説明

交通情報案内装置及び交通情報案内プログラム

【課題】提供される交通情報に含まれる対象交差点の位置が汎用的な座標データで表されている場合にも当該対象交差点の道路ネットワークデータ上での位置を特定可能であって、更に、対象交差点が複数ノード交差点である場合にも、適切に対象交差点ノードを決定して交通情報案内を行うことができるような交通情報案内装置等を提供する。
【解決手段】交通情報に含まれる対象交差点の座標から所定距離内に位置する一又は二以上のノードを候補ノードNBとして抽出する手段と、一又は二以上の候補ノードNBの中から一つの対象交差点ノードNAを決定する手段とを備え、一つの交差点に対してノードが複数設定された複数ノード交差点に関し、一つの複数ノード交差点に対応する複数の候補ノードNBが抽出された場合には、自車両3が走行中のリンクK3から道なりに進行した場合に最初に到達する候補ノードNBを対象交差点ノードNAに決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現実の交差点における交通情報案内に用いられる交通情報を自車両の外部に設置された交通情報提供装置から受信して交通情報案内を行う交通情報案内装置及び交通情報案内プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置等の車載端末装置において、例えば道路交通情報通信システム等を構成する交通情報提供装置から渋滞や事故等の交通情報を受信し、当該車載端末装置が備える地図データと組み合わせて交通情報案内を行う技術が既に知られている。このような交通情報案内を行うためには、受信した交通情報と車載端末装置が備える地図データとを整合させ、受信した交通情報が対象とする地図上の位置を特定することが必要である。そこで、これまでは、車載端末装置が備える地図データと交通情報提供装置から提供する交通情報とで共通に使用する道路ネットワークデータのリンク又はノードに対応する位置情報識別子を予め規定しておき、当該位置情報識別子を用いて位置を特定した交通情報を交通情報提供装置から車載端末装置へ提供する構成をとっていた(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2002/046698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、車載端末装置が備える地図データと交通情報提供装置から提供する交通情報とで共通に規定された位置情報識別子を用いるため、当該位置情報識別子の更新や変更を容易に行うことができず、道路の新設や変更等に迅速に対応することが困難であるという問題があった。
【0005】
これに対して、交通情報提供装置から提供する交通情報が用いる位置情報として汎用的な座標データを用いることも考えられる。交通情報に汎用的な座標データを用いる場合、車載端末装置が備える道路ネットワークデータ上の座標との間にある程度のずれが生じることは避けられない。そこで、例えば、受信した交通情報が対象とする交差点の座標データ(本願ではこの座標データを「受信座標データ」と呼ぶ。)と一致する座標上に道路ネットワークデータのノードが存在しない場合には、当該受信座標データが示す座標に近接する位置にあるノードを、交通情報が対象とする交差点に対応する対象交差点ノードとして推定する処理を行うことになる。
【0006】
ところが、車載端末装置が備える道路ネットワークデータ上には、一つの交差点に対して複数のノードが設定された交差点(本願ではこのような交差点を「複数ノード交差点」と呼ぶ。)が存在する。このような複数ノード交差点は、一つの道路に対して進行方向毎に2つのリンクが設定された比較的大規模な道路の交差点であることが多い。このような複数ノード交差点では、一つの交差点内に比較的接近した位置関係で複数のノードが存在するため、対象交差点ノードを特定することができず、受信した交通情報に基づく交通情報案内を行うことができない場合がある。しかしながら、上記のとおり、複数ノード交差点は、比較的大規模な交差点であることが多く、本来交通情報案内を行う必要性が高い場所である。従って、このような複数ノード交差点において交通情報案内を行わない構成では、交通情報提供装置から提供される交通情報の利用価値が大きく減殺される。
【0007】
そこで、交通情報提供装置から提供される交通情報に含まれる対象交差点の位置が汎用的な座標データで表されている場合にも当該対象交差点の道路ネットワークデータ上での位置を特定可能であって、更に、対象交差点が複数ノード交差点である場合にも、適切に対象交差点ノードを決定して交通情報案内を行うことができるような交通情報案内装置及び交通情報案内プログラムの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る交通情報案内装置の特徴構成は、現実の交差点に対応するノードと2つのノード間を接続するリンクとにより現実の道路を表す道路ネットワークデータを取得する道路データ取得手段と、前記道路ネットワークデータ上の自車両の位置を特定する自車位置特定手段と、現実の交差点における交通情報案内に用いられる交通情報を、自車両の外部に設置された交通情報提供装置から受信する交通情報受信手段と、前記ノードの座標データと、前記交通情報に含まれる対象交差点の座標を表す受信座標データとを対比し、前記受信座標データが示す座標から所定距離内に位置する一又は二以上の前記ノードを前記対象交差点についての候補ノードとして抽出する候補抽出手段と、一又は二以上の前記候補ノードの中から前記対象交差点に対応する一つの対象交差点ノードを決定する対象ノード決定手段と、を備え、前記道路ネットワークデータ内において現実の一つの交差点に対して前記ノードが複数設定された複数ノード交差点に関し、前記対象ノード決定手段は、一つの前記複数ノード交差点に対応する複数の前記候補ノードが抽出された場合には、自車両が走行中のリンクから道なりに進行した場合に最初に到達する前記候補ノードを前記対象交差点ノードに決定する点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、交通情報に含まれる対象交差点についての受信座標データとノードの座標データとを対比して受信座標データが示す座標から所定距離内に位置する一又は二以上のノードを対象交差点についての候補ノードとして抽出し、当該抽出された一又は二以上の候補ノードの中から一つの対象交差点ノードを決定することになる。従って、交通情報に含まれる対象交差点の位置が汎用的な座標データで表されているために道路ネットワークデータ内のノード座標のとの間にずれがある場合であっても、当該交通情報に含まれる対象交差点の道路ネットワークデータ上での位置を適切に特定することができる。
【0010】
また、交通情報に基づいて比較的大規模な交差点を対象として交通情報案内を行う際には、当該交差点にから退出するときを基準とするよりも当該交差点に進入するときを基準として案内を行う方が望ましいと考えられる。この特徴構成によれば、一つの複数ノード交差点に対応する複数の候補ノードが抽出された場合には、自車両が走行中のリンクから道なりに進行した場合に最初に到達する候補ノードを対象交差点ノードに決定する。従って、対象交差点が複数ノード交差点である場合にも一つの対象交差点ノードを適切に決定することができる。またこの際、当該複数ノード交差点への進入位置に近接するノードを対象交差点ノードとすることで、当該交差点に進入するときを基準として適切な交通情報案内を行うことが可能となる。
【0011】
ここで、前記交通情報が、交通案内を行う対象となる案内交差点の座標データに加えて当該案内交差点に至るまでに通過する途中交差点の座標データも含む場合に、前記候補抽出手段及び前記対象ノード決定手段は、前記案内交差点及び前記途中交差点のそれぞれを前記対象交差点として処理を実行すると好適である。
【0012】
この構成によれば、交通情報が、交通案内を行う対象となる案内交差点に加えて途中交差点の座標データも含んでいる場合に、当該途中交差点についても道路ネットワークデータ上での位置を適切に特定することができる。従って、案内交差点の道路ネットワークデータ上での位置の特定、及び案内交差点における交通情報案内をより適切に行うことが可能となる。
【0013】
また、前記対象ノード決定手段は、前記候補ノードが一つだけ抽出された場合には当該候補ノードを前記対象交差点ノードに決定し、互いに異なる交差点に対応する複数の前記候補ノードが抽出された場合には前記対象交差点ノードの決定を中止すると好適である。
【0014】
この構成によれば、交通情報に含まれる対象交差点が複数ノード交差点でない場合や、一つの交差点に対してノードが一つ設定された通常交差点と複数ノード交差点とが近接する場合等のように、一つの複数ノード交差点に対応する複数の候補ノードが抽出される場合以外の状況においても、それぞれの状況に応じて対象交差点ノードを適切に決定し、或いは交通情報が対象とする交差点以外のノードを対象交差点ノードとして決定することを抑制することができる。
【0015】
以上の各構成を備えた本発明に係る交通情報案内装置の技術的特徴は、交通情報案内方法や交通情報案内プログラムにも適用可能であり、そのため、本発明は、そのような方法やプログラムも権利の対象とすることができる。
【0016】
その場合における、交通情報案内プログラムの特徴構成は、現実の交差点に対応するノードと2つのノード間を接続するリンクとにより現実の道路を表す道路ネットワークデータを取得する道路データ取得ステップと、前記道路ネットワークデータ上の自車両の位置を特定する自車位置特定ステップと、現実の交差点における交通案内に用いられる情報である交通情報を、自車両の外部に設置された交通情報提供装置から受信する交通情報受信ステップと、前記ノードの座標データと、前記交通情報に含まれる対象交差点の座標を表す受信座標データとを対比し、前記受信座標データが示す座標から所定距離内に位置する一又は二以上の前記ノードを前記対象交差点についての候補ノードとして抽出する候補抽出ステップと、前記道路ネットワークデータ内において現実の一つの交差点に対して前記ノードが複数設定された複数ノード交差点に関し、一つの前記複数ノード交差点に対応する複数の前記候補ノードが抽出された場合に、自車両が走行中のリンクから道なりに進行した場合に最初に到達する前記候補ノードを前記対象交差点に対応する対象交差点ノードに決定する対象ノード決定ステップと、をコンピュータに実行させる点にある。
【0017】
当然ながら、この交通情報案内プログラムも上述した交通情報案内装置に係る作用効果を得ることができ、更に、その好適な構成の例として挙げたいくつかの付加的技術を組み込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る交通情報案内装置としての車載装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る地図データベースに記憶されている地図データの構成の例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車載装置が交通情報を受信して交通情報案内を行う状況の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る交通情報に含まれるデータ項目の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る交通情報に含まれる対象交差点の受信座標データと道路ネットワークデータとの関係の具体例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る交通情報に含まれる対象交差点の受信座標データと道路ネットワークデータとの関係の具体例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る交通情報案内処理の全体の手順を示すフローチャートである。
【図8】図7のステップ#05の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態では、図1に示すように、本発明に係る交通情報案内装置2をナビゲーション装置としての機能を有する車載装置1として構成した場合を例として説明する。この車載装置1は、交通情報提供装置6から交通情報30(図4参照)を受信し、当該交通情報30に基づいて交通情報案内を行う交通情報案内装置2としての機能を有する。この車載装置1は、交通情報案内を行うに際して、受信した交通情報30に含まれる対象交差点5の座標と、地図データベース18に備えられた道路ネットワークデータR中のノードN(図2参照)の座標とをマッチングさせることにより、交通情報30に含まれる対象交差点5に対応するノードNを決定する。以下、本実施形態に係る車載装置1の構成について詳細に説明する。
【0020】
1.車載装置の各部の構成
図1に示す車載装置1の各機能部は、互いに共通の或いはそれぞれ独立のCPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により構成されている。そして、車載装置1の各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。ここで、各機能部がソフトウェア(プログラム)により構成される場合には、当該ソフトウェアは、前記演算処理装置が参照可能なRAMやROM等の記憶手段に記憶される。地図データベース18は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、DVD−ROM、CD−ROM等の記録媒体(記憶手段)をハードウェア構成として備えている。
【0021】
この車載装置1は、ナビゲーション装置として機能するために、GPS(Global Positioning System)受信機11、方位センサ12、距離センサ13、自車位置特定部14、ナビゲーション用演算部15、及び地図データベース18を備えている。また、車載装置1は、表示・入力装置16及び音声出力装置17を備えている。
【0022】
自車位置特定部14は、GPS受信機11、方位センサ12、及び距離センサ13からの出力に基づいて自車位置を特定する演算を行う。この際、自車位置特定部14は、地図データベース18に記憶された道路ネットワークデータRに基づいて、公知のマップマッチングを行うことにより、自車位置を道路ネットワークデータRにより表される道路(リンクK又はノードN)上に合わせる処理(自車位置マッチング処理)も行う。このようにして、自車位置特定部14は、道路ネットワークデータR上の自車両3(図3参照)の位置(座標)及び進行方位を特定する。本実施形態では、この自車位置特定部14が本発明における自車位置特定手段に相当する。
【0023】
ナビゲーション用演算部15は、自車位置表示、出発地から目的地までの経路探索、目的地までの経路案内、目的地検索等のナビゲーション機能を実行するために所定のアプリケーションプログラムに従って動作する演算処理部である。このナビゲーション用演算部15は、例えば、地図画像、経路案内用画面、施設等の検索用画面等のようなナビゲーション機能に必要な各種の画像を表示・入力装置16に表示させ、或いはそれらのナビゲーション機能に必要な案内音声を音声出力装置17により出力させる。また、ナビゲーション用演算部15は、表示・入力装置16からの入力に従って所定の機能の設定や実行等を行う。
【0024】
表示・入力装置16は、表示装置と入力装置が一体となった装置である。表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ、電界放出ディスプレイ、CRT(cathode-ray tube)ディスプレイ等の公知の各種の表示装置を用いることができる。また、入力装置としては、表示装置の表示画面上に配置されたタッチパネルや、表示画面の横に配置された操作スイッチ等がある。音声出力装置17は、スピーカやアンプ等を有して構成される。
【0025】
地図データベース18は、所定の区画毎に分けられた地図データが記憶されたデータベースである。図2は、地図データベース18に記憶されている地図データの構成の例を示す図である。この図に示すように、地図データは、複数のノードNと2つのノードN間を接続するリンクKとにより現実の道路を表す道路ネットワークデータRを含んで構成されている。ここで、各ノードNは、現実の交差点に対応しており、各リンクKは各交差点間を結ぶ現実の道路に対応している。各ノードNは、緯度及び経度で表現された地図上の座標を表すノード座標データを有している。各リンクKは、リンク属性情報として、道路長、道路種別、道路幅、レーン数、リンク形状を表現するための形状補間点等のデータを有している。ここで、道路種別は、例えば、高速道路、国道、県道、一般道、細街路、導入路等のように、道路を複数の種別に区分した際の道路種別の情報である。また、各リンクKは、両端のノードNに関するノード属性情報も有している。このノード属性情報には、例えば、交差点種別、通行規制、信号の有無等のデータが含まれる。ここで、交差点種別は、交差点が通常交差点か複数ノード交差点かの種別を表す情報である。なお、図2においては、一つの区画の道路ネットワークデータRのみを図示し、その他の地図データの構成は省略して示している。地図データベース18に記憶された道路ネットワークデータR等の地図データは、各機能部からの要求に応じてデータ取得部19により取得され、当該各機能部へ送られる。本実施形態では、このデータ取得部19が本発明における道路データ取得手段に相当する。
【0026】
また、車載装置1は、交通情報案内装置2として機能するために、交通情報受信部20、交通情報案内処理部21、及び座標マッチング処理部22を備えている。そして、車載装置1は、自車両3の外部に設置された交通情報提供装置6から提供される交通情報30に基づいて交通情報案内を行う。交通情報提供装置6は、例えば、道路交通情報通信システム(VICS:Vehicle Information and Communication System、登録商標)等を構成する電波ビーコン、光ビーコン、FM多重放送等の発信装置を有して構成されている。交通情報提供装置6は、これらの発信装置を用いて現実の交差点での交通情報案内に用いられる交通情報30を各車両に提供する。
【0027】
図3は、このような交通情報提供装置6から車載装置1が交通情報30(図4参照)を受信して交通情報案内を行う状況の一例を示す図である。図3に示す例では、交通情報提供装置6は、案内交差点5a(対象交差点5)に設けられた信号機7に関する情報、ここでは赤信号に関する情報を交通情報30として提供している。車載装置1は、このような赤信号に関する交通情報30に基づいて、交通情報案内画像27を生成して表示・入力装置16に表示すると共に、交通情報案内音声を音声出力装置17から出力する。この例では、具体的には、車載装置1は、交通情報提供装置6から交通情報30を受信した位置付近において、赤信号報知画面27aを生成して表示すると共に、例えば「この先、赤信号です」等の赤信号報知音声を出力する。また、車載装置1は、交通情報30を受信した位置から更に進んで信号機7に対して所定距離内に近づいた位置において車速が所定速度以上で且つアクセル開度が所定値以上であった場合には、赤信号警告画面27bを生成して表示すると共に、例えば「赤信号に注意!」等の赤信号警告音声を出力する。ここで、車速は距離センサ13の出力等に基づいて検出することができ、アクセル開度は図示しないアクセル開度センサの出力等に基づいて検出することができる。なお、車載装置1が、信号機7に対して所定距離内に近づいた位置において車速が所定速度以上であること及びアクセル開度が所定値以上であることの少なくとも一方の条件を満たす場合に、赤信号警告画面27bを生成して表示すると共に赤信号警告音声を出力する構成としても好適である。更に、車載装置1が交通情報案内として、交通情報案内画像27の表示及び交通情報案内音声の出力の一方のみを行う構成としても好適である。また、このような例の他、例えば、案内交差点5aに設定された一時停止の案内、案内交差点5a内に存在する他車両や歩行者等の存在を知らせる案内等も、交通情報30に基づいて行われる。
【0028】
図4は、交通情報30に含まれるデータ項目の一例を示す図である。この図に示すように、交通情報30は、案内情報31、案内交差点情報32、途中交差点情報33、及び送信地点情報34を含んでいる。案内情報31は、当該交通情報30により案内する内容に関する情報であり、ここでは、案内種別データと内容データを含んでいる。案内種別データは、例えば、信号機案内、一時停止案内、他車両案内、歩行者案内等の案内対象の種別を示すデータである。内容データは、例えば、信号機の状態(赤信号の状態や赤信号の残り時間等)、一時停止線や一時停止標識の存在、他車両や歩行者の存在等の案内対象の具体的内容や状態等を示すデータである。交通情報30が複数の案内対象に関する情報を含む場合には、案内情報31は、複数の案内対象のそれぞれについて設定される。
【0029】
案内交差点情報32は、当該交通情報30による案内を行う対象となる案内交差点5a(図3参照)を特定するための情報であり、ここでは、案内交差点5aの座標データである案内交差点座標データ35を含んでいる。途中交差点情報33は、案内交差点5aに至るまでに通過する途中交差点5b(図5参照)を特定するための情報であり、ここでは、途中交差点5bの座標データである途中交差点座標データ36を含んでいる。なお、途中交差点5bは、車両が交通情報30を受信してから案内交差点5aに到達するまでに通過することになる一又は二以上の交差点である。途中交差点5bが複数存在する場合には、途中交差点情報33は、複数の途中交差点5bのそれぞれについて設定される。本実施形態では、案内交差点5a及び途中交差点5bが対象交差点5に相当する。従って、案内交差点座標データ35及び途中交差点座標データ36が、本発明における対象交差点5の座標を表す受信座標データCに相当する。送信地点情報34は、交通情報提供装置6による交通情報30の送信地点を特定するための情報であり、ここでは、当該送信地点6aの座標データである送信地点座標データ37を含んでいる。図3に示す例では、交通情報提供装置6の発信装置が設置されている地点の座標を送信地点6aの座標としている。
【0030】
交通情報受信部20は、交通情報提供装置6から送信される信号を受信する受信装置を備えている。車載装置1は、この交通情報受信部20により、現実の交差点(対象交差点5)における交通情報案内に用いられる交通情報30を受信して取得する。本実施形態では、この交通情報受信部20が本発明における交通情報受信手段に相当する。
【0031】
交通情報案内処理部21は、交通情報30に基づく交通情報案内を行う処理部である。交通情報案内処理部21は、例えば図3を用いて既に説明したように、交通情報案内画像27を生成して表示・入力装置16に表示すると共に、交通情報案内音声を音声出力装置17から出力することにより交通情報案内を行う。このような交通情報案内の内容としては、例えば、図3に示したような赤信号の報知や警告等といった赤信号の案内の他、案内交差点5aに設定された一時停止の案内や、案内交差点5a内に存在する他車両や歩行者等の存在を知らせる案内等も行う。この際、交通情報案内処理部21は、後述する座標マッチング処理部22により決定された案内交差点5aに対応する対象交差点ノードNAの位置を基準として交通情報案内を行う。具体的には、交通情報案内処理部21は、自車位置特定部14により特定された道路ネットワークデータR上の自車位置と、交通情報30に含まれる案内交差点5aに対応する対象交差点ノードNAの座標との距離に基づき、案内内容に応じた適切なタイミングで交通情報案内を行う。
【0032】
座標マッチング処理部22は、交通情報30に含まれる対象交差点5の座標を表す受信座標データCと、道路ネットワークデータRに含まれるノードNの座標データとの座標マッチングを行い、対象交差点5に対応する一つの対象交差点ノードNAを決定するための処理部である。このため、座標マッチング処理部22は、案内対象経路決定部23、候補抽出部24、交差点種別判定部25、及び対象ノード決定部26を備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0033】
案内対象経路決定部23は、交通情報30を受信した際に、当該交通情報30が対象とする案内交差点5aに至る経路である案内対象経路29(図5参照)を決定する。ここで、交通情報提供装置6は、自らが提供する交通情報30が対象とする案内交差点5aに対して車両進行方向手前側であって、当該交通情報提供装置6の設置位置から道路を道なりに進行したところに案内交差点5aが位置するように設置される。そこで、案内対象経路決定部23は、道路ネットワークデータRに基づいて、自車両3が走行中のリンクK上にある交通情報30を受信した地点(送信地点6a)から進行方向に向かう道なりの経路を案内対象経路29として決定する。交通情報30に基づく交通情報案内は、基本的には、この案内対象経路29上において実行される。例えば図5に示すように、案内対象経路決定部23は、まず、交通情報30に含まれる送信地点座標データ37に基づいて、送信地点6aに対応する道路ネットワークデータR上の位置を受信地点28として決定する。具体的には、案内対象経路決定部23は、自車両3が走行中のリンクK1上における送信地点座標データ37に示される座標(Xc,Yc)から最も近い位置を受信地点28として決定する。ここでは、送信地点座標データ37に示される座標(Xc,Yc)からリンクK1に向けて延ばした垂線とリンクK1との交点を受信地点28とする。なお、自車両3が走行中のリンクKは、自車位置特定部14により道路ネットワークデータR上にマッチング(自車位置マッチング処理)されて特定された自車位置に基づいて決定される。そして、案内対象経路決定部23は、決定した受信地点28から自車両3の進行方向に向かう道なりの経路を案内対象経路29として決定する。図5に示す例では、自車両3の進行方向に接続されたリンクK1、K2、・・・が案内対象経路29として決定される。この際、「道なり」であるか否かは、例えば、各リンクKの道路種別や道路幅等のリンク属性情報に基づいて決定し、これらに基づいて決定できない場合には、直進方向或いは直進に近い方向を優先して決定すると好適である。
【0034】
候補抽出部24は、道路ネットワークデータRに含まれるノードNの座標データと、交通情報30に含まれる対象交差点5(案内交差点5a又は途中交差点5b)の座標を表す受信座標データCとを対比し、対象交差点5についての候補ノードNBを抽出する。この際、候補抽出部24は、例えば図5や図6に示すように、受信座標データCが示す座標から所定の判定距離L内に位置する一又は二以上のノードNを対象交差点5についての候補ノードNBとして抽出する。よって、この候補抽出部24が本発明における候補抽出手段に相当する。ここで、判定距離Lは、受信座標データCとノードNの座標データとのずれの最大値よりもやや大きい程度の距離(例えば、10〜20〔m〕程度)に設定すると好適である。交通情報30が、案内交差点情報32(案内交差点座標データ35)に加えて途中交差点情報33(途中交差点座標データ36)も含む場合には、候補抽出部24は、案内交差点5a及び途中交差点5bのそれぞれを対象交差点5として候補ノードNBを抽出する処理を実行する。本実施形態では、処理負荷の軽減のため、候補抽出部24は、案内対象経路決定部23により決定された案内対象経路29上に存在する各ノードNの座標データと受信座標データCとを対比する。なお、候補抽出部24による候補ノードNBの抽出処理の具体例は、後で図5及び図6を用いて詳細に説明する。
【0035】
交差点種別判定部25は、候補抽出部24により抽出された候補ノードNBが属する交差点の種別を判定する。具体的には、交差点種別判定部25は、通常交差点と複数ノード交差点との種別を判定する。上記の通り、本実施形態では、通常交差点か複数ノード交差点かの種別を表す交差点種別情報が、各ノードNのノード属性情報として道路ネットワークデータRの一部を構成している。従って、交差点種別判定部25は、このような道路ネットワークデータRに基づいて各候補ノードNBの交差点種別を判定する。ここで、通常交差点は、例えば図5に示すように、道路ネットワークデータR内において現実の一つの交差点に対してノードNが一つだけ設定された交差点である。一方、複数ノード交差点は、例えば図6に示すように、道路ネットワークデータR内において現実の一つの交差点に対してノードNが複数設定された交差点である。図6に示す複数ノード交差点は、各道路について進行方向毎に2つのリンクKが設定された2つの道路の交差点であり、一つの交差点に対して4つのノードNが設定されている。ここで、各道路に設定された互いに平行な2本のリンクKは、進行方向毎の車線の幅方向中央付近に設定されている。従って、複数ノード交差点内の4つのノードNは、各道路の道路幅の約半分程度の間隔で、比較的接近した位置関係となるように配置されている。また、複数ノード交差点内には、4つのノードN間を互いに接続する複数、ここでは6本の交差点内リンクKCも設定されている。この交差点内リンクKCは、当該複数ノード交差点内において進行可能な経路を表すために設けられている。
【0036】
対象ノード決定部26は、候補抽出部24により抽出された一又は二以上の候補ノードNBの中から対象交差点5(案内交差点5a又は途中交差点5b)に対応する一つの対象交差点ノードNAを決定する。よって、この対象ノード決定部26が本発明における対象ノード決定手段に相当する。交通情報30が、案内交差点情報32(案内交差点座標データ35)に加えて途中交差点情報33(途中交差点座標データ36)も含む場合には、対象ノード決定部26は、案内交差点5a及び途中交差点5bのそれぞれを対象交差点5として対象交差点ノードNAを決定する処理を実行する。
【0037】
対象ノード決定部26は、例えば図5に示すように、候補抽出部24によって候補ノードNBが一つだけ抽出された場合には当該候補ノードNBを対象交差点ノードNAに決定する。また、対象ノード決定部26は、例えば図6に示すように、候補抽出部24によって一つの複数ノード交差点に対応する複数の候補ノードNBが抽出された場合には、自車両3が走行中のリンクKから道なりに進行した場合に最初に到達する候補ノードNBを対象交差点ノードNAに決定する。ここで、自車両3が走行中のリンクKから道なりに進行する経路は、案内対象経路決定部23により決定された案内対象経路29と一致する。従って、対象ノード決定部26は、このような案内対象経路29に沿って自車両3が進行方向に走行した際に最初に到達する複数ノード交差点内の候補ノードNBを、対象交差点ノードNAとして決定する。一方、対象ノード決定部26は、候補抽出部24によって互いに異なる交差点に対応する複数の候補ノードNBが抽出された場合には対象交差点ノードNAの決定を中止する。また、対象ノード決定部26は、候補抽出部24によって候補ノードNBが抽出されなかった場合にも対象交差点ノードNAの決定を中止する。対象交差点ノードNAの決定が中止された場合には、交通情報案内処理部21は、当該対象交差点5についての交通情報案内は行わない。なお、対象ノード決定部26による対象交差点ノードNAの決定処理の具体例は、後で図5及び図6を用いて詳細に説明する。
【0038】
2.対象交差点ノードの決定処理の具体例
次に、候補抽出部24による候補ノードNBの抽出処理及び対象ノード決定部26による対象交差点ノードNAの決定処理の具体例について図5及び図6を用いて説明する。図5及び図6はいずれも、交通情報30に含まれる対象交差点5の受信座標データCと道路ネットワークデータRとの関係の具体例を示す図である。そして、図5は、案内交差点5aの他に1つの途中交差点5bを対象交差点5として含む交通情報30が受信された場合であって、案内交差点5a及び途中交差点5bの双方が通常交差点である場合の例を示している。この図5に示す例は、図4に示される交通情報30に対応している。一方、図6は、案内交差点5aが複数ノード交差点である場合の例を示している。なお、図6は、案内交差点5aの付近のみを表し、それよりも受信地点28側の部分は省略している。これらの図において、黒い丸印「●」はそれぞれノードNの座標を表し、白抜き四角形の印「□」は交通情報30により取得される座標データ35、36、37に示される座標を表している。これらの位置のずれが、各ノードNの座標データと受信座標データCとのずれを表している。
【0039】
図5に示す例では、交通情報30は対象交差点5として案内交差点5a及び1つの途中交差点5bを含んでいるので、候補抽出部24は、まず、途中交差点5bについての候補ノードNBを抽出する。この際、候補抽出部24は、案内対象経路29(リンクK1、K2、・・・)に沿って進行方向にノードNを探索する。そして、候補抽出部24は、探索された一又は二以上のノードNの座標データと途中交差点座標データ36とを対比し、当該途中交差点座標データ36が示す座標(Xb,Yb)から所定の判定距離L内に位置する一又は二以上のノードNを当該途中交差点5bについての候補ノードNBとして抽出する。本例では、座標(X2,Y2)に位置するノードN2のみが候補ノードNBとして抽出される。このように、候補抽出部24によって候補ノードNBとして1つのノードN2だけが抽出された場合には、対象ノード決定部26は、当該候補ノードNB(ノードN2)を当該途中交差点5bに対応する対象交差点ノードNAに決定する。
【0040】
対象交差点5として複数の途中交差点5bが含まれている場合には、引き続き他の途中交差点5bについても同様に候補ノードNBの抽出及び対象ノード決定部26の決定を行う。本例では、途中交差点5bは一つのみであるので、次に、候補抽出部24は、案内交差点5aについての候補ノードNBを抽出する。この際、候補抽出部24は、案内対象経路29に沿って進行方向にノードNを探索する。そして、候補抽出部24は、探索された一又は二以上のノードNの座標データと案内交差点座標データ35とを対比し、当該案内交差点座標データ35が示す座標(Xa,Ya)から所定の判定距離L内に位置する一又は二以上のノードNを当該案内交差点5aについての候補ノードNBとして抽出する。本例では、座標(X1,Y1)に位置するノードN1のみが候補ノードNBとして抽出される。このように、候補抽出部24によって候補ノードNBとして1つのノードN1だけが抽出された場合には、対象ノード決定部26は、当該候補ノードNB(ノードN1)を当該案内交差点5aに対応する対象交差点ノードNAに決定する。
【0041】
図6に示す例では、交通情報30が対象とする案内交差点5aが複数ノード交差点に該当している。この場合にも、候補抽出部24は、案内交差点5aについての候補ノードNBを抽出するべく、案内対象経路29に沿って進行方向にノードNを探索する。この際、一つの交差点に複数のノードNが設定された複数ノード交差点では、当該一つの交差点を構成する全てのノードNが探索対象となる。そして、候補抽出部24は、探索された一又は二以上のノードNの座標データと案内交差点座標データ35とを対比し、当該案内交差点座標データ35が示す座標(Xd,Yd)から所定の判定距離L内に位置する一又は二以上のノードNを当該途中交差点5bについての候補ノードNBとして抽出する。本例では、座標(X3,Y3)に位置するノードN3、座標(X4,Y4)に位置するノードN4、座標(X5,Y5)に位置するノードN5、座標(X6,Y6)に位置するノードN6の4つが候補ノードNBとして抽出される。このように、候補抽出部24によって一つの複数ノード交差点に対応する複数の候補ノードNB(ノードN3〜N6)が抽出された場合には、対象ノード決定部26は、自車両3が走行中のリンクK3から道なりに進行した場合に最初に到達する候補ノードNBであるノードN3を対象交差点ノードNAに決定する。
【0042】
これにより、複数ノード交差点を構成する複数のノードN3〜N6の中で、自車両3の進行方向に関して、当該複数ノード交差点からの退出位置に近接するノードN4、N5、N6を除外し、当該複数ノード交差点への進入位置に近接するノードN3を対象交差点ノードNAとすることができる。従って、上述した交通情報案内処理部21によって赤信号の案内や一時停止の案内等を行う際にも、当該赤信号や一時停止により停止すべき停止線があると推測される交差点への進入位置を基準として案内を行うことができるので、より適切なタイミングでの交通情報案内を行うことが可能となる。なお、本例では、案内交差点5aが複数ノード交差点である場合について説明したが、途中交差点5bが複数ノード交差点である場合も同様にして候補ノードNBを抽出し、対象交差点ノードNAを決定する。但し、途中交差点5bが複数ノード交差点である場合には、案内対象経路29に沿って進行方向に次の途中交差点5b又は案内交差点5aに対応する候補ノードNBを探索する際に、当該複数ノード交差点を構成する交差点内リンクKCの端部のノードNを除外して探索を行う。
【0043】
3.交通情報案内処理の手順
次に、本実施形態に係る車載装置1において実行される交通情報案内処理の手順(交通情報案内方法)について説明する。図7は、本実施形態に係る交通情報案内処理の全体の手順を示すフローチャートであり、図8は、図7のステップ#05の座標マッチング処理の手順(座標マッチング方法)を示すフローチャートである。以下に説明する各処理の手順は、上記の車載装置1の各機能部を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方の組み合わせにより実行される。車載装置1の各機能部がプログラムにより構成される場合には、車載装置1が有する演算処理装置は、上記の各機能部により構成される交通情報案内プログラムの各ステップを実行するコンピュータとして動作する。以下、図7及び図8に示すフローチャートに従って説明する。
【0044】
まず、交通情報案内処理の全体の手順について説明する。図7に示すように、本実施形態に係る交通情報案内処理では、まず、データ取得部19が、地図データベース18から道路ネットワークデータRを取得する(ステップ#01)。また、自車位置特定部14が、自車両3の位置を特定する(ステップ#02)。この際、自車位置特定部14は、道路ネットワークデータRを用いて、自車位置を道路(リンクK又はノードN)上に合わせる処理である自車位置マッチング処理を行う。ここで、自車位置マッチング処理ができない状態とは、自車位置特定部14により特定される自車位置の精度が低い等の理由により自車両3が走行中のリンクK(道路)を特定できない状態である。従って、この自車位置マッチング処理に失敗した場合(ステップ#03:No)には、後述する座標マッチング処理(ステップ#05)を行うことができないため、処理はそのまま終了する。
【0045】
一方、自車位置マッチング処理が成功した場合(ステップ#03:Yes)には、次に、交通情報受信部20が交通情報30を受信したか否かを判定する。交通情報30を受信していない場合には(ステップ#04:No)、処理はそのまま終了する。そして、交通情報30を受信した場合には(ステップ#04:Yes)、座標マッチング処理部22が座標マッチング処理を行う(ステップ#05)。この座標マッチング処理については、後に図8のフローチャートに基づいて詳細に説明する。座標マッチング処理(ステップ#05)により、受信した交通情報30が対象とする案内交差点5aに対応する対象交差点ノードNAが決定されなかった場合には(ステップ#06:No)、交通情報案内処理部21による交通情報案内を行うことができないため、処理はそのまま終了する。
【0046】
一方、案内交差点5aに対応する対象交差点ノードNAが決定された場合には(ステップ#06:Yes)、次に、当該案内交差点5aに対応する対象交差点ノードNAの位置を基準として、交通情報案内処理部21により交通情報案内を行う。具体的には、交通情報案内処理部21は、ステップ#02により特定された道路ネットワークデータR上の自車位置と案内交差点5aに対応する対象交差点ノードNAの座標との距離に基づき、自車両3から案内交差点5aまでの距離が所定の案内距離内となったときに(ステップ#07:Yes)、交通情報案内を実行する(ステップ#09)。ここで、案内距離は、案内内容に応じて適切に設定すると好適である。自車両3から案内交差点5aまでの距離が所定の案内距離内となっていないときには(ステップ#07:No)、自車両3が進路変更したか否かを判定する(ステップ#08)。これは、自車両3が交通情報30を受信した後、案内交差点5aに到達するまでに進路変更を行って案内対象経路29から外れた場合にまで、案内交差点5aを対象とする交通情報案内を行うことは適切ではないからである。従って、自車両3が進路変更しなければ(ステップ#08:No)、処理はステップ#07へ戻り、自車両3が進路変更した場合には(ステップ#08:Yes)、処理は終了する。以上で、交通情報案内処理の全体の手順を終了する。
【0047】
次に、ステップ#05の座標マッチング処理の手順について説明する。図8に示すように、本実施形態に係る座標マッチング処理では、まず、案内対象経路決定部23が、交通情報30から送信地点座標データ37(図4参照)を取得する(ステップ#11)。次に、案内対象経路決定部23は、ステップ#11で取得した送信地点座標データ37に示される座標(Xc,Yc)に対応する道路ネットワークデータR上の位置を受信地点28として決定する(ステップ#12)。そして、案内対象経路決定部23は、ステップ#12で決定した受信地点28から自車両3の進行方向に向かう道なりの経路を案内対象経路29として決定する(ステップ#13)。次に、候補抽出部24が、交通情報30に含まれる対象交差点5(案内交差点5a又は途中交差点5b)についての受信座標データCを取得する(ステップ#14)。そして、候補抽出部24は、案内対象経路29上に存在する各ノードNの座標データと受信座標データCとを対比し、対象交差点5についての候補ノードNBを抽出する(ステップ#15)。
【0048】
ステップ#15において対象交差点5について抽出された候補ノードNBが一つであった場合には(ステップ#16:No)、対象ノード決定部26は、当該一つの候補ノードNBを対象交差点ノードNAに決定する(ステップ#17)。一方、ステップ#15において対象交差点5について抽出された候補ノードNBが複数あった場合には(ステップ#16:Yes)、交差点種別判定部25により、抽出された各候補ノードNBの交差点種別が通常交差点か複数ノード交差点かを判定する(ステップ#18)。そして、全ての候補ノードNBが一つの複数ノード交差点に対応しているか否かを判定する(ステップ#19)。複数の候補ノードNBの全てが一つの複数ノード交差点に対応している場合には(ステップ#19:Yes)、対象ノード決定部26は、自車両3が走行中のリンクKから道なりに進行した場合に最初に到達する候補ノードNBを対象交差点ノードNAに決定する(ステップ#20)。
【0049】
一方、複数の候補ノードNBの中に互いに異なる交差点に対応する候補ノードNBがある場合には(ステップ#19:No)、対象ノード決定部26は、対象交差点ノードNAの決定を中止する(ステップ#21)。ここで、対象交差点5が案内交差点5aであった場合には、交通情報30による案内対象となる案内交差点5aに対応する対象交差点ノードNAが決定されないことになるため(ステップ#06:No)、上記のように、当該交通情報30に基づく交通情報案内処理部21による交通情報案内は行われない。その後、交通情報30に含まれる全ての対象交差点5(案内交差点5a又は途中交差点5b)についてステップ#14〜#21の処理が終了したか否かを判定し(ステップ#22)、全ての対象交差点5について終了していない場合には(ステップ#22:No)、処理はステップ#14へ戻る。これにより、交通情報30に含まれる残りの対象交差点5についても対象交差点ノードNAを決定するための処理が行われる。なお、先に対象交差点ノードNAが決定された対象交差点5(途中交差点5b)が複数ノード交差点の場合であって次の途中交差点5b又は案内交差点5aに対応する候補ノードNBを抽出する際には(ステップ#15)、当該複数ノード交差点を構成する交差点内リンクKCの端部のノードNを除外して抽出を行う。そして、交通情報30に含まれる全ての対象交差点5について処理が終了した場合には(ステップ#22:Yes)、座標マッチング処理の手順を終了する。
【0050】
4.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、交通情報30が、案内交差点情報32に加えて途中交差点情報33を含んでいる場合に、候補抽出部24及び対象ノード決定部26が、当該交通情報30に含まれる案内交差点5a及び途中交差点5bの全てを対象交差点5として処理を行う構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、交通情報30が案内交差点情報32に加えて途中交差点情報33を含んでいる場合であっても、当該案内交差点情報32に係る案内交差点5aのみを対象交差点5として候補抽出部24及び対象ノード決定部26が処理を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0051】
(2)上記の実施形態では、候補抽出部24によって互いに異なる交差点に対応する複数の候補ノードNBが抽出された場合に、対象ノード決定部26が対象交差点ノードNAの決定を中止する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、対象交差点ノードNAの決定を中止せず、例えば、受信座標データCに示される座標との距離が近い方の候補ノードNBを対象交差点ノードNAとして決定する等のように、別の方法によって対象交差点ノードNAを決定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0052】
(3)上記の実施形態では、判定距離Lを、受信座標データCとノードNの座標データとのずれの最大値よりもやや大きい程度の距離に設定すると説明した。このような判定距離Lは、全ての交差点について共通の値を設定してもよいし、各交差点に個別の値を設定してもよい。判定距離Lを全ての交差点について共通の値として設定する場合には、「受信座標データCとノードNの座標データとのずれの最大値」を全ての交差点を考慮して想定される最も大きい値とし、それより大きい値を判定距離Lとすると好適である。また、判定距離Lを各交差点に個別の値として設定する場合には、受信座標データCとノードNの座標データとのずれの大きさに影響を及ぼす、各交差点の特性を表す指標を用いて判定距離Lを決定する構成とすると好適である。このような指標として、例えば、各交差点で交差する各道路の道路幅がある。道路幅は、交差点の大きさを表す指標であり、受信座標データCとノードNの座標データとのずれの大きさとの間に、ある程度の相関関係を有することが分かっている。そこで、例えば、判定距離Lを、道路幅wを変数とする式f(w)を用いて決定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この式としては、例えば、f(w)=aw+b(a及びbは係数)とすることができる。ここで、道路幅wとしては、自車両3が通行中の道路、及び当該道路に交差する道路の一方又は双方の幅を用いることができる。ここで、双方の幅を用いる場合には、双方の幅の加算値や平均値が好適に用いられる。
【0053】
(4)上記の実施形態では、本発明に係る交通情報案内装置2をナビゲーション装置としての機能を有する車載装置1として構成した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。本発明に係る交通情報案内装置2を、例えば、交通情報案内を専用に行う案内装置として構成し、或いは燃料消費率や冷却水温等の各種車両情報を表示する情報表示装置の機能を有する車載装置等として構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、現実の交差点における交通情報案内に用いられる交通情報を自車両の外部に設置された交通情報提供装置から受信して交通情報案内を行う交通情報案内装置及び交通情報案内プログラムとして好適に実施可能である。
【符号の説明】
【0055】
1:車載装置
2:交通情報案内装置
3:自車両
5:対象交差点
5a:案内交差点
5b:途中交差点
6:交通情報提供装置
7:信号機
14:自車位置特定部(自車位置特定手段)
19:データ取得部(道路データ取得手段)
20:交通情報受信部(交通情報受信手段)
24:候補抽出部(候補抽出手段)
26:対象ノード決定部(対象ノード決定手段)
30:交通情報
R:道路ネットワークデータ
N:ノード
K:リンク
NB:候補ノード
NA:対象交差点ノード
KC:交差点内リンク
L:判定距離(所定距離)
C:受信座標データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実の交差点に対応するノードと2つのノード間を接続するリンクとにより現実の道路を表す道路ネットワークデータを取得する道路データ取得手段と、
前記道路ネットワークデータ上の自車両の位置を特定する自車位置特定手段と、
現実の交差点における交通情報案内に用いられる交通情報を、自車両の外部に設置された交通情報提供装置から受信する交通情報受信手段と、
前記ノードの座標データと、前記交通情報に含まれる対象交差点の座標を表す受信座標データとを対比し、前記受信座標データが示す座標から所定距離内に位置する一又は二以上の前記ノードを前記対象交差点についての候補ノードとして抽出する候補抽出手段と、
一又は二以上の前記候補ノードの中から前記対象交差点に対応する一つの対象交差点ノードを決定する対象ノード決定手段と、を備え、
前記道路ネットワークデータ内において現実の一つの交差点に対して前記ノードが複数設定された複数ノード交差点に関し、前記対象ノード決定手段は、一つの前記複数ノード交差点に対応する複数の前記候補ノードが抽出された場合には、自車両が走行中のリンクから道なりに進行した場合に最初に到達する前記候補ノードを前記対象交差点ノードに決定する交通情報案内装置。
【請求項2】
前記交通情報が、交通案内を行う対象となる案内交差点の座標データに加えて当該案内交差点に至るまでに通過する途中交差点の座標データも含む場合に、前記候補抽出手段及び前記対象ノード決定手段は、前記案内交差点及び前記途中交差点のそれぞれを前記対象交差点として処理を実行する請求項1に記載の交通情報案内装置。
【請求項3】
前記対象ノード決定手段は、前記候補ノードが一つだけ抽出された場合には当該候補ノードを前記対象交差点ノードに決定し、互いに異なる交差点に対応する複数の前記候補ノードが抽出された場合には前記対象交差点ノードの決定を中止する請求項1又は2に記載の交通情報案内装置。
【請求項4】
現実の交差点に対応するノードと2つのノード間を接続するリンクとにより現実の道路を表す道路ネットワークデータを取得する道路データ取得ステップと、
前記道路ネットワークデータ上の自車両の位置を特定する自車位置特定ステップと、
現実の交差点における交通案内に用いられる情報である交通情報を、自車両の外部に設置された交通情報提供装置から受信する交通情報受信ステップと、
前記ノードの座標データと、前記交通情報に含まれる対象交差点の座標を表す受信座標データとを対比し、前記受信座標データが示す座標から所定距離内に位置する一又は二以上の前記ノードを前記対象交差点についての候補ノードとして抽出する候補抽出ステップと、
前記道路ネットワークデータ内において現実の一つの交差点に対して前記ノードが複数設定された複数ノード交差点に関し、一つの前記複数ノード交差点に対応する複数の前記候補ノードが抽出された場合に、自車両が走行中のリンクから道なりに進行した場合に最初に到達する前記候補ノードを前記対象交差点に対応する対象交差点ノードに決定する対象ノード決定ステップと、をコンピュータに実行させる交通情報案内プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−39696(P2011−39696A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184999(P2009−184999)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】