説明

交通システム用無線通信装置および送信異常検出方法

【課題】交通システム用無線通信装置内の異常箇所の特定を容易にすることができる交通システム用無線通信装置および送信異常検出方法を提供する。
【解決手段】交通データに基づいて交通設備を制御するための交通システムにおいて、交通データを含む無線信号の送信を行うための交通システム用無線通信装置1であって、筐体27と、筐体27内に設けられ、筐体27外へ交通データを含む無線信号を送信するためのRF部23と、筐体27内に設けられ、RF部23から送信される無線信号を取得するための内部アンテナ25と、内部アンテナ25が取得した無線信号の受信レベルに基づいて、RF部23に異常が生じているか否かを判定するための判定部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通システム用無線通信装置および送信異常検出方法に関し、特に、交通システム用無線通信装置の送信部に異常が生じているか否かを判定する交通システム用無線通信装置および送信異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交通信号機などの交通設備の制御を行うために、複数の交通制御機器の間で交通データの送受信を行う交通システムが知られている。例えば、交通システムは、交通管制センターに設置された中央装置と、交通信号機の信号灯器を制御する交通信号制御機に接続された通信機器と、交通データを取得する車両感知器の制御機器に接続された通信機器とにより構成されている。
【0003】
また、近年では設置工事の低価格化及びメンテナンスの容易化を目的として、交通制御機器間の通信が有線から無線へ移行されつつある。しかしながら、交通制御機器間の無線通信では、屋外で数百メートルに及ぶデータ伝送を行うため、マルチパスなどの影響を受ける場合があり、このような場合、安定した通信を行うことが困難となる。このため、交通制御機器間において安定した無線通信を行なうための交通システムが開発されている。
【0004】
このような交通システムとしては、例えば、時分割多重通信による無線通信システムにおける複数の通信装置間の通信において、各通信装置は通信相手の通信装置との間の通信経路毎に、該通信経路における通信環境に応じて異なる通信周波数チャンネルを選択することが可能に構成された通信システムがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−066811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、交通制御機器にそれぞれ接続される通信機器の設置時または保守情報の取得時に、送信側の通信機器の異常またはマルチパスなどの外的要因によって受信側の通信機器における無線信号の受信レベルが低下することがある。このように無線信号の受信レベルが低下すると、交通信号機の信号灯器の制御に支障をきたす可能性があることから、受信レベルの低下の原因を明確にして早急に対応することが重要である。
【0007】
ここで、送信側の通信機器としては、例えば、道路の近傍に設けられた筐体と、当該筐体内に設けられた送信部と、道路の上方に設置された筐体外の外部アンテナとを備える構成を考える。このような通信機器では、送信側の通信機器に異常が生じていることが判明した場合であっても、送信部の異常であるのか外部アンテナの異常であるのかを区別することが難しい。このため、送信側の通信機器に異常が生じている場合には、送信部および外部アンテナを含む通信機器全体を高所作業車等により交換するために道路を通行止めにするなど煩雑な処理が必要となり、円滑な交通を阻害する虞がある。
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、交通システム用無線通信装置内の異常箇所の特定を容易にすることができる交通システム用無線通信装置および送信異常検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる交通システム用無線通信装置は、交通データに基づいて交通設備を制御するための交通システムにおいて、上記交通データを含む無線信号の送信を行うための交通システム用無線通信装置であって、筐体と、上記筐体内に設けられ、上記筐体外へ上記無線信号を送信するための送信部と、上記筐体内に設けられ、上記送信部から送信される上記無線信号を取得するための取得部と、上記取得部が取得した上記無線信号の受信レベルに基づいて、上記送信部に異常が生じているか否かを判定するための判定部とを備える。
【0010】
このように、送信部と取得部とが同一の筐体内に設けられているため、一般に標準化され、モジュールチップとして使用されることが多い送信部自体の構成を変えることなく、送信部から送信される無線信号を筐体内で直接取得し、取得した無線信号の受信レベルに基づいて、送信部に異常が生じているか否かを判定することができ、交通システム用無線通信装置内の異常箇所の特定を容易にすることができる。
【0011】
また、交通システムのうち送信側の通信装置に異常が生じていることが判明した場合において、通信装置の送信部における異常の有無を判定することができるため、送信部および外部アンテナを含む通信装置全体を交換するといった煩雑な処理を行うことなく、例えば送信部のみの交換で足りる。また、送信部のみの交換で足りるため、高所作業車を用いる必要がなく、道路を通行止めにする必要がない。
【0012】
(2)好ましくは、上記送信部は、上記筐体の外部に設けられる外部アンテナへ上記無線信号を有線により伝送することにより、上記無線信号を上記筐体外へ送信し、上記取得部は、上記筐体の内部に設けられ、上記送信部から送信される上記無線信号を上記筐体の内部において受信するための内部アンテナである。
【0013】
このような構成により、送信部に対して新たな配線を施すことなく、送信部から送信される無線信号を取得することができる。
【0014】
また、送信部が格納された筐体内で無線信号を直接取得して送信部における異常の有無を判定する本発明に係る交通システム用無線通信装置は、筐体の外部に設けられる外部アンテナへ送信部が無線信号を伝送するという構成において、一層有効である。
【0015】
(3)好ましくは、上記判定部は、判定して得られた判定結果を前記送信部に出力し、前記送信部は、さらに、前記判定部から受けた前記判定結果を示す無線信号を他の装置へ送信する。
【0016】
このような構成により、例えば、交通システム用無線通信装置の保守管理に都合の良い外部の装置において判定結果の保守管理を行うことができる。
【0017】
より好ましくは、上記他の装置は、上記交通データを含む前記無線信号を受信するための装置である。
【0018】
このように、1または複数の通信装置から送信される交通データを受信し、当該交通データを一括して管理する装置に判定結果が送信されることにより、1または複数の通信装置に関する判定結果を一括して管理することができる。
【0019】
また、このような構成により、送信側の通信装置と判定結果の管理装置とが遠く離れて設置されている場合であっても、送信側の通信装置へ判定結果の確認のため移動することなく判定結果の管理装置において判定結果を確認することができる。
【0020】
(4)好ましくは、上記送信部は、IEEE802.11の仕様に基づく無線信号の送信を行う。
【0021】
IEEE802.11の仕様に基づく屋外の無線通信は、マルチパスなど外的要因により妨害を受ける可能性が高いため、送信部に異常が生じているか否かを判定することのできる本発明に係る交通システム用無線通信装置は、無線LANを使用した交通システムにおいて、一層有効である。
【0022】
(5)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる送信異常検出方法は、交通データに基づいて交通設備を制御するための交通システムにおいて、上記交通データを含む無線信号の送信を行うための交通システム用無線通信装置の送信部の異常を検出するための送信異常検出方法であって、上記送信部は、筐体内に設けられ、上記筐体外へ上記無線信号を送信し、上記筐体内において、上記送信部から送信される上記無線信号を取得するステップと、取得した上記無線信号の受信レベルに基づいて、上記送信部に異常が生じているか否かを判定するステップとを含む。
【0023】
このような方法により、一般に標準化され、モジュールチップとして使用されることが多い送信部自体の構成を変えることなく、送信部から送信される無線信号を筐体内で直接取得し、取得した無線信号の受信レベルに基づいて、送信部に異常が生じているか否かを判定することができ、交通システム用無線通信装置内の異常箇所の特定を容易にすることができる。
【0024】
また、交通システムのうち送信側の通信装置に異常が生じていることが判明した場合において、通信装置の送信部における異常の有無を判定することができるため、送信部および外部アンテナを含む通信装置全体を交換するといった煩雑な処理を行うことなく、例えば送信部のみの交換で足りる。また、送信部のみの交換で足りるため、高所作業車を用いる必要がなく、道路を通行止めにする必要がない。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る交通システム用無線装置および送信異常検出方法によれば、交通システム用無線通信装置内の異常箇所の特定を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信装置を含む交通システムを説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る通信装置のRF部の構成を示す図である。
【図4】(a)は、判定部によりRF部に異常は生じていないと判定された場合に、送信側のコンソールに表示される画面の例を示す図であり、(b)は、判定部によりRF部に異常が生じていると判定された場合に、送信側のコンソールに表示される画面の例を示す図である。
【図5】(a)は、判定部によりRF部に異常は生じていないと判定された場合に、送信側のLED点灯制御部により制御されるLEDの点灯の例を示す図であり、(b)は、判定部によりRF部に異常が生じていると判定された場合に、送信側のLED点灯制御部により制御されるLEDの点灯の例を示す図である。
【図6】(a)は、判定部によりRF部に異常は生じていないと判定された場合に、受信側のコンソールに表示される画面の例を示す図であり、(b)は、判定部によりRF部に異常が生じていると判定された場合に、受信側のコンソールに表示される画面の例を示す図である。
【図7】(a)は、判定部によりRF部に異常は生じていないと判定された場合に、受信側のLED点灯制御部により制御されるLEDの点灯の例を示す図であり、(b)は、判定部によりRF部に異常が生じていると判定された場合に、受信側のLED点灯制御部により制御されるLEDの点灯の例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る通信装置によるRF部の異常判定の動作手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態の変形例に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[構成および基本動作]
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0028】
(交通システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る交通システム用無線通信装置(以下、「通信装置」とする)1を含む交通システムを説明するための図である。図1を参照して、本発明の実施の形態に係る通信装置1を含む交通システムは、送信側の通信装置1と、受信側の通信装置2と、交通管制センターに設けられた中央装置3とを備えている。
【0029】
送信側の通信装置1は、超音波式車両感知器、遠赤外線式車両感知器または光ビーコンなどの車両感知器4の制御機器5と接続されている。車両感知器4は、例えば、道路の上方に設置されたセンサの直下を通行する車両を検知して、検知結果を制御機器5に出力する。
【0030】
制御機器5は、車両感知器4から受けた検知結果に基づいて、車両による道路の占有率などの交通データを算出し、算出した交通データを必要に応じてシリアル信号に変換して通信装置1に出力する。通信装置1は、制御機器5から受けた交通データを、通信装置1に設けられた外部アンテナ13から無線信号により受信側の通信装置2に送信する。
【0031】
なお、交通データは、車両感知器4により検知された検知結果自体でもよい。このような場合、例えば、通信装置1が、車両感知器4により検知された検知結果を交通データとして通信装置2に送信し、通信装置2が、通信装置1から受けた検知結果を交通信号制御機7に送信する。そして、交通信号制御機7が、通信装置2から受けた検知結果に基づいて、車両による道路の占有率などを算出することが可能である。また、交通信号制御機7は、通信装置2から受けた検知結果を中央装置3に送信し、中央装置3が、交通信号制御機7から受けた検知結果に基づいて、車両による道路の占有率などを算出してもよい。
【0032】
交通信号機(交通設備)は、信号灯器6と、信号灯器6の点灯を制御する交通信号制御機7とを備えており、受信側の通信装置2は、交通信号制御機7に接続されている。通信装置2は、通信装置2に設けられた外部アンテナ8により、通信装置1の外部アンテナ13から送信された交通データを受信する。また、通信装置2は、通信装置1から受信した交通データを交通信号制御機7に送信する。交通信号制御機7は、中央装置3と専用回線により接続されており、通信装置2から受けた交通データを、中央装置3に送信する。
【0033】
交通管制センターの中央装置3は、交通信号制御機7から受けた交通データに基づいて信号制御パラメータを決定する。また、中央装置3は、決定した信号制御パラメータを交通信号制御機7に出力する。
【0034】
中央装置3から信号制御パラメータを受けた交通信号制御機7は、通信装置2から受けた信号制御パラメータに基づいて信号灯器6の点灯の制御を行う。
【0035】
また、送信側の通信装置1と受信側の通信装置2との間で行われる無線通信は、ISMバンド(Industrial Scientific Medical Band)である2.4GHz帯、すなわち2.4000〜2.4835GHzを使用する。また、通信周波数チャネルは、IEEE802.11a/b/gに基づく無線LAN機器用の周波数と同じ周波数帯域を用いる。
【0036】
なお、本実施の形態においては、送信側の通信装置1が車両感知器4の制御機器5と接続されている場合について説明するが、この通信装置1は、例えば交通信号制御機7など他の交通制御機器と接続されていてもよい。また、受信側の通信装置2が交通信号制御機7と接続されている場合について説明するが、通信装置1と同様に、他の交通制御機器と接続されていてもよい。また、通信装置2は、交通信号制御機7を含む交通制御機器と一体型に形成されてもよい。
【0037】
(交通システム用無線装置の構成)
図2は、本発明の実施の形態に係る通信装置1の構成を示すブロック図であり、図3は、本発明の実施の形態に係る通信装置1のRF部23(送信部)の構成を示す図である。
【0038】
図2を参照して、通信装置1は、接続部11と、無線制御部12と、外部アンテナ13とを備えている。接続部11は、制御機器5と接続され、車両感知器4により取得された交通データを制御機器5を介して取得し、取得した交通データを無線制御部12に出力する。
【0039】
無線制御部12は、デジタル処理部21と、チェック部22と、RF部23と、送信用端子24と、内部アンテナ25(取得部)と、判定部26と、筐体27とを含む。これらデジタル処理部21、チェック部22、RF部23、送信用端子24、内部アンテナ25および判定部26は、筐体27の内部に格納されている。
【0040】
デジタル処理部21は、接続部11から受けた交通データを所定のタイムスロットに格納するタイムスロット変換等の処理を行い、処理後の交通データをチェック部22に出力する。
【0041】
チェック部22は、デジタル処理部21から受けた交通データまたは判定部26から受けた判定結果を示すデータに基づいて、デジタル処理部21または判定部26から信号が正しく出力されているかを確認する。そして、チェック部22は、デジタル処理部21から受けた交通データおよび判定部26から受けた判定結果を示すデータをRF部23に出力する。
【0042】
図3を参照して、RF部23は、信号変換回路31と、直交変調器32と、発振器33と、増幅器34とを含む。
【0043】
信号変換回路31は、チェック部22から受けた交通データであるデジタル信号をアナログ信号へ変換する等の変換処理を行い、変換処理後の信号を直交変調器32に出力する。直交変調器32は、信号変換回路31により受けた信号と発振器33により生成された搬送波とを乗算して無線信号を生成し、生成した無線信号を増幅器34に出力する。
【0044】
増幅器34は、直交変調器32から受けた無線信号を増幅し、送信用端子24を介して外部アンテナ13へ有線により伝送する。
【0045】
再び図2を参照して、外部アンテナ13は、RF部23が格納されている筐体27の外部に設けられている。これにより、外部アンテナ13から無線信号が送信されて、受信側の通信装置2に備えられた外部アンテナ8が当該無線信号を受信する。
【0046】
なお、外部アンテナ13から送信される無線信号は、車両感知器4により取得された交通データの無線信号、または、判定部26から受けた判定結果を示す無線信号である。そして、通信装置2は、交通データの無線信号を受信すると、この交通データを交通信号制御機7に出力する。
【0047】
内部アンテナ25は、送信用端子24の近傍に設けられ、送信用端子24から漏えいした無線信号を受信して、受信した無線信号を判定部26に出力する。
【0048】
判定部26は、内部アンテナ25から受けた無線信号に基づいて、RF部23に異常が生じているか否かを判定する。具体的には、判定部26は、内部アンテナ25から受けた無線信号の受信レベルと閾値とを比較して、この無線信号の受信レベルが閾値以上であるか否かを判定する。
【0049】
そして、判定部26は、無線信号の受信レベルが閾値以上である場合には、RF部23に異常は生じていないと判定し、一方、無線信号の受信レベルが閾値未満である場合には、RF部23に異常が生じていると判定する。なお、閾値は、例えば通信装置1の出荷時に測定された内部アンテナ25における無線信号の受信レベルに基づいて予め定められている。
【0050】
また、判定部26は、他の方法を用いてRF部23に異常が生じているか否かを判定することが可能である。例えば、判定部26は、内部アンテナ25から受けた無線信号の受信レベルが急激に減少した場合など、受信レベルに大きな変化が生じた場合に、RF部23に異常が生じていると判定する。
【0051】
判定部26は、RF部23に異常が生じているか否かの判定を行った後、判定結果を示す信号を、判定部26に接続されたコンソール41、判定部26に接続されたLED点灯制御部42、および、チェック部22に出力する。
【0052】
コンソール41は、判定部26から受けた判定結果を画面に表示する。ここで、図4(a)は、判定部26によりRF部23に異常は生じていないと判定された場合に、コンソール41に表示される画面の例を示す図であり、図4(b)は、判定部26によりRF部23に異常が生じていると判定された場合に、コンソール41に表示される画面の例を示す図である。
【0053】
例えば、通信装置1の出荷時に測定された内部アンテナ25における無線信号の受信レベルが「−30.7dBm」であり、閾値が「−40.0dBm」と設定された場合において、内部アンテナ25が受信した無線信号の受信レベルが「−30.6dBm」である場合、判定部26は、RF部23に異常は生じていないと判定して、この判定結果をコンソール41に出力する。そして、コンソール41は、図4(a)に示すように、通信装置1のRF部23に異常が生じていないことを示す画面を表示する。
【0054】
一方、閾値が「−40.0dBm」と設定された場合において、内部アンテナ25が受信した無線信号の受信レベルが「−50.2dBm」である場合、判定部26は、RF部23に異常が生じていると判定して、この判定結果をコンソール41に出力する。そして、コンソール41は、図4(b)に示すように、通信装置1のRF部23に異常が生じていることを示す画面を表示する。なお、画面の「poutlvl m」は、コンソール41が接続されている通信装置1のRF部23、すなわち自局のRF部23における異常の有無の判定結果が画面上に表示されていることを示している。
【0055】
LED点灯制御部42は、判定部26から受けた判定結果に基づいてLEDの点灯を制御する。ここで、図5(a)は、判定部26によりRF部23に異常は生じていないと判定された場合に、LED点灯制御部42により制御されるLEDの点灯の例を示す図であり、図5(b)は、判定部26によりRF部23に異常が生じていると判定された場合に、LED点灯制御部42により制御されるLEDの点灯の例を示す図である。
【0056】
LED点灯制御部42は、図5(a),(b)に示すように、ロータリースイッチSW1と、LED1と、LED2とを有している。LED点灯制御部42は、例えばロータリースイッチSW1が紙面の右方向を向くように切り替えられると、自局のRF部23における異常の有無の判定結果をLED1またはLED2の点灯により示す。
【0057】
すなわち、判定部26がRF部23に異常は生じていないと判定して判定結果をLED点灯制御部42に出力した場合、図5(a)に示すように、LED点灯制御部42は、LED2を点灯させ、通信装置1のRF部23に異常が生じていないことを示す。
【0058】
一方、判定部26がRF部23に異常が生じていると判定して判定結果をLED点灯制御部42に出力した場合、LED点灯制御部42は、図5(b)に示すように、LED点灯制御部42は、LED1を点灯させ、通信装置1のRF部23に異常が生じていないことを示す。
【0059】
再び図2を参照し、チェック部22は、判定部26から判定結果を示す信号を受けると、上述のとおり、判定部26から受けた信号に基づいて、判定部26から信号が正しく出力されているかを確認する。そして、チェック部22は、判定部26から受けた信号をRF部23に出力する。そして、RF部23は、チェック部22から受けた判定結果を含む無線信号を、送信用端子24を介して外部アンテナ13に出力する。
【0060】
RF部23からの判定結果を示す無線信号は、外部アンテナ13から受信側の通信装置2へ送信され、受信側では、通信装置2の外部アンテナ8が、当該無線信号を受信して、通信装置2が、当該無線信号に含まれる判定結果を通信装置2に接続されたコンソール43およびLED点灯制御部44に出力する。
【0061】
コンソール43は、コンソール41と同様に、判定結果を画面に表示する。ここで、図6(a)は、判定部26によりRF部23に異常は生じていないと判定された場合に、コンソール43に表示される画面の例を示す図であり、図6(b)は、判定部26によりRF部23に異常が生じていると判定された場合に、コンソール43に表示される画面の例を示す図である。
【0062】
例えば、判定部26によりRF部23に異常は生じていないと判定された場合、コンソール43は、図6(a)に示すような画面を表示する。一方、判定部26によりRF部23に異常が生じていると判定された場合、コンソール43は、図6(b)に示すような画面を表示する。なお、画面の「poutlvl 3」は、送信側の通信装置1のRF部23、すなわちコンソール43が接続されている通信装置2とは異なる他局のRF部23における異常の有無の判定結果が、画面上に表示されていることを示している。
【0063】
LED点灯制御部44は、LED点灯制御部42と同様に、判定結果に基づいてLEDの点灯を制御する。ここで、図7(a)は、判定部26によりRF部23に異常は生じていないと判定された場合に、LED点灯制御部44により制御されるLEDの点灯の例を示す図であり、図7(b)は、判定部26によりRF部23に異常が生じていると判定された場合に、LED点灯制御部44により制御されるLEDの点灯の例を示す図である。
【0064】
LED点灯制御部44は、図7(a),(b)に示すように、ロータリースイッチSW2と、LED3と、LED4とを有している。LED点灯制御部44は、例えばロータリースイッチSW1が紙面の上方向を向くように切り替えられると、他局である送信側の通信装置1のRF部23における異常の有無の判定結果をLED3またはLED4の点灯により示す。
【0065】
すなわち、判定部26によりRF部23に異常は生じていないと判定された場合、図7(a)に示すように、LED点灯制御部44は、LED4を点灯させ、通信装置1のRF部23に異常が生じていないことを示す。
【0066】
一方、判定部26がRF部23に異常が生じていると判定して判定結果をLED点灯制御部44に出力した場合、図7(b)に示すように、LED点灯制御部44は、LED3を点灯させ、通信装置1のRF部23に異常が生じていることを示す。
【0067】
なお、RF部23に異常が生じていることにより、RF部23が無線信号の出力を全く行うことができない場合がある。このような場合には、送信側の通信装置1に接続されたコンソール41による画面表示またはLED点灯制御部42により制御されたLEDの点灯を確認することにより、RF部23に異常が生じていることを確認することができる。
【0068】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係る通信装置1によるRF部23の異常判定の動作について説明する。図8は、本発明の実施の形態に係る通信装置1によるRF部23の異常判定の動作手順を示すフローチャートである。
【0069】
通信装置1は、フローチャートの各ステップを含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。このインストールされるプログラムは、たとえば記録媒体に格納された状態で流通する。
【0070】
図8を参照して、まず、車両感知器4が、センサを用いて交通データを取得する(ステップS1)。そして、車両感知器4が、取得した交通データを、制御機器5を介して通信装置1に出力する。このとき、制御機器5は、車両感知器4から取得した交通データを必要に応じてシリアル信号に変換して通信装置1に出力する。
【0071】
次に、通信装置1の接続部11が、車両感知器4から取得した交通データを無線制御部12に出力する。そして、無線制御部12のデジタル処理部21が、接続部11から取得したシリアル信号をタイムスロット変換し、チェック部22を介してRF部23に出力する。そして、RF部23が、交通データを含む無線信号を生成し、生成した無線信号を送信用端子24および外部アンテナ13を介して受信側の通信装置2へ送信する(ステップS2)。
【0072】
次に、内部アンテナ25が、送信用端子24から漏えいした無線信号を受信して、受信した無線信号を判定部26に出力する(ステップS3)。
【0073】
次に、判定部26が、内部アンテナ25によって取得されたRF部23からの無線信号の受信レベルと閾値とを比較して、この無線信号の受信レベルが閾値以上であるか否かを判定することにより、RF部23に異常が生じているか否かを判定する(ステップS4)。
【0074】
次に、判定部26が、判定結果をコンソール41、LED点灯制御部42、および、チェック部22に出力する(ステップS5)。
【0075】
次に、RF部23が、チェック部22を介して判定部26から受けた判定結果を示す信号に基づいて無線信号を生成し、この無線信号を送信用端子24および外部アンテナ13を介して受信側の通信装置2へ送信する(ステップS6)。
【0076】
次に、送信側では、コンソール41が、判定部26から受けた判定結果に基づいて、例えば図4(a)、(b)に示すように、判定結果を画面に表示する。また、LED点灯制御部42が、例えば図5(a)、(b)に示すように、LEDを点灯させることにより判定結果を示す(ステップS7)。
【0077】
また、受信側では、通信装置2が、判定結果を示す無線信号を受信して、当該判定結果を示す無線信号をコンソール43およびLED点灯制御部44に出力する。そして、コンソール43が、受けた判定結果に基づいて、例えば図6(a)、(b)に示すように、判定結果を画面に表示する。また、LED点灯制御部44が、例えば図7(a)、(b)に示すように、LEDを点灯させることにより判定結果を示す(ステップS8)。
【0078】
ところで、送信側の通信機器としては、例えば、道路の近傍に設けられた筐体と、当該筐体内に設けられた送信部と、道路の上方に設置された筐体外の外部アンテナとを備える構成を考える。このような通信機器では、送信側の通信機器に異常が生じていることが判明した場合であっても、送信部の異常であるのか外部アンテナの異常であるのかを区別することが難しかった。このため、送信側の通信機器に異常が生じている場合には、送信部および外部アンテナを含む通信機器全体を高所作業車等により交換するために道路を通行止めにするなど煩雑な処理が必要となり、円滑な交通を阻害する虞があった。
【0079】
これに対して、本発明の実施の形態に係る通信装置1は、筐体27と、筐体27内に設けられ、筐体27外へ交通データを含む無線信号を送信するためのRF部23と、筐体27内に設けられ、RF部23から送信される無線信号を取得するための内部アンテナ25と、内部アンテナ25が取得した無線信号の受信レベルに基づいて、RF部23に異常が生じているか否かを判定するための判定部26とを備える。
【0080】
このように、RF部23と内部アンテナ25とが同一の筐体27内に設けられているため、一般に標準化され、モジュールチップとして使用されることが多いRF部23自体の構成を変えることなく、RF部23から送信される無線信号を筐体27内で直接取得し、取得した無線信号の受信レベルに基づいて、RF部23に異常が生じているか否かを判定することができ、通信装置1内の異常箇所の特定を容易にすることができる。
【0081】
さらに、交通システムのうち送信側の通信装置1に異常が生じていることが判明した場合において、通信装置1のRF部23における異常の有無を判定することができるため、RF部23および外部アンテナ13を含む通信装置1全体を交換するといった煩雑な処理を行うことなく、例えばRF部23のみの交換で足りる。また、RF部23のみの交換で足りるため、高所作業車を用いる必要がなく、道路を通行止めにする必要がない。
【0082】
また、RF部23は、筐体27の外部に設けられる外部アンテナ13へ無線信号を有線により伝送することにより、無線信号を筐体27外へ送信する。また、内部アンテナ25は、筐体27内に設けられ、RF部23から送信される無線信号を筐体27の内部において受信する。
【0083】
このような構成により、RF部23に対して新たな配線を施すことなく、RF部23から送信される無線信号を取得することができる。
【0084】
また、RF部23が格納された筐体27内で無線信号を直接取得してRF部23における異常の有無を判定する本発明に係る通信装置1は、筐体27の外部に設けられる外部アンテナ13へRF部23が無線信号を伝送するという構成において、一層有効である。
【0085】
また、判定部回路部26は、判定して得られた判定結果を、チェック部22を介してRF部23に出力し、RF部23は、さらに、判定部26から受けた判定結果を示す無線信号を、他の装置へ送信する。
【0086】
このような構成により、例えば、通信装置1の保守管理に都合の良い外部の装置において判定結果の保守管理を行うことができる。
【0087】
また、判定結果が送信される他の装置は、交通データを含む無線信号を受信するための受信側の通信装置2である。
【0088】
このように、1または複数の通信装置1から送信される交通データを受信し、当該交通データを一括して管理する受信側の通信装置2に判定結果が送信されることにより、1または複数の通信装置1に関する判定結果を一括して管理することができる。
【0089】
また、このような構成により、送信側の通信装置1と判定結果の管理装置である受信側の通信装置2とが遠く離れて設置されている場合であっても、送信側の通信装置1へ判定結果の確認のため移動することなく受信側の通信装置2において判定結果を確認することができる。
【0090】
また、RF部23は、IEEE802.11の仕様に基づく無線信号の送信を行う。
【0091】
IEEE802.11の仕様に基づく屋外の無線通信は、マルチパスなど外的要因により妨害を受ける可能性が高いため、RF部23に異常が生じているか否かを判定することのできる本発明に係る通信装置1は、無線LANを使用した交通システムにおいて、一層有効である。
【0092】
(変形例)
以下、本発明の実施の形態の変形例について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0093】
本発明の実施の形態の変形例に係る通信装置1は、図2に示す実施の形態に係る通信装置1と比較して、内部アンテナ25および判定部26に代えて、方向性結合器51(取得部)および検波器52(判定部)を備えている点が異なるものである。図9は、本発明の実施の形態の変形例に係る通信装置1の構成を示すブロック図である。
【0094】
図9を参照して、方向性結合器51は、送信用端子24と外部アンテナ13との間に設けられている。方向性結合器51は、送信用端子24から受けた無線信号を分岐して、外部アンテナ13および検波器52へ出力する。
【0095】
検波器52は、方向性結合器51から受けた無線信号を検波することにより、無線信号の受信レベルすなわち電力または振幅を示すRSSI(Received Signal Strength Indication)信号を取得する。そして、検波器52は、取得したRSSIに基づいて、例えば無線信号の受信レベルが閾値以上であるか否かを判定することにより、RF部23に異常が生じているか否かを判定する。そして、検波器52は、判定結果を、検波器52に接続されたコンソール41、LED点灯制御部42、および、チェック部22に出力する。
【0096】
このように、内部アンテナ25および判定部26に代えて、方向性結合器51および検波器52を備えた場合であっても、一般に標準化され、モジュールチップとして使用されることが多いRF部23自体の構成を変えることなく、RF部23から送信される無線信号を筐体27内で直接取得し、取得した無線信号の受信レベルに基づいて、RF部23に異常が生じているか否かを判定することができ、通信装置1内の異常箇所の特定を容易にすることができる。
【0097】
さらに、交通システムのうち送信側の通信装置1に異常が生じていることが判明した場合において、通信装置1のRF部23における異常の有無を判定することができるため、RF部23および外部アンテナ13を含む通信装置1全体を交換するといった煩雑な処理を行うことなく、例えばRF部23のみの交換で足りる。また、送信部のみの交換で足りるため、高所作業車を用いる必要がなく、道路を通行止めにする必要がない。
【0098】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1 通信装置(交通システム用無線通信装置)
2 通信装置(交通システム用無線通信装置)
3 中央装置
4 車両感知器
5 制御機器
6 信号灯器
7 交通信号制御機
8 外部アンテナ
11 接続部
12 無線制御部
13 外部アンテナ
21 デジタル処理部
22 チェック部
23 RF部(送信部)
24 送信用端子
25 内部アンテナ(取得部)
26 判定部
27 筐体
31 信号変換回路
32 直交変調器
33 発振器
34 増幅器
35 無線信号出力部
41 コンソール
42 LED点灯制御部
43 コンソール
44 LED点灯制御部
51 方向性結合器(取得部)
52 検波器(判定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通データに基づいて交通設備を制御するための交通システムにおいて、前記交通データを含む無線信号の送信を行うための交通システム用無線通信装置であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記筐体外へ前記無線信号を送信するための送信部と、
前記筐体内に設けられ、前記送信部から送信される前記無線信号を取得するための取得部と、
前記取得部が取得した前記無線信号の受信レベルに基づいて、前記送信部に異常が生じているか否かを判定するための判定部とを備える交通システム用無線通信装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記筐体の外部に設けられる外部アンテナへ前記無線信号を有線により伝送することにより、前記無線信号を前記筐体外へ送信し、
前記取得部は、前記筐体の内部に設けられ、前記送信部から送信される前記無線信号を前記筐体の内部において受信するための内部アンテナである、請求項1に記載の交通システム用無線通信装置。
【請求項3】
前記判定部は、判定して得られた判定結果を前記送信部に出力し、
前記送信部は、さらに、前記判定部から受けた前記判定結果を示す無線信号を他の装置へ送信する、請求項1または請求項2に記載の交通システム用無線通信装置。
【請求項4】
前記送信部は、IEEE802.11の仕様に基づく無線信号の送信を行う、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交通システム用無線通信装置。
【請求項5】
交通データに基づいて交通設備を制御するための交通システムにおいて、前記交通データを含む無線信号の送信を行うための交通システム用無線通信装置の送信部の異常を検出するための送信異常検出方法であって、
前記送信部は、筐体内に設けられ、前記筐体外へ前記無線信号を送信し、
前記筐体内において、前記送信部から送信される前記無線信号を取得するステップと、
取得した前記無線信号の受信レベルに基づいて、前記送信部に異常が生じているか否かを判定するステップとを含む送信異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−109573(P2013−109573A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253929(P2011−253929)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】