説明

交通信号装置

【課題】共通の信号灯器制御機で複数の信号灯器の点灯動作を個々に遠隔制御するとともにその点灯動作の内容の変更を容易とし、各信号灯器の点灯状態を信号灯器制御機で監視し交通流に危険が生じる組み合わせの点灯状態の場合に直ちに異常表示動作制御に移行させ、交差点等における複数の信号灯器に対し複雑な交通流に的確に対応した点灯動作を行わせ、さらに信号灯器の追加を容易とする。
【解決手段】複数の信号灯器8はそれぞれ固有の識別記号を有し、識別記号で識別した信号灯器8に対し点灯順序及び点灯時間を含む点灯動作を遠隔制御する信号灯器制御機9を有し、各信号灯器8は信号灯器制御機9との通信を行う通信制御機16を有し、信号灯器8は信号灯器制御機9からの点灯動作指令に対し、自己の識別記号と一致する場合には、点灯動作指令に対応した灯器の点灯を行うとともに点灯状態を信号灯器制御機9に返信するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の交通信号装置として、例えば、図5及び図6の(a)、(b)に示すようなものがある。図5において、信号灯器1における赤2R、黄2Y及び緑2Gの各灯器を点灯させる電力が、信号灯器制御機3から前記信号灯器1における各灯器2R,2Y,2G毎にケーブル4を介して供給されている。図5の信号灯器1は、3個の灯器2R,2Y,2Gを備えた車両用信号灯器の場合を示している。歩行者用の場合は、灯器数は2個となる。
【0003】
信号灯器制御機3には、商用電源を用いて各部に必要な電力を供給する電源部5、信号灯器1における各灯器2R,2Y,2Gの点灯順序や、点灯時間等を記憶している制御部6、及び該制御部6から指令された点灯信号に対応する開閉素子を制御して、前記電源部5から入力された点灯用電力(AC100V)を外部端子に出力する灯器開閉部7等が備えられている。信号灯器制御機3には、信号灯器1毎及び灯色毎に専用の外部端子があり、該外部端子から信号灯器1における各灯器2R,2Y,2G毎に前記ケーブル4による配線が行われている。
【0004】
信号灯器制御機3は、交通管制センターから伝送部を介して公衆回線により接続されており、この接続により当該信号灯器制御機3の制御及び動作状態の管理が交通管制センターで行われている。
【0005】
図6の(a)、(b)は、交差点における4基の信号灯器1a〜1dと信号灯器制御機3との接続関係を示している。図6(b)に示すように、信号灯器制御機3から同時に点灯する信号灯器1aと1b,1cと1dの各灯器1R,1Y,1G,2R,2Y,2G毎にケーブルによる配線が行われている。このように、同時に制御される信号灯器1aと1b,1cと1dは、前記信号灯器制御機3の同一端子に接続されている。いま、例えば、信号灯器1aと1bにおける各1Gの灯器を点灯させる場合は、信号灯器制御機3における1Gの出力端子に、外部の商用電源から入力された点灯用電力(AC100V)が出力される。
【0006】
また、後述する図4の(a)、(b)に示すような、交通流の変更を行う場合、交差点には、その交差点に対応した信号灯器の点灯順序と点灯時間を記憶した信号灯器制御機が設置されている。該信号灯器制御機相互間の同期をとることによって交通流を制御している。同期の取り方としては、有線方式と内部時計の時刻により開始時間を合わせる方式とがある。
【0007】
そして、交通流の変更を行う場合は、次のような作業を必要としている。即ち、(1)信号灯器制御機における記憶情報の変更;点灯順序が変更してしまうためである。(2)点灯出力の変更;点灯順序の変更で出力する信号灯器数が変更になる場合があるからである。(3)信号灯器に対する配線の変更;前記(1)、(2)の変更に伴い、同時点灯する信号灯器が変わってしまうためである。このように、配線を変えてしまうため、元の制御に戻す場合は上記と同じ作業が必要になる。
【0008】
また、交通信号装置に関連する従来技術として、例えば次のような交通信号システムが知られている。この従来技術における交通信号機には、太陽光パネルもしくは風力発電機の単体又は太陽光パネル及び風力発電機の複合体とバッテリとからなる独立電源と、該独立電源と商用電源との切り替えを制御するための制御装置と、前記独立電源の電圧、電流、内部抵抗、比重等を測定するための独立電源状態測定部と、灯器の電圧値や電流値を測定するための灯器状態測定部とが備えられている。また、該交通信号機を遠隔監視及び遠隔制御するための管理装置が遠方に設置され、前記交通信号機と前記管理装置とが電気通信回線を介して接続されて、前記独立電源状態測定部及び前記灯器状態測定部の各測定値が前記管理装置に配信されるようにしている。
【0009】
そして、前記灯器状態測定部の測定値から、前記交通信号機に設置されている灯器の劣化、不良等の状態を常時遠隔で監視可能としている。この結果、灯器がいわゆる球切れの状態になる前の適切な交換時期を把握して的確なメンテナンスを講じうるとともに保守コストも削減できるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−310079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図5及び図6の(a)、(b)に示した従来技術に係る交通信号装置においては、信号灯器制御機に、信号灯器における各灯器の点灯順序及び点灯時間が記憶され、また、信号灯器制御機から同時に点灯する信号灯器の各灯器毎にケーブルによる配線が行われている。このため、同時に点灯している信号灯器を別々に点灯させる制御等に変更したい場合は、信号灯器制御機に記憶されている点灯順序データの変更及び信号灯器制御機と信号灯器の各灯器間のケーブルによる配線の張り直しが必要となり、かなり困難な作業となる。また、信号灯器を追加する場合は信号灯器制御機と信号灯器における各灯器間のケーブルによる配線を追加する必要があり、上記と同様にかなり困難な作業となる。さらに、交差点における信号灯器制御機群は、同時に点灯制御する信号灯器が決められていて、制御中の変更ができないように構成されている。このため、交差点における複数の信号灯器に対し複雑な交通流に的確に対応した点灯動作を行わせることは困難である。
【0012】
また、特許文献1に記載の従来技術における交通信号機と管理装置とを接続している電気通信回線は、交通信号機における独立電源の電圧、電流、内部抵抗、比重等の測定値、及び灯器の電圧値や電流値の測定値を管理装置に配信するためだけのものである。
【0013】
そこで、本発明の第1の課題は、共通の信号灯器制御機で複数の信号灯器の点灯動作を個々に遠隔制御するとともにその点灯動作の内容の変更を容易とすることである。第2の課題は、各信号灯器の点灯状態を信号灯器制御機で監視し交通流に危険が生じる組み合わせの点灯状態の場合に直ちに異常表示動作制御に移行させることである。第3の課題は、交差点等における複数の信号灯器に対し複雑な交通流に的確に対応した点灯動作を行わせることである。第4の課題は、必要により信号灯器の追加も容易に実施できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための第1の発明は、複数の信号灯器と、該信号灯器の電源部に電力を供給する太陽電池、風力発電機及びバッテリの組み合わせからなる電源装置を備えた交通信号装置において、前記信号灯器は、それぞれ固有の識別記号及び独自又は信号灯器制御機と共用する電源部並びに該信号灯器制御機との通信を行う通信制御部を有し、前記信号灯器制御機は、前記各信号灯器との通信を行う通信部と、該通信部を介して前記識別記号で識別した前記各信号灯器に対し点灯順序及び点灯時間を含む点灯動作指令を送信する制御部及び独自又は前記信号灯器の電源部と共用する電源部とを有し、前記信号灯器は、前記信号灯器制御機からの点灯動作指令に対し、自己の識別記号と一致する場合に該点灯動作指令に対応した灯器の点灯を行う点灯制御部を有し、該点灯制御部は、点灯する灯器を判定して該灯色の灯器に電力を供給して点灯させるように構成したことを特徴とする交通信号装置である。
【0015】
この構成によれば、信号灯器制御機は、自己が保有する電源部の電力を用い、通信部を介して、信号灯器に対し、該信号灯器がそれぞれ有する固有の識別記号とともに点灯動作指令を送信する。この指令は信号灯器の通信制御部に入力され、該通信制御部は前記識別記号と一致する場合に、前記指令を信号灯器の点灯制御部へ送信し、該点灯制御部は点灯させる灯器を判定し、該灯器に信号灯器が保有する電源部の電力を供給して、前記点灯動作指令に対応した動作を実行させる。
【0016】
第2の発明は、前記信号灯器制御機は、前記各信号灯器の点灯状態を監視し、交通流に危険が生じる組み合わせの点灯状態の場合には前記各信号灯器に異常信号を送信し、前記点灯制御部は、前記異常信号を受信した場合には灯器の点滅又は滅灯を行うことを特徴とする第1の発明の交通信号装置である。
【0017】
この構成によれば、前記信号灯器制御機は各灯器の点灯状態を監視しており、もし、交通流に危険が生じる組み合わせの点灯状態となった場合には、各信号灯器に対して異常信号を送信する。該異常信号を受信した点灯制御部は灯器の点滅又は滅灯制御を実行する。
【0018】
第3の発明は、前記点灯制御部は、前記灯器にかかる電圧又は電流値を判定し、前記点灯動作指令との照合を行った上で点灯状態とし、更に、現在の点灯状態を前記信号灯器制御機に送信するように構成されたことを特徴とする第1又は第2の発明の交通信号装置である。
【0019】
この構成によれば、前記点灯制御部は前記灯器にかかる電圧又は電流値を監視し、そして、現在点灯している灯器を検出して、該点灯している灯器が、信号灯器制御部から点灯動作を指令された灯器と同一であることを確認した後、現在の点灯状態を前記信号灯器制御部へ送信する。
【0020】
第4の発明は、前記信号灯器は、通信回線に異常が発生し、一定時間の間、前記点灯動作指令を受信できない場合には灯器の点滅又は滅灯を行うことを特徴とする第1,第2又は第3の発明の交通信号装置である。
【0021】
この構成によれば、信号灯器が通信回線の断線等のトラブル等に起因して一定時間の間、信号灯器制御機からの指令信号を受信できない場合は、灯器制御部が灯器の点滅又は滅灯制御を実行する。
【0022】
第5の発明は、前記信号灯器制御機は、通信回線に異常が発生し、一定時間の間、前記信号灯器から前記点灯状態の受信ができない場合には、異常が発生した信号灯器が設置されている交差点の全ての信号灯器に対して灯器の点滅又は滅灯を行う異常動作指令を送信することを特徴とする第1,第2,第3又は第4の発明の交通信号装置を提供する。
【0023】
この構成によれば、信号灯器制御機が通信回線の断線等のトラブルに起因して一定時間の間、点灯状態の受信ができない場合は、前記トラブル等が発生している信号灯器が設置されている交差点のすべての信号灯器に対して灯器の点滅又は滅灯の制御信号を信号灯器へ送信する。
【0024】
第6の発明は、前記電源部は、前記バッテリ残量を常時監視し、一定量以下になった場合には、信号灯器の灯器制御部から灯器の光量を落とす省電力モード指令の要求を前記信号灯器制御機に送信し、前記信号灯器制御機は、各信号灯器に対して省電力指令を送信し、更に、前記電源部は、前記バッテリ残量の減少で灯器の点灯制御ができない寸前になった場合には、充電器による前記バッテリの充電を行い、バッテリ残量が回復した場合には信号灯器の前記灯器制御部から前記信号灯器制御機に対して省電力モード解除要求信号を送信し、前記信号灯器制御機は、各信号灯器に対して省電力モード解除指令を送信することを特徴とする第1,第2,第3,第4又は第5の発明の交通信号装置である。
【0025】
この構成によれば、電源部はバッテリ残量を常時監視しており、該バッテリ量が一定量以下となった場合には、灯器の光量を落とす省電力モード指令の要求信号を信号灯器制御機へ送信し、該省電力モード指令の要求信号を受信した信号灯器制御機は各信号灯器に対して省電力指令信号を送信する。
【0026】
また、前記電源部は、前記バッテリ残量の減少で、灯器の点灯制御ができなくなる寸前に到った場合には、充電器によってバッテリ充電を実行し、更に、該バッテリ残量が所定量を回復した場合には、信号灯器は信号灯器制御機に対して前記省電力モードの解除要求信号を送信し、該信号を受信した信号灯器制御機は省電力モード解除指令信号を各信号灯器へ送信する。
【0027】
第7の発明は、前記信号灯器制御機と前記各信号灯器との情報の送受信は、共通の通信回線による有線又は無線のいずれかで行うことを特徴とする第1,第2,第3,第4,第5又は第6の発明の交通信号装置である。
【0028】
この構成によれば、信号灯器制御機から複数の信号灯器に対する識別記号並びに点灯動作指令の信号発信及び各信号灯器から信号灯器制御機に対する点灯動作確認情報の返信が、共通の通信回線による有線又は無線伝送によって行われる。
【0029】
第8の発明は、前記有線による送受信は、シリアル伝送であることを特徴とする第1,第2,第3,第4,第5,第6又は第7の発明の交通信号装置である。
【0030】
この構成によれば、信号灯器制御機と信号灯器との信号の送受信を有線によって行う際には共通の通信回線を介して時間的な系列として逐次伝送される。
【発明の効果】
【0031】
第1の発明における信号灯器は、それぞれ固有の識別記号及び独自又は信号灯器制御機と共用する電源部並びに該信号灯器制御機との通信を行う通信制御部並びに該信号灯器制御機からの点灯動作指令に対応した灯器の点灯等の制御を行う点灯制御部を有する。一方、前記信号灯器制御機は前記信号灯器との通信を行う通信部と、該通信部を介して前記識別記号で識別した各信号灯器に対し、点灯順序及び点灯時間を含む点灯動作指令を送信する制御部及び独自又は前記信号灯器と共用する電源部とを有している。そこで、自己の有する電源部の電力を用いて信号灯器制御機の制御部から送信される点灯動作指令は、前記通信部を介して信号灯器の通信制御部へ入力される。該指令を受信した通信制御部は該指令を点灯制御部へ送信する。該点灯制御部は前記信号灯器制御機からの点灯動作指令に対し、信号灯器の有する識別記号と一致する場合には、該点灯動作指令に対応した灯器の点灯を該信号灯器の有する電源部の電力を用いて点灯動作を個々に遠隔制御することができる。従って,複数の信号灯器における各点灯動作の内容も任意に変更することが可能となる。又、複数の交差点においても一個の信号灯器制御機を共用して制御することもでき、管制センターなどからの制御も、この1台の信号灯器制御機との情報交換を実行することで複数の交差点における円滑、且つ、適正な制御が可能となる。
【0032】
さらに又、信号灯器制御機から各信号灯器1の配線がなくなるため設置工事も簡略化される。
【0033】
また、信号灯器の追加工事等においても信号灯器制御機から信号灯器用の配線を追加する作業も不要となり、最も近傍の信号灯器と通信線を接続するだけの工事で簡単に配線作業を終了することができる。勿論、信号灯器制御機と信号灯器との間の通信を無線にて行うこともできるが、この場合は前記配線作業等も不要となる。
【0034】
さらに、第1の発明は直流で運用できるように構成されているため、災害時などにおいて、商用電力が受給できなくなった場合等には、例えば、車用バッテリ等を直接接続して信号灯器の点灯動作を実行させることもできる。
【0035】
第2の発明は、上記第1の発明の効果に加え、信号灯器制御機が各信号灯器の点灯状態を監視しており、そして、交通流に危険が生じる組み合わせの点灯状態となった場合には、各信号灯器に異常信号を送信し、そして、各信号灯器の点灯制御部により、各灯器の点滅又は滅灯等の動作制御が実行されて交通流の安全が確保される。
【0036】
また、第3の発明は、上記第1及び第2の発明の効果に加え、上記信号灯器の点灯制御部が灯器にかかる電圧又は電流値を判定し、そして、前記点灯動作指令との照合を行った上で正常なる点灯状態とするので、信号灯器制御機からの点灯動作指令と対応しない灯器の点灯動作が実行されることはなく、常に、該信号灯器制御機からの指令に対応する灯器のみの点灯動作等が実行されることになり、依って、交差点等における交通流の混乱を来たすことなく、円滑なる交通流が期待できることになる。
【0037】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の効果に加え、上記信号灯器は、通信回線に断線等の異常が発生し、一定時間帯において、上記点灯動作指令が受信できなくなったときには、該信号灯器の点灯制御部は灯器に対して点滅又は滅灯制御を実行して交通流の危険を未然に防止することができる。
【0038】
第5の発明は、上記第4の発明と同様に、各点灯制御部は異常が発生した信号灯器を設置されている交差点の全ての信号灯器に対して灯器の点滅又は滅灯動作制御が実行され、該交差点における交通流の混乱を未然に防止することができる。
【0039】
第6の発明は、上記第1〜第5の発明の効果に加え、電源部が、バッテリ残量が一定量以下になったことを検知したときには、灯器の光量を落とす省電力モード指令の要求信号を信号灯器制御機に送信し、該要求信号を受信した信号灯器制御機は各信号灯器に対して省電力指令を発信する。該省電力モード指令を受信した灯器制御部は電流制限や、パルス点灯方式等にて使用電力を落とす制御を実行して消費電力の節減を計ることができる。
【0040】
さらに又、前記電源部はバッテリ残量の減少で灯器の点灯制御ができなくなる寸前に至った場合には、充電器に対してバッテリ充電を実行させ、そして、バッテリ残量が回復したときには、前記省電力モード解除要求信号を信号灯器制御機に発信し、該省電力モード解除要求信号を受信した信号灯器制御機は、各信号灯器に対して省電力モード解除指令を発信し、そこで、信号灯器の点灯制御部は省電力モード解除制御を実行し、そして、電源部から正常な電力が各信号灯器へ供給されて円滑なる交通流が期待されることになる。
【0041】
第7の発明は、上記第1〜第6の発明の効果に加え、上記信号灯器制御機と、上記各信号灯器との情報の送受信は、共通の通信回線による有線又は無線のいずれかで行うように構成されているので、信号灯器制御機からの各信号灯器に対し、個別に各信号灯器の識別記号及び点灯動作指令の信号が共通の通信回線による有線又は無線により伝送されることができ、依って、信号灯器の追加を容易に実施することもできる。
【0042】
第8の発明は、上記第1〜第7の発明の効果に加え、前記有線による情報の送受信を行うとき、シリアル伝送によって実行されるので、信号灯器制御機から、例えば、交差点等における複数の信号灯器に対する各識別記号及び点灯動作指令の信号が共通の通信回線を介して時間的な系列として逐次伝送されることになり、依って、交差点等における複数の信号灯器に対し、複雑な交通流に対応した各灯器の点灯動作を行わせることができ、交通安全に最も効果的に寄与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例に係る交通信号装置のブロック図。
【図2】上記実施例において異常表示の検出例を説明するための結線図。
【図3】上記実施例を交差点へ適用した例を示す図であり、(a)は交差点への複数の信号灯器の配置例を示す図、(b)は信号灯器制御機と複数の信号灯器との接続関係を示す結線図。
【図4】上記実施例において複数交差点における交通流の変更制御例を説明するための図であり、(a)は変更制御前の交通流の例を示す図、(b)は変更制御後の交通流の例を示す図。
【図5】従来の交通信号装置のブロック図。
【図6】上記従来例において交差点における信号灯器制御機と複数の信号灯器との接続関係を説明するための図であり、(a)は交差点への複数の信号灯器の配置を示す図、(b)は信号灯器制御機と複数の信号灯器との接続関係を示す結線図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本実施形態は、共通の信号灯器制御機で複数の信号灯器の点灯動作を個々に遠隔制御するとともに、その点灯動作の内容の変更を容易にし、且つ、各信号灯器の点灯状態を信号灯器制御機で監視して交通流に危険が生じることがないようにするために、複数の信号灯器と、該信号灯器の電源部に電力を供給する太陽電池、風力発電機及びバッテリの組み合わせからなる電源装置を備えた交通信号装置において、前記信号灯器は、それぞれ固有の識別記号及び独自又は信号灯器制御機と共用する電源部並びに該信号灯器制御機との通信を行う通信制御部を有し、前記信号灯器制御機は、前記各信号灯器との通信を行う通信部と、該通信部を介して前記識別記号で識別した前記各信号灯器に対し点灯順序及び点灯時間を含む点灯動作指令を送信する制御部及び独自又は前記信号灯器の電源部と共用する電源部とを有し、前記信号灯器は、前記信号灯器制御機からの点灯動作指令に対し、自己の識別記号と一致する場合に該点灯動作指令に対応した灯器の点灯を行う点灯制御部を有し、該点灯制御部は、点灯する灯器を判定して該灯色の灯器に電力を供給して点灯させるように構成したことを特徴とする交通信号装置を提供することにより実現した。
【0045】
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面に従って詳述する。図1は交通信号装置のブロック図である。本実施例は、信号灯器8として3個の灯器11R,11Y,11Gを備えた車両用信号灯器が適用され、また信号灯器制御機9と信号灯器8との間の信号伝送手段として通信回線10を用いた有線伝送手段が適用された場合について説明されている。まず、本実施例に係る交通信号装置の構成を説明する。
【0046】
交通信号装置は、それぞれ固有の識別記号(ID)を有するとともにそれぞれ灯器点灯用の電源部19を備えた信号灯器8の複数基と、各信号灯器8の点灯動作を遠隔制御するための共通の信号灯器制御機9とが信号伝送用の通信回線10で接続されている。図1は、1基の信号灯器8のみが代表して示されている。
【0047】
該信号灯器8には、それぞれLED素子からなる赤11R、黄11Y、緑11Gの3個の灯器が装備されるとともに当該信号灯器8自身に前記3個の灯器11R,11Y,11Gを点灯するための電源部19が内装されている。前記LED素子からなる灯器は、表示が鮮明に確認可能となることに加え、例えば、車両用信号灯器における灯器に関しては1灯当たり60%程度の電力削減を図ることができ、これにより省エネが達成されるものである。
【0048】
前記電源部19は、太陽電池12、風力発電機13及びバッテリ14の組み合わせからなり、太陽電池12及び風力発電機13が発電できない環境にも対応できるようにバッテリ14を充電するための充電器15が設置されている。該充電器15は、商用電力、燃料電池又は電動発電機等の環境に左右されないものが適用されている。
【0049】
前記信号灯器8には、さらに前記信号灯器制御機9からの点灯動作指令を受信し、また該点灯動作指令に対応した点灯動作の確認情報を前記信号灯器制御機9に返送するための通信制御部16、及び受信した前記点灯動作指令に応じて前記3個の灯器11R,11Y,11Gを点灯制御するための点灯制御部17等が備えられている。
【0050】
前記信号灯器制御機9には、前記信号灯器8側とほぼ同様の太陽電池、風力発電機及びバッテリ18等の組み合わせからなる電源部19が備えられて、商用電源の省電力化が図られている。但し、該電源部19は信号灯器8側に設置される前記電源部19と共用されてもよい。また、信号灯器制御機9には、前記信号灯器8における各灯器11R,11Y,11Gの点灯順序や点灯時間等の情報を記憶し、信号灯器8の識別記号及び灯色を指定するための制御部21、該制御部21から指示された点灯動作指令を信号灯器8への通信回線10上に送信する通信部20、遠隔地(管制センター等)からの指令を行う場合に装備されて集中制御を行うための伝送部22、及び感知器や押ボタン等の入力機器からの信号を取り込んで各種制御を行うための1/F(インタフェース)部23等が備えられている。
【0051】
この感知器や押ボタン等の入力機器からの信号の取り込みは、各信号灯器8側の通信制御部16に取り込むこともでき、通信回線10上の通信によって信号灯器制御機9にその信号を送信することもできる。
【0052】
次に、上述のように構成された交通信号装置の動作を説明する。信号灯器制御機9における制御部21には、各信号灯器8の識別記号及び各信号灯器8に対する点灯順序や点灯時間を含む点灯動作情報が記憶されている。一方、各信号灯器8には、前述したように、該信号灯器8自身にそれぞれ灯器点灯用の電源部19が備えられている。前記信号灯器制御機9は、点灯動作を制御する信号灯器8に対し、該信号灯器8固有の識別記号とともに点灯動作指令を通信部20を介して通信回線10上に発信する。
【0053】
自己の信号灯器8の識別記号及び点灯動作指令を通信制御部16に受けた信号灯器8は、点灯制御部17を作動させて前記点灯動作指令に対応した各灯器11R,11Y,11Gの点灯動作を自己が保有する電源部19を用いて実行する。該各灯器11R,11Y,11Gの点灯は、前記点灯制御部17により、LED素子からなる各灯器11R,11Y,11Gにかかる電圧又は流れる電流値を監視し、前記点灯動作指令との照合を行った上で点灯状態とする。そして、信号灯器8は、その点灯動作の確認情報を前記通信制御部16及び通信回線10を介して信号灯器制御機9に返信する。
【0054】
また、前記自己が保有する電源部19としては、自然エネルギを利用した前記太陽電池12及び風力発電機13で発電した電力が、図示しないDC−DCコンバータにより安定した直流電源とされて使用される。該太陽電池12及び風力発電機13で発電された電力に余裕があるとき、その余剰電力は、バッテリ14に充電されて夜間や無風時など、前記太陽電池12や風力発電機13の発電容量の低いときに使用される。
【0055】
また、前記信号灯器制御機9は前記バッテリ14の残量を常時監視し、一定容量以下になった場合は、該信号灯器制御機9の指令により省電力モードとして前記LED素子からなる各灯器11R,11Y,11Gの光量を落とす制御が行われる。この光量を落とす制御は、LED素子からなる各灯器11R,11Y,11Gへ流す電流値を減らしたり、パルスによる点灯動作等、電力消費量を減らすことにより行われる。
【0056】
さらに、電源部19はバッテリ14の容量が減ってしまい、各灯器11R,11Y,11Gの点灯制御ができない寸前になった場合は、充電器15によるバッテリ14の充電を行い、バッテリ14の充電が完了し、バッテリ残量が回復した場合は、充電器15の動作を停止し、外部電力を極力使用しないような制御が行われる。
【0057】
次いで、「異常表示の検出と異常モードへの移行」、「交差点における信号灯器制御機と信号灯器との接続及び動作」及び「複数交差点における交通流の変更制御」の各具体例について、信号灯器制御機と信号灯器との接続及びその動作を、それぞれ図を用いて順に説明する。
【0058】
[異常表示の検出と異常モードへの移行]
図2を用いて説明する。図2は異常表示の検出例を説明するための結線図である。共通の信号灯器制御機9に複数の信号灯器8,…が通信回線10を介して接続されている。各信号灯器8は、信号灯器制御機9から点灯動作指令とともに送られる識別記号が自己の上記識別記号と一致した場合、その点灯動作指令に対応した灯器の点灯動作を行う。
【0059】
信号灯器8における灯器点灯状態の確認は、前記したように、前記点灯制御部17で各灯器にかかる電圧又は流れる電流を監視し、灯器が点灯している状態の電圧又は電流値を検出した場合は、灯器が点灯していると判断し、前記通信制御部16を通じて信号灯器制御機9へ点灯確認情報を返信する。信号灯器制御機9は、接続されている全ての信号灯器8,…より点灯確認情報を受信し、同時に点灯した場合、危険となる組み合わせになっているか否かを監視している。
【0060】
そして、複数の信号灯器が同時に点灯した場合、その点灯した複数の信号灯器の組み合わせが、交通流に危険が生じるおそれがあると思われる組み合わせと合致した場合には、直ちに全ての信号灯器8,…に対し事故が起きないような異常表示動作モードへの移行指令を行う。異常表示動作モードには、閃光動作、全信号灯器の赤点灯動作又は滅灯動作等を含むものとする。
【0061】
また、信号灯器制御機9及び各信号灯器8は、定期的に該信号灯器制御機9からの指令・確認を行っており、通信回線10が断線等のトラブルによって異常が発生し、一定時間の間、指令又は確認信号を受信できなかった場合には、前記異常動作に移行する。このとき、信号灯器制御機9は全灯器に対し、点滅動作又は滅灯動作等の異常動作指令信号を発信し、該指令を受信できなかった灯器は、点灯制御部17からの指令により一定時間経過後に前記異常動作を実行する。
【0062】
[交差点における信号灯器制御機と信号灯器との接続及び動作]
図3を用いて説明する。図3は本実施例を交差点へ適用した例を示す図であり、(a)は交差点への複数の信号灯器の配置例を示す図、(b)は信号灯器制御機と複数の信号灯器との接続関係を示す結線図である。
【0063】
交差点における4基の信号灯器8a,8b,8c,8dが、シリアル通信用の単一の通信回線10で、共通の信号灯器制御機9に接続されている。交差点における複数の信号灯器8a,8b,8c,8dと信号灯器制御機9とを接続する場合、各信号灯器8a,8b,8c,8dに対し、信号灯器制御機9側から灯器点灯用の電力を供給する必要がないので、同時に点灯する信号灯器や灯色についての配慮をなすことなく接続することができる。本具体例では、シリアル通信用の単一の通信回線10で接続が行われている。
【0064】
信号灯器8a,8b,8c,8dの灯器点灯を行う場合は、信号灯器制御機9から各信号灯器8a,8b,8c,8dが持っている固有の識別記号及び点灯動作指令の信号をシリアル通信用の通信回線10を介して時間的な系列として逐次伝送する。
【0065】
いま、例えば信号灯器8aにおける灯器1Gを点灯させる場合は、信号灯器制御機9から通信回線10に「ID:01/G:0N」のような識別記号及び点灯動作指令を送信することによって、当該信号灯器8aにおける灯器1Gが点灯する。
【0066】
[複数交差点における交通流の変更制御]
図4を用いて説明する。図4は複数交差点における交通流の変更制御例を説明するための図であり、(a)は変更制御前の交通流の例を示す図、(b)は変更制御後の交通流の例を示す図である。
【0067】
複数の交差点24,…には、それぞれ図示しない複数の信号灯器が設置されている。これら複数の信号灯器が通信回線で、共通の信号灯器制御機に接続されている。そして、図(a)のような交通流から図(b)のような交通流に変更を行う場合、以下のような作業で、この交通流の変更制御に対応することができる。即ち、共通の信号灯器制御機で各交差点における複数の信号灯器を制御できるため、該信号灯器制御機に記憶されている各信号灯器の点灯順序及び点灯時間を変更するだけで、前記交通流の変更制御に対応することができる。
【0068】
また、この各信号灯器の点灯順序と点灯時間のパターンを、信号灯器制御機に予め記憶させておくことによって、必要なときに必要な交通流の制御に対応したパターンを呼び出すだけで、交通流の変更制御に容易に対応させることができる。
【0069】
上述したように、本実施例に係る交通信号装置においては、信号灯器制御機9は、複数の信号灯器8,…における各点灯動作を個々に遠隔制御することができる。
【0070】
信号灯器制御機9は、複数の信号灯器8,…における各点灯動作の内容を容易に変更することができる。
【0071】
信号灯器制御機9は、各信号灯器8の点灯状態を監視し、同時に点灯した場合、交通流に危険が生じるおそれがあると判断される組み合わせと合致したときには、直ちに全ての信号灯器8,…を異常表示動作制御に移行させて事故が起きないような点灯制御を行うことができる。
【0072】
信号灯器制御機9から複数の信号灯器8,…に対し、各信号灯器8の識別記号及び点灯動作指令の信号を共通の通信回線10により伝送するので、信号灯器8の追加を容易に行うことができる。
【0073】
信号灯器制御機9は、交差点24等における複数の信号灯器8,…に対し、複雑な交通流に的確に対応した点灯動作をそれぞれ行わせることができる。
【0074】
なお、本実施例は、信号灯器制御機と複数の信号灯器との間の情報の送受信を、通信回線による有線としたが、無線による送受信としてもよい。無線伝送とすると、信号灯器の追加等を一層容易に行うことができる。
【0075】
また、信号灯器8は、3個の灯器を備えた車両用信号灯器としたが、2個の灯器を備えた歩行者用信号灯器にも適用することができる。
【0076】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0077】
8 信号灯器、9 信号灯器制御機、10 通信回線、11R,11Y,11G 灯器
12 太陽電池、13 風力発電機、14,18 バッテリ、15 充電器
16 通信制御部、17 点灯制御部、19 電線部、20 通信部、21 制御部
22 伝送部、23 1/F部、24 交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号灯器それぞれと信号灯器制御機とが通信可能に構成された交通信号装置において、
前記信号灯器制御機は、交通流の種類に応じた点灯順序と点灯時間のパターンを記憶し、複数の前記パターンの中から前記交通信号装置が設置された交差点の交通流に対応した一のパターンを呼び出して、当該一のパターンに従った点灯順序及び点灯時間を指示する点灯動作指令を前記信号灯器に送信する制御部を有し、
前記信号灯器は、前記信号灯器制御機からの点灯動作指令に従って灯器の点灯を行う点灯制御部を有し、
前記点灯制御部は、点灯する灯器を判定して該灯色の灯器に電力を供給して点灯させるように構成されてなり、
前記交通信号装置が設置された交差点の交通流の変更に際して前記一のパターンを変更することで対応可能に構成された、交通信号装置。
【請求項2】
前記信号灯器制御機は、前記各信号灯器の点灯状態を監視し、交通流に危険が生じる組み合わせの点灯状態の場合には前記各信号灯器に異常信号を送信し、
前記点灯制御部は、前記異常信号を受信した場合には灯器の点滅又は滅灯を行う、
請求項1に記載の交通信号装置。
【請求項3】
前記点灯制御部は、前記灯器にかかる電圧又は電流値を判定し、前記点灯動作指令との照合を行った上で点灯状態とし、更に、現在の点灯状態を前記信号灯器制御機に送信するように構成された、
請求項1又は2に記載の交通信号装置。
【請求項4】
前記信号灯器は、前記通信に異常が発生し、一定時間の間、前記点灯動作指令を受信できない場合には灯器の点滅又は滅灯を行う、
請求項1〜3の何れか一項に記載の交通信号装置。
【請求項5】
前記点灯制御部は、現在の点灯状態を前記信号灯器制御機に送信するように構成され、
前記信号灯器制御機は、前記通信に異常が発生し、一定時間の間、前記信号灯器から前記点灯状態の受信ができない場合には、異常が発生した信号灯器が設置されている交差点の全ての信号灯器に対して灯器の点滅又は滅灯を行う異常動作指令を送信する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の交通信号装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−60325(P2011−60325A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273400(P2010−273400)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【分割の表示】特願2006−126612(P2006−126612)の分割
【原出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】