回目の電極プラス極性ピーク期間Tpを示し、時刻t12〜t13の期間は3回目の電極プラス極性ベース期間Tbを示し、時刻t13〜t14の期間は電極マイナス極性ベース期間Tbnを示す。時刻t2〜t6の期間が第n回目のパルス周期Tf(n)となり、時刻t6〜t14の期間が第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)となる。第n回目のパルス周期Tf(n)においては、電極プラス極性ベース期間Tb中の時刻t41に溶滴移行が行われた場合である。また、第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)においては、3回目の電極プラス極性ベース期間Tb中の時刻t121に溶滴移行が行われた場合である。したがって、図1で上述した実施の形態1との相違点は、溶滴移行が行われなかったために、時刻t11〜t13の3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び3回目の電極プラス極性ベース期間Tbを設けたことである。第n回目のパルス周期Tf(n)の動作は、図1と同一であるので、その説明は省略する。
【0042】
(2−1)第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)中の動作
時刻t6から第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)が開始する。時刻t6〜t7の電極マイナス極性ピーク期間Tpn中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極マイナス極性ピーク電流Ipnが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス極性ピーク電圧が印加する。時刻t7において極性が反転する。時刻t7〜t8の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極プラス極性ピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ピーク電圧が印加する。時刻t8〜t9の電極プラス極性ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極プラス極性ベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ベース電圧が印加する。時刻t7〜t8の電極プラス極性ピーク期間Tp又は時刻t8〜t9の電極プラス極性ベース期間Tb中の溶接電圧Vwは、同図(B)に示すように、急上昇も急降下もしていないので、これらの期間中には溶滴移行が行われなかったことを示している。このために、本来の動作である電極マイナス極性ベース期間Tbnへの移行は行わずに、2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び2回目の電極プラス極性ベース期間Tbに移行する。時刻t9〜t10の2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極プラス極性ピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ピーク電圧が印加する。時刻t10〜t11の2回目の電極プラス極性ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極プラス極性ベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ベース電圧が印加する。時刻t9〜t10の2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は時刻t10〜t11の2回目の電極プラス極性ベース期間Tb中の溶接電圧Vwは、同図(B)に示すように、急上昇も急降下もしていないので、これらの期間中には溶滴移行が行われなかったことを示している。このために、本来の動作である電極マイナス極性ベース期間Tbnへの移行は行わずに、3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び3回目の電極プラス極性ベース期間Tbに移行する。時刻t11〜t12の3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、臨界値以上の電極プラス極性ピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ピーク電圧が印加する。時刻t12〜t13の3回目の電極プラス極性ベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極プラス極性ベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、電極プラス極性ベース電圧が印加する。この3回目の電極プラス極性ベース期間Tb中の時刻t121において、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwが短時間の間急降下している。このことは、時刻t121において、溶滴移行が行われたことを示している。但し、3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は3回目の電極プラス極性ベース期間Tb中に、溶滴移行が行われたか否かにかかわらず、電極マイナス極性ベース期間Tbnに移行する。時刻t13において極性が反転し、時刻t13〜t14の電極マイナス極性ベース期間Tbn中は、同図(A)に示すように、臨界値未満の電極マイナス極性ベース電流Ibnが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス極性ベース電圧が印加する。これで、第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)が終了し、次のパルス周期へと移行する。
【0043】
第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)における溶滴の形成及び移行について説明する。前パルス周期中の時刻t5〜t6の電極マイナス極性ベース期間Tbnにおいて、溶接ワイヤ先端に溶滴が形成される。時刻t6〜t7の電極マイナス極性ピーク期間Tpn中は、臨界値以上の大電流が通電するために溶滴はさらに大きくなる。時刻t7〜t8の電極プラス極性ピーク期間Tp中は、臨界値以上の大電流が通電するために、溶滴に強い電磁的ピンチ力が作用して溶滴上部にくびれが形成される。しかし、大きなサイズの溶滴に対してアーク力、重力等が作用して、その形状が歪な形状になる場合がある。このような場合には、くびれが充分に進行しない状態で、電極プラス極性ピーク期間Tpが終了することになる。くびれが充分に進行しない状態で、時刻t8からの電極プラス極性ベース期間Tbに入っても、この期間中には溶滴移行は行われない。このようなときには、時刻t9から2回目の電極プラス極性ピーク期間Tpを設けて、溶滴移行を促すようにしている。すなわち、時刻t9〜t10の2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び時刻t10〜t11の電極プラス極性ベース期間Tbを設けて、溶滴を移行させるようにしている。しかしながら、2回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び2回目の電極プラス極性ベース期間Tbを設けたにもかかわらず、これらの期間中にも溶滴移行が行われなかった場合には、溶滴移行を確実に行うために、さらに、時刻t11〜t12の3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び時刻t12〜t13の3回目の電極プラス極性ベース期間Tbを設けている。もし、溶滴移行が行われていないにもかかわらず、時刻t9又はt11において電極マイナス極性ベース期間Tbnに移行すると、大きな溶滴がさらに巨大になり、ピーク電流の通電と同期することなくランダムに移行するようになる。このような状態になると、スパッタの発生が多くなり、ビード外観も悪くなる。したがって、1パルス周期ごとに1つの溶滴を移行させることは、良好な溶接品質を得るために重要である。3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は3回目の電極プラス極性ベース期間Tbにおいても、溶滴移行が行われないことは極まれなことである。したがって、本実施の形態では、3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は3回目の電極プラス極性ベース期間Tb中に溶滴移行が行われたか否かにかかわらず、電極マイナス極性ベース期間Tbnに移行する。
【0044】
電極マイナス極性電流比率を通常範囲よりも大きく設定した交流パルスアーク溶接では、パルス周波数は100Hz程度となる。パルス周波数はパルス周期の逆数であるので、1秒間に100回のパルス周期が繰り返されることになる。この100回のパルス周期のほとんどは、上述した第n回目のパルス周期Tf(n)と同様の動作となる。これは、1回目の電極プラス極性ピーク期間Tp又は1回目の電極プラス極性ベース期間Tb中において、溶滴移行がほとんど行われるためである。しかし、ときたま、溶滴移行が行われない場合が生じる。このような場合には、上述した第n+1回目のパルス周期Tf(n+1)と同様の動作を行うことによって、2回目又は3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び電極プラス極性ベース期間Tbを設けて、1パルス1溶滴移行の状態を維持するようにしている。従来技術のように、第n回目のパルス周期Tf(n)と同様の動作だけを行っている場合には、ときたま生じる1パルス周期中に溶滴移行が行われなかった状態を起因として、溶接状態が不安定になることがあった。本実施の形態では、このような状態になることを抑制することができる。さらに、本実施の形態では、3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び3回目の電極プラス極性ベース期間Tbを設けることによって、上述した実施の形態1よりも1パルス1溶滴移行状態を維持する確率が高くなった。
【0045】
上述した実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接制御方法を実施するための溶接電源のブロック図は、上述した図2と同一である。但し、上記のタイマ回路TMの動作が、以下のように変更になる。タイマ回路TMは、パルス周期信号Tf、電極マイナス極性ピーク期間設定信号Tpnr、電極プラス極性ピーク期間設定信号Tpr、電極プラス極性ベース期間設定信号Tbr及び溶滴移行判別信号Mdを入力として、以下の処理を行い、タイマ信号Tmを出力する。
(1)パルス周期信号Tfが短時間Highレベルに変化した時点から電極マイナス極性ピーク期間設定信号Tpnrによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を1にして出力する。
(2)続いて、電極プラス極性ピーク期間設定信号Tprによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を2にして出力する。
(3)続いて、電極プラス極性ベース期間設定信号Tbrによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を3にして出力する。そして、この期間が終了した時点で、溶滴移行判別信号MdがHighレベル(溶滴移行あり)であるかを判断し、YESならば(8)に進み、NOならば(4)に進む。
(4)続いて、再び電極プラス極性ピーク期間設定信号Tprによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を2にして出力する。
(5)続いて、再び電極プラス極性ベース期間設定信号Tbrによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を3にして出力する。そして、この期間が終了した時点で、溶滴移行判別信号MdがHighレベル(溶滴移行あり)であるかを判断し、YESならば(8)に進み、NOならば(6)に進む。
(6)続いて、再び電極プラス極性ピーク期間設定信号Tprによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を2にして出力する。
(7)続いて、再び電極プラス極性ベース期間設定信号Tbrによって定まる期間中は、タイマ信号Tmの値を3にして出力する。
(8)続いて、再びパルス周期信号Tfが短時間Highレベルになるまでの期間中は、タイマ信号Tmの値を4にして出力する。以後、これらの動作を繰り返す。
【0046】
上述した実施の形態1及び2において、電極プラス極性ベース期間Tbを0(期間を削除)に設定しても良い。このようにすれば、電極マイナス極性電流比率を大きな値にさらに設定しやすくなる。また、上述した実施の形態1及び2では、全ての期間が定電流制御されている場合を説明した。この場合には、溶滴移行によってアーク長が急変しても、溶接電流Iwの値は変化しない。このために、溶滴移行の有無の判別を溶接電圧Vwの変化によって判別している。しかし、溶滴移行の有無を判別するためには、定電圧制御し、溶接電流Iwの変化によって判別する方が判別精度が向上する場合がある。特に、電極プラス極性ピーク期間Tp中に溶滴移行が行われたかを判別する場合には、判別精度が向上する。このために、(1)全期間、(2)1回目〜3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp及び電極プラス極性ベース期間Tb、(3)1回目〜3回目の電極プラス極性ピーク期間Tp、(4)2回目及び3回目の電極プラス極性ピーク期間Tpのいずれか1つを選択して、これらの期間中は定電圧制御するようにしても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
DV 駆動回路
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EN 電極マイナス極性
EP 電極プラス極性
EV 電圧誤差増幅回路
Ev 電圧誤差増幅信号
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
FR 送給速度設定回路
Fr 送給速度設定信号
Ib (電極プラス極性)ベース電流
Ibn 電極マイナス極性ベース電流
IBNR 電極マイナス極性ベース電流設定回路
Ibnr 電極マイナス極性ベース電流設定信号
IBR 電極プラス極性ベース電流設定回路
Ibr 電極プラス極性ベース電流設定信号
ID 電流検出回路
Id 電流検出信号
INT インバータトランス
INV インバータ回路
Ip (電極プラス極性)ピーク電流
Ipn 電極マイナス極性ピーク電流
IPNR 電極マイナス極性ピーク電流設定回路
Ipnr 電極マイナス極性ピーク電流設定信号
IPR 電極プラス極性ピーク電流設定回路
Ipr 電極プラス極性ピーク電流設定信号
Ir 電流設定信号
Iw 溶接電流
MD 溶滴移行判別回路
Md 溶滴移行判別信号
Nd 電極マイナス極性駆動信号
NTR 電極マイナス極性トランジスタ
Pd 電極プラス極性駆動信号
PTR 電極プラス極性トランジスタ
Ren 電極マイナス極性電流比率
SW 切換回路
Tb (電極プラス極性)ベース期間
Tbn 電極マイナス極性ベース期間
TBR 電極プラス極性ベース期間設定回路
Tbr 電極プラス極性ベース期間設定信号
Ten 電極マイナス極性期間
Tep 電極プラス極性期間
Tf パルス周期(信号)
TM タイマ回路
Tm タイマ信号
Tp (電極プラス極性)ピーク期間
Tpn 電極マイナス極性ピーク期間
TPNR 電極マイナス極性ピーク期間設定回路
Tpnr 電極マイナス極性ピーク期間設定信号
TPR 電極プラス極性ピーク期間設定回路
Tpr 電極プラス極性ピーク期間設定信号
VAV 電圧平均化回路
Vav 電圧平均値(信号)
Vb ベース電圧
Vbn 電極マイナス極性ベース電圧
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
VF 電圧・周波数変換回路
Vp ピーク電圧
VR 電圧設定回路
Vr 電圧設定(値/信号)
Vw 溶接電圧
WL リアクトル
WM ワイヤ送給モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ワイヤを送給すると共に、電極マイナス極性ピーク期間中は臨界値以上の電極マイナス極性ピーク電流を通電し、続けて電極プラス極性ピーク期間中は臨界値以上の電極プラス極性ピーク電流を通電し、続けて電極プラス極性ベース期間中は臨界値未満の電極プラス極性ベース電流を通電し、続けて電極マイナス極性ベース期間中は臨界値未満の電極マイナス極性ベース電流を通電し、これらの通電を1周期として繰り返して溶接を行う交流パルスアーク溶接制御方法において、
前記電極プラス極性ピーク期間又は前記電極プラス極性ベース期間中に溶滴移行が行われなかったときは、前記電極プラス極性ベース期間と前記電極マイナス極性ベース期間との間に前記電極プラス極性ピーク期間及び前記電極プラス極性ベース期間を再度設ける、
ことを特徴とする交流パルスアーク溶接制御方法。
【請求項2】
再度設けた前記電極プラス極性ピーク期間又は再度設けた前記電極プラスベース期間中に溶滴移行が行われなかったときは、さらに再度電極プラス極性ピーク期間及び前記電極プラス極性ベース期間を設ける、
ことを特徴とする請求項1記載の交流パルスアーク溶接制御方法。
【請求項3】
前記溶滴移行が行われなかったことを、溶接電圧の変化によって判別する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の交流パルスアーク溶接制御方法。
【請求項4】
前記溶滴移行が行われなかったことを、溶接電圧の変化率が予め定めた基準値未満であったことによって判別する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の交流パルスアーク溶接制御方法。
【請求項5】
前記溶滴移行が行われなかったことを、溶接電圧の変化が所定範囲内であったことによって判別する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の交流パルスアーク溶接制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−284708(P2010−284708A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141895(P2009−141895)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】