説明

交通情報生成装置、コンピュータプログラム、及び交通情報の生成方法

【課題】プローブ車両から得た情報を利用して交通量を算出する。
【解決手段】プローブカーシステムのサーバ装置は、プローブ車両3の目的地までの経路を示す経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻を示す時刻情報を、複数のプローブ車両について収集する収集部21を備えている。収集した時刻情報に基づいて、リンク毎の交通量が算出される。プローブ車両3において目的地が設定されていない場合、過去の走行軌跡情報に基づいて仮想の目的地が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通量や渋滞情報などの交通情報を生成するための装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、渋滞情報などの交通情報をVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)によって車両に配信することが行われている。
また、特許文献1には、センター装置が、プローブ車両が走行したリンクの旅行時間を取得することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−101504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、渋滞情報などの交通情報の生成をVICSだけに頼るのではなく、プローブ車両から得た情報を使用して、渋滞予測を行うシステムを構築するという着想を得た。
【0004】
ここで、渋滞の予測は、交通量の増減から行うことが可能である。このため、渋滞の予測には、交通量の把握が必要である。
従来、交通量は、路上に設置された車両感知器によって計測されているが、交通量はVICS情報としては一般に提供されていないため、車両感知器によって得た交通量を取得できないシステムでは、交通量を正確に把握することができない。
【0005】
また、VICSからは、リンク旅行時間情報が提供されることがあるが、リンク旅行時間から交通量を正確に推定することは困難である。つまり、渋滞が起こっていない程度の交通量である自由流領域では、交通量が比較的少ないときも比較的多いときも、VICSでは、リンク旅行時間としては同じ時間となる。
したがって、VICSから提供されるリンク旅行時間情報では、正確に交通量を推定することは困難である。
【0006】
交通量が正確に把握できないと、例えば、突発事故が起きた場合に、渋滞が発生するか否かの予測が困難である。つまり、交通量が非常に少ない場合には、突発事故が起きても、渋滞が発生する可能性は低いが、自由流領域に相当する交通量であっても比較的多い交通量の場合には、突発事故が起きると直ちに渋滞が発生する可能性が高い。
【0007】
そこで、本発明は、プローブ車両から得た情報を利用して交通量を算出可能な交通情報生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プローブ車両の目的地までの経路を示す経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は前記各リンクから退出する時刻を示す時刻情報を、複数のプローブ車両について収集する収集手段と、前記収集手段によって収集した前記時刻情報に基づいて、リンク毎の交通量を算出する交通量算出手段と、を備えていることを特徴とする交通情報生成装置である(請求項1)。
【0009】
上記本発明によれば、各プローブ車両について収集した各リンクへの進入時刻又は退出時刻に基づいて、リンク毎の交通量を算出することができる。
なお、「進入する時刻」又は「退出する時刻」は、将来の時刻(進入又は退出すると予測される時刻)であってもよいし、過去の時刻(実際に進入又は退出した時刻)であってもよい。
さらに、リンクへ進入する時刻、又はリンクから退出する時刻は、それらをプローブ情報として、プローブ車両から直接収集してもよいし、プローブ車両からは複数時点の時刻と位置の情報などをプローブ情報としてプローブ車両から取得し、そのプローブ情報からリンクへ進入する時刻、又はリンクから退出する時刻を算出することで間接的に収集してもよい。
また、前記目的地は、運転者によって設定された目的地(実目的地)であってもよいし、装置側で予測した目的地(仮想目的地)であってもよい。
【0010】
前記目的地として仮想目的地を求める場合、前記プローブ車両の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された走行軌跡情報に基づいて、前記プローブ車両の1又は複数の仮想目的地を選択する目的地選択手段と、選択された仮想目的地までの経路を求め、その経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は前記各リンクから退出する時刻を示す時刻情報を生成する生成手段と、を備えるのが好ましい(請求項2)。この場合、過去の走行軌跡情報に基づいて、仮想目的地を選択することができる。
【0011】
前記生成手段は、各リンクへ前記プローブ車両が進入する時刻又は退出する時刻を示す時刻情報を、各リンクへ進入する確率を示す確率情報とともに生成し、前記収集手段は、前記時刻情報とともに前記確率情報を、複数のプローブ車両について収集するものであり、前記交通量算出手段は、前記収集手段によって収集した前記時刻情報及び前記確率情報に基づいて、リンク毎の交通量を算出するのが好ましい(請求項3)。この場合、各リンクへ進入確率情報に基づいて、より適切にリンク毎の交通量を算出することができる。
【0012】
前記目的地選択手段は、前記記憶手段に記憶されている走行軌跡情報のうち、前記プローブ車両の搭乗者と同一の搭乗者についての走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択するのが好ましい(請求項4)。この場合、走行軌跡情報に複数人の情報が混在していても、同一搭乗者の走行軌跡情報だけから、適切に仮想目的地を選択することができる。
【0013】
前記目的地選択手段は、前記記憶手段に記憶されている走行軌跡情報のうち、走行時における月、日、曜日、時間、特殊日、又は、天候等の走行時状況が類似するものに基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択するのが好ましい(請求項5)。この場合、走行時状況が共通する走行軌跡情報に基づいて、適切に仮想目的地を選択することができる。なお、走行時状況として、月、日、曜日、時間、特殊日、又は、天候のいずれか一つを用いれば足りるが、複数を組み合わせても良い。
【0014】
前記目的地選択手段は、前記記憶手段に記憶されている走行軌跡情報のうち、前記プローブ車両と同一の種類の車両についての走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択するのが好ましい(請求項6)。この場合、走行軌跡情報に、複数種類の車両の情報が混在していても、同一の種類の車両の走行軌跡情報だけから、適切に仮想目的地を選択することができる。
【0015】
前記交通量算出手段によって算出された交通量に基づいて、各リンクの旅行時間を算出する旅行時間算出手段を更に備えるのが好ましい(請求項7)。
【0016】
他の観点からみた本発明は、コンピュータを、プローブ車両の目的地までの経路を示す経路リンク列を構成する各リンクへ前記プローブ車両が進入する時刻又は前記各リンクから退出する時刻を示す時刻情報を、複数のプローブ車両について収集する収集手段、及び前記収集手段によって収集した前記時刻情報に基づいて、リンク毎の交通量を算出する交通量算出手段、として機能させるためのコンピュータプログラムである(請求項8)。
【0017】
さらに他の観点からみた本発明は、プローブ車両の目的地までの経路を示す経路リンク列を構成する各リンクへ前記プローブ車両が進入する時刻又は前記各リンクから退出する時刻を示す時刻情報を、複数のプローブ車両について収集するステップと、収集した前記時刻情報に基づいて、リンク毎の交通量を算出するステップと、を含む交通情報の生成方法である(請求項9)。
【0018】
さらに他の観点からみた本発明は、プローブ車両の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択する目的地選択手段と、選択された仮想目的地までの経路を求め、その経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は退出する時刻を示す時刻情報を、各リンクへ進入する確率を示す確率情報とともに生成する生成手段と、を備えていることを特徴とする交通情報生成装置である(請求項10)。
【0019】
上記本発明によれば、各リンクへの進入時刻又は退出時刻を示す時刻情報に、各リンクへの進入確率が付加された交通情報を生成することができる。
【0020】
さらに他の観点からみた本発明は、コンピュータを、プローブ車両の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択する目的地選択手段、及び選択された仮想目的地までの経路を求め、その経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は退出する時刻を示す時刻情報を、各リンクへ進入する確率を示す確率情報とともに生成する生成手段、として機能させるためのコンピュータプログラムである(請求項11)。
【0021】
さらに他の観点からみた本発明は、プローブ車両の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択するステップと、選択択された仮想目的地までの経路を求め、その経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は退出する時刻を示す時刻情報を、各リンクへ進入する確率を示す確率情報とともに生成するステップと、を含むことを特徴とする交通情報の生成方法である(請求項12)。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プローブ車両について収集した各リンクへの進入時刻又は退出時刻に基づいて、リンク毎の交通量を算出することができる。
また、他の本発明によれば、各リンクへの進入時刻又は退出時刻を示す時刻情報に、各リンクへの進入確率が付加された交通情報を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の交通情報生成装置を有するプローブカーシステムの全体構成を示す概略構成図であり、図2は、同システムの機能ブロック図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態のプローブカーシステム1は、第1の交通情報生成装置であるサーバ装置2と、複数のプローブ車両3にそれぞれ搭載された第2の交通情報生成装置としての情報端末装置8とから構成されている。
なお、本明細書において、「車両」とは、自動車、原動機付き自転車、軽車両及びトロリーバス等のことをいう。
【0024】
前記情報端末装置8は、前記サーバ装置2との通信が可能であり、車両の搭乗者に対して目的地までの経路を案内するいわゆるナビゲーション装置として構成されている。
【0025】
プローブカーシステム1は、予め入会登録された会員(ユーザ)の車両3自体をセンサー(プローブ車両)として、各車両3からサーバ装置2が情報収集し、メンバー間で相互に情報提供し合って運用することにより、サーバ装置2が各会員に対して有用な交通情報を提供するようにしたものである。
従って、本システム1によれば、通常のVICS情報とともに、このVICS情報に含まれていないより詳細かつ動的な交通情報を、各会員の車両3に提供することができる。
【0026】
本システム1のサーバ装置2は、専用の通信回線を介して交通情報センタ5に接続されており、必要に応じてVICS情報を交通情報センタ5から入手している。また、サーバ装置2は、インターネット網6を通じて無線基地局7と双方向で通信可能である。
各プローブ車両3の情報端末装置8は、無線通信を行うための無線機8aを有しており、この無線機8aを介して、無線基地局7と双方向で通信可能である。
無線基地局7は上記インターネット網6に接続されているため、各車両3の情報端末装置8は、ほぼリアルタイムでサーバ装置2に対して情報(プローブ情報、交通情報)を送受信可能となっている。
【0027】
前記情報端末装置8は、車両3から取り外して車外へ持ち運べるポータブル情報端末装置として構成されている。情報端末装置8は、車両3に固定的に搭載された車載装置4に接続され、車載装置4との間で通信可能が可能である。
【0028】
各車両3の車載装置4は、GPS(Global Positioning System )受信機4aと、交通情報センタ5からVICS情報を受信するためのVICS受信機4bとを備え、これらの受信機4a,4bで受信した情報の処理などを行う車載コンピュータ4cを有している。
なお、車載コンピュータ4cには、車両の種類(自家用車又は営業車の区別、大型車又は小型車の区別など)を示す情報として車両ID(車両を個々に特定する情報ないし車両の種類を特定する情報)が記録されている。
【0029】
情報端末装置8は、前記無線機8aのほか、処理コンピュータ8bを備えており、この処理コンピュータ8bによってナビゲーション装置としての情報処理が行われる。また、情報端末装置8は、道路地図データベース8cと、車両3の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報を登録した走行軌跡データベース8dとを備えている。
【0030】
なお、情報端末装置8用の入力デバイスや出力ディスプレイは、情報端末装置8自体に備わっていてもよいし、車両3側に備えても良い。
情報端末装置8の出力ディスプレイの画面には、道路地図とともに、GPS受信機で検出した現在地を表示できるようになっている。また、出力ディスプレイの画面には、渋滞情報などの道路交通情報も表示される。
また、情報端末装置4に対しては、入力デバイスを介して、目的地を設定することができる。
【0031】
〔サーバ装置の内部構成〕
図2に示すように、サーバ装置2は、ワークステーション等よりなる処理コンピュータ11と、この処理コンピュータ12に接続された通信インターフェースよりなる第1及び第2通信部12,13と、各種データベース14〜16とから構成されている。
第1通信部12は、専用回線で交通情報センタ5に接続されている。また、第2通信部13は、インターネット網6を介して前記無線基地局7に接続され、この無線基地局7を介して、情報端末装置8との間で情報(プローブ情報、交通情報)の送受信を行う。
【0032】
各データベース14〜16のうち、会員データベース14には、当該システム1に参加する登録会員の識別情報が保存されている。処理コンピュータ11は、会員データベース14に記録されている登録会員の車両3から情報(プローブ情報)を取得し、VICS情報とは別に、交通量情報、旅行時間情報、渋滞情報などの交通情報を独自に生成する。
なお、車両3から取得する情報は、例えば、リンク番号、当該リンクへの進入時刻、当該リンクからの退出時刻、当該リンクの旅行時間(リンクを通過するのに要した時間)などがある。
また、車両3から取得する情報は、リンクへの進入時刻やリンクからの退出時刻を算出するために必要な情報(複数時点における時刻と車両位置の情報)であってもよい。この場合、サーバ装置2は、複数時点における時刻、車両位置の情報、および地図データベース16に基づいて、車両3が走行したリンクのリンク番号、当該リンクの進入時刻、当該リンクからの退出時刻、当該リンクの旅行時間(退出時刻−進入時刻)を算出する。
交通情報データベース15には、第1通信部12が受信した交通情報センタ5からのVICS情報が保存される。このVICS情報は、処理コンピュータ11がセンタ5からのVICS情報を抽出するごとに更新され、ほぼ最新の情報が保持される。
また、交通情報データベース15には、VICS情報とは別に独自に生成した交通情報も保存される。
【0033】
地図データベース16には道路地図データが記録されており、この道路地図データには交差点データとリンクデータとが含まれている。
交差点データは、交差点IDと交差点位置とを対応付けたデータである。また、リンクデータは、特定リンクのリンクIDに対して、特定リンクの始点・終点・補間点の位置、特定リンクの始点に接続するリンクID、特定リンクの終点に接続するリンクID、及び、特定リンクのリンクコストを対応付けたデータよりなる。
【0034】
リンクコストは、例えば、特定リンクとその終点に接続するリンクの組み合わせの数だけ用意されており、特定リンクの始点に進入してから当該特定リンクの終点を退出し、次に接続するリンクの始点に進入するまでに要する時間として設定されている。
すなわち、リンクコストには、特定リンクの始点から終点までを走行するのに要するコスト(時間)と、その特定リンクの終点から次のリンクの始点までを走行するのに要するコスト(時間)、つまり、交差点通過に要するコストが含まれている。
【0035】
[情報端末装置の処理コンピュータの機能]
情報端末装置8の処理コンピュータ8bは、HDDやメモリ等よりなる記憶装置と、この記憶装置から各種のコンピュータプログラムを読み出して実行する演算装置とを含んでいる。なお、前記記憶装置には、地図データベース8cや走行軌跡データベース8dが構築されている。
【0036】
前記コンピュータプログラムのうちの一つは、目的地までの経路における各リンクへの進入予定時刻を予測する処理を行うものである。図3に示すように、このプログラムによって実行される機能として、実目的地設定部81、仮想目的地設定部82、経路探索部83,84、及び旅行時間算出部85,86としての機能がある。
なお、処理コンピュータ8bは、車両がリンクを実際に通過する度に、リンク番号、当該リンクへの進入時刻、当該リンクからの退出時刻、当該リンクの旅行時間(退出時刻−進入時刻)を算出し、これらの情報をプローブ情報としてサーバ装置2へ送信する機能も有する。
【0037】
実目的地設定部81は、運転者(ユーザ)が意図する目的地(実目的地)を設定するためのものであり、ナビゲーション装置としての情報端末装置8は、出発地(現在地)から、この実目的地までの経路を探索し、当該経路の案内を行う。
仮想目的地選択部82は、前記実目的地設定部によって実目的地が設定されていない場合に、過去の走行履歴(過去の走行軌跡情報)に基づいて推定される1又は複数の仮の目的地(仮想目的地)を選択するものである。また、仮想目的地選択部82は、過去の走行軌跡情報に基づいて、仮想目的地が、運転者が実際に意図する目的地である確率(目的地確率)も算出する。
【0038】
第1の経路探索部83は、GPSによって把握される出発地(現在地)から実目的地までの経路を探索し、決定された経路を示す経路リンク列(経路を複数のリンクの列で表したもの)を生成する。第1経路探索部84によって決定された経路は、ナビゲーション情報として、情報端末装置8の出力デバイスの画面上に表示される。
【0039】
第2の経路探索部84は、実目的地が設定されていない場合(運転者がナビゲーション機能を利用していない場合)に、GPSによって把握される出発地(現在地)から仮想目的地までの経路を探索する。第2経路探索部84は、目的地確率に基づき、決定された経路を示す経路リンク列を構成する各リンクへ、車両3が実際に進入する確率(リンク進入確率)を、リンク毎に算出する。
【0040】
第1の旅行時間算出部85は、第1経路探索部83によって決定された経路リンク列を構成するリンク毎の旅行時間を求め、現在時刻と各リンクの旅行時間とから、各リンクへの進入予定時刻(各リンクの始点となる交差点位置への進入予定時刻)を求める。
各リンクの旅行時間は、サーバ装置2から各リンクの旅行時間が提供されている場合には、その旅行時間を用いる。また、サーバ装置2から旅行時間が提供されていないが、交通情報センタ5からVICS情報を受信している場合には、VICS情報に含まれるリンク旅行時間を用いても良い。外部からリンク旅行時間を取得できない場合には、地図データベース8cに含まれるリンクコスト情報をリンク旅行時間とすればよい。
上記のようにして求めた各リンクへの進入予定時刻情報は、サーバ装置2へ送信される。
【0041】
第2の旅行時間算出部86は、第2経路探索部85によって決定された1又は複数の経路リンク列を構成するリンク毎の旅行時間を求め、現在時刻と各リンクの旅行時間とから、各リンクへの進入予定時刻を求める。第2旅行時間算出部86の機能は、第1旅行時間算出部85の機能とほぼ同様であるが、第2旅行時間算出部86の場合、各リンクへの進入予定時刻を示す情報を、各リンクへの進入確率を示す情報とともに生成する。
上記のようにして求めた各リンクへの進入予定時刻情報及び進入確率情報は、サーバ装置2へ送信される。
なお、第1旅行時間算出部85が生成する進入予定時刻情報は、進入確率=100%の進入確率情報が付加されたものであってもよい。
【0042】
[サーバ装置の処理コンピュータの機能]
サーバ装置2の処理コンピュータ11は、HDDやメモリ等よりなる記憶装置と、この記憶装置から各種のコンピュータプログラムを読み出して実行する演算装置とを含んでいる。
上記各コンピュータプログラムのうちの1つは、各車両3から収集したリンク進入予定時刻情報及びリンク進入確率情報を収集して、各リンクの将来の各時点における交通量を算出し、将来の渋滞を予測する処理を行うものである。図4に示すように、このプログラムによって実行される機能として、時刻情報/確率情報収集部21、各リンクの交通量算出(交通量予測部)部22、旅行時間算出(渋滞予測)部23としての機能がある。
【0043】
時刻情報/確率情報収集部21は、各車両3が送信したリンク進入時刻情報と、リンク進入確率情報を取得し、交通情報データベース15に蓄積する。なお、リンク進入時刻情報及びリンク進入確率情報は、個々のリンクを特定するためのリンクIDとともに車両3から送信されるため、リンク毎に前記時刻情報及び確率情報を蓄積することができる。
【0044】
交通量算出部22は、将来の各単位時間t内の、各リンクの車両数(交通量)を算出するためのものである。リンクの交通量は、ある単位時間t内において、当該リンクに進入した車両数を積算することによって得られる。なお、単位時間tは、例えば、10分である。
具体的には、10:00〜10:10の間(単位時間=10分)の特定リンクの交通量を求める場合、当該リンクへの進入時刻が10:00〜10:10となっている車両の台数を積算することで車両数が得られる。
【0045】
また、交通量算出部22では、リンク進入時刻情報が、リンク進入確率情報付きである場合には、車両数に進入確率を掛けた上で、車両数の積算を行う。つまり、あるリンクへの進入確率が0.7(70%)の車両3が1台と、同リンクへの進入確率が0.5(50%)の車両3が1台あった場合、そのリンクの車両数(交通量)は、1.2台(=1台×0.7+1台×0.5)となる。
さらに、交通量算出部22では、上記の積算によって得られた車両数に、搭載率の逆数をかけて、交通量を算出することができる。全ての車両に情報端末装置8が搭載されていれば(搭載率100%)、情報端末装置8から送信されたリンク進入予定時刻に基づいて車両数を積算するだけで、交通量を算出することができる。しかし、一部の車両にしか情報端末装置8が搭載されていない場合は、単純に車両数を積算しただけでは、交通量を算出することができない(全ての車両の情報が積算数に反映されていないため)。そこで、搭載率が100%でない場合には、積算した車両数に搭載率の逆数をかけることにより、より正確な交通量を算出することができる。
例えば、搭載率が10%で、あるリンクの積算した車両数が2.2台であった場合、交通量は、積算台数×搭載率の逆数=2.2台×(1/10%)=2.2台×10=22台となる。
【0046】
旅行時間算出部23では、将来の各時刻における各リンクの交通量に基づき、各時刻における各リンクでの旅行時間を算出する。旅行時間は、交通量が少なければ、短くなるように算出される。例えば、交通量から旅行時間を算出するには、QV曲線(Q:交通量、V:速度)に基づいて、交通量に対応する速度を算出し、リンクの長さをその速度で割って旅行時間を算出することができる。
また、交通量が所定の許容量を超えた場合には、渋滞が発生すると判定され、旅行時間も長く算出される。
さらに、QV曲線から交通量に対応する速度を算出し、その速度に応じて、渋滞情報を算出してもよい。具体的には、速度が0km/h以上10km/h未満であれば「渋滞」、10km/h以上20km/h未満であれば「混雑」、20km/h以上であれば「空き」という渋滞情報を生成することができる。
旅行時間算出部23によってされた渋滞情報や旅行時間情報は、各車両3に対して送信される。
【0047】
したがって、車両3(の情報端末装置8)は、現時点での渋滞情報や旅行時間情報だけでなく、将来の複数の時点での、渋滞情報や旅行時間情報を取得することができる。
この結果、将来発生する渋滞を回避した経路設定をするなど、より適切なナビゲーションが可能となる。
【0048】
[仮想目的地の選択処理]
さて、図5は、車両3の情報処理端末装置8において、仮想目的地を選択するための処理を示している(仮想目的地選択部の処理)。
ナビゲーション機能が利用されずに、車両3が走行している場合、実目的地の設定がない。そこで、情報処理端末装置8は、図4の仮想目的地選択処理を行って、1又は複数の仮想目的地を選択する。
【0049】
この処理では、過去の走行パターンから、現在の目的地を予測して、仮想目的地とする。より具体的には、走行軌跡データベース8dに蓄積されている過去の走行軌跡情報の中から、現在の走行状況と同一又は類似するものを抽出し、仮想の目的地として予測する。
【0050】
ここで、走行軌跡情報には、図6に示すように、出発地の情報d1、目的地の情報d2、出発地から目的地までの経路(経路リンク列)を示す情報d3などの走行軌跡本体情報が含まれている。
また、走行軌跡情報には、前記走行軌跡本体情報のほか、走行年を示す情報d11、走行月を示す情報d12、走行日を示す情報d13、走行日の曜日を示す情報(祝日であるか否かの情報を含む)d14、走行日が該当する特殊日(ゴールデンウィーク、年末年始、お盆、三連休など)を示す情報、走行時の天候を示す情報d16、出発時刻を示す情報d17、到着時刻を示す情報d18などの走行時状況情報が含まれている。
【0051】
これらの年、月、日、曜日、特殊日、天候、時刻等は、ユーザの走行パターンを規律するパラメータである。つまり、人の行動パターンには、一定の法則がみられることが多く、例えば、「毎月特定の日にはA店舗へ行くことが多い」、「毎週特定の曜日には、B会社へ行くことが多い」、「平日の夕方には会社から自宅へ戻ることが多い」、「三連休のときにはC店舗へ行くことが多い」、「雨のときにはD店舗へ行くことが多い」といった一定の行動パターンが存在することが多い。
したがって、現在の状況(年月日、時刻、天候など)と過去の走行時の状況とを照らし合わせることで、走行時状況が一致する過去の目的地から、現在の目的地を推測することが可能である。
【0052】
また、走行軌跡情報には、走行時の搭乗者(運転者)を示す情報d21、及び車両の種類を示す情報d22が含まれている。前記走行時状況情報は、車両をとりまく環境に関する情報であったのに対し、これらの情報d21,d22は、車両側の状況を示す情報である。
【0053】
搭乗者(運転者)を示す情報d21は、搭乗者(運転者)に応じて過去の走行パターンを区別するために用いられる。
つまり、同一の営業車両を複数の営業社員で共用する場合や、同一の自家用車を家族で共用する場合のように、車両が同一であっても、運転者が異なれば、走行パターンは異なる。このため、搭乗者(運転者)を示す情報d21を記憶しておくことで、走行軌跡情報を、搭乗者(運転者)別で絞り込むことが可能である。
なお、運転者を示す情報としては、例えば、情報端末装置8に接続された運転者の携帯電話(図示省略)から取得したユーザIDを用いることができる。
【0054】
車両の種類を示す情報d22は、車両の種類に応じて、過去の走行パターンを区別するために用いられる。
つまり、同一のユーザ(運転者;ポータブル情報端末装置8の所有者)が、営業車や自家用車など複数種類の車両を利用する場合のように、運転者が同一であっても、使用する車両の種類が異なれば、走行パターンは異なる。ことため、車両の種類を示す情報d22を記憶しておくことで、走行軌跡情報を車両の種類別で絞り込むことが可能である。
なお、車両の種類を示す情報d22は、営業車又は自家用車を区別するための情報や、大型車又は小型車を区別するための情報として構成されており、車両3の車載コンピュータ4cに車両ID(図2参照)として登録されている。
【0055】
図5に戻り、仮想目的地選択処理では、まず、車両の種類が同じ走行軌跡情報の抽出処理が行われる(ステップS1)。このステップS1の処理では、仮想目的地選択部82が、走行軌跡データベース8dに蓄積された過去の走行軌跡情報を、「車両の種類を示す情報d22」をキーにして検索し、情報端末装置8が接続されている車載装置4に登録された車両IDが示す車両の種類と一致する走行軌跡情報を抽出する。
【0056】
ここで、ポータブル情報端末装置8は、特定のユーザ専用の装置であるものの、当該ユーザは複数の車両を運転することがあるとした場合、ポータブル情報端末装置8は、複数の車載装置4に接続される。この場合、情報端末装置8の走行軌跡データベース8dには、複数の車両3の走行軌跡情報が登録される。
しかし、利用する車両3ごとに走行パターンが異なることが多い。そこで、車両の種類が同じ走行軌跡情報を抽出することで、走行軌跡情報のうち、関連性の高いものが選択され易くなる。
【0057】
また、ステップS1では、車両の種類が同じ走行軌跡情報を抽出するのに代えて、又は加えて、搭乗者が同じ走行軌跡情報を抽出する処理を行っても良い。
この場合、走行軌跡データベース8dに蓄積された走行軌跡情報を、「搭乗者を示す情報d21」をキーにして検索し、情報端末装置8が取得したユーザIDと一致する走行軌跡情報を抽出する。
【0058】
ここで、情報端末装置8(ポータブルである必要はない)を含めて車両3が、複数人に共用され、情報端末装置8が、当該情報端末装置8に接続された携帯電話などから取得したユーザIDによって搭乗者(運転者)を区別できるものとした場合、情報端末装置8の走行軌跡データベース8dには、複数人の走行軌跡情報が登録される。
【0059】
しかし、搭乗者(運転者)ごとに走行パターンが異なることが多い。そこで、同じ搭乗者の走行軌跡情報を抽出することで、走行軌跡情報のうち、関連性の高いものが選択され易くなる。
【0060】
続いて、ステップS1で抽出された走行軌跡情報のうち、出発地を示す情報d1が、GPSによって取得される現在位置とほぼ一致するものを絞り込む(ステップS2)。これにより、出発地が共通する過去の走行軌跡情報を抽出することができる。
【0061】
さらに続いて、ステップS2で絞り込まれた走行軌跡情報のうち、過去の走行時状況d11〜d18が、現在の状況と類似(同一を含む)するものを絞り込む(ステップS3)。例えば、特定の曜日に特定の場所へ頻繁に行くという走行パターンが存在する場合、ステップS3の処理によって、そのような走行パターンに対応する走行軌跡情報が抽出される。
なお、走行時状況を示す情報d11〜d18のうち、すべてが類似する必要はなく、いずれか一つ又は複数が類似していれば足りる。
【0062】
以上のステップS1〜S3の処理によって、現在の走行状況に近い、1又は複数の過去の走行軌跡情報が抽出される。なお、ステップS1〜S3の処理は、全て行われる必要はなく、一つの処理、又は任意の2つの処理の組み合わせだけであってもよい。また、現在の走行状況に近い過去の走行軌跡情報を抽出できる処理であれば、上記のものに限定されず、他の処理であってもよい。
【0063】
そして、抽出された1又は複数の走行軌跡情報に含まれる「目的地を示す情報」d2が、1又は複数の仮想目的地として選択・設定される(ステップS4)。また、ステップS4では、仮想目的地の選択とともに、それぞれの仮想目的地が、実際の目的地である確率(目的地確率)を算出する処理が行われる。
【0064】
例えば、仮想目的地として、「仮想目的地A」、「仮想目的地B」、「仮想目的地C」が選択された場合に、過去にそれぞれの仮想目的地へ行った回数が、仮想目的地Aは25回であり、仮想目的地Bは15回であり、仮想目的地Cは10回であることが、抽出された走行軌跡情報から算出されたものとする。この場合、目的地確率として、仮想目的地Aは50%、仮想目的地Bは30%、仮想目的地Cは20%が算出される。
【0065】
[情報端末装置の情報送信処理]
実目的地又は仮想目的地が設定されると、その後、車両3は、サーバ装置2へ情報を送信する処理を定期的に行う。なお、情報の送信処理は、定期的に行っても良いし、リンクに進入する毎、又は退出する毎に行っても良い。
【0066】
図7に示すように、情報送信処理では、まず、実目的地が設定されているか否かを判定する(ステップS11)。
ナビゲーション機能によって実目的地が設定されている場合、第1経路探索部83が、現在地から実目的地までの経路を探索し、第1旅行時間算出部85が、経路リンク列を構成する各リンクの旅行時間を求め、各リンクへの進入予定時刻を求める(ステップS12)。なお、経路探索には、搭乗者(運転者)の操作が介在してもよい。
そして、各リンクへの進入予定時刻を示す情報が、サーバ装置2へ送信される(ステップS13)。
【0067】
一方、実目的地が設定されていない場合、1以上の仮想目的地の設定があるか否かを判定する(ステップS14)。過去の走行軌跡情報を参照しても仮想目的地が選択できなかった場合や、走行中に一旦設定された仮想目的地がキャンセルされて仮想目的地が無くなった場合には、リンクへの進入予定時刻についての情報送信処理は行われない。
【0068】
ステップS14において、1以上の仮想目的地の設定があると判定されると、第2経路探索部84が、各仮想目的地までの経路を探索する。また、第2経路探索部84は、仮想目的地までの経路リンク列を構成する各リンクへの進入確率も計算する(ステップS15)。各リンクへの進入確率は、各仮想目的地の目的地確率に基づいて算出される。
【0069】
続いて、第2旅行時間算出部86は、各仮想目的地について、経路リンクを構成する各リンクの旅行時間を求め、各リンクへの進入予定時刻を求める(ステップS16)。
そして、各リンクへの進入予定時刻を示す情報と各リンクへの進入確率を示す情報が、サーバ装置2へ送信される(ステップS17)。
【0070】
上記のように、本実施形態では、実目的地又は予想される目的地(仮想目的地)までの各リンクへの進入予定時刻が、定期的にサーバ装置2へ送信される。また、進入予定時刻は、送信の度に算出し直されるため、予定時刻通りに走行していない場合や各リンクの旅行時間が渋滞などにより変動した場合にも、それを反映して、進入予定時刻を再算出することができる。
【0071】
[進入予定時刻と進入確率の具体例]
図8〜図11は、サーバ装置2へ送信される進入予定時刻と進入確率の具体例を示している。ここでは、仮想目的地として、目的地確率50%である仮想目的地A、目的地確率30%である仮想目的地B、目的地確率20%である仮想目的地Cが、出発時に設定されたものとする。また、出発時の時刻は、10:00とする。
【0072】
また、出発地は、リンクa上にあり、仮想目的地Aまでの経路リンク列は、[a,b,c,d,e]となる。また、仮想目的地Bまでの経路リンク列は、[a,b,c,f]であり、仮想目的地Cまでの経路リンク列は、[a,b,g,h]である。
つまり、いずれかの仮想目的地の経路リンクを構成するリンク群は、「a,b,c,d,e,f,g,h」となる。
【0073】
出発時点においては、図8に示すように、上記リンク群のうち、リンクa,bは、全仮想目的地A〜Cに共通したリンクであるため、これらのリンクa,bへの進入確率は100%として算出される。また、リンクcは、仮想目的地A(目的地確率50%)及び仮想目的地B(目的地確率30%)に共通したリンクであるため、リンクcへの進入確率は80%(=50%+30%)として算出される。
さらに、リンクd,eは、仮想目的地A(目的地確率50%)のみのリンクであるため、これらのリンクd,eへの進入確率は50%として算出される。
【0074】
また、リンクfは、仮想目的地B(目的地確率30%)のみのリンクであるため、このリンクfへの進入確率は30%として算出される。リンクg,hは、仮想目的地C(目的地確率20%)のみのリンクであるため、これらのリンクg,hへの進入確率は20%として算出される。
【0075】
また、出発時点において、車両3がサーバ装置2から得た各リンクの旅行時間情報(又はVICSからの各リンクの旅行時間情報)は、リンクa(出発地からリンクa終点まで)=10分、リンクb=5分、リンクc=5分、リンクd=5分、リンクe(リンクe始点から仮想目的地Aまで)=5分、リンクf(リンクf始点から仮想目的地Bまで)=3分、リンクg=5分、リンクh(リンクh始点から仮想目的地Cまで)=4分であるとする。
【0076】
この場合、図8に示すように、リンクb(進入確率100)の進入予定時刻は10:10、リンクcへの進入予定時刻は10:15、リンクdへの進入予定時刻は10:20、リンクeへの進入予定時刻は10:25、リンクfへの進入予定時刻は10:20、リンクgへの進入予定時刻は10:15、リンクhへの進入予定時刻は10:20として算出される。
上記のようにして算出された各リンクの進入予定時刻と進入確率(必要であれば目的地への到着予定時刻及び目的地確率)が、車両3の出発後の最初の情報送信処理(図7)の際に、サーバ装置2へ送信される。
【0077】
さて、車両3が走行開始し、時刻10:21の時点で、図9に示す現在位置に車両3が存在するものとする。図9の車両3は、リンクa,bを走行した後、リンクbとリンクcとの間のノード(交差点)を通過し、リンクc上に存在している。
【0078】
車両3がリンクcに進入すると、車両3は仮想目的地Cへの経路からは外れるため、仮想目的地Cは仮想目的地ではなくなる。つまり、仮想目的地Cは仮想目的地としての設定がキャンセルされ、設定された仮想目的地は、仮想目的地A及びBとなる。この場合、今後、進入する可能性のあるリンクは、リンクd、リンクe、リンクfである。
【0079】
すると、次回の情報送信処理(図7)を行うため、第2経路探索部84は、リンクd,e,fそれぞれの進入確率を再算出する。具体的には、仮想目的地がA,Bだけの場合、それぞれの目的地確率は、仮想目的地A=62.5%(=50%/(50%+30%))、仮想目的地B=37.5%(=30%/(50%+30%))であるから、仮想目的地Aの経路のリンクであるリンクd,eへの進入確率は62.5%、仮想目的地Bの経路のリンクであるリンクfへの進入確率=37.5%として算出される。
【0080】
また、図8に示す出発時点(10:00)においては、リンクd,e,fの旅行時間は、リンクd=5分、リンクe(リンクe始点から仮想目的地Aまで)=5分、リンクf(リンクf始点から仮想目的地Bまで)=3分であったのが、図9の時点(10:21)では、交通量の増加等のためリンクdの旅行時間が10分に増加したという情報を、情報端末装置8が得たとする。
また、図9の現在位置に到達した時間は、予定よりも遅れている。
【0081】
そこで、第2旅行時間算出部86は、現在位置、現在時刻、及び各リンクの旅行時間の最新情報に基づき、リンクd,e,fへの進入予定時刻を再算出する。具体的には、リンクdへの進入予定時刻=10:25、リンクeへの進入予定時刻10:35、リンクfへの進入予定時刻=10:25として算出される。
上記のようにして算出された各リンクの進入予定時刻と進入確率(必要であれば目的地への到着予定時刻及び目的地確率)が、次回の情報送信処理(図7)のタイミングで、サーバ装置2へ送信される。
【0082】
また、情報送信処理の際には、進入予定時刻と進入確率のほか、車両3が各リンクへ実際に進入した時刻(実進入時刻)も、サーバ装置2へ送信してもよい。これにより、サーバ側は、各リンクにおける過去の各時点での交通量を把握することができ、過去の交通量に基づいて将来の渋滞を予測する等の処理を行う場合の基礎データとすることができる。
【0083】
さて、車両3がさらに走行を続け、時刻10:27の時点で、図10に示す現在位置に車両3が存在するものとする。図10の車両3は、リンクc,d,f間のノード(交差点)を通過し、リンクd上に存在している。
【0084】
車両3がリンクdに進入すると、車両3は仮想目的地Bへの経路からは外れるため、仮想目的地Bは仮想目的地ではなくなる。つまり、仮想目的地Bは仮想目的地としての設定がキャンセルされ、設定された仮想目的地は、仮想目的地Aのみとなる。この場合、今後、進入する可能性のあるリンクは、リンクeである。
【0085】
すると、次回の情報送信処理(図7)を行うため、第2経路探索部84は、リンクeの進入確率を再算出する。具体的には、仮想目的地は仮想目的地Aだけなので、仮想目的地Aの目的地確率は100%である。したがって、仮想目的地Aの経路のリンクであるリンクeへの進入確率は100%として算出される。
【0086】
また、図9の時点では、リンクdの旅行時間は、交通量増加のため、10分であったが、図10の時点(10:27)では、交通量が減少し、旅行時間が5分に戻ったという状態を、情報端末装置8が得たとする。
【0087】
すると、第2旅行時間算出部86は、現在位置、現在時刻、及び各リンクの旅行時間の最新情報に基づき、リンクeへの進入予定時刻を10:30として再算出する。
上記のようにして算出された各リンクの進入予定時刻と進入確率(必要であれば目的地への到着予定時刻及び目的地確率)が、次回の情報送信処理(図7)のタイミングで、サーバ装置2へ送信される。
【0088】
ここで、図8〜図10のように仮想目的地への経路を車両3が走行するのではなく、図11に示すように、仮想目的地への経路以外の道路(リンク)を車両3が走行したとする。つまり、図11の車両3は、リンクc,d,f間のノード(交差点)を通過し、リンクi上に存在している。なお、リンクiは、仮想目的地A〜Cの経路を構成するリンクではない。
この場合、仮想目的地の設定がすべてキャンセルされ、仮想目的地の設定が無い状態となる。この状態では、各リンクへの進入予定時刻や進入確率は送信されない。
【0089】
ただし、仮想目的地の設定がキャンセルされた場合であっても、各リンクへの実進入時刻は、サーバ装置2へ送信される。つまり、リンクiの実進入時刻=10:25やその後に走行した各リンクの実進入時刻が、サーバ装置2へ送信され、サーバ装置2にて蓄積される。
【0090】
[サーバ装置の処理]
図12は、各車両3から進入予定時刻情報及び進入確率情報を受信したサーバ装置2の処理を示している。サーバ装置2の収集部21は、各車両3からの情報を随時収集し、交通量算出部22が、将来の各時刻tにおいて、各リンクに存在する車両数(交通量)を集計する(ステップS21)。
また、旅行時間算出部23では、将来の各時刻tにおける各リンクの交通量に基づき、各時刻における各リンクでの旅行時間を算出する(ステップS22)。具体的には、旅行時間算出部23は、予め設定されたQV曲線(Q:交通量、V:速度)に基づいて、交通量に対応する速度を算出し、リンクの長さをその速度で割って旅行時間を算出する。
また、旅行時間算出部23では、ある時刻tにおける交通量に基づいて、渋滞情報を生成する(ステップS23)。具体的には、前記QV曲線から交通量に対応する速度を算出し、その速度に応じて、渋滞情報を生成する。例えば、速度が0km/h以上10km/h未満であれば「渋滞」、10km/h以上20km/h未満であれば「混雑」、20km/h以上であれば「空き」と判定し、これらに対応した渋滞情報を生成する。
【0091】
このように、本実施形態では、各リンクの将来の各時点での交通量及び旅行時間を予測でき、しかも、各リンクの将来の各時点での渋滞発生も予測できる。
上記のようにして得られた旅行時間情報や渋滞情報は、各車両3に対して送信される。したがって、各車両3では、将来の各時点における、各リンクの旅行時間や渋滞情報が得られ、しかもこれらの情報は時々刻々と更新されるため、車両3でのリンク進入予定時刻を精度良く算出し、しかも道路状況の変化に応じて柔軟に修正することができる。
【0092】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0093】
例えば、情報端末装置8の機能の全ての機能が、車両3側に存在する必要はなく、情報端末装置8の一部の機能が、インターネット等のネットワーク上における他の装置(サーバ装置2でもよい)に設けられていても良い。具体的には、情報端末装置には、実目的地又は仮想目的地を設定する機能を具備させ、実目的地又は仮想目的地をサーバ装置2(又は他の装置)へ送信するようにし、サーバ装置側で、車両の各リンクへの進入予定時刻及び/進入確率を算出してもよい。
【0094】
あるいは、サーバ装置2(又は他の装置)に、各車両又は各ユーザの走行軌跡データベースを具備させ、車両3側において実目的地の設定がない場合には、サーバ装置2側で走行軌跡データベースを参照して、仮想目的地を設定するようにしてもよい。
なお、サーバ装置2の走行軌跡データベースには、情報端末装置8から取得した走行軌跡情報を保存すればよい。この場合、サーバ装置2が情報端末装置8から取得する走行軌跡の情報は、図6に示すように、出発地の情報、目的地の情報、出発地から目的地までの経路を示す情報などから構成されていても良いし、あるいは、出発地から目的地までの所定時間毎(例えば、1秒毎)又は所定距離毎(例えば、5m毎)の時刻と位置の情報などから構成されていてもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、一つの仮想目的地に対して一つの予測経路のみ求めたが、一つの仮想目的地について複数の予測経路を求めてもよい。例えば、仮想目的地Aの目的地確率が50%であり、仮想目的地Aへの第1予測経路と第2予測経路があるとする。
そして、過去の走行軌跡情報に基づくと、仮想目的地Aへ行くために第1予測経路をとる確率が60%で、第2予測経路をとる確率が40%であるとする。この場合、第1予測経路を通って仮想目的地Aへ行く確率は30%(=50%×60%)であり、第2予測経路を通って仮想目的地Aへ行く確率は20%(=50%×40%)である。これらの確率を用いて、各リンクへの進入確率を求めても良い。
【0096】
さらに、上記実施形態では、車両が各リンクへ進入する予定時間を求めているが、これに代えて又は加えて、車両が各リンクから退出する予定時間を求めて、退出予定時間に基づいて交通量を算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】プローブカーシステムの全体構成を示す概略構成図である。
【図2】プローブカーシステムの機能ブロック図である。
【図3】情報端末装置の機能ブロック図である。
【図4】サーバ装置の機能ブロック図である。
【図5】仮想目的地選択処理のフローチャートである。
【図6】走行軌跡情報のデータフォーマット図である。
【図7】情報送信処理のフローチャートである。
【図8】仮想目的地A,B,Cについての出発時の進入予定時刻及び進入確率を示す図である。
【図9】仮想目的地A,Bについての走行中の進入予定時刻及び進入確率を示す図である。
【図10】仮想目的地Aについての走行中の進入予定時刻及び進入確率を示す図である。
【図11】仮想目的地への経路を外れた場合の説明図である。
【図12】サーバ装置の処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0098】
1:プローブカーシステム,2:サーバ装置(交通情報生成装置),3:プローブ車両,4:車載装置,4a:GPS受信機,4b:VICS受信機,4c:車載コンピュータ,5:交通情報センタ,6:インターネット網,7:無線基地局,8:情報端末装置(交通情報生成装置),8a:無線機,8b:処理コンピュータ,8c:地図データベース,8d:走行軌跡データベース,11:処理コンピュータ,12:第1通信部,13:第2通信部,14:会員データベース,15:地図データベース,16:交通情報データベース,81:実目的地設定部,82:仮想目的地設定部,83:経路探索部,84:経路(確率付)探索部,85:旅行時間算出部,86:旅行時間(確率付)算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ車両の目的地までの経路を示す経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は前記各リンクから退出する時刻を示す時刻情報を、複数のプローブ車両について収集する収集手段と、
前記収集手段によって収集した前記時刻情報に基づいて、リンク毎の交通量を算出する交通量算出手段と、
を備えていることを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項2】
前記プローブ車両の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された走行軌跡情報に基づいて、前記プローブ車両の1又は複数の仮想目的地を選択する目的地選択手段と、
選択された仮想目的地までの経路を求め、その経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は前記各リンクから退出する時刻を示す時刻情報を生成する生成手段と、
を備える請求項1記載の交通情報生成装置。
【請求項3】
前記生成手段は、各リンクへ前記プローブ車両が進入する時刻又は退出する時刻を示す時刻情報を、各リンクへ進入する確率を示す確率情報とともに生成し、
前記収集手段は、前記時刻情報とともに前記確率情報を、複数のプローブ車両について収集するものであり、
前記交通量算出手段は、前記収集手段によって収集した前記時刻情報及び前記確率情報に基づいて、リンク毎の交通量を算出する
請求項2記載の交通情報生成装置。
【請求項4】
前記目的地選択手段は、前記記憶手段に記憶されている走行軌跡情報のうち、前記プローブ車両の搭乗者と同一の搭乗者についての走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択する
請求項2又は3記載の交通情報生成装置。
【請求項5】
前記目的地選択手段は、前記記憶手段に記憶されている走行軌跡情報のうち、走行時における月、日、曜日、時間、特殊日、又は、天候等の走行時状況が類似するものに基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択する
請求項2〜4のいずれか1項に記載の交通情報生成装置。
【請求項6】
前記目的地選択手段は、前記記憶手段に記憶されている走行軌跡情報のうち、前記プローブ車両と同一の種類の車両についての走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択する
請求項2〜5のいずれか1項に記載の交通情報生成装置。
【請求項7】
前記交通量算出手段によって算出された交通量に基づいて、各リンクの旅行時間を算出する旅行時間算出手段を更に備える
請求項1〜6のいずれか1項に記載の交通情報生成装置。
【請求項8】
コンピュータを、
プローブ車両の目的地までの経路を示す経路リンク列を構成する各リンクへ前記プローブ車両が進入する時刻又は前記各リンクから退出する時刻を示す時刻情報を、複数のプローブ車両について収集する収集手段、及び
前記収集手段によって収集した前記時刻情報に基づいて、リンク毎の交通量を算出する交通量算出手段、
として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
プローブ車両の目的地までの経路を示す経路リンク列を構成する各リンクへ前記プローブ車両が進入する時刻又は前記各リンクから退出する時刻を示す時刻情報を、複数のプローブ車両について収集するステップと、
収集した前記時刻情報に基づいて、リンク毎の交通量を算出するステップと、
を含む交通情報の生成方法。
【請求項10】
プローブ車両の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択する目的地選択手段と、
選択された仮想目的地までの経路を求め、その経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は退出する時刻を示す時刻情報を、各リンクへ進入する確率を示す確率情報とともに生成する生成手段と、
を備えていることを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項11】
コンピュータを、
プローブ車両の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択する目的地選択手段、及び
選択された仮想目的地までの経路を求め、その経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は退出する時刻を示す時刻情報を、各リンクへ進入する確率を示す確率情報とともに生成する生成手段、
として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
プローブ車両の過去の走行軌跡を示す走行軌跡情報に基づいて、1又は複数の仮想目的地を選択するステップと、
選択された仮想目的地までの経路を求め、その経路リンク列を構成する各リンクへ、前記プローブ車両が進入する時刻又は退出する時刻を示す時刻情報を、各リンクへ進入する確率を示す確率情報とともに生成するステップと、
を含むことを特徴とする交通情報の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−33331(P2010−33331A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194937(P2008−194937)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】