説明

交通機関情報取得装置、車載装置、交通機関情報提供システム

【課題】日常的に車両を使用しているユーザが交通機関を利用する場合、ユーザに交通機関の情報を提供する交通機関情報取得装置、車載装置及び交通機関情報提供システムを提供すること。
【解決手段】交通機関情報を車両11のユーザに提供する交通機関情報取得装置60であって、ユーザが車両11で通勤又は退勤している否かを判定する乗車判定手段43と、乗車判定手段43により車両11で通勤又は退勤していないと判定された場合、勤務先14の周辺の交通機関情報を取得する情報取得手段44と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両のユーザに交通機関情報を提供する交通機関情報取得装置等に関し、特に、ユーザが車両でなく交通機関を利用している場合に交通機関情報を提供する交通機関情報取得装置、車載装置及び交通機関情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自分が所有する車両であれば所望の時刻に使用することができるが、鉄道やバスなの公共交通機関は駅やバス停毎に出発時刻等が定められているため、所望の目的地に所定の時刻に到着するには、駅やバス停の時刻表に従った行動を取る必要がある。そこで、ユーザの携帯端末に時刻表を配信するサービスシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、携帯端末の位置情報に基づき最寄り駅を、目的の駅と目的の到着時刻から最寄り駅での乗車時刻を、最寄り駅での乗車時刻に最寄り駅に到着するための現在位置からの出発時刻を、それぞれ検出し、出発時刻になるとこれらの情報を携帯端末に送信するサービスシステムが記載されている。特許文献1によれば、ユーザが乗車時刻等に不注意であっても最寄り駅での乗り遅れを防止できる。
【特許文献1】特開2002−131075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ユーザが普段から公共交通機関を利用している場合は、ユーザは最寄り駅や目的の駅においてよく利用する時間帯の時刻表を把握していることが多く、また、仮に把握していなくても公共交通機関の時刻表などの調べ方を知っている場合が多い。しかしながら、普段、車両で通勤するなど公共交通機関を利用していないユーザが、公共交通機関を利用した場合、公共交通機関の時刻表を把握していることは少なく、また、調べ方も知らない場合が多い。この点、特許文献1記載のサービスシステムは出発時刻等を通知することができるが、公共交通機関を利用しない普段から出発時刻等を通知するのではユーザに煩わしさを感じさせてしまう。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、日常的に車両を使用しているユーザが交通機関を利用する場合、ユーザに交通機関の情報を提供する交通機関情報取得装置、車載装置及び交通機関情報提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、交通機関情報を車両のユーザに提供する交通機関情報取得装置であって、ユーザが車両で通勤又は退勤している否かを判定する乗車判定手段と、乗車判定手段により車両で通勤又は退勤していないと判定された場合、勤務先の周辺の交通機関情報を取得する情報取得手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、ユーザは交通機関の情報を自動的に取得でき、自ら調べる必要がないので利便性を向上させることができる。また、車両に乗車する日は交通機関情報が配信されないので、煩わしく感じさせることもない。
【0007】
また、本発明の一形態において、ユーザの通勤時刻又は退勤時刻を記憶した時刻記憶手段を有し、乗車判定手段は、通勤時刻又は退勤時刻にユーザが車両に乗車してない場合に、ユーザが車両で通勤していないと判定する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ユーザの通勤時刻又は退勤時刻に応じて交通機関情報を送信するか否かを判定できる。
【0009】
また、本発明の一形態において、位置情報を取得する位置情報取得手段を有し、乗車判定手段がユーザの乗車を検出していない状態で、位置情報取得手段が勤務先へ移動したことが検出した場合、乗車判定手段はユーザが車両で通勤していないと判定する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ユーザが車両で通勤していないことを精度よく検出することができる。
【0011】
また、本発明の一形態において、情報取得手段が取得した交通機関情報は、勤務先の最寄り駅における電車の時刻表若しくは時刻表の一部、終電時刻、又は、勤務先周辺のタクシー会社情報、のいずれかを含む、ことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、最寄り駅の電車の時刻表等を日常的に電車を利用していないユーザに提供することができる。
【0013】
また、本発明の一形態において、乗車時刻及び目的地からユーザの通勤時刻と退勤時刻を学習する車載装置から、通勤時刻又は退勤時刻を受信する学習情報取得手段、を有し、学習情報取得手段は、受信した通勤時刻又は退勤時刻を前記時刻記憶手段に記憶させる、
ことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、交通機関情報取得装置が車両が学習した学習結果を受信してユーザの通勤時刻又は退勤時刻を共有することができる。
【発明の効果】
【0015】
日常的に車両を使用しているユーザが交通機関を利用する場合、ユーザに交通機関の情報を提供する交通機関情報取得装置、車載装置及び交通機関情報提供システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら、実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本実施形態の交通機関情報提供システムの概略を説明する図である。図1(a)に示すよう、ユーザは車両11を運転して目的地である勤務先14まで通勤している。車両11のナビゲーションシステム(以下、ナビシステムという)50はユーザが車両11に乗車する時刻、勤務先14の位置情報を学習しているため、ナビシステム50にとってユーザのおよその乗車時刻は既知となっている。また、ユーザは携帯端末60を携帯して車両11に乗車しその際に携帯端末60は学習情報を受信するため、ナビシステム50と携帯端末60はこの学習情報を共有している。
【0018】
図1(b)に示すように、希にユーザが公共交通機関を利用して勤務先14に向かう場合、携帯端末60は普段の(以下、「日常的な」という)乗車時刻に車両11に乗車しないこと(例えば車両11と近距離通信できないこと)を検出し、学習情報に基づき交通機関情報をサーバ70から取得する。交通機関情報は、例えば、その日の、勤務先14に最寄りの駅E4の時刻表や終電の時刻、E4駅周辺を運行エリアとするタクシー会社の電話番号やURL、タクシーの運行状況、宿泊施設情報などである。自宅12の最寄り駅E1の公共機関情報を取得してもよく、また、交通機関は公共の交通機関でなくてもよい。以下では、公共交通機関を含め単に交通機関という。
【0019】
したがって、本実施形態の交通機関情報提供システム100は、日常的に車両11を利用しているユーザが交通機関を利用する場合、交通機関情報を取得するために携帯端末60を操作する必要がなく、自動で交通機関情報が配信できるので利便性を向上させることができる。また、車両11に乗車する日は交通機関情報が配信されないので、煩わしく感じさせることもない。なお、本実施例では勤務先14への通勤を例に説明するが、学校への通学、趣味のための移動等、ほぼ定時に車両11で移動する移動形態に適用できる。
【0020】
図2は、交通機関情報提供システム100のブロック図の一例を示す。交通機関情報提供システム100は、車両11に搭載されたナビシステム50、ユーザが携帯する携帯端末60、及び、サーバ70とを有し、主に携帯端末60により制御される。なお、ユーザとは車両11の乗員となりうる者をいう。
【0021】
〔ナビシステム50〕
ナビシステム50はナビ制御部40により制御され、ナビ制御部40にはGPS(Global Positioning System)受信機、地図DB(Data Base)22、BTモジュール20Aが接続されている。なお、ナビ制御部40でなくメータECU等、他のコンピュータで制御してもよい。この場合、処理負荷の少ないコンピュータを利用することが好ましい。
【0022】
GPS受信機21はGPS衛星から受信した電波の到達時間を利用して車両11の位置情報を取得する。また、地図DB22は、緯度や経度などの位置情報に対応づけて道路地図情報を記憶している。道路地図情報は、道路を構成するリンクのリンク情報と、リンクとリンクを接続するノード(交差点)のノード情報とを対応づけたテーブル状のデータベースである。リンク情報にはリンク長、幅員、接続ノード、接続方向等が含まれるため、道路地図情報により道路形状を検出することができる。また、地図DB22には、リンク毎に自動車専用道路や一般道などの道路種別、及び、ガソリンリンスタンド、駅、バスターミナル等の施設の位置情報が記憶されている。
【0023】
BTモジュール20Aと、携帯端末60が有するBTモジュール20Bについて説明する。携帯端末60を携帯したユーザが車両11に乗車することでユーザの識別や乗車したことが検出されることが好ましいので、ナビシステム50と携帯端末60とが通信することが好適となる。有線通信ではユーザが接続し忘れることがあるので、好ましくは無線通信、より好ましくは互いに接近すると自動的に通信する無線通信であることが好ましい。本実施例では、ブルートゥース(登録商標:以下、BTという)により通信するものとする。無線LAN、赤外線通信、ワイヤレスUSB、可視光通信等を用いてもよい。
【0024】
BTモジュール20AとBTモジュール20Bの構成は同じなので以下ではBTモジュール20Aを例に説明する。BTモジュール20Aは物理層として無線通信を確立するRF部と、BTの仕様に応じた処理を行うBT部とを有する。RF部の接続方式としてBTでは、SCO(synchronous connection oriented:同期接続)接続とACL(Asynchronous Connectionless Link:非同期接続)とが定義されている。データ通信の場合、パケット交換タイプのACL接続が使用される。
【0025】
BTでは接続可能なBTモジュール20BをInquiry又はPagingメッセージにて呼び出す(呼び出しモード)側をマスターと称し、Inquiry又はPagingメッセージに応答して接続される側(スタンバイモード)をスレーブと称す。ナビシステム50と携帯端末60とのどちらがマスターとなってもよいが、イグニッションオンによりナビシステム50が携帯端末60を呼び出す方がバッテリの節約上好ましい。BTモジュール20Aの呼び出しに対し、BTモジュール20Bが応答すると接続状態となり、BTモジュール20Aと20Bの間にピコネットと呼ばれるネットワークが形成される。
【0026】
また、BTではマスターとスレーブの双方のBTモジュール20A,20Bが同じプロファイルを備えることで相互の接続を確保している。例えば、データ通信であれば、BTモジュール20A,20Bが少なくともGAP(Generic Access Profile)を備える。
【0027】
ところで、BTモジュール20A、20Bには予め固有の機器IDが与えられており、接続する場合はこの機器IDにより通信相手を識別する。上記のように呼び出しモードのピコネット内にスタンバイモードの携帯端末60が進入すると、携帯端末60が自動的に機器IDを送信し接続状態となる。しかし、初めてBTモジュール20Aと20Bを接続する時は、PINキー(暗証番号)の入力が必要であり、正しいPINキーが入力されることでペアリングが完了し、以降は自動的に両者が接続されようになる。
【0028】
したがって、BTモジュール20Aと20Bが通信可能であれば、携帯端末60は以前にペアリングが完了したものであり、車両11のユーザが携帯しているもの、すなわち、携帯端末60を携帯するユーザのユーザ認証が成立したと判定してよい。
【0029】
ナビ制御部40は、CPU、RAM、ROM、ハードディスクやフラッシュメモリの不揮発メモリ、入出力インターフェイスを備えたコンピュータであり、CPUがプログラムを実行するか又は演算回路により実現される、認証部23、学習部26及び学習情報送信部27を有し、また、不揮発メモリには学習情報25と個人認証情報24が記憶されている。これらについて詳細は後述する。
【0030】
〔携帯端末60〕
携帯端末60は制御部30により制御され、制御部30にはBTモジュール20B、時計31、位置検出装置38、ディスプレイ32、マウスやキーボード等の操作部33、信号処理部34等が接続されている。携帯端末60は、ユーザ認証を可能とし交通機関情報をユーザに報知できるものであればよく、例えば、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data Assistant)、PC(Personal Computer)等である。
【0031】
制御部30は、操作部33からの入力操作信号(例えば、発信操作に対応した信号など)に基づいて音声通信又はデータ通信のモードを切り換え信号処理部34等を制御する。制御部30はCPU、RAM、ROM、不揮発メモリ及び入出力インターフェイス等を有するコンピュータであって、アプリケーションプログラムや入力操作信号に応じた処置を実行する。メールやブラウザ等のアプリケーションプログラムが生成し送信するデジタル信号はプロトコル処理などを施された後、信号処理部34に送出される。
【0032】
また、マイク36から入力されたアナログ音声信号は、信号処理部34で符号化されデジタル信号に変換される。信号処理部34はこれらのデジタル信号に対して誤り訂正などの処理を行った上で、所定のTDMA(Time Division Multiple Access )に従ったTDMAの送信フレーム信号を生成する。無線通信部35は、フレーム信号を波形整形し、π/4QPSKベースバンド信号を生成し、周波数シンセサイザにより搬送波(直交する二つの搬送波から構成されている。)をπ/4QPSK変調する。この変調波は、アンプで増幅されアンテナから送信される。
【0033】
一方、基地局13から同様にπ/4QPSK変調された変調波は、アンテナにより受信され、増幅された後、π/4QPSK復調される。復調器は、周波数シンセサイザが生成する復調のための搬送波(直交する二つの搬送波から構成されている。)が印加されている。
【0034】
信号処理部34は復調された信号をTDMAに従いフレーム同期をとって、多重分離、デスクランブルや誤り訂正などの処理を施し、アナログの音声信号に変換する。そして、アナログ音声信号は、スピーカ37から音声として出力される。また、信号処理部34は、デジタルデータを受信すると訂正などの処理を施したあと制御部30に送出し、制御部30はプロトコル処理等を施してアプリケーションプログラムに渡す。以上のようにして、携帯端末60により音声通信及びデータ通信される。
【0035】
また、本実施例の携帯端末60は、CPUがプログラムを実行するか又は演算回路により実現される、車両11から学習情報25を取得する学習情報取得部42、ナビシステム50に認証を要求する認証要求部41、ナビシステム50から学習情報25を取得する学習情報取得部42、ユーザが乗車したか否かを判定する乗車判定部43、交通機関情報を取得する情報取得部44を有し、また、不揮発メモリには学習情報25と個人認証情報45が記憶されている。これらについて詳細は後述する。
【0036】
〔サーバ70〕
サーバ70はROM71、HDD(ハードディスクドライブ)72、通信ユニット73、RAM74及びCPU75が内部バスで接続されたコンピュータである。サーバ70は、交通機関情報を保持しているか又は交通機関情報を他の交通機関のサーバ等から取得して、携帯端末60に送信する。
【0037】
後述するように、携帯端末60がサーバ70のアドレス(IPアドレス、URL又はメールアドレス等、以下単にアドレスという)を付加して交通機関情報の配信要求を送信すると、携帯端末60の事業者の事業者サーバ(不図示)は基地局13を介して配信要求を受信し、アドレスに基づきネットワーク18を介してサーバ70に送信する。
【0038】
通信ユニット73はネットワーク18に接続する例えばNIC(Network Interface Card)であって、送信されたデータに例えばTCP/IP等のプロトコル処理を施し、交通機関情報の配信要求を受信する。
【0039】
サーバ70は、CPU75がプログラムを実行することで実現される、交通機関情報を収集する情報収集部76を有する。後述するように情報収集部76がユーザの要求する交通機関情報を収集すると、通信ユニット73は交通機関情報をパケットに分解すると共に各パケットに、携帯端末60に付与されたアドレスを付加して事業者サーバに送信する。事業者サーバはアドレスに対応づけて記憶する識別情報に従い携帯端末60を検出し最寄りの基地局13から交通機関情報を送信する。
【0040】
〔通勤時刻等の学習〕
通勤時刻等の学習について図3のフローチャート図に基づき説明する。通勤する場合、目的地はほぼ一定であり、自宅12からの出発時刻もある程度の時間差内に収まると考えられる。なお、自宅12の位置は予め登録してあるか、駐車時間が長い位置、又は、イグニッションオン(以下、IGオン)とされる頻度が最も多い位置、としてナビシステム50に記憶されている。
【0041】
まず、学習部26は、1週間〜1ヶ月程度の間、毎日、車両11のIGオン時刻と目的地を記録する(S1)。自宅12に帰宅する場合の勤務先14におけるIGオン時刻も1週間〜1ヶ月程度の間、記録されることになる。
【0042】
そして、勤務先14の位置情報を検出する(S2)。勤務先14は平日ほぼ毎日目的地となるので、所定以上の頻度で検出される目的地を勤務先14としてよい。例えば、週5日勤務する場合で7割程度、週4日勤務する場合で6割弱、が頻度の目安となるので、6〜7割以上検出された目的地が勤務先14である。なお、到着時刻や経路に基づきさらに勤務先14の検出精度を向上させてもよい。
【0043】
勤務先14に基づき、学習部26は記録した車両11のIGオン時刻から出発時刻と帰宅時のIGオン時刻(以下、帰宅開始時刻という)を抽出する(S3)。勤務先14が分かれば、勤務先14が目的地であった場合のIGオン時刻が勤務する際の出発時刻となる。
【0044】
勤務先14から帰宅する場合、勤務先14にてIGオンとされ、また、自宅12の位置は既知なので勤務先14から自宅12に帰宅したか否か、帰宅した場合には帰宅開始時刻が検出できる。
【0045】
学習部26は、複数の出発時刻から予想出発時刻を、複数の帰宅開始時刻から予想帰宅開始時刻をそれぞれ決定する(S4)。学習部26は、複数の出発時刻の統計情報から、例えば出発時刻の平均値、平均値−3σ(σ:標準偏差)、平均値+3σ等を決定する。なお、フレックスタイムなど出発時刻が曜日毎に異なる場合があるので、曜日毎に出発時刻を統計処理して曜日毎に出発時刻を学習することが好ましい。
【0046】
同様に、複数の帰宅開始時刻の統計情報から帰宅開始時刻の平均値、平均値−3σ(標準偏差)、平均値+3σ等を決定する。学習部26は、例えば、毎日1回、出発時刻及び帰宅開始時刻を統計処理して学習情報25を更新する。本実施例では、予想出発時刻及び予想帰宅開始時刻を、遅くてもこの時刻には乗車するであろう時刻、例えば、平均値+3σとする。
【0047】
図4(a)は学習情報25の一例を示す。学習情報25には、曜日毎に、予想出発時刻と予想帰宅開始時刻が登録されている。学習情報25の予想出発時刻又は予想帰宅開始時刻までに車両11に乗車しなければ、ユーザは交通機関を利用したと考えられる。なお、学習情報25には自宅位置情報と勤務先位置情報が含まれる。これにより、交通機関情報をサーバ70に要求する際に勤務先14の最寄り駅E4等をサーバ70に通知することができる。
【0048】
〔乗車判定〕
ユーザが車両11に乗車したか否かの判定について図5のフローチャート図に基づき説明する。図5のフローチャート図は、携帯端末60が学習情報25及び時計31の時刻を参照し、学習情報25に登録された予想出発時刻及び予想帰宅開始時刻の少し前になるとスタートする。学習情報25は、次述のように携帯端末60が例えば乗車の度にナビシステム50から受信することで共有されている。
【0049】
まず、乗車判定部43は、ユーザが車両11に乗車したか否かを判定する(S10)。携帯端末60を携帯してユーザが車両11に接近したり乗車すれば、BTモジュール20Aと20Bが互いに通信することで、ユーザが車両11に乗車したことが検出される。
【0050】
これに対し、予想出発時刻になってもBTモジュール20Bがナビシステム50のBTモジュール20Aと通信しない場合、乗車判定部43はユーザは本日、車両11に乗車しないと判定する。乗車しないと判定された場合(S10のNo)、情報取得部44はサーバ70から交通機関情報を取得する(S20)。交通機関情報の取得については後述する。
【0051】
なお、予想帰宅開始時刻に対しても、乗車判定部43はユーザが車両11に乗車したか否かを判定する。通勤時は車両11に乗車せず、退勤時に乗車することはあり得ないが、通勤時は車両11に乗車したが、飲食会等で退勤時に乗車しない場合があるので、退勤時にも同様に乗車したか否かを判定する。
【0052】
乗車したと判定された場合(S10のYes)、認証要求部41はナビシステム50にユーザの認証を要求する(S30)。認証要求部41はナビシステム50に個人認証情報45を送信する。
【0053】
これにより、ナビシステム50の一連の機能が起動する。ナビシステム50の認証部23は、予め記憶している個人認証情報24が、携帯端末60から送信された個人認証情報45と一致するか否かにより、ユーザを認証する(S110)。認証情報は、上記の固有の機器ID、電話番号、携帯機器固有ID、等である。また、複数のユーザが車両11を利用する場合でも、ユーザ毎に個人認証情報24をナビシステム50に登録しておくことで、ユーザを識別できる。認証が成立した場合、認証部23は携帯端末60に認証OKの信号を送信する。
【0054】
認証OKの信号を受信すると、携帯端末60の学習情報取得部42は学習情報25の送信を要求する(S40)。
【0055】
ナビシステム50の学習情報送信部27は記憶している学習情報25を読み出し、携帯端末60に送信する(S120)。学習情報取得部42は学習情報25を受信する(S50)。
【0056】
携帯端末60の学習情報取得部42は受信した学習情報25を例えばすでに記憶している学習情報25に上書き保存する。以上のようにして、ナビシステム50と携帯端末60は、ユーザの学習情報25を共有することができる。
【0057】
ところで、予想出発時刻にBTモジュール20Bがナビシステム50と通信するか否かだけでなく、携帯端末60の位置情報からユーザが車両11に乗車せずに通勤していることを検出できる。携帯端末60が有する位置検出装置38は、例えばGPSにより位置情報を取得する。なお、事業者サーバに問い合わせ、例えば基地局13が検出する携帯端末60の電波強度、通信のため接続する基地局13の場所等に基づき事業者サーバが検出した位置情報を取得してもよい。
【0058】
例えば、車両11が自宅12に駐車したままなのに、携帯端末60が勤務先14の周辺に存在する場合、ユーザは車両11に乗車せず通勤したと推定してよい。また、勤務先14まで到着する前に、勤務先14に向けて移動し始めたことが携帯端末60の位置情報から検出されたら、乗車判定部43はユーザが車両11に乗車せずに通勤したと判定してもよい。
【0059】
したがって、例えばユーザが予想出発時刻の前や休日に交通機関で出勤したような場合、乗車判定部43は携帯端末60の位置情報が勤務先14の近くか否かから、ユーザが車両11に乗車せずに通勤したことを精度よく検出できるようになる。なお、この場合、車両11は自宅12に携帯端末60は勤務先14にあることになるので、予想帰宅開始時刻においても乗車せずに退勤したことが検出される。
【0060】
〔交通機関情報の取得〕
図5のステップS20で説明した交通機関情報の取得について図6のフローチャート図に基づき説明する。
【0061】
ユーザが車両11に乗車しない場合、交通機関を利用した可能性があるので、情報取得部44はサーバ70に、交通機関の利用に便利な交通機関情報の配信を要求する。
【0062】
交通機関情報は、例えば、勤務先14の最寄り駅E4の駅名、勤務先14と最寄り駅E4を含む地図情報、最寄り駅E4の終電時刻、最寄り駅E4のタクシー運行情報(例えば、タクシー運行地域、運行時間帯)、最寄り駅E4周辺のタクシー会社連絡先情報、宿泊施設情報等である。
【0063】
交通機関情報の配信を要求するため、情報取得部44は配信要求を例えば電子メールでサーバ70に送信する(S210)。ユーザに最適化された交通機関情報を配信するため、配信要求には図4(b)の如く、勤務先位置情報 、自宅位置情報及び予想帰宅開始時刻が添付される。
【0064】
配信要求を受信するとサーバ70の情報収集部76は、交通機関情報の収集を開始する(S310)。情報収集部76は、勤務先位置情報に基づき最寄り駅E4を検出し、自宅位置情報に基づき自宅12の最寄り駅E1を検出する。駅E4とE1から帰宅のための路線が決定できるので、情報収集部76は駅E4から駅E1までの乗り換え案内を生成する。
【0065】
また、情報収集部76は勤務先14の最寄り駅E4の時刻表、特に終電時刻を他のサーバから検索し収集する。終電時刻を交通機関情報に含めることで、ユーザが終電に乗り遅れることを防止できる。なお、時刻表など情報量が多いものは、帰宅開始時刻の例えば1時間程度前からその日の終わりまでの情報を収集すればよい。
【0066】
また、情報収集部76は、勤務先14の最寄り駅E4周辺のタクシー会社を検索し、タクシー会社のURL、タクシー会社の運行情報、電話番号等を取得する。
【0067】
乗り換え案内や時刻表は公共性が高いのでインターネットから入手可能な場合が多いが、タクシー会社のホームページから、運行情報や電話番号を精度よく自動的に(機械的に)抽出することは困難な場合があるので、検索情報は多めに切り出すことが好ましい。また、いくつかのタクシー会社のURLのみを抽出してもよい。この場合、「駅E4の駅名 タクシー会社 電話番号」等の検索情報でタクシー会社のURLを検索できる。
【0068】
また、情報収集部76の作業をオペレータに依頼してもよく、この場合、過不足の少ない交通機関情報を収集することができる。
【0069】
情報収集は以上のようにして収集した交通機関情報を例えば電子メールで携帯端末60に送信する(S320)。携帯端末60の情報取得部44は、交通機関情報を受信することができる(S220)。
【0070】
図4(c)は、携帯端末60のディスプレイ32に表示された交通機関情報の一例を示す。図4(c)では電子メールの送信者であるサーバ70を交通機関情報配信センタとした。また、宛先名はユーザのメールアドレスである。ユーザは図4(c)のような交通機関情報を見て、駅E4周辺の交通機関情報を把握することができる。例えば、乗り換え案内が表示されるので、普段、電車に乗っていなくても何駅で乗り換えるか戸惑うことがない。また、自宅方面の電車の終電時刻が表示されるので、安心して飲食会等に出席することができる。また、終電を逃しても、タクシー会社の連絡先が表示されるので、容易にタクシーを呼ぶことができる。なお、乗り換え案内はいくつかの候補を表示してもよいし、終電時刻の前のいくつかの発車時刻を表示してもよい。
【0071】
また、タクシー会社の情報のように抽出が困難な情報はURLをそのまま携帯端末60に送信するので、ユーザがURLをマウスやカーソルなどのポインティングデバイスで選択してホームページに接続することができ、ユーザが情報を取捨できる。この場合でも、ホームページを探す場合と比較するとユーザの利便性は格段に向上する。
【0072】
本実施例の交通機関情報提供システム100によれば、日常的に車両11を利用しているユーザが交通機関を利用する場合、交通機関情報を取得するために携帯端末60を操作する必要がないので利便性を向上させることができる。
【実施例2】
【0073】
実施例1では、携帯端末60が学習情報25に基づき乗車判定して交通機関情報を取得したが、ナビシステム50が乗車判定して交通機関情報を携帯端末60に送信するようサーバ70に要求してもよい。
【0074】
図7は、本実施例の交通機関情報提供システム100のブロック図の一例を示す。なお、図7において図2と同一構成部分には同一の符号を付しその説明は省略する。ナビシステム50が乗車判定するため、図7ではナビシステム50が、乗車判定部43、情報取得部44を有し、携帯端末60は学習情報取得部42、乗車判定部43、及び、学習情報25を有さない。また、ナビステム50は、新たにアドレス47を記憶している。このアドレス47はユーザの携帯端末60に付与されたアドレス(例えばメールアドレスやIPアドレス等)である。
【0075】
ナビ制御部40には無線通信装置28が接続されている。無線通信装置28は携帯端末60の信号処理部34と無線通信部35と同等の機能を有し、基地局13に接続して事業者サーバと通信する。したがって、ナビシステム50はサーバ70と直接データを送受信することができる。
【0076】
ナビシステム50の情報取得部44は、ユーザが車両11に乗車しない場合、交通機関情報の配信要求に携帯端末60のアドレス47を添付してサーバ70に送信する。すなわち、サーバ70は携帯端末60から配信要求がなくてもユーザの携帯端末60に交通機関情報を配信することができる。
【0077】
図8はナビシステム50が交通機関情報の配信をサーバ70に要求する手順を示すフローチャート図である。なお、図8において実施例1と同一ステップには同じステップ番号を付与した。また、ナビシステム50の学習部26の手順は図3と同様なので説明を省略する。
【0078】
ナビシステム50の乗車判定部43は、ユーザが車両11に乗車したか否かを判定する(S10)。例えば、実施例1と同様に、携帯端末60を携帯してユーザが車両11に接近したり乗車すれば、BTモジュール20Aと20Bが互いに通信することで、ユーザが車両11に乗車したことが検出される。
【0079】
乗車したと判定された場合(S10のYes)、携帯端末50の認証要求部41はナビシステム50にユーザの認証を要求する(S30)。認証要求部41はナビシステム50に個人認証情報45を送信する。
【0080】
これにより、ナビシステム50の一連の機能が起動する。ナビシステム50の認証部23は、予め記憶している個人認証情報24が、携帯端末60から送信された個人認証情報45と一致するか否かにより、ユーザを認証する(S110)。認証が成立した場合、認証部23は携帯端末60に認証OKの信号を送信する。
【0081】
なお、認証が成立しても、本実施例では携帯端末60が学習情報25を利用しないので、ナビシステム50が学習情報25を携帯端末60に送信する必要がない。
【0082】
ステップS10に戻り、乗車判定部43がユーザが車両11に乗車しないと判定した場合(S10のNo)、ナビシステム50の情報取得部44は配信要求を例えば電子メールでサーバ70に送信する(S210)。配信要求には図4(b)で示した情報に加えユーザのアドレス47が添付される。サーバ70が予めユーザのアドレスを記憶していてもよい。
【0083】
配信要求を受信するとサーバ70の情報収集部76は、交通機関情報の収集を開始する(S310)。そして、実施例1と同様に収集した交通機関情報を例えば電子メールで携帯端末60に送信する(S320)。したがって、携帯端末60の情報取得部44は、交通機関情報を受信することができる(S220)。
【0084】
本実施例によれば、日常的に車両11を利用しているユーザが交通機関を利用する場合、交通機関情報を取得するために携帯端末60を操作する必要がないので利便性を向上させることができる。また、携帯端末60とナビシステム50が学習情報25を共有しなくてよいので、携帯端末60の構成を簡易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】交通機関情報提供システムの概略を説明する図である。
【図2】交通機関情報提供システムのブロック図の一例である。
【図3】通勤時刻等の学習の手順を示すフローチャート図である。
【図4】学習情報等の一例を示す図である。
【図5】ユーザが車両に乗車したか否かを判定する手順を示すフローチャート図である。
【図6】交通機関情報の取得の手順を示すフローチャート図である。
【図7】交通機関情報提供システムのブロック図の一例である。
【図8】ナビシステムが交通機関情報の配信をサーバに要求する手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0086】
11 車両
12 自宅
14 勤務先
25 学習情報
43 学習判定部
50 ナビシステム
60 携帯端末
70 サーバ
E1〜E4 駅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通機関情報を車両のユーザに提供する交通機関情報取得装置であって、
ユーザが前記車両で通勤又は退勤している否かを判定する乗車判定手段と、
前記乗車判定手段により前記車両で通勤又は退勤していないと判定された場合、勤務先の周辺の交通機関情報を取得する情報取得手段と、
を有することを特徴とする交通機関情報取得装置。
【請求項2】
ユーザの通勤時刻又は退勤時刻を記憶した時刻記憶手段を有し、
前記乗車判定手段は、通勤時刻又は退勤時刻にユーザが前記車両に乗車してない場合に、ユーザが前記車両で通勤していないと判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の交通機関情報取得装置。
【請求項3】
勤務先の位置情報を記憶する勤務先位置情報記憶手段と、
位置情報を取得する位置情報取得手段と、を有し、
前記乗車判定手段がユーザの乗車を検出していない状態で、前記位置情報取得手段が勤務先へ移動したことが検出した場合、前記乗車判定手段はユーザが前記車両で通勤していないと判定する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の交通機関情報取得装置。
【請求項4】
前記情報取得手段が取得した交通機関情報は、勤務先の最寄り駅における電車の時刻表若しくは時刻表の一部、終電時刻、又は、勤務先周辺のタクシー会社情報、のいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の交通機関情報取得装置。
【請求項5】
乗車時刻及び目的地からユーザの通勤時刻と退勤時刻を学習する車載装置から、通勤時刻又は退勤時刻を受信する学習情報取得手段、を有し、
前記学習情報取得手段は、受信した通勤時刻又は退勤時刻を前記時刻記憶手段に記憶させる、
ことを特徴とする請求項2項記載の交通機関情報取得装置。
【請求項6】
車両のユーザが携帯する携帯端末に交通機関情報を提供する車載装置であって、
ユーザが前記車両で通勤又は退勤している否かを判定する乗車判定手段と、
前記乗車判定手段により前記車両で通勤又は退勤していないと判定された場合、勤務先の周辺の交通機関情報を、前記携帯端末に送信するよう所定のサーバに要求する情報取得手段と、
を有することを特徴とする車載装置。
【請求項7】
交通機関情報を車両のユーザが携帯する交通機関情報取得装置に提供する交通機関情報提供システムであって、
前記車両は、通勤時刻と退勤時刻を学習する学習手段を有し、
前記交通機関情報取得装置は、
前記車両から取得した通勤時刻又は退勤時刻を記憶した時刻記憶手段と、
ユーザが前記車両で通勤又は退勤している否かを判定する乗車判定手段と、
前記乗車判定手段により前記車両で通勤又は退勤していないと判定された場合、所定のサーバから勤務先の周辺の交通機関情報を取得する情報取得手段と、を有する、
ことを特徴とする交通機関情報提供システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−190668(P2009−190668A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36208(P2008−36208)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】