説明

交通情報算出装置、プログラム、及び交通情報算出方法

【課題】複数のデータファイルに跨る走行リンクに関しても移動体の旅行時間を算出することが可能な交通情報算出装置を得る。
【解決手段】センタ装置5は、車両1の位置情報と各位置における時刻情報とを含む走行軌跡データを、所定量の走行軌跡データを含むデータファイル単位で取得する取得手段20と、取得手段20によって取得された走行軌跡データに基づいて、車両1が走行していると推定できるリンクである走行リンクに関して、車両1の旅行時間を算出する算出手段22とを備える。算出手段22は、車両1が走行リンクL2を走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルF1,F2に分かれている場合に、当該複数のデータファイルF1,F2に基づいて、走行リンクL2に関する車両1の旅行時間を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報算出装置、プログラム、及び交通情報算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の位置情報と各位置における時刻情報とに基づいて、走行リンクに関する車両の旅行時間を算出する旅行時間算出システムが実用化されている(例えば下記特許文献1参照)。車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含むプローブデータが、所定量のプローブデータを含むデータファイル単位で、車両からセンタ装置に送信される。センタ装置は、様々なリンクが描かれたリンク地図を参照することにより、ある走行リンクに車両が進入した時刻と、その走行リンクから車両が退出した時刻とに基づいて、その走行リンクに関する車両の旅行時間を算出する。
【0003】
図12は、リンク地図の一例を示す図である。この例では、ノードN1とノードN2とを繋ぐリンクL1と、ノードN2とノードN3とを繋ぐリンクL2と、ノードN3とノードN4とを繋ぐリンクL3とが描かれている。黒塗りの三角は、データファイルF1に含まれるプローブデータであり、黒塗りの四角は、データファイルF2に含まれるプローブデータである。ノードN1に最も近接するプローブデータDaに含まれる時刻情報と、ノードN2に最も近接するプローブデータDbに含まれる時刻情報とに基づいて、走行リンクL1に関する車両の旅行時間が算出される。同様に、ノードN3に最も近接するプローブデータDcに含まれる時刻情報と、ノードN4に最も近接するプローブデータDdに含まれる時刻情報とに基づいて、走行リンクL3に関する車両の旅行時間が算出される。
【0004】
【特許文献1】特許第3775394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
背景技術に係るセンタ装置は、データファイル単位でプローブデータを受信し、データファイル単位で旅行時間の算出処理を行う。従って、走行リンクの始点に対応するプローブデータと終点に対応するプローブデータとが、一つのデータファイル内に含まれていない場合には、その走行リンクに関しては旅行時間が算出されない。
【0006】
図12に示した例において、走行リンクL2に対応するプローブデータは、二つのデータファイルF1,F2に跨っている。つまり、走行リンクL2の始点(ノードN2)に対応するプローブデータDbと終点(ノードN3)に対応するプローブデータDcとが、一つのデータファイル内に含まれていない。従って、走行リンクL2に関する車両の旅行時間は算出されない。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、複数のデータファイルに跨る走行リンクに関しても移動体の旅行時間を算出することが可能な、交通情報算出装置、プログラム、及び交通情報算出方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る交通情報算出装置は、移動体の位置情報と各位置における時刻情報とを含む走行軌跡データを、所定量の走行軌跡データを含むデータファイル単位で取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された走行軌跡データに基づいて、前記移動体が走行していると推定できるリンクである走行リンクに関して、当該移動体の旅行時間を算出する算出手段とを備える交通情報算出装置であって、前記算出手段は、前記移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合に、当該複数のデータファイルに基づいて、当該走行リンクに関する当該移動体の旅行時間を算出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
第1の態様に係る交通情報算出装置によれば、算出手段は、移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合であっても、複数のデータファイルに基づいて、その走行リンクに関する移動体の旅行時間を算出する。従って、複数のデータファイルに跨る走行リンクに関しても、移動体の旅行時間を算出することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る交通情報算出装置は、第1の態様に係る交通情報算出装置において特に、走行リンクへの走行軌跡データの対応付けを行う対応付け手段をさらに備え、前記算出手段は、前記複数のデータファイルの中に、走行リンクへの対応付けが行われなかった残余の走行軌跡データが存在する場合に、当該残余の走行軌跡データと、別のデータファイルに含まれる走行軌跡データとに基づいて、別の走行リンクに関する前記移動体の旅行時間を算出することを特徴とするものである。
【0011】
第2の態様に係る交通情報算出装置によれば、複数のデータファイルの中に、走行リンクへの対応付けが行われなかった残余の走行軌跡データが存在する場合には、算出手段は、残余の走行軌跡データと、別のデータファイルに含まれる走行軌跡データとに基づいて、別の走行リンクに関する移動体の旅行時間を算出する。このように、残余の走行軌跡データを保存しておき、その残余の走行軌跡データと、別のデータファイルに含まれる走行軌跡データとを結合して、別の走行リンクに対応付けることによって、別の走行リンクに関する移動体の旅行時間を算出することができる。
【0012】
なお、「走行リンクへの走行軌跡データの対応付け」とは、走行軌跡データを走行リンクの始点から終点までの全体に対応付けることを意味し、走行リンクの一部にしか走行軌跡データを対応付けられない場合には、その走行リンクに関しては、走行軌跡データが対応付けられていることにはならない。
【0013】
また、前記算出手段は、前記対応付け手段によって前記別の走行リンクに対応付けられた前記残余の走行軌跡データに基づいて、別の走行リンクに関する部分的な旅行時間を算出し、また、前記対応付け手段によって当該別の走行リンクに対応付けられた前記別のデータファイルに含まれる走行軌跡データに基づいて、当該別の走行リンクに関する別の部分的な旅行時間を算出し、そして、前記部分的な旅行時間と、前記別の部分的な旅行時間とに基づいて、当該別の走行リンクに関する移動体の旅行時間を算出しても良い。ここで述べた態様は、上記第2の態様の変形例であり、複数のデータファイルに基づいて一の走行リンクに関する移動体の旅行時間を求めるという意味において、上記第2の態様と同様に上記第1の態様の範囲内に包含される。また、この態様においては、残余の走行軌跡データが別の走行リンクの一部に対応付けられ、別のデータファイルに含まれる走行軌跡データが当該別の走行リンクの他の一部に対応付けられる。従って、例外的にこの態様における「対応付け」とは、走行リンクの一部に走行軌跡データを対応付けることを意味する。
【0014】
本発明の第3の態様に係る交通情報算出装置は、第2の態様に係る交通情報算出装置において特に、前記走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、前記対応付け手段は、所定の条件に基づいて当該複数の候補のうちの一つを前記走行リンクとして選択して、当該走行リンクに走行軌跡データを対応付け、前記算出手段は、当該走行リンクに対応付けられた走行軌跡データに基づいて、当該走行リンクに関する前記移動体の旅行時間を算出することを特徴とするものである。
【0015】
第3の態様に係る交通情報算出装置によれば、走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、複数の候補のうちの一つを走行リンクとして選択して走行軌跡データを対応付け、選択された走行リンクに関する移動体の旅行時間を算出する。従って、候補の確定を待って走行リンクを遡及的に処理する場合と比較すると、リアルタイムな処理が可能となるとともに、処理負荷の軽減を図ることができる。
【0016】
本発明の第4の態様に係る交通情報算出装置は、第3の態様に係る交通情報算出装置において特に、前記別の走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、前記対応付け手段は、当該複数の候補のうち前記走行リンクに繋がるものを前記別の走行リンクとして選択して、当該別の走行リンクに、前記残余の走行軌跡データと、前記別のデータファイルに含まれる走行軌跡データとを対応付けることを特徴とするものである。
【0017】
第4の態様に係る交通情報算出装置によれば、別の走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、対応付け手段は、複数の候補のうち走行リンクに繋がるものを、別の走行リンクとして選択する。従って、走行リンク及び別の走行リンクの各候補が複数存在する場合に、選択された走行リンクと選択された別の走行リンクとが互いに繋がらないという事態の発生を回避することができる。
【0018】
本発明の第5の態様に係る交通情報算出装置は、第3の態様に係る交通情報算出装置において特に、前記別の走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、前記対応付け手段は、所定の条件に基づいて当該複数の候補のうちの一つを前記別の走行リンクとして選択して、当該別の走行リンクに、前記残余の走行軌跡データと、前記別のデータファイルに含まれる走行軌跡データとを対応付けることを特徴とするものである。
【0019】
第5の態様に係る交通情報算出装置によれば、別の走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、対応付け手段は、所定の条件に基づいて、複数の候補のうちの一つを別の走行リンクとして選択する。従って、走行リンクび別の走行リンクの各候補が複数存在する場合において、走行リンクの選択が誤っていた場合に、それに伴って別の走行リンクの選択も誤るという事態の発生を回避することができる。
【0020】
本発明の第6の態様に係る交通情報算出装置は、第2の態様に係る交通情報算出装置において特に、前記対応付け手段は、前記走行リンクの候補が一つのみ存在する場合に、前記走行リンクに走行軌跡データを対応付けることを特徴とするものである。
【0021】
第6の態様に係る交通情報算出装置によれば、対応付け手段は、走行リンクの候補が一つのみ存在する場合に、走行リンクに走行軌跡データを対応付ける。つまり、走行リンクが確定的な走行リンクである場合にのみ、その走行リンクに走行軌跡データが対応付けられ、その走行リンクに関する移動体の旅行時間が算出される。従って、走行リンクの候補が複数存在する場合において、走行リンクの選択を誤った場合に誤った旅行時間が蓄積されてしまうという事態の発生を回避することができる。
【0022】
本発明の第7の態様に係る交通情報算出装置は、第2の態様に係る交通情報算出装置において特に、前記走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、当該走行リンクに対応付けられ得る走行軌跡データが記憶され、当該複数の候補のうちの一つが当該走行リンクとして後に選択された場合には、前記対応付け手段は、記憶した当該走行軌跡データを、選択された当該走行リンクに対応付け、前記算出手段は、前記対応付け手段によって当該走行リンクに対応付けられた当該走行軌跡データに基づいて、当該走行リンクに関する前記移動体の旅行時間を算出することを特徴とするものである。
【0023】
第7の態様に係る交通情報算出装置によれば、走行リンクに関して複数の候補が存在する場合において、複数の候補のうちの一つが後に選択された場合には、対応付け手段は、記憶しておいた走行軌跡データを、選択された走行リンクに対応付け、算出手段は、選択された走行リンクに関する移動体の旅行時間を算出する。このように、候補の確定を待って走行リンクを遡及的に処理することにより、走行リンクの選択を誤った場合に誤った旅行時間が蓄積されてしまうという事態の発生を回避することができる。
【0024】
本発明の第8の態様に係る交通情報算出装置は、第7の態様に係る交通情報算出装置において特に、前記対応付け手段は、前記走行リンクに対応付けられ得る前記走行軌跡データを、前記複数の候補のうちの一つに対応付け、前記算出手段は、前記対応付け手段によって当該複数の候補のうちの一つに対応付けられた当該走行軌跡データに基づいて、当該複数の候補のうちの一つに関する前記移動体の旅行時間を算出し、当該複数の候補のうちの一つが当該走行リンクとして後に選択されない場合には、前記算出手段によって算出された当該旅行時間が、当該走行リンクに関する前記移動体の旅行時間として出力されることを特徴とするものである。
【0025】
第8の態様に係る交通情報算出装置によれば、走行リンクに関する移動体の旅行時間を暫定的に算出しておき、走行リンクが後に確定しなかった場合には、暫定的に算出しておいた旅行時間が確定して出力される。従って、走行リンクが後に確定しなかった場合であっても、暫定的な旅行時間を強制的に確定させることにより、走行リンクに関する移動体の旅行時間を蓄積することができる。
【0026】
本発明の第9の態様に係るプログラムは、コンピュータを、移動体の位置情報と各位置における時刻情報とを含む走行軌跡データを、所定量の走行軌跡データを含むデータファイル単位で取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された走行軌跡データに基づいて、前記移動体が走行していると推定できるリンクである走行リンクに関して、当該移動体の旅行時間を算出する算出手段ととして機能させるためのプログラムであって、前記算出手段は、前記移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合に、当該複数のデータファイルに基づいて、当該走行リンクに関する当該移動体の旅行時間を算出することを特徴とするものである。
【0027】
第9の態様に係るプログラムによれば、算出手段は、移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合であっても、複数のデータファイルに基づいて、その走行リンクに関する移動体の旅行時間を算出する。従って、複数のデータファイルに跨る走行リンクに関しても、移動体の旅行時間を算出することが可能となる。
【0028】
本発明の第10の態様に係る交通情報算出方法は、(A)移動体の位置情報と各位置における時刻情報とを含む走行軌跡データを、所定量の走行軌跡データを含むデータファイル単位で取得するステップと、(B)前記ステップ(A)によって取得された走行軌跡データに基づいて、前記移動体が走行していると推定できるリンクである走行リンクに関して、当該移動体の旅行時間を算出するステップとを備える交通情報算出方法であって、前記ステップ(B)では、前記移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合に、当該複数のデータファイルに基づいて、当該走行リンクに関する当該移動体の旅行時間が算出されることを特徴とするものである。
【0029】
第10の態様に係る交通情報算出方法によれば、ステップ(B)では、移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合には、複数のデータファイルに基づいて、その走行リンクに関する移動体の旅行時間が算出される。従って、複数のデータファイルに跨る走行リンクに関しても、移動体の旅行時間を算出することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数のデータファイルに跨る走行リンクに関しても移動体の旅行時間を算出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0032】
図1は、本発明の実施の形態に係る交通情報提供システムの全体構成を概略的に示す図である。この交通情報提供システムは、少なくとも車両の位置情報と各位置における時刻情報とを含む走行軌跡データ(以下「プローブデータ」と称す)を、特定の車載装置を搭載した車両からセンタ装置が収集し、センタ装置は、各車両から収集したプローブデータを統計的に処理することによって、道路の渋滞状況の案内や最適経路の案内等の様々な交通情報サービスを、各車両に提供するものである。
【0033】
図1を参照して、交通情報提供システムは、車両1、基地局4、及びセンタ装置5(交通情報算出装置)を含んで構成されている。車両1と基地局4との間では、無線による相互通信が可能である。また、基地局4とセンタ装置5との間では、通信ケーブル6を介して、有線による相互通信が可能である。但し、基地局4とセンタ装置5との間の通信も無線であっても良い。
【0034】
車両1には車載装置2が搭載されている。車載装置2は、車速センサ、方位センサ、GPS受信機、メモリ、及びタイマ等を含んで構成されている。車載装置2は、車両1のプローブデータを一定時間間隔毎(例えば数秒毎)又は一定走行距離毎(例えば数10m毎)に収集して、メモリに蓄積する。また、車載装置2には携帯電話3を接続することが可能であり、メモリに蓄積されたプローブデータを、所定容量のデータファイル単位で、携帯電話3を介して外部に送信することが可能である。車両1から送信されたプローブデータは、基地局4を介して、センタ装置5に送られる。
【0035】
プローブデータを送信するタイミングは任意である。例えば、車両1の搭乗者が渋滞状況の案内サービスの提供を受けることを希望した場合、搭乗者は、その案内サービスの要求信号を、車載装置2から携帯電話3を介してセンタ装置5に送信する。その際、その時点でメモリに蓄積されているプローブデータが、要求信号と併せてセンタ装置5に送信される。
【0036】
図2は、センタ装置5の構成を概略的に示す図である。センタ装置5は、送受信部10、処理装置11、記憶媒体12、メモリ13、及びデータベース14,15を備えて構成されている。
【0037】
送受信部10は、基地局4と処理装置11との間でのデータの送受信を制御する。処理装置11は、コンピュータによって構成されている。記憶媒体12は、ハードディスク又はDVD等の任意の媒体であり、処理装置11を動作させるためのプログラム16が記憶されている。メモリ13は、ROM又はRAM等の半導体メモリである。データベース14には、車両1から受信したプローブデータが格納される。データベース15には、地図データが格納されている。地図データには、リンクが様々に描かれたリンク地図が含まれる。
【0038】
図3は、処理装置11の機能構成を概略的に示す図である。処理装置11がプログラム16に基づいて動作することにより、処理装置11は、取得手段20、対応付け手段21、及び算出手段22としての機能を実現する。換言すれば、プログラム16は、処理装置11を、取得手段20、対応付け手段21、及び算出手段22として機能させるためのプログラムである。
【0039】
図4は、リンク地図の一例を示す図である。この例では、ノードN1とノードN2とを繋ぐリンクL1と、ノードN2とノードN3とを繋ぐリンクL2と、ノードN3とノードN4とを繋ぐリンクL3とが描かれている。黒塗りの三角は、データファイルF1に含まれるプローブデータであり、黒塗りの四角は、データファイルF1の次に受信したデータファイルF2に含まれるプローブデータである。
【0040】
図5は、プログラム16に基づいて処理装置11が実行する処理の流れを示すフローチャートである。以下、図1〜5を参照して、本実施の形態に係る交通情報算出方法について説明する。
【0041】
まずステップP1において、処理装置11(取得手段20)は、車両1から送信されたデータファイルF1を受信する。データファイルF1は、データベース14に格納される。図4の(A)に示すように、データファイルF1には、リンクL1の全部に対応するプローブデータと、リンクL2の一部(上流部)に対応するプローブデータとが含まれている。
【0042】
次にステップP2において、処理装置11は、処理すべき対象のプローブデータが存在するか否かを判定する。この時点ではデータベース14にデータファイルF1が格納されているため、ステップP2における判定の結果は「YES」となる。
【0043】
次にステップP3において、処理装置11は、保存した残余のプローブデータが存在するか否かを判定する。この時点では残余のプローブデータ(詳細は後述する)が存在していないため、ステップP3における判定の結果は「NO」となる。
【0044】
次にステップP6において、処理装置11(対応付け手段21)は、データファイルF1に含まれているプローブデータを、リンク地図に描かれているいずれかのリンクに対応付ける。ここでは、データファイルF1内に、リンクの始点に対応するプローブデータと終点に対応するプローブデータとが含まれているリンク(つまり、車両1が走行していると推定できるリンク。以下「走行リンク」とも称す。)に関して、プローブデータの対応付けが行われる。図4の(A)に示すように、データファイルF1内には、リンクL1の始点(ノードN1)に対応するプローブデータDaと、終点(ノードN2)に対応するプローブデータDbとが含まれている。従って、走行リンクL1とプローブデータとの対応付けが行われる。
【0045】
一方、データファイルF1内には、リンクL2の始点(ノードN2)に対応するプローブデータDbは含まれているが、終点(ノードN3)に対応するプローブデータが含まれていない。従って、この時点ではリンクL2とプローブデータとの対応付けは行われない。本明細書において、データファイルに含まれる複数のプローブデータのうち、走行リンクとの対応付けが行われなかったプローブデータを、「残余のプローブデータ」と称する。図4の(B)に示すデータG1が、データファイルF1における残余のプローブデータである。
【0046】
次にステップP7において、処理装置11(算出手段22)は、ステップP6によってプローブデータが対応付けられた走行リンクL1に関して、車両1の旅行時間を算出する。具体的に、処理装置11は、ノードN1に最も近接するプローブデータDaに含まれる時刻情報と、ノードN2に最も近接するプローブデータDbに含まれる時刻情報とに基づいて、走行リンクL1に関する車両1の旅行時間を算出する。その後、図4の(B)に示すように、処理が完了した部分のデータファイルF1が、データベース14から削除される。
【0047】
なお、プローブデータを取得する間隔が比較的粗く、プローブデータDaの取得位置がノードN1の位置から所定距離以上離れている場合には、以下のようにしてノードN1の通過時刻を求めても良い。まず、プローブデータDaとは反対側でノードN1に最も近接するプローブデータ(以下「対向プローブデータ」と称す)を特定する。ここでは、プローブデータDaの取得位置はノードN1よりも上流側であり、対向プローブデータの取得位置はノードN1よりも下流側であるとする。次に、プローブデータDaに含まれる時刻情報と、対向プローブデータに含まれる時刻情報との時間差を求める。また、プローブデータDaの取得位置と対向プローブデータの取得位置との間の距離に対する、プローブデータDaの取得位置とノードN1の位置との間の距離の割合を求める。次に、その割合を上記時間差に乗算した値を、プローブデータDaに含まれる時刻情報に加算する。これにより、車両1のノードN1の通過時刻を演算によって求めることができる。なお、プローブデータDaの取得位置がノードN1よりも下流側であり、対向プローブデータの取得位置がノードN1よりも上流側である場合には、上記割合を上記時間差に乗算した値を、対向プローブデータに含まれる時刻情報に加算することにより、車両1のノードN1の通過時刻を求めることができる。また、プローブデータDbの取得位置がノードN2の位置から所定距離以上離れている場合にも、上記と同様の手法により、車両1のノードN2の通過時刻を演算によって求めることができる。
【0048】
次にステップP8において、処理装置11は、残余のプローブデータが存在するか否かを判定する。この時点では残余のプローブデータとしてデータG1が存在するため、ステップP8における判定の結果は「YES」となる。
【0049】
次にステップP9において、処理装置11は、残余のプローブデータ(データG1)をデータベース14内に保存する。
【0050】
次にステップP1において、処理装置11(取得手段20)は、車両1から送信されたデータファイルF2を受信する。データファイルF2は、データベース14に格納される。図4の(C)に示すように、データファイルF2には、リンクL2の一部(下流部)に対応するプローブデータと、リンクL3の全部に対応するプローブデータとが含まれている。
【0051】
次にステップP2において、処理装置11は、処理すべき対象のプローブデータが存在するか否かを判定する。この時点ではデータベース14にデータファイルF2が格納されているので、ステップP2における判定の結果は「YES」となる。
【0052】
次にステップP3において、処理装置11は、保存した残余のプローブデータが存在するか否かを判定する。この時点では残余のプローブデータ(データG1)が存在しているため、ステップP3における判定の結果は「YES」となる。
【0053】
次にステップP4において、処理装置11は、所定の結合条件が満たされているか否かを判定する。例えば、車両1に関する、保存している残余のプローブデータのうちの最終のプローブデータに含まれる時刻情報と、同一の車両1に関する、新たに取得したデータファイルF2の先頭のプローブデータに含まれる時刻情報とを比較し、両者の時間間隔が所定値(例えば数10秒)を超えていれば、結合条件を満たしていないと判定する。あるいは、車両1に関する、保存している残余のプローブデータのうちの最終のプローブデータに含まれる位置情報と、同一の車両1に関する、新たに取得したデータファイルF2の先頭のプローブデータに含まれる位置情報とを比較し、両者の距離間隔が所定値(例えば数100m)を超えていれば、結合条件を満たしていないと判定する。
【0054】
この例の場合は、データファイルF2はデータファイルF1に連続しており、時間間隔も距離間隔も所定値以下であるため、ステップP4における判定の結果は「YES」となる。
【0055】
次にステップP5において、処理装置11は、保存している残余のプローブデータ(データG1)を、データファイルF2に含まれるプローブデータの前に結合する。
【0056】
次にステップP6において、処理装置11(対応付け手段21)は、結合されたプローブデータを、リンク地図に描かれているいずれかのリンクに対応付ける。ここでは、残余のプローブデータ(データG1)と、データファイルF2の一部のプローブデータとが、走行リンクL2に対応付けられる。また、走行リンクL3とプローブデータとの対応付けも行われる。
【0057】
次にステップP7において、処理装置11(算出手段22)は、ステップP6によってプローブデータが対応付けられた走行リンクL2,L3に関して、車両1の旅行時間を算出する。具体的に、処理装置11は、データG1の先頭のプローブデータに含まれる時刻情報と、ノードN3に最も近接するプローブデータDcに含まれる時刻情報とに基づいて、走行リンクL2に関する車両1の旅行時間を算出する。また、処理装置11は、ノードN3に最も近接するプローブデータDcに含まれる時刻情報と、ノードN4に最も近接するプローブデータDdに含まれる時刻情報とに基づいて、走行リンクL3に関する車両1の旅行時間を算出する。その後、図4の(D)に示すように、処理が完了したデータG1及びデータファイルF2がデータベース14から削除される。
【0058】
その後は、上述のステップP8以降と同様の処理が行われる。なお、ステップP3における判定の結果が「NO」である場合は、ステップP4,P5における各処理が省略される。また、ステップP4における判定の結果が「NO」である場合は、ステップP5における処理が省略される。また、ステップP8における判定の結果が「NO」である場合は、ステップP9における処理が省略される。また、ステップP2における判定の結果が「NO」である場合は、処理が終了される。
【0059】
本実施の形態によれば、算出手段22は、車両1が走行リンクL2を走行しているときのプローブデータが複数のデータファイルF1,F2に分かれている場合であっても、複数のデータファイルF1,F2に基づいて、その走行リンクL2に関する車両1の旅行時間を算出する。従って、複数のデータファイルF1,F2に跨る走行リンクL2に関しても、車両1の旅行時間を算出することが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、データファイルF1に含まれる複数のプローブデータの中に、走行リンクL1に対応付けられなかった残余のプローブデータ(データG1)が存在する場合には、対応付け手段21は、データG1と、データファイルF2に含まれるプローブデータの一部とを、走行リンクL2に対応付ける。そして、算出手段22は、走行リンクL2に対応付けられたこれらのデータに基づいて、走行リンクL2に関する車両1の旅行時間を算出する。このように、走行リンクL2が複数のデータファイルF1,F2に跨る場合であっても、残余のプローブデータを保存しておき、その残余のプローブデータと、データファイルF2に含まれるプローブデータとを結合し、走行リンクL2に対応付けることによって、走行リンクL2に関する車両1の旅行時間を算出することができる。
【0061】
<第1の変形例>
図6は、リンク地図の一例を示す図である。この例では、互いに繋がるリンクL1a〜L3aと、リンクL1a〜L3aに並走するリンクL1b〜L3bとが描かれている。データファイルF1を対応付ける走行リンクL1の候補として、リンクL1aとリンクL1bとが存在する。
【0062】
対応付け手段21は、リンクL1a,L1bの各地点での位置座標と、データファイルF1に含まれる複数のプローブデータの各位置座標とに基づき、リンクL1a,L1bのうち車両1との距離が近いリンク(最短距離を得たリンク)を選択して、データファイルF1を対応付ける。そして、選択したリンクに関する情報を、メモリ13に記憶する。但し、他の任意の手法によってリンクL1a,L1bの選択を行っても良い。
【0063】
この例では、データファイルF1はリンクL1bよりもリンクL1aに近接しているため、リンクL1aが走行リンクとして選択され、データファイルF1は走行リンクL1aに対応付けられる。そして、走行リンクL1aを選択した旨に関する情報が、メモリ13に記憶される。なお、上記と同様に、走行リンクL1aに対応付けられなかったデータG1は、データベース14内に保存される。
【0064】
算出手段22は、走行リンクL1aに関する車両1の旅行時間を算出する。算出された旅行時間は、ユーザへのサービスの提供のために利用可能な、確定的な情報として出力される。
【0065】
次に、データファイルF2に関しては、データG1及びデータファイルF2を対応付ける走行リンクL2の候補として、リンクL2aとリンクL2bとが存在する。
【0066】
対応付け手段21は、メモリ13を参照することにより、リンクL2a,L2bのうち、直前に選択されたリンクL1a又はL1bに繋がっているリンクを選択して、データG1及びデータファイルF2を対応付ける。
【0067】
この例では、直前に選択されたリンクが走行リンクL1aであるため、走行リンクL1aに繋がっているリンクL2aが走行リンクとして選択され、データG1及びデータファイルF2は走行リンクL2aに対応付けられる。また、走行リンクL2aを選択した旨に関する情報が、メモリ13に記憶される。
【0068】
算出手段22は、走行リンクL2aに関する車両1の旅行時間を算出する。算出された旅行時間は、ユーザへのサービスの提供のために利用可能な、確定的な情報として出力される。
【0069】
第1の変形例によれば、走行リンクL1の候補として複数のリンクL1a,L1bが存在する場合には、対応付け手段21は、複数の候補のうちの一つを選択してデータファイルF1を対応付け、算出手段22は、選択された走行リンクに関して、車両1の旅行時間を確定的に算出する。従って、後に候補が確定することを待って走行リンクL1を遡及的に処理する場合と比較すると、リアルタイムな処理が可能となるとともに、処理負荷の軽減を図ることができる。
【0070】
また、走行リンクL2の候補として複数のリンクL2a,L2bが存在する場合には、対応付け手段21は、複数の候補のうち上流の走行リンクL1aに繋がるリンクL2aを、走行リンクL2として選択する。従って、各走行リンクL1,L2の候補が複数存在する場合に、選択された走行リンクL1(例えばリンクL1a)と選択された走行リンクL2(例えばリンクL2b)とが互いに繋がらないという事態の発生を回避することができる。
【0071】
<第2の変形例>
図7は、リンク地図の一例を示す図である。図6と同様に、互いに繋がるリンクL1a〜L3aと、リンクL1a〜L3aに並走するリンクL1b〜L3bとが描かれている。
【0072】
データファイルF1を対応付ける走行リンクL1の候補として、リンクL1aとリンクL1bとが存在する。第2の変形例でも、第1の変形例と同様の手法によって、走行リンクL1aが選択される。但し、第2の変形例では、走行リンクL1aを選択した旨に関する情報をメモリ13に記憶する必要はない。また、算出手段22は、走行リンクL1aに関する車両1の旅行時間を算出する。算出された旅行時間は、ユーザへのサービスの提供のために利用可能な、確定的な情報として出力される。
【0073】
次に、データファイルF2に関しては、データG1及びデータファイルF2を対応付ける走行リンクL2の候補として、リンクL2aとリンクL2bとが存在する。第2の変形例では、対応付け手段21は、リンクL2a,L2bの各地点での位置座標と、データG1及びデータファイルF2に含まれる複数のプローブデータの各位置座標とに基づき、リンクL2a,L2bのうち車両1との距離が近いリンク(最短距離を得たリンク)を走行リンクとして選択して、データG及びデータファイルF2を対応付ける。但し、他の任意の手法によってリンクL2a,L2bの選択を行っても良い。
【0074】
この例では、データファイルF2との最短距離を与えるのはリンクL2bであるため、リンクL2bが走行リンクとして選択され、データG1及びデータファイルF2は走行リンクL2bに対応付けられる。
【0075】
算出手段22は、走行リンクL2bに関する車両1の旅行時間を算出する。算出された旅行時間は、ユーザへのサービスの提供のために利用可能な、確定的な情報として出力される。
【0076】
第2の変形例によれば、走行リンクL2の候補として複数のリンクL2a,L2bが存在する場合には、対応付け手段21は、車両1とリンクL2a,L2bとの距離に基づいて、複数の候補のうちの一つを走行リンクL2として選択する。従って、各走行リンクL1,L2の候補が複数存在する場合において、上流の走行リンクL1の選択が誤っていた場合に、それに伴って下流の走行リンクL2の選択も誤るという事態の発生を回避することができる。つまり、図7に示した例において、実際には車両1はリンクL1b→L2b→L3bを走行しているにも拘わらず、走行リンクL1の選択において、リンクL1bではなくリンクL1aが誤って選択された場合を想定する。この場合、上記第1の変形例によると、リンクL1aに繋がるリンクL2a,L3aが、走行リンクL2,L3として誤って選択されることとなる。つまり、上流のリンクL1に関する選択の誤りに連鎖して、その下流の全てのリンクL2,L3の選択も誤ることとなる。これに対して第2の変形例では、リンクL2に関してはリンクL2a,L2bからの選択が独自に行われ、リンクL3に関してはリンクL3a,L3bからの選択が独自に行われる。従って、上流のリンクL1に関する選択が誤っていた場合であっても、その誤りに連鎖して下流の全てのリンクL2,L3の選択も誤るという事態は回避される。
【0077】
<第3の変形例>
上記第1及び第2の変形例とは異なり、データファイルF1を対応付ける走行リンクL1の候補が複数存在する場合には、データファイルF1とリンクL1a又はリンクL1bとを対応付けず、走行リンクL1に関しては車両1の旅行時間を算出しないという運用も可能である。つまり、図4に示した例のように、データファイルF1を対応付ける走行リンクL1の候補が一つのみ存在する場合に、対応付け手段21はデータファイルF1と走行リンクL1とを対応付ける。
【0078】
第3の変形例によれば、走行リンクL1の候補として複数のリンクL1a,L1bが存在する場合において、走行リンクL1の選択を誤った場合に誤った旅行時間が蓄積されることに起因して、誤った情報がユーザに提供されてしまうという事態の発生を回避することができる。
【0079】
<第4の変形例>
図8は、リンク地図の一例を示す図である。この例では、互いに繋がるリンクL1a,L2a,L4と、互いに繋がるリンクL1b,L2b,L5とが描かれている。リンクL1a,L2aとリンクL1b,L2bとは並走している。
【0080】
データファイルF1を対応付ける走行リンクL1の候補として、リンクL1aとリンクL1bとが存在する。対応付け手段21は、リンクL1a,L1bの各地点での位置座標と、データファイルF1に含まれる複数のプローブデータの各位置座標とに基づき、リンクL1a,L1bのうち車両1との距離が近いリンク(最短距離を得たリンク)を走行リンクとして選択して、データファイルF1を暫定的に対応付ける。但し、他の任意の手法によってリンクL1a,L1bの選択を行っても良い。
【0081】
この例では、データファイルF1はリンクL1aよりもリンクL1bに近接しているため、リンクL1bが走行リンクとして選択され、データファイルF1は走行リンクL1bに暫定的に対応付けられる。上記と同様に、走行リンクL1bに対応付けられなかったデータG1は、データベース14内に保存される。また、第4の変形例では、走行リンクL1bに暫定的に対応付けられたプローブデータ(データG2)についても、データベース14内に保存される。
【0082】
算出手段22は、走行リンクL1bに暫定的に対応付けられたデータG2に基づいて、走行リンクL1bに関する車両1の旅行時間を暫定的に算出する。暫定的に算出された旅行時間は、確定的な情報ではないため、この時点では出力されない。
【0083】
データファイルF2に関しては、データG1及びデータファイルF2を対応付ける走行リンクL2の候補として、リンクL2aとリンクL2bとが存在する。
【0084】
一方、リンクL4とリンクL5とは、互いに離れる方向に延びている。従って、データファイルF2を受信し、その中に含まれるプローブデータの位置情報を参照することにより、データファイルF2を、リンクL4,L5の一方に確定的に対応付けることができる。そして、対応付けられた走行リンクL4又は走行リンクL5の上流に繋がっているリンクL1a,L2a又はリンクL1b,L2bを、確定的な走行リンクとして、遡及的に特定することができる。
【0085】
この例では、データファイルF2は走行リンクL5に対応付けられるため、走行リンクL5の上流に繋がっているリンクL1b,L2bが、確定的な走行リンクとして、遡及的に特定される。
【0086】
従って、算出手段22は、走行リンクL1bに関して暫定的に算出しておいた旅行時間を、確定的な情報として出力する。もしも、選択を誤って走行リンクL1aに関する旅行時間が暫定的に算出されていた場合には、その情報は破棄し、データベース14内に保存されているデータG2を走行リンクL1bに正しく対応付けた後に、走行リンクL1bに関する車両1の旅行時間を確定的に算出する。あるいは、暫定的に旅行時間を算出しておくのではなく、走行リンクL1が後に確定した後に、走行リンクL1に関する旅行時間を算出しても良い。
【0087】
また、対応付け手段21は、データG1とデータファイルF2の一部とを走行リンクL2bに確定的に対応付け、算出手段22は、走行リンクL2bに関する車両1の旅行時間を算出する。さらに、データファイルF2と走行リンクL5との対応付けも行われ、算出手段22は、走行リンクL5に関する車両1の旅行時間を確定的に算出する。
【0088】
図9は、第4の変形例において処理装置11が実行する処理の流れを示すフローチャートである。ステップP10において、直前のステップP7で旅行時間を算出した走行リンクが暫定的な走行リンクであるか否かが判定される。上記の例では、走行リンクL1bに関する旅行時間を暫定的に算出した時点では、走行リンクL1bは暫定的な走行リンクであるため、ステップSP10における判定の結果は「YES」となる。
【0089】
次にステップP11において、暫定的な走行リンクL1bに対応するプローブデータ(データG2)がデータベース14内に保存される。その後、ステップP8に移行する。なお、ステップP10における判定の結果が「NO」である場合は、ステップP11における処理が省略される。ステップP10,P11以外の各ステップの処理内容は図5と同様であるため、重複した説明は省略する。
【0090】
図10は、図8と同様のリンク地図を示す図である。図10に示すようにデータファイルF2が受信されず、走行リンクL1,L2の候補を遡及的に確定できない場合には、走行リンクL1bに関して暫定的に算出しておいた旅行時間を、確定的な情報として算出手段22から出力する。
【0091】
第4の変形例によれば、走行リンクL1の候補として複数のリンクL1a,L1bが存在する場合において、複数の候補のうちの一つが後に確定した場合には、対応付け手段21は、保存しておいたプローブデータ(データG2)を、確定された走行リンクL1bに対応付け、算出手段22は、確定された走行リンクL1bに関する車両1の旅行時間を算出する。このように、候補の確定を待って走行リンクL1を遡及的に処理することにより、走行リンクL1の選択を誤った場合に誤った旅行時間が蓄積されてしまうという事態の発生を回避することができる。
【0092】
また、第4の変形例によれば、走行リンクL1に関する車両1の旅行時間を暫定的に算出しておき、走行リンクL1が後に確定しなかった場合には、暫定的に算出しておいた旅行時間が確定される。従って、走行リンクL1が後に確定しなかった場合であっても、暫定的な旅行時間を強制的に確定させることにより、走行リンクL1に関する車両1の旅行時間を得ることができる。
【0093】
<第5の変形例>
図11は、リンク地図の一例を示す図である。残余のプローブデータ(データG1)を保存する代わりに、データG1に基づいて算出した部分的な旅行時間(以下「部分旅行時間」と称す)T1を、データベース14内に保存しても良い。対応付け手段21は、データG1を走行リンクL2に対応付け、算出手段22は、ノードN2に最も近接するプローブデータDbに含まれる時刻情報と、データG1の最終のプローブデータDcに含まれる時刻情報とに基づいて、データG1に対応する部分旅行時間T1を算出する。
【0094】
データファイルF2を受信した後、対応付け手段21は、データファイルF2を走行リンクL2に対応付け、算出手段22は、データファイルF2の先頭のプローブデータDdに含まれる時刻情報と、ノードN3に最も近接するプローブデータDeに含まれる時刻情報とに基づいて、部分旅行時間T2を算出する。
【0095】
そして、算出手段22は、部分旅行時間T1と部分旅行時間T2とを加算することにより、リンクL2に関する車両1の旅行時間T3を算出する。
【0096】
<第6の変形例>
以上の説明では、プローブデータを車両1からセンタ装置5に送信し、センタ装置5内で旅行時間の算出処理を実行する例について述べた。しかし、これに限らず、車両1の車載装置2にデータベース14,15やメモリ13等を接続することにより、車載装置2がプローブデータに基づいて旅行時間の算出処理を行っても良い。
【0097】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施の形態に係る交通情報提供システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】センタ装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】処理装置の機能構成を概略的に示す図である。
【図4】リンク地図の一例を示す図である。
【図5】プログラムに基づいて処理装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】リンク地図の一例を示す図である。
【図7】リンク地図の一例を示す図である。
【図8】リンク地図の一例を示す図である。
【図9】第4の変形例において処理装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】リンク地図の一例を示す図である。
【図11】リンク地図の一例を示す図である。
【図12】リンク地図の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0099】
1 車両
5 センタ装置
11 処理装置
12 記憶媒体
16 プログラム
20 取得手段
21 対応付け手段
22 算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置情報と各位置における時刻情報とを含む走行軌跡データを、所定量の走行軌跡データを含むデータファイル単位で取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された走行軌跡データに基づいて、前記移動体が走行していると推定できるリンクである走行リンクに関して、当該移動体の旅行時間を算出する算出手段と
を備える交通情報算出装置であって、
前記算出手段は、前記移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合に、当該複数のデータファイルに基づいて、当該走行リンクに関する当該移動体の旅行時間を算出するように構成されていることを特徴とする、交通情報算出装置。
【請求項2】
走行リンクへの走行軌跡データの対応付けを行う対応付け手段をさらに備え、
前記算出手段は、前記複数のデータファイルの中に、走行リンクへの対応付けが行われなかった残余の走行軌跡データが存在する場合に、当該残余の走行軌跡データと、別のデータファイルに含まれる走行軌跡データとに基づいて、別の走行リンクに関する前記移動体の旅行時間を算出する、請求項1に記載の交通情報算出装置。
【請求項3】
前記走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、
前記対応付け手段は、所定の条件に基づいて当該複数の候補のうちの一つを前記走行リンクとして選択して、当該走行リンクに走行軌跡データを対応付け、
前記算出手段は、当該走行リンクに対応付けられた走行軌跡データに基づいて、当該走行リンクに関する前記移動体の旅行時間を算出する、請求項2に記載の交通情報算出装置。
【請求項4】
前記別の走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、前記対応付け手段は、当該複数の候補のうち前記走行リンクに繋がるものを前記別の走行リンクとして選択して、当該別の走行リンクに、前記残余の走行軌跡データと、前記別のデータファイルに含まれる走行軌跡データとを対応付ける、請求項3に記載の交通情報算出装置。
【請求項5】
前記別の走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、前記対応付け手段は、所定の条件に基づいて当該複数の候補のうちの一つを前記別の走行リンクとして選択して、当該別の走行リンクに、前記残余の走行軌跡データと、前記別のデータファイルに含まれる走行軌跡データとを対応付ける、請求項3に記載の交通情報算出装置。
【請求項6】
前記対応付け手段は、前記走行リンクの候補が一つのみ存在する場合に、当該走行リンクに走行軌跡データを対応付ける、請求項2に記載の交通情報算出装置。
【請求項7】
前記走行リンクに関して複数の候補が存在する場合には、当該走行リンクに対応付けられ得る走行軌跡データが記憶され、
当該複数の候補のうちの一つが当該走行リンクとして後に選択された場合には、
前記対応付け手段は、記憶した当該走行軌跡データを、選択された当該走行リンクに対応付け、
前記算出手段は、前記対応付け手段によって当該走行リンクに対応付けられた当該走行軌跡データに基づいて、当該走行リンクに関する前記移動体の旅行時間を算出する、請求項2に記載の交通情報算出装置。
【請求項8】
前記対応付け手段は、前記走行リンクに対応付けられ得る前記走行軌跡データを、前記複数の候補のうちの一つに対応付け、
前記算出手段は、前記対応付け手段によって当該複数の候補のうちの一つに対応付けられた当該走行軌跡データに基づいて、当該複数の候補のうちの一つに関する前記移動体の旅行時間を算出し、
当該複数の候補のうちの一つが当該走行リンクとして後に選択されない場合には、前記算出手段によって算出された当該旅行時間が、当該走行リンクに関する前記移動体の旅行時間として出力される、請求項7に記載の交通情報算出装置。
【請求項9】
コンピュータを、
移動体の位置情報と各位置における時刻情報とを含む走行軌跡データを、所定量の走行軌跡データを含むデータファイル単位で取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された走行軌跡データに基づいて、前記移動体が走行していると推定できるリンクである走行リンクに関して、当該移動体の旅行時間を算出する算出手段と
として機能させるためのプログラムであって、
前記算出手段は、前記移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合に、当該複数のデータファイルに基づいて、当該走行リンクに関する当該移動体の旅行時間を算出することを特徴とする、プログラム。
【請求項10】
(A)移動体の位置情報と各位置における時刻情報とを含む走行軌跡データを、所定量の走行軌跡データを含むデータファイル単位で取得するステップと、
(B)前記ステップ(A)によって取得された走行軌跡データに基づいて、前記移動体が走行していると推定できるリンクである走行リンクに関して、当該移動体の旅行時間を算出するステップと
を備える交通情報算出方法であって、
前記ステップ(B)では、前記移動体が走行リンクを走行しているときの走行軌跡データが複数のデータファイルに分かれている場合に、当該複数のデータファイルに基づいて、当該走行リンクに関する当該移動体の旅行時間が算出されることを特徴とする、交通情報算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−157091(P2010−157091A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334923(P2008−334923)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】