説明

交通情報処理装置、交通情報処理システム、プログラム、及び交通情報処理方法

【課題】収集されたプローブ情報のデータ数が少ない状況であっても、交通渋滞等の交通事象が発生していると誤って推定されることを回避することが可能な交通情報処理装置を得る。
【解決手段】センタ装置5は、連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定する設定手段20と、リンクグループとして設定された道路区間に関して、プローブ情報を取得する取得手段21と、プローブ情報に基づいて、リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出する演算手段22と、リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、演算手段22によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する補正手段23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報処理装置、交通情報処理システム、プログラム、及び交通情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の位置情報と各位置における時刻情報とに基づいて、リンクに関する車両の旅行時間を算出する旅行時間算出システムが実用化されている(例えば下記特許文献1参照)。車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報が、車載装置からセンタ装置に送信される。センタ装置は、様々なリンクが描かれたリンク地図を参照することにより、あるリンクに車両が進入した時刻と、そのリンクから車両が退出した時刻とに基づいて、そのリンクに関する車両の旅行時間を算出する。そして、センタ装置は、各リンクに関する旅行時間の算出結果に基づいて、交通渋滞等の交通事象の発生を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3775394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各リンクに関する旅行時間をプローブ情報に基づいて算出するにあたって、収集されたプローブ情報のデータ数が少ない状況では、センタ装置による交通事象の推定精度が低下する。例えば、それぞれに信号機が設置された複数のリンクが設定された道路区間を車両が走行する場合において、あるリンクに設置された信号機での信号停止によって、そのリンクに関する旅行時間が極端に長くなった場合に、実際には交通渋滞が生じていないにも拘わらず、そのリンクにおいて交通渋滞が発生しているとの誤った推定がなされてしまうことがある。当該道路区間を走行する多数の車両から多数のプローブ情報が収集された場合には、各リンク別に収集された複数の旅行時間によって各リンクに関する旅行時間が平滑化されるために、このような誤推定は解消される。しかしながら、収集されたプローブ情報のデータ数が少ない状況では、各リンク別の平滑化を行うことができない(または平滑化の効果が小さい)ため、多数のプローブ情報が収集されるまでは誤推定の状態が継続してしまう。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、収集されたプローブ情報のデータ数が少ない状況であっても、交通渋滞等の交通事象が発生していると誤って推定されることを回避することが可能な、交通情報処理装置、交通情報処理システム、プログラム、及び交通情報処理方法を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る交通情報処理装置は、連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定する設定手段と、前記リンクグループとして設定された道路区間に関して、車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得されたプローブ情報に基づいて、前記リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出する演算手段と、前記設定手段によって設定された前記リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、前記演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する補正手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
第1の態様に係る交通情報処理装置によれば、補正手段は、設定手段によって設定されたリンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する。従って、プローブ情報のサンプル数が少ない状況において、あるリンクに設置された信号機での信号停止によって、そのリンクに関する旅行時間が極端に長くなった場合や旅行速度が極端に小さくなった場合であっても、そのリンクに関する旅行時間又は旅行速度が隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化されることにより、そのリンクにおいて交通渋滞が発生しているとの誤った推定がなされるという事態を回避することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る交通情報処理装置は、第1の態様に係る交通情報処理装置において特に、前記設定手段は、区間通過の所要時間又は速度の変動が所定値以下の道路区間を、前記リンクグループとして設定することを特徴とするものである。
【0009】
第2の態様に係る交通情報処理装置によれば、設定手段は、区間通過の所要時間又は速度の変動が所定値以下の道路区間を、リンクグループとして設定する。従って、リンクグループを構成する複数のリンクに関する合計の旅行時間又は旅行速度は安定するため、各リンクに関する平滑化後の旅行時間又は旅行速度が状況毎に大幅に変動するという事態を回避することが可能となる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る交通情報処理装置は、第2の態様に係る交通情報処理装置において特に、前記設定手段は、交通渋滞の多発地点、信号機の系統制御が行われるサブエリアの端点、道路形状の変化地点、道路勾配の変化地点、道路種別の変化地点、道路属性の変化地点、の少なくとも一つを境界として、前記リンクグループを設定することを特徴とするものである。
【0011】
ここで、「道路形状の変化地点」には、例えば直線道路と曲線道路との境界地点が含まれる。また、「道路勾配の変化地点」には、例えば上り坂と下り坂との境界地点が含まれる。また、「道路種別の変化地点」には、例えば高速道路と一般道路との境界地点が含まれる。また、「道路属性の変化地点」には、例えばトンネルの出入り口や車線数の変更地点が含まれる。
【0012】
第3の態様に係る交通情報処理装置によれば、設定手段は、交通渋滞の多発地点、信号機の系統制御が行われるサブエリアの端点、道路形状の変化地点、道路勾配の変化地点、道路種別の変化地点、又は道路属性の変化地点を境界としてリンクグループを設定する。これにより、区間通過の所要時間又は速度が安定している道路区間をリンクグループとして適切に設定することが可能となる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第3のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記設定手段は、リンク長が所定値未満のリンクはいずれかのリンクグループに属することとなるように、前記リンクグループを設定することを特徴とするものである。
【0014】
第4の態様に係る交通情報処理装置によれば、設定手段は、リンク長が所定値未満のリンクはいずれかのリンクグループに属することとなるように、リンクグループを設定する。リンク長が短い場合には、当該リンクに関するプローブ情報のサンプル数が極めて少ない(又はゼロである)という事態が起こり得るため、当該リンクを走行中の車両から取得したプローブ情報に基づいて算出した旅行時間又は旅行速度の精度が低い(又は算出できない)という状況が生じやすい。また、リンク長が短いリンクに関しては、信号停止等によって車両が当該リンク内で停車した場合に、リンク長が長いリンク内で車両が同じ時間だけ停車した場合と比較すると、車両の停車時間が旅行速度の算出に与える影響が大きい。そのため、リンク長が短いリンク内で車両が信号停止等した場合には、旅行速度が極端に小さくなるため、当該リンクにおいて交通渋滞が発生しているとの誤った推定がなされやすい。従って、リンク長が短いリンクに関しては、リンク長が長いリンクと比較すると、旅行時間又は旅行速度の平滑化を行うことでこれらの不具合を回避できる実益が大きい。
【0015】
本発明の第5の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第4のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記設定手段は、時間帯に応じて前記リンクグループの設定を変更可能であることを特徴とするものである。
【0016】
第5の態様に係る交通情報処理装置によれば、設定手段は、時間帯に応じてリンクグループの設定を変更可能である。従って、ある特定の時間帯に交通渋滞が発生しやすいリンクがリンクグループに含まれている場合には、その時間帯においては当該リンクが除外されるようにリンクグループを再設定することにより、当該リンクにおける交通渋滞の影響を排除して旅行時間又は旅行速度の平滑化を適切に行うことが可能となる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記補正手段は、前記対象リンクが属するリンクグループに関する合計の旅行時間又は旅行速度を、リンク毎に設定された重み値を用いて分配することにより、前記平滑化を行うことを特徴とするものである。
【0018】
第6の態様に係る交通情報処理装置によれば、補正手段は、対象リンクが属するリンクグループに関する合計の旅行時間又は旅行速度を、リンク毎に設定された重み値を用いて分配することにより、平滑化を行う。かかる平滑化を行うことにより、演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を、適切に補正することが可能となる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第5のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記補正手段は、前記対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度と前記隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度とを、リンク毎に設定された重み値を用いて平均することにより、前記平滑化を行うことを特徴とするものである。
【0020】
第7の態様に係る交通情報処理装置によれば、補正手段は、対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度と隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度とを、リンク毎に設定された重み値を用いて平均することにより、平滑化を行う。かかる平滑化を行うことにより、演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を、適切に補正することが可能となる。
【0021】
本発明の第8の態様に係る交通情報処理装置は、第6又は第7の態様に係る交通情報処理装置において特に、前記重み値は、対象リンクであるか隣接リンクであるかの別、各リンクのリンク長、各リンクにおける旅行時間の長短又は旅行速度の大小の傾向を表す指標、の少なくとも一つに応じて設定されることを特徴とするものである。
【0022】
ここで、対象リンクであるか隣接リンクであるかの別に関しては、例えば、対象リンクに関する重み値は比較的大きく設定され、隣接リンクに関する重み値は比較的小さく設定される。
【0023】
また、各リンクのリンク長に関しては、例えば、リンク長が長いほど重み値は大きく設定され、リンク長が短いほど重み値は小さく設定される。
【0024】
また、「各リンクにおける旅行時間の長短又は旅行速度の大小の傾向を表す指標」には、例えば、道路形状、道路勾配、道路種別、道路区間の上流又は下流の別、信号機の数、道路に面した車両の出入りが可能な施設等の出入り口の数、道路データとして存在しない細街路への接続の数が含まれる。
【0025】
道路形状に関しては、例えば、直線道路に関する重み値は比較的小さく設定され、曲線道路に関する重み値は比較的大きく設定される。道路勾配に関しては、例えば、下り坂に関する重み値は比較的小さく設定され、上り坂に関する重み値は比較的大きく設定される。道路種別に関しては、例えば、高速道路に関する重み値は比較的小さく設定され、一般道路に関する重み値は比較的大きく設定される。道路区間の上流又は下流の別に関しては、例えば、下流ほど交通渋滞が発生しやすい道路区間においては、区間の上流に位置するリンクに関する重み値は比較的小さく設定され、区間の下流に位置するリンクに関する重み値は比較的大きく設定される。信号機の数に関しては、例えば、信号機の数が少ないほど重み値は小さく設定され、信号機の数が多いほど重み値は大きく設定される。道路に面した車両の出入りが可能な施設等の出入り口の数に関しては、例えば、当該出入り口の数が少ないほど重み値は小さく設定され、当該出入り口の数が多いほど重み値は大きく設定される。道路データとして存在しない細街路への接続の数に関しては、例えば、当該細街路への接続の数が少ないほど重み値は小さく設定され、当該細街路への接続の数が多いほど重み値は大きく設定される。
【0026】
第8の態様に係る交通情報処理装置によれば、対象リンクであるか隣接リンクであるかの別、各リンクのリンク長、各リンクにおける旅行時間の長短又は旅行速度の大小の傾向を表す指標、の少なくとも一つに応じて重み値を設定することにより、旅行時間又は旅行速度の平滑化を適切に行うことが可能となる。
【0027】
本発明の第9の態様に係る交通情報処理装置は、第6〜第8のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、ある分岐元リンクが複数の分岐先リンクに接続されている場合において、前記重み値は、前記分岐元リンクから一の前記分岐先リンクへの車両の進行経路別に異なる値に設定されることを特徴とするものである。
【0028】
例えば、直進に関する重み値は比較的小さく設定され、左折に関する重み値は中程度に設定され、右折に関する重み値は比較的大きく設定される。
【0029】
第9の態様に係る交通情報処理装置によれば、分岐元リンクから一の分岐先リンクへの車両の進行経路別に重み値を異なる値に設定することにより、旅行時間又は旅行速度の平滑化を適切に行うことが可能となる。
【0030】
本発明の第10の態様に係る交通情報処理装置は、第1〜第9のいずれか一つの態様に係る交通情報処理装置において特に、前記対象リンク又は前記隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度が欠落している場合には、前記補正手段は、旅行時間又は旅行速度が欠落しているリンクに関する旅行時間又は旅行速度として所定値を用いることにより、前記平滑化を行うことを特徴とするものである。
【0031】
ここで、「所定値」には、例えば、旅行時間又は旅行速度が欠落しているリンクに関して過去に求めた、そのリンクに関する旅行時間又は旅行速度の実績値(直近値又は過去の平均値等)が含まれる。
【0032】
第10の態様に係る交通情報処理装置によれば、対象リンク又は隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度が欠落している場合には、補正手段は、旅行時間又は旅行速度が欠落しているリンクに関する旅行時間又は旅行速度として所定値を用いることにより、平滑化を行う。これにより、あるリンクに関してプローブ情報を全く取得できず、そのリンクに関する旅行時間又は旅行速度を演算手段が算出できない場合であっても、所定値で代用することによって、旅行時間又は旅行速度の平滑化を適切に行うことが可能となる。
【0033】
本発明の第11の態様に係る交通情報処理システムは、車両に搭載された車載装置と、交通情報処理装置と、を備え、前記車載装置は、車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を、前記交通情報処理装置に向けて送信する送信手段を有し、前記交通情報処理装置は、連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定する設定手段と、前記リンクグループとして設定された道路区間に関して、前記プローブ情報を前記車載装置から取得する取得手段と、前記取得手段によって取得されたプローブ情報に基づいて、前記リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出する演算手段と、前記設定手段によって設定された前記リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、前記演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する補正手段と、を有することを特徴とするものである。
【0034】
第11の態様に係る交通情報処理システムによれば、補正手段は、設定手段によって設定されたリンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する。従って、プローブ情報のサンプル数が少ない状況において、あるリンクに設置された信号機での信号停止によって、そのリンクに関する旅行時間が極端に長くなった場合や旅行速度が極端に小さくなった場合であっても、そのリンクに関する旅行時間又は旅行速度が隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化されることにより、そのリンクにおいて交通渋滞が発生しているとの誤った推定がなされるという事態を回避することが可能となる。
【0035】
本発明の第12の態様に係るプログラムは、交通情報処理装置に搭載されるコンピュータを、連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定する設定手段と、前記リンクグループとして設定された道路区間に関して、車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得されたプローブ情報に基づいて、前記リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出する演算手段と、前記設定手段によって設定された前記リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、前記演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する補正手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0036】
第12の態様に係るプログラムによれば、補正手段は、設定手段によって設定されたリンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する。従って、プローブ情報のサンプル数が少ない状況において、あるリンクに設置された信号機での信号停止によって、そのリンクに関する旅行時間が極端に長くなった場合や旅行速度が極端に小さくなった場合であっても、そのリンクに関する旅行時間又は旅行速度が隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化されることにより、そのリンクにおいて交通渋滞が発生しているとの誤った推定がなされるという事態を回避することが可能となる。
【0037】
本発明の第13の態様に係る交通情報処理方法は、(A)連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定するステップと、(B)前記リンクグループとして設定された道路区間に関して、車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を取得するステップと、(C)前記ステップ(B)によって取得されたプローブ情報に基づいて、前記リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出するステップと、(D)前記ステップ(A)によって設定された前記リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、前記ステップ(C)によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正するステップと、を備えることを特徴とするものである。
【0038】
第13の態様に係る交通情報処理方法によれば、ステップ(D)では、ステップ(A)によって設定されたリンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、ステップ(C)によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度が補正される。従って、プローブ情報のサンプル数が少ない状況において、あるリンクに設置された信号機での信号停止によって、そのリンクに関する旅行時間が極端に長くなった場合や旅行速度が極端に小さくなった場合であっても、そのリンクに関する旅行時間又は旅行速度が隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化されることにより、そのリンクにおいて交通渋滞が発生しているとの誤った推定がなされるという事態を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、収集されたプローブ情報のデータ数が少ない状況であっても、交通渋滞等の交通事象が発生していると誤って推定されることを回避することが可能な、交通情報処理装置、交通情報処理システム、プログラム、及び交通情報処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る交通情報処理システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】センタ装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】処理装置の機能構成を概略的に示す図である。
【図4】リンク地図の一例を示す図である。
【図5】リンク地図の一例を示す図である。
【図6】図5に示したリンクグループに関して、平滑化前後の旅行時間と重み値とを示す図である。
【図7】リンク地図の他の例を示す図である。
【図8】図7に示したリンクグループに関して、平滑化前後の旅行時間と重み値とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0042】
図1は、本発明の実施の形態に係る交通情報処理システム100の全体構成を概略的に示す図である。交通情報処理システム100においては、少なくとも車両1の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を、特定の車載装置2を搭載した車両1からセンタ装置5(交通情報処理装置)が収集し、センタ装置5は、各車両1から収集したプローブ情報を統計的に処理することによって、道路の渋滞状況の案内や最適経路の案内等の様々な交通情報サービスを、各車両1に提供する。
【0043】
図1を参照して、交通情報処理システム100は、車両1に搭載された車載装置2と、基地局4と、センタ装置5とを含んで構成されている。車載装置2と基地局4との間では、無線による相互通信が可能である。また、基地局4とセンタ装置5との間では、通信ケーブル6を介して、有線による相互通信が可能である。但し、基地局4とセンタ装置5との間の通信も無線であっても良い。
【0044】
車載装置2は、車速センサ、方位センサ、GPS受信機、メモリ、及びタイマ等を含んで構成されている。車載装置2は、車両1のプローブ情報を一定時間間隔毎又は一定走行距離毎に収集して、メモリに蓄積する。また、車載装置2には携帯電話又はスマートフォン等の通信装置3を接続することが可能であり、メモリに蓄積されたプローブ情報を、通信装置3を介して外部に送信することが可能である。車両1から送信されたプローブ情報は、基地局4を介して、センタ装置5に送られる。
【0045】
プローブ情報を送信するタイミングは任意である。例えば、車両1の搭乗者が渋滞状況の案内サービスの提供を受けることを希望した場合、搭乗者は、その案内サービスの要求信号を、車載装置2から通信装置3を介してセンタ装置5に送信する。その際、その時点でメモリに蓄積されているプローブ情報が、要求信号と併せてセンタ装置5に送信される。
【0046】
図2は、センタ装置5の構成を概略的に示す図である。センタ装置5は、送受信部10、処理装置11、記憶媒体12、及びデータベース13,14を備えて構成されている。
【0047】
送受信部10は、基地局4と処理装置11との間で各種のデータを送受信する。処理装置11は、コンピュータによって構成されている。記憶媒体12は、ハードディスク等又は半導体メモリの任意の媒体であり、処理装置11を動作させるためのプログラム15が記憶されている。データベース13には、車両1から受信したプローブ情報が格納される。データベース14には、地図データが格納されている。地図データには、リンクが様々に描かれたリンク地図が含まれる。
【0048】
図3は、処理装置11の機能構成を概略的に示す図である。処理装置11がプログラム15を実行することにより、処理装置11は、設定手段20、取得手段21、演算手段22、及び補正手段23としての機能を実現する。換言すれば、プログラム15は、センタ装置5に搭載される処理装置11としてのコンピュータを、設定手段20、取得手段21、演算手段22、及び補正手段23として機能させるためのプログラムである。
【0049】
図4,5は、リンク地図の一例を示す図である。この例では、ノードN1〜N9を繋ぐリンクL1〜L8が描かれている。例えばリンクL1はノードN1とノードN2とを繋ぎ、リンクL2はノードN2とノードN3とを繋ぐ。
【0050】
図3〜5を参照して、設定手段20は、連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定する。具体的には、過去の実績値を統計的に処理すること等により、車両が区間を通過する所要時間又は車両が区間を通過する際の平均速度の変動が所定値以下である道路区間(つまり、区間通過の所要時間又は速度のばらつきが小さい道路区間)を、リンクグループとして設定する。図4に示した例では、設定手段20は、リンクL1〜L3を含む道路区間をリンクグループLG1として設定し、リンクL6〜L8を含む道路区間をリンクグループLG2として設定する。図5に示した例では、設定手段20は、リンクL1〜L4を含む道路区間をリンクグループLG1として設定し、リンクL5〜L8を含む道路区間をリンクグループLG2として設定する。
【0051】
例えば、図4を参照して、リンクL4,L5に対応する道路区間が交通渋滞の発生しやすい区間であり、その他のリンクL1〜L3,L6〜L8に対応する道路区間が交通渋滞の発生しにくい区間である場合に、交通渋滞の多発地点であるノードN4,N6を境界としてリンクグループを設定することにより、リンクグループLG1,LG2が設定される。
【0052】
また例えば、図5を参照して、リンクL1〜L4に対応する道路区間及びリンクL5〜L8に対応する道路区間が、信号機の系統制御が行われるサブエリアとしてそれぞれ設定されている場合に、サブエリアの端点であるノードN1,N5,N9を境界としてリンクグループを設定することにより、リンクグループLG1,LG2が設定される。ここで、「系統制御」とは、近接する複数の交差点を一括りのエリア(サブエリア)として設定し、同一のサブエリア内に含まれる信号機は同一のサイクル長(信号表示が一巡するのに要する時間)で動作させ、サブエリア内の信号機が青信号を表示している期間にこれらの信号機が設置された全ての交差点を、できるだけ多くの車両が通過できるように、信号機間の信号表示開始時刻に適切なオフセットを持たせる制御である。
【0053】
また例えば、図5を参照して、リンクL1〜L4に対応する道路区間が直線道路であり、リンクL5〜L8に対応する道路区間が曲がりくねった曲線道路である場合に、道路形状の変化地点であるノードN5を境界としてリンクグループを設定することにより、リンクグループLG1,LG2が設定される。
【0054】
また例えば、図5を参照して、リンクL1〜L4に対応する道路区間が急峻な上り坂であり、リンクL5〜L8に対応する道路区間が急峻な下り坂である場合に、道路勾配の変化地点であるノードN5を境界としてリンクグループを設定することにより、リンクグループLG1,LG2が設定される。
【0055】
また例えば、図5を参照して、リンクL1〜L4に対応する道路区間が高速道路であり、リンクL5〜L8に対応する道路区間が一般道路である場合に、道路種別の変化地点であるノードN5を境界としてリンクグループを設定することにより、リンクグループLG1,LG2が設定される。
【0056】
また例えば、図5を参照して、リンクL1〜L4に対応する道路区間がトンネル内の区間であり、リンクL5〜L8に対応する道路区間がトンネル外の区間である場合や、リンクL1〜L4に対応する道路区間が片側1車線の区間であり、リンクL5〜L8に対応する道路区間が片側2車線の区間である場合に、道路属性の変化地点であるノードN5を境界としてリンクグループを設定することにより、リンクグループLG1,LG2が設定される。
【0057】
また例えば、上述した、交通渋滞の多発地点、サブエリアの端点、道路形状の変化地点、道路勾配の変化地点、道路種別の変化地点、及び道路属性の変化地点のうち、複数の要素を含む地点を境界としてリンクグループを設定してもよい。
【0058】
さらに設定手段20は、リンク長が所定値未満のリンクはいずれかのリンクグループに必ず属することとなるように、リンクグループを設定する。例えばリンクL3のリンク長が所定値以下である場合には、リンクL3がいずれかのリンクグループ(この例ではリンクグループLG1)に含まれることとなるように、リンクグループを設定する。この所定値は、例えば、所定の時間間隔でプローブ情報を送信している車両がその道路区間の制限速度で走行している場合に、その道路区間内においてプローブ情報を少なくとも1回送信し得る最小の距離に設定される。
【0059】
さらに設定手段20は、時間帯に応じてリンクグループの設定を変更することも可能である。例えば、図4を参照して、リンクL3に対応する道路区間が、通勤時間帯等の特定の時間帯に交通渋滞が発生しやすい区間である場合には、その時間帯においては当該リンクL3が除外されるようにリンクグループLG1を再設定する。
【0060】
図3を参照して、設定手段20は、リンクグループに関する設定情報を、データD3として補正手段23に入力する。
【0061】
取得手段21は、車両1から送信されたプローブ情報を、送受信部10(図2参照)を介して取得する。取得手段21は、取得したプローブ情報を、データD1として演算手段22に入力する。
【0062】
演算手段22は、取得手段21から入力されたプローブ情報に基づいて、各リンクL1〜L8に関する旅行時間を算出する。例えば、あるリンクに車両が進入した時刻と、そのリンクから車両が退出した時刻とに基づいて、そのリンクに関する車両の旅行時間を算出する。演算手段22は、算出した各リンクL1〜L8に関する旅行時間を、データD2として補正手段23に入力する。
【0063】
補正手段23は、設定手段20によって設定されたリンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間を用いて平滑化を行うことにより、演算手段22によって算出された各リンクに関する旅行時間を補正する。なお、本実施の形態では旅行時間の算出や平滑化等について説明するが、旅行時間は既知のリンク長を用いて旅行速度に変換することができ、旅行時間と旅行速度とは表裏一体の関係にあるため、旅行時間の算出や平滑化等に代えて、旅行速度の算出や平滑化等を行うこともできる。
【0064】
平滑化の第1の例として、補正手段23は、対象リンクが属するリンクグループに関する合計の旅行時間を、リンク毎に設定された重み値を用いて分配することにより、平滑化を行う。
【0065】
図6は、図5に示したリンクグループLG1に関して、平滑化前後の旅行時間と重み値とを示す図である。例えばリンクL1に関しては、平滑化前の旅行時間(つまり演算手段22によって算出された旅行時間)はt1であり、設定されている重み値はW1であり、平滑化後の旅行時間(つまり補正手段23によって補正された後の旅行時間)はT1である。
【0066】
当該第1の例において補正手段23は、








なる演算を行うことによって、各リンクL1〜L4に関する旅行時間T1〜T4を算出する。
【0067】
平滑化の第2の例として、補正手段22は、対象リンクに関する旅行時間と隣接リンクに関する旅行時間とを、リンク毎に設定された重み値を用いて平均することにより、平滑化を行う。
【0068】
当該第2の例において補正手段23は、








なる演算を行うことによって、各リンクL1〜L4に関する旅行時間T1〜T4を算出する。
【0069】
例えば、重み値W1〜W4は、そのリンクが対象リンクであるか隣接リンクであるかの別に応じて設定される。一例として、対象リンクに関する重み値は比較的大きく設定され、隣接リンクに関する重み値は比較的小さく設定される。
【0070】
また例えば、重み値W1〜W4は、各リンクのリンク長に応じて設定される。一例として、リンク長が長いほど重み値は大きく設定され、リンク長が短いほど重み値は小さく設定される。
【0071】
また例えば、重み値W1〜W4は、各リンクにおける旅行時間の長短の傾向を表す指標に応じて設定される。当該指標には、例えば、道路形状、道路勾配、道路種別、道路区間の上流又は下流の別、信号機の数、道路に面した車両の出入りが可能な施設等の出入り口の数、道路データとして存在しない細街路への接続の数が含まれる。
【0072】
一例として、道路形状に関しては、直線道路に関する重み値は比較的小さく設定され、曲線道路に関する重み値は比較的大きく設定される。
【0073】
道路勾配に関しては、下り坂に関する重み値は比較的小さく設定され、上り坂に関する重み値は比較的大きく設定される。
【0074】
道路種別に関しては、高速道路に関する重み値は比較的小さく設定され、一般道路に関する重み値は比較的大きく設定される。
【0075】
道路区間の上流又は下流の別に関しては、下流ほど交通渋滞が発生しやすい道路区間においては、区間の上流に位置するリンクに関する重み値は比較的小さく設定され、区間の下流に位置するリンクに関する重み値は比較的大きく設定される。
【0076】
信号機の数に関しては、信号機の数が少ないほど重み値は小さく設定され、信号機の数が多いほど重み値は大きく設定される。
【0077】
道路に面した車両の出入りが可能な施設等の出入り口の数に関しては、当該出入り口の数が少ないほど重み値は小さく設定され、当該出入り口の数が多いほど重み値は大きく設定される。
【0078】
道路データとして存在しない細街路への接続の数に関しては、当該細街路への接続の数が少ないほど重み値は小さく設定され、当該細街路への接続の数が多いほど重み値は大きく設定される。
【0079】
また例えば、上述した、対象リンクであるか隣接リンクであるかの別、各リンクのリンク長、及び各リンクにおける旅行時間の長短の傾向を表す指標のうち、複数の要素を用いて重み値W1〜W4を設定してもよい。
【0080】
ここで、対象リンク又は隣接リンクに関する旅行時間が欠落している場合には、補正手段23は、旅行時間が欠落しているリンクに関する旅行時間として所定値を用いることにより、平滑化を行う。ここで、「所定値」には、例えば、旅行時間が欠落しているリンクに関して過去に求めた、そのリンクに関する旅行時間の実績値(直近値又は過去の平均値等)が含まれる。例えば、リンクL2に対応するプローブ情報が取得できなかったために旅行時間t2が欠落している場合には、補正手段23は、リンクL2に関する旅行時間の過去の平均値を用いて、上述した演算を行う。
【0081】
図7は、リンク地図の他の例を示す図である。この例では、ノードN1〜N5を繋ぐリンクL1〜L4と、ノードN3,N11,N12を繋ぐリンクL11,L12と、ノードN3,N21,N22を繋ぐリンクL21,L22とが描かれている。つまり、分岐元のリンクL2が複数の分岐先のリンクL3,L11,L21に接続されている。
【0082】
図8は、図7に示したリンクグループに関して、平滑化前後の旅行時間と重み値とを示す図である。リンクグループ内に分岐点が含まれる場合、重み値は、分岐元リンクから分岐先リンクへの車両の進行経路別に異なる値に設定される。図7,8に示した例では、リンクL2に対応する道路区間を走行する車両1から見て、直進先のリンクL3に対応する重み値W3と、左折先のリンクL11に対応する重み値W11と、右折先のリンクL21に対応する重み値W21とが、互いに異なる値に設定されている。例えば、直進に関する重み値W3は比較的小さく設定され、左折に関する重み値W11は中程度に設定され、右折に関する重み値W21は比較的大きく設定される。
【0083】
車両1が直進した場合には、補正手段23は、


または

なる演算を行うことによって、リンクL2に関する旅行時間T2を算出する。
【0084】
車両1が左折した場合には、補正手段23は、

または

なる演算を行うことによって、リンクL2に関する旅行時間T2を算出する。
【0085】
車両1が右折した場合には、補正手段23は、

または

なる演算を行うことによって、リンクL2に関する旅行時間T2を算出する。
【0086】
<まとめ>
本実施の形態に係るセンタ装置5(交通情報処理装置)によれば、補正手段23は、設定手段20によって設定されたリンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、演算手段22によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する。従って、プローブ情報のサンプル数が少ない状況において、あるリンクに設置された信号機での信号停止によって、そのリンクに関する旅行時間が極端に長くなった場合や旅行速度が極端に小さくなった場合であっても、そのリンクに関する旅行時間又は旅行速度が隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化されることにより、そのリンクにおいて交通渋滞が発生しているとの誤った推定がなされるという事態を回避することが可能となる。
【0087】
また、設定手段20は、区間通過の所要時間又は速度の変動が所定値以下の道路区間を、リンクグループとして設定する。従って、リンクグループを構成する複数のリンクに関する合計の旅行時間又は旅行速度は安定するため、各リンクに関する平滑化後の旅行時間又は旅行速度が状況毎に大幅に変動するという事態を回避することが可能となる。
【0088】
また、設定手段20は、交通渋滞の多発地点、信号機の系統制御が行われるサブエリアの端点、道路形状の変化地点、道路勾配の変化地点、道路種別の変化地点、又は道路属性の変化地点を境界としてリンクグループを設定する。これにより、区間通過の所要時間又は速度が安定している道路区間をリンクグループとして適切に設定することが可能となる。
【0089】
また、設定手段20は、リンク長が所定値未満のリンクはいずれかのリンクグループに属することとなるように、リンクグループを設定する。リンク長が短い場合には、当該リンクに関するプローブ情報のサンプル数が極めて少ない(又はゼロである)という事態が起こり得るため、当該リンクを走行中の車両から取得したプローブ情報に基づいて算出した旅行時間又は旅行速度の精度が低い(又は算出できない)という状況が生じやすい。また、リンク長が短いリンクに関しては、信号停止等によって車両が当該リンク内で停車した場合に、リンク長が長いリンク内で車両が同じ時間だけ停車した場合と比較すると、車両の停車時間が旅行速度の算出に与える影響が大きい。そのため、リンク長が短いリンク内で車両が信号停止等した場合には、旅行速度が極端に小さくなるため、当該リンクにおいて交通渋滞が発生しているとの誤った推定がなされやすい。従って、リンク長が短いリンクに関しては、リンク長が長いリンクと比較すると、旅行時間又は旅行速度の平滑化を行うことでこれらの不具合を回避できる実益が大きい。
【0090】
また、設定手段20は、時間帯に応じてリンクグループの設定を変更可能である。従って、ある特定の時間帯に交通渋滞が発生しやすいリンクがリンクグループに含まれている場合には、その時間帯においては当該リンクが除外されるようにリンクグループを再設定することにより、当該リンクにおける交通渋滞の影響を排除して旅行時間又は旅行速度の平滑化を適切に行うことが可能となる。
【0091】
また、補正手段23は、対象リンクが属するリンクグループに関する合計の旅行時間又は旅行速度を、リンク毎に設定された重み値を用いて分配することにより、平滑化を行う。かかる平滑化を行うことにより、演算手段22によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を、適切に補正することが可能となる。
【0092】
また、補正手段23は、対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度と隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度とを、リンク毎に設定された重み値を用いて平均することにより、平滑化を行う。かかる平滑化を行うことにより、演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を、適切に補正することが可能となる。
【0093】
また、対象リンクであるか隣接リンクであるかの別、各リンクのリンク長、各リンクにおける旅行時間の長短又は旅行速度の大小の傾向を表す指標、の少なくとも一つに応じて重み値を設定することにより、旅行時間又は旅行速度の平滑化を適切に行うことが可能となる。
【0094】
また、図7,8に示したように、分岐元リンクから一の分岐先リンクへの車両1の進行経路別に重み値を異なる値に設定することにより、旅行時間又は旅行速度の平滑化を適切に行うことが可能となる。
【0095】
また、対象リンク又は隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度が欠落している場合には、補正手段23は、旅行時間又は旅行速度が欠落しているリンクに関する旅行時間又は旅行速度として所定値を用いることにより、平滑化を行う。これにより、あるリンクに関してプローブ情報を全く取得できず、そのリンクに関する旅行時間又は旅行速度を演算手段22が算出できない場合であっても、所定値で代用することによって、旅行時間又は旅行速度の平滑化を適切に行うことが可能となる。
【0096】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1 車両
2 車載装置
5 センタ装置
15 プログラム
20 設定手段
21 取得手段
22 演算手段
23 補正手段
100 交通情報処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定する設定手段と、
前記リンクグループとして設定された道路区間に関して、車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得されたプローブ情報に基づいて、前記リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出する演算手段と、
前記設定手段によって設定された前記リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、前記演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する補正手段と、
を備える、交通情報処理装置。
【請求項2】
前記設定手段は、区間通過の所要時間又は速度の変動が所定値以下の道路区間を、前記リンクグループとして設定する、請求項1に記載の交通情報処理装置。
【請求項3】
前記設定手段は、
交通渋滞の多発地点、
信号機の系統制御が行われるサブエリアの端点、
道路形状の変化地点、
道路勾配の変化地点、
道路種別の変化地点、
道路属性の変化地点、
の少なくとも一つを境界として、前記リンクグループを設定する、請求項2に記載の交通情報処理装置。
【請求項4】
前記設定手段は、リンク長が所定値未満のリンクはいずれかのリンクグループに属することとなるように、前記リンクグループを設定する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の交通情報処理装置。
【請求項5】
前記設定手段は、時間帯に応じて前記リンクグループの設定を変更可能である、請求項1〜4のいずれか一つに記載の交通情報処理装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記対象リンクが属するリンクグループに関する合計の旅行時間又は旅行速度を、リンク毎に設定された重み値を用いて分配することにより、前記平滑化を行う、請求項1〜5のいずれか一つに記載の交通情報処理装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度と前記隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度とを、リンク毎に設定された重み値を用いて平均することにより、前記平滑化を行う、請求項1〜5のいずれか一つに記載の交通情報処理装置。
【請求項8】
前記重み値は、
対象リンクであるか隣接リンクであるかの別、
各リンクのリンク長、
各リンクにおける旅行時間の長短又は旅行速度の大小の傾向を表す指標、
の少なくとも一つに応じて設定される、請求項6又は7に記載の交通情報処理装置。
【請求項9】
ある分岐元リンクが複数の分岐先リンクに接続されている場合において、前記重み値は、前記分岐元リンクから一の前記分岐先リンクへの車両の進行経路別に異なる値に設定される、請求項6〜8のいずれか一つに記載の交通情報処理装置。
【請求項10】
前記対象リンク又は前記隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度が欠落している場合には、前記補正手段は、旅行時間又は旅行速度が欠落しているリンクに関する旅行時間又は旅行速度として所定値を用いることにより、前記平滑化を行う、請求項1〜9のいずれか一つに記載の交通情報処理装置。
【請求項11】
車両に搭載された車載装置と、
交通情報処理装置と、
を備え、
前記車載装置は、
車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を、前記交通情報処理装置に向けて送信する送信手段
を有し、
前記交通情報処理装置は、
連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定する設定手段と、
前記リンクグループとして設定された道路区間に関して、前記プローブ情報を前記車載装置から取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得されたプローブ情報に基づいて、前記リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出する演算手段と、
前記設定手段によって設定された前記リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、前記演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する補正手段と、
を有する、交通情報処理システム。
【請求項12】
交通情報処理装置に搭載されるコンピュータを、
連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定する設定手段と、
前記リンクグループとして設定された道路区間に関して、車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得されたプローブ情報に基づいて、前記リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出する演算手段と、
前記設定手段によって設定された前記リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、前記演算手段によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正する補正手段と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
(A)連続する複数のリンクを含む道路区間をリンクグループとして設定するステップと、
(B)前記リンクグループとして設定された道路区間に関して、車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブ情報を取得するステップと、
(C)前記ステップ(B)によって取得されたプローブ情報に基づいて、前記リンクグループに含まれる各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を算出するステップと、
(D)前記ステップ(A)によって設定された前記リンクグループに関する設定情報に基づいて、ある対象リンクに関する旅行時間又は旅行速度に対して、少なくとも当該対象リンクに隣接する隣接リンクに関する旅行時間又は旅行速度を用いて平滑化を行うことにより、前記ステップ(C)によって算出された各リンクに関する旅行時間又は旅行速度を補正するステップと、
を備える、交通情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−48444(P2012−48444A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189216(P2010−189216)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】