説明

交通情報生成装置

【課題】現況情報に依存することなく、複数の補完手法の特徴を生かした高精度な補完を行う交通情報生成装置を提供する。
【解決手段】交通情報生成装置は、現況のプローブカー情報に基づいた現況の交通情報を記録する現況情報DB102と、現況の交通情報を逐次記録し過去の交通情報を記録する過去情報DB101とを備え、過去情報DB101に記録された過去の交通情報と現況情報DB102に記録された現況の交通情報のいずれかあるいは両方を使用して、現況の交通情報においてプローブカー情報が欠損することによる欠損する道路の交通情報を補完するための補完情報を複数の種類作成し、過去情報DB101に記録された過去の交通情報と作成した複数の種類の補完情報に基づき、作成した複数の種類の補完情報の精度情報を生成し、前記精度情報と作成した複数の種類の補完情報に基づき、前記欠損する道路の交通情報の補完情報を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカーにより交通情報が収集されなかった道路に対し、交通情報を生成する交通情報生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路上センサによって交通情報を収集するシステムに対して、プローブカーにより広範囲な交通情報をより低コストで収集するプローブカーシステムが知られている。しかしながら、プローブカーの走行位置とタイミングはランダムなものであるため、収集される交通情報には空間的、時間的な欠損が生じる。
【0003】
そこで、欠損する交通情報について、過去のプローブ交通情報から道路リンク間の交通情報の相関を算出し、かかる相関に基づいて、他の道路リンクの情報から補完する推定補完という方法がある(特許文献1)。しかしながら、推定補完という方法では、他のリンクの現況情報が多い場合は、高精度に補完できるが、現況情報が希薄な場合、精度が十分保証できないケースが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−25194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、交通情報が欠損した道路に対し、様々な状況においても精度よく最適に交通情報を補完する補完方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、プローブカー情報に基づいて各道路の交通情報を生成する交通情報生成装置に適用され、現況のプローブカー情報に基づいた現況の交通情報を記録する現況情報データベース手段と、現況の交通情報を逐次記録し過去の交通情報を記録する過去情報データベース手段と、過去情報データベース手段に記録された過去の交通情報と現況情報データベース手段に記録された現況の交通情報の少なくともいずれかを使用して、現況の交通情報においてプローブカー情報が欠損することによる欠損する道路の交通情報を補完するための補完情報を複数の種類作成する補完情報作成手段と、過去情報データベース手段に記録された過去の交通情報と補完情報作成手段が作成した複数の種類の補完情報に基づき、補完情報作成手段が作成した複数の種類の補完情報の精度情報を生成する精度情報生成手段と、精度情報生成手段が生成した複数の種類の補完情報の精度情報と補完情報作成手段が作成した複数の種類の補完情報に基づき、現況の交通情報においてプローブカー情報が欠損することによる欠損する道路の交通情報の補完情報を決定する補完情報決定手段とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、現況情報に依存することなく、複数の補完手法の特徴を生かした高精度な補完を行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】交通情報提供センタ13が、プローブカー11から交通情報を収集し、交通情報利用者(自動車)14に交通情報を提供する交通情報提供システムを示す図である。
【図2】交通情報生成装置12の構成を示す図である。
【図3】現況情報DB102および過去情報DB101のデータフォーマットを示す図である。
【図4】精度情報DB110の例を示す図である。
【図5】補完情報を生成するまでの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、現況のプローブ交通情報が収集されなかった道路の交通情報を、複数の補完処理をダイナミックに選択することで、精度の高い最適な補完情報を生成する交通情報生成装置を説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態である交通情報生成装置12を有する交通情報提供センタ13が、プローブカー11から交通情報を収集し、交通情報利用者(自動車)14に交通情報を提供する交通情報提供システムを示す図である。交通情報提供センタ13とプローブカー11や交通情報利用者14との間のデータ通信は、例えば携帯電話を利用して無線により行われる。
【0011】
プローブカー11は、車両の現在地情報を定期的(例えば5分毎)に交通情報提供センタ13へ提供するように契約された車両である。プローブカー11は、カーナビゲーション装置を搭載し、GPS衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ(GPS受信機)や、車両の進行方位を検出する方位センサや、車速を検出する車速センサなどを使用して車両の現在地(自車位置)を検出する機能を有し、検出した車両の現在地情報(プローブ情報とも言う)を定期的に交通情報提供センタ13へ送信する。このとき、車両の現在地情報を検出した時刻および車両を識別する車両識別情報とともに送信する。なお、車両の現在地情報としては、GPS信号により検出された位置情報のみとしてもよい。
【0012】
交通情報提供センタ13は、サーバー(コンピュータシステム)12を有し、サーバー12は以下に説明する交通情報生成装置として機能する。以下、サーバー12は交通情報生成装置12と言う。交通情報生成装置12は、プローブカー11から送信されてくる情報に基づき交通情報を生成し、さらに欠損している交通情報を補完した上で、交通情報利用者14に交通情報を提供する。交通情報利用者14は、交通情報を利用する車両であり、カーナビゲーション装置を搭載し、例えば提供された交通情報を経路誘導などのナビゲーションに利用する。
【0013】
図2は、交通情報生成装置12の構成を示す図である。交通情報生成装置12は各種の処理を行う処理部と各種の情報を格納するデータベース(以下、単にDBと略記する)とから構成される。現況情報生成処理部100はプローブカー11から送信されるプローブ情報に基づき現況の交通情報を生成する。ここで言う交通情報とは、例えば旅行時間、渋滞情報などである。以下、本実施の形態では、旅行時間を例にあげて説明をする。
【0014】
道路地図データでは、道路の交差点あるいは道路上の特定のポイントをノードと定義し、各ノード間を結ぶ道路をリンクと定義して表すものとする。本実施の形態の交通情報としての旅行時間は、車両が、その道路、すなわちそのリンクを通過するために必要な所要時間である。この旅行時間は、プローブカー11から一定時間(例えば5分)ごとに送信される車両の位置情報から演算により求めることができる。
【0015】
現況情報生成処理部100は、プローブカー11から取得したプローブ情報(プローブデータ)に基づき各リンクごとの現況のプローブ交通情報を生成し、現況情報DB102に格納するとともに、過去情報DB101にも格納する。現況情報DB102には、現在〜約30分前の直近の交通情報が蓄積される。過去情報DB101は過去のプローブ交通情報を記録した過去情報データベースである。過去情報DB101には、現在〜数年前の交通情報が蓄積される。
【0016】
図3は、現況情報DB102および過去情報DB101のデータフォーマットを示す図である。現況情報DB102および過去情報DB101のデータフォーマットは共通する。横方向にはリンクが若い番号順に並び、縦方向には5分単位で取得した情報取得日時が並ぶ。本実施の形態で処理する単位は、10Km四方の2次メッシュ単位とし、図3のテーブルには、この2次メッシュに含まれるリンクがすべて記載される。
【0017】
現況情報生成処理部100が生成する現況の交通情報は、図3の1列分に相当する。現況情報DB102には、前述のように、現在〜約30分前の直近の交通情報が蓄積されるので、7列分のデータが格納される。過去情報DB101には、前述のように、現在〜数年前の交通情報が蓄積されるので、その年数分のデータ格納される。図3のテーブルから分かるように、その時刻に走行しているプローブカー11からの情報のみにより現況の交通情報(本実施の形態では旅行時間)が生成されるので、プローブカー11が走行していないリンクでは交通情報を得ることができない。図3では、交通情報を得ることができなかったリンクにはNoneと記載されている。
【0018】
現況情報生成処理部100は、プローブカー11から一定時間(例えば5分)ごとに送信されてくる車両の位置情報および不図示のデータベースに保有する道路地図データに基づき、プローブカー11が走行している道路(リンク)を特定し、走行距離を演算し、その道路(リンク)を走行するのにかかった時間すなわち旅行時間を求める。
【0019】
推定補完処理部103は、過去情報DB101に格納された過去の交通情報を使用して、主成分分析手法によりリンク間の相関情報を演算して求める。そして、推定補完処理部103は、このようにして求められた過去の相関情報と現況情報DB102に格納されている現況の交通情報、すなわち最新の交通情報とに基づいて、欠損するリンクの交通情報を推定して推定補完情報を生成し、生成した推定補完情報を推定補完情報DB103に格納(記録)する。すなわち、欠損するリンクの交通情報を、他の欠損していないリンクの情報とリンク間の相関情報から推定して補完する。
【0020】
本実施の形態の推定補完情報は、曜日や時間帯の区別なく求めた相関情報を使用して求めるものとする。しかし、曜日や時間帯なども考慮して相関情報を求め、その相関情報により推定補完情報を求めるようにしてもよい。なお、上記のような推定補完情報を求める手法は公知な内容であり、詳細は特許文献1を参照するものとする。特許文献1の推定補完情報を求める手法の記載は、本願明細書の一部を構成するものとする。
【0021】
統計処理部105は、過去情報DB101に格納された過去の交通情報を統計処理し、統計処理により生成された統計情報を統計情報DB106に格納(記録)する。例えば、過去の日曜日の午前10時ごろのリンク番号1の交通情報をすべて平均して、日曜日の午前10時ごろのリンク番号1の統計情報を統計交通情報として統計情報DB106に格納する。統計情報DB106に格納される統計交通情報は、現況の交通情報がどのような状態であるかとは関係なく、曜日や時刻などから単純に特定される交通情報である。
【0022】
前置補完処理部107は、同じ道路の直近に交通情報が存在した場合、その情報を元に補完情報を生成し、生成した補完情報を前置補完情報DB108に格納(記録)する。前置補完処理部107は、現況情報DB102から所定時間(例えば、10分)以内に存在するリンクの交通情報をそのリンクの交通情報として前置補完情報DB108に格納する。所定時間の値は、相関が取れる範囲として、経験則や実験やシュミレーションなどから導かれる。
【0023】
次に、本願発明の特徴である精度情報について説明をする。精度情報生成処理部109は、定期的に過去における補完情報の精度の実績を算出し、算出した各補完処理の精度情報を精度情報DB110に事前に格納しておく。すなわち、精度情報生成処理部109は、過去の交通情報蓄積情報と補完された情報との誤差率を算出し、精度情報DB110に事前に格納しておく。
【0024】
図4は、精度情報DB110の例を示す図である。精度情報DB110は、推定補完情報、統計補完情報、前置補完情報ごとに精度情報を保有する。さらに、時間帯、日種、リンクごとに精度情報(誤差率)を保有する。日種は、平日初日(月曜日)、平日中日(火曜日、水曜日、木曜日)、平日終日(金曜日)、土曜日、日曜日、GW、お盆等に分類できる。時間帯は、プローブ情報を取得する時間帯単位とする。上記に加えて、天気を加味した分類も考えられる。精度情報生成処理部109は、過去の交通情報蓄積情報から日種や時刻に応じた補完情報の誤差率を算出し、精度情報DB110に格納(記録)する。精度情報生成処理部109は、次のように誤差率を算出する。
【0025】
例えば、統計補完情報について説明をする。統計補完情報は、曜日ごとおよび時間帯ごとの各リンクの旅行時間の平均値を求めたものである。このようにして求めた統計補完情報と過去情報DB101に格納されている所定期間の実際の交通情報との差分を求めて誤差率を演算する。例えば、日種が日曜日における誤差率err_h(t)は、日曜日の時刻tにおける統計補完情報をi(t)とし、過去情報DB101に格納されている実際の過去の日曜日の交通情報をf(t,n)(n:0〜N)とすると、以下の式により算出される。誤差率err_h(t)は、値が小さいほど誤差が少ないと言える。
【数1】

誤差率は、日種及び時間帯、地域により値が変化するため、時間帯、日種、リンクごとに算出する。統計補完情報との差分を求める実際の交通情報の所定期間は、例えば、ある年度の所定期間としたり、過去1年分としたり、統計補完情報を求めるために使用した実際の交通情報の期間としたり、適宜決定する。
【0026】
次に、推定補完情報について説明する。本実施の形態の推定補完情報は、曜日や時間帯を区別しないで求めたものである。このようにして求めた推定補完情報と過去情報DB101に格納されている所定期間の実際の交通情報との差分を求めて精度情報である誤差率を演算する。このように曜日や時間帯などを区別しないで求めた推定補完情報についても、精度情報としては、時間帯、日種などを区別して求める。
【0027】
具体的には、例えば過去2ヶ月分の交通情報が過去情報DB101に格納されている場合を想定して説明する。精度情報生成処理部109は、まず、最初の1ヶ月分の交通情報に基づいて、前述した主成分分析手法によりリンク間の相関情報を演算して求める。このようにして求められた最初の1ヶ月(第1の所定期間)の相関情報と次の1か月分(第2の所定期間)のそれぞれの交通情報とに基づいて、それぞれの交通情報に欠損するリンクの交通情報を推定して推定補完情報を生成する。
【0028】
このとき、次の1ヶ月分の交通情報において、交通情報が希薄な場合と、希薄でない場合に場合分けをして誤差率の演算を行う。交通情報が希薄な場合とは、所定の範囲(例えば2次メッシュ1つ)において全体のリンク数に対してプローブ情報による交通情報がある割合(カバー率)が、例えば5%以下を交通情報が希薄な場合とし、5%よい大きい場合を希薄でないとする。閾値の5%は適宜変更してもよい。
【0029】
次の1ヶ月の交通情報の希薄な場合において求められた推定補完情報において、過去情報DB101に格納されている所定期間(例えば次の1ヶ月)の実際の交通情報との差分を求めて精度情報の誤差率を演算する。次の1ヶ月の交通情報の希薄でない場合において求められた推定補完情報において、過去情報DB101に格納されている所定期間(例えば次の1ヶ月)の実際の交通情報との差分を求めて精度情報の誤差率を演算する。このようにして、希薄な場合と希薄でない場合で精度情報を別々に求める。この場合、精度情報の演算結果は、希薄な場合は自ずと精度が小さく(誤差率が大)なり、希薄な場合は自ずと精度が大きく(誤差率が小)なる。なお、精度情報の具体的な演算式などは、前述した統計補完情報と同様であるので、その説明は省略する。
【0030】
次に、前置補完情報について説明する。本実施の形態の前置補完情報は、現況情報DB102において、現在時刻から所定時間(例えば、10分)以内に該当するリンクの交通情報がある場合にその交通情報をそのリンクの前置補完情報としたものである。前置補完情報には曜日や時間帯などを区別して求めているものではない。しかし、このように曜日や時間帯などを区別しないで求めた前置補完情報についても、精度情報としては、推定補完情報と同様に、時間帯、日種などを区別して求める。前置補完情報の精度情報の具体的な求め方は、前述した統計補完情報と同様であるので、その説明は省略する。
【0031】
重み付け演算処理部111は、精度情報DB110に格納した精度情報と各補完情報とに基づいて補完情報を生成する重み付けを演算する。推定補完、統計情報、前置補完の値をそれぞれi1(t),i2(t),i3(t)とし、重み付けの係数をα(t)、β(t)、γ(t)とすると、演算装置により算出される推定情報P(t)は、次式により計算される。
P(t)=α(t)×i1(t)+β(t)×i2(t)+γ(t)×i3(t)
【0032】
重み付けの係数は、交通情報を補完すべきリンク番号および現在の曜日時刻をキーにして精度情報DB110を参照し、精度が高い情報の重み付けをより重視して決定される。このときの重み付けは、最も精度の高い重み付けの係数を“1”、それ以外の重み付けを“0”と設定する。すなわち、推定補完情報、統計補完情報、前置補完情報のうち、精度の最も高い補完情報が選択され、採用される。
【0033】
なお、推定補完情報の場合は、現況情報が希薄な場合と希薄でない場合とで、推定補完情報の参照データベースを異ならせる。
【0034】
なお、前記重み付けは“1”と“0”の2値ではなく、算出される推定情報を安定化させる為に、多値もしくは連続値とすることもできる。例えば、精度情報DBに格納されている誤差率の逆数に応じて、重み付けの値を決定してもよい。i1(t),i2(t),i3(t)の誤差率をそれぞれerr1(t),err2(t),err3(t)である場合、α(t)は、次式により計算される。
【数2】

【0035】
β(t)、γ(t)も、上記式の分子の誤差率にそれぞれの誤差率を代入して求めればよい。
【0036】
なお、重み付け演算の際、補完情報が得られない場合がある。特に前置補完は、走行するプローブカーの台数が少ない場合、補完情報が得られない場合がほとんどである。例えば、i1(t)が得られない場合、α(t)=0となり、β(t)は、次式により計算される。γ(t)も同様に求める。
【数3】

【0037】
i1(t),i2(t)が共に得られない場合は、α(t)=0,β(t)=0,γ(t)=1となる。また、i1(t),i2(t),i3(t)のいずれも得られない場合は、補完不可となる。
【0038】
交通情報配信処理部112は、現況情報及び重み付け演算装置から得られた補完情報を配信する。同じリンク、同じ時間帯において、現況情報も推定情報も存在する場合は、現況情報を優先して配信する。
【0039】
図5は、補完情報を生成するまでの処理フローを示す図である。図5の処理は、交通情報生成装置であるサーバ12が、所定のプログラムを実行することにより行われる。図2の要素に対応する要素には同じ符号を付している。図2および図5に記載する各処理部は、サーバー12が各処理部に対応する所定のプログラムを実行することにより実現される。なお、各処理部は、それぞれ独立したコンピュータシステム(処理装置)としてもよい。
【0040】
まず、現況情報生成処理部100は、プローブカー11からのプローブ情報を取得するタイミングに同期して、定周期(例えば5分)で起動される。現況情報生成処理部100は、受信したプローブ情報に基づき現況の交通情報を生成し、過去情報DB101及び現況情報DB102に格納する。
【0041】
現況交通情報が過去情報DB101及び現況情報DB102に格納されると、推定補完処理部103が起動される。推定補完処理部103は、過去情報DB101及び現況情報DB102の最新の現況情報を参照し、前述の推定補完処理を行い、推定補完処理結果である推定補完情報を推定補完情報DB104に出力する。
【0042】
推定補完情報が推定補完情報DB104に格納されると、統計情報処理部106が起動される。統計情報処理部は、過去情報DB101を参照し、前述のように統計情報を生成し統計情報DB106に出力する。
【0043】
統計情報が統計情報DB106に格納されると、前置補完処理部107が起動される。前置補完処理部107は、前置補完処理にて前置補完情報を生成し前置保管情報DB108に格納する。ここで、推定補完処理部、統計情報処理部、前置補完処理部は、並列に起動することも可能である。
【0044】
上記処理が完了すると、重み付け演算処理部111が起動する。重み付け演算処理部111は、推定補完情報DB104、統計情報DB106、前置補完情報DB108及び精度情報DBを参照し、最適な補完情報を生成し、その結果を交通情報配信処理部112に出力する。このとき、精度情報DBを参照する場合、現況交通情報が希薄な場合は前述した現況交通情報が希薄な場合の推定補完情報の精度情報データ、現況交通情報が希薄でない場合は前述した現況交通情報が希薄でない場合の推定補完情報の精度情報データを参照するものとする。
【0045】
交通情報配信処理部112は、重み付け演算処理部111から出力された補完情報と現況情報DB102から最新の現況情報を読み出し、これらを統合して交通情報として交通情報利用者14に出力する。
【0046】
なお、精度情報DB110については、精度情報生成処理部109が周期的に更新を行う。更新することで、補完の精度の劣化を防ぐことができる。たとえば、過去において統計情報の精度が高い場合でも、新設道路ができ以前よりも渋滞が少なくなる、または、高速道路のETC割の影響で休日は、渋滞が大きくなり、統計情報の精度が悪くなるというケースが発生する。その際、精度情報DB110を更新することにより、精度の悪くなった統計情報よりも、推定補完情報、前置補完情報を優先的に採用し、精度の高い補完情報を生成することが可能となる。
【0047】
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)プローブカー情報に基づいて各道路の交通情報を生成する交通情報生成装置12は、現況のプローブカー情報に基づいた現況の交通情報を記録する現況情報DB102と、現況の交通情報を逐次記録し過去の交通情報を記録する過去情報DB101と、過去情報DB101に記録された過去の交通情報と現況情報DB102に記録された現況の交通情報のいずれかあるいは両方を使用して、現況の交通情報においてプローブカー情報が欠損することによる欠損する道路(リンク)の交通情報を補完するための補完情報を複数の種類作成する補完情報作成処理部(推定補完処理部103、統計処理部105、前置補完処理部107)と、過去情報DB101に記録された過去の交通情報と補完情報作成処理部が作成した複数の種類の補完情報に基づき、補完情報作成処理部が作成した複数の種類の補完情報の精度情報を生成する精度情報生成処理部109と、精度情報生成処理部109が生成した複数の種類の補完情報の精度情報と補完情報作成処理部が作成した複数の種類の補完情報に基づき、現況の交通情報においてプローブカー情報が欠損することによる欠損する道路の交通情報の補完情報を決定する補完情報決定部としてに重み付け演算処理部111とを備えるようにした。
【0048】
これにより、現況のプローブ交通情報が収集されなかった道路の交通情報を、複数の補完処理をダイナミックに選択することで、精度の高い補完情報を生成することができる。交通情報サービスにおいて、プローブ交通情報が収集されなかった道路(リンク)における推定交通情報の提供に利用可能である。このような交通情報生成装置12を利用することで、プローブ交通情報の欠損率に依存することなく、高精度な推定交通情報の提供が可能になる。
【0049】
(2)補完情報作成処理部が作成する複数の種類の補完情報は、過去情報DB101に記録された過去の交通情報を使用して主成分分析手法により求めた道路間の相関情報と現況情報DB102に記録された現況の交通情報とに基づいて推定補完処理部103により求められた推定補完情報と、過去情報DB101に記録された過去の交通情報を使用して統計処理部105により統計処理により生成された統計補完情報と、過去情報DB101に記録された現時点から所定期間内の交通情報を使用して前置補完処理部107により生成した前置補完情報などとするようにした。これにより、状況に応じて適切な補完情報を選択できるようになる。
【0050】
(3)精度情報生成処理部109は、該当する道路(リンク)において、補完情報作成処理部が作成した複数の種類の各補完情報と過去情報DB101に記録された過去の交通情報との違い(差分)に基づき、複数の種類の補完情報のそれぞれの精度情報を生成するようにした。これにより、適切な精度情報を容易に生成することができる。
【0051】
(4)補完情報決定部としてに重み付け演算処理部111は、複数の種類の補完情報のうち、精度情報が最も精度が高いことを示す補完情報を、現況の交通情報において欠損する道路の交通情報の補完情報として決定するようにした。これにより、容易な手法で精度の高い補完情報を生成することができる。
【0052】
(5)また、補完情報決定部としてに重み付け演算処理部111は、複数の種類の補完情報の精度情報に応じた重みづけを複数の種類の補完情報に対して施した演算により、現況の交通情報において欠損する道路の交通情報の補完情報として決定するようにしてもより。これにより、算出される推定情報を安定化させることができる。
【0053】
(6)精度情報は、複数の種類の補完情報ごとに、道路、所定の時間的条件単位に求められるようにした。
【0054】
(7)また、精度情報は、複数の種類の補完情報ごとに、道路、日種、時間帯を単位に求められるようにした。これにより、各道路(リンク)において、日種、時間帯ごとにきめ細かく精度情報を設定することができ、日種、時間帯に適切な補完情報を生成することができる。
【0055】
(8)精度情報は、該当する道路において、補完情報作成処理部が作成した複数の種類の各補完情報と過去情報DB101に記録された過去の交通情報とのばらつきの程度を示していると言える。そして、ばらつきの程度が小さいほど精度が高いことを示していることになる。
【0056】
(9)精度情報生成処理部109は、相関情報と現況の交通情報とに基づいて求められた推定補完情報において、現況の交通情報が希薄な場合と希薄でない場合とに場合分けをして推定補完情報の精度情報を生成し、重み付け演算処理部111は、現況の交通情報が希薄が希薄でないかに応じて、現況の交通情報が希薄な場合と希薄でない場合とで場合分けをして生成された推定補完情報の精度情報を使用するようにした。これにより、現況の交通情報が希薄な場合であっても、精度の高い補完情報を提供することができる。
【0057】
―変形例―
(1)上述した実施の形態では、プローブカー11からのプローブ情報が欠損する場合について説明をした。しかし、プローブカー11からのプローブ情報に加えて、路上センサからの情報も考慮するようにしてもよい。すなわち、プローブカー11や路上センサのどちらからも情報が収集されないような場合に、上記で説明した補完情報を求めるようにしてもよい。路上センサからの情報も考慮する場合は、特定位置の路上センサから送信される一定時間に通過する車両の数などの情報から、旅行時間などの交通情報を演算するようにすればよい。
【0058】
(2)上述した実施の形態では、交通情報として旅行時間の例をあげて説明をした。しかし、交通情報としては特に旅行時間に限定する必要はない。プローブカー11から送信される情報に基づく様々な情報を交通情報としてもよい。例えば、渋滞情報を交通情報としてもよい。渋滞情報の場合は、渋滞、混雑、順調のような区別をするようにする。そして、プローブカー11のプローブ情報が欠損することにより取得できなかった道路(リンク)の渋滞情報を、上述と同様な手法で補完するようにすればよい。
【0059】
(3)上述した実施の形態では、補完情報として、推定補完情報、統計情報、前置補完情報の3種類を例にあげて説明をした。しかし、必ずしも3種類に限定する必要はない。これら3種類のうちいずれかの2種類でもよい。また、その他の方法による補完情報を加えて3種類以上であってもよい。
【0060】
(4)上述した実施の形態では、推定補完情報を生成するにあたり、過去情報DB101に格納された過去の交通情報を使用して主成分分析手法によりリンク間の相関情報を演算する例を説明した。しかし、必ずしも主成分分析手法に限定する必要はない。他にも独立成分分析や因子分析などのような統計手法を適用するようにしてもよい。
【0061】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。また、上述の実施の形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100...現況情報生成処理部、101...過去情報データベース、102...現況情報データベース、103...推定補完処理部、104...推定補完情報データベース、105...統計処理部、106...統計情報データベース、107...前置補完処理部、108...前置補完情報データベース、109...精度情報生成処理部、110...精度情報データベース、111...重み付け演算処理部、112...交通情報配信処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブカー情報に基づいて各道路の交通情報を生成する交通情報生成装置であって、
現況のプローブカー情報に基づいた現況の交通情報を記録する現況情報データベース手段と、
前記現況の交通情報を逐次記録し過去の交通情報を記録する過去情報データベース手段と、
前記過去情報データベース手段に記録された前記過去の交通情報と前記現況情報データベース手段に記録された前記現況の交通情報の少なくともいずれかを使用して、前記現況の交通情報においてプローブカー情報が欠損することによる欠損する道路の交通情報を補完するための補完情報を複数の種類作成する補完情報作成手段と、
前記過去情報データベース手段に記録された前記過去の交通情報と前記補完情報作成手段が作成した前記複数の種類の補完情報に基づき、前記補完情報作成手段が作成した前記複数の種類の補完情報の精度情報を生成する精度情報生成手段と、
前記精度情報生成手段が生成した前記複数の種類の補完情報の精度情報と前記補完情報作成手段が作成した前記複数の種類の補完情報に基づき、前記現況の交通情報においてプローブカー情報が欠損することによる欠損する道路の交通情報の補完情報を決定する補完情報決定手段とを備えることを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の交通情報生成装置において、
前記補完情報作成手段が作成する複数の種類の補完情報は、前記過去情報データベース手段に記録された前記過去の交通情報を使用して主成分分析手法により求めた道路間の相関情報と前記現況情報データベース手段に記録された現況の交通情報とに基づいて求められた補完情報と、前記過去情報データベース手段に記録された過去の交通情報を使用して統計処理により生成された補完情報と、前記過去情報データベース手段に記録された現時点から所定期間内の交通情報を使用して生成した補完情報とを有することを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の交通情報生成装置において、
前記精度情報生成手段は、該当する道路において、前記補完情報作成手段が作成した前記複数の種類の各補完情報と前記過去情報データベース手段に記録された前記過去の交通情報との違いに基づき、前記複数の種類の補完情報の精度情報を生成することを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の交通情報生成装置において、
前記補完情報決定手段は、前記複数の種類の補完情報のうち、前記精度情報が最も精度が高いことを示す補完情報を、前記現況の交通情報において欠損する道路の交通情報の補完情報として決定することを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の交通情報生成装置において、
前記補完情報決定手段は、前記複数の種類の補完情報の前記精度情報に応じた重みづけを前記複数の種類の補完情報に対して施した演算により、前記現況の交通情報において欠損する道路の交通情報の補完情報として決定することを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の交通情報生成装置において、
前記精度情報は、前記複数の種類の補完情報ごとに、道路、所定の時間的条件単位に求められることを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の交通情報生成装置において、
前記精度情報は、前記複数の種類の補完情報ごとに、道路、日種、時間帯を単位に求められることを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の交通情報生成装置において、
前記精度情報は、該当する道路において、前記補完情報作成手段が作成した前記複数の種類の各補完情報と前記過去情報データベース手段に記録された前記過去の交通情報とのばらつきの程度を示し、
前記ばらつきの程度が小さいほど精度が高いことを示すことを特徴とする交通情報生成装置。
【請求項9】
請求項2に記載の交通情報生成装置において、
前記精度情報生成手段は、前記相関情報と前記現況の交通情報とに基づいて求められた補完情報である推定補完情報において、前記現況の交通情報が希薄な場合と希薄でない場合とに場合分けをして、前記推定補完情報の精度情報を生成し、
前記補完情報決定手段は、前記現況の交通情報が希薄が希薄でないかに応じて、前記現況の交通情報が希薄な場合と希薄でない場合とで場合分けをして生成された前記推定補完情報の精度情報を使用することを特徴とする交通情報生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−118745(P2011−118745A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276570(P2009−276570)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】