説明

交通情報提供システム

【課題】 確実に信号待ちせずに走行できる道路区間の制御情報を車両6に提供し、車両6の走行支援をより確実に行えるようにする。
【解決手段】 本発明は、複数の交差点を含む道路区間を信号待ちせずに通行可能にする系統制御の制御情報を、車両6に提供する交通情報提供システムに関する。このシステムは、互いに代替路となる複数の道路区間の混雑状況に基づいて、複数の道路区間のうちで系統制御の実効性がある当該道路区間を選択する信号制御装置(交通信号制御機)1A〜1Cと、選択された道路区間の制御情報を含むダウンリンク情報を、複数の道路区間のうちの少なくとも1つに流入する車両6に無線送信する路側無線機(路側通信機)3A〜3Cと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の円滑な走行を支援するために、系統制御の制御情報を車両に無線で提供する交通情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の交通管制システムでは、連続する複数(例えば、5つ程度)の交差点をひと括りのサブエリアとし、同じサブエリアに属する交差点の信号灯器を同一のサイクル長(信号表示が一巡するのに要する時間)で動作させ、それらの交差点の信号灯器が青信号を表示している時間帯に、できるだけ多くの車両がそれらの交差点を通過できるように、各々の交差点の青開始時刻に適切な時間的なずれ(オフセット)を持たせる系統制御を行う場合がある。
【0003】
このように、サブエリア内の交差点間のオフセットを適宜決定すれば、所定方向に進行する車両が、信号待ちなしで交差点に到達する時間帯(スルーバンド)に複数の交差点を通過することができ、交通流の円滑化を図ることができる。
サブエリアの構成は、交通管制システムの管理者が実際の道路交通の状況を見て、経験的に決めるのが一般的である。具体的には、例えば、幹線道路上に連続して存在する交差点の場合であれば、交差点間の距離が所定以上離れたところをサブエリアの境界とし、距離が一定以内の交差点を1つのサブエリアとするような方法が用いられる。
【0004】
また、上記系統制御を行うサブエリアに流入する車両の走行支援の目的で、サブエリアに含まれる系統制御中の交差点の位置情報と信号制御パラメータ(サイクル長、スプリット及びオフセット)とを、路側ビーコンを通じて車両に提供し、それらの情報を受信した車両側において、系統制御が行われている道路区間を信号待ちせずに通過可能な走行速度の範囲を算出させる、交通情報提供システムが既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3286993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の交通情報提供システムによれば、系統制御によって確保されているスルーバンドの範囲を把握し、系統制御されている道路区間をスルーバンド内で信号待ちなしで通行可能な走行速度範囲を正確に算出することができる。
このため、例えば、走行速度が少し足りなかったために信号待ちせざるを得なくなってしまった、といった事態を未然に回避することができ、その結果、交通渋滞の発生や二酸化炭素の排出量を削減できる、といった効果を期待できる。
【0007】
しかし、従来の交通情報提供システムでは、系統制御を行っている道路区間で渋滞が発生した場合には、車両がスルーバンド内の速度で走行するのが困難となるため、路側ビーコンから信号制御パラメータ等を取得しても、車両の走行支援を行うことができない。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、確実に信号待ちせずに走行できる道路区間の制御情報を車両に提供し、車両の走行支援をより確実に行える交通情報提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の交通情報提供システムは、複数の交差点を含む道路区間を信号待ちせずに通行可能にする系統制御の制御情報を、車両に提供する交通情報提供システムであって、互いに代替路となる複数の前記道路区間の混雑状況に基づいて、複数の前記道路区間のうちで前記系統制御の実効性がある当該道路区間を選択する信号制御装置と、選択された前記道路区間の前記制御情報を含むダウンリンク情報を、複数の前記道路区間のうちの少なくとも1つに流入する前記車両に無線送信する路側無線機と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の交通情報提供システムによれば、信号制御装置が、互いに代替路となる複数の道路区間の混雑状況に基づいて、複数の道路区間のうちで系統制御の実効性がある当該道路区間を選択し、路側無線機が、選択された道路区間の制御情報を含むダウンリンク情報を、複数の前記道路区間のうちの少なくとも1つに流入する車両に無線送信するので、互いに代替路となる複数の道路区間のうち、系統制御の実効性がある道路区間についてだけ、その制御情報が車両に提供される。
【0010】
従って、代替路となる複数の道路区間のうちのいずれかの道路区間が渋滞しており、スルーバンド内で走行できない状況であっても、その他の道路区間が混雑していなくて系統制御の実効性がある場合には、当該道路区間の制御情報が車両に提供される。
このため、確実に信号待ちせずに走行できる道路区間の制御情報を車両に提供することができ、車両の走行支援をより確実に行えるようになる。
【0011】
(2) 本発明の交通情報提供システムにおいて、前記信号制御装置は、選択された前記道路区間の通行を推奨する情報を、前記ダウンリンク情報に含めることが好ましい。
この場合、上記ダウンリンク情報を取得した車両のドライバが、系統制御の実効性がある道路区間を含む経路を選択する可能性が高まり、系統制御による車両の走行支援をより確実に達成できる。
【0012】
(3) また、本発明の交通信号提供システムにおいて、前記信号制御装置は、選択された前記道路区間が複数ある場合に、旅行時間が短い方の前記道路区間を推奨する情報を、前記ダウンリンク情報に含めることが好ましい。
この場合、上記ダウンリンク情報を取得した車両のドライバが、旅行時間が短い方の道路区間を含む経路を選択する可能性が高まり、情報提供を受ける車両側の利便性を向上することができる。
【0013】
(4) 本発明の交通信号提供システムにおいて、前記道路区間を含む所定方面への経路を前記車両に表示可能な電光表示板を更に備えていてもよく、この場合、前記信号制御装置は、1つの前記所定方面につき表示可能な前記経路が複数ある場合に、選択された前記道路区間を含む前記経路を、前記所定方面へ向かう前記車両が通行すべき推奨経路として前記電光表示板に表示させることが好ましい。
このようにすれば、上記電光表示板の推奨経路の表示を見た車両のドライバが、系統制御の実効性がある道路区間を含む経路を選択する可能性が高まり、系統制御による車両の走行支援をより確実に達成できる。
【0014】
(5) また、前記信号制御装置は、選択された前記道路区間が複数ある場合に、旅行時間が短い方の前記道路区間を含む前記経路を、前記所定方面へ向かう前記車両が通行すべき推奨経路として前記電光表示板に表示させることにしてもよい。
このようにすれば、上記電光表示板の推奨経路の表示を見た車両のドライバが、旅行時間が短い方の道路区間を含む経路を選択する可能性が高まり、情報提供を受ける車両側の利便性を向上することができる。
【0015】
(6) また、前記信号制御装置は、選択された前記道路区間における前記制御情報を前記路側無線機にて配信中である旨の表示を、前記電光表示板に表示させることが好ましい。
このようにすれば、上記電光表示板の表示を見た車両のドライバが、無線通信対応の車載装置を搭載すればより詳細な情報が得られることを認識するので、無線通信を用いた交通情報提供システムの普及を促進することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の通り、本発明によれば、確実に信号待ちせずに走行できる道路区間の制御情報を車両に提供できるので、車両の走行支援をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る交通情報提供システムを示す道路平面図である。
【図2】系統制御中の道路区間の距離と時間との関係の一例を示すグラフである。
【図3】車載装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】交通信号制御機の制御部が行う情報提供処理のフローチャートである。
【図5】(a)は路側通信機が送信するダウンリンク情報の内容例を示す表であり、(b)は電光表示板の表示例を示す図である。
【図6】(a)は路側通信機が送信するダウンリンク情報の別の内容例を示す表であり、(b)は電光表示板の別の表示例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る交通情報提供システムを示す道路平面図である。
図1に示すように、本実施形態の交通情報提供システムは、交通信号制御機1、中央装置2、路側通信機3、電光表示板4及び車両6に搭載された車載装置5などを含む。
【0019】
なお、本実施形態において、中央装置2が管轄する各交差点に設置された「交通信号制御機」を総称する場合には、参照符号「1」を用いて「交通信号制御機1」といい、サブエリアA〜Cの流入側(図1の例では東側)の交差点A1〜C1に設置された交通信号制御機について述べる場合には、参照符号「1A〜1C」を用いて「交通信号制御機1A〜1C」という。
同様に、中央装置2が管轄する道路に設置された「路側通信機」を総称する場合には、参照符号「3」を用いて「路側通信機3」といい、サブエリアA〜Cの流入側(図1の例では東側)の交差点A1〜C1に設置された路側通信機について述べる場合には、参照符号「3A〜3C」を用いて「路側通信機3A〜3C」という。
【0020】
また、同様に、中央装置2が管轄する道路に設置された「電光表示板」を総称する場合には、参照符号「4」を用いて「電光表示板4」といい、サブエリアA〜Cの流入側(図1の例では東側)を走行する車両6に情報提供する電光表示板について述べる場合には、参照符号「4A〜4C」を用いて「電光表示板4A〜4C」という。
【0021】
交通信号制御機1は、中央装置2の管轄エリアに属する交差点A1〜A4,B1〜B4,C1〜C4のそれぞれに設置されており、これらの交通信号制御機1は、電話線等の通信回線を通じて交通管制センター等に設置された中央装置2と接続されている。
中央装置2は、自身の管轄エリア内の各交差点の交通信号制御機1とLAN(Local Area Network)を構成しており、各交差点の交通信号制御機1は、他の交差点の交通信号制御機1との通信も可能である。
【0022】
中央装置2は、自身の管轄エリアに属する各交差点の交通信号制御機1に対して、同一道路上の交通信号制御機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を実行可能である。
すなわち、中央装置は、図示しない車両感知器から取得した車両台数や、路側通信機3や図示しない光ビーコンなどから取得した車両6のプローブデータに基づいて、最適な信号制御パラメータ(サイクル長、スプリット及びオフセット)を決定する交通感応制御を行い、そのパラメータを含む信号制御指令を交通信号制御機1に通知している。
【0023】
信号制御指令には、1サイクル分の信号表示の指示が含まれており、具体的には、1サイクルのサイクル長、各方路に割り当てる青信号時間(割合でもよい。)であるスプリット、1サイクルの開始時刻と基準時刻との時間的ずれであるオフセット、及び、右折感応やジレンマ感応に代表される、交通信号制御機1が独自に行う地点感応制御の実行可否などの情報が含まれている。
【0024】
信号制御指令を受信した交通信号制御機1は、1サイクルの開始直前に到着している最新の信号制御パラメータに基づいて、当該1サイクルにおける各階梯の時間を決定し、決定した時間で信号灯器の灯色を制御する。
上記サイクルやスプリットは、通常、交差点付近の交通状況に応じて決定される。この交通状況は、管轄エリア内の各道路に設置された車両感知器(図示せず)などで計測された感知情報(交通量や占有時間など)に基づいて決定される。
【0025】
例えば、中央装置2は、所定期間における交通量(例えば5分間の交通量)や平均走行速度によって各道路における飽和度等の交通需要を把握し、その交通需要に応じて互いに交差する各道路に割り当てる青時間の長さ等を決定する。
なお、1サイクルとは、各方路の信号灯器の表示が一巡する期間のことであり、通常、主道路側の青信号開始時から、再びその主道路側の青信号が開始する時点までの期間のことをいう。
【0026】
ここで、図1に示すエリアでは、東西方向に並ぶ4つの交差点A1〜A4、交差点B1〜B4及び交差点C1〜C4がそれぞれ1つのサブエリアA〜Cを構成しており、それぞれのサブエリアA〜Cに対して上記の系統制御が行われている。
中央装置2は、上記系統制御によって決定した信号制御パラメータを含む信号制御指令を各交通信号制御機1に送信し、各交通信号制御機1は、受信した信号制御指令に含まれる信号制御パラメータに基づいて、信号灯器の灯色切替タイミング(階梯)を決定する。
【0027】
また、図1の例において、サブエリアA〜Cはそれぞれ南北方向に隣接しており、サブエリアA〜Cに属する次の第1、第2及び第3道路区間は、東から西に向かって下り方向に走行する車両6に関して互いに代替路となっている。
a)交差点A1〜交差点A4までの第1道路区間
b)交差点B1〜交差点B4までの第2道路区間
c)交差点C1〜交差点C4までの第3道路区間
【0028】
路側通信機3Aは、サブエリアAの第1道路区間の流入側にある交通信号制御機1Aに接続されており、第1道路区間に流入する車両6と無線通信が可能である。
また、路側通信機3Bは、サブエリアBの第2道路区間の流入側にある交通信号制御機1Bに接続されており、第2道路区間に流入する車両6と無線通信が可能である。同様に、路側通信機3Cは、サブエリアCの第3道路区間の流入側にある交通信号制御機1Cに接続されており、第3道路区間に流入する車両6と無線通信が可能である。
【0029】
本実施形態の路側通信機3は、例えば、従来のUHF帯を利用したITS(Intelligent Transport Systems )無線機よりなり、車両6が送信したアップリンク情報を受信して交通信号制御機1A〜1Cに転送できるともに、交通信号制御機1A〜1Cから取得したダウンリンク情報を車両6に無線送信することができる。
なお、路側通信機3は、ITS無線機のような比較的広域の無線機だけでなく、例えば光ビーコンのような比較的狭域なエリアで路車間通信する装置であってもよい。
【0030】
電光表示板4Aは、サブエリアAの第1道路区間の流入側にある交通信号制御機1Aに接続されており、第1道路区間に流入する車両6に対して所定の情報表示が可能である。
また、電光表示板4Bは、サブエリアBの第2道路区間の流入側にある交通信号制御機1Bに接続されており、第2道路区間に流入する車両6に対して所定の情報表示が可能である。同様に、電光表示板4Cは、サブエリアCの第3道路区間の流入側にある交通信号制御機1Cに接続されており、第3道路区間に流入する車両6に対して所定の情報表示が可能である。
【0031】
電光表示板4は、多数のLED灯器を縦横に並べた電光表示面を有しており、各サブエリアA〜Cに向かって下り方向(西向き)に走行する車両6に対して、所定の文字情報を電光表示できるとともに、例えば図5(b)及び図6(b)に示すように、第1〜第3道路区間を含む所定の方面A〜Cへの経路を表示できるようになっている。
【0032】
〔スルーバンドの例〕
図2は、系統制御中の道路区間の距離と時間との関係の一例を示すグラフである。
図2の例は、サブエリアAの第1道路区間に対して下り方向の系統制御を行った場合であり、この場合、中央装置2は、所定時間範囲の「スルーバンド」が確保されるように、交差点A1〜A4のオフセット時間を調整する。
【0033】
もっとも、交通状況によっては、上り下り双方でスルーバンドが確保されるように系統制御を行う場合もあるが、どちらの方向にどの程度のスルーバンドを確保するかについては、交通量の割合やシステムの運用管理者が政策的に決定することができる。
例えば、第1道路区間の下り方向が主として工場への通勤で使用される場合には、行きの通勤時間帯(例えば、午前8:00〜9:00)は下り方向のスルーバンドを確保し、帰りの通勤時間帯(例えば、5:00〜6:00)は上り方向のスルーバンドを確保するように系統制御を行えばよい。
【0034】
ここで、交差点A1〜A4を含む第1道路区間において、渋滞が発生していない場合には、図2に実線矢印で示すように、交差点A1の上流側の所定位置Pにある車両6は、所定の速度範囲で西進すれば、スルーバンドに沿って各交差点A1〜A4にて信号待ちせずに、第1道路区間を通行することができる。
しかし、仮に、第1道路区間に含まれるいずれかの道路リンクで渋滞が発生した場合には、例えば図2に仮想線矢印で示すように、信号待ち以外の停止が行われる。
【0035】
このため、交差点A1の上流側の所定位置Pにある車両6は、スルーバンドに沿った速度範囲での走行ができなくなり、第1道路区間において系統制御が行われていても、その区間内のいずれかの交差点A2〜A4において信号待ちで停止することになる。
なお、図2では、第1道路区間の場合を例示したが、上記の事情は、他のサブエリアB,Cの第2又は第3道路区間の場合にも同様に当てはまる。
【0036】
そこで、本実施形態の交通信号制御機1A〜1Cでは、サブエリアA〜Cの流入側に設けた路側通信機3A〜3Cや電光表示板4A〜4Cを用いて、サブエリアA〜Cに流入しようとする車両6に対して、系統制御に実効性のある道路区間(スルーバンドに沿って走行可能な道路区間)についてのみ所定の情報提供を行うが、この点については後述する。
【0037】
〔車載装置の構成〕
図3は、車載装置5の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態の車載装置5は、車載コンピュータ51、GPS受信機52、車速センサ53、ジャイロセンサ54、記憶装置55、ディスプレイ56、スピーカー57、入力デバイス58及び無線通信機59を備えている。
【0038】
車載コンピュータ51は、車両6の経路探索と車内の他の電子機器52〜59の動作制御とを行う電子制御装置である。車載コンピュータ51は、GPS受信機52が定期的に取得するGPS信号により自車の絶対位置を求めるとともに、車速センサ53及びジャイロセンサ54から随時入力される入力信号に基づいてその位置及び方位を補間し、車両6の正確な現在位置及び方位を常に把握している。
GPS受信機52、車速センサ53及びジャイロセンサ54は、車両6の走行位置、速度及び向きを把握するセンサ類である。
【0039】
記憶装置55は、地図データベースを備える。この地図データベースは、車載コンピュータ51に道路地図データを提供するものであり、この道路地図データはリンクデータやノードデータを含み、DVDなどの記録媒体に格納されている。
記憶装置55は、車載コンピュータ51からの指令に応じて記録媒体から必要な道路地図データを読み出して当該コンピュータ51に提供する。記録媒体としては、DVD以外にも、CD−ROMやメモリカード、ハードディスク等の種々の記録媒体を採用できる。
【0040】
ディスプレイ56とスピーカー57は、車載コンピュータ51が生成した各種情報を車両6の搭乗者に提示するための出力装置である。
具体的には、ディスプレイ56は、経路探索の際の入力設定画面、自車周辺の地図画像及び目的地までの経路情報等を表示し、スピーカー57は、自車を目的地に誘導するためのアナウンスを音声出力する。また、これらの出力装置は、ダウンリンク情報に含まれる提供情報をドライバに提示することもできる。
【0041】
入力デバイス58は、車両6のドライバが経路探索に関する各種入力を行うためのものであり、操舵ハンドルに設けられた操作スイッチ、ジョイスティック、或いは、ディスプレイ56に設けたタッチパネル等の各種入力手段の組み合わせよりなる。
なお、ドライバの音声認識によって入力を受け付ける音声認識装置を入力デバイス58とすることもできる。この入力デバイス58にドライバ等の搭乗者が行った入力信号は車載コンピュータ51に送られる。
【0042】
無線通信機59は、ITS無線機(光ビーコンでもよい。)よりなる路側通信機3との間の路車間通信を通じて、車載コンピュータ51が生成したアップリンク情報をその路側通信機3に送信し、交通信号制御機1A〜1Cが所定の提供情報を格納して生成したダウンリンク情報を、路側通信機3から受信する。
【0043】
車載コンピュータ51は、各種の制御プログラムを実装したマイクロコンピュータなどの演算処理装置よりなり、その制御プログラムを実行することにより、ディスプレイ56に地図画像を表示させる機能、出発地から目的地までの経路(中継地がある場合はその位置を含む。)を算出する機能、その経路に従って車両6を目的地まで誘導する機能等、各種のナビゲーション機能を実行可能である。
【0044】
〔交通信号制御機の構成〕
図1に戻り、本実施形態の交通信号制御機1は、制御部101、記憶部102、通信部103及び灯器駆動部104を内部に含んでいる。
なお、図1の例では、サブエリアAの交通信号制御機1Aの内部構成のみが例示されているが、他のサブエリアB,Cの交通信号制御機1B,1Cも同じ内部構成である。
【0045】
制御部101は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成され、内部バスを介して記憶部102、通信部103及び灯器駆動部104と接続されている。制御部101はこれらのハードウェア各部の動作を制御する。
制御部101は、通常、中央装置2が交通感応制御を行った結果の出力である信号制御指令に従って信号灯器の灯色切り替えタイミングを生成する。また、制御部101は、中央装置2からの制御種別情報が端末感応制御を許可している場合には、自装置で行う端末感応制御の結果に従って信号灯器の灯色切り替えタイミングを生成する。
【0046】
灯器駆動部104は、半導体リレー(図示せず)を備え、制御部101が生成した信号切り替えタイミングに基づいて、信号灯器の各信号灯に供給する交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
通信部103は、中央装置2、路側通信機3A及び電光表示板4Aとの間で有線通信を行う通信インタフェースである。
【0047】
通信部103は、信号制御指令や自装置が行う端末感応制御に必要な交通情報(例えば、流入路の渋滞長)を中央装置2から受信し、これらを自装置の制御部101に送る。
通信部103は、各種の車両感知器からの感知情報も受信し、この感知情報については、自装置の制御部101に送るとともに中央装置2にも転送する。
【0048】
記憶部102は、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体から構成されている。記憶部102は、通信部103が受信した各種情報(信号制御指令や感知情報など)を一時的に記憶する記憶領域を有する。
また、記憶部102は、自装置に設定された端末感応制御を実行するためのコンピュータプログラムの他、車両6に交通支援のための所定の情報提供を行うためのコンピュータプログラムなどを有する。
【0049】
制御部101は、上記コンピュータプログラムを記憶部102から読み出して処理することにより、後述の情報提供処理を行って電光表示板4Aへの表示情報と路側通信機3Aに送信させるダウンリンク情報を生成し、それらの情報を、通信部103からそれぞれ電光表示板4Aと路側通信機3Aに送信させる。以下、交通信号制御機1Aの制御部101が行う情報提供処理について説明する。
【0050】
〔車両への情報提供処理〕
図4は、交通信号制御機1Aの制御部101が行う情報提供処理のフローチャートである。
図4に示すように、交通信号制御機1Aの制御部101は、まず、自機1Aで系統制御が行われているか否かを判定し(ステップST1)、行われている場合には、近隣の他のサブエリアB,Cの交通信号制御機1B,1Cから、そのサブエリアB,Cにおける系統制御の制御情報を収集する(ステップST2)。
【0051】
この「制御情報」は、サブエリアBの第2道路区間に含まれる交差点B1〜B4や、サブエリアCの第3道路区間に含まれる交差点C1〜C4の灯色切り替えタイミングを特定できる時間データであり、具体的には、例えば、第2及び第3道路区間の上流交差点B1,C1の青残秒数、オフセット及びサイクル長よりなる。
次に、交通信号制御機1Aの制御部101は、自機のサブエリアAを含むすべてのサブエリアA〜Cの道路区間(第1〜第3道路区間)における混雑状況を表す交通指標を、例えば中央装置2から取得し(ステップST3)、この交通指標に基づいて車両6に情報提供すべき道路区間を選択する。
【0052】
具体的には、制御部101は、第1〜第3道路区間のうち、道路区間中のいずれかの道路リンクが混雑しているために、スルーバンドに沿って所定速度(例えば、45km/時)で走行できないと推定される道路区間を情報提供の対象外とし、スルーバンドに沿って所定速度で走行できると推定される道路区間を情報提供の対象とするようにして、車両6に提供すべき道路区間を選択する(ステップST4)。
上記混雑状況を表す交通指標としては、例えば、第1〜第3道路区間における混雑度(交通量を交通容量で除した値)、渋滞長、平均速度又は旅行時間などがある。
【0053】
例えば、「混雑度」を上記交通指標に用いる場合、制御部101は、混雑度が所定の閾値以上の道路リンクを含む道路区間については対象外として選択せず、すべての道路リンクの混雑度が所定の閾値未満である道路区間については情報提供の対象として選択する。
次に、交通信号制御機1Aの制御部101は、上記ステップST4で選択された、第1〜第3道路区間のうちのいずれかの道路区間の位置情報と制御情報とを含むダウンリンク情報を生成し、生成したダウンリンク情報を、通信部103から路側通信機3Aに送信する(ステップST5)。
【0054】
このため、路側通信機3Aは、交通信号制御機1Aが選択した道路区間の位置情報と制御情報とを含むダウンリンク情報を、サブエリアAの第1道路区間の交差点A1に流入する車両6に送信することになる。
なお、上記道路区間の「位置情報」とは、その道路区間に含まれる交差点の位置を特定できる情報のことであり、交差点位置の座標値でもよいし、道路地図データに対応する交差点位置のノードデータであってもよい。
【0055】
また、交通信号制御機1Aの制御部101は、上記ステップST4で選択された道路区間を含む経路の表示情報を生成し、その表示情報を電光表示板4Aに送信する。
このため、電光表示板4Aは、交通信号制御機1Aが選択した道路区間を含む所定方面への経路を、サブエリアAの第1道路区間の交差点A1に流入する車両6に向けて表示することになる。
【0056】
なお、図4のフローチャートは、第1道路区間の交通信号制御機1Aの制御部101が行う情報提供処理であるが、他の第2及び第3道路区間の交通信号制御機1B,1Cの制御部101も、同様に、図4のフローチャートに示す情報提供処理を行うことができる。
【0057】
〔情報提供例1〕
図5(a)は、路側通信機3Aが送信するダウンリンク情報の内容例を示す表であり、図5(b)は、電光表示板4Aの表示例を示す図である。
図5において、「方面A」は、サブエリアAに向かって走行中の車両6が、サブエリアAを直進してその西側に向かう場合の行き先であり、「方面B」は、その車両6が、サブエリアBの最後の交差点B4を通って北上する場合の行き先であり、「方面C」は、その車両6が、サブエリアCの最後の交差点C4を通って南下する場合の行き先である。
【0058】
また、図5において、経路P1及び経路P2は、サブエリアAに向かって走行中の車両6が、方面Cに向かう場合に採用し得る2種類の経路である。
更に、図5の例では、3つの方面A〜Cのうち、方面Cに向かう経路P1,P2に関する情報を車両6に提供する場合を想定しており、かつ、経路P1に含まれるサブエリアAの第1道路区間にて渋滞が発生しているものとする。
【0059】
図5(a)に示すように、交通信号制御機1Aの路側通信機3Aから車両6に無線送信するダウンリンク情報には、「経路情報」、「推奨経路」、「エコドライブ可否」、「情報提供」及び「系統制御の制御情報」が含まれる。
このうち、「経路情報」には、所定方面への経路のリンクデータや、その経路に含まれる道路区間の位置情報が含まれる。
【0060】
図5の例では、方面Cに向かう一方の経路P1は、サブエリアAの第1道路区間を含むので、この経路P1の経路情報には、第1道路区間に含まれる交差点A1〜A4の位置情報が含まれている。
また、方面Cに向かう他方の経路P2は、サブエリアCの第3道路区間を含むので、この経路P2の経路情報には、第3道路区間に含まれる交差点C1〜C4の位置情報が含まれている。
【0061】
「推奨経路」は、ダウンリンク情報に複数の経路情報を含める場合に、そのうちのどの経路が推奨されるかを示す情報である。なお、推奨経路には、各経路を採用する場合の旅行時間も含まれている。
図5の例では、経路P1に含まれる第1道路区間が渋滞しており、系統制御の実効性がないのに対して、経路P2に含まれる第3道路区間では渋滞がなく、系統制御の実効性があるので、経路P2が推奨経路となっている。
【0062】
「エコドライブ可否」は、ダウンリンク情報に含める経路P1,P2が、エコドライブが可能であるか否かを示している。この場合の「エコライブ」とは、経路P1,P2に含まれる道路区間の交差点を信号待ちせずに通過できるか否かのことである。
図5の例では、経路P1に含まれる第1道路区間が渋滞しており、系統制御の実効性がないので、エコドライブ可否は「NG」(不可)であり、経路P2に含まれる第3道路区間では渋滞がなく、系統制御の実効性があるので、エコドライブ可否が「OK」となっている。
【0063】
なお、「エコドライブ可否」には、ダウンリンク情報に含める経路中の道路区間(図5では、経路P1の第2道路区間)を、信号待ちせずに通行可能となる「推奨速度」が含まれており、図5の例では、推奨速度が「45km/h」となっている。
【0064】
「情報提供」は、ダウンリンク情報に「系統制御の制御情報」を含めているか否かと、含める場合の提供形式を示している。
図5の例では、経路P1に含まれる第1道路区間では系統制御の実効性がなく、その制御情報を提供しないので、提供情報は「なし」となっており、経路P2に含まれる第2道路期間では系統制御の実効性があり、その制御情報を路側通信機3Aから無線で提供するので、提供情報が「無線」となっている。
【0065】
「系統制御の制御情報」には、経路中の道路区間で含まれる交差点の灯色切り替えタイミングを特定できる時間情報として、「上流交差点の青残秒数」、「オフセット」及び「サイクル長」が含まれている。
このうち、「上流交差点の青残秒数」は、ダウンリンク情報に含める道路区間の最も上流側に位置する交差点の現時点での青残秒数のことであり、経路P2の場合は、第3道路区間の交差点C1の現時点での青残秒数を意味する。
【0066】
また、「オフセット」は、系統制御中の道路区間のオフセットの秒数であり、「サイクル長」は、系統制御中の道路区間のサイクル長の秒数である。
図5の例では、経路P1に含まれる第1道路区間では系統制御の実効性がなく、その制御情報を提供しないので、上記時間情報の値が記されておらず、経路P2に含まれるサブエリアCの第3道路区間では、例えば、上流交差点の青残秒数が「16秒」、オフセットが「18秒」、サイクル長が120秒となっている。
【0067】
図5(b)に示すように、交通信号制御機1Aに対応する電光表示板4Aは、車両6が3つの方面A〜Cへ向かう場合の経路を表示可能に構成されており、図5(b)の例では、方面Cに向かう場合の2つの経路P1,P2が表示されている。
この2つの経路P1,P2のうち、経路P1に含まれるサブエリアAの第1道路区間では渋滞が生じていて系統制御の実効性がないので、経路P1については、旅行時間が「50分以上」である表示の他、「渋滞中」の表示が行われる。
【0068】
これに対して、経路P2に含まれるサブエリアCの第3道路区間では、渋滞が生じておらず系統制御の実効性があるので、旅行時間が「50分」であることの表示の他、「エコ走行(45km/h)」と「無線配信」の表示が行われる。
「エコ走行」とは、その経路P2中の第3道路区間において、信号待ちなし走行であるエコドライブが可能であることを示す表示であり、括弧内の「45km/h」は、そのエコドライブを行う場合の推奨速度を示している。
【0069】
また、「無線配信」とは、経路P2に含まれる第3道路区間の系統制御の制御情報(図5(a)の上流交差点の青残秒数、オフセット及びサイクル長)が、無線にて配信中であることを示す表示である。
なお、図5(b)の例では、渋滞中の経路P1については「破線」で示し、通行を推奨する経路P2については「太線」で示すことにより、走行中の車両6のドライバが、渋滞中の経路P1と推奨されている経路P2とを目視で認識し易いようになっている。
【0070】
〔情報提供例2〕
図6(a)は、路側通信機3Aが送信するダウンリンク情報の別の内容例を示す表であり、図6(b)は、電光表示板4Aの別の表示例を示す図である。
図6における、「方面A」、「方面B」及び「方面C」の意味と、経路P1,P2の意味は図5の場合と同様である。また、図6(a)のダウンリンク情報の各項目の意味も、図5の場合と同様である。
【0071】
図5の例では、方面Cに向かう2つの経路P1,P2のうち、経路P1に含まれるサブエリアAの第1道路区間で渋滞が生じている場合を想定したが、図6の例では、経路P1に含まれるサブエリアAの第1道路区間と、経路P2に含まれるサブエリアCの第3道路区間のいずれにも渋滞が生じておらず、両道路区間において系統制御の実効性がある場合を想定している。
【0072】
従って、図6(a)に示すダウンリンク情報では、経路P1と経路P2の双方のエコドライブ可否が「OK」となっており、経路P1,P2の双方の系統制御の制御情報がダウンリンク情報に含まれている。
また、この場合、交通信号制御機1Aの制御部101は、経路P1と経路P2のうちの旅行時間が小さい方の経路P1を、推奨経路に選択している。
【0073】
図6(b)に示すように、経路P1に含まれるサブエリアAの第1道路区間では渋滞が生じておらず系統制御の実効性があるので、経路P1について、旅行時間が「40分以上」である表示の他、「エコ走行(45km/h)」と「無線配信」の表示が行われる。
また、経路P2に含まれるサブエリアCの第3道路区間でも、渋滞が生じておらず系統制御の実効性があるので、旅行時間が「50分」であることの表示の他、「エコ走行(45km/h)」と「無線配信」の表示が行われる。
【0074】
なお、図6(b)の例では、旅行時間が短いために通行を推奨する経路P1を「太線」で示し、旅行時間がより長いために通行を推奨しない経路P2については「細線」で示すことにより、走行中の車両6のドライバが、推奨されている経路P1と推奨されていない経路P2とを目視で認識し易いようになっている。
【0075】
〔ダウンリンク情報を用いたドライブ支援制御〕
ダウンリンク情報(図5(a)又は図6(a))を受信した車両6の車載コンピュータ51は、例えば次のような報知をドライバに行って、ドライブ支援制御を行う。
すなわち、車載コンピュータ51は、ダウンリンク情報に含まれる経路P1,P2の、「推奨経路」と「エコドライブ可否」のデータを読み出し、どの経路P1,P2が推奨されているや、各経路P1,P2の旅行時間、及び、各経路P1,P2において信号待ちなしのエコドライブが可能か否かを、ディスプレイ56やスピーカー57からドライバに報知させる。
【0076】
また、車載コンピュータ51は、ダウンリンク情報の経路P1,P2に、系統制御の制御情報が含まれている場合には、その制御情報を用いて、道路区間での交差点の灯色切り替えタイミングを算出し、車両6が経路P1,P2に含まれる道路区間の交差点を信号待ちせずに通行できるように、ドライバを支援する。
【0077】
例えば、図5(a)の経路P2を例に取ると、車載コンピュータ51は、現時点(ダウンリンク情報の受信時刻)から上流交差点の青残秒数値(=16秒)を加算して、第3道路区間の交差点1Cの青終了時刻を算出する。
また、車載コンピュータ51は、交差点C1の青終了時刻、オフセット値(=18秒)及びサイクル長の値(=120秒)を用いて、第3道路区間に含まれる他の交差点C2〜C4の青終了時刻を算出する。
【0078】
そして、車載コンピュータ51は、車両6の現在位置と交差点C1との位置とを比較し、車両6が第3道路区間の手前に差し掛かった時に、推奨速度(=45km/h)で走行すれば、交差点C1〜C4を信号待ちなしで通行できることを、ディスプレイ56やスピーカー57からドライバに報知させる。
これにより、車両6のドライバは、ディスプレイ56やスピーカー57による案内に従って、推奨速度での走行を維持することにより、第3道路区間の交差点C1〜C4を信号まちせずに通過できるようになる。
【0079】
〔交通情報提供システムの効果〕
以上の通り、本実施形態の交通情報提供システムによれば、交通信号制御機1Aが、互いに代替路となるサブエリアA〜Cの第1〜第3道路区間の混雑状況に基づいて、その第1〜第3道路区間のうちで系統制御の実効性がある道路区間を選択し(図4のステップST4)、路側通信機3Aが、選択された道路区間の位置情報と、選択された道路区間の制御情報とを含むダウンリンク情報を、サブエリアAの第1道路区間に流入する車両6に無線送信する(図4のステップST5)。
【0080】
従って、例えば図5(a)に示すように、代替路となる第1〜第3道路区間のうち、第1道路区間を含む経路P1が渋滞しており、スルーバンド内で走行できない状況であっても、その他の第3道路区間を含む経路P2が混雑していなくて系統制御の実効性がある場合には、第3道路区間の位置情報(交差点C1〜C4の位置)と制御情報とが、路側通信機3Aから車両6に無線送信によって提供される。
【0081】
また、本実施形態の交通情報提供システムによれば、交通信号制御機1Aが、選択された道路区間の通行を推奨する情報(図5(a)の推奨情報)をダウンリンク情報に含め、このダウンリンク情報を取得した車両6の車載コンピュータ51が、推奨されている道路区間をドライバに報知する。
このため、系統制御の実効性がある道路区間を含む経路(図5(b)の経路P2)をドライバが選択する可能性が高まり、系統制御による車両6の走行支援をより確実に達成することができる。
【0082】
更に、本実施形態の交通情報提供システムによれば、交通信号制御機1Aが、選択された道路区間が複数ある場合に、旅行時間が短い方の道路区間を推奨する情報(図6(a)の推奨情報)をダウンリンク情報に含め、このダウンリンク情報を取得した車両6の車載コンピュータ51が、推奨されている道路区間をドライバに報知する。
このため、旅行時間が短い方の道路区間を含む経路(図6(b)の経路P1)を選択する可能性が高まり、情報提供を受ける車両6側の利便性を向上することができる。
【0083】
本実施形態の交通情報提供システムによれば、第1〜第3道路区間を含む方面A〜Cへの経路を車両6に表示可能な電光表示板4Aを備え、交通信号制御機1Aが、1つの所定方面Cにつき表示可能な経路P1,P2が複数ある場合に、選択された道路区間を含む経路P2を、所定方面Cへ向かう車両6が通行すべき推奨経路として電光表示板4Aに表示させるようになっている(図5(b)参照)。
このため、電光表示板4Aの推奨経路の表示を見た車両6のドライバが、系統制御の実効性がある道路区間を含む経路P2を選択する可能性が高まり、系統制御による車両6の走行支援をより確実に達成できるという利点がある。
【0084】
また、本実施形態の交通情報提供システムによれば、交通信号制御機1Aが、選択された道路区間が複数ある場合に、旅行時間が短い方の道路区間を含む経路P1を、所定方面Cへ向かう車両6が通行すべき推奨経路として電光表示板4Aに表示させるようになっている(図6(b)参照)。
このため、電光表示板4Aの推奨経路の表示を見た車両6のドライバが、旅行時間が短い方の道路区間を含む経路P2を選択する可能性が高まり、情報提供を受ける車両6側の利便性を向上することができる。
【0085】
更に、本実施形態の交通情報提供システムによれば、交通信号制御機1Aが、選択された道路区間における制御情報を路側通信機3Aにて配信中である旨の表示を、電光表示板4Aに表示させるようになっている(図5(b)及び図6(b)参照)。
このため、電光表示板4Aの表示を見た車両6のドライバが、無線通信対応の車載装置を搭載すればより詳細な情報が得られることを認識し、無線通信を用いた交通情報提供システムの普及が促進されるという利点もある。
【0086】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上記実施形態ではなく、特許請求の範囲と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、交通信号制御機1A(他の交通信号制御機1B,1Cでもよい。)の制御部101が、本発明の情報提供処理(図4)を実行する場合を例示したが、中央装置2が当該情報提供処理を行うことにしてもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、路側通信機3A〜3Cとして、車両6からのアップリンク情報を無線で受信可能なITS無線機を例示したが、本発明では、車両6に所定の情報を提供できればよいので、路側通信機3A〜3Cは、車両6への無線送信機能のみを有する送信機であってもよい。
【0088】
また、上述の実施形態では、旅行時間の観点から最適な経路を電光表示板4や無線通信により車両6に提示したが、複数の経路で系統制御の実効性を有する場合に、旅行時間以外に、道路形状や環境負荷因子(例えば、CO2濃度やNOx濃度など)の検出センサから取得した計測データに基づき、車両6の燃費や環境負荷に対して有利な経路を推奨するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 交通信号制御機(信号制御装置)
1A サブエリアAの交通信号制御機
1B サブエリアBの交通信号制御機
1C サブエリアCの交通信号制御機
2 中央装置
3 路側通信機(路側送信機)
3A サブエリアAの路側通信機
3B サブエリアBの路側通信機
3C サブエリアCの路側通信機
4 電光表示板
4A サブエリアAの電光表示板
4B サブエリアBの電光表示板
4C サブエリアCの電光表示板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の交差点を含む道路区間を信号待ちせずに通行可能にする系統制御の制御情報を、車両に提供する交通情報提供システムであって、
互いに代替路となる複数の前記道路区間の混雑状況に基づいて、複数の前記道路区間のうちで前記系統制御の実効性がある当該道路区間を選択する信号制御装置と、
選択された前記道路区間の前記制御情報を含むダウンリンク情報を、複数の前記道路区間のうちの少なくとも1つに流入する前記車両に無線送信する路側無線機と、
を備えていることを特徴とする交通情報提供システム。
【請求項2】
前記信号制御装置は、選択された前記道路区間の通行を推奨する情報を、前記ダウンリンク情報に含める請求項1に記載の交通情報提供システム。
【請求項3】
前記信号制御装置は、選択された前記道路区間が複数ある場合に、旅行時間が短い方の前記道路区間を推奨する情報を、前記ダウンリンク情報に含める請求項1又は2に記載の交通情報提供システム。
【請求項4】
前記道路区間を含む所定方面への経路を前記車両に表示可能な電光表示板を更に備え、
前記信号制御装置は、1つの前記所定方面につき表示可能な前記経路が複数ある場合に、選択された前記道路区間を含む前記経路を、前記所定方面へ向かう前記車両が通行すべき推奨経路として前記電光表示板に表示させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の交通情報提供システム。
【請求項5】
前記信号制御装置は、選択された前記道路区間が複数ある場合に、旅行時間が短い方の前記道路区間を含む前記経路を、前記所定方面へ向かう前記車両が通行すべき推奨経路として前記電光表示板に表示させる請求項4に記載の交通情報提供システム。
【請求項6】
前記信号制御装置は、選択された前記道路区間における前記制御情報を前記路側無線機にて配信中である旨の表示を、前記電光表示板に表示させる請求項4又は5に記載の交通情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25402(P2013−25402A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157109(P2011−157109)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】