説明

交通感知及びモニタリング装置

交通感知及びモニタリング装置(100)は、光ファイバ(112)と、一連のパルス対を該ファイバの入力端内に導入するように構成された手段(102、103、104、106、107、109、119)とを備え、パルス対の各々は、周波数差Ωを有する放射の第1及び第2のパルスを備え、第2のパルスは、遅延τだけ第1のパルスに対して遅延され、本装置は、更に、入力端に向かってファイバ内でレイリー後方散乱される放射を検出し、かつ、それに応答して出力信号を生成するように構成された光検出器とを備える。本発明の装置は、長い道路(例えば、5km)に沿って任意の位置にて交通の感知及びモニタリングを可能にするものであり、同じ空間分解能を実現する従来技術によるシステムと比較すると単位長さ当たりの設置費用及び維持費が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通、特に、限定するものではないが道路交通を感知かつモニタリングする装置及び方法に関する。例えば、本発明は、鉄道交通又は滑走路上の航空機の感知及びモニタリングに適用することもできる。
【背景技術】
【0002】
道路又は複数車線の幹線道路の車線で自動車を感知かつモニタリングする能力は、道路の混雑区間の検出を可能にするために有用である。このような検出で、運転者達に当該部分の事前の警告を与えることができ、更なる交通渋滞が防止される。感知及びモニタリングが十分に詳説された場合、このような検出によって、当局も利用可能な道路資源を適当に利用することができる。例えば、高速道路の一部の車線が混雑状態になったとき、運転者らによる通常の利用に向けて硬路肩を利用可能にすることができる。長い目で見れば、交通量に関する詳細な情報は、既設道路の改修又は改善及び新規道路建設の長期的計画に有用である。
【0003】
現在、道路交通を感知かつモニタリングする装置では、現行の交通感知モニタリング装置の費用及び限られた距離範囲のために、道路沿いの交通状態に関してわずかな情報しか得られない。ほぼ50mの距離にわたって交通の鮮明な光景が得られるのは、CCTVシステムのみである。誘導ループセンサは、一地点での情報が得られるにすぎず、かつ、一般的に、センサの高線形密度化は法外に経費が掛かるために連続するセンサ間では相対的な長い隔たり(例えば、500m)で、道路内に設置されているだけである。これは、各誘導ループセンサには個別の処理電子機器及び電源装置が必要だからである。これらのタイプの装置は、こまめな間隔で、したがって、高い経費で設置された場合、効率的な道路管理に必要とされるタイプの詳細な情報が得られるにすぎない。これらのシステムをこまめな間隔で設置すると、多量のハードウェアを採用するために高い維持費も発生する。誘導ループセンサの場合、更に、こまめな設置に関連した高い設置費用という問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行の交通感知及びモニタリング装置では、高い購入費、設置費用及び維持費に相伴って、道路長単位に従って高度な交通情報が得られるにすぎない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、これらの問題の少なくとも1つを改善することである。本発明の第1の態様によれば、この目的は、長さlの光ファイバと、一連のパルス対を該光ファイバの入力端内に導入するように構成された手段とを備える交通モニタリング装置であって、パルス対の各々が、周波数差Ωを有する放射の第1及び第2のパルスを備え、第2のパルスが遅延τだけ第1のパルスに対して遅延され、入力端に向かってファイバ内でレイリー後方散乱される放射を検出し、かつ、それに応答して出力信号を生成するように構成された光検出器とを更に備える交通モニタリング装置によって達成される。使用面においては、光ファイバが、車両を担持する表面上に又は表面より下方に構成され、表面を使用する車両の重量が光ファイバに作用するようになっている。光検出器に同時に到着するように各パルス対の第1及び第2のパルスのそれぞれの部分がレイリー後方散乱される位置によって画定されたファイバの区間上にある移動中の車両によって、光検出器の出力信号の周波数が値Ωから偏差し、その結果、その区間上にある移動中の車両の存在が表示される。本発明の装置は、相対的に長距離の(例えば)道路の任意の区間を例えば数キロメートルモニタリングすることを可能にするものである。光ファイバの構成は、本発明の装置と同じ空間分解能を提供する一連の誘導ループセンサと比較すると簡単である。更に、ファイバは、受動的なものであり、したがって、保守が不要である。ビート信号を生成するために異なる周波数の放射のパルスを使用するので、光ファイバに沿って異なる位置からレイリー後方散乱された単一の周波数の放射が光学干渉法によって光検出器にて信号を生成するために使用される場合より、容易にかつ大きな信号対雑音比で信号のその後の処理を行うことができる。
【0006】
ファイバは、数キロメートルとすることができる。より長い距離にわたって交通感知及びモニタリングを行うために、それぞれのファイバが近接して、又は、ほぼ近接して構成された状態でいくつかの単位の装置を設置することができる。高速道路又はアウトバーンなど車道あたり複数の車線を有する道路の場合、いくつもの単位の本装置を各車線の下に設置することができる。
【0007】
ファイバが応答され得る最大レートは、v/2lであり、ここで、vは、2l/vはパルスがファイバ内を一周するのに掛かる時間であることから、ファイバ内のパルスの速度である。
【0008】
パルス対内の個々のパルス間の遅延τによって、光検出器に同時に到着するように所与のパルス対のパルスのそれぞれの部分がレイリー後方散乱される、ファイバに沿った位置間の距離vτ/2が固定される。τは、感知される一般的な車両の長さにvτ/2が実質的に対応するような値に設定されることが好ましい。次に、各パルス対がファイバに入った後の特定の時間での光検出器出力信号が、特定の時間に対応する道路の区間の上にある、単一の移動中の車両又は移動中の車両の一部の有無に関する情報を提供する。
【0009】
本装置は、各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、特定の時間tにて光検出器の出力信号をサンプリングすることによって1組の信号サンプルを取得するように、かつ、信号サンプルを処理してこのサンプルで構成された信号の周波数又は位相に対応する出力信号を生成するように構成された応答(interrogation)システムを更に備えることが好ましい。これによって、特定の時間に対応するファイバの区間を有意な期間にわたってモニタリングすることができる。
【0010】
道路の特定の区間をモニタリングしたときに時折発生する場合がある低い後方散乱に関連した問題を回避するために、応答システムは、各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、時間t−Δt、t及びt+Δtなどの時間にて光検出器出力信号をサンプリングすることによって種々の組の信号サンプルを取得するように、かつ、ほぼΩの周波数を有する最大信号に対応する種々のサンプルを有する組を処理するように構成されることが好ましい。更に、応答システムは、第1の組のサンプルが少なくとも所定の量だけ対応する信号を上回る信号に第2の組のサンプルが対応するときに、処理される組を第1の組から第2の組に変えるように構成可能であることが好ましい。これによって、処理されるサンプルセットが変えられる頻度が低減され、したがって、出力信号内の不連続性の実例数が少なくなる。
【0011】
出力信号内の不連続性を回避するために、処理される組が第1の組から第2の組に変えられたときに、両方の組が、第1及び第2の出力信号を生成するように一期間にわたって処理されるように構成され、応答システムは、更に、第2の出力信号と第1の出力信号の差を評価するように、かつ、対応するオフセットを第2の出力信号に適用して第1及び第2の出力信号間の一切の不連続性を低減するように構成されることが好ましい。上記期間は、処理資源が効率的に使用されるように上記差を評価するために必要以上に長くないことが好ましい。
【0012】
光検出器出力(ビート)信号を発生させるファイバの区間は、応答されるように本来意図される区間からの変位量がその区間の1/10を上回らないようにΔt≦τ/10であることが好ましい。これによって、応答されるように本来意図される区間から重大な距離を隔てるファイバの区間の応答が防止され、その結果、別の車両の検出又は検出対象車両皆無が防止される。
【0013】
各々が光ファイバの異なる区間に対応する様々な場所にて移動中の交通をモニタリングするために、応答システムは、各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、複数の時間の各々にて光検出器の出力信号をサンプリングすることによって複数の組の信号サンプルを取得するように、かつ、各組のサンプルを処理して、各々が所与の組のサンプルで構成された信号の周波数又は位相に対応するそれぞれの出力信号を生成するように構成することができる。連続的な時間は、ファイバの隣接応答区間の重なり合いを回避するために時間において少なくともvτ/2だけ分離されることが好ましい。
【0014】
他の市販のファイバと比較してこのようなファイバは光損失が低く、したがって、長距離、例えば、5km以上にわたる交通モニタリングを可能にするように、光ファイバは、標準的な光ファイバであることが好ましい。
【0015】
光ファイバの第1の区間上にある車両の存在は、光ファイバの第1の区間と遠位端との間に位置する第2の部分から偽の信号を時折発生させる恐れがあり、即ち、ファイバの第2の区間をモニタリングしたとき、道路の対応する区間に移動中の車両が存在しないときでさえも異常なビート信号周波数が生成される。これは、道路の対応する区間に移動中の車両がない場合でさえも位相変調されるファイバの第2の区間における放射によるものである。この問題は、ファイバが偏光維持ファイバであり、一連のパルス対を光ファイバの入力端内に導入するように構成された手段が、個別のパルスがファイバの主軸に沿って偏光されるように上記ファイバ内に偏光パルス対を送り出すように構成された場合に改善される(生じた場合)。
【0016】
一連のパルス対を光ファイバの入力端内に導入するように構成された手段は、コヒーレント放射を少なくとも部分的に受光するように、かつ、それぞれ、周波数ωの放射の第1のパルスと、周波数ωの放射の第2のパルスとを出力するように構成された第1及び第2の音響光学変調器(AOM)と(ここで、ω−ω=Ω)、第1のパルスに対して第2のパルスを遅延させる手段と、パルスを光ファイバ内に結合する手段とを備えることができる。
【0017】
好都合なことに、本装置は、レーザと、レーザの出力の第1及び第2の部分を、それぞれ、第1及び第2のAOM内に入力するように構成された手段とを備える。
【0018】
レーザが、cwレーザとすることができ、AOMは、同期動作が得られるように構成され、第1のパルスに対して第2のパルスを遅延させる手段が、光ファイバ遅延ループを備える。
【0019】
本発明の装置の最適な動作は、一連のパルス対の消光比(即ち、パルス対間での、個々のパルスの強度とファイバへの放射入力の強度の比)がT/τより大きいときに達成され、ここで、Tは、パルス対間の期間であり、τは、個々のパルスの持続時間である。AOMは、一般的に、約50dBの消光比及び50nsの最低パルス持続時間を提供する。したがって、最高可能レート(20kHz)にて応答される5kmのファイバについては、AOMの消光比は、先に定義された最小値を約2桁分上回る。しかしながら、50nsパルスでは、結果的に10mの空間分解能となり、これは、特定の状況においては問題となるほど大きい場合がある。満足な消光比を維持しながらパルスの短尺化を図るために、本装置は、cwレーザの出力を受光するように、かつ、各AOMが変調器による各出力パルスの一部を受光するようにパルス放射を上記入力する手段に出力するように構成された光変調器を更に備え、各AOMが、パルスを含む時間ウィンドウの外側でAOMへのパルス入力の消光比を増大するように構成されることが好ましい。このようにすれば、AOMによって実現された高い消光比を、他のタイプの光変調器、例えば、一体式光変調器又は半導体光増幅器を使用して取得可能である短いパルス持続時間と組み合わせることができる。
【0020】
csレーザ放射がAOMの入力部に直接適用される場合、各パルスの第1のパルスに対して第2のパルスを遅延させる手段は、光ファイバ遅延ループの採用の代案としてAOMを非同期で動作させる手段を備えることができる。
【0021】
直接パルスを生成するために、csレーザの代わりにパルスレーザを使用することができる。パルスレーザからの出力パルスは、それぞれの同期動作AOMに同時に送出される2つの部分が得られるように分割することができ、ファイバループが、他方のAOMに対して一方のAOMの出力を遅延させるために採用される。あるいは、2つの部分の一方は、AOMへの入力前にファイバループによって遅延させることができ、AOMは、非同期に動作される。
【0022】
パルス対は、2種類の異なる周波数でパルスを生成するように構成された単一のAOMにcwレーザの出力放射を通過させることによって生成することもできる。
【0023】
標準的な電子構成機器を使用した光検出器出力信号の処理を可能にするために、Ωは、40kHz≦Ω≦40MHzの範囲にあることが好ましい。フォトダイオードは、光検出器に好都合な選択である。
【0024】
本発明の第1の態様に対応して、本発明の第2の態様は、(i)表面を使用する車両の重量がこの光ファイバに作用するように、車両を担持する表面上に又は表面より下方に光ファイバを設置するステップと、(ii)一連のパルス対を光ファイバの入力端内に導入するステップであって、パルス対の各々が、周波数差Ωを有する放射の第1及び第2のパルスを備え、第2のパルスが、遅延τだけ第1のパルスに対して遅延されるステップと、(iii)入力端に向かってファイバ内でレイリー後方散乱される放射を検出し、それに応答して出力信号を生成するステップとを備える、交通を感知及びモニタリングする方法を提供する。
【0025】
本発明の実施形態を一例としてのみ、かつ、添付図面を参照して以下で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1においては、全体として100で示す本発明の第1の例示的な交通感知及びモニタリング装置は、cwレーザ102と、音響光学変調器(AOM)104、106と、近位端115及び遠位端121を有する感知部分112を有する光ファイバ111と、光検出器108(例えば、フォトダイオード)と、光検出器出力信号のサンプルを取得するように、かつ、サンプルを処理して出力信号を生成するように構成された応答システム110とを備える。レーザ102の光出力は、光ファイバ103に結合されている。光ファイバ107は、カプラ119によってファイバ103に結合されている。ファイバ103、107は、それぞれ、AOM104、106に入力される。AOM104、106の出力部は、それぞれ、光ファイバ111、109に結合されており、ファイバ109は、位置113にてファイバ111に結合されている。AOM104と位置113との間の光路長は、ファイバ111の24m遅延ループ105のため、AOM106と位置113との間の光路長より大きい。ファイバ111の感知部分112は、5kmの長さを有する。光ファイバ117は、感知部分112内でのレイリー後方散乱によって逆反射された放射がファイバ117内に結合されるように感知部分112の近位端115に結合されている。ファイバ117は、光検出器108に結合されている。システム100は、ファイバ111の感知部分112が道路(図示せず)の車道の下に、かつ、実質的に車道に平行である状態で構成される。長距離の道路にわたって交通を感知及びモニタリングするために、いくつかの組の本装置を近接、又はほぼ近接である感知ファイバ部分と共に採用することができる。
【0027】
装置100は、以下のように動作する。レーザ102から出力され、かつ、ファイバ103に結合された放射出力は、カプラ119によって2つの部分に分割される。それぞれの部分は、AOM104、106に入力される。AOM104は、AOM104に入力されたcw放射入力をファイバ111に結合される周波数ωのパルス周波数偏位放射に変換するように動作する。AOM106は、パルス周波数偏位放射をファイバ109内に結合するように同様に動作するが、適用された周波数偏位は、AOM104によって適用されたものを上回り、AOM106からの放射出力は、周波数ωを有し、ここで、ω−ω=Ωは、数百kHz台である。AOM106からファイバ109へ出力されたパルスは、113にてファイバ111に結合される。遅延ループ105は、AOM104から出力されたパルスがAOM106から出力されたパルスに対してほぼ120nsだけ遅延されるように24mの長さを有する。(ファイバ内のパルスの速度vは、ほぼ2×10m/sである)。AOM104、106は、ファイバ111の感知部分112が50μs毎に1対のパルスによって応答されるように20kHzの繰り返しレートでパルス対を生成し、各対内のパルスは、数百KHzの周波数差及びほぼ120nsの相対遅延を有する。
【0028】
図2は、ファイバ111の感知部分112内に導入された2つのパルス対に関する強度と時間のプロットである。個々のパルスは、50nsの持続時間τを有する。AOM104、106は、50dBの消光比を提供する。
【0029】
再び図1を参照すると、ファイバ111の感知部分112に沿った距離は、xによって表され、感知部分112の近位端115は、x=0にある。ファイバ117の長さが無視し得るものである場合、1対のパルスのうち第1のパルスが感知部分112の近位端115に入った後の時間tに、光検出器108は、ファイバ部分112に沿って位置x=vt/2からレイリー後方散乱された第1のパルス(周波数ω)の部分を検出し、同時に、位置x=v(t−τ)/2からレイリー後方散乱されたその対の第2のパルス部分を検出し、ここで、τ=120nsは、その対のパルス間の遅延である。(第2のパルス部分は、第1のパルス部分が後方散乱された後に時間τ/2に後方散乱される)。2つの後方散乱位置間のファイバの区間は、長さがほぼ12m(≒x−x=vτ/2)である。xとxとの間の感知部分112の12m区間よりも上方にある道路の12m区間に移動中の車両がない場合、光検出器108は、周波数Ωのビート信号を応答システム110に出力する。応答システム110は、各パルス対の第1のパルスが位置113を通過した後に時間tにて光検出器出力信号をサンプリングして、サンプルを処理してこれらのサンプルで構成された信号の周波数又は位相に対応する出力信号を生成する。移動中の車両が道路の12m区間に存在する場合、xとxとの間の感知部分112の対応する12m部分の光路長は、その区間に掛けられた圧力の変化のために変調される。これによって、結果的に、xからレイリー後方散乱された放射の位相変調、及び、値Ωから離れた光ダイオード108から出力されたビート信号の周波数の付随的な偏差が発生する。したがって、応答システム110は、光検出器出力信号のサンプルで構成された信号の周波数の偏差から、xとxとの間の道路の約12m区間での移動中の車両の存在を推断し、各サンプルは、各パルス対の第1のパルスが位置113を通過した後に同じ時間tにて取得される。値Ωから離れたこの信号の周波数の偏差がない場合、これは、道路のその区間に車両が存在しないか、又は、静止した車両が存在することを示唆している。
【0030】
例えば、x=2488mとx=2500m間の道路の12m区間をモニタリングするために、応答システム110は、各パルス対が感知部分112の近位端115に導入されたほぼ25μs後に光検出器出力信号をサンプリングするように構成されている。モニタリングされる道路の特定の12m区間は、各パルス対の第1のパルスが位置113を通過した後に光検出器出力信号がサンプリングされる時間を変えることによって変えることができる。応答システム110は、種々の組のサンプルを生成するために各パルス対が感知部分112内に導入された後に、複数の時間の各々にて光検出器出力信号をサンプリングするように構成することもでき、各組は、ファイバ112の異なる12m部分、したがって、道路の異なる12m区間に対応する。次に、各組は、各組のサンプルに対応する信号の周波数又は位相を見つけるために処理される。特定の組に対応する道路の12m区間上の移動中の車両の存在は、再度、その組のサンプルに対応する信号の周波数又は位相から推断される。
【0031】
ファイバ111の部分112の長さが5km以上である必要がある場合、ファイバ111は、当該のファイバは損失が任意の市販のファイバの単位長さにつき最低であるように、標準的な光ファイバ製であることが好ましい。
【0032】
個々のパルスはファイバ111の部分112内に長さvτを有することから、個々のパルスの持続時間τによって、装置100の最低空間分解能が決まる。τを小さくすると部分112内の所与の位置からレイリー後方散乱されるパルス部分のエネルギーも小さくなることから、τは、所望の空間分解能が得られるように必要以上に短くないことが好ましい。AOMによって生成することができる最低パルス持続時間は、約50nsであるが、AMOは、50dB台の良好な消光比を提供する。
【0033】
放射が感知部分112の近位端115から遠位端121に進んで戻るのに掛かる時間は、ほぼ50μsであることから、感知部分112には、20kHzの最高レートにてパルスによって応答することができるが、必要であればこれより遅い応答レートを用いることができる。最低応答レートは、ファイバ111の部分112の交通誘導変調の振幅及び周波数に左右される。
【0034】
遅延ループ105を使用して各対のパルスの一方を他方のパルスに対して遅延させる代わりに、非同期動作の繰り返しが得られるように、即ち、各動作サイクルにおいてAOM106のスイッチが入り始めて120ns後にAOM104のスイッチが入り始めるように、AOM104、106を構成することができる。あるいは、レーザ102は、パルスレーザとすることができ、レーザ102の出力パルスは、119にて分割され、AOM104、106は、同期して動作する。
【0035】
図3を参照すると、本発明の第2の例示的な交通感知及びモニタリング装置が全体的に200によって示されている。装置100の各部に対応する装置200の各部は、図1の対応する各部の記載内容と装置100の値だけ異なる参照符号で記載されている。装置200の基本的機能は、図1の100と同じである。装置200は、cwレーザ202と、20kHz(即ち、5kmの感知部分212の最高応答レート)の繰り返しレートで10nsの持続時間を有するパルスを生成するように構成された一体式光変調器(IOM)214とを備える。IOM214は、ほぼ30dBの消光比を提供する。IOM214によって出力された個々のパルスは、それぞれのAOM204、206に渡されるパルス部分を生成するためにカプラ219によって分割される。各AOM204、206は、IOM214によって生成された各10nsパルス上に50nsの持続時間が集中している時間ウィンドウの外側で、AOMに入力された放射の強度を更に50dBだけ低減するように動作する。ファイバ211は、AOM206から同時に出力された対応するパルスに対してAOM204から出力されたパルスを50nsだけ遅らせる10mの遅延ループ205を有する。したがって、応答システム210は、ファイバ211の感知部分212の対応する5mの区間より上方にある道路の5m区間上の移動中の車両を検出する。
【0036】
図4は、ファイバ211の感知部分212内に導入された2つのパルス対に関する強度と時間のプロットである。連続的なパルス対は、時間において50μsだけ分離される。パルス対内の個々のパルス間では、IOM214は、30dBの消光比を提供するが、パルスの連続的な対間では、IOM214とAOM204、206との組み合わせ動作によって、80dBの消光比が提供される。IOM214をAOM204、206と組み合わせるので、短いパルス持続時間を高い消光比と組み合わせることができる。
【0037】
装置200においては、感知部分212の第1の区間によって検出された移動中の車両が、ファイバ211の感知部分212の第1の区間と遠位端221との間に位置する感知部分212の第2の区間に対応する道路の5m区間上での車両の偽の検出を発生させないように、ファイバ211は、偏光維持ファイバとすることができる。この場合、ファイバ211の感知部分212内に導入されたパルスは偏光され、感知部分212の主軸の1つに沿って偏光されるように感知部分212内に送り出されなければならない。図1の装置100は、同様に改変することができる。
【0038】
場合によっては、感知部分212の特定の区間が、有用な光検出器出力信号を提供するには弱すぎるレイリー後方散乱放射を発生させる場合がある。位置x=vt/2とx=v(t−τ)/2との間で道路の特定の5m区間をモニタリングするときにこの潜在的な問題を克服するために、応答システム210は、tでのサンプリングに加えて、各パルス対が部分212入った後に時間t±Δtにて光検出器出力信号をサンプリングするように構成することもできる。これらの時間は、位置x=v(t+Δt)/2、x=v(t+Δt−τ)/2、及びx=v(t−Δt)/2、x=v(t−Δt−τ)/2間に位置する部分212の種々の区間に対応する。位置x、x、及びx、xは、x及びxによって定義された5m区間から±vΔt/2だけ変位される感知部分212の5m区間を画定するものである。したがって、位置xとxとの間の区間からほぼ±1mだけ変位される5m区間をモニタリングするために、応答システム210は、各パルス対が感知部分212に入った後にt±10nsにて光検出器出力信号をサンプリングするように構成される。各パルス対が部分212に入った後に時間t−Δtにて取られた光検出器出力信号サンプルは、第1の組のサンプルを形成する。時間tとt+Δtにて取られたサンプルは、第2及び第3の組のサンプルを形成する。この操作モードにおいては、応答システム210は、3つの組のサンプルを連続的にモニタリングするように、かつ、ほぼΩの周波数を有する最大信号に対応するサンプルを有する組を処理するように構成される。あるいは、応答システム210は、第1の組のサンプルが少なくとも所定の量だけ対応し、かつ、ほぼΩの周波数を有する信号を上回る信号に第2の組のサンプルが対応するときにのみ、処理される組を第1の組から第2の組に変えるように構成することができる。
【0039】
処理されるサンプルの組が第1の組から第2の組に変えられるときに応答システム210の出力信号における不連続性の場合を少なくするために、両方の組を、2つの出力信号を生成するように一期間にわたって処理することができる。この場合、応答システム210は、2つの出力信号の差を評価するように、かつ、対応するオフセットを第2の出力信号に適用して、処理される組が変えられたときに応答システム210の出力信号における一切の不連続性を低減するように構成される。
【0040】
cwレーザ202及びIOM214は、パルスレーザで置き換えることができ、AOM204、206は、上述したように、周波数偏移、又は周波数偏位及びパルス短尺化を提供する。
【0041】
ファイバ111、211の感知部分112、212は、表面下に静置する代案として道路表面に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の例示的な交通感知及びモニタリング装置を示す図である。
【図2】図1の装置において使用されるパルスを例示する図である。
【図3】本発明の第2の例示的な交通感知及びモニタリング装置を示す図である。
【図4】図3の装置において使用されるパルスを例示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さlの光ファイバと、
一連のパルス対を光ファイバの入力端内に導入するように構成された手段と
を備える交通感知及びモニタリング装置であって、
パルス対の各々が、周波数差Ωを有する放射の第1及び第2のパルスを備え、第2のパルスが遅延τだけ第1のパルスに対して遅延され、
入力端に向かってファイバ内でレイリー後方散乱される放射を検出し、かつ、それに応答して出力信号を生成するように構成された光検出器と
を更に備える、光感知及びモニタリング装置。
【請求項2】
一連のパルス対を光ファイバ内に導入するように構成された手段が、v/2l以下、好ましくは実質的にv/2lのレートで動作するように構成され、ここで、vが、光ファイバ内のパルスの速度である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
vτ/2が、感知及びモニタリングされる交通の単位の長さに実質的に対応する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、特定の時間tにて光検出器の出力信号をサンプリングすることによって1組の信号サンプルを取得するように、かつ、信号サンプルを処理して前記サンプルで構成された信号の周波数又は位相に対応する出力信号を生成するように構成された応答システムを更に備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
応答システムが、各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、時間t−Δt、t及びt+Δtにて光検出器出力信号をサンプリングすることによって種々の組の信号サンプルを取得するように、かつ、ほぼΩの周波数を有する最大信号に対応する種々のサンプルを有する組を処理するように構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
応答システムが、第1の組のサンプルが少なくとも所定の量だけ対応する信号を上回る信号に第2の組のサンプルが対応するときに、処理される組を第1の組から第2の組に変えるように構成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
応答システムが、処理される組が第1の組から第2の組に変えられたときに、両方の組が、第1及び第2の出力信号を生成するように一期間にわたって処理されるように構成され、応答システムが、更に、第2の出力信号と第1の出力信号の差を評価するように、かつ、対応するオフセットを第2の出力信号に適用して第1及び第2の出力信号間の一切の不連続性を低減するように構成される、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
Δt≦τ/10である、請求項5から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
応答システムが、各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、複数の時間の各々にて光検出器の出力信号をサンプリングすることによって複数の組の信号サンプルを取得するように、かつ、各組のサンプルを処理して、各々が所与の組のサンプルで構成された信号の周波数又は位相に対応するそれぞれの出力信号を生成するように構成される、請求項4に記載の装置。
【請求項10】
連続的な時間が、時間において少なくともvτ/2だけ分離される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
光ファイバが、標準的な光ファイバである、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
光ファイバが、偏光維持ファイバであり、一連のパルス対を光ファイバの入力端内に導入するように構成された手段が、放射個別パルスがファイバの主軸に沿って偏光されるように前記ファイバ内に偏光パルス対を送り出すように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
一連のパルス対を光ファイバの入力端内に導入するように構成された手段が、コヒーレント放射を少なくとも部分的に受光するように、かつ、それぞれ、ここで、ω−ω=Ωである、周波数ωの放射の第1のパルスと、周波数ωの放射の第2のパルスとを出力するように構成された第1及び第2の音響光学変調器(AOM)と、第1のパルスに対して第2のパルスを遅延させる手段と、パルスを光ファイバ内に結合する手段とを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
レーザと、レーザの出力の第1及び第2の部分を、それぞれ、第1及び第2のAOM内に入力するように構成された手段とを更に備える、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
レーザが、cwレーザである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
AOMが、同期動作が得られるように構成され、第1のパルスに対して第2のパルスを遅延させる手段が、光ファイバのループを備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
cwレーザの出力を受光するように、かつ、各AOMが変調器によって各出力パルスの一部を受光するようにパルス放射を前記入力する手段に出力するように構成された光変調器を更に備え、各AOMが、パルスを含む時間ウィンドウの外側でAOMへのパルス入力の消光比を増大するように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
変調器が、一体式光変調器又は半導体光増幅器である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
第1のパルスに対して第2のパルスを遅延させる手段が、AOMを非同期で動作させるように構成された手段を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
レーザが、パルスレーザである、請求項14に記載の装置。
【請求項21】
一連のパルス対を光ファイバの入力端内に導入するように構成された手段が、cwレーザと、レーザの光学的出力を受光するように、かつ、各々が第1及び第2のパルスを備える一連のパルス対を生成するように構成されたAOMとを備え、パルスが、周波数差Ωを有し、第2のパルスが、第1のパルスに対して遅延τだけ遅延される、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
Ωが、40kHz≦Ω≦40MHzの範囲にある、請求項1から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
光検出器が、フォトダイオードである、請求項1から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
(i)表面を使用する車両の重量が前記光ファイバに作用するように、車両を担持する表面上に又は表面より下方に光ファイバを設置するステップと、
(ii)一連のパルス対を光ファイバの入力端内に導入するステップであって、パルス対の各々が、周波数差Ωを有する放射の第1及び第2のパルスを備え、第2のパルスが、遅延τだけ第1のパルスに対して遅延されるステップと、
(iii)入力端に向かってファイバ内でレイリー後方散乱される放射を検出し、それに応答して出力信号を生成するステップと
を備える、交通を感知及びモニタリングする方法。
【請求項25】
パルス対が、v/2l以下、好ましくは実質的にv/2lのレートで前記光ファイバ内に導入され、ここで、vが、光ファイバ内のパルスのレートである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
vτ/2が、感知及びモニタリングされる交通の単位の長さに実質的に対応する、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
(i)各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、特定の時間tにて光検出器の出力信号をサンプリングするステップと、
(ii)ステップ(i)において取得されたサンプルを処理して前記サンプルで構成された信号の周波数又は位相に対応する出力信号を生成するステップと
を更に備える、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
(i)各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、時間t−Δt、t及びt+Δtにて光検出器出力信号をサンプリングしてそれぞれの組の信号サンプルを生成するステップと、
(ii)ほぼΩの周波数を有する最大信号に対応する種々のサンプルを有する組を処理するステップと
を備える、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
Δt≦τ/10である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(i)各パルス対の第1のパルスが長さlの光ファイバに入った後に、複数の時間の各々にて光検出器の出力信号をサンプリングすることによって複数の組の信号サンプルを取得するステップと
(ii)各組のサンプルを処理して、各々が所与の組のサンプルで構成された信号の周波数又は位相に対応するそれぞれの出力信号を生成するステップと
を備える、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
連続的な時間が、時間において少なくともvτ/2だけ分離される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
実質的に、図1を参照して上述したような装置。
【請求項33】
実質的に、図2を参照して上述したような装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−514081(P2009−514081A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537175(P2008−537175)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003862
【国際公開番号】WO2007/049004
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】